JP2004300345A - 水性塗料組成物、防汚性部材及び塗膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】汚れの易洗浄性、汚れの低付着性などを有する塗膜を1回の塗布にて形成することができ、さらに、着色顔料などにより基材が本来持つものとは異なる意匠を付与することができる膜厚を有す塗膜を、1回の塗布にて形成することのできる水性塗料組成物を提供する。
【解決手段】(a)アクリル系樹脂エマルジョンと、(b)シリカ粒子と、(c)水と、(d)顔料と、を少なくとも含んだ水性塗料組成物であって、前記(a)成分は炭素数2〜7のアルキルアクリレート、炭素数2〜7のアルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを重合させたものであり、かつ(b)成分の平均粒子径が50nm以下であり、かつ(b)成分が全固形分の10〜70重量%である。
【選択図】なし
【解決手段】(a)アクリル系樹脂エマルジョンと、(b)シリカ粒子と、(c)水と、(d)顔料と、を少なくとも含んだ水性塗料組成物であって、前記(a)成分は炭素数2〜7のアルキルアクリレート、炭素数2〜7のアルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを重合させたものであり、かつ(b)成分の平均粒子径が50nm以下であり、かつ(b)成分が全固形分の10〜70重量%である。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易洗浄性および低汚染性に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物、該塗膜が形成された被覆物品および該塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、構造物や建造物の表面を被覆する塗膜には、基材を外気から遮断し保護する目的や着色等により基材が本来持つものとは異なる意匠を付与する目的以外に、さまざまな機能を付与することが提案され、実用化されている。汚れに対する易洗浄性についても、基材を被覆することで、汚れの易洗浄性や汚れの低付着性を発現する塗料が実用化されている。例えば、基材表面に複数の金属種からなる酸化物を含む表層部が形成されており、かつ前記層の最表面にはM1−O−M2及び/またはM1−O−M1(M1,M2は異なる金属種)結合が形成されていることを特徴とするトンネル用内装材や、アルカリ珪酸塩を含む表層部が形成されていることを特徴とするトンネル用内装材が提供されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、これら汚れの易洗浄性や低付着性を有する部材は、加熱または焼成といった煩雑な成膜工程が必要であり、簡便な塗膜形成工程の実現が課題である。また、表層部の膜厚は0.1〜10μmと薄膜であり、顔料等の着色剤により基材が本来持つものとは異なる意匠を付与する目的に用いることは困難である。
【0004】
また、基材表面に、撥油性物質と光触媒粒子を含む塗膜が形成されており、前記塗膜の表面には、前記撥油性物質と前記光触媒粒子が共に露出されており、前記光触媒粒子の少なくともその一部の粒子は、粒子の一部が外気に接するように露出されていることを特徴とする防汚建材が提供されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、塗布工程が2工程、すなわち、基材表面に前記撥油性物質を含む樹脂を被覆し、完全硬化する前に前記光触媒粒子分散液を該撥油物質表面に均一に被覆し、その後完全に硬化させる方法や、基材表面にバインダーを被覆し、完全硬化するまえに、前記光触媒粒子分散液と前記撥油性物質を含む樹脂を、別々に、または同時に、または混合して該バインダー表面に均一に被覆し、その後バインダーを完全に硬化させる方法である。かつ最表面の乾燥制御に風、熱、光のいずれか1つ以上を用い、最表面側から一方的に与える必要があり、簡便な塗膜形成工程とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】特開2000−291390号公報
【特許文献2】特開2000−96800号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前記技術的課題を背景になされたもので、その課題は、汚れの易洗浄性、汚れの低付着性などを有する塗膜を1回の塗布にて形成することのできる水性塗料組成物、さらに、着色顔料などにより基材が本来持つものとは異なる意匠を付与することができる膜厚を有す塗膜を、1回の塗布にて形成することのできる水性塗料組成物、および該塗膜が形成された被覆物品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記課題を解決すべく、(a)アクリル系樹脂エマルジョンと、(b)シリカ粒子と、(c)水と、(d)顔料とを必須成分とし、前記(a)がC2〜C7アルキルアクリレート、C2〜C7アルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを重合させたものであり、かつ(b)の平均粒子径が50nm以下であり、さらに(b)が全固形分の10〜70重量%であることを特徴とする水性塗料組成物をを提供する。また、前期塗料組成物を被覆物対象の基材表面に塗布し、シリカの濃度が外気と接する塗膜最表面側近傍で大きく分布するように濃度勾配を有した傾斜組成塗膜を提供する。
本発明のシリカの濃度勾配を有す傾斜組成塗膜は水性塗料組成物が塗布製膜される過程の配向により形成されるため、塗膜形成工程が簡便である。さらに、組成が連続的に傾斜した密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【0009】
前記したようにシリカ粒子が外気と接する塗膜最表面側近傍で大きく分布するように濃度勾配を有した傾斜組成塗膜を形成することにより、塗膜表面のシリカ層が本来有する親水性に加え、空気中の水分や洗浄水中の水を吸着、吸湿することにより、さらに親水撥油化される。塗膜の水との接触角が30度以下程度に親水化されると同時に水中でのオレイン酸の接触角は70度以上の高い角度を示す。
【0010】
