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JP2004524802A - Phドメイン相互作用タンパク質 - Google Patents

Phドメイン相互作用タンパク質 Download PDF

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JP2004524802A JP2001582384A JP2001582384A JP2004524802A JP 2004524802 A JP2004524802 A JP 2004524802A JP 2001582384 A JP2001582384 A JP 2001582384A JP 2001582384 A JP2001582384 A JP 2001582384A JP 2004524802 A JP2004524802 A JP 2004524802A
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Abstract

本発明は、プレクストリン相同(PH)ドメイン相互作用タンパク質の核酸分子、そのような核酸分子によってコードされるタンパク質、ならびに治療用および診断用の薬剤の調製における、タンパク質および核酸分子の使用に関する。タンパク質、核酸分子、および薬剤は、癌およびインスリン反応に関連する障害を含むがこれらに限定されない、タンパク質および核酸分子に関する病態および障害の診断、予防、および治療において用いられうる。

Description

【0001】
発明の分野
本発明は、プレクストリン相同(PH)ドメイン相互作用タンパク質の核酸分子、そのような核酸分子によってコードされるタンパク質、ならびに治療用および診断用の薬剤の調製におけるタンパク質および核酸分子の使用に関する。タンパク質、核酸分子、および薬剤を、癌およびインスリン反応に関連する障害を含むがこれらに限定されない、タンパク質および核酸分子を含む病態および障害の診断、予防、および治療において用いてもよい。
【0002】
発明の背景
インスリン受容体をリガンドによって刺激すると、インスリン受容体基質−1(「IRS−1」)は多数のチロシン残基上で急速にリン酸化され、これは多くのインスリン依存的生体反応を誘発する際に機能するSrc相同性(Homology)2(SH2)含有シグナル伝達タンパク質が集合して活性化するためのドッキング部位として作用する(1)。IRS−1のN末端は、PHドメインを含み、その後に生産的な受容体/基質相互作用の媒介において協調的に関与することが示されている構造的に相同なホスホチロシン結合(PTB)ドメインを含む(2)。IRS−1のPTBドメインは、活性化インスリン受容体(IR)の膜近位領域におけるNPEYモチーフ内でリン酸化されたTyr960に直接結合する(3)。しかし、それによってPHドメインが受容体のカップリングを促進する正確な分子機構はわかっていない。これまでの研究から、PHドメインを欠失させるとIRS−1リン酸化を減弱して、その後のインスリン媒介分裂誘発を減弱させることが証明されている(2)。その上、無関係なタンパク質からの異種PHドメインは、インスリンに対する分裂誘発反応を回復させることができず、このことはIRS−1 PHドメインが単なる膜ターゲティング装置ではなくて、特異的細胞リガンドと相互作用する可能性があることを示唆している(4)。
【0003】
発明の概要
本出願人らは、IRS−1をインスリン受容体に結合させるIRS−1の生理的リガンドである「PH相互作用タンパク質」または「PHIP」と呼ばれる新規タンパク質を単離した。出願人らは、PHIPが、インスリン媒介遺伝子転写、分裂誘発、グルコース輸送、およびアクチンのリモデリングの極めて重要な成分であることを確立した。
【0004】
特に、本発明者らは、PHIPがインビトロでIRS−1のプレクストリン相同(PH)ドメインに選択的に結合して、IRS−1およびIRS−2にインビボで安定に会合することを発見した。PHIPの過剰発現は、インスリン誘導転写反応を増強した。対照的に、PHIPのドミナントネガティブ変異体は、インスリンによって誘導される分裂誘発シグナルを特異的に遮断して、インスリン誘導IRS−1チロシンリン酸化を阻害した。さらに、DN−PHIPは、L6筋芽細胞におけるアクチン細胞骨格のインスリンによるリモデリングを阻害し、これに伴ってインスリン刺激GLUT4膜転移が強く阻害された。異所発現されたPHIPタンパク質は、低密度ミクロソーム(LDM)画分においてIRS−1と共に分離して、IRS−1/LDM相互作用において重要であることがわかっているIRS−1のホスホセリン/トレオニン含有量を調節した。出願人らは、IRS−1 PHドメインの生理的タンパク質リガンドを初めて同定したが、これはIRS−1の空間的区画化および細胞内経路を調節することによって、IRに対するIRS−1のカップリングを増強する可能性があった。PHIPをコードする遺伝子は第6染色体にマッピングされた。本発明者らは、PHIPがSTAT(シグナル伝達物質転写活性化物質)転写因子、特にSTAT3に会合することも発見したが、これはSTAT転写因子をインスリン受容体ファミリーに結合させる可能性がある。したがって、PHIPは、シグナル伝達分子と相互作用してこれをリン酸化する活性化受容体にIRS−1およびSTAT3のようなシグナル伝達分子を動員する、アダプタータンパク質である。
【0005】
したがって、広い意味において本発明は、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質およびSTAT転写因子を、タンパク質とSTAT転写因子に相互作用してこれをリン酸化する受容体に動員するアダプタータンパク質を提供する。
【0006】
本発明はまた、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、PNAを含むPHIPをコードする単離された核酸分子と共に、アンチセンス類似体、およびその生物学的、診断的、予防的、臨床的または治療的に有用な変種または断片、ならびにそれらを含む組成物を考慮する。
【0007】
本発明はまた、その切断型、類似体、対立遺伝子もしくは種間変種、タンパク質の相同体もしくはその切断型、または活性化(例えば、リン酸化)PHIPを含む、本発明の核酸分子によってコードされる単離されたPHIPも考慮する。(PHIPおよびその切断型、類似体、対立遺伝子もしくは種間変種、相同体、および活性化PHIPを、本明細書において集合的に「PHIタンパク質」と呼ぶ)。単離されたPHIタンパク質は、任意の種、特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマを含む哺乳類、好ましくはヒトから、天然、合成、半合成、または組み換え型の任意の起源から得られる。PHIタンパク質は、高次コイル構造を予測するN末端αヘリックス領域と2つのブロモドメインを含む領域とを特徴とする。
【0008】
本発明に従って、インスリン受容体基質−1(IRS−1)のPHドメインと安定な相互作用を形成することができ、高次コイル構造を予測するN末端αヘリックス領域と2つのブロモドメインを含む領域とを特徴とする、単離されたプレクストリン相同ドメイン相互作用タンパク質(「PHIタンパク質」)が提供される。
【0009】
成熟PHIタンパク質をコードする核酸分子は、成熟ポリペプチドのコード配列のみ;成熟ポリペプチドのコード配列とさらなるコード配列(例えば、リーダーまたは分泌配列、プロポリペプチド配列);成熟ポリペプチドのコード配列と(選択的にさらなるコード配列と)イントロンまたは成熟ポリペプチドのコード配列の5’および/または3’の非コード配列のような非コード配列を含んでもよい。
【0010】
したがって、「PHIタンパク質をコードする核酸分子」という用語は、さらなるコード配列および/または非コード配列を含む核酸分子と共に、PHIタンパク質のコード配列のみを含む核酸分子を含む。
【0011】
本発明の核酸分子を適当なベクターに挿入してもよく、ベクターは、挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必要なエレメントを含んでもよい。したがって、本発明の核酸分子と、適当であれば、核酸分子に結合した一つまたは複数の転写および翻訳エレメントとを含むベクターを構築してもよい。
【0012】
本発明の局面に従って、PHIタンパク質の少なくとも一つのエピトープをコードするヌクレオチド配列を有するDNA分子と、宿主細胞における発現を可能にする適した調節配列とを含むベクターが提供される。
【0013】
ベクターを用いて、PHIタンパク質を発現するように宿主細胞を形質転換することができる。したがって、本発明はさらに、本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、その生殖細胞および体細胞が、本発明の核酸分子、特にPHIPの類似体またはPHIPの切断型をコードする核酸分子を含むベクターを含む、非ヒトトランスジェニック哺乳類も考慮する。
【0014】
本発明のタンパク質は、天然の細胞起源からの単離体として得られうるが、好ましくは、組み換え技法によって産生される。一つの局面において、本発明は、本発明の単離された核酸分子を利用するPHIタンパク質を調製する方法を提供する。一つの態様において、以下の段階を含むPHIタンパク質を調製する方法が提供される:
(a)PHIタンパク質をコードする核酸配列を含む本発明のベクターを宿主細胞に移入する段階;
(b)非形質転換宿主細胞から形質転換宿主細胞を選択する段階;
(c)PHIタンパク質の発現を可能にする条件で、選択された形質転換宿主細胞を培養する段階;および
(d)PHIタンパク質を単離する段階。
【0015】
本発明はさらに、本発明の方法を用いて得られる組み換え型PHIタンパク質を広く考慮する。
【0016】
本発明のPHIタンパク質を、融合ポリペプチドまたはキメラポリペプチドを調製するために、ポリペプチドのような他の分子に結合させてもよい。これは、例えば、N末端融合ポリペプチドまたはC末端融合ポリペプチドの合成によって得てもよい。
【0017】
本発明の一つの局面は、PHIタンパク質の結合領域に由来する分子(例えば、ペプチド)を提供する。
【0018】
本発明はまた、本発明の核酸分子および/または本発明のタンパク質独特のヌクレオチドプローブの構築を可能にする。したがって、本発明はまた、PHIタンパク質、またはその一部(すなわち断片)をコードする配列を含むプローブにも関する。プローブを例えば、検出可能な物質によって標識してもよく、それを用いて、核酸分子の混合物から、PHIタンパク質の一つまたは複数の特性を示すポリペプチドをコードする核酸分子を含む本発明の核酸分子を選択してもよい。
【0019】
本発明の一つの局面は、PHIタンパク質またはその結合領域と、結合パートナーとを含む複合体を提供する。本発明の一つの態様において、PHIタンパク質またはPHドメイン結合領域と、PHドメイン含有タンパク質またはPHドメインとを含む複合体が提供される。本発明はまた、PHIタンパク質またはその結合領域、特にIR結合領域と、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体またはその結合領域とを含む複合体を考慮する。さらにまた、本発明は、PHIタンパク質またはその結合領域、特にSTAT結合領域と、STAT転写因子またはPHIタンパク質と相互作用するその結合領域とを含む複合体を考慮する。
【0020】
本発明はさらに、本発明のPHIタンパク質または複合体のエピトープに対して特異性を有する抗体も考慮する。抗体を、検出可能な物質によって標識してもよく、生体試料、組織、および細胞において本発明のタンパク質または複合体を検出するために用いてもよい。抗体を、治療的応用において、例えば腫瘍細胞と反応させるために特に用いてもよく、化学療法剤、毒素、免疫応答修飾物質、酵素、および放射性同位元素を含む抗腫瘍効果を有する様々な薬剤の標的選択的担体として結合体および免疫毒素において用いてもよい。
【0021】
本発明の一つの局面に従って、本発明の核酸分子、タンパク質、および複合体の有無を決定することによって、PHIタンパク質を含む病態を診断およびモニターするための方法および産物が提供される。
【0022】
本発明は、物質とタンパク質または結合領域との複合体を形成させる条件で、タンパク質または結合領域を、タンパク質または結合領域と相互作用または結合する可能性がある少なくとも一つの物質と反応させる段階、および複合体の結合または回収を検出する段階を含む、PHIタンパク質またはその結合領域(例えば、PHドメイン結合領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域)に結合する物質を同定する方法を提供する。結合を、複合体、遊離の物質、または複合体を形成していないタンパク質もしくは結合領域に関してアッセイすることによって検出してもよい。本発明はまた、PHIタンパク質またはその結合領域と相互作用する他の細胞内タンパク質に結合する物質を同定する方法も考慮する。phip核酸調節配列(例えば、プロモーター配列)に結合する化合物を同定する方法も同様に用いることができる。
【0023】
またさらに本発明は、試験化合物が本発明のPHIタンパク質の活性を調節するか否かを評価する方法を提供する。「調節する」とは、本発明のPHIタンパク質の生物活性における変化または変質を意味する。調節は、活性の増加(すなわち、促進)もしくは減少(すなわち、破壊)、特徴の変化、またはタンパク質の生物学的、機能的、もしくは免疫学的特性の変化であってもよい。
【0024】
例えば、PHIタンパク質の活性を減少または増強する物質を評価してもよい。PHIタンパク質と結合パートナーとの会合または相互作用は、PHIタンパク質の産生を増加させることによって、PHIタンパク質の発現を増加させることによって、PHIタンパク質と結合パートナー(例えば、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用するPHドメイン含有タンパク質または受容体)との相互作用を促進することによって、または会合もしくは相互作用の期間を持続することによって、促進または増強してもよい。PHIタンパク質と結合パートナーとの会合または相互作用は、PHIタンパク質の産生を阻害することによって、PHIタンパク質の発現を阻害することによって、またはPHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用を阻害する、もしくは相互作用を妨害することによって破壊または減少させてもよい。方法は、シグナル伝達のレベル、およびPHIタンパク質またはその結合領域と結合パートナーとの相互作用レベルを含む様々な特性を測定または検出する段階を含んでもよい。
【0025】
一つの態様において、方法は、PHIタンパク質またはその結合領域を、タンパク質またはその結合領域と相互作用するまたは結合する物質および試験化合物と、物質とタンパク質または結合領域との複合体を形成させる条件で反応させる段階、および複合体を除去および/または検出する段階を含む。
【0026】
他の態様において、本発明は、以下を含むPHIタンパク質の阻害剤を同定する方法を提供する:
(a)PHIタンパク質と、結合パートナーまたは相互作用するそれぞれの少なくとも一部とを含む反応混合物を提供する段階;
(b)反応混合物を一つまたは複数の試験化合物と接触させる段階;
(c)PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用を阻害する化合物を同定する段階。
【0027】
特定の好ましい態様において、反応混合物は細胞全体である。他の態様において、反応混合物は細胞溶解物、または精製タンパク質組成物である。本発明の方法は、試験化合物のライブラリを用いて行うことができる。そのような薬剤は、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、有機低分子、および動物、植物、真菌、および/または微生物から単離されたもののような天然物抽出物ライブラリとなりうる。
【0028】
本発明のさらにもう一つの局面は、以下の段階を含む、医薬品発見ビジネスを行う方法を提供する:
(a)PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用の阻害能または増強能によって薬剤を同定するための一つまたは複数のアッセイ系を提供する段階;
(b)段階(a)において同定された薬剤またはそのさらなる類似体の動物における有効性および毒性に関する治療プロフィールを決定する段階;ならびに
(c)許容される治療プロフィールを有すると段階(b)において同定された一つまたは複数の薬剤を含む薬学的組成物を製剤化する段階。
【0029】
特定の態様において、本発明の方法はまた、販売用薬学的組成物を流通させるための流通系を確立する段階を含むことができ、選択的に、薬学的調製物を販売するための販売グループを確立することを含んでもよい。
【0030】
本発明のさらにもう一つの局面は、以下の段階を含む標的発見ビジネスを行う方法を提供する:
(a)PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用の阻害能または増強能によって薬剤を同定するための一つまたは複数のアッセイ系を提供する段階;
(b)(選択的に)動物における有効性および毒性に関して、段階(a)において同定された薬剤の治療的プロフィールを決定する段階;ならびに
(c)段階(a)において同定された薬剤、またはその類似体に関するさらなる薬剤開発および/または販売の権利を第三者に認可する段階。
【0031】
また、PHIタンパク質の生物活性を調節する化合物を、試験化合物の存在下および非存在下で生体試料、組織、および細胞における本発明の核酸分子またはタンパク質の発現のパターンおよびレベルを比較することによって、本発明の方法を用いて同定してもよい。
【0032】
phip調節配列(例えば、プロモーター配列、エンハンサー配列、負の調節配列)と相互作用する化合物または物質(例えば、ポリペプチド)を同定する方法も同様に考慮される。
【0033】
本発明の複合体における分子間の相互作用の破壊または促進は、治療的技法において有用である可能性がある。したがって、本発明は、PHIタンパク質もしくはPHドメイン結合領域と、PHドメイン含有タンパク質もしくはPHドメインとの相互作用;IR結合領域と、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体との相互作用;またはPHIタンパク質もしくはSTAT結合領域と、STAT転写因子もしくはPHIタンパク質と相互作用するその結合領域との相互作用、を含むシグナル伝達経路における異常を特徴とする病態を有する被験者を治療する方法を特徴とする。
【0034】
本発明の核酸分子、タンパク質、複合体、ペプチド、および抗体、ならびに本発明の方法を用いて同定された物質、薬剤、および化合物は、本発明のPHIタンパク質もしくは複合体の生物活性、または本発明のPHIタンパク質もしくは複合体を含むシグナル伝達経路を調節するために用いてもよく、それらは、PHIタンパク質または本発明のPHIタンパク質もしくは複合体を含むシグナル伝達経路によって媒介される病態の治療に用いてもよい。したがって、本発明の核酸分子、タンパク質、抗体、複合体、ならびに物質、薬剤、および化合物は、これらの病態の一つまたは複数を有する個体に投与するための組成物に調製してもよい。本発明の一つの態様において、病態は癌である。本発明のもう一つの態様において、病態は、インスリン反応に関連した障害である。したがって、本発明はまた、本発明のタンパク質、抗体、複合体、もしくは核酸分子、または本発明の方法を用いて同定された物質、化合物、もしくは薬剤の一つまたは複数と、薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくは希釈剤とを含む組成物に関する。本発明の組成物を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、これらの病態を治療または予防する方法も同様に提供される。
【0035】
本発明はまた、本発明の核酸分子、タンパク質、複合体、ペプチド、抗体、物質、薬剤、または化合物を、PHIタンパク質、または本発明のPHIタンパク質もしくは複合体を含むシグナル伝達経路によって媒介される病態または障害を治療するための薬物の調製に用いることを考慮する。
【0036】
本発明のさらなる局面に従って、本明細書記載のタンパク質、複合体、または核酸分子を、科学研究、DNAの合成、およびベクターの製造に関連したインビトロ目的のために利用するプロセスを提供する。
【0037】
本発明の他の特徴および長所は以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、詳細な説明から当業者には様々な変更および改変が明らかとなるが、それらも本発明の精神および範囲に含まれるため、本発明の好ましい態様を示している詳細な説明および特定の実施例は、それらは説明のために限って示されると理解すべきである。本発明のこれらおよび他の局面、特徴、および長所は、以下の図面および詳細な説明から当業者に明らかとなるはずである。
【0038】
発明の詳細な説明
本発明に従って、当技術分野における従来の分子生物学、微生物学、および組み換え型DNA技術を用いてもよい。そのような技術は文献に詳しく説明されている。例えば、サムブルック(Sambrook)、フリッチュ(Fritsch)およびマニアティス(Maniatis)、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第二版、(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY);「DNAクローニング:実践アプローチ(DNA Cloning:A Practical Approach)」、第I巻および第II巻(D.N. Glover編、1985);「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(M.J. Gait編、1984);「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」(B.D. HamesおよびS.J. Higgins編、1985);「転写および翻訳(Transcription and Translation)」(B.D. HamesおよびS.J. Higgins編、1984);「動物細胞の培養(Animal Cell Culture)」(R.I. Freshney編、1986);「固定化細胞および酵素(Immobilized Cells and enzymes)」、IRL出版(1986);およびB. パーバル(Perbal)、「分子クローニングの実践ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」(1984)を参照のこと。
【0039】
1. 用語解説
関係するタンパク質、例えばPHIタンパク質の「アゴニスト」という用語は、タンパク質またはその一部に結合して、それが結合するタンパク質の活性を維持または増加させる化合物を意味する。アゴニストには、タンパク質、核酸、炭水化物、またはタンパク質、複合体、または複合体分子(例えば、PHIタンパク質)に結合する他の任意の分子が含まれうる。アゴニストにはまた、PHIタンパク質またはその結合領域(例えば、PH結合ドメイン領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域)に由来する分子(例えば、ペプチド)が含まれるが、野生型分子の完全長配列は含まれないであろう。特定のペプチドの構造的特徴を模倣するように設計された物理構造を有する合成分子であるペプチド模倣物も、アゴニストとして用いられうる。刺激は、直接、または間接的であってもよく、競合的または非競合的な機構によって行ってもよい。
【0040】
本明細書において用いられる、関係タンパク質、例えばPHIタンパク質の「アンタゴニスト」とは、タンパク質またはその一部に結合するが、それが結合するタンパク質の活性を維持しない化合物を意味する。アンタゴニストには、タンパク質、核酸、炭水化物、またはタンパク質、複合体、もしくは複合体分子(例えば、PHIタンパク質)に結合する他の任意の分子が含まれうる。アンタゴニストにはまた、PHIタンパク質またはその結合領域(例えば、PH結合ドメイン領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域)に由来する分子(例えば、ペプチド)が含まれるが、好ましくは野生型分子の完全長配列は含まれないであろう。特定のペプチドの構造的特徴を模倣するように設計された物理構造を有する合成分子であるペプチド模倣物も、アンタゴニストとして用いられうる。刺激は、直接、または間接的であってもよく、競合的または非競合的な機構によって行ってもよい。
【0041】
「抗体」には、無傷のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、およびその免疫学的活性断片(例えば、Fabまたは(Fab)断片)、抗体重鎖、ヒト化抗体、および抗体軽鎖、遺伝子操作された一本鎖F分子(Ladnerら、米国特許第4,946,778号)、または、例えばマウスの抗体の結合特異性を含むが残りの部分はヒト起源である抗体などの、キメラ抗体が含まれる。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、断片およびキメラを含む抗体を、当業者に既知の方法を用いて調製してもよい。関係する免疫抗原を含む無傷のタンパク質、ペプチドまたは断片を用いて、本発明のタンパク質、複合体、またはペプチドに結合する抗体を調製することができる。動物を免疫するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドをRNAの翻訳から得てもよく、または化学合成してもよく、望ましいならば担体タンパク質に結合させることができる。タンパク質またはペプチドに化学的にカップリングさせてもよい適切な担体には、ウシ血清アルブミンおよびサイログロブリン、キーホールリンペットヘモシアニンが含まれる。カップリングさせたタンパク質またはペプチドを用いて、動物(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)を免疫してもよい。
【0042】
「結合領域」とは、もう一つの分子(例えば、PHドメインもしくはSTAT3)、もしくは本発明の複合体におけるもう一つの分子と直接もしくは間接的に相互作用または結合する本発明の複合体におけるPHIタンパク質または分子のその部分である。結合ドメインは、分子の連続的な部分、すなわちアミノ酸の隣接配列であってもよく、または立体構造的であってもよい、すなわち分子がその本来の状態である場合に、複合体におけるもう一つの分子と相互作用する構造を形成する本発明のアミノ酸の非隣接配列の組み合わせであってもよい。
【0043】
