JP2004305870A - 電解浄水器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】給水室をもつ容器1と、容器1の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材4,5と、容器1の給水室に給水する給水部と、容器の給水室内の多孔質浄水部材4,5で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器である。第1電極A1及び第2電極A2が給水室14内に設けられている。時間経過に伴い増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、第1電極A1と第2電極A2との間に印加することにより、給水室14内の水を電気分解させるようにしている。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多数の細孔を備えている多孔質浄水部材に電圧を印加して水を電気分解させる電解浄水器に関し、殊に、電気分解で発生したガス、殊に、活性が強いと一般に言われている電気分解直後のガスを多孔質浄水部材の細孔に効率的に吸蔵するのに有利な電解浄水器に適用できる。本発明は、家庭用、医療用、業務用等の浄水器に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
浄水器は、内壁面で区画された給水室をもつ容器と、容器の給水室に収容された水浄化性をもつ多孔質浄水部材と、容器の給水室に給水する給水部と、容器の給水室内の多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを備えている。この浄水器によれば、水が多孔質浄水部材により浄化される。
【0003】
また、最近の文献(日本機能水学会、第一回学術大会、講演要旨集号 44頁演題『ヒト培養細胞におけるアルカリ電解水機能の解析』、講演者:京都大学大学院医学研究科 病理系腫瘍生物学講座 助教授 高橋 玲)によれば、電気分解した直後のガス粒(水素ガス)は、電気分解からかなり時間が経過した通常のガス粒(一般的には水素ガス)よりも、活性に富み、生体等に有効であることが報告されている。即ち、電気分解した直後に確認される極微小サイズ(例えば3〜100nm)のガス粒(一般的には水素ガス粒)は、電気分解から時間が経過して成長した通常のガス粒(一般的には水素ガス粒)よりも活性に富み、生体等に有効であることが報告されている。
【0004】
【非特許文献1】
日本機能水学会、第一回学術大会、講演要旨集号 44頁 演題『ヒト培養細胞におけるアルカリ電解水機能の解析』、講演者:京都大学大学院医学研究科 病理系腫瘍生物学講座 助教授 高橋 玲
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した浄水器の開発の一環としてなされたものであり、ガスの成長を抑えるのに貢献でき、しかもガス粒の生成箇所からの脱離に貢献できる電解浄水器を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)第1様相の本発明に係る電解浄水器は、給水室をもつ容器と、容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、容器の給水室に給水する給水部と、容器の給水室内の多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
第1電極及び第2電極が給水室内に設けられており、
時間経過に伴い増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、第1電極と第2電極との間に印加することにより、給水室内の水を電気分解させるようにしていることを特徴とするものである。
【0007】
(2)第2様相の本発明に係る電解浄水器は、給水室をもつ容器と、容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、容器の給水室に給水する給水部と、容器の給水室内の多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
第1電極及び第2電極が給水室内に設けられており、
時間経過に伴い電圧が増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた直流と、交流とを併せた併合給電を、第1電極と前記第2電極との間に印加することにより、給水室内の水を電気分解させるようにしていることを特徴とするものである。
【0008】
(3)第3様相の本発明に係る電解浄水器は、給水室をもつ容器と、容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、容器の給水室に給水する給水部と、容器の給水室内の多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
多孔質浄水部材は、互いに対面する第1多孔質浄水部材及び第2多孔質浄水部材で形成されており、
第1多孔質浄水部材は第1給電端子とされて第1電極とされていると共に、第2多孔質浄水部材は第2給電端子と接続されて第2電極とされており、
時間経過に伴い増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、第1給電端子と第2給電端子とを介して第1電極と第2電極との間に印加することにより、給水室内の水を電気分解するようにしていることを特徴とするものである。
【0009】
(4)第4様相の本発明に係る電解浄水器は、給水室をもつ容器と、容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、容器の給水室に給水する給水部と、容器の給水室内の多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
多孔質浄水部材は、互いに対面する第1多孔質浄水部材及び第2多孔質浄水部材で形成されており、
第1多孔質浄水部材は第1給電端子とされて第1電極とされていると共に、第2多孔質浄水部材は第2給電端子と接続されて第2電極とされており、
時間経過に伴い増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた直流と、交流とを併せた併合給電を、第1電極と第2電極との間に印加することにより、給水室内の水を電気分解させるようにしていることを特徴とするものである。
【0010】
(5)各様相の本発明に係る電解浄水器によれば、電解の際に、時間経過に伴い増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、第1電極と第2電極との間に印加することにしている。印加は給電を意味する。このため、電気分解の際に電圧または電流を第1電極と第2電極との間に間欠的に給電できる。故に、電気分解の際に生成されるガス粒(水素ガス粒等)のサイズの過剰成長を抑制するのに有利であり、ガス粒のサイズを小さくするのに有利である。しかもガス粒の生成箇所からの脱離に貢献できる。