このように親水撥油化された表面には、食品加工や調理の際に飛び散る油のような疎水性の物質は付着しにくい。また、親水撥油化された表面は大気中の湿分を吸着するので、静電気帯電しにくい。塗膜の帯電半減期は極端に短くなり、10秒以下を示す。従って、浮遊煤塵を静電気的に吸着しにくい。その結果、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜は汚れにくくなる。
【0011】
また、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜を、空気中の水分と接触させて、空気中の水分を吸湿することにより塗膜表面を親水撥油化させ、もって、疎水性の汚染物質が塗膜表面に付着するのを防止できる。
このように表面が親水撥油化された本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜は、必要に応じ塗膜表面に水を供給することにより極めて簡単に洗浄することができる。
即ち、親水撥油化された表面の水に対する親和力は、食品油や皮脂のような疎水性物質に対する親和力よりも大きい(表面に形成された薄膜焼成体の湿潤熱は、水に対する湿潤熱が油等の疎水性溶液に対する湿潤熱よりも高い)ので、表面に水を供給すると、表面に付着した汚れは水により表面から容易に釈放され、水により洗い流される。
水を含ませたスポンジなどで、水の供給を行うことで、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜の浄化が可能となり、簡便な方法で塗膜を清潔に保つことができる。
【0012】
また、本発明の塗料組成物は、周辺への影響、臭いなどの観点から問題がなく、建築物や車両等の室内の壁面や天井等の基材に塗布可能であり、基材に被膜を形成した場合に、基材と被膜との密着性が強固であり、耐久性にも優れた塗膜を形成することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分が全固形分の10重量%以上である。基材もしくは下塗り剤との密着性が増し、水性エマルジョンの硬化により得られるバインダーにより耐久性を有し、強度のある塗膜を得ることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、固形分濃度が20重量%以上であるようにする。さらに好ましくは35%以上であるようにする。
前記固形分濃度が20重量%以上であることで、塗料として適当な膜厚である膜厚1μm以上の塗膜が形成可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、シリカ粒子が全固形分の10〜70重量%、より好ましくは25〜60重量%であるようにする。
前記シリカ粒子が全固形分の10重量%以上であることで、被膜表面は水中での油の接触角が大きく、水洗いによる易洗浄機能を享受することが可能となる。また、塗膜が静電気帯電し難いことから、塵、埃などの汚れが付着し難く、かつその状態により長期に亘って維持されるようになる。
また、シリカ粒子が全固形分の70重量%未満であることで、アクリル樹脂系エマルジョンの硬化により得られるバインダーにより耐久性を有し、強度のある塗膜を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい形態を説明する。
まず、以下に本発明で用いる語について説明する。
本発明において、アクリル系樹脂エマルジョンは、ビニル系単量体としてC1〜C7アルキル(メタ)アクリレート類を主成分とするビニル共重合体であり、さらに、ビニル系単量体としてクロトン酸アルキル類、不飽和ニ塩基酸ジアルキル類、モノカルボン酸ビニルエステル類もしくは芳香族ビニル系単量体類の如き、各種の非官能性の単量体類、3級アミノ基、酸基、中和された酸基、アミド基、シアノ基、水酸基、エポキシ基、加水分解性シリル基の如き官能基を有する各種のビニル系単量体、さらに1分子あたり2個以上の重合性ニ重結合を有する多官能のビニル系単量体類を使用することができる。
【0017】
更に、上記アクリル系樹脂エマルジョンに架橋剤を加えた、架橋性タイプのものや、自己架橋タイプのものや、非架橋性タイプのもの等の各種乾燥(硬化)タイプのもの、一つのエマルジョン粒子中にシェル部と芯部からなるコアシェルタイプのもの、多段乳化重合法によりエマルジョン芯部より殻部へ段階的にモノマー組成を変えたタイプを利用することができる。
【0018】
「シリカ粒子」には、ガラス状シリカ、石英、無定型シリカ、シリカゲル、シリカ粉末、シリカゾルや、シリカ表面をアルミ等で被覆した各種被覆シリカ粒子、及び樹脂粒子や金属酸化物ゾル等の表面をシリカで被覆したシリカ被覆粒子、球状シリカ粒子、棒状シリカ粒子、球状シリカが連結したネックレス状シリカ粒子、等が利用できる。
【0019】
本発明の水性エマルジョン塗料においては、シリカ粒子と併用することのできる顔料として、水性エマルジョン塗料に一般的に用いられている無機着色顔料、有機着色顔料、無機体質顔料が利用できる。
無機着色顔料としては、酸化チタン白、チタンイエロー、スピネルグリーン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒などの金属酸化物系、アルミナホワイト、黄色酸化鉄などの金属水酸化物系、紺青などのフェロシアン化合物系、黄鉛、ジンクロメート、モリブデンレッドなどのクロム酸鉛系、硫化亜鉛、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、セレン化合物系、バライト、沈降性硫酸バリウムなどの硫酸塩系、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸塩系、含水珪酸塩、クレー、群青などの珪酸塩系、カーボンブラックなどの炭素系、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉末などの金属粉系、雲母・酸化チタン系などのパール顔料系などが挙げられる。
また、有機顔料としてはアントラキノン系、キナクドリン系、ペリレン系、イソインドリン系等のキノン系顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。
また、無機体質顔料としては、