「相補的」という用語は、許容される塩および温度条件で塩基対形成による核酸分子の自然の結合を意味する。例えば、配列「A−G−T」は、相補的配列「T−C−A」に結合する。二つの一本鎖分子の間の相補性は、核酸のごく一部が結合するような「部分的」であってもよく、または一本鎖分子の間に完全な相補性が存在する場合には完全であってもよい。
【0044】
「由来する」とは、PHIタンパク質または本発明の複合体における分子の本来の結合領域と同一または実質的に同等である任意の分子実体を意味する。特定の結合領域に由来するペプチドは、自然界に存在する結合部位のアミノ酸配列、その結合部位の任意の一部、または関連する分子に結合するように機能する他の分子実体を含みうる。そのような結合領域に由来するペプチドは、本来の結合領域を模倣するように、関連分子と直接または間接的に相互作用するであろう。そのようなペプチドには、競合的阻害剤、ペプチド模倣物等が含まれてもよい。
【0045】
「相互作用」または「相互作用する」とは、タンパク質、脂質、炭水化物、ヌクレオチドおよび他の細胞代謝物のような他の分子の間の任意の物理的会合を意味し、これは共有結合であっても、非共有結合(例えば、静電気的結合、水素結合、およびファンデルワールス結合)であってもよい。相互作用には、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−脂質相互作用、およびその他のようなタンパク質と細胞分子との間の相互作用が含まれる。特定の相互作用分子は、それらの一つまたは複数が刺激された後に限って相互作用する。例えば、PHドメイン含有タンパク質は、タンパク質がリン酸化されている場合に限ってリガンドに結合するであろう。タンパク質と他の細胞分子との相互作用は、直接または間接的であってもよい。間接的な相互作用の例は、調節物質によるPHIタンパク質またはその結合ドメインの無関係な産生、刺激、または阻害である。当技術分野で既知の様々な方法を用いて、相互作用のレベルを測定してもよい。
【0046】
「IR結合領域」とは、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体と相互作用するまたは結合する本発明のPHIタンパク質の結合領域を意味する。好ましい態様において、相互作用は特異的であり、結合領域はそのような受容体でない分子とは相互作用しないか、またはより弱く相互作用する。IR結合領域と受容体との相互作用のKは、好ましくは10 μM未満であり、より好ましくは1,000 nM、最も好ましくは500 nMである。本発明の態様において、IR結合領域は、タンパク質の一部として、単独で、またはタンパク質のアミノ酸配列の残りから単離されて、または脂質小胞に含めて、または遊離の可溶性低分子として提供してもよい。IR結合領域の例は、配列番号:2もしくは5のアミノ酸230位〜345位または配列番号:15のアミノ酸配列を含むブロモドメインBD1に対応する領域、または、配列番号:2もしくは5のアミノ酸387位〜503位、または配列番号:17のアミノ酸配列を含むブロモドメインBD2に対応する領域である。
【0047】
「IRSタンパク質ファミリー」とは、多数の受容体複合体および様々なシグナル伝達タンパク質と、Src相同性2ドメインとの界面を提供するドッキングタンパク質を意味する。タンパク質は、インスリン受容体、増殖因子受容体(例えば、インスリン様増殖因子I(IGF−1)受容体、成長ホルモンおよびプロラクチンの受容体)、サイトカイン受容体(例えば、IL−2、IL−4、IL−9、IL−13、およびIL−15の受容体、IL−6受容体ファミリーメンバー)、およびインターフェロン受容体(例えば、IFNα/βおよびIFNγの受容体)を含むいくつかのクラスの受容体によって開始されるシグナル伝達事象に関係している。インスリン受容体基質であるIRS−1は、このクラスの分子の原型である。他のファミリーメンバーには、IRS−2、Gab−1、およびp62dokが含まれる。タンパク質は、NH末端PHドメインおよび/またはタンパク質−タンパク質相互作用を媒介するホスホチロシン結合(PTB)ドメイン;SH2含有タンパク質に結合する多数のCOOH末端チロシン残基;SH3またはWWドメインと相互作用するプロリンリッチ領域;およびおそらくタンパク質−タンパク質相互作用を介してIRSタンパク質の細胞内局在/移動を調節するセリン/トレオニンリッチ領域(M.F. WhiteおよびL. Yenush、1998、ならびにその引用文献)を含むいくつかの共通の構造を含む。IRS−1およびIRS−2は、NH末端の最後部でPHドメインを有し、その直後に、リン酸化されたNPXYモチーフに結合するPTBドメインが続く。IRSタンパク質ファミリーの活性化された、すなわちリン酸化されたタンパク質を、本発明の目的のために用いてもよい。
【0048】
「ペプチド模倣物」とは、分子間の相互作用においてペプチドの代用物として作用する構造である(概説としてはMorganら、(1989)、Ann. Reports Med. Chem. 24:243〜252を参照のこと)。ペプチド模倣物には、アミノ酸配列および/またはペプチド結合を含んでもよく含まなくてもよいが、本発明のペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストの構造的および機能的特徴を保持している合成構造が含まれる。ペプチド模倣物には同様に、ペプトイド、オリゴペプトイド(Simonら、(1972)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367)、および本発明のペプチド、またはアゴニストもしくはアンタゴニストに対応するアミノ酸の起こり得る全ての配列を表す所望の長さのペプチドを含むペプチドライブラリが含まれる。
【0049】
「PHドメイン」とは、当初プレクストリンにおいて同定され、多くのシグナル伝達タンパク質において起こることが知られている明確なアミノ酸約100個の領域を意味する(M.F. WhiteおよびL. Yenush、1998、ならびにその引用文献)。PHドメインは、サンドイッチを形成し、かつ一つの角が両親媒性COOH末端αヘリックスによって覆われている、二つの逆平行βシートを特徴とする明確な構造モジュールを有する(Lemmonら、1996、Cell 85:621〜624)。PHドメインを、配列アラインメント技術および三次元構造比較を用いて同定してもよい。好ましいPHドメインは、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質のPHドメイン、好ましくはIRS−1およびIRS−2 PHドメインである。本発明の態様において、PHドメインを、タンパク質の一部として、単独で、タンパク質のアミノ酸配列の残りから単離して、脂質小胞に含めて、または遊離の可溶性低分子として提供してもよい。
【0050】
「PHドメイン結合領域」とは、PHドメインと相互作用する、または結合するPHIタンパク質の結合領域を意味する。好ましい態様において、相互作用は特異的であり、結合領域は、非PHドメイン分子とは相互作用しないか、またはより弱く相互作用する。PHドメイン結合領域とPHドメインとの相互作用のKは、好ましくは10 μM未満であり、より好ましくは1,000 nM、最も好ましくは500 nMである。
本発明の態様において、PHドメイン結合領域は、タンパク質の一部として、単独で、タンパク質のアミノ酸配列の残りから単離して、脂質小胞に含めて、または遊離の可溶性低分子として提供してもよい。PHドメイン結合領域の例は、配列番号:2、5、8、または10におけるアミノ酸8位〜209位、または配列番号:12もしくは13のアミノ酸配列に対応するPHドメイン結合領域である(本明細書において、「PH結合領域」または「PBR」と呼ぶ)。
【0051】
「PHドメイン含有タンパク質」とは、PHドメインを含む、または本質的にPHドメインからなるタンパク質またはペプチド、またはその一部を意味する。本発明の態様において、PHドメイン含有タンパク質は、タンパク質の一部として、単独で、タンパク質のアミノ酸配列の残りから単離して、脂質小胞に含めて、または遊離の可溶性低分子として提供してもよい。そのようなタンパク質の例には、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質、好ましくはIRS−1およびIRS−2が含まれる。
【0052】
「IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体」とは、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用してリン酸化する受容体チロシンキナーゼおよびサイトカイン受容体を意味する。これらの受容体の例には、インスリン受容体、増殖因子受容体(例えば、インスリン様増殖因子I(IGF−1)受容体、成長ホルモンおよびプロラクチンの受容体)、サイトカイン受容体(例えば、IL−2、IL−4、IL−9、IL−13、およびIL−15の受容体、IL−6受容体ファミリーメンバー)、およびインターフェロン受容体(例えば、IFNα/βおよびIFNγの受容体)が含まれる。好ましくは、本発明は、インスリン受容体(「IR」)およびインスリン様増殖因子I受容体(「IGF−1R」)を用いる。
【0053】
「配列類似性」または「配列同一性」という用語は、配列の比較によって決定した二つまたはそれ以上のアミノ酸または核酸配列間の関係を意味し、その関係は一般的に「相同性」として知られている。当技術分野における同一性は、場合によっては、そのような配列間の一致によって決定したアミノ酸または核酸配列の配列関連性の程度も同様に意味する。同一性と類似性はいずれも容易に計算されうる(「コンピューター分子生物学(Computational Molecular Biology)」、Lesk, A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;「バイオコンピューティング:インフォマティクスとゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)」、Smith, D.W.編、Academic Press、New York、1993;「配列データのコンピューター分析(Computer Analysis of Sequence Data)」、第I巻、Griffin, A.M.およびGriffin, H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」、von Heinje, G.、Academic Press、NY、1987;ならびに「配列分析プライマー(Sequence Analysis Primer)」、Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M.、Stockton Press、NY、1991)。二つのアミノ酸配列または二つの核酸配列間の同一性および類似性を測定するためには多くの既存の方法があるが、いずれの用語も当業者に周知である(「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」、von Heinje, G.、Academic Press、NY、1987;「配列分析プライマー(Sequence Analysis Primer)」、Gribskov, M.およびDevereux, J.編、M.Stockton Press、NY、1991;ならびにCarillo, H.およびLipman, D.、SIAM. J. Applied Math. 48:1073、1988)。同一性を決定する好ましい方法は、調べた配列間の最大の一致を提供するように設計される。同一性を決定する方法は、コンピュータープログラムにおいて暗号化されている。二つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータープログラム法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387、1984)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S.F.ら、J. Molec. Biol. 215:403、1990)が含まれるがこれらに限定されない。同一性または類似性はまた、デイホフ(Dayhoff)らのアラインメントアルゴリズムを用いて決定されうる[Methods in Enzymology 91:524〜545(1983)]。
【0054】
「シグナル伝達経路」とは、細胞外タンパク質からの細胞膜を通して細胞質にメッセージを伝達することを含む一連の事象を意味する。本発明において考慮されるシグナル伝達経路には、PHIタンパク質または本発明の複合体、またはその相互作用分子を含む経路が含まれる。特に、経路は、IRSタンパク質ファミリー、特にIRS−1、または、グルコース代謝、タンパク質合成、ならびに細胞の生存、増殖および形質転換の制御を含む細胞プロセスを調節するSTAT転写因子(例えばSTAT3)を含む経路である。そのような経路には、c−fos遺伝子発現に至るMAPキナーゼ経路;造血細胞のIRS−1調節IL−4刺激;ならびにIRS−1媒介GHおよびインターフェロンγ(IFNγ)シグナル伝達が含まれる。IRS−1はまた、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼに依存する経路を媒介する。さらに、IRSタンパク質が活性化されると、分裂誘発および細胞の形質転換を刺激して、アポトーシスを阻害するIGR−I/IGR−Rシグナル伝達経路を通して細胞プロセスを調節する。シグナル伝達経路における所定のシグナルの量および強度は、従来の方法を用いて測定することができる(本明細書の実施例1を参照のこと)。例えば、シグナル伝達経路における様々なタンパク質および複合体の濃度および位置を測定することができ、シグナルの伝達に関係するコンフォメーションの変化は、円偏光二色性および蛍光試験を用いて観察してもよく、シグナル伝達経路における異常に関連した病態の様々な症状を検出してもよい。
【0055】
「STAT転写因子」または「STAT」とは、サイトカイン媒介シグナル伝達および免疫機能にとって必要なタンパク質ファミリーのメンバーを意味する(Schindlerら、Ann. Rev. Biochem. 64:621〜651、1995)。サイトカインによる受容体ライゲーションの後、STATファミリーメンバーは、ヤーヌスファミリーキナーゼ(JAK)メンバーの作用を通してチロシンのリン酸化によって活性化されるようになる。活性化STATタンパク質はホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成して、これは細胞質から核へと移動して、核でそれらはシス作用プロモーター配列に結合して、免疫応答に必要な多くの遺伝子の転写を調節する。STAT転写因子の例には、STAT1(αおよびβ)、STAT3(αおよびβ)、STAT4、およびSTAT6、およびその全てのイソ型、ホモおよびへテロダイマー、好ましくはSTAT3(αおよびβ)が含まれるがこれらに限定されない。STAT3活性化は、組織の炎症に関連したIL−6依存的反応にとって必要であり、IL−10反応は、Th2ヘルパー細胞機能に関連している(Inoue, M.ら、J. Biol. Chem. 272:9550〜9555、1975およびWeber−Northら、J. Biol. Chem. 271:27954、1996)。
【0056】
「STAT結合領域」とは、STAT転写因子と相互作用するPHIPタンパク質の結合領域を意味する。好ましい態様において、相互作用は特異的であり、結合領域は、非STAT転写因子である分子とは相互作用しないか、またはより弱く相互作用する。PHIタンパク質とSTAT転写因子との相互作用のKは、好ましくは10 μM未満であり、より好ましくは1,000 nM、最も好ましくは500 nMである。本発明の態様において、STAT結合領域は、タンパク質の一部として、単独で、タンパク質のアミノ酸配列の残りから単離して、脂質小胞に含めて、または遊離の可溶性低分子として提供してもよい。
【0057】
2. 核酸分子
先に述べたように、本発明は、PHIタンパク質をコードする配列を含む、または本質的にそれらからなる単離された核酸分子を提供する。「単離された」という用語は、その本来環境から除去されて、精製もしくは分離され、または組み換えDNA技術によって産生される場合には細胞材料もしくは培養培地、または化学合成される場合には化学反応物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸(またはタンパク質)を意味する。好ましくは、単離された核酸は、それが自然界で会合する他の成分を少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%含まない。「核酸」という用語には、mRNA、DNA、cDNA、およびゲノムDNAを含む改変型もしくは非改変型のDNA、RNA、または混合ポリマーが含まれると解釈され、一本鎖、二本鎖、または三本鎖のいずれかとなりうる。例えば、核酸配列とは、一本鎖もしくは二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖の領域もしくは一本鎖、二本鎖および三本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、一本鎖であってもよく、より典型的には、二本鎖もしくは三本鎖であるRNA、または、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの双方を含む領域の混合物であってもよい。そのような領域における鎖は、同じ分子に由来してもよく、または異なる分子に由来してもよい。DNAまたはRNAは一つまたは複数の改変塩基を含んでもよい。例えば、DNAまたはRNAは安定性または他の理由から改変された骨格を有してもよい。核酸配列には、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはポリヌクレオチドが含まれる。「核酸分子」という用語、および特にDNAまたはRNAは一次および二次構造のみを意味し、如何なる特定の三次構造にも制限されない。
【0058】
本発明の一つの局面に従って、配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つ、または配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つの相補体と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズする、少なくとも30ヌクレオチドの単離された核酸分子が提供される。
【0059】
本発明の一つの態様において、以下を含む単離された核酸分子が考慮される:
(i)配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17のアミノ酸配列と実質的な配列同一性を有するタンパク質をコードする核酸配列;
(ii)(i)と相補的な核酸配列;
(iii)遺伝コードの縮重のためにコドン配列において(i)または(ii)のいずれとも異なる核酸配列;
(iv)配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つの核酸配列もしくはその縮重型とハイブリダイズすることができる、少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも20ヌクレオチドを含む核酸配列;
(v)配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、もしくは17のアミノ酸配列を含むタンパク質の切断型、類似体、対立遺伝子もしくは種間変種をコードする核酸配列;または
(vi)(i)、(ii)、もしくは(iii)の断片もしくは対立遺伝子もしくは種間変種。
【0060】
特定の態様において、単離された核酸分子は以下を含む:
(i)配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つの核酸配列と実質的な配列同一性もしくは配列類似性を有する核酸配列;
(ii)TがUであることも可能である、配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つの配列を含む核酸配列;
(iii)(i)と相補的な、好ましくは配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つの核酸配列全体と相補的な核酸配列;
(iv)遺伝コードの縮重のためにコドン配列において(i)、(ii)もしくは(iii)の核酸配列のいずれとも異なる核酸配列;または
(v)(i)、(ii)、もしくは(iii)の断片もしくは対立遺伝子もしくは種間変種。
【0061】
好ましい態様において、単離された核酸は、配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、もしくは17のアミノ酸配列によってコードされる核酸配列を含み、またはTがUであることも可能である、配列番号:1、4、7、9、11、14、16もしくは18〜34の一つの配列を含む核酸配列を含む。もう一つの態様において、単離された核酸は、配列番号:71、73、75、または77のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、またはTがUであることも可能である、配列番号:70、72、74、もしくは76の核酸配列を含む。
【0062】
好ましくは、本発明の核酸分子は、本明細書に引用した好ましいコンピュータープログラムを用いて、配列番号:1、4、7、9、11、14、16または18〜34の一つの配列に対して実質的な配列同一性、例えば50%を上回る核酸同一性;好ましくは60%を上回る核酸同一性;およびより好ましくは65%、70%、75%、80%、または85%を上回る配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。
【0063】
PHIタンパク質またはその一部をコードし、遺伝コードの縮重のために配列番号:1、4、7、9、11、14、16または18〜34の一つの核酸配列とは異なる配列を含む単離された核酸も同様に、本発明の範囲内である。そのような核酸は、同等のタンパク質をコードする。一つの例として、本発明の核酸分子内のDNA配列多型によって、アミノ酸配列に影響を及ぼさないサイレント変異が起こる可能性がある。一つまたは複数のヌクレオチドにおける変動は、天然の対立遺伝子変種のために、集団内の個体に存在する。そのような任意のおよび全ての核酸変動が本発明の範囲内である。PHIタンパク質のアミノ酸配列の変化に至るDNA配列多型も同様に起こる可能性がある。これらのアミノ酸多型も同様に本発明の範囲内である。さらに、種間変動、すなわち異なる種の間で自然界に存在するヌクレオチド配列の変動も、本発明の範囲内である。
【0064】
本発明のもう一つの局面は、選択的な条件下(例えば、高ストリンジェンシー条件)で、PHIタンパク質またはその一部をコードする配列を含む核酸とハイブリダイズする核酸分子を提供しうる。配列は好ましくは、配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17のアミノ酸配列をコードし、少なくとも10個、15個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、45個のヌクレオチド、より典型的には少なくとも50個〜200個のヌクレオチドを含む。ハイブリダイゼーションの選択性は、無作為であるよりむしろ特定の程度の特異性によって起こる。DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェントな条件条件は、当業者に既知であるか、または「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、ジョンウィリー&サンズ(John Wilry & Sons)、NY(1989)、6.3.1〜6.3.6に認めることができる。例えば、50℃における2.0×SSCによる洗浄の前に、約45℃の5.0〜6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)または0.5%SDSを用いてもよい。ストリンジェンシーを、洗浄段階において用いられる条件に基づいて選択してもよい。例として、洗浄段階における塩濃度は、約0.2×SSCで50℃の高ストリンジェンシーから選択することができる。さらに、洗浄段階の温度は、高ストリンジェンシー条件である約65℃となりうる。
【0065】
本発明には、本発明のタンパク質の切断型、対立遺伝子および種間変種、ならびに本明細書に記載されるタンパク質の類似体を含む、PHIタンパク質をコードする核酸分子が含まれると認識されるであろう。特に、少なくとも10個、15個、18個、20個、25個、30個、35個、40個、または45個のヌクレオチド、より典型的には少なくとも50個〜200個のヌクレオチドで2kb未満である、本発明の核酸の断片が考慮される。一つの態様において、PHIタンパク質の結合領域、例えば、PHドメイン結合領域(例えば、配列番号:11)またはIR結合領域(例えば、配列番号:14または16)をコードする核酸配列を含む断片が提供される。本発明のcDNAに対応するmRNAのもう一つのスプライシングによって生じた本発明の核酸分子の変種型は本発明に含まれるとさらに認識されるであろう。
【0066】
DNAを含む本発明の単離された核酸分子を、配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34の核酸配列の全てまたは一部に基づく標識核酸プローブを調製することによって単離することができる。標識核酸プローブを用いて、適当なDNAライブラリ(例えば、cDNAライブラリまたはゲノムDNAライブラリ)をスクリーニングする。例えば、cDNAライブラリを、標準的な技術を用いて標識プローブによってライブラリをスクリーニングすることによって、PHIタンパク質をコードするcDNAを単離するために用いることができる。または、ゲノムDNAライブラリを同様にスクリーニングして、phip遺伝子を含むゲノムクローンを単離することができる。DNAまたはゲノムDNAライブラリのスクリーニングによって単離された核酸は、標準的な技術によってシークエンシングすることができる。
【0067】