【0011】
【発明の実施形態】
本発明に係る電解浄水器によれば、次の形態のうちの少なくとも一つを採用できる。
【0012】
・多孔質浄水部材は、環状の隙間を形成するように径方向において少なくとも2つの筒状の多孔質浄水部材に分割されている形態を例示できる。従って、多孔質浄水部材は第1多孔質浄水部材と第2多孔質浄水部材とで形成できる。第1多孔質浄水部材と第2多孔質浄水部材との間に、水が進入できる隙間を設けることができる。隙間は、多孔質浄水部材の中心を1周する環状が好ましい。場合によっては、多孔質浄水部材は、径方向において3個に分割されていても良いし、4個に分割されていても良い。水が多孔質浄水部材の径方向(殊に求心方向)に透過する形態を例示できる。多孔質浄水部材が円筒形状や角筒形状等の筒形状であるときには、水が多孔質浄水部材の求心方向に透過する場合、多孔質浄水部材の半径方向外方に水圧がかかることを抑止できるため、多孔質浄水部材の破損回避に貢献できる。
【0013】
・第1多孔質浄水部材は第1給電端子とされて第1電極とされていると共に、前記第2多孔質浄水部材は第2給電端子と接続されて第2電極とされている形態を例示できる。また、第1電極及び第2電極としては、導電性をもつ金属部材で形成しても良い。第1電極と第2電極とに電圧を印加(給電)することにより、給水室内の水が電気分解される。電解室は、一の多孔質浄水部材及び他の多孔質浄水部材により形成された環状隙間等の隙間で構成されている形態を例示できる。この場合、電解室である隙間としては、多孔質浄水部材の軸端(例えば上端、下端)までを貫通または実質的に貫通する形態を例示できる。
【0014】
さらに、電解室である隙間の貫通方向の端部には、電解室の端部を閉鎖して電解室の圧力を高めるために電解室の端部を閉鎖するシールキャップ等の閉鎖部が設けられている形態を例示できる。電解室である隙間の閉鎖性が閉鎖部により高まり、電解室である環状隙間等の隙間における電気分解で発生したガスによって、電解室である隙間の圧力を増加させ、そのガスを多孔質浄水部材に吸蔵させるのに有利となる。この場合、電解室である隙間において電気分解で発生させたガス、殊に電気分解直後のガスを多孔質浄水部材の細孔に早期に吸蔵させ得る効果を期待できる。電解室における隙間の隙間幅を維持するためのスペーサ部材等の隙間維持手段をシールキャップ等の閉鎖部に一体的に形成することもできる。
【0015】
なお、電解室である隙間が設けられているときには、隙間の隙間幅が過剰に大きくなると、電解電流が流れにくくなる。故に、電解室である隙間の隙間幅としては、印加する電圧によっても相違するものの、例えば、30ミリメートル以下、20ミリメートル以下、10ミリメートル以下、5ミリメートル以下、4ミリメートル以下、2ミリメートル以下とすることができる。
【0016】
・第1多孔質浄水部材及び第2多孔質浄水部材は共に、円筒形状等の筒形状をなしている形態を例示できる。第1多孔質浄水部材は第1給電端子と接続されて第1電極とされていると共に、第2多孔質浄水部材は第2給電端子と接続されて第2電極とされている形態を例示できる。第1電極と第2電極とに電圧を印加することにより、隙間の水を電気分解し、発生したガスを第1多孔質浄水部材及び第2多孔質浄水部材のうちの少なくとも一方の細孔に吸蔵させることを期待できる。
【0017】
・第1電極と第2電極との間に印加する電圧としては必要に応じて適宜選択できる。直流電圧を第1電極と第2電極との間に印加させるときには、例えば、1.5〜15ボルトの範囲内、殊に3〜7ボルトの範囲内とすることができ、また、直流電圧と交流電圧とを併合させた併合給電としての併合電圧を第1電極と第2電極との間に印加させるときには、例えば、1.5〜20ボルトの範囲内、殊に3〜12ボルトの範囲内を例示できるが、これらに限定されるものではない。なお本明細書でいうボルトは、交流の場合には実効値を意味する。電圧または電流を第1電極と第2電極との間に印加することは、搭載されている制御部により行うことができる。
【0018】
・多孔質浄水部材は多数の細孔を有し、菌等の異物に対する高い捕捉性を有する。細孔同士は連通しており、水を透過させ得る水透過層を形成する。細孔は水浄化能力を有する他に、電気分解で発生した水素や酸素等といったガス等の物質を吸蔵させ得る。多孔質浄水部材としては、電気良導体である活性炭等の炭素系物質(一般的には炭素系成形体)を利用して構成することが好ましい。この場合には、多孔質浄水部材は活性炭と結合材によって成形できる。活性炭としては粉末状、粒状、繊維状の少なくとも1種を採用できる。導電性を向上できる黒鉛粉末を必要に応じて配合できる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明に係る電解浄水器の第1実施例について図1〜図3を参照しつつ具体的に説明する。
【0020】
(電解浄水器の構成)
図1は、据え置き型の家庭用または業務用の電解浄水器を示し、全体構成の断面図を示す。図2は主要部を拡大した電解浄水器の詳細断面図を示す。図3は電解浄水器の外観図を示す。
【0021】
容器1は、金属で円筒形状に成形され軸芯P1を有する容器本体としての筒部10と、円形平板形状をなし筒部10の下側の軸端開口を閉鎖するように溶接で固定された金属板で形成された底蓋11と、筒部10の下端部を保持する樹脂製の台座12と、筒部10の上側の軸端開口において取り付けられた固定部として機能する電装収容部13とを有している。なお、筒部10及び底蓋11を構成する金属は、耐食性が高い金属の代表例であるステンレス鋼で形成されているが、これに限らず、アルミ合金、チタン、チタン合金、炭素鋼、樹脂の少なくとも1種で形成してもよい。容器1は圧力容器を形成している。
【0022】
図1に示すように、容器1は、筒部10の内壁面10mで形成された横断面円形状の給水室14を有する。給水室14の横断面は円形状とされているが、これに限定されるものでなく、四角形状等の角形状でもよい。電装収容部13は、電装品を収容する電装室16と電装室16の上面開口を閉じる蓋16aとを有しており、リング状のシール部材19を介して筒部10の上端部に着脱可能に固定されている。電装収容部13は、樹脂製の蓋部材18T及び樹脂またはゴム製のシール部材19を上側から圧縮しており、筒部10の上端部と電装収容部13との間の水密性を確保している。
【0023】
電装収容部13の裏面13a側には、図2に示す如く、チタン合金、ステンレス鋼、炭素鋼等の導電材料で形成された第1給電端子17,第2給電端子18が保持されている。第1給電端子17,第2給電端子18には制御部50から電圧が印加されるため、電圧印加部として機能できる。第1給電端子17,第2給電端子18は、給電リード線の接続のために図略のナット部材が螺合される雄螺子部17m,18mを有する。図2に示すように、給電端子17,18はバネ17c,18cで付勢されている。バネ17c,18cは、内側多孔質浄水部材4,外側多孔質浄水部材5に対する通電抵抗を低減させるための付勢手段として機能する。バネ17c,18cはコイル状とされているが、これに限らず板バネ、皿バネ、発泡体等でも良い。
【0024】
図1に示すように、容器1の筒部10の給水室14内には、円筒形状の多孔質浄水部材3が同軸的に収容されている。多孔質浄水部材3は、実質的に同軸的に配置された第1多孔質浄水部材として機能する内周側の内側多孔質浄水部材4と、第2多孔質浄水部材として機能する外周側の外側多孔質浄水部材5とで構成されている。外側多孔質浄水部材5は内側多孔質浄水部材4を包囲している。内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5は、軸長サイズが同じまたは実質的に同じとされており、且つ、互いに同軸的または実質的に同軸的にに配置されており、内周側及び外周側の2重構造とされている。水は、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の径方向に沿って透過するものである。
【0025】
図1に示すように、内側多孔質浄水部材4は円筒形状をなしており、筒空洞状の中央孔4aを有する円筒形状の内壁面4iと、内壁面4iに背向する円筒形状の外壁面4kとを有する。
【0026】
外側多孔質浄水部材5は、内側多孔質浄水部材4を外周側を包囲する円筒形状をなしており、内側多孔質浄水部材4の外壁面4kに隙間6を介して対面する円筒形状の内壁面5iと、筒部10の内壁面10mに対面する円筒形状の外壁面5kとを有する。隙間6は環状をなしている。
【0027】
隙間6は、周方向において隙間間隔が均等またはほぼ均等となるようにリング形状をなしている。隙間6は、内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5との直接的導通を回避し、両者を電気的に絶縁する絶縁空間として機能することができる。隙間6の隙間幅は、多孔質浄水部材3の軸長方向にわたり、均一または実質的に均一とされている。
【0028】
内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5との双方は、多孔質の活性炭ブロックフィルターであり、混練した材料を加圧成形して厚肉状の成形体とし、成形体を焼成した後に、所定のサイズに研削して形成したものである。混練した材料は、細孔を有する粉末状の活性炭と、電気抵抗を減少させて電気伝導度を向上させる黒鉛粉末と、結合材と、水とを所定の重量比で配合している。混練した材料の配合割合としては、活性炭と黒鉛粉末と結合材との合計量を100%としたとき、一般的には、重量比で、活性炭は30〜60%、黒鉛粉末は5〜10%、結合材は30〜60%とされている。但し、配合割合はこれに限定されるものではない。
【0029】
内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5については、気孔率としては適宜選択されるが、例えば体積比で10〜80%範囲内に適宜設定できる。但し気孔率はこれに限定されるものではない。このような微細な水透過層であれば、内側多孔質浄水部材4および外側多孔質浄水部材5の微生物の繁殖が抑え易い利点がある。また、含水した活性炭は、一般的に、空気中ではよく酸素を吸着し、水中では水中を拡散してくる電解水素ガスについても多量に吸蔵することが本発明者の試験により確認された。
【0030】
上記した結合材としては、アルミナ系またはシリカ系等の無機バインダを用いてもよいし、あるいは、焼結する必要のない樹脂、殊に、熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン)の粉末を用いても良い。内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5は、水に含まれている塵埃を除去する他に、水に含まれる次亜塩素酸(以下塩素という)等を化学反応で除去する水浄化性を有し、更に細孔により、水に溶解したトリハロメタン類等の有害物質を吸着する水浄化性を有する。
【0031】
本実施例に係る内側多孔質浄水部材4、外側多孔質浄水部材5によれば、内側多孔質浄水部材4、外側多孔質浄水部材5の水透過層を形成する細孔の径としては、平均で、0.1〜100ミクロン、特に0.3〜50ミクロン、殊に0.3〜20ミクロンとすることができる。但し細孔径は上記した範囲に限定されるものではない。
【0032】
前記したように、内側多孔質浄水部材4は中央孔4aをもつ厚肉状の円筒形状をなす。外側多孔質浄水部材5は、内側多孔質浄水部材4を軸芯状に配置して環状の隙間6を形成する中央孔5aをもつ厚肉状の円筒形状をなしている。
【0033】
本実施例では、図1に示すように、内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5の軸端付近の損傷等を防ぐため、内側多孔質浄水部材4および外側多孔質浄水部材5を略同心円状に配置して構成した多孔質浄水部材3の軸端には、樹脂またはゴム等の高分子材料で形成されたシールキャップ70,71(閉鎖部)が接着剤により接着されている。シールキャップ70,71は電気絶縁性およびシール性を有する。
【0034】
図1に示すように、上側のシールキャップ70は、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の軸端面(上端面)を被覆するキャップ70aと、内側多孔質浄水部材4の内壁面4iの上部を被覆する内側被覆部70bと、外側多孔質浄水部材5の外壁面5kの上部を被覆する外側被覆部70cとを備えている。
【0035】
図1に示すように、下側のシールキャップ71は、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の軸端面(下端面)を被覆するキャップ71aと、内側多孔質浄水部材4の内壁面4iの下部を被覆する内側被覆部71bと、外側多孔質浄水部材5の外壁面5kの下部を被覆する外側被覆部71cとを備えている。
【0036】
シールキャップ70,71は、隙間6の隙間幅を維持するための隙間維持手段としても機能することができる。またシールキャップ70,71により、内側多孔質浄水部材4および外側多孔質浄水部材5の軸端面(上端面4u,下端面4d)から浄化不充分の水が浸入することが抑止される。即ち、内側多孔質浄水部材4の外壁面4kおよび外側多孔質浄水部材5の外壁面5kから水が半径方向内方(矢印W方向,求心方向)に向けて内側多孔質浄水部材4および外側多孔質浄水部材5の内部に進入できるようにされている。
【0037】