本発明の単離された核酸分子はまた、本発明の核酸を選択的に増幅することによって単離されうる。「増幅する」または「増幅」とは、核酸配列のさらなるコピーの産生を意味し、一般的に、当技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行われる(Dieffenbach, C.W.およびG.S. Dveksler(1995)、「PCRプライマー、実験マニュアル(PCR Primer, a Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Press、Plainview、NY)。特に、PCRにおいて用いるために、配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34のヌクレオチド配列から合成オリゴヌクレオチドプライマーを設計することが可能である。核酸を、これらのオリゴヌクレオチドプライマーおよび標準的なPCR増幅技術を用いて、cDNAまたはゲノムDNAから増幅することができる。そのように増幅された核酸を適当なベクターにクローニングして、DNA配列分析によって特徴を調べることができる。またcDNAを、多様な技術、例えば、チャーグウィンら(Chirgwin、Biochemistry 18、5294〜5299(1979))のグアニジニウム−チオシアネート抽出法を用いることによって、総細胞RNAを単離することによってmRNAから調製してもよい。次に、逆転写酵素を用いてmRNAからcDNAを合成する(例えば、Gibco/BRL社、Bethesda、MDから市販されているモロニーMLV逆転写酵素、またはSeikagaku America Inc.、St. Petersburg、FLから市販されているAMV逆転写酵素)。
【0068】
PHIタンパク質をコードするcDNAを、cDNAの転写を可能にし、PHIタンパク質をコードするRNA分子を産生させる、適当なベクターにクローニングすることによって、RNAである本発明の単離された核酸分子を単離することができる。例えばcDNAを、ベクターにおいてバクテリオファージプロモーター(例えば、T7プロモーター)の下流にクローニングすることができ、cDNAを、T7ポリメラーゼによってインビトロで転写させることができ、得られたRNAを従来の技術を用いて単離することができる。
【0069】
本発明の核酸分子を、標準的な技術を用いて化学合成してもよい。ペプチド合成と同様に、市販のDNAシンセサイザーにおいて完全に自動化されている固相合成を含むがこれらに限定されない、ポリデオキシヌクレオチドを化学合成する方法は既知である(例えば、Itakuraら、米国特許第4,598,049号;Caruthersら、米国特許第4,458,066号;およびItakura、米国特許第4,401,796号および第4,373,071号を参照のこと)。
【0070】
本発明の核酸分子を、PHIタンパク質のクローニング、プロセシング、または発現を修飾する改変を含む理由のためにPHIタンパク質コード配列を変化させるために、当技術分野で一般的に既知の方法を用いて操作することができる。分子は、ランダム断片化によるDNAシャッフリング、および遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのPCR再構築を用いて操作されうる。定方向変異誘発を用いて変異を導入し、新しい制限部位を挿入し、グリコシル化パターンを変化させ、コドン選択性を変化させ、スプライシング変種等を産生してもよい。
【0071】
特定の核酸分子がPHIタンパク質をコードするか否かの決定を、標準的な技術によって適当な宿主細胞にcDNAを発現させて、本明細書記載の方法において発現されたタンパク質を試験することによって行うことができる。PHIタンパク質をコードするDNAは、ジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーション(dideoxynucleotide chain termination)またはマキサムギルバート(Maxam−Gilbert)化学シークエンシングのような標準的な技術によってシークエンシングして、核酸配列およびコードされるタンパク質の予想アミノ酸配列を決定することができる。
【0072】
本発明の核酸分子の開始コドンおよび非翻訳配列は、PC/Gene(Intelli Genetics Inc.、CA)のようなその目的のために設計されたコンピューターソフトウェアを用いて決定してもよい。本発明の核酸分子のイントロン−エキソン構造および転写調節配列は、ゲノムDNAクローンライブラリをプロービングするために、本発明の核酸分子を用いて同定されうる。(ヒトPHIPおよびNDRPのイントロン/エキソン構造を示す配列番号:69を参照のこと)。調節エレメントは、標準的な技術を用いて同定することができる。エレメントの機能は、これらのエレメントを用いて、エレメントに機能的に結合しているlacZ遺伝子のようなレポーター遺伝子を発現させて確認することができる。これらの構築物は従来の技法を用いて培養細胞に、または非ヒトトランスジェニック動物モデルに導入してもよい。DNAにおける調節エレメントを同定することの他に、そのような構築物はまた、当技術分野で既知の技術を用いて、エレメントと相互作用する核ポリペプチドを同定してもよい。
【0073】
本発明は、適当なベクターに含まれるphip遺伝子の調節配列を含む核酸分子を考慮する。ベクターは、異種ポリペプチドをコードする配列を含んでもよい。「異種ポリペプチド」は、細胞に本来存在しない、すなわち細胞に対して異物であるポリペプチドを意味する。
【0074】
本発明のもう一つの局面に従って、本明細書記載の方法を用いて単離された核酸分子は、変異型phip遺伝子対立遺伝子である。例えば、変異体対立遺伝子は、特定の病態または疾患(例えば、インスリン反応に関連した障害、または癌)の症状に関与する遺伝子型を有することがわかっている、または提案される人から単離してもよい。変異体対立遺伝子および変異体対立遺伝子産物は、本明細書記載の治療法および診断法において用いてもよい。例えば、変異体phip遺伝子のcDNAは、本明細書記載のようにPCRを用いて単離してもよく、変異体対立遺伝子のDNA配列は、変異体遺伝子産物の機能の喪失または変化に関与する変異(複数)を確認するために、正常な対立遺伝子と比較してもよい。ゲノムライブラリはまた、変異体対立遺伝子を有することが疑われる、またはわかっている人からのDNAを用いて構築することができる、またはcDNAライブラリは、変異体対立遺伝子を有することが疑われる、またはわかっている組織からのRNAを用いて構築することができる。次に、正常なphip遺伝子またはその任意の適した断片をコードする核酸は、そのようなライブラリにおける対応する変異体対立遺伝子を同定するためのプローブとして用いてもよい。変異体配列を含むクローンを精製して、配列分析を行うことができる。さらに、変異体phip対立遺伝子を有することがわかっている、または疑われる人の組織から単離したRNAからのcDNAを用いて発現ライブラリを構築することができる。推定の変異体組織からの遺伝子産物は、例えば、本明細書記載のPHIタンパク質に対して特異的な抗体を用いて発現およびスクリーニングしてもよい。抗体を用いて同定されたライブラリクローンを精製して、配列分析を行うことができる。
【0075】
本発明の核酸分子にはまた、センスPHIP核酸分子に沿って戦略的な部位に対して相補的なオリゴヌクレオチドおよびその断片、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが2ヌクレオチド塩基〜200ヌクレオチド塩基であってもよく;より好ましくは10塩基〜100塩基、最も好ましくは10塩基〜40塩基の長さである。オリゴヌクレオチドは、機能的PHIタンパク質の形成を阻害する本発明の核酸分子(例えば、mRNAセンス鎖)に沿って戦略的な部位に対して相補的または実質的に相補的なオリゴヌクレオチドから選択される。PHIタンパク質を調節するアンチセンス核酸分子の任意の組み合わせまたは副組み合わせが、本発明において用いるために適している。アンチセンスオリゴヌクレオチドにはまた、PHIP核酸分子に沿って戦略的な部位または他の部位に対して相補的または実質的に相補的な部位に隣接するヌクレオチドが含まれてもよい。隣接する部分は、好ましくは長さが約5塩基〜約50塩基、好ましくは5塩基〜約20塩基である。同様に、アンチセンス分子は、他の遺伝子をコードする核酸分子の相同性を最小限にするためにPHIP核酸分子の非保存領域に対しても相補的であることが好ましい。
【0076】
本発明のセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドは、改変された糖−ホスホジエステル骨格(または国際公開公報第91/06629号に記載されたような他の糖結合)を有するオリゴヌクレオチドを含んでもよい。そのような糖結合は、分子を内因性のヌクレアーゼに対して抵抗性にする可能性がある。これらのオリゴヌクレオチドはインビボで比較的安定である(すなわち酵素的分解に耐えることができる)が、標的ヌクレオチド配列に対する結合に関してその特異性を保持している。オリゴヌクレオチドは、ポリ(L−リジン)のような、標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増加させる分子に共有結合してもよい。標的配列に対する結合特異性を改変するために、エリプチシンのようなインターカレート剤、およびアルキル化剤または錯塩をセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合してもよい。
【0077】
本発明はまた、PHIPタンパク質または本発明の複合体の一つもしくは複数の分子の翻訳を阻害するように機能する酵素的RNA分子であるリボザイムを考慮する。
【0078】
本発明の範囲内で考慮されるアンチセンス分子およびリボザイムは、核酸分子の合成に関する当技術分野で既知の任意の方法によって調製してもよい。例えば、固相ホスホラミダイト化学合成のようなオリゴヌクレオチドを化学合成する技術を用いてもよい。RNA分子も同様に、PHIタンパク質をコードするDNA配列のインビトロまたはインビボ転写によって作製してもよい。DNA配列は、T7またはSP6を含む適したRNAポリメラーゼプロモーターと共にベクターに組み入れてもよい。代わりの方法において、アンチセンスRNAを構成的または誘導的に産生するcDNA構築物を細胞株、細胞、または組織に導入することができる。RNA分子は、例えば分子の5’末端および/または3’末端で隣接する配列を加えることによって、または分子の骨格内でホスホジエステラーゼ結合よりむしろホスホロチオエートもしくは2’ O−メチルを用いることによって、細胞内安定性および半減期を増加させるように改変することができる。分子はまた、イノシン、ケオシン、およびウィブトシンのような従来でない塩基、または内因性エンドヌクレアーゼによって容易に認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンのアセチル、メチル、チオ、および類似の改変型を挿入することによって改変することができる。
【0079】
3.PHI タンパク質
PHIタンパク質は、高次コイル構造を予測するN末端αヘリックス領域と二つのブロモドメインを含む領域とを特徴とする。PHIタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、17、71、73、75、または77の配列を含む。「アミノ酸配列」とは、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列および自然界に存在する分子または合成分子を意味する。
【0080】
本発明の態様において、タンパク質がインスリン受容体基質−1のPHドメインと安定な相互作用を形成することができる、以下から選択される核酸分子によってコードされる単離PHIタンパク質が提供される:
(a)配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34を含む核酸分子;および
(b)配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17を含むタンパク質をコードする核酸分子。
【0081】
本発明の好ましい態様において、配列番号:2、3または8を含む単離されたヒトPHIPが提供され、配列番号:5、6、または10を含むマウスPHIPが提供される。配列番号:8および10のPHIPは、PHIPと神経分化関連タンパク質(NDRP)の融合体を含むPHIPの長い型である。配列番号:2、3、5および6の唯一の差は異なるエキソンによってコードされるN末端である。配列は、ヒトおよびマウス配列の双方において短い型(配列番号:2および5)のアミノ酸位置4位以降が異なる。長い型のPHIPは、N末端のもう一つのスプライシング配列を含む。
【0082】
発達しつつあるニューロンにおいて主に発現され、神経の再生および分化に関係する可能性があるPHIタンパク質ファミリーの第二のメンバーである神経分化関連タンパク質(NDRP)が同定された。NDRPのプレカルボキシ末端領域は、PHIPのアミノ末端領域(残基5位〜80位)と同一である(図6および図7を参照のこと)。この領域は、NDRPにおける保存された機能的ドメインに対応する可能性がある。図7および図8はそれぞれ、ヒトおよびマウスのNDRPのアミノ酸配列および核酸配列のアラインメントを示す。配列番号:69は、PHIPおよびNDRPのイントロンおよびエキソンを示す。示した配列は相補的配列である。イントロンを黒色で示し、PHIPエキソンを青色で示し、NDRPエキソンを赤色で示し、かつPHIP/NDRP共通エキソンをピンク色で示す。
【0083】
したがって、本発明はまた、以下を含む単離された核酸分子に関する:
(vi)配列番号:35および39〜63の一つの核酸配列と実質的な配列同一性もしくは配列類似性を有する核酸配列;
(vii)TがUであることも可能である、配列番号:35および39〜63の一つの配列を含む核酸配列;
(viii)(i)と相補的な、好ましくは配列番号:35および39〜63の一つの核酸配列全体と相補的な核酸配列;
(ix)遺伝コードの縮重のためにコドン配列において(i)、(ii)、または(iii)の核酸配列のいずれとも異なる核酸配列;または
(x)(i)、(ii)、もしくは(iii)の断片もしくは対立遺伝子もしくは種間変種。
【0084】
以下によってコードされる単離された神経分化関連タンパク質も同様に提供される:
(a)配列番号:35および39〜63の一つを含む核酸分子;または
(b)配列番号:36を含むタンパク質をコードする核酸分子。
【0085】
本発明の好ましい態様において、配列番号:36を含む単離ヒトNDRPが提供される。本発明はまた、本明細書に開示されたNDRPの切断型、類似体、実質的な配列同一性を有するタンパク質、イソ型および模倣物が含まれる。
【0086】
「WDR9」と呼ばれるPHIPの相同分子種(ortholog)も同様に同定されている。WDR9の完全なアミノ酸配列は、Gen Bankアクセッション番号第Q9NSI6号であり、WDR9の核酸配列は、Gen Bankアクセッション番号第AL163279号の核酸配列からスプライシングされる。WDR9の部分的アミノ酸配列を配列番号:64および65に示す。WD反復タンパク質9とPHIPとのアミノ酸および核酸配列のアラインメントをそれぞれ、図13および14に示す。
【0087】
配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17のアミノ酸配列を含むタンパク質の他に、本発明のPHIタンパク質には、本明細書に記載されるようにPHIタンパク質の切断型、PHIタンパク質の類似体、ならびにPHIタンパク質と配列同一性または類似性を有するタンパク質、およびその切断型が含まれる。切断型タンパク質は、例えばアミノ酸残基3個〜275個のペプチド、大きさの範囲がトリペプチド〜275量体であるタンパク質を含んでもよい。本発明の一つの局面において、配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17の少なくとも5個の連続アミノ酸配列を有するPHIタンパク質の断片が提供され、断片に存在する5個以上、6個以上、7個以上、または8個以上の連続アミノ酸のアミノ酸配列は、PHIタンパク質以外のポリペプチドには存在しない。本発明の一つの態様において、断片は配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17の配列のような特定の配列からの少なくとも12個〜20個の連続アミノ酸のアミノ酸残基である。断片は免疫原性であってもよく、好ましくはPHIタンパク質以外のポリペプチドに対して免疫反応性である抗体と免疫反応性ではない。一つの態様において、断片は、PHIタンパク質の結合領域、例えばPHドメイン結合領域(例えば、配列番号:12または13)、またはIR結合領域(例えば、配列番号:15または17)のアミノ酸配列を含む(同様に、本明細書記載のペプチドに関する説明を参照のこと)。
【0088】
本発明のタンパク質にはまた、PHIタンパク質の類似体、および/または本明細書記載の切断型が含まれてもよく、それらには、一つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含むPHIタンパク質が含まれてもよいがこれらに限定されない。アミノ酸置換は、保存的置換または非保存的置換であってもよい。保存的アミノ酸置換は、PHIタンパク質アミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸を類似の荷電、大きさ、および/または疎水性特徴を有するアミノ酸に置換することを含む。保存的置換のみを行う場合、得られた類似体は好ましくはPHIタンパク質と機能的に同等である。非保存的置換は、PHIタンパク質アミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸を異なる荷電、大きさ、および/または疎水性特徴を有する一つまたは複数のアミノ酸に置換することを含む。
【0089】
一つまたは複数のアミノ酸挿入をPHIタンパク質に導入してもよい。アミノ酸挿入は、単一のアミノ酸残基、または2アミノ酸長〜15アミノ酸長の範囲の連続的なアミノ酸で構成されてもよい。
【0090】
欠失は、PHIタンパク質配列からの、一つまたは複数のアミノ酸、または不連続な部分の除去からなる。欠失されるアミノ酸は連続であっても連続していなくてもよい。欠失変異を有する得られた類似体の長さの下限は、約10アミノ酸、好ましくは20アミノ酸〜40アミノ酸である(欠失変異体は、実施例2ならびに配列番号:67および68に記載されている)。
【0091】
ポリペプチドレベルでの対立遺伝子変種は、もう一つのポリペプチドと比較してアミノ酸1個のみ、または多くても数個のアミノ酸置換によって異なる。本発明のPHIタンパク質の種間変種は、異なる種の生物に本来存在する変種である。
【0092】
本発明のタンパク質には、本明細書記載のようにPHIタンパク質および/またはその切断型と配列同一性または類似性を有するタンパク質が含まれる。そのようなPHIタンパク質には、そのアミノ酸配列が、選択的なハイブリダイゼーション条件下で、PHIタンパク質を得るために用いられるプローブとハイブリダイズする他の種からのPHIPタンパク質領域のアミノ酸配列からなるタンパク質が含まれてもよい(本明細書におけるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に関する考察を参照のこと)。これらのタンパク質は一般的に、PHIタンパク質の特徴である同じ領域を有するであろう。好ましくは、タンパク質は、配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17のアミノ酸配列と実質的な配列同一性、例えば約65%、70%、75%、80%、または85%の同一性、好ましくは90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の同一性、および最も好ましくは98%の同一性を有するであろう。アミノ酸配列相同性、類似性または同一性の割合は、本明細書記載の既知の方法を用いて、参照配列と一致した並置したアミノ酸の百分率として計算する。例えば、アミノ酸配列相同性または同一性の割合は、参照配列と一致する並置したアミノ酸の百分率として計算され、配列アラインメントはデイホフら(Dayhoff、Methods in Enzymology 91:524〜545、1983)のアラインメントアルゴリズムを用いて決定される。
【0093】
本発明はまた、本発明のタンパク質のイソ型も考慮する。イソ型は、本発明のタンパク質と同じ数および種類のアミノ酸を含むが、イソ型は異なる分子構造を有する。本発明によって考慮されるイソ型は、好ましくは本明細書に記載されるように、本発明のタンパク質と同じ特性を有する。
【0094】
さらにまた、本発明は、活性化PHIタンパク質を考慮する。例えば、PHIタンパク質はチロシンがリン酸化されているか、またはセリン/トレオニンがリン酸化されていてもよい。
【0095】
本発明は、PHIタンパク質またはその結合領域に由来する分子を提供する。分子は好ましくは、PHドメイン結合領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域に由来するペプチドである。本発明の態様において、ペプチドは、本質的に配列番号:12、13、15または17からなる。ペプチドはまた、PHドメイン含有タンパク質、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体、またはPHIタンパク質結合領域と直接もしくは間接的に相互作用もしくは結合するSTAT転写因子の結合領域に由来してもよい。
【0096】
これらのペプチドは全て、これらのペプチドに対して実質的に相同な、相補的な、またはそうでなければ機能的もしくは構造的に同等である分子と共に、本発明の目的のために用いてもよい。完全長の結合領域(例えば、PHドメイン結合領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域)の他に、ペプチドの切断型が考慮される。切断型ペプチドは、アミノ酸残基約5個〜200個のペプチドを含んでもよく、好ましくはアミノ酸残基5個〜100個、より好ましくはアミノ酸残基5個〜50個のペプチドを含んでもよい。
【0097】
本発明はまた、所望の細胞成分または細胞型もしくは組織に対してキメラタンパク質を向けることができる標的タンパク質および/またはターゲティングドメインに融合した、または組み入れられた本発明の少なくとも一つのPHIタンパク質またはペプチドを含む新規キメラタンパク質にも関する。キメラタンパク質はまた、さらなるアミノ酸配列またはドメインを含んでもよい。キメラタンパク質は、様々な成分が異なる起源に由来するという点において、そしてそのようなタンパク質がいずれも本来存在しないという意味において(すなわち、異種である)組み換え型である。標的タンパク質は、PHドメイン結合領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域を挿入するために選択されたタンパク質であり、例えば、疾患状態において変異しているまたは過剰発現されているタンパク質であってもよい。ターゲティングドメインは、膜貫通ドメイン、膜結合ドメイン、またはタンパク質を例えば小胞または核に会合させるように向ける配列となりうる。ターゲティングドメインは、キメラタンパク質を特定の細胞型または組織にターゲティングすることができる。例えば、ターゲティングドメインは、細胞表面リガンドまたは標的組織の細胞表面抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体となりうる。
【0098】
本発明のペプチドまたはキメラタンパク質の環状誘導体も同様に、本発明の一部である。環状化によって、ペプチドまたはキメラタンパク質は、他の分子と会合するためにより都合のよいコンフォメーションをとることができる可能性がある。環状化は、当技術分野で既知の技術を用いて行ってもよい。例えば、遊離のスルフヒドリル基を有する二つの空間的に適当に離れた成分の間でジスルフィド結合を形成してもよく、または一つの成分のアミノ基ともう一つの成分のカルボキシル基の間でアミド結合を形成してもよい。環状化はまた、ユリッセ(Ulysse),L.ら、J. Am. Chem. Soc. 1995、117、8466〜8467に記載されるように、アゾベンゼン含有アミノ酸を用いて行ってもよい。結合を形成する成分は、アミノ酸の側鎖、非アミノ酸成分、または両者の組み合わせであってもよい。
【0099】
上記のようなペプチド結合を含む環状ペプチドより柔軟である環状ペプチドを産生することが望ましい場合がある。より柔軟なペプチドは、ペプチドの左右の位置でシステインを導入して、二つのシステインの間でジスルフィド架橋を形成することによって調製してもよい。環状ペプチドの相対的な柔軟性は、分子力学のシミュレーションによって決定することができる。
【0100】
特定の調製物と組み合わせると、ペプチドは有効な細胞内物質となりうる。しかし、ペプチドの有効性を増加するために、「トランスサイトーシス(transcytosis)」、すなわち上皮細胞によるペプチドの取り込みを促進する第二のペプチドを含む融合ペプチドを調製することができる。説明すると、本発明のペプチドは、HIVタンパク質TatのN末端ドメインの全てまたは断片、例えばTatの残基1〜72位、またはトランスサイトーシスを促進することができるより小さい断片との融合ポリペプチドの一部として提供されうる。他の態様において、本発明のペプチドは、アンテナペディアタンパク質の全てまたは一部との融合ポリペプチドとして提供することができる。さらに説明すると、本発明のペプチドは、ペプチドの細胞内移動を促進するために、ペプチド配列の細胞外型の細胞膜を超えての移動を促進する異種ペプチド配列(「内部移行ペプチド」)を含むキメラペプチドとして提供することができる。
【0101】
疎水性ポリペプチドも同様に、受容体媒介トランスサイトーシスによって膜を通過することができる輸送可能なペプチドにポリペプチドをカップリングまたは結合させることによって、膜障壁を超えて生理的に輸送してもよい。このタイプの内部移行ペプチドの例は、例えば、ヒストン、インスリン、トランスフェリン、塩基性アルブミン、プロラクチンおよびインスリン様増殖因子I(IGF−I)、インスリン様増殖因子II(IGF−II)、または他の増殖因子の全てまたは一部を用いて作製することができる。
【0102】
別のクラスの移動/内部移行ペプチドは、PH依存的膜結合を示す。この点において、pH依存的膜結合内部移行ペプチドの例は、aa1−aa2−aa3−EAALA(EALA)4−EALEALAA−アミドであり、これはスバラオ(Subbarao)ら、Biochemistry 26:2964、1987のペプチド配列の改変体を表す。
【0103】
内部移行ペプチドには、アポリポタンパク質A−1およびB;メリチン、ボンボリチン、デルタヘモリシスおよびパーダキシンのようなペプチドトキシン;アラメチシンのような抗生物質ペプチド;カルシトニン、コルチコトロピン放出因子、βエンドルフィン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、膵ポリペプチドのようなペプチドホルモン;および多数の分泌型タンパク質のシグナル配列に対応するペプチドが含まれる。さらに、内部移行ペプチドは、酸性pHで内部移行ペプチドのαヘリックス特徴を増強する置換基の結合によって改変してもよい。
【0104】
本発明に含まれるその他の適した内部移行ペプチドには、生理的pHでは「隠れている」が、標的細胞のエンドソームの低いpH環境では露出される疎水性ドメインが含まれる。そのような内部移行ペプチドは、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)のエキソトキシンA、クラスリン、またはジフテリア毒素において同定された配列を模範として形成してもよい。
【0105】
孔を形成するタンパク質またはペプチドも同様に、内部移行ペプチドとして作用する可能性がある。孔形成タンパク質またはペプチドは、例えば、C9補体タンパク質、細胞溶解性T細胞分子またはNK細胞分子から得てもよく、それらに由来してもよい。
【0106】
内部移行ペプチドの膜のインターカレーションは、CPDペプチドまたはペプチド模倣物の細胞膜を超えての転位にとって十分である可能性がある。しかし、転位は、細胞内酵素(すなわち、「アクセサリーペプチド」)の基質を内部移行ペプチドに融合させることによって改善される可能性がある。適したアクセサリーペプチドには、キナーゼ基質、一価の陽性荷電、および膜結合グリコトランスフェラーゼによってグリコシル化される配列を含むペプチドが含まれる。
【0107】
アクセサリーペプチドは、本発明のペプチドまたはペプチド模倣物を標的細胞との相互作用を増強するために用いることができる。この用途に適したアクセサリーペプチドの例には、配列「RGD」を含む細胞接着タンパク質に由来するペプチド、配列CDPGYIGSRCを含むラミニンに由来するペプチドが含まれる。
【0108】
内部移行ペプチドおよびアクセサリーペプチドはそれぞれ、独立して、化学的クロスリンクによってまたは融合タンパク質の形で、本発明のペプチドまたはペプチド模倣物に加えることができる。融合タンパク質では、ペプチド部分のそれぞれの間に非構造ポリペプチドリンカーを含めてもよい。
【0109】
内部移行ペプチドは一般的に、ポリペプチドの直接排出にとっても十分であろう。しかし、RGD配列のような特定のアクセサリーペプチドを用いる場合、その宿主細胞から融合タンパク質を直接排出するために分泌型のシグナル配列を含める必要がある可能性がある。分泌型シグナル配列は、N末端最後尾に存在してもよく、そして(選択的に)分泌シグナルと融合タンパク質の残りとの間にタンパク質溶解部位が隣接してもよい。特定の場合において、本発明のペプチドの一部として核転位シグナルを含めることが望ましい可能性がある。
【0110】
本発明のペプチドを含む融合ポリペプチドの産生において、様々なペプチドドメインの適切な折り畳みを確実に行うために、非構造リンカーを含める必要がある可能性がある。多くの合成および天然のリンカー、例えば(GlySer)リンカー)が当技術分野で既知であり、本発明において用いられるように適合させることができる。
【0111】
ペプチド模倣物を、L−アミノ酸をD−アミノ酸に系統的に置換することによって、側鎖を異なる電子特性を有する置換基に置換すること、およびペプチド結合をアミド結合に系統的に置換することによって得られる情報に基づいて設計してもよい。候補となるペプチド模倣物の活性に関するコンフォメーション要件を決定するために、局所コンフォメーション拘束も同様に導入することができる。模倣物は、逆折り返しコンフォメーションを安定化または促進するため、および分子の安定化に役立つように、等配電子アミド結合、またはD−アミノ酸を含んでもよい。環状アミノ酸類似体を用いて、アミノ酸残基を特定のコンフォメーション状態に拘束してもよい。模倣物はまた、阻害剤ペプチド二次構造の模倣物を含みうる。これらの構造は、アミノ酸残基の三次元方向をタンパク質の既知の二次コンフォメーションに形成することができる。N置換アミノ酸のオリゴマーであるペプトイドも同様に用いてもよく、これらは新規分子の化学的に多様なライブラリを作製するためのモチーフとして用いることができる。
【0112】
本発明のペプチドを、生物学的発現系を用いて開発してもよい。そのような系を用いることによって、ランダムペプチド配列の大きいライブラリを作製して、特定のタンパク質に結合するペプチド配列に関してこれらのライブラリをスクリーニングすることができる。ライブラリは、ランダムペプチド配列をコードする合成DNAを適当な発現ベクターにクローニングすることによって作製してもよい(Christianら、1992、J. Mol. Biol. 227:711;Devlinら、1990、Science 249:404;Cwirlaら、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378を参照のこと)。ライブラリはまた、重なり合うペプチドの同時合成によって構築してもよい(米国特許第4,708,871号を参照のこと)。
【0113】
本発明は、ペプチド模倣物、すなわち、ペプチドおよびタンパク質に基づくまたは由来する化合物を考慮する。本発明のペプチド模倣物は典型的に、非天然アミノ酸、構造的拘束、等配電子置換等を用いる既知のPHIタンパク質配列の構造的改変によって得ることができる。ペプチド模倣物は、ペプチドと非ペプチド合成構造の間に連続的な構造的空間を構成する;したがって、本発明のペプチド模倣物はファーマコフォアの輪郭を描くために、そしてペプチドを親PHIペプチドの活性を有する非ペプチド化合物に翻訳する際に役立てるために有用となる可能性がある。
【0114】
その上、本発明のペプチドのミメトープ(mimetopes)を提供することができる。そのようなペプチド模倣物は、非加水分解性(例えば、対応するペプチドを分解するプロテアーゼまたは他の生理的条件に対する安定性の増加)、特異性および/または強度の増加、およびペプチド模倣物を細胞内に局在させるための細胞の透過性の増加のような属性を有しうる。本発明のペプチド類似体は、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidingerら、「ペプチド:化学と生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G.R. Marshall編、ESCOM Publisher;Leiden、Netherlands、1988を参照のこと)、置換γラクタム環(Garveyら、「ペプチド:化学と生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G.R. Marshall編、ESCOM Publisher;Leiden、Netherlands、1988、123頁)、C−7模倣物(Huffmanら、「ペプチド:化学と生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G.R. Marshall編、ESCOM Publisher;Leiden、Netherlands、1988、105頁)、ケトメチレンシュードペプチド(Ewensonら(1986)、J. Med. Chem. 29:295;およびEwensonら、「ペプチド:構造と機能(Peptides:Structure and Function)」、第9回全米ペプチドシンポジウム抄録、Pierce Chemical Co.、Rockland、IL、1985)、β−ターンジペプチドコア(Nagaiら(1985)、Tetrahedron. Lett. 26:647;およびSatoら(1986)、J. Chem. Soc. Perkin Trans 1:1231)、α−アミノアルコール(Gordonetら(1985)、Biochem. Biophys. Res. Commun 126:419;およびDannら、(1986)、Biochem. Biophys. Res. Commun 134:71)、ジアミノケトン(Natarajanら(1984)、Biochem. Biophys. Res. Commun 124:141)、およびメチレンアミノ改変(Roarkら、「ペプチド:化学と生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G.R. Marshall編、ESCOM Publisher;Leiden、Netherlands、1988、134頁)を用いて作製することができる(一般的には、「ペプチド:化学と生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、G.R. Marshall編、ESCOM Publisher;Leiden、Netherlands、1988年の第III章:分析と合成法を参照のこと)。
【0115】
ペプチド模倣物を作製するために実行することができる多様な側鎖置換の他に、本発明は特に、ペプチド二次構造のコンフォメーションが拘束された模倣物を用いることを考慮する。ペプチドのアミド結合の代わりに多くの代用物が開発されている。例としてのアミド結合代用物には、以下の群が含まれる(i)トランスオレフィン、(ii)フルオロアルケン、(iii)メチレンアミノ、(iv)ホスホンアミド、および(v)スルホンアミド。ペプチド模倣物はまた、PHIペプチドの骨格のより実質的な改変に基づくことができる。この範疇に入るペプチド模倣物には(i)レトロ−インバーソ(retro−inverso)類似体、および(ii)N−アルキルグリシン類似体(いわゆるペプトイド)が含まれる。
【0116】
バーディン(Verdine)らの国際公開公報第9948897号と比較して、コンビナトリアルケミストリー法はまた、新しいペプチド模倣物の開発に生かしてもよい。例えば、広範囲のペプチド結合置換体を含むペプチド類似体のライブラリのランダムな作製に重点を置くいわゆる「ペプチド形成(peptide morphing)」戦略を用いてもよい。
【0117】
もう一つのクラスのペプチド模倣物誘導体には、ホスホネート誘導体が含まれる。そのようなホスホネート誘導体の合成は、当業者によって既知の方法から適合させることができる(例えば、Lootsら、「ペプチド:化学と生物学(Peptides:Chemistry and Biology)」、ESCOM Science Publishers;Leiden、1988、118頁);Petrilloら、「ペプチド:構造と機能(Peptides:Structure and Function)」、第9回全米ペプチドシンポジウム抄録、Pierce Chemical Co、Rockland、IL、1985を参照のこと)。
【0118】
他の多くのペプチド模倣物構造が当技術分野において既知であり、本発明において用いられるように容易に適合させることができる。本発明のペプチド模倣物は、1−アザビシクロ[4.3.0]ノナン代用体(Kimら、(1997)、J. Org. Chem. 62:2847)、N−アシルピペラジン酸(Xiら、(1998)、J. Am. Chem. Soc. 120:80)、または2置換ピペラジン部分(Williamsら、(1996)、J. Med. Chem. 39:1345〜1348)を拘束されたアミノ酸類似体として組み入れてもよい。特定のアミノ酸残基を、アリールもしくはビアリール部分、例えば単環式もしくは二環式芳香核もしくはヘテロ芳香核、または二芳香核、芳香核−ヘテロ芳香核、もしくは二ヘテロ芳香核に置換してもよい。
【0119】
本発明のペプチド模倣物を、例えば、ハイスループットスクリーニングと組み合わせた組み合わせ合成技術によって最適にすることができる。
【0120】
本発明にはまた、融合タンパク質を作製するために、選択されたタンパク質またはマーカータンパク質(下記参照)と結合させた本発明のPHIタンパク質またはペプチドが含まれる。さらに、本発明のPHIタンパク質またはペプチドの免疫原性部分も本発明の範囲に含まれる。
【0121】
本発明のタンパク質またはペプチドを、組み換えDNA方法を用いて調製してもよい。従って、本発明のタンパク質またはペプチドをコードする配列を有する本発明の核酸分子を、既知の方法で、タンパク質を確実に良好に発現させる適当な発現ベクターに組み入れてもよい。可能性がある発現ベクターには、用いる宿主細胞とベクターが適合性である限り、コスミド、プラスミド、または改変ウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が含まれるがこれらに限定されない。ヒトの人工染色体(HACs)を用いて、プラスミドに含まれ、発現されることができるより大きい断片のDNAを輸送してもよい。
【0122】
したがって、本発明は、本発明の核酸分子と、挿入されたタンパク質配列の転写および翻訳のために必要な調節配列とを含む本発明の組み換え型発現ベクターを考慮する。適した調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳類、または昆虫遺伝子を含む多様な起源に由来してもよい[例えば、ゴエッデル(Goeddel)の「遺伝子発現技術(Gene Exppression Technology)」、Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)を参照のこと]。適当な調節配列の選択は、下記に考察するように選択した宿主細胞に依存し、当業者によって容易に行われるであろう。必要な調節配列は、本来のタンパク質および/またはその隣接領域によって供給されてもよい。
【0123】
本発明はさらに、発現ベクターにおいてアンチセンス方向にクローニングされた本発明のDNA核酸分子を含む組み換え型発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、DNA分子の転写によって本発明のタンパク質またはその断片の核酸配列に対してアンチセンスであるRNA分子を発現させるように、調節配列に結合している。多様な細胞型においてアンチセンスDNA分子の連続的な発現を指示するアンチセンス核酸に結合した調節配列、例えばウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択することができ、またはアンチセンスRNAの組織もしくは細胞型特異的発現を指示する調節配列を選択することができる。
【0124】
本発明の組み換え型発現ベクターはまた、本発明の組み換え型分子によって形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞の選択を促進するマーカー遺伝子を含んでもよい。マーカー遺伝子の例は、特定の薬物に対する抵抗性を付与するG418およびハイグロマイシンのようなタンパク質、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、または免疫グロブリン、好ましくはIgGのFc部分のような免疫グロブリンもしくはその一部をコードする遺伝子である。マーカーを、関係する核酸から異なるベクターに導入することができる。
【0125】
組み換え型発現ベクターはまた、組み換え型タンパク質の発現の増加;組み換え型タンパク質の溶解度の増加;およびアフィニティ精製におけるリガンドとして作用することによって標的組み換え型タンパク質の精製に役立つことを提供する融合部分をコードする遺伝子を含んでもよい。例えば、タンパク質溶解切断部位を標的組み換え型タンパク質に加えて、組み換え型タンパク質を融合部分から分離させて、その後の融合タンパク質を精製してもよい。典型的な融合発現ベクターには、ヒスチジンタグを有するpET(Novagen)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAをそれぞれ組み換え型タンパク質に融合させるpGEX(Amrad Corp.、Melbourne、Australia)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、MA)、およびpRIT5(Pharmacia、Piscataway、New Jersey)が含まれる。
【0126】
組み換え型発現ベクターを宿主細胞に導入して、形質転換宿主細胞を生じてもよい。「形質転換宿主細胞」には、本発明の組み換え型発現ベクターによって形質転換またはトランスフェクトされている宿主細胞が含まれる。「形質転換される」、「トランスフェクトされる」、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、多くの標準的な技術の一つによって細胞に核酸(例えば、ベクター)を導入することを含む。原核細胞は、例えば、エレクトロポレーションまたは塩化カルシウム媒介形質転換によって核酸によって形質転換することができる。核酸は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、またはマイクロインジェクションのような従来の技術によって哺乳類細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換およびトランスフェクトする適した方法は、サムブルック(Sambrook)ら(「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)、および他の研究所のテキストに見ることができる。
【0127】
適した宿主細胞には、幅広い原核細胞および真核宿主細胞が含まれる。例えば、本発明のタンパク質は、大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを用いる)、酵母細胞、または哺乳類細胞において発現させてもよい。他の適した宿主細胞は、ゴエッデル(Goeddel)の「遺伝子発現技術(Gene Expression Technology)」、Methods in Enzymology 185、アカデミック出版(Academic Press)、サンジエゴ(San Diego)、CA(1991)に見ることができる。
【0128】
挿入された核酸配列の発現を調節する、またはタンパク質を所望のように改変する(例えば、グリコシル化もしくはリン酸化)および処置する(例えば、切断する)宿主細胞を同様に選択してもよい。タンパク質の翻訳後プロセシングおよび改変のための特異的および特徴的な機構を有する宿主系または細胞株を選択してもよい。例えば、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、およびWI38を含む真核宿主細胞を用いてもよい。タンパク質の長期にわたって高い収率で安定な発現を得るために、遺伝子産物を安定に発現する細胞株および宿主系を操作してもよい。
【0129】
本発明に記載の方法を用いて産生された宿主細胞および特に細胞株は、PHIタンパク質の活性を調節する化合物をスクリーニングして評価するために特に有用である可能性がある。
【0130】
PHIタンパク質は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ミニブタ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ヒト以外の霊長類(例えば、ヒヒ、サル、およびチンパンジー)を含むがこれらに限定されない非ヒトトランスジェニック動物において発現させてもよい[Hammerら、(Nature 315:680〜683、1985)、Palmiterら、(Science 222:809〜814、1983)、Brinsterら、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438〜4442、1985)、PalmiterおよびBrinster、(Cell 41:343〜345、1985)、ならびに米国特許第4,736,866号を参照のこと]。当技術分野で既知の方法を用いて、PHIタンパク質をコードする本発明の核酸分子を動物に導入して、トランスジェニック動物の創始動物を作製してもよい。そのような技法には、前核マイクロインジェクション、生殖系列へのレトロウイルス媒介遺伝子移入、胚性幹細胞への遺伝子ターゲティング、胚のエレクトロポレーション、および精子媒介遺伝子移入が含まれる。
【0131】
本発明は、その全ての細胞にphip遺伝子を有するトランスジェニック動物、および全てではないがいくつかの細胞に導入遺伝子を有する動物を考慮する。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、またはコンカテマーにおいて組み入れられてもよい。導入遺伝子を、特定の細胞型に選択的に導入して活性化させてもよい(例えば、Laskoら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6236を参照のこと)。導入遺伝子を、遺伝子ターゲティングによって内因性の遺伝子の染色体部位に組み入れてもよい。導入遺伝子は、特定の細胞型に選択的に導入して、その細胞型において内因性の遺伝子を不活化してもよい(Guら、Science 265:103〜106を参照のこと)。
【0132】
トランスジェニック動物における組み換え型PHIタンパク質の発現を、標準的な技術を用いてアッセイしてもよい。導入遺伝子が組み入れられているか否かを分析するために、サザンブロット分析またはPCR法によって初回スクリーニングを行ってもよい。トランスジェニック動物の組織におけるmRNA発現レベルも同様に、組織試料のノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーション、およびRT−PCRを含む技術を用いて評価してもよい。組織はまた、PHIタンパク質に対する抗体を用いて免疫組織化学的に評価されてもよい。
【0133】
本発明のタンパク質またはペプチドはまた、固相合成(Merrifield、1964、J. Am. Chem. Assoc, 85:2149〜2154)または均一溶液中での合成(Houbenweyl、1987、「有機化学の方法(Methods of Organic Chemistry)」、E. Wansch編、第15巻IおよびII、Thieme、Stuttgart)のようなタンパク質化学において周知の技術を用いる化学合成によって調製してもよい。
【0134】
タンパク質のような他の分子と結合させた本発明のタンパク質またはペプチドを含むN末端またはC末端融合タンパク質を、組み換え技法によってタンパク質またはペプチドのN末端またはC末端と、所望の生物機能を有する選択されたタンパク質またはマーカータンパク質の配列とを融合させることによって調製してもよい。得られた融合タンパク質は、本明細書記載の選択されたタンパク質またはマーカータンパク質に融合させたタンパク質またはペプチドを含む。融合タンパク質を調製するために用いてもよいタンパク質の例には、免疫グロブリン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、血液凝集素(HA)、および切断型mycが含まれる。
【0135】
4. 本発明の複合体
本発明の複合体は、PHIタンパク質またはその結合領域と、結合パートナーとを含む。結合パートナーには、PHドメイン含有タンパク質、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体、およびPHIタンパク質またはその結合領域と相互作用するSTAT転写因子またはその結合領域が含まれる。本発明の局面において、(a)PHIタンパク質もしくはPHドメイン結合領域と、PHドメイン含有タンパク質もしくはPHドメイン;(b)PHIタンパク質もしくはIR結合領域と、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体もしくはその結合領域;または(c)PHIタンパク質もしくはSTAT結合領域と、STAT転写因子もしくはPHIタンパク質と相互作用するその結合領域、とを含む複合体が提供される。複合体は、相互作用分子の領域と、複合体の活性を維持するために必要であるその他の隣接配列のみを含んでもよい。生理的条件において、複合体における相互作用分子は、複合体における他の分子との安定な非共有結合的相互作用を形成することができる。
【0136】
5. 抗体
本発明のPHIタンパク質、ペプチド、または複合体を、タンパク質、ペプチド、または複合体に特異的な抗体を調製するために用いることができる。本発明は、無傷のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、およびその免疫活性断片(例えば、Fab、(Fab)断片、またはFab発現ライブラリ断片、およびそのエピトープ結合断片)、抗体重鎖および抗体軽鎖、ヒト化抗体、遺伝子操作された一本鎖Fv分子(Ladnerら、米国特許第4,946,778号)、またはキメラ抗体、例えばマウス抗体の結合特異性を含むが、残りの部分はヒト起源である抗体を用いることができる。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、断片ならびにキメラを含む抗体は、当業者に既知の方法を用いて調製してもよい。
【0137】
PHIタンパク質の非保存領域において明確なエピトープを認識する抗体を調製することができる。タンパク質の非保存領域は、他のタンパク質と実質的な配列相同性を有しない領域である。十分に特徴が調べられたドメインのような保存領域からの領域も同様に、PHIタンパク質の保存領域に対する抗体を調製するために用いることができる。PHIタンパク質に対する特異性を有する抗体も同様に、本明細書に記載されたように細菌において融合タンパク質を発現させることによって作製された融合タンパク質から作製してもよい。一つの態様において、本発明の複合体においてPHIタンパク質または分子の結合領域に対して特異的な抗体を調製する。
【0138】
複合体またはそのエピトープを特異的に認識することができる、特に、複合体の相互作用分子のいずれかの上でのエピトープ、特に分子が複合体とは離れて存在する場合に、抗体によって認識されないであろう特定のエピトープを特異的に認識することができる抗体を作製してもよい。抗体は、本発明の複合体の形成を妨害することができてもよく、下記のように、相互作用分子(例えば、PHIタンパク質またはその結合領域、PHドメインまたはPHドメイン含有タンパク質)と複合体を形成することができる分子を含む障害を治療するために投与してもよい。
【0139】
本発明のPHIタンパク質または複合体に特異的な抗体は、組織におけるPHIタンパク質または複合体を検出するため、およびその組織分布を決定するために用いてもよい。本発明の抗体を用いるインビトロおよびインサイチュー検出方法を用いて、本発明のPHIタンパク質または複合体に関連した増殖および/または分化障害を含むがこれらに限定しないPHIタンパク質、本発明の複合体、またはシグナル伝達経路を含む病態または疾患の予後および/または診断的評価に役立ててもよい。いくつかの遺伝子疾患は、本発明の複合体において相互作用分子の結合ドメイン領域で変異を含んでもよい。したがって、本発明の複合体が遺伝子障害に関係していれば、変異がドメインの一つに含まれるか否かを迅速にチェックするために、PCRを用いて、結合領域からDNAを増幅してもよい。ドメインの隣接する領域に対応するプライマーを作製して、標準的なシークエンシング方法を用いて変異が存在するか否かを決定することができる。この方法は、罹患遺伝子の染色体マッピングを予め必要とせず、欠損タンパク質をコードする完全な遺伝子のシークエンシングを不必要にすることによって時間を節約することができる。
【0140】
6. 適応