吐水用の内筒部材として機能するセンターパイプ22はパイプ孔で形成された通路22wを有し、周壁に多数の通孔を有する。センターパイプ22は、内側多孔質浄水部材4の中央孔4a内に縦型で設置されている。容器10の底蓋11には係合部材としてのエルボ23が溶接で固定されている。
【0038】
電装収容部13は、電源からのリード線を通す開口13c、LED27a,27bを有する。LED27aは、内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5とに電圧が印加されており、電解室(即ち、内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5との間の環状の隙間6に相当)において電気分解が生じているときに点灯するものである。従ってLED27aは、浄水器において電気分解処理が行われていることを使用者に報知する第1報知手段として機能する。LED27bは、浄水器において電気分解処理が行われていないことを使用者に報知する第2報知手段として機能する。従ってLED27bは、電気分解で発生したガスが内側多孔質浄水部材4および外側多孔質浄水部材5に吸蔵されていることを報知するガス吸蔵報知手段としても機能できる。
【0039】
本実施例によれば、図3に示すように、発生した水素量を還元電位に置き換えて表示する表示部26が電装収容部13の外面側に使用者により視認できる位置に設けられている。還元電位のセンシングについては、図1に示すように、センサー27で行っている。センサー27の検出部27fはセンターパイプ22の上側に位置している。センサー27の図示していないマイコンを持った出力部は結露、浸水等を考慮すれば、電装収容部13に水密構造で設置することが好ましい。
【0040】
図1に示すように容器1の側部には、給水室14に水を供給する給水部29、給水部29に連通する1次浄化部として機能するフィルタ部90が設置されている。給水部29はホース等の連結管29rを介して図略の水道の蛇口に接続されている。水道の蛇口が開放されると、水道水等の浄化前の原水が、給水部29の通路29aを介してフィルタ部90を透過し、予備処理として濾過される。
【0041】
フィルタ部90を通過して濾過された水は、フィルタ部90の中空室90wから給水部29の通路29cを経て、容器1内の給水室14のうち、外周側の給水隙間4xに導かれる。図1に示すように、給水隙間4xは、外側多孔質浄水部材5の外壁面5kと筒部10の内壁面10mとの間のリング状の隙間である。
【0042】
本実施例によれば、図1に示すように、内側多孔質浄水部材4の外壁面4kと外側多孔質浄水部材5の内壁面5iとは、これらの軸長方向に電解室となるリング状の環状の隙間6(隙間幅X0)を構成している。環状の隙間6は電解室となり、内側多孔質浄水部材4および外側多孔質浄水部材5における水の往路に設けられている。
【0043】
図2に示すように、内側多孔質浄水部材4の上端面4uには、給電端子17により給電体34が電気的に接触した状態で保持されている。給電体34は、導電材料(例えばチタン、チタン合金、合金鋼)にメッキ膜(例えば白金メッキ等)を被覆することにより形成されている。
バネ17cで付勢された第1給電端子17により、給電体34は内側多孔質浄水部材4に導電可能に圧接されており、圧接により給電端子34と内側多孔質浄水部材4との間の通電抵抗が軽減されており、給電性が確保されている。これにより内側多孔質浄水部材4は、第1給電端子17と接続されて第1電極A1とされている。
【0044】
図2に示すように、給電体35も同様に導電材料(例えばチタン、チタン合金、合金鋼)にメッキ膜(例えば白金メッキ等)を被覆することにより形成されている。バネ18cで付勢された第2給電端子18により、給電体35は外側多孔質浄水部材5に導電可能に圧接されており、圧接により第2給電端子18と外側多孔質浄水部材5との間における通電抵抗が軽減されており、給電性が確保されている。これにより外側多孔質浄水部材5は、第2給電端子18と接続されて第2電極A2とされている。図1,図2に示すように、給電端子17,18は多孔質浄水部材3のうちの同一面側(上端面側)に配置されているため、多孔質浄水部材3に対する給電に有利である。
【0045】
なお、直流電圧を第1電極A1及び第2電極A2に印加した場合には、直流電圧の陽極(+極)側においては、印加電流値にもよるが、陽極(+極)側を金属等で形成している場合には、これらは酸化して、溶出したり、酸化膜を形成して導通を悪くしたりするおそれがある。
【0046】
この点について本実施例によれば、第1電極A1と第2電極A2との間に直流電圧を印加するときには、外側の給電端子18,外側の第2電極A2は陰極とされているため、従来生じていた容器1や給電体34,35等における陽極酸化現象、陽極溶出現象を抑制するのに有利となる。
【0047】
浄水器を使用する際には、給水部29に繋がる水道の蛇口を開く。すると、図1において、浄化すべき水は、給水部29の給水路29aを経てフィルタ部90に至り、フィルタ部90で予備的に濾過された後に、筒部10の内壁面10mと外側多孔質浄水部材5の外壁面5kとの間の環状の給水隙間4xに供給される。給水隙間4xに供給された水は、外側多孔質浄水部材5の外壁面5kから外側多孔質浄水部材5の内部に矢印W方向に沿って進入して外側多孔質浄水部材5の透過層5cで浄化され、ついで、内側多孔質浄水部材4の外壁面4kから内側多孔質浄水部材4の内部に進入して透過層4cで浄化され、内側多孔質浄水部材4の中央孔4aに到達する。
【0048】
内側多孔質浄水部材4の中央孔4aに到達した浄化水は、センターパイプ22の通路22wを通り、センターパイプ22の下方の端部に設けられている係合部材としてのエルボ23の通路23cを経て吐出部36から器外に吐出される。
【0049】
本実施例によれば、使用の際には、図1に示すように、内周側に配置されている内側多孔質浄水部材4に給電する第1給電端子17が陽極(+極)側となり,外周側に配置されている外側多孔質浄水部材5に給電する第2給電端子18が陰極(−極)側となるように、給電端子17,18に直流電圧を印加する。このため内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5との間の環状の隙間6(例えば2ミリメートルに設定できるが、これに限定されるものではない)における電気分解によって、ガスが隙間6内に発生する。水素ガス及び酸素ガスが発生すると推察される。
【0050】
さて電解室である環状の隙間6において生成したガスは、隙間6等に貯留されている水に溶解したり、あるいは、微小気泡となったりして電解室である隙間6の上部に溜まり、電解室である隙間6内の圧力を増加させる。このように電解室である隙間6内の圧力が増加すると、外側多孔質浄水部材5の内壁面5iから外側多孔質浄水部材5の内部にガス粒を送り込む作用、内側多孔質浄水部材4の外壁面4kから内側多孔質浄水部材4の内部にガス粒を送り込む作用が増加する。