本発明の核酸分子、PHIタンパク質、抗体、ペプチド、複合体化合物、物質および薬剤は、PHIタンパク質、本発明の複合体、もしくはその個々の成分、またはシグナル伝達経路(例えば、癌またはインスリン反応に関連した障害)によって媒介される病態および疾患の予後的および診断的な評価、ならびにそのような病態または疾患に対する素因を有する被験者の同定において用いられうる(下記の6.1.1および6.1.2項を参照のこと)。本発明の核酸分子とPHIタンパク質とを検出する方法を用いて、PHIタンパク質とPHIタンパク質をコードする核酸分子とを検出することによって疾患および病態をモニターすることができる。同様に、本明細書記載の方法を用いて、PHIタンパク質の発達的発現を調べてもよいこと、したがって、PHIタンパク質の役割に関するさらなる洞察を提供するであろうことは、当業者に明らかとなるであろう。本発明の適応にはまた、本発明のPHIPをコードする核酸分子、PHIタンパク質、ペプチド、複合体、もしくはその成分の生物活性を調節する、またはシグナル伝達経路(例えば、IGF−Rシグナル伝達経路)を媒介する化合物を同定するための方法が含まれる(6.2項)。化合物、抗体等はPHIタンパク質、本発明の複合体、またはシグナル伝達経路(例えば、癌またはインスリン反応に関連した障害)によって媒介される疾患および病態を治療するために用いてもよい(6.3項)。
【0141】
6.1 診断方法
PHIタンパク質、本発明の複合体、もしくはその個々の成分、またはシグナル伝達経路(例えば、癌またはインスリン反応に関連した障害)によって媒介される疾患および病態を診断的および予後的に評価するために、そしてそのような疾患および病態に対して素因を有する被験者を特定するために多様な方法を用いることができる。そのような方法は、例えば、本発明の核酸分子およびその断片、ならびに本発明のペプチド断片または複合体を含むPHIタンパク質に対して作製された抗体を利用してもよい。特に、核酸および抗体を、例えば(1)PHIP変異の有無を検出するため、非障害状態と比較してPHIP mRNAの過剰発現もしくは過小発現のいずれかを検出するため、または特定の病態もしくはそのような病態に対する感受性と相関する可能性があるPHIP転写物のもう一つのスプライシング型を定性的もしくは定量的に検出するため;および(2)非障害状態に関連したPHIタンパク質の過剰量もしくは過小量のいずれかの検出、または障害状態もしくは障害状態への進行に相関する改変された(例えば、完全長未満)PHIタンパク質の有無を検出するため、に用いてもよい。
【0142】
本明細書記載の方法は、患者をスクリーニングして診断するために、そして障害を発症する素因を示す患者を同定するために、例えば臨床の状況で簡便に用いられる可能性がある本明細書記載の少なくとも一つの核酸分子または抗体を含む予めパッケージングされた診断キットを利用することによって行ってもよい。
【0143】
核酸に基づく検出技術は下記の第6.1.1項に記載する。ペプチド検出技術は下記の第6.1.2項に記載する。本発明の方法を用いて分析してもよい試料には、phipを発現するまたはPHIタンパク質を含むことがわかっているまたは疑われる試料が含まれる。試料は、患者または細胞培養に由来してもよく、体液、組織抽出物、新しく採取した細胞、および細胞培養においてインキュベートした細胞溶解物が含まれるがこれらに限定されない。
【0144】
本発明の任意の核酸分子に由来するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイの標的として用いてもよい。マイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルを同時にモニターして、遺伝子変種、変異、および多型を同定するために用いることができる。マイクロアレイからの情報は、遺伝子機能を決定するため、障害の遺伝的基礎を理解するため、障害を診断するため、および治療薬を開発してその活性をモニターするために用いてもよい。
【0145】
マイクロアレイの調製、用途、および分析は、当業者に周知である。(例えば、Brennan, T.M.ら、1995、米国特許第5,474,796号;Schenaら、(1996)、Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614〜10619;Baldeschweilerら、(1995)、国際公開公報第95/251116号;シャロン(Shalon, D.)ら、(1995)、国際公開公報第95/35505号;Heller, R.A.ら、(1997)、Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150〜2155;およびHeller, M.J.ら、(1997)、米国特許第5,605,662号を参照のこと)。
【0146】
6.1.1 本発明の核酸分子を検出する方法
本発明の核酸分子によって、当業者は本発明の核酸分子を試料中で検出するために用いられるヌクレオチドプローブを構築することができる。適したプローブには、PHIタンパク質の領域から少なくとも5個の連続したアミノ酸をコードする核酸配列に基づく核酸分子が含まれ、好ましくはプローブは15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドプローブを、32P、H、14C等のような、適当なシグナルを提供して十分な半減期を有する放射活性標識のような検出可能な物質によって標識してもよい。用いてもよいその他の検出可能な物質には、特異的標識抗体によって認識される抗原、蛍光化合物、酵素、標識抗原に特異的な抗体、発光化合物が含まれる。適当な標識は、ハイブリダイゼーション速度および検出されるヌクレオチドに対するプローブの結合およびハイブリダイゼーションに利用できるヌクレオチドの量を考慮して選択されてもよい。標識したプローブを、サムブルック(Sambrook)ら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(第二版)に一般的に記載されるように、ニトロセルロースフィルターまたはナイロンメンブレンのような固相支持体上で核酸とハイブリダイズさせてもよい。核酸プローブを、好ましくはヒト細胞においてPHIタンパク質をコードする遺伝子を検出するために用いてもよい。核酸プローブはまた、癌の診断において、PHIタンパク質、本発明の複合体、またはシグナル伝達経路(例えば、癌またはインスリン反応に関連した障害)によって媒介される疾患および病態の進行をモニターするため、または治療的治療をモニターするために有用となる可能性がある。
【0147】
プローブは、PHIタンパク質をコードする遺伝子を検出するためにハイブリダイゼーション技術において用いてもよい。技術は一般的に、核酸における相補的配列に対するプローブの特異的アニーリングに都合がよい条件で、患者の試料または他の細胞起源から得た核酸(例えば、組み換え型DNA分子、クローニングした遺伝子)を本発明のプローブに接触させて、インキュベートする段階を含む。インキュベーション後、アニーリングしていない核酸を除去して、プローブとハイブリダイズした核酸がもし存在すれば、それを検出する。
【0148】
本発明の核酸分子の検出は、PCRのような増幅方法を用いて特異的遺伝子配列を増幅した後に、増幅された分子を当業者に既知の技術を用いて分析することを含んでもよい。適したプライマーは、当業者によって日常的に設計することができる。
【0149】
ゲノムDNAは、点突然変異、挿入、欠失、および染色体再配列を含むphip構造を含む異常を検出するために生体試料のハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて用いてもよい。例えば、直接シークエンシング、一本鎖構造多型分析、ヘテロ二本鎖分析、変性勾配ゲル電気泳動、化学的ミスマッチ切断、およびオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを用いてもよい。
【0150】
当業者に既知の遺伝子タイピング技術を用いて、phip遺伝子における変異に近位に存在する多型を分類することができる。多型を用いて、変異を有する可能性がある家系における個人を同定してもよい。多型が、phip遺伝子における変異と連鎖不平衡を示す場合、これを用いて変異を有する可能性がある一般集団における個体をスクリーニングすることができる。用いてもよい多型には、制限断片長多型(RFLP)、一塩基多型、および単純配列反復多型(SSLP)が含まれる。
【0151】
本発明のプローブを、RFLPを直接同定するために用いてもよい。本発明のプローブまたはプライマーは、さらに、YAC、BAC、PAC、コスミド、ファージまたはプラスミドのようなゲノムクローンを単離するために用いることができる。クローンにおけるDNAは、ハイブリダイゼーションまたはシークエンシング技法を用いてSSLPに関してスクリーニングすることができる。
【0152】
本明細書記載のハイブリダイゼーションおよび増幅技術を用いて、phip発現の定性的および定量的局面をアッセイしてもよい。例えば、phipを発現することがわかっている細胞型または組織からRNAを単離して、ハイブリダイゼーション(例えば、標準的なノーザン分析)または本明細書において言及したPCR技術を利用して調べてもよい。これらの技術を用いて、正常または異常な選択的スプライシングによる可能性がある転写物の大きさの差を検出してもよい。技術はまた、疾患または病態(例えば、癌またはインスリン反応に関連した障害)の症状を示す個体と比較して正常な個体において検出された完全長および/または選択的スプライシング転写物のレベルの定量的な差を検出するために用いられてもよい。
【0153】
プライマーおよびプローブを、上記の方法においてインサイチューで用いてもよい、すなわち生検または切除によって得られた患者組織の組織切片(固定および/または凍結)上で直接用いてもよい。
【0154】
6.1.2 PHI タンパク質を検出する方法
酵素結合体または標識誘導体のようなPHIタンパク質または誘導体と特異的に反応する抗体を、様々な試料(例えば、生体材料)においてPHIタンパク質を検出するために用いてもよい。それらは診断または予後的試薬として用いてもよく、そしてそれらを用いて、PHIタンパク質発現レベルの異常、PHIタンパク質の構造、および/または時間的、組織、細胞、または細胞内位置の異常を検出してもよい。抗体はまた、PHIタンパク質、本発明の複合体、またはシグナル伝達経路(例えば、癌またはインスリン反応に関連した障害)によって媒介される疾患および病態、ならびに他の病態に対するその影響を調べるために、インビトロで可能性がある治療化合物をスクリーニングするために用いてもよい。インビトロイムノアッセイも同様に、特定の治療の有効性をモニターするために用いてもよい。本発明の抗体をまた、PHIタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞においてphip発現レベルを決定するためにインビトロで用いてもよい。
【0155】
抗体を、PHIタンパク質と抗体の抗原決定基との結合相互作用に依存する任意の既知のイムノアッセイにおいて用いられうる。そのようなアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えば、ELISA)、免疫蛍光、免疫沈降、ラテックス凝集、血液凝集素、および組織化学試験である。抗体は、特定の細胞事象または病的状態におけるその役割を決定するために、ならびにそのような病的状態を診断および治療するために、試料中のPHIタンパク質を検出して定量するために用いてもよい。
【0156】
特に、本発明の抗体を、例えば、PHIタンパク質を検出するために、それを特定の細胞、組織、および特異的細胞内位置に特定するために、ならびに発現レベルを定量するために、細胞および細胞内レベルで免疫組織化学分析において用いてもよい。
【0157】
光学顕微鏡と電子顕微鏡とを用いて抗原の位置を特定するための当技術分野で既知の細胞化学技術を用いて、PHIタンパク質を検出してもよい。一般的に、本発明の抗体を、検出可能な物質によって標識してもよく、PHIタンパク質を、検出可能な物質の存在に基づいて組織および細胞に位置特定してもよい。例えば、検出可能な物質には、以下が含まれるがこれらに限定されない:放射性同位元素(例えば、H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン)、ルミノールのような発光標識;酵素的標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、ビオチン分子団(標識したアビジン、例えば光学的または比色法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジンによって検出することができる)、二次レポーターによって認識される既定のタンパク質エピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの態様において、標識は、可能性がある立体障害を減少させるために、様々な長さのスペーサーアームを通して結合する。抗体はまた、電子顕微鏡によって容易に可視化されるフェリチンまたは金コロイドのような電子密度の高い物質にカップリングさせてもよい。
【0158】
抗体または試料を、細胞を固定することができる担体または固相支持体、抗体等に固定してもよい。例えば、担体または支持体はニトロセルロース、またはガラス、ポリアクリルアミド、斑れい岩、および磁鉄鉱であってもよい。支持体材料は、球状(例えば、ビーズ)、円柱状(試験管または壁の内表面、棹の外表面)、または平板(例えば、シート、試験片)を含む任意の可能性な形状でありうる。一次抗原抗体反応を、PHIタンパク質に対して反応する抗体に対する特異性を有する二次抗体の導入によって増幅する間接法も同様に用いてもよい。例として、PHIタンパク質に対して特異性を有する抗体がウサギにIgG抗体である場合、二次抗体は、本明細書に記載されるように検出可能な物質によって標識したヤギ抗ウサギγグロブリンであってもよい。
【0159】
放射活性標識を検出可能な物質として用いる場合、PHIタンパク質をオートラジオグラフィーによって位置特定してもよい。オートラジオグラフィーの結果は、様々な光学的方法によって、または粒子を計数することによって、オートラジオグラフにおける粒子密度を決定することによって定量されうる。
【0160】
6.2 物質 化合物を同定または評価するための方法
本明細書記載の方法は、PHIタンパク質と相互作用もしくは結合する物質、またはPHIタンパク質と相互作用する他のタンパク質と相互作用もしくは結合する物質、複合体におけるPHIタンパク質もしくは相互作用分子の相互作用を妨害もしくは増強する化合物、およびPHIタンパク質もしくはPHIタンパク質と相互作用する他のタンパク質に結合する物質を含む、PHIタンパク質の生物学的活性を調節する物質をスクリーニングするために設計される。phip調節配列に結合する化合物を同定する方法も同様に用いられる。
【0161】
本発明の方法を用いて同定される物質および化合物には、Igテール融合ペプチドを含む可溶性ペプチドのようなペプチド、ランダムペプチドライブラリおよびD−立体配置アミノ酸および/またはL−立体配置アミノ酸、多糖類、オリゴ糖、単糖類、ホスホペプチドで構成されるコンビナトリアルケミストリー由来分子ライブラリのメンバー(ランダムまたは部分的縮重メンバー、定方向ホスホペプチドライブラリメンバーを含む)、抗体[例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、一本鎖抗体、断片(例えば、Fab、F(ab)、およびFab発現ライブラリ断片、ならびにそのエピトープ結合断片)]、ならびに有機または無機低分子が含まれるがこれらに限定されない。物質もしくは化合物は、内因性の生理的化合物であってもよく、または天然もしくは合成化合物であってもよい。
【0162】
物質を、PHIタンパク質またはその結合領域との相互作用能または結合能に基づいてスクリーニングすることができる。したがって、本発明はまた、PHIタンパク質と相互作用または結合する物質を同定するための方法を提供する。本発明の方法を用いて同定された物質を、従来の技術を用いて単離、クローニング、およびシークエンシングしてもよい。本発明のタンパク質と相互作用する物質はPHIタンパク質の生物学的または免疫学的活性のアゴニストまたはアンタゴニストであってもよい。
【0163】
PHIタンパク質と相互作用または結合することができる物質を、PHIタンパク質またはその結合領域を、PHIタンパク質または結合領域とおそらく相互作用または結合する試験物質と、物質−PHIタンパク質または結合領域複合体の形成を可能にする条件で反応させること、および複合体を除去および/または検出することによって同定してもよい。複合体を、PHIタンパク質もしくは結合領域複合体、遊離の物質、または複合体を形成していないPHIタンパク質もしくは結合領域に関してアッセイすることによって検出することができる。物質−PHIタンパク質または結合領域複合体の形成を可能にする条件を、物質とタンパク質の特性および量のような要因を考慮して選択してもよい。
【0164】
物質−タンパク質もしくは結合領域複合体、遊離の物質、または複合体を形成していないタンパク質もしくは結合領域を、従来の単離技術、例えば、塩析、クロマトグラフィー、電気泳動、ゲル濾過、分画、吸収、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、凝集、またはその組み合わせによって単離してもよい。成分のアッセイを容易にするために、PHIタンパク質もしくはその結合領域、または物質に対する抗体、または標識したPHIタンパク質もしくは結合領域、または標識物質を利用してもよい。抗体、タンパク質、または物質を、上記のような検出可能な物質によって標識してもよい。
【0165】
本発明の方法において用いられるPHIタンパク質、結合領域または物質は、不溶化されうる。例えば、PHIタンパク質、結合領域、または物質を、アガロース、セルロース、デキストラン、セファデックス、セファロース、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、濾紙、イオン交換樹脂、プラスチックフィルム、プラスチック管、ガラスビーズ、ポリアミン−メチルビニル−エーテルマレイン酸コポリマー、アミノ酸コポリマー、エチレン−マレイン酸コポリマー、ナイロン、絹等のような適した担体に結合させてもよい。担体は、例えば、管、試験平板、ビーズ、円板、球等の形であってもよい。不溶化タンパク質、結合領域、または物質を、既知の化学的または物理的方法、例えば、臭化シアンカップリングを用いて適した不溶性担体と材料とを反応させることによって調製してもよい。
【0166】
そのような相互作用によって形成された複合体がシグナル伝達経路の一部である、PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用に化合物が影響を及ぼすか否かを調べることによって、シグナル伝達経路における異常を特徴とする疾患または病態を薬剤が治療できるか否かを調べることができるスクリーニングを行うことが可能である。
【0167】
PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用は、PHIタンパク質もしくは結合パートナーの産生を増加させることによって、PHIタンパク質もしくは結合パートナーの発現を増加させることによって、または相互作用の期間を持続させることによって、促進もしくは増加させてもよい。PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用は、PHIタンパク質もしくは結合パートナーの産生を妨害することによって、PHIタンパク質もしくは結合パートナーの発現を妨害することによって、PHIタンパク質と結合パートナーの相互作用を妨害することによって、または相互作用を干渉することによって、破壊もしくは減少されうる。方法にはまた、シグナル伝達レベルおよびPHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用レベルを含む様々な特性を測定または検出する段階が含まれてもよい。存在する相互作用のタイプに応じて、様々な方法を用いて相互作用レベルを測定してもよい。例えば、共有結合の強度は、特定の数の結合を切断するために必要なエネルギーに関して測定されうる。非共有結合相互作用は、上記のように説明され、相互作用分子間の距離に関して記述されてもよい。間接的相互作用は、関係する中間物質の数、結合パートナーに対して行われた対照と比較してPHIタンパク質に対して行われた対照の程度を含む異なる方法で説明されてもよい。
【0168】
本発明はまた、PHIタンパク質またはその結合領域(例えば、PHドメイン結合領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域)と、PHIタンパク質またはその結合領域(例えば、PHドメイン含有タンパク質、PHドメイン、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体、またはSTAT転写因子を含むがこれらに限定されない結合パートナー)と相互作用または結合する物質との相互作用または結合のアゴニストまたはアンタゴニストに関してアッセイすることによってスクリーニングする方法も考慮する。化合物が、PHIタンパク質もしくはその結合領域とタンパク質に結合する物質との相互作用または結合のアゴニストまたはアンタゴニストであるか否かを評価する基本方法は、試験化合物の存在下で物質−PHIタンパク質または結合領域複合体の形成を可能にする条件で、PHIタンパク質またはその結合領域と物質とを含む反応混合物を調製することである。試験化合物は、最初に混合物に加えてもよく、またはPHIタンパク質もしくは結合領域と物質とを加えた後に加えてもよい。試験化合物を含まないまたはプラセボを含む対照反応混合物も同様に調製する。複合体の形成を検出して、対照反応には複合体が形成されるが反応混合物には形成されなければ、または反応混合物と比較して対照反応においてより多く複合体が形成されれば、試験化合物がPHIタンパク質または結合領域と物質との相互作用を干渉することを示している。反応は、液相で行ってもよく、またはPHIタンパク質、結合領域、物質、もしくは試験化合物は本明細書記載のように固定してもよい。化合物が本発明のPHIタンパク質または複合体の生物活性を調節できるか否かは、当技術分野で既知の技術を用いて細胞または生物に及ぼす生物作用を決定することによって調べてもよい。
【0169】
本発明の方法を用いてアッセイすることができるアゴニストおよびアンタゴニストは、アゴニスト結合部位、競合的アンタゴニスト結合部位、非競合的アンタゴニスト結合領域またはアロステリック部位を含むPHIタンパク質または物質上の一つまたは複数の結合領域において作用する可能性があると理解される。
【0170】
本発明はまた、PHIタンパク質またはその結合領域と、PHIタンパク質またはその結合領域に結合することができる物質との相互作用のアゴニストの作用を阻害するアンタゴニストに関してスクリーニングすることができる。このように、本発明は、PHIタンパク質の同じ結合部位に関して競合する化合物に関してアッセイするために用いてもよい。
【0171】
本発明はまた、PHIタンパク質と相互作用するタンパク質に結合する化合物を同定する方法を考慮する。タンパク質−タンパク質相互作用を、同時免疫沈降、クロスリンク、および勾配またはクロマトグラフィーカラムによる同時精製のような従来の方法を用いて同定してもよい。また、PHIタンパク質と相互作用するタンパク質をコードする遺伝子の同時同定が得られる方法を用いてもよい。これらの方法には、標識したPHIタンパク質によって発現ライブラリをプロービングすることが含まれる。さらに、X線結晶学研究を、物質とPHIタンパク質との相互作用を評価する手段として用いてもよい。例えば、本発明の複合体における精製組み換え型分子は、適した形で結晶化するとX線結晶学によって分子内相互作用を検出されやすくなる。分光法も同様に用いて相互作用を検出してもよく、特にQ−TOF機器を用いてもよい。2ハイブリッド系も同様に、インビボでタンパク質相互作用を検出するために用いてもよい。
【0172】
融合タンパク質は上記の方法において用いてもよいと認識されるであろう。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼに融合したPHIタンパク質を方法において用いてもよい。
【0173】
同様に、本発明の複合体は組み換え型分子を用いてインビトロで再構成してもよく、試験物質の効果を再構成された系において評価してもよいと認識されるであろう。
【0174】
PHIタンパク質を調節する化合物を評価するために本発明の方法を適用するために適した試薬を、適した容器にパッケージングした必要な材料を提供する簡便なキットにパッケージングしてもよい。キットには同様に、本発明の方法を行うために有用な適した支持体が含まれてもよい。
【0175】
本発明のペプチドは、薬物開発のためのリード化合物を同定するために用いてもよい。本発明のペプチドの構造は、NMRまたはX線結晶学のような多くの方法によって容易に決定することができる。配列が類似であるが、標的分子においてそれらが誘発する生物活性が異なるペプチドの構造の比較は、標的の構造活性相関に関する情報を提供しうる。構造活性相関を調べて得られた情報を用いて、改変ペプチド、他の低分子、またはリード化合物のいずれかを設計することができ、それらを標的分子に関して予想される特性に関して調べることができる。
【0176】
構造活性相関に関する情報も同様に、共結晶化研究から得られうる。これらの研究において、標的分子に関連して所望の活性を有するペプチドを結晶化して、複合体のX線構造を決定する。次に、構造をその本来の状態で標的分子の構造と比較することができ、そのような比較からの情報を用いて、所望の活性を有すると予想される化合物を設計してもよい。
【0177】
本発明の局面において、PHIタンパク質、結合パートナー、または結合領域の三次元構造を決定する段階、およびPHIタンパク質、結合パートナー、または結合領域に対して結合することができる低分子またはペプチドを提供する段階を含む、PHIタンパク質、結合パートナー、またはPHIタンパク質もしくは結合パートナーの結合領域を用いて低分子模倣物、アゴニスト、またはアンタゴニストを設計する方法が提供される。当業者は、PHIタンパク質、結合パートナー、または結合領域の作用を模倣して、容易に細胞に入ることができる低分子またはペプチドを産生することができるであろう。分子が同定されれば、分子を、PHIタンパク質、結合パートナー、または結合領域との結合能に関してアッセイすることができる。相互作用の強度を、アミノ酸欠失、付加、もしくは置換体を作製することによって、または官能基を付加、欠失、もしくは置換することによって、最適にしてもよい。付加、欠失、または改変を、無作為に作製してもよく、またはPHIタンパク質、結合パートナー、もしくは結合領域の大きさ、形状、および三次元構造に関する知識に基づいて作製してもよい。
【0178】