【0051】
電解室である隙間6内の滞留水を多孔質浄水部材4,5の内部に押し出した段階で、電解室である隙間6の水の大部分が消失するため、水の電気分解が停止する。この際、電解室である隙間6の滞留水は、内側多孔質浄水部材4の側よりも、外側多孔質浄水部材5の側へは押し出されにくいものと推察される。外側多孔質浄水部材5は水圧が高い給水隙間4xに近いためと推察される。
【0052】
本実施例によれば、図1に示すように、吐出部36に接続される図略のホース先端部に逆止弁80を配置し、逆止弁80の逆止機能により電解室である隙間6内の圧力を高めに保持することもできる。図1に示すように、逆止弁80は、弁口80aを閉鎖する弁体80bと、弁体80bが弁口80aを閉鎖する方向に弁体80bを付勢すると共に開放設定圧力を規定する付勢バネ80cとをもつ。電気分解で生成したガスによって容器1内の圧力が逆止弁80の開放設定圧力よりも高くなると、逆止弁80が自動的に開放されるため、吐出部36から器外に浄水を吐出することができる。なお場合によっては逆止弁80を廃止し、手動または電動の開閉式の弁としても良い。
【0053】
上記のような本実施例においては、電解浄水器が使用されていない状態において、容器1の密閉性が維持される。このため、両多孔質浄水部材4,5の環状の隙間6に設けられた水を電気分解することにより発生したガスが、多孔質浄水部材3(4,5)の内部へ吸蔵されることが促進される。電解浄水器が使用されていない状態においては、電解室である環状の隙間6のガス圧力が増加しやすいためである。
【0054】
(電圧印加)
図4(A)〜図4(E)は、制御部50により給電端子17,18を介して第1電極A1及び第2電極A2に印加させるパルス状の直流電圧波形の代表的な形態を例示する。この場合、前述したように、内周側に配置されている内側多孔質浄水部材4に給電する給電端子17が陽極(+極)となり,外周側に配置されている外側多孔質浄水部材5に給電する給電端子18が陰極(−極)となるように、給電端子17,18に直流電圧を印加する。なお、直流電圧波形は図4(A)〜図4(E)に示す波形に限定されるものではなく、適宜変更できる。
【0055】
図4(A)〜図4(E)の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図4(A)は、交流を半波整流した半波整流波形を有する直流電圧のパルス状の波形を示す。図4(B)は矩形波波形を有する直流電圧のパルス状の波形を示す。図4(C)は三角波波形を有する直流電圧のパルス状の波形を示す。図4(D)は、三角波波形が連続する直流電圧のパルス状の波形を示す。図4(E)は、交流を全波整流した全波整流波形が連続する直流電圧のパルス状の波形を示す。
【0056】
図4(A)〜図4(E)に示すパルス状の各直流電圧波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEを備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEを備えている。増加領域UEの開始時刻から次の増加領域UEの開始時刻までの時間をTAとし、増加領域UEの開始時刻から減少領域DEの終了時刻までの時間をTBとすると、図4(A)〜図4(C)に示す形態によれば、TB/TAの割合、つまりデューティ比は5〜95%の範囲内、10〜90%の範囲内で設定することができる。すなわち、図4(A)〜図4(C)では、通電と断電、つまりオンとオフとが連続的に繰り返されている直流電圧波形とされている。
【0057】
上記したように本実施例によれば、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEを備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEを備えるパルス状の直流電圧波形を、給電端子17,18に印加すれば、電気分解が間欠的に行われることになるため、電解の際に発生するガス粒(水素ガス粒等)の成長の過大化を抑えるのに有利となる。更に、立ち下がり領域として機能する減少領域DEは、電解直後に生成したガス粒(水素ガス粒等)の生成箇所からの脱離を促進させるのに有利となり、ひいては小さいガス粒を生成させるのに有利となる。
【0058】
また本実施例によれば、多孔質浄水部材3は、隙間6を形成するように径方向において2つの内側多孔質浄水部材4,外側多孔質浄水部材5に分割されており、内側多孔質浄水部材4は第1給電端子17と接続されて第1電極A1とされていると共に、外側多孔質浄水部材5は第2給電端子18と接続されて第2電極A2とされている。このようにすれば、電解室となる隙間6を形成する外側多孔質浄水部材5の内壁面5i、内側多孔質浄水部材4の外壁面4kの表出面積を大きく確保することができる。ひいては多孔質浄水部材3における電解面積を大きく確保することができ、電解室となる隙間6における電解能力を大きくするのに有利である。更にガスを吸蔵させる多孔質浄水部材3のガス透過面積も大きく確保できるため、電解室となる隙間6における水の電気分解で生成したガスを、多孔質浄水部材3の細孔に吸蔵させるのに有利となる。
【0059】
一般的には、電解で発生した直後の水素等のガスは活性に富み、生体によい影響を与えるといわれている。本実施例によれば、電解室である隙間6は多孔質浄水部材間4,5によって形成されているため、電気分解で発生した直後の活性が高くて生体に良いとされるガスを多孔質浄水部材3に効果的に吸蔵させるのに有利である。
【0060】
図5(A)(B)は、制御部50により給電端子17,18を介して第1電極A1及び第2電極A2に印加させる直流電圧波形の代表的な他の形態を例示する。図5(A)(B)の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図5(A)によれば、この直流電圧波形は、継続する直流波形DPに、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEが併合されていると共に、更に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEが併合されている。図5(B)に示す直流電圧波形は、サインカーブ状の交流電圧と直流電圧Vxとを併合させて形成されている。この直流電圧波形は、直流電圧Vxに相当する分+側にバイアスされていると共に、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEと、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEとをもつ。
【0061】