当技術分野で既知のコンピューターモデリング技術も同様に、PHIタンパク質もしくはその結合領域、または本発明の方法に従って同定された薬剤、物質もしくは化合物と、相互作用分子もしくは結合パートナー(例えば、IRSタンパク質ファミリーメンバー、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体、またはSTAT転写因子もしくはその結合領域)との相互作用を観察するために用いてもよい。(例えば、Bio Sym/ Molecular Simulations、San Diego、California、USAから市販されているHomology Insight II & Discoveryを、モデリングのために用いてもよい)。コンピューターモデリングが強い相互作用を示せば、薬剤、物質、化合物またはペプチドを合成して、PHIタンパク質またはその結合領域と、相互作用する分子または結合パートナーとの結合を妨害できるか否かを調べることができる。
【0179】
6.3 組成物および処理
本発明のPHIタンパク質、ペプチド、および複合体、本発明に記載の方法によって同定された物質または化合物、本発明の抗体、ならびにアンチセンス核酸分子を、PHIタンパク質、本発明の複合体、複合体の個々の成分、またはシグナル伝達経路の生物活性を調節するために用いてもよく、それらをPHIタンパク質、本発明の複合体、複合体の個々の成分、またはシグナル伝達経路によって媒介される疾患および病態の予後的および診断的評価において用いてもよい。
【0180】
PHIPは、遺伝子発現および分裂促進、転写反応、DNA合成、アクチンリモデリング、およびグルコース輸送体転位に及ぼすインスリンの影響を増強する。DN PHIP変異体は、インスリン媒介転写反応およびDNA合成を完全に遮断する。DN PHIPのこの阻害作用は、インスリン受容体ファミリーに対して非常に特異的である。特に血清刺激転写および分裂促進反応は、DN PHIPの効果に対して不応性である。このように、PHIPは、インスリン反応に関連した病態または障害に治療的介入を行うための有用な標的である。
【0181】
このように、本発明のタンパク質、ペプチド、もしくは複合体、または本明細書記載の方法によって同定された物質もしくは化合物、本発明の抗体、およびアンチセンス核酸分子を、インスリン反応に関連した障害を予防または治療するために被験者に投与してもよい。これらの障害の例には、2型(インスリン非依存型)真性糖尿病、高血糖症、筋緊張性ジストロフィー、黒色表皮症、網膜症、腎症、アテローム性冠動脈疾患および末梢動脈疾患、ならびに末梢性および自律性ニューロパシーが含まれるがこれらに限定されない。
【0182】
本発明のタンパク質、ペプチド、もしくは複合体、または本明細書記載の方法によって同定された物質もしくは化合物、本発明の抗体、およびアンチセンス核酸分子を、癌を予防または治療するために被験者に投与してもよい。予防または治療される可能性がある癌には、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、および奇形癌、そして特に副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、子宮頚部、膀胱、神経節、胃腸管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、および子宮の癌、好ましくは乳癌、前立腺癌、結腸癌、および卵巣癌が含まれるがこれらに限定されない。特に、本発明に従って予防または治療される可能性がある癌は、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体に依存する腫瘍、好ましくはIGF−1媒介癌である。
【0183】
本発明のタンパク質、ペプチド、もしくは複合体、または本明細書に記載される方法によって同定された物質、薬剤、もしくは化合物、本発明の抗体、およびアンチセンス核酸分子も同様に、感染疾患、自己免疫疾患、免疫欠損疾患、および炎症を含む他の病態を治療または予防するために有用となる可能性がある。
【0184】
一つの局面に従って、PHIタンパク質に結合する抗体を、アンタゴニストとして直接、またはPHIタンパク質を発現する細胞または組織に薬物を運ぶためのターゲティングまたは輸送機構として間接的に用いてもよい。もう一つの局面において、本発明のペプチド、またはPHIタンパク質をコードする核酸分子の相補体を発現するベクター、すなわちアンチセンスオリゴヌクレオチドを、癌を治療または予防するために被験者に投与してもよい。
【0185】
本発明の複合体における分子間の相互作用の破壊または促進も同様に、治療技法において有用である。したがって、本発明は、PHIタンパク質またはその結合領域と結合パートナーとの相互作用を含むシグナル伝達経路における異常を特徴とする病態を有する被験者を治療する方法を特徴とする。この方法の態様において、相互作用は、PHIタンパク質もしくはPHドメイン結合領域とPHドメイン含有タンパク質もしくはPHドメイン;PHIタンパク質もしくはIR結合領域と、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体;またはPHIタンパク質もしくはSTAT結合領域と、STAT転写因子もしくはPHIタンパク質と相互作用するその結合領域を含む。
【0186】
異常とは、本発明の複合体における相互作用分子間の相互作用の異常なレベルを特徴とする。異常は、シグナルの過剰な量、強度、もしくは期間、またはシグナルの過小な量、強度、もしくは期間を特徴としてもよい。シグナル伝達における異常は、細胞機能、生存率、または分化状態における異常として認識されうる。方法は、インビボでの相互作用(またはシグナル)、または本発明の複合体の活性の破壊または促進を含む。本発明の複合体を含むシグナル伝達経路における異常を特徴とする疾患または病態を治療するために有用な化合物を、複合体における分子間の相互作用に化合物が影響を及ぼす(すなわち、破壊または促進する)か否かを調べることによって同定することができる。化合物は、PHIタンパク質の産生を増加させることによって、PHドメインの発現を増加させることによって、または複合体における分子の相互作用を促進することによって、相互作用を促進してもよい。化合物は、PHIタンパク質の産生を減少させることによって、PHドメインの発現を予防することによって、または複合体における分子の相互作用を特異的に予防することによって、相互作用を破壊してもよい。
【0187】
本発明の一つの態様において、本発明のPHIタンパク質、ペプチド、および複合体、本明細書記載の方法によって同定された物質、薬剤、または化合物、本発明の抗体、ならびにアンチセンス核酸分子を用いて、IGFRシグナル伝達経路を調節する。IGF−1は、IGFR、受容体チロシンキナーゼの刺激を通して細胞プロセスに多面発現性の影響を及ぼす。活性化されたIGF−1/IGFR系は、様々な細胞型において分裂促進、トランスフォーム、および抗アポトーシス特性を示す。IGFRシグナル伝達系の調節障害は、乳腺、結腸、前立腺、精巣、および卵巣の癌の発症および転移性播種に関与することが判明した。IGF−1Rの抗アポトーシス作用も同様に、化学療法剤に対する感受性の減少を媒介する可能性がある。
【0188】
したがって、本発明は、本発明のPHIタンパク質、ペプチド、複合体、薬剤、抗体、物質、または化合物、好ましくは本発明のペプチド、最も好ましくはPHドメイン結合領域を含むまたは本質的にそれからなるペプチドを、IGFRの腫瘍形成特性を減少させるために、またはIGF−1媒介形質転換を減少もしくは阻害するために有効な量で投与する段階を含む、被験者における腫瘍細胞の増殖および転移を予防および治療する方法を提供する。
【0189】
本発明のもう一つの局面において、PHIタンパク質をコードする核酸分子の相補体を発現するベクター、すなわちアンチセンスオリゴヌクレオチドを、IGFRの腫瘍形成特性を減少させることによって、またはIGF−1媒介形質転換を減少もしくは阻害することによって、腫瘍細胞の増殖および転移を治療または予防するために有効な量で被験者に投与してもよい。
【0190】
本発明のさらにもう一つの局面において、本発明のPHIタンパク質、ペプチド、複合体、または核酸分子、好ましくは本発明のペプチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効量を投与する段階を含む、被験者における前アポトーシス物質に対する腫瘍細胞の感受性を増加させる方法が提供される。有効量とは、前アポトーシス物質に対するIGF−IRの前アポトーシス作用を減少させるために必要な量である。前アポトーシス物質の例には、タキソール、ドキソルビシン、エトポシド、シスプラチン、ビンブラスチン、メソトレキセート、5’フルオロウラシル、カンプトテシン、ミトキサントン、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、およびパクリタキセルが含まれる。
【0191】
本発明のタンパク質、本明細書記載の方法によって同定されたペプチド、複合体、物質または化合物、本発明の抗体およびアンチセンス核酸分子は、他の適当な治療物質と組み合わせて投与されうる(上記の前アポトーシス薬物に関する考察を参照のこと)。併用治療において用いるために適当な物質を、従来の薬学的原理に基づいて当業者によって選択することができる。薬物の併用は、本明細書記載の病態の治療および予防を行うために相乗的に作用する可能性がある。併用治療を行うと、各薬剤のより低用量で治療の有効性が得られ、それによって、可能性がある有害な副作用を減少させることを可能にしうる。
【0192】
タンパク質、物質、抗体、複合体、ペプチド、薬剤、抗体、および化合物を、そのまま被験者に投与することができ、またはそれらはインビボでの投与に適した生物学的に適合する型で被験者に投与するための薬学的組成物に製剤化することができる。「インビボでの投与に適した生物学的に適合する型」とは、如何なる毒性作用よりも治療効果が勝る、投与される活性物質の型を意味する。本発明の薬学的組成物の治療的活性量の投与は、所望の結果を得るために必要な用量および期間で有効である量として定義される。例えば、物質の治療的活性量は、個人の疾患状態、年齢、性別、および体重、そして抗体が個人において所望の反応を誘発できるか否かのような要因に従って変化してもよい。用量レジメを、最適な治療反応が得られるように調節してもよい。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または用量は、治療状態の緊急性によって示されるようにそれに合わせて減少させてもよい。
【0193】
薬学的組成物または組成物に含まれる活性物質を、ヒトおよび動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、およびサル)を含む被験者に投与してもよい。好ましくは、それらはヒトおよび獣医学での患者に投与される。
【0194】
活性物質を、注射(皮下、静脈内等)、経口投与、吸入、経皮適用、または直腸投与のような簡便な方法で投与してもよい。投与経路に応じて、活性物質は、物質を不活化する可能性がある酵素、酸、および他の天然条件の作用から物質を保護するために材料においてコーティングされうる。
【0195】
本明細書記載の組成物は、活性物質の有効量が薬学的に許容される溶媒との混合物において組み合わせられるように、薬学的に許容される組成物の調製に関する本質的に既知の方法によって調製することができる。適した溶媒は、例えば、「レミントンの製薬化学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Mack Publishing Company、Easton、PA、USA、1985)に記載されている。これに基づいて、組成物には、排他的ではないが、一つまたは複数の薬学的に許容される媒体または希釈剤に関連した活性成分の溶液が含まれ、組成物は適したpHを有し、生理的液体と等張である緩衝液中に含まれる。
【0196】
レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、もしくはワクシニアウイルス、パポバウイルス、アデノ随伴ウイルスに由来するベクター、トリ、マウスもしくはヒト起源のベクター、または様々な細菌プラスミドからのベクターを用いて、本発明の核酸分子を標的臓器または細胞集団に輸送してもよい。当技術分野で周知の方法を用いて、本発明の核酸分子(例えば、PHIPをコードする核酸分子、PHドメイン結合領域、またはアンチセンス核酸分子)を発現する組み換え型ベクターを構築してもよい(例えば、Sambrookら(上記)およびAusubelら(上記)に記載の技術を参照のこと)。
【0197】
完全長のcDNA配列および/またはその調節エレメントを含む核酸分子によって、当業者は、遺伝子機能のセンス調節(Youssoufian HおよびH F Lodish、1993、Mol Cell Biol 13:98〜104)、またはアンチセンス調節(Eguchiら(1991)、Annu Rev Biochem 60:631〜652)における試験ツールとしてPHIタンパク質をコードする配列を用いることができる。そのような技術は当技術分野で周知であり、センスオリゴマーもしくはアンチセンスオリゴマー、またはより大きい断片を、コード領域または制御領域に沿って様々な位置から設計することができる。
【0198】
PHIタンパク質をコードする遺伝子を、本発明の所望の核酸分子の高いレベルを発現するベクターを細胞または組織にトランスフェクトすることによって、オフに切り替えることができる。そのような構築物は、翻訳されないセンス配列またはアンチセンス配列によって細胞を充満させることができる。DNAに組み入れられなくとも、そのようなベクターは、全てのコピーが内因性のヌクレアーゼによって無能となるまでRNA分子を転写し続ける可能性がある。遺伝子発現の改変は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の調節領域、すなわち、プロモーター、エンハンサー、およびイントロンに対してアンチセンスである分子、DNA、RNA、またはPNAを設計することによって達成することができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、転写開始部位、例えばリーダー配列の−10〜+10領域の間に由来する。アンチセンス分子はまた、それらが転写物がリボソームに結合しないように妨害することによってmRNAの翻訳を遮断するように設計されうる。また「三重らせん」塩基対形成方法論を用いても阻害が達成されうる。三重らせん塩基対形成によって、二重らせんはポリメラーゼ、転写因子、または調節分子が結合するために十分に開くことができない。三重DNAの治療的用途は、ジー(Gee)J Eら(Huber BEおよびB I Carr(1994)「分子的免疫学的アプローチ(Molecular and Immunologic Approaches)」、Futura Publishing Co.、Mt Kisco、NY)によって論評されている。
【0199】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒する酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAとリボザイム分子とが配列特異的にハイブリダイズして、その後エンドヌクレオチド分解による切断を行うことによって作用する。したがって、本発明は本発明のタンパク質をコードする配列のエンドヌクレオチド分解による切断を特異的かつ効率よく触媒することができる操作されたハンマーヘッドモチーフリボザイム分子を考慮する。
【0200】
RNA標的内の特異的リボザイム切断部位を、以下の配列を含むリボザイム切断部位に関して標的分子をスキャンすることによって当初同定してもよい:GUA、GUU、およびGUC。部位が同定されたら、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15リボヌクレオチド〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチドを操作不能にする可能性がある二次構造特徴に関して評価してもよい。候補標的の適切性はまた、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対する到達度を調べることによって決定されうる。
【0201】
ベクターを細胞または組織に導入する方法には、本明細書に記載し、そしてインビボ、インビトロ、およびエクスビボの治療にとって適した方法が含まれる。本発明のベクターは、本発明のPHIタンパク質または複合体が欠損している、または存在しないことを特徴とする遺伝子状態を修正するために被験者に投与してもよい。被験者の細胞集団も同様に、タンパク質または複合体の活性を調節するために、本発明のPHIタンパク質、その結合領域、または複合体の改変型を導入することによって改変してもよい。細胞において本発明のPHIタンパク質または複合体を阻害すれば、シグナル伝達経路事象を減少、阻害、または逆転させて、病態または疾患に至る可能性がある。PHIタンパク質の他の分子との相互作用能を保持するがシグナル伝達におけるその機能を保持することができないPHIタンパク質の欠失またはミスセンス変異体を用いて、異常な、有害なシグナル伝達経路事象を阻害してもよい。
【0202】
本発明は、そのような技術を行うための細胞株およびトランスジェニックマウス(すなわち、ノックアウトマウス)を含む、PHIタンパク質関連遺伝子治療および遺伝子移入技術を行うための産物および方法を考慮する。トランスフェクトされた系列、ベクター、および標的の選択を、マウスモデルにおいて確認してもよい。
【0203】
エクスビボ治療に関して、患者から得て、同じ患者への自己移植のためにクローン的に増殖させた細胞に、ベクターを導入してもよい(例えば、米国特許第5,399,493号および第5,437,994号)。トランスフェクションおよびリポソームによる輸送は当技術分野で周知である。したがって、本発明は動物からの細胞を除去する段階、細胞に核酸分子を形質導入する段階、および形質導入した細胞を動物に再度移植する段階を含む、本発明の核酸分子を被験者に投与する方法を考慮する。
【0204】
本発明はまた、静脈内注射、筋肉内注射、または核酸分子のカテーテル挿入による直接輸送からなる方法の群から選択される、核酸分子を被験者に直接投与する段階を含む、インビボアプローチを用いて本発明の核酸分子を投与する方法を提供する。核酸は、ヒトタンパク質またはペプチドをコードしてもよく、核酸が投与される被験者はヒトであってもよい。核酸を裸のDNAとして投与してもよく、またはウイルスベクターに含めてもよい。核酸分子を、ウイルスベクターを生じるパッケージング細胞を投与することを含む二成分系で投与してもよい。パッケージング細胞をインビトロで細胞に投与してもよい。
【0205】
本発明の核酸分子をまた、新しい技術がトリプレット遺伝コードおよび特異的塩基対相互作用のような特性を含むがこれらに限定されないような現在知られているヌクレオチド配列の特性に依存する限り、まだ開発されていない分子生物学技術において用いてもよい。
【0206】
本発明はまた、本発明のタンパク質の機能を調べるための方法を提供する。本発明の核酸分子または遺伝子の発現を欠損する、または発現を部分的に欠損する細胞、組織、またはヒト以外の動物を、遺伝子に特異的欠失または挿入変異を有する本発明の組み換え型発現ベクターを用いて開発してもよい。組み換え型発現ベクターを用いて、相同的組み換えによって内因性遺伝子を不活化または変化させて、それによって欠損細胞、組織、または動物を作製してもよい。
【0207】
ヌル対立遺伝子を、胚性幹細胞のような細胞における欠失変異によって作製してもよい。組み換え型遺伝子も同様に、遺伝子を不活化させる挿入変異を含むように操作してもよい。次に、そのような構築物を、トランスフェクション、エレクトロポレーション、インジェクション等の技術によって胚性幹細胞のような細胞に導入してもよい。次に、無傷の遺伝子を欠損する細胞を、例えばサザンブロッティング、ノーザンブロッティングによって、または本明細書記載の方法を用いてコードされたタンパク質の発現に関するアッセイによって、同定してもよい。次に、そのような細胞を胚性幹細胞と融合させて、本発明のタンパク質を欠損する非ヒトトランスジェニック動物を作製してもよい。変異の生殖系列伝幡は、例えば胚性幹細胞を8細胞胚のような初期胚とインビトロで凝集させる段階、得られた胚盤胞をレシピエント雌性動物に移入する段階、および得られた凝集キメラの生殖系列伝幡を作製する段階によって行われうる。そのような変異体動物を用いて、通常遺伝子発現に依存する特異的細胞集団、発達パターン、およびインビボプロセスを明確にしてもよい。
【0208】
本発明はこのように、その生殖細胞と体細胞の全てがPHIタンパク質をコードする遺伝子を不活化または変化させる組み換え型発現ベクターを含む、非ヒトトランスジェニック動物を提供する。一つの態様において、本発明は、その生殖細胞と体細胞の全てがPHIタンパク質をコードする遺伝子を不活化または変化させて、その結果PHIタンパク質関連病態を引き起こす組み換え型発現ベクターを含む、非ヒトトランスジェニック動物を提供する。さらに、本発明は本発明のPHIタンパク質を発現しない非ヒトトランスジェニック哺乳類を提供する。一つの態様において、本発明は、本発明のPHIタンパク質を発現せず、その結果PHIタンパク質関連病態を引き起こす非ヒトトランスジェニック哺乳類を提供する。PHIタンパク質関連病態は、PHIタンパク質ホモ接合またはヘテロ接合変異体について認められた表現型を意味する。
【0209】
非ヒトトランスジェニック動物には、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、イヌ、ネコ、ヤギ、およびサル、好ましくはマウスが含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
本発明はまた、以下を含む、PHIタンパク質関連病態を減少させるまたは阻害する薬剤に関して調べるためのモデル系を提供する非ヒトトランスジェニック動物アッセイを提供する:
(a)本発明の非ヒトトランスジェニック動物に薬剤を投与する段階;および
(b)上記の薬剤が、物質を投与していない段階(a)の非ヒトトランスジェニック動物と比較して、非ヒトトランスジェニック動物において病態(例えば、PHIタンパク質関連病態)を減少させるまたは阻害するか否かを決定する段階。
【0211】
薬剤は、本明細書において考察するように、癌またはインスリン反応に関連した障害のような病態の治療および予防において有用でありうる。薬剤はまた、本明細書に記載された薬学的組成物に組み入れられうる。
【0212】
本発明のタンパク質、ペプチド、複合体、物質、薬剤、化合物、抗体、核酸分子、薬剤、および組成物の活性を、動物実験モデル系において確認してもよい。治療的有効性および毒性は、ED50(集団の50%において治療的に有効な用量)、またはLD50(集団の50%において致死となる用量)統計値を計算することによるような、細胞培養または実験動物を用いた標準的な薬学的技法によって決定してもよい。治療指数は、治療効果対毒性効果の用量比であり、ED50/LD50の比として表記することができる。大きい治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。
【0213】
以下の非制限的な実施例は本発明を例示するものである。
【0214】
実施例1
材料と方法:
抗体:
細菌のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)−PHIP融合タンパク質に対する抗PHIP抗体を作製した(38)。抗IRS−1PCT(アミノ酸16個のプレC末端ポリペプチド配列に対して作製)を、アップステートバイオテクノロジーインク(Upstate Biotechnology Inc.、UBI)から購入した。モノクローナル抗HA(12CA5)および抗myc(9E10)抗体は、バブコ(Bubco)およびサンタクルズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology)からそれぞれ得た。抗CAT抗体およびBrdUに対するマウス抗体は、5プライム−3プライムインク(5 prime−3 prime Inc.)およびシグマ社(Sigma)からそれぞれ購入した。ローダミン結合ファロイジンは、モレキュラープローブ社(Molecular Probes)から得た。抗トランスフェリン受容体はザイメッド社(Zymed)から購入する。
【0215】
細胞成分分画(subcellular fractionation)アッセイ:
10 cm皿において増殖させたCOS−7細胞(条件ごとに皿4枚ずつ)を、リン酸カルシウム法を用いて、HA−PHIPをコードするpCGNプラスミドまたは空ベクター対照で一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞から血清を12時間〜18時間枯渇させ、非処理のまま、またはインスリン100 nMによって5分間処理した。次に、細胞分画をわずかに改変を加えた先述の方法で調製した(27)。技法は全て、0℃〜4℃で行った。簡単に説明すると、細胞を洗浄して、20 mMトリス塩酸、pH 7.5、1mM EDTA、255 mMショ糖、1mM PMSF、10 mM NaF、100 μM NaVO、1mM NaPPi、10 μg/mlアプロチニン、および10 μg/mlロイペプチンを含む氷冷緩衝液Aにおいてモーター駆動性のテフロン/ガラスホモジナイザーを20回作動させてホモジナイズした。ホモジネートを16,000×gで20分間遠心分離した。上清を48,000×gで1時間遠心分離し、続いて250,000×gで遠心分離して低密度膜(LDM)ペレットを高密度膜(HDM)から精製した。最終的なLDMペレットを、熱2×SDS試料緩衝液に再懸濁した。250,000×gの遠心段階由来の上清を、5%Tween80で予め1時間ブロッキングして水で十分に洗浄し、微量の任意の洗浄剤を除去したUFV2BGC40フィルター装置(Millipore)を用いて濃縮した。免疫沈降およびイムノブロッティングを行った(38)。
【0216】
レポーター遺伝子アッセイ:
COS細胞を、1試料あたり3個ずつ5X SRE−fosルシフェラーゼレポーター遺伝子(5X SRE−LUC)および表記のプラスミドで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞の血清を16時間枯渇させた。血清枯渇細胞を、非処理のままか、またはMek−1阻害剤(50 μM、NEB)によって2時間処理した。細胞をインスリン(0.2 μM、Sigma)の存在下または非存在下で10時間インキュベートした。次に、細胞溶解物(Roche)においてルシフェラーゼ活性を分析して、タンパク質濃度を標準化した。
【0217】
マイクロインジェクションアッセイ:
グリッド付のカバーガラス上に播種しかつ血清を30時間枯渇させた、インスリン受容体(NIH/IR)を過剰発現するRat−1またはNIH/3T3細胞に、表記のプラスミドを5X SRE−CATレポーター遺伝子の存在下または非存在下でマイクロインジェクションした。レポーターアッセイに関して、注入の2時間後、細胞を0.5 μMインスリンまたは血清(20%)によって表示のように処理して、5時間インキュベートしてから固定した。分裂促進アッセイに関して、注入の3時間後、細胞を10 μM BrdU(Roche)によって処理した後、0.5 μMインスリンまたは20%血清のいずれかを加えた。細胞を36時間インキュベートしてから固定した。次に、抗CAT抗体および抗BrdU抗体を用いてレポーター遺伝子発現またはDNA合成レベルをそれぞれ分析した。
【0218】
GLUT4myc転位アッセイ:
L6GLUT4myc安定細胞株を、既に記載されているように作製した(49〜51)。カバーガラス上で増殖している細胞を、エフェクテンプロトコールマニュアル(Qiagen)に従って、表記の構築物でトランスフェクトした。トランスフェクションの43時間後、培養培地中の細胞から血清を枯渇させ、非処理のままか、または100 nMインスリンによって20分間処理した。cDNA構築物の発現およびGLUT4myc転位に関する間接的免疫蛍光を、既に記述されているように無傷の細胞について行った(53)。少なくとも三つの異なる実験のいくつかの代表的な画像を、NIH(米国国立衛生研究所)画像ソフトウェアを用いて定量した。GLUT4myc転位に関する未加工データは、非トランスフェクト細胞における表面GLUT4mycの基礎レベルと比較した刺激倍数として表記した。統計分析を、分散分析によって行った(フィッシャー、多重比較)。
【0219】
アクチンの標識:
カバーガラス上で増殖しているL6GLUT4myc細胞を、非処理のままか、または100 nMインスリンによって10分間処理した後、血清を枯渇させた。細胞を氷冷PBS(100 mM NaCl、1mM CaCl、1mM MgCl、50 mM NaHPO/NaHPO、pH 7.4)によってすすいでから、3%パラホルムアルデヒドのPBS溶液によって30分間固定した(4℃で5分間によって開始し、直ちに室温まで移行させた)。技法の残りは室温で行った。次に、細胞をPBSによって1回洗浄し、未反応の固定液を100 nMグリシンのPBS溶液によって10分間失活させた。透過性にした細胞(0.1%TritonX−100のPBS溶液中で3分間)をPBSによって速やかに洗浄して、5%ヤギ血清のPBS溶液によって10分間ブロックした。繊維状アクチンを検出するために、細胞を暗所でローダミン結合ファロイジンと共に1時間インキュベートした。すすいだカバーガラスをLeicaTCS 4D蛍光顕微鏡に載せて分析した(Leica Microscope Systeme GmbH、Wetslar、Germany)。
【0220】
結果:
IRS−1 PHドメインの機能的パートナーを同定する試みで、ラットIRS−1由来のPHドメインをおとりとして用いてマウスの10.5日胚cDNAライブラリをスクリーニングする、酵母のツーハイブリッドスクリーニングを用いた(5)。IRS−1 PHドメインと最も強い相互作用を示したcDNAクローンVP1.32の配列分析によって、201アミノ酸のオープンリーディングフレームが明らかとなった。次に、VP1.32を用いて、ヒト胎児脳およびマウス胸腺cDNAライブラリをスクリーニングして(7)ヒトおよびマウスのPHIP(hPHIPおよびmPHIP)の完全なコード領域をそれぞれ得た。構造上の翻訳により、相対分子量104 kDaの902アミノ酸のタンパク質が予測される(図1A)。
【0221】
PHIタンパク質は、如何なる既知のタンパク質とも配列相同性を有しない。IRS−1 PH結合領域(PBR)はタンパク質のアミノ末端に存在する(残基5位〜209位)。それらが有する唯一の既知の構造モチーフは、分子の中心に縦列に存在する2つのブロモドメイン、すなわちBD1(残基230位〜345位)およびBD2(387位〜503位)である(図1B)。ブロモドメインは、タンパク質−タンパク質相互作用を媒介することが提唱されている約100アミノ酸の保存配列である(8)。相同性検索によって、PHIP BD配列が、転写共活性化因子であるマウスCBP(CREB結合タンパク質)のブロモドメインと最も相同である(同一性44%、相同性61%)ことが判明した(9)。成体マウス組織由来のPHIP mRNAのノーザンブロット分析は、その発現が広範囲に存在する大きさ約7.0 kbの転写物を検出した。
【0222】
細菌のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)−PHIP融合タンパク質に対して作製した抗体(Abs)によるウェスタンブロット分析は、免疫前血清によって沈殿されないU266細胞溶解物由来の104 kDタンパク質を同定した(図2A)。哺乳類細胞抽出物におけるPHIP発現のさらなる分析によって、二つの型のPHIタンパク質、長い104 kD型と短い97 kD型が存在することが判明した(図2B)。双方の部位を含む完全長のhPHIPの異所発現によって、PHIPイムノブロットにおいて二重線が得られたことから、97 kDと104 kDのポリペプチドは、おそらく、二つの推定の転写開始部位(Met 1およびMet 41、図1を参照のこと)を交互に利用した結果によるものである。
【0223】
インビトロでのPHIPとIRS−1 PHドメインとの相互作用を再現して、PHドメイン結合の特異性を評価するために、酵母クローンVP1.32から単離した残基8位〜209位を含むGST−PHIPを用いて、IRS−1由来の、ならびに無関係なシグナル伝達タンパク質mSos1(Rasヌクレオチド交換剤)、Ect−2(Rho/Rac交換剤)およびRasGAP(GTPase活性化タンパク質)由来のPHドメインの血液凝集素抗原(HA)タグ誘導体を発現する酵母細胞溶解物をプロービングした(12)。相互作用タンパク質を、抗HA Absによるウェスタンブロッティングによって分析した(図2C)。GST−PHIPはIRS−1 PHドメインに結合したが、他のタンパク質のPHドメインと明確な関連はなく、このことはPHIPがIRS−1 PHドメインの特異的リガンドとして機能する可能性があることを示唆している。
【0224】
次に、機能的PHドメインまたはドメイン内のより小さいモチーフがPHIP結合に関与するか否かを調べるために、本発明者らは、PHの結合を破壊するIRS−1 PHドメインの独立した三つの変異体を作製した:PHNTはIRS−1 PHドメインの最初の半分を含みかつ残基3位〜67位に及び;PHCTは、C末端残基55位〜133位を含み;PHW106Aは、全てのPHドメインにおいて保存されている残基である106位のトリプトファンがアラニンに変換されている変異体を定義する。予想されるように、COS−1細胞において一過的に発現された三つすべてのPHドメイン変異体は、GST−PHIPに対して検出可能に会合せず、無傷のPHドメインがPHIP結合にとって必要であるという考え方と一致した(図2D)。
【0225】
インビボでPHIPとIRS−1の相互作用を調べるために、NIH/IR細胞(インスリン受容体を過剰発現するNIH3T3細胞)からの溶解物をIRS−1のC末端に対して作製された抗IRS−1 Absと共に免疫沈降させた。内因性のPHIPは、非刺激細胞およびインスリン処理細胞の双方においてIRS−1に会合することが判明した(図2E、レーン1および2)。対照的に、IRS−1 PHドメインに対して作製された抗体を類似の共免疫沈降アッセイにおいて用いると、相互作用は検出されず、IRS−1のPHドメイン内の構造決定因子がPHIPに対する結合を付与することが確認された。PHIPはまた、抗IRS−2免疫沈降物においても検出され(図2E、レーン7)、IRS−1およびIRS−2のPHドメインがIRによる基質認識の促進において機能的に互換性であることが示されたという知見と一致する(4)。このように、PHIPは、活性化IR複合体に対するIRSタンパク質ファミリーのメンバーを動員するために保存された機能を有する可能性がある。PHIP/IRS−1 PH相互作用の調節に及ぼすインスリン結合の影響を評価するために、PHIP PH結合領域(PBR)に対する抗体を、インスリン刺激によって誘導されたこの領域におけるコンフォメーションの変化を測定するための間接的なスコアとして用いた。PHIP/IRS−1免疫複合体は、免疫沈降アッセイにおいてPHIP Absを用いてインスリン処理細胞に限って認められた(図2F)。これらの結果は、PHIP PBR領域とIRS−1タンパク質が細胞において安定に会合しているにもかかわらず、PHIP領域とIRS−1 PHドメインとの接触面はインスリンによって調節されることを示している。これは、インスリン刺激の際に認められたPHIP PBR−IRS−1 PH界面での構造的変化が、IRS−1 PTBとリン酸化されたインスリン受容体との相互作用に影響を及ぼす可能性があることを示している。この考え方に一致して、IRS−1 PHドメインをアドレナリン受容体キナーゼおよびホスホリパーゼCからの異種PHドメインに置換すると、リン酸化されたNPEYペプチドに対する縦列のPTBドメインの結合が損なわれる(4)。
【0226】
PHIP配列には可能性があるチロシンリン酸化部位がいくつか存在することから、インビボでPHIPがIRの基質として機能するか否かを調べた。PHIPの抗ホスホチロシンイムノブロットは、PHIPの任意の識別可能なIR調節リン酸化も示さなかった(図2F)。しかし、PHIPは、顕著な103 kDリンタンパク質(すなわち、STAT3)に誘導的に会合した。
【0227】
IRによって媒介される初期のシグナル伝達事象の一つは、MAPキナーゼの活性化である(14)。その上、多くの細胞において、IRS−1細胞は、インスリン刺激の際のMAPキナーゼ活性化の上流メディエータであることが示されている。IRS−1媒介MAPキナーゼ活性化に及ぼすPHIPの作用を評価するために、IRS−1 PHドメインに関して内因性のPHIPと競合することによって主に阻害的に機能すると予測されている、IRS−1 PHIP PBR領域(残基8位〜209位)のみをコードする血液凝集素抗原(HA)タグPHIP構築物を用いた。実際、異所発現されたドミナントネガティブPHIP(DN−PHIP)は、非処理およびインスリン刺激された細胞溶解物の双方において内因性のIRS−1に結合する(図4A、パネル3)。COS細胞に、DN−PHIPおよびHAタグp44MAPKを同時トランスフェクトして、血清枯渇させてインスリン刺激を行った細胞溶解物からの抗HA免疫複合体をミエリン塩基性タンパク質(MBP)基質を用いてインビトロキナーゼアッセイを行った。図4Dに示すように、インスリン刺激MAPキナーゼ活性化は、DN−PHIP発現によって基礎レベルまで減少した。予想されるように、SHCリン酸化は、DN−PHIPの作用に対して反応しないままで、これらの細胞において、PHIP/IRS−1シグナル伝達経路がインスリン刺激の際のMAPキナーゼ活性化を促進するために必須であることを示唆している。インスリン媒介転写反応においてPHIPの関与を評価するために、ヒトc−fosプロモーター(15)由来の血清反応性要素(SRE)5コピーを含む合成レポーターである5X SRE−LUCからの転写の誘導能を調べた。COS−1細胞に5X SRE−LUCレポーター遺伝子および増加量のhPHIPを一過的にトランスフェクトすると、非処理細胞における転写の基礎レベルが用量依存的に増加し、これはインスリンに対する反応によってさらに増強された(図3A)。PHIP改変遺伝子発現の下流のエフェクターとしてのMAPキナーゼ経路の相対的重要性を調べるために、Mek1阻害剤であるPD98059を用いてMAPキナーゼ活性化を阻害した(17)。PD98059に対するリガンド依存的PHIP SRE−LUCトランス活性化の完全な感受性は、MAPキナーゼカスケードがインスリン刺激PHIP転写反応の重要な成分であることを示唆している。
【0228】
PHIPのインスリン反応増強能にIRS−1 PH結合が必要であるか否かを決定するために、PHIP刺激SRE−LUCトランス活性化に及ぼすN末端IRS−1 PHドメイン(IRS−RH)を過剰発現する効果を評価した。IRS−PHの発現が増加すると、PHIPシグナルが進行的に遮断され、このことは、PHIPとIRS−1間のPHドメイン指示相互作用がPHIP誘導遺伝子発現にとって必要であることを示している(図3B)。IRS−1の過剰発現は、この阻害を用量依存的に克服して、このことは、IRS−1 PHドメインがPHIP複合体形成に関して野生型IRS−1と競合することを示している(図3C)。
【0229】
遺伝子発現に関するIRS−1/PHIP相互作用の生理的重要性をさらに確立するために、HAタグDN−PHIPをインスリン反応性Rat−1線維芽細胞にマイクロインジェクションした。レポータープラスミド5X SRE−CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)をマイクロインジェクションした親Rat−1線維芽細胞をインスリンおよび血清処置すると、CATタンパク質の発現が得られ、これは抗CAT Absによる免疫蛍光染色によって容易に検出可能である。しかし、HAタグDN−PHIPを発現する構築物を同時注入した細胞はインスリン刺激CAT発現を遮断したが血清刺激CAT発現を遮断せず、このことは、PHIPが遺伝子発現を調節するためにIRによって用いられるシグナル伝達経路の重要な成分であることを示している。これは、DN−PHIPがインスリン処理細胞においてMAPキナーゼ活性化に顕著な阻害作用を及ぼすという知見と一致する。IRS−1をDN−PHIPと同時注射すると、SRE−CAT発現を完全に回復させるため、IRS−1がインスリンシグナル伝達経路においてPHIPの下流に存在するという考察がさらに支持される。
【0230】
これまでの研究から、インスリンの増殖刺激効果がIRS−1とは無関係であることが示されている(19、45)。IRS−1媒介分裂促進シグナル伝達におけるPHIPの役割を調べるために、DN−PHIPを、IRを過剰発現する線維芽細胞(NIH/IR)にマイクロインジェクションして、新たに合成されたDNAへの5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)取り込みに及ぼすその影響を調べた。血清の増殖刺激作用は、DN−PHIPのマイクロインジェクションによって影響を受けないが、DNA合成のインスリンによる刺激は、DN−PHIPを注入したNIH/IR細胞において著しく減弱され、これはPHIP/IRS−1PH相互作用がインスリンの増殖作用の促進において必須であるという考え方と一致する。
【0231】
DN−PHIPがインスリン媒介遺伝子発現およびDNA合成を阻害する機構を確立するために、DN−PHIPがインスリンに反応してIRS−1リン酸化を破壊するか否かを調べた。DN−PHIPの一過性の発現は、インスリン処理細胞においてIRS−1チロシンリン酸化を有意に抑制した(>5倍)が、完全長のPHIPは抑制しなかった。IRS−1リン酸化の減少が受容体機能の妨害を通して起こるか否かを確認するために、免疫沈降したIRと活性化IRの直接の基質であるShcとのホスホチロシンレベルの変化を調べた。結果は、IRS−1チロシンリン酸化レベルの減少が少なくとも二倍の細胞バックグラウンドにおいてIRキナーゼ活性の阻害に帰因しなかったことを示した。次に、インスリン受容体とPHIPとの関連を調べた。同時免疫沈降アッセイは、IR免疫複合体においてPHIPを検出することができなかった。
【0232】
類似の結果は、IRとIRS−1またはSHCアダプターのいずれかとの関連について既に報告されており、IR/エフェクター相互作用が本来弱いまたは一過性であり、受容体免疫複合体において検出されないことを示唆している(73〜75)。
【0233】
脂肪および筋細胞に及ぼすインスリン作用の主な代謝的作用の一つは、グルコース輸送体であるGLUT4の細胞内区画から細胞質膜への再分布を誘導することによるグルコース取り込みの調節である(44)。IRS−1上のホスホチロシン部位へのその動員を通してのPI3−キナーゼのp85/p110イソ型の活性化は、インスリン刺激されたGLUT4転位の必要な成分である(45、46)。このプロセスにおけるIRS−1の役割に関してはいくぶん議論が分かれており、IRS−1チロシンリン酸化は、GLUT4輸送に如何なる影響も及ぼさずに遮断されうることを示す研究もある(47〜48)。PHIP/IRS−1複合体が、筋肉細胞においてIRをGLUT4輸送に連結させるシグナル伝達経路に関与するか否かを調べるために、mycタグGLUT4構築物を安定に発現するL6筋芽細胞(L6GLUT4myc)(49〜51)を、野生型または優性干渉型のPHIPまたはIRS−1のいずれかで一過的にトランスフェクトした。緑色蛍光タンパク質(GFP)cDNAとの同時発現を用いて、トランスフェクトした細胞を容易に認識できるようにした。これまでに示されているように、L6GLUT4myc筋芽細胞をインスリンによって処理して、外表面mycエピトープの免疫蛍光標識によって検出すると、細胞表面のGLUT4mycが2倍増加した(52、53)。DN−PHIPの異所発現は、PI 3−キナーゼのp85サブユニット(Δp85)のドミナントネガティブ変種について認められたものと同一のように、インスリン依存的GLUT4myc膜転位のほぼ完全な阻害を引き起こした(>90%)(45、54)。非刺激細胞における細胞表面GLUT4mycの内容はPHIP変異体によって変化しなかったため、DN−PHIPの作用はインスリン刺激状態に対して特異的であった。IRS−1 PHドメインをコードするプラスミドからの発現も同様に、DN−PHIPによって誘導されたものよりいくぶん弱かった(60%)ものの、インスリン依存的GLUT4myc転位に有意な減少を引き起こした。不完全な阻害は、IRS−1機能を部分的に代用する可能性がある他のIRSタンパク質の存在によって部分的に説明される可能性がある。対照的に、完全長のPHIPも完全長のIRS−1もGLUT4myc再分布において測定可能な変化を引き起こさなかった。併せて考慮すると、これらの結果は、PHIP/IRS−1複合体形成は、筋細胞におけるインスリンの代謝作用を促進するためには必要であるが十分ではないという考え方を支持する。
【0234】
最近の証拠から、GLUT4含有小胞に対するPI 3−キナーゼのインスリン依存的再分布のみならず、GLUT4の細胞表面への動員を促進するために、アクチンマイクロフィラメントネットワークが関与する可能性があることが指摘されている(55〜57)。これまでの報告から、インスリン刺激アクチン細胞骨格再配列にとって機能的IRS−1が必要であることが証明されているという事実を考慮して(47)、このプロセスにおけるPHIPの役割を調べた。ローダミン結合ファロイジンを用いて、野生型PHIPまたはDN−PHIPのいずれかを異所発現するL6GLUT4myc細胞における繊維様アクチンのパターンの変化を検出した。基礎状態でのアクチン染色は、細胞の縦方向の軸に沿って流れる繊維様パターンを示し、インスリン刺激によって筋繊維質全体に密な構造へのアクチンの著しい再構築が認められた。この効果は、DN−PHIPの発現によって劇的に減少したが、空ベクターまたは野生型PHIPでは減少しなかった。興味深いことに、野生型PHIPの過剰発現は、基礎条件においてもアクチン細胞骨格のリモデリングを誘導するように思われた。併せて考慮すると、細胞骨格のリモデリングを促進し、筋細胞の細胞質膜表面でGLUT4小胞の取り込みを伴うインスリン依存的プロセスの調節にPHIPが関係していることを明らかに示している。
【0235】
細胞の区画化およびIRS−1の細胞内移動は、それがインスリン反応を誘導できるために必須である(30)。これまでの報告は、基礎条件では、インスリン受容体は細胞質膜に主に存在するが、IRS−1分子の約3分の2は、LDMに会合し、3分の1は細胞質内に分布していることを示している(27〜30、58)。培養脂肪細胞からのLDMの生化学的分析は、IRS−1がこの分画において膜に会合せず、むしろアクチンを含む細胞骨格エレメントに非常に富む不溶性のタンパク質マトリクスであるように思われるものに会合していることを示している(57、59)。PHIPがIRS−1に安定に会合すると仮定すると、PHIPがLDMにおいてIRS−1と同時に存在するか否かを調べた。L6筋芽細胞における内因性IRS−1および異所発現されたIRS−1のイムノブロット分析は、強い免疫反応シグナルを示すことができないため、異種の系を用いてPHIPとIRS−1の細胞分布を調べた。COS−7細胞の免疫蛍光顕微鏡から、PHIPとIRS−1とが細胞質に免疫学的に存在することが示された(データは示していない)。その上、図5Aに示すように、COS−7細胞の細胞成分分画を行うと、チロシンリン酸化されたIRS−1がLDM画分とサイトゾルの間に分布することが判明し、これまでに脂肪細胞において認められたIRS−1の分布と一致した。重要なことに、COS−7細胞において異所発現されたHA−PHIPは、主にLDM画分においてIRS−1と同時に局在することが判明した(図5A)。さらに、インスリン処理は、LDMからサイトゾルへとPHIPの細胞内位置を検出可能に変化させなかった。したがって、PHIPは、IRS−1 PHドメインとの会合を通して、IRS−1タンパク質をLDM区画における細胞骨格エレメントにつなぐ働きをする推定のIRS−1結合成分を表す可能性がある。
【0236】
3T3−L1脂肪細胞における生化学研究は、IRS−1がLDM区画において選択的にチロシンリン酸化されることを示している(27、58)。さらに、インスリン処理は、セリン/トレオニン(S/T)残基上での過リン酸化によってIRS−1の電気泳動移動度の著しい遅延を誘導し、これはLDMからサイトゾルへのIRS−1の放出の引き金となる(27、28、58、60、および61)。これによって、IRS−1のS/Tリン酸化がIRS−1/LDM相互作用を調節するという仮説が得られた。PHIPがLDMにおいてIRS−1と共に分離しかつIR媒介IRS−1チロシンリン酸化を調節することがわかっているので、IRS−1 S/Tリン酸化に及ぼすPHIP過剰発現の影響を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によってIRS−1の電気泳動特性をモニターすることによって調べた。基礎条件において、異所発現されたPHIPの増加量は、IRS−1の電気泳動移動度の用量依存的な増加を誘導した(図5B)。IRS−1の低リン酸化型はLDM画分との会合の増加を示すので(28、58)、データはPHIPの過剰発現が、IRS−1のLDM区画への分離を増強するS/Tリン酸化事象を調節する可能性があることを示唆している。対照的に、PHIPトランスフェクタントの急性インスリン刺激(5分間)は、IRS−1の移動度の有意な遅延を生じ、これはIRS−1のホスホ−S/T含有量の増加と一致した。このシフトは、典型的に持続的なインスリン処理によって認められた(15分間〜60分間)(27、58、および62)。重要なことに、チロシンリン酸化IRS−1の量は、タンパク質レベルに関して正常化すると、最も高いPHIP発現においてわずかに増加したもののほとんど一定のままであった。これらの知見は、IRS−1 S/T残基のPHIP依存的リン酸化が、下流のシグナル伝達事象に対して正の調節作用を誘発する可能性があることを示している。最近の研究は、インスリン刺激PKBによるIRS−1のPTBドメイン内のセリン残基のリン酸化によって、IRS−1タンパク質がタンパク質チロシンホスファターゼの急速な作用から保護されて、それによって、セリンリン酸化されたIRS−1タンパク質がそのチロシンリン酸化活性化立体構造を維持できることが判明した(63)。
【0237】
考察
これらの結果は、インスリン媒介分裂誘発および代謝反応の双方において明確な生理学的役割を有するIRS−1 PHドメインのタンパク質リガンドを同定する最初のものである。PHIPのドミナントネガティブN末端切断変異体であるDN−PHIPが記述されており、これはインスリン誘導転写および増殖反応を強く阻害する。血清誘導トランス活性化およびDNA合成はDN−PHIPによって影響を受けないことから、この阻害はインスリンに対して著しく特異的である。その上、この阻害はIRS−1の同時発現によって克服される。併せて考慮すると、データは、IRS−1 PHドメインとの相互作用に関係するPHIPの領域は、IRS−1タンパク質からIRを分離させ、その後インスリンの増殖促進反応に対する感受性を減少させることを示している。
【0238】
インスリン作用におけるIRS−1タンパク質のグルコース輸送に及ぼす役割はあまり明らかではない。いくつかの証拠が、GLUT4外面化にIRS−1が関与していることを支持している。例えば、ラットIRS−1に対するアンチセンスリボザイムを発現させると、インスリンに反応したラット脂肪細胞の細胞質膜へのGLUT4の転位が有意に減少する(64)。その上、受容体キナーゼ活性を変化させないがIRS−1結合およびリン酸化にとって重要なIR Tyr960の変異は、グルコース輸送を消失させた(65〜67)。しかし、これらの知見とは対照的に、他の報告は、抗IRS−1抗体のマイクロインジェクションまたはIRS−1の優性阻害PTBドメインの発現は、線維芽細胞においてインスリンの分裂誘発作用を遮断することができるが、培養脂肪細胞におけるGLUT4の移動は遮断することができないことを示している(47、68)。脂肪細胞における結果の解釈は、IRS−1チロシンリン酸化のみならずIRキナーゼ活性がほぼ完全に阻害されるにもかかわらず、グルコース取り込みがIRS−1 PTB発現細胞において減少せずに進行するという知見によって混乱している(68)。
【0239】
本研究において、筋細胞におけるグルコース輸送体の転位にPHIP/IRS−1複合体が関与していることに関する強い根拠が提供される。効率のよいIR/IRS−1タンパク質相互作用、およびしたがってIRS−1からPI 3−キナーゼへの生産的なシグナル伝達を妨害することが知られているPHIPまたはIRS−1構築物を用いると、L6筋芽細胞におけるインスリン刺激GLUT4転位を妨害することができる。その上、この阻害はIRの自己リン酸化状態の変化と一致しない。データはまた、筋細胞においてPHIPまたはIRS−1のいずれかのみを過剰発現させても、細胞質膜表面へのGLUT4の輸送を促進するために十分ではなかったことを示している。これは、PI 3−キナーゼのようなIRS−1会合シグナル伝達エフェクターの活性化は、必要ではあるがGLUT4活性化にとって十分ではないことを示す他の知見と一致する。特に、PDGFおよびIL4のような増殖因子は、インスリンと同程度に効率よくPI 3−キナーゼを活性化することができるが、インスリン感受性細胞におけるグルコース輸送を刺激することができないままである(69、70)。考えられる一つの説明は、さらなるPHIP/IRS−1/PI 3−キナーゼ非依存的経路がGLUT4細胞内経路を協調させるために必要であるということである。実際に、最近の証拠は、フロチリン/CAP/CBL複合体を細胞質膜においてIR会合脂質のいかだ(raft)に動員する新規インスリン反応経路が存在することを指摘しており、これはインスリン受容体活性化後に細胞表面へのGLUT4のドッキングを増強すると考えられている事象である(71)。
【0240】