なお、上記した実施例によれば、内周側に配置されている内側多孔質浄水部材4に給電する第1給電端子17が陽極(+極)側となり,外周側に配置されている外側多孔質浄水部材5に給電する第2給電端子18が陰極(−極)側となるように、給電端子17,18に直流電圧を印加するが、これに限らず、場合によっては、第1給電端子17が陰極(−極)側となり,外周側に配置されている外側多孔質浄水部材5に給電する第2給電端子18が陽極(+極)側となるように、給電端子17,18に直流電圧を印加することにしても良い。
【0062】
(第2実施例)
第2実施例は前記した第1実施例と基本的には同様の構成であり、図1〜図3に示す浄水器全体の構造を準用する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。第2実施例によれば、制御部50により直流電圧と交流電圧とを併合させて併合電圧(併合給電)を給電端子17,18に印加する。
【0063】
直流の場合、内周側に配置されている第1給電端子17が陽極(+極)となり,外周側に配置されている第2給電端子18が陰極(−極)となるように直流電圧を印加する。
【0064】
図6(A)〜図6(C)の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図6(A)は併合される交流電圧の波形を示す。図6(B)は半波整流した併合されるパルス状の直流電圧波形を示す。この直流電圧波形は交流電圧波形と位相を整合させている。これにより併合電圧(併合給電)における電圧減少を急激に行うことができる。図6(C)は、交流電圧と半波整流した直流電圧とを併合させた併合電圧の波形を示す。本実施例では、この併合電圧が給電端子17,18に印加される。
【0065】
図6(B)に示すパルス状の直流電圧波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEを備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEを備えている。直流電圧波形の増加領域UEは、交流電圧波形の増加領域UE’と同じ位相とされている。直流電圧波形の減少領域DEは、交流電圧波形の減少領域DE’と同じ位相とされている。
【0066】
図6(B)に示すパルス状の直流電圧波形において、増加領域UEの開始時刻から次の増加領域UEの開始時刻までの時間をTAとし、増加領域UEの開始時刻から減少領域DEの終了時刻までの時間(オン時間)をTBとすると、図6(B)では、TB/TAの割合、つまりデューティ比は5〜95%の範囲内、10〜90%の範囲内で設定することができる。すなわち、図6(B)に示すパルス状の直流電圧波形にでは、通電と断電、つまり、オンとオフとが繰り返されている直流電圧波形とされている。
【0067】
図6(C)に示す直流と交流とが混合した併合電圧の波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UE”を備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DE”を備えている。
【0068】
本実施例においても、電気分解現象が間欠的に行われることになるため、電解の際に発生するガス粒(水素ガス粒等)の成長の過大化を抑えるのに有利となる。
【0069】
また、図6(C)に示す併合電圧の波形によれば、パルス状の直流電圧波形がバイアス電圧となるため、+の電位を示すピーク値V+peakの絶対値は、−の電位を示すピーク値V−peakの絶対値よりも大きく設定されている。このため、電解の際に発生するガス粒(水素ガス粒等)の成長の過大化を抑えるのに有利となる。更に、併合電圧波形の立ち下がり領域として機能する減少領域DE”は、電圧減少の勾配が急となるため、電解直後に生成したガス粒(水素ガス粒等)の生成箇所からの脱離促進を期待でき、ひいては小さいガス粒を生成させるのに有利となる。
【0070】
第1電極A1、第2電極A2に導通される場合には、一般的には容器10等を構成する導通部材は分極されることがある。陽極(+極)に分極された部位では金属部品は陽極腐蝕を起こすおそれがある。しかしながら正電位・負電位が単位時間当たり多数回繰り返される交流電圧を直流電圧と共に第1電極A1及び第2電極A2に併合的に印加させているため、酸化、還元がサイクル数に基づいて単位時間当たり何回も繰り返されるので、陽極腐蝕、陽極溶出を抑えるのに有利となる。
【0071】
なお本実施例によれば、直流電圧の電圧値をVdとし、交流電圧の実効電圧をVaとしたとき、次の(1)〜(3)のうちのいずれかに設定することができる。
(1) Vd>Va
(2) Vd<Va
(3) Vd=Va
Vd>Vaであれば、直流電圧の影響を大きくでき、ガス粒の成長を抑制することを期待できる。Vd<Vaであれば、交流電圧の影響を大きくでき、従来生じていた陽極酸化現象、陽極溶出現象を抑制するのに期待できる。
【0072】
また、直流電圧を第1電極A1及び第2電極A2に印加する場合には、電解浄水器の使用が長期にわたると、陰極(−極)側には、炭酸カルシューム、炭酸マグネシューム等の生成物が堆積するが、これらの堆積を抑えるためにも、正電位・負電位が単位時間あたり多数回交互に繰り返される交流電圧を第1電極A1及び第2電極A2に印加するは、有効である。換言すれば本実施例によれば、第1電極A1及び第2電極A2に交流を直流電圧と共に印加することにしているため、陽極腐蝕の現象を抑え、且つ、陰極(−極)に集中的に炭酸カルシューム、炭酸マグネシューム等の生成物が堆積することを抑制するのに有利となり、メンテナンス等の面で有利となる。
【0073】
上記した交流電圧の周波数としては、500Hz以下、300Hz以下、200Hz以下を採用することができる。家庭に給電されている交流電圧を考慮すると、40〜70Hzの範囲内、殊に50〜60Hzの範囲内を採用することができる。具体的には通常の交流式家庭電器製品と同様に、50Hzまたは60Hzを採用することができる。
【0074】
図7は別の形態を示す。図7(A)〜図7(C)の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図7(A)は制御部50により併合される交流電圧の波形を示す。図7(B)は矩形パルス状の直流電圧波形を示す。この直流電圧波形は交流電圧波形と位相を整合させている。この場合、併合電圧における電圧減少を急激に行うことができる。図7(C)は、交流電圧と半波整流した直流電圧とを併合させた併合電圧の波形を示す。
【0075】
図7(B)に示すパルス状の直流電圧波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEを備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEを備えている。直流電圧波形の増加領域UEは、交流電圧波形の増加領域UE’と同じ位相とされている。
【0076】
図7(C)に示す直流と交流とが混合した併合電圧波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UE”を備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DE”を備えている。
【0077】
図8は更に別の形態を示す。図8(A)〜図8(C)の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図8(A)は併合される交流電圧の波形を示す。図8(B)は矩形パルス状の直流電圧波形を示す。この直流電圧波形は交流電圧波形と位相を整合させている。図8(C)は、交流電圧と半波整流した直流電圧とを併合させた併合電圧の波形を示す。
【0078】
図8(B)に示すパルス状の直流電圧波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UEを備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DEを備えている。直流電圧波形の増加領域UEは、交流電圧波形の増加領域UE’と同じ位相とされている。
【0079】
図8(C)に示す直流と交流とが混合した併合電圧波形は、時間経過に伴い電圧が増加する立ち上がり領域として機能する増加領域UE”を備えると共に、増加後に減少する立ち下がり領域として機能する減少領域DE”を備えている。
【0080】
図7,図8に示す形態においても、電気分解現象が間欠的に行われることになるため、電解の際に発生するガス粒(水素ガス粒等)の成長の過大化を抑えるのに有利となる。
【0081】
(ブロック図)
図9は、直流電圧波形を給電端子17,18に印加する場合における第1実施例に係る制御部50のブロック図の代表的な例を示す。図9に示す例では、商用電源100の交流電圧に対して電圧を変化させて変圧後の交流電圧を生成する変圧回路102、変圧後の交流電圧を半波整流する整流回路104が設けられており、半波整流されたパルス状の直流電圧波形を給電端子17,18に給電する。
【0082】
図10は、直流電圧と交流電圧とを併合させた併合電圧を給電端子17,18に印加する場合における第2実施例に係る制御部50のブロック図の代表的な例を示す。図10に示す例では、商用電源100の交流電圧に対して電圧を変化させて変圧後の交流電圧を生成する変圧回路106、変圧後の交流電圧を半波整流して半波整流を生成する整流回路104が設けられている。これにより。直流電圧と交流電圧とを併合させた併合電圧を給電端子17,18に印加させることができる。
【0083】
図11、図12は、矩形波パルス状の直流電圧波形を給電端子17,18に印加する場合における第1実施例に係る制御部50のブロック図の代表的な例を示す。図11に示す例によれば、のこぎり波V1の電圧波形を生成するのこぎり波発生回路150,基準電圧V2の波形を生成する基準電圧設定回路152、のこぎり波E1の電圧と基準電圧V2の電圧とを比較する比較器154、比較器154の信号V3を増幅する増幅回路156が設けられている。
【0084】
図12(A)(B)に示すように、のこぎり波V1の電圧が基準電圧V2の電圧よりも高いときに、比較器154は矩形パルスの信号V3を出力し、増幅回路15は信号V3を増幅させる。これにより増幅された矩形パルスの直流電圧V4を給電端子17,18に給電する。基準電圧設定回路152により基準電圧V2の電圧値の高低を調整すれば、信号V3のデューティ比が調整され、ひいては、給電端子17,18に給電する矩形パルスの直流電圧V4のオン時間を意味するデューティ比が調整され、電解条件が調整される。なお、のこぎり波V1の電圧が基準電圧V2の電圧よりも低いときに、比較器154は矩形パルスの信号V3を出力することにしても良い。
【0085】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した各実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。例えば上記した各部品の形状、構造、サイズ、材質等は上記したものに限定されるものではない。印加される電圧値等は、上記した値に限定されるものではない。浄化前の原水としては水道水に限定されるものではなく、井戸等の水でも良い。給電端子17,18は他の形状及び他の構造でも良く、要するに多孔質浄水部材に給電できるものであれば良い。水は、多孔質浄水部材3の求心方向に通過するが、これに限らず逆でも良い。図1に示す実施例では、内側多孔質浄水部材4の上端面4u及び外側多孔質浄水部材5の上端面5uに給電端子17,18を設け、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の上側から給電することにしているが、これに限らず、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の下側から給電することにしても良い。あるいは、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の下側及び上側の双方から給電することにしても良い。上記した実施例では、内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5とは円筒形状とされているが、場合によっては円錐筒形状、角筒形状でも良い。内側多孔質浄水部材4と外側多孔質浄水部材5と活性炭系とされているが、これに限定されるものではなく、要するに水を浄化できるもので有ればよい。水は、内側多孔質浄水部材4及び外側多孔質浄水部材5の半径方向外方に向けて透過するようにしても良い。また水は、内側多孔質浄水部材及び外側多孔質浄水部材の軸長方向に沿って透過するようにしても良い。給電端子17,18は、内側多孔質浄水部材及び外側多孔質浄水部材の上端面の側に設けられているが、下端面側に設けても良いし、あるいは、下端面及び上端面のうちの少なくとも一方に食い込ませても良い。第2実施例によれば、直流の場合、内周側に配置されている第1給電端子17が陽極(+極)となり,外周側に配置されている第2給電端子18が陰極(−極)となるように直流電圧を印加するが、場合によっては、逆にしても良く、第1給電端子17が陰極(−極)となり,外周側に配置されている第2給電端子18が陽極(+極)となるように直流電圧を印加することにしても良い。
【0086】
【発明の効果】
本発明に係る電解浄水器によれば、時間経過に伴い増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、第1電極と第2電極との間に印加(給電)することにより、給水室内の水を電気分解させるようにしている。このため電気分解で生成されるガス粒のサイズの過剰成長を抑制するのに有利である。
【0087】