グルコース輸送に関するインスリンシグナル伝達の特異性を説明するために一般的に考えられる見解は、生物学的特異性が、シグナル伝達中間体の細胞区画レベルで付与されるという点である。実際に、3T3−L1脂肪細胞およびIR過剰発現CHO細胞における細胞成分分画試験は、活性化PI 3−キナーゼ複合体がインスリン処理後のLDMにおいて主に認められるが、一方で同じ細胞においてPDGFに反応したPI 3−キナーゼの活性化は細胞質膜で起こることが判明した(58、59)。同様に、細胞内分布パターンの差は、IRSタンパク質ファミリー(IRS1−IRS4)の四つのメンバーにおいて報告されており、インビボで最終的にその機能的特異性に関与する可能性がある下流のシグナル伝達エレメントへの関与能の差を説明する可能性がある(28、29、72)。細胞成分分画がIRSシグナル伝達にとって重要であるという考え方を支持して、CAAX改変IRS−1の移動の変化および強い膜会合は、インスリンシグナル伝達を劇的に障害することが証明されている。その上、本研究に基づいて、LDM区画にPHIPとIRS−1とが同時に局在することは、IRシグナル伝達に及ぼすPHIPの阻害作用の選択性および特異性における重要な決定因子となる可能性がある。
【0241】
内部低密度ミクロソーム画分へのIRS−1の分離に関する分子的基礎は不明である。一つの明白な候補はIRS−1 PHドメインである。これまでの研究は、リン脂質に結合させることによる細胞膜へのタンパク質のターゲティングにおけるPHドメインの重要性を証明した(33)。しかし、これらの相互作用の大部分は弱く、非選択的で、PHドメインターゲティング機能の特異的細胞リガンドが存在することを示唆している。
【0242】
PHIPは、LDMにおける細胞骨格要素に対してIRS−1を分離するための分子的足場構造として作用する可能性がある。これを支持するいくつかの知見がある。第一に、IRS−1の大部分は膜成分に結合せずにむしろLDMにおける不溶性のタンパク質マトリクスに結合している。このことはIRS−1が他のタンパク質(複数)と特異的に会合することによってこの位置を維持しなければならないことを示している。第二に、LDMのこのTriton不溶性画分は、沈降分析および電子顕微鏡によって決定されるアクチン細胞骨格の有意な画分を含む(57、59)。第三に、PHIPは基礎条件でLDMにおいてIRS−1と安定に会合して同時分画される。最後に、PHIPの異所発現は筋繊維質の不連続な部位において繊維様のアクチン再構築を誘導することができ、アクチン集合の空間的制御にPHIPが関与していることを示している。これらのデータを併せて考慮すると、PHIPはIRS−1 RHドメインとの直接会合を通して、LDMにおける細胞骨格成分にIRS−1分子をつなぐことを調節する可能性があることを示唆している。このように、PHIPはIRに富む脂質のいかだに非常に近位の細胞骨格足場構造にIRS−1タンパク質を予め集合させるために重要である可能性があり、受容体ライゲーションの後IRS−1基質認識において速度論の長所を提供する。その上、PHIPの異所発現はIRS−1タンパク質のS/Tリン酸化状態を調節するという知見は、LDMとサイトゾルの間のIRS−1の細胞内経路を調節することが知られている機構であり、PHIPが同様に、IRS−1のIRへのアクセスを終了させることによってインスリンシグナルの一時的な脱感作または抑制に関係する可能性があることを示唆している。IRS−1のホスホ−S/T含有量に及ぼすPHIP過剰発現のインスリン調節可能な効果は、キナーゼの活性化および/またはIRS−1に作用するセリン/トレオニンホスファターゼの阻害による可能性がある。
【0243】
結論として、PHIPはIRS−1 PHドメインの新規生理学的タンパク質標的を表し、これは、IRS−1機能の特異性および選択性において極めて重要な役割を果たすIRS−1タンパク質複合体の空間的かつ時間的細胞内局在を調節することによって、IRカップリングに寄与する可能性がある。
【0244】
実施例2
GSTおよびHISタグベクターの双方においてDN−PHIPの変異体を作製した。変異体の配列は以下の通りである。
DN−mPHIP(アミノ酸5〜209位)(配列番号:66)
Figure 2004524802
変異体DN−mPHIP#1(アミノ酸5位〜170位)(配列番号:67)
Figure 2004524802
変異体DN−mPHIP#2(アミノ酸19位〜170位)(配列番号:68)
Figure 2004524802
変異体は、細菌において発現されると不溶性となった。このことは、これらの小さなN末端およびC末端の欠失が、PBRタンパク質モジュールの構造的完全性を乱すことを示している。
【0245】
本明細書に記載した特定の態様は、本発明の一つの局面の単なる説明を意図しており、機能的に同等な任意の態様が本発明の範囲に含まれるため、本発明はそのような態様によってその範囲を制限されるものではない。実際に、本明細書において示され説明された改変に加えて本発明の様々な改変が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0246】
本明細書において言及した全ての出版物、特許および特許出願は、本発明に関連して用いられうる、それらに報告されている細胞株、ベクター、方法論等を説明および開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。本明細書において、先行発明の特徴により、本発明がそのような開示に穿孔する権利を持たないと認めていると解釈されるべきではない。
【0247】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、特に明記しない限り、単数形「一つの(aおよびan)」および「その(the)」には、複数形が含まれることが留意されるべきである。したがって、例えば「宿主細胞」という言及には、そのような宿主細胞の複数が含まれ、「抗体」という言及には、当業者に既知の一つまたは複数の抗体およびその同等物が含まれる。
【0248】
参考文献および脚注
Figure 2004524802
Figure 2004524802
Figure 2004524802
Figure 2004524802
Figure 2004524802

【図面の簡単な説明】
本発明を、以下の図面に関連して説明する。
【図1】PHIPの推定アミノ酸配列と略図を示す。(A)マウス(m)およびヒト(h)のPHIP配列のアラインメント。(B)PHIPには二つのブロモドメインである、BD1(230位〜345位)およびBD2(387位〜503位)が存在する。酵母クローンVP1.32から単離したPHIP IRS−1/PH結合領域(PBR)(アミノ酸8位〜209位)を下線で示す。
【図2】PHIPがインビトロおよびインビボの双方においてIRS−1に会合することを示すブロットである。(A)PHIPは、見かけの分子量104 kDで移動する。PHIPを多数の骨髄腫U266細胞溶解物によって免疫沈降させて、抗PHIP抗体(Abs)によってイムノブロットした(10)。(B)抗PHIPにおいて観察された二つの型のPHIP(97 kDおよび104 kD)は、U266、ヒトA431類表皮癌、Rat−2およびマウスNIH/3T3線維芽細胞の細胞溶解物から免疫沈降する。(C)PHIPはIRS−1 PHドメインとインビトロで選択的に相互作用する。IRS−1、SOS1、ECT−2、またはRas−GAP(GAP)のいずれか由来のHAタグPHドメインを発現する酵母の細胞溶解物を、固定化GST−PHIP融合タンパク質と混合して、複合体を抗HA Absを用いるウェスタンブロット分析に供した(13)。(D)IRS−1 PHドメイン変異体のPHIPへの結合。左、一過的にトランスフェクトされたCOS−1細胞の全細胞溶解物(50 μg)からのHAタグIRS−1 PHドメイン変異体の免疫検出。PHWT(IRS−1 PHドメイン残基3位〜133位)、PHNT(残基3位〜67位)、PHCT(残基55位〜133位)、PHW106A(全てのPHドメインにおいて保存されていたTrp106残基をAlaに変更した);右、表記のIRS−1 PHドメイン変異体を発現する細胞溶解物(500μg)を、GSTまたはGST−PHIP(PBR)タンパク質のいずれかと混合して、(C)のように処置した。(E)PHIPは、インビボでIRS−1と安定に会合する。血清枯渇NIH/IR細胞を、刺激しない、またはインスリン(2μM)によって5分間刺激した。細胞溶解物を抗IRS−1PCT Abs(Upstate Biotechnology Inc.、UBI)、抗IRS−1PH Abs、または抗PHIP Absによって免疫沈降させ、表記のように、抗PHIP−1 Absまたは抗IRS−1PCT Absによるウェスタンブロッティングに供した。抗IRS−2 Absを用いて、非同期細胞からIRS−2/PHIP複合体を同時免疫沈降させた。(F)PHIPはIRの基質ではない。PHIPを、PBR領域に対して作製した抗PHIP Absを用いて、非処理の、およびインスリン処理した、ヒト腎293細胞抽出物から免疫沈降させた。免疫複合体をSDS−PAGEによって分解して、抗ホスホチロシンAbs(抗pTyr、PY20、New England Biolabs)によってイムノブロットした。ブロットを剥離して、抗IRS−1PCT Absまたは抗PHIP Absのいずれかによってリプローブ(reprobe)した。星印によって示される103 kDのリンタンパク質はSTAT3を表す可能性が高い。
【図3Aおよび図3Bおよび図3C】インスリンのシグナル伝達に及ぼすPHIPの影響を示すグラフである。(A)ヒトPHIPは、インスリンによる5X SRE−fosルシフェラーゼ発現の転写を増強する。COS−1細胞を、5X SRE−fosルシフェラーゼレポーター構築物(5X SRE−LUC)3μgと共に、増加量のpCGN/hPHIP(6μg、9μg、12 μg)または対照としての空ベクター(12 μg)で一過的にトランスフェクトした。血清枯渇細胞は非処理のままか、またはMek−1阻害剤(50 μM)によって2時間処理した。細胞をインスリン(0.2 μM)の存在下または非存在下で10時間インキュベートして、二重光システム(Tropix)を用いて細胞溶解物における相対的ルシフェラーゼ活性を測定した(16)。結果は、3回の代表的な実験の平均値±SDとして表記する。(B)IRS−1 PHドメインは、PHIP誘導SRE−LUC活性を阻害する。COS細胞を、pCGN/hPHIP(4μg)と表記の量のpCGN/IRS−1 PHとで5X SRE−LUC2μgと共に同時トランスフェクトした。細胞をインスリン処理して、(A)のように処置した。(C)PHIP刺激ルシフェラーゼ活性のIRS−1 PH媒介性阻害は、野生型IRS−1によって用量依存的に回復する。COS細胞を、表記のようにpCGN/hPHIP(1μg)、5X SRE−LUC(2μg)、pCGN/IRS−1 PHまたはベクターDNAのいずれか(1μg)、および増加量のpCGN/IRS−1 cDNAで同時トランスフェクトした。次に細胞をインスリン処理して(A)のように処置した。
【図4】ドミナントネガティブPHIPがIRS−1のインスリン誘導チロシンリン酸化を阻害することを示しているブロットを示す。(A、B)Cos−7細胞をpCGN/HA−DN−PHIP(DN/PHIP)、pCGN/HA−PHIP(PHIP)または空ベクターのいずれかで一過的にトランスフェクトした。細胞培養物をインスリン(0.2 μM)の存在下または非存在下で5分間処理した。全細胞溶解物または抗IRS−1免疫沈降物を、表記のように抗IRS−1 PCT Abs、抗pTyr Abs、または抗HA Absのいずれかによるイムノブロット分析に供した。抗IR免疫沈降物を抗pTyr抗体によってブロッティングした。膜を剥離して、抗IR抗体によってリプローブした。(C)Rat−1線維芽細胞にpCGN/HA−DN−PHIPまたは空ベクターのいずれかを一過的にトランスフェクトした。細胞培養物をインスリン(0.2 μM)によって5分間処理した。細胞溶解物を抗IRS−1 PCTまたは抗Shc抗体によって沈降させて、抗pTyr抗体によるイムノブロット分析を行った。Shc免疫複合体を含むメンブレンを剥離して、抗Shc抗体によって再プロービングした。(D)DN/PHIPは、SHCアダプタータンパク質を通してではなく、IRS−1を通してMAPK活性を阻害する。COS細胞を、pCDNA1/HA−p44MAPKおよび、pCGN/HA−DN−PHIPまたは空ベクターのいずれかで一過的にトランスフェクトした。細胞培養物をインスリンの存在下またはインスリンの非存在下で処理した。細胞溶解物を抗HA Absによって沈殿させ、MBPを基質として用いるインビトロキナーゼアッセイに供した。HA枯渇溶解物をその後抗Shc Absによって沈殿させ、抗pTyr Absによる分析に供した。
【図5Aおよび図5B】PHIPの過剰発現は、IRS−1電気泳動移動度を変化させることを示す。(A)PHIPおよびIRS−1はLDMに共に局在する。LDMおよびサイトゾル画分を、20 μgのpCGN/hPHIP(ヒトPHIP)または対照としての空ベクターで一過的にトランスフェクトした非刺激およびインスリン刺激COS−7細胞から調製した。各画分由来のタンパク質200 μgをSDS−PAGEによって分解して、抗IRS−1PCT抗体(Abs)を用いるイムノブロットによって分析する。抗ホスホチロシン(pTyr)Absおよび抗HA Absを用いて、インスリン誘導チロシンリン酸化IRS−1および異所発現PHIPをそれぞれ検出する。抗トランスフェリン受容体 AbsをLDM区画のマーカーとして用いる。(B)PHIPは、IRS−1セリン/トレオニンリン酸化を調節することによってIRS−1細胞内局在性を調節する。抗IRS−1PCT抗体を用いたウェスタンブロット分析を、空ベクター(20 μg)およびHAタグhPHIP(5μg、10 μg、および20 μg)を発現するプラスミドで一過的にトランスフェクトしたCOS−7細胞溶解物において行った。異所hPHIP発現は抗HA抗体を用いてモニターされた。
【図6】PHIPと神経分化関連タンパク質(NDRP)の略図である。PHIPには二つのブロモドメインである、BD1(230位〜345位)およびBD2(387位〜503位)が存在する。PHIP/IRS−1 PH結合領域(PBR)(アミノ酸5位〜209位)を下線で示す。
【図7】ヒトおよびマウスの神経分化関連タンパク質(NDRP)のアミノ酸配列アラインメントを示す。
【図8】ヒトおよびマウスの神経分化関連タンパク質(NDRP)の核酸配列アラインメントを示す。
【図9】WD反復タンパク質9およびPHIPのアミノ酸配列アラインメントを示す。
【図10】WD反復タンパク質9およびPHIPの核酸配列アラインメントを示す。

Claims (38)

  1. IRSタンパク質ファミリーのタンパク質およびSTAT転写因子を、それらと相互作用する受容体に動員して、タンパク質およびSTAT転写因子をリン酸化する、単離されたプレクストリン(Pleckstrin)相同ドメイン相互作用タンパク質(「PHIタンパク質」)。
  2. インスリン受容体基質−1のPHドメインと相互作用することができる、高次コイル構造を予測するN末端のαヘリックス領域および、二つのブロモドメインを含む領域とを特徴とする、請求項1記載の単離されたプレクストリン相同ドメイン相互作用タンパク質(「PHIタンパク質」)。
  3. 配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、または17のアミノ酸配列を含む、請求項1または2記載の単離されたタンパク質。
  4. ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33もしくは34、または配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33もしくは34の相補体の一つとハイブリダイズする少なくとも30ヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
  5. 以下を含む、単離された核酸分子:
    (i)配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、もしくは17のアミノ酸配列と実質的な配列同一性を有するタンパク質をコードする核酸配列;
    (ii)(i)と相補的な核酸配列;
    (iii)遺伝コードの縮重のためにコドン配列において(i)もしくは(ii)のいずれとも異なる核酸配列;
    (iv)配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33もしくは34の核酸配列もしくはその縮重型とハイブリダイズすることができる、少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも20ヌクレオチドを含む核酸配列;
    (v)配列番号:2、3、5、6、8、10、12、13、15、もしくは17のアミノ酸配列を含むタンパク質の切断型、類似体、対立遺伝子もしくは種間変種をコードする核酸配列;または
    (vi)(i)、(ii)、もしくは(iii)の断片もしくは対立遺伝子もしくは種間変種。
  6. 以下を含む、単離された核酸分子:
    (i)配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33もしくは34の核酸配列と実質的な配列同一性もしくは配列類似性を有する核酸配列;
    (ii)TがUであることも可能である、配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33もしくは34の配列を含む核酸配列;
    (iii)(i)と相補的な、好ましくは配列番号:1、4、7、9、11、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33もしくは34の核酸配列全体と相補的な、核酸配列;
    (iv)遺伝コードの縮重のためにコドン配列において(i)、(ii)もしくは(iii)の核酸配列のいずれとも異なる核酸配列;または
    (v)(i)、(ii)、もしくは(iii)の断片もしくは対立遺伝子もしくは種間変種。
  7. 請求項1、2または3記載のタンパク質の抗体に結合するタンパク質をコードする単離された核酸分子。
  8. 異種タンパク質をコードする核酸に融合した、請求項4から7のいずれか一項記載の単離された核酸分子の調節配列。
  9. 請求項4から7のいずれか一項記載の核酸分子を含むベクター。
  10. 請求項4から7のいずれか一項記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  11. 配列番号:2、3、5または6記載のアミノ酸配列を含む、請求項1、2または3記載の単離されたタンパク質。
  12. 配列番号:2、3、5または6記載のアミノ酸配列と少なくとも65%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1または2記載の単離されたタンパク質。
  13. 請求項1記載のタンパク質を調製する方法であり、以下の段階を含む方法:
    (a)請求項9記載のベクターを宿主細胞に移入する段階;
    (b)非形質転換宿主細胞から形質転換宿主細胞を選択する段階;
    (c)タンパク質の発現を可能にする条件下で、選択された形質転換宿主細胞を培養する段階;および
    (d)タンパク質を単離する段階。
  14. 請求項13記載の方法に従って調製されたタンパク質。
  15. PHドメイン結合領域、IR結合領域、またはSTAT結合領域である、請求項1から3、11、12または14のいずれか一項記載のタンパク質の結合領域。
  16. 請求項1から3、11、12、または14記載のタンパク質またはその結合領域、および結合パートナーを含む複合体。
  17. 結合パートナーが、PHドメイン含有タンパク質、PHドメイン、IRSタンパク質ファミリーのタンパク質と相互作用する受容体、もしくはPHIタンパク質と相互作用するその結合領域、または、STAT転写因子、もしくはPHIタンパク質と相互作用するその結合領域である、請求項16記載の複合体。
  18. 請求項1から3、11、12、または14のいずれか一項記載のタンパク質のエピトープに対して特異性を有する抗体。
  19. 検出可能な物質によって標識され、生体試料、組織、および細胞においてポリペプチドを検出するために用いられる、請求項18記載の抗体。
  20. 請求項1から3、11、12、または14のいずれか一項記載のタンパク質またはその一部をコードする配列を含むプローブ。
  21. 請求項4から8のいずれか一項記載の核酸分子または請求項1から3、11、12、または14のいずれか一項記載のポリペプチドの存在を決定することによって、請求項1から3、11、12、または14のいずれか一項記載のタンパク質によって媒介される病態を診断およびモニターする方法。
  22. 病態がインスリン反応に関連する、または病態が癌である、請求項21記載の方法。
  23. (a)物質とタンパク質との会合を可能にする条件下で、タンパク質と潜在的に会合できる少なくとも一つの物質とタンパク質とを反応させる段階、および(b)会合したタンパク質および物質の検出により物質がタンパク質に会合することが示される、物質に会合したタンパク質を除去または検出する段階を含む、請求項1から3、11、12、または14記載のタンパク質と相互作用する物質を同定する方法。
  24. 物質とタンパク質との複合体の形成を可能にする条件で、タンパク質と相互作用する物質および試験化合物をタンパク質と反応させる段階、ならびに複合体を除去および/または検出する段階を含む、請求項1から3、11、12、または14記載のタンパク質の生物活性の調節能に関して化合物を評価する方法。
  25. PHIタンパク質相互作用の阻害剤を同定する方法であり、以下の段階を含む方法:
    (a)PHIタンパク質および結合パートナー、またはそれぞれの少なくとも相互作用する部分とを含む、反応混合物を提供する段階;
    (b)反応混合物を一つまたは複数の試験化合物に接触させる段階;ならびに
    (c)PHIタンパク質と結合パートナーとの相互作用を阻害する化合物を同定する段階。
  26. 以下の段階を含む、生体試料において配列番号:2、3、5、または6記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸分子を検出する方法:
    (a)請求項4から7のいずれか一項記載の核酸分子を生物試料の核酸とハイブリダイズさせ、それによってハイブリダイゼーション複合体を形成させる段階;および
    (b)ハイブリダイゼーション複合体の存在が、生体試料におけるタンパク質をコードする核酸分子の存在と相関する、ハイブリダイゼーション複合体を検出する段階。
  27. 生体試料の核酸が、ハイブリダイゼーション段階の前にポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される、請求項26記載の方法。
  28. 請求項18記載の抗体、または、請求項23、24、もしくは25記載の方法に従って同定された物質、化合物、もしくは阻害剤の有効量を投与する段階を含む、請求項1から3、11、12、または14記載のタンパク質によって媒介される病態を治療する方法。
  29. 病態がインスリン反応に関連する、または病態が癌である、請求項28記載の方法。
  30. 請求項4から7のいずれか一項記載の核酸分子、請求項1から3、11、12、もしくは14のいずれか一項記載のタンパク質、または請求項1から29のいずれか一項記載の方法を用いて同定された物質もしくは化合物の一つまたは複数と、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤とを含む組成物。
  31. 請求項4から7のいずれか一項記載の核酸分子、請求項1から3、11、12、もしくは14のいずれか一項記載のタンパク質、または請求項1から30のいずれか一項記載の方法を用いて同定された物質もしくは化合物の一つまたは複数の、請求項1記載のタンパク質によって媒介される病態を治療するための薬物の調製における使用。
  32. 請求項1から3、11、12、または14記載のPHIタンパク質を発現せず、その結果PHIタンパク質関連病態が起こる、非ヒトトランスジェニック哺乳類。
  33. 以下の段階を含む、PHIタンパク質関連病態を減少させるまたは阻害する薬剤を調べるためのモデル系を提供する、トランスジェニック動物アッセイ系:
    (a)請求項32記載の非ヒトトランスジェニック動物に薬剤を投与する段階;および
    (b)該薬剤が、物質を投与されていない段階(a)の非ヒトトランスジェニック動物と比較して、非ヒトトランスジェニック動物においてPHIタンパク質関連病態を減少させるまたは阻害するか否かを決定する段階。
  34. 以下の段階を含む、医薬品発見ビジネスを行う方法:
    (a)請求項1から33記載のタンパク質と結合パートナーとの相互作用の阻害能または増強能によって薬剤を同定するための一つまたは複数のアッセイ系を提供する段階;
    (b)動物における有効性および毒性に関して、段階(a)において同定された薬剤またはそのさらなる類似体の治療プロフィール決定(profiling)を行う段階;ならびに
    (c)許容される治療プロフィールを有すると段階(b)において同定された一つまたは複数の薬剤を含む薬学的組成物を製剤化する段階。
  35. 販売用薬学的組成物を流通させるための流通系を確立する段階、および選択的に薬学的調製物をマーケティングするために販売グループを確立する段階をさらに含む、請求項34記載の方法。
  36. 標的発見ビジネスを行う方法であり、以下の段階を含む方法:
    (a)請求項1から35記載のタンパク質と結合パートナーとの相互作用の阻害能または増強能によって薬剤を同定するための一つまたは複数のアッセイ系を提供する段階;
    (b)選択的に、動物における有効性および毒性に関して、段階(a)において同定された薬剤の治療プロフィール決定を行う段階;ならびに
    (c)段階(a)において同定された薬剤またはその類似体のさらなる薬剤開発および/または販売のための権利を、第三者に認可する段階。
  37. 以下を含む、単離された核酸分子:
    (i)配列番号:35、および39〜63の一つの核酸配列と実質的な配列同一性もしくは配列類似性を有する核酸配列;
    (ii)TがUであることも可能である、配列番号:35、および39〜63の一つの配列を含む核酸配列;
    (iii)(i)と相補的な、好ましくは配列番号:35、および39〜63の一つの核酸配列全体と相補的な核酸配列;
    (iv)遺伝コードの縮重のために、コドン配列における(i)、(ii)、もしくは(iii)の核酸配列のいずれとも異なる核酸配列;または
    (v)(i)、(ii)、もしくは(iii)の断片もしくは対立遺伝子もしくは種間変種。
  38. 以下にコードされる、単離された神経分化関連タンパク質:
    (a)配列番号:39〜63の一つを含む核酸分子;または
    (b)配列番号:36を含むタンパク質をコードする核酸分子。
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