本発明に係る電解浄水器によれば、電気分解で発生した直後の活性が高くて生体に良いとされるガスを多孔質浄水部材に効果的に吸蔵させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る電解浄水器を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る電解浄水器の要部を示す拡大縦断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る電解浄水器を示す外観図である。
【図4】パルス状の直流電圧を印加する場合における波形図である。
【図5】パルス状の直流電圧を印加する場合における他の形態に係る波形図である。
【図6】パルス状の直流電圧と交流電圧とを併合させる場合における波形図である。
【図7】パルス状の直流電圧と交流電圧とを併合させる場合における他の形態に係る波形図である。
【図8】パルス状の直流電圧と交流電圧とを併合させる場合における他の形態に係る波形図である。
【図9】パルス状の直流電圧を印加する場合におけるブロック図である。
【図10】パルス状の直流電圧と交流電圧とを併合させる場合におけるブロック図である。
【図11】パルス状の直流電圧を印加する場合におけるブロック図である。
【図12】パルス状の直流電圧を印加する場合における波形図である。
【符号の説明】
図中、1は容器、10は筒部、3は多孔質浄水部材、4は内側多孔質浄水部材、5は外側多孔質浄水部材、17,18は給電端子、29は給水部、36は吐出部、50は制御部を示す。
Claims (14)
- 給水室をもつ容器と、前記容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、前記容器の給水室に給水する給水部と、前記容器の給水室内の前記多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
第1電極及び第2電極が前記給水室内に設けられており、
時間経過に伴い増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、前記第1電極と前記第2電極との間に印加することにより、前記給水室内の水を電気分解させるようにしていることを特徴とする電解浄水器。 - 請求項1において、電圧または電流はパルス状の直流であることを特徴とする電解浄水器。
- 請求項1または請求項2において、電圧は、交流を半波整流した半波整流波形、三角波波形、矩形波波形の少なくとも一つを有することを特徴とする電解浄水器。
- 給水室をもつ容器と、前記容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、前記容器の給水室に給水する給水部と、前記容器の給水室内の前記多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
第1電極及び第2電極が前記給水室内に設けられており、
時間経過に伴い増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた直流と、交流とを併せた併合給電を、前記第1電極と前記第2電極との間に印加することにより、前記給水室内の水を電気分解させるようにしていることを特徴とする電解浄水器。 - 請求項4において、直流は、交流を半波整流した半波整流波形、三角波波形、矩形波波形の少なくとも一つを有することを特徴とする電解浄水器。
- 請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、前記第1電極及び前記第2電極のうちの少なくとも一方は、前記多孔質浄水部材で形成されていることを特徴とする電解浄水器。
- 給水室をもつ容器と、前記容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、前記容器の給水室に給水する給水部と、前記容器の給水室内の前記多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
前記多孔質浄水部材は、互いに対面する第1多孔質浄水部材及び第2多孔質浄水部材で形成されており、
前記第1多孔質浄水部材は第1給電端子とされて第1電極とされていると共に、前記第2多孔質浄水部材は第2給電端子と接続されて第2電極とされており、
時間経過に伴い増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた電圧または電流を、前記第1給電端子と前記第2給電端子とを介して前記第1電極と前記第2電極との間に印加することにより、前記給水室内の水を電気分解するようにしていることを特徴とする電解浄水器。 - 請求項7において、電圧は直流電圧であることを特徴とする電解浄水器。
- 請求項7または請求項8において、電圧は、交流を半波整流した半波整流波形、三角波波形、矩形波波形の少なくとも一つを有することを特徴とする電解浄水器。
- 給水室をもつ容器と、前記容器の給水室に収容された水浄化性を有する多数の細孔をもつ多孔質浄水部材と、前記容器の給水室に給水する給水部と、前記容器の給水室内の前記多孔質浄水部材で浄化された水を器外に吐出する吐出部とを有する電解浄水器であって、
前記多孔質浄水部材は、互いに対面する第1多孔質浄水部材及び第2多孔質浄水部材で形成されており、
前記第1多孔質浄水部材は第1給電端子とされて第1電極とされていると共に、前記第2多孔質浄水部材は第2給電端子と接続されて第2電極とされており、
時間経過に伴い電圧が増加する増加領域を備えると共に増加後に減少する減少領域を備えた直流と、交流とを併せた併合給電を、前記第1電極と前記第2電極との間に印加することにより、前記給水室内の水を電気分解させるようにしていることを特徴とする電解浄水器。 - 請求項10において、直流電圧は、交流を半波整流した半波整流波形、三角波波形、矩形波波形の少なくとも一つを有することを特徴とする電解浄水器。
- 請求項7〜請求項11のうちのいずれか一項において、前記第1多孔質浄水部材及び前記第2多孔質浄水部材は、隙間を形成するように対面しており、前記第1多孔質浄水部材と前記第2多孔質浄水部材との間の隙間の隙間幅を維持する隙間維持手段が設けられていることを特徴とする電解浄水器。
- 請求項7〜請求項12のうちのいずれか一項において、前記第1多孔質浄水部材及び前記第2多孔質浄水部材のうちの一方は、前記給水室の外周側に配置されて陰極とされており、前記第1多孔質浄水部材及び前記第2多孔質浄水部材のうちの他方は、前記給水室の内周側に配置されて陽極とされていることを特徴とする電解浄水器。
- 請求項4または請求項10において、直流の電圧値をVdとし交流の実効電圧をVaとしたとき、次の(1)〜(3)のうちのいずれかに設定されていることを特徴とする電解浄水器。
(1) Vd>Va
(2) Vd<Va
(3) Vd=Va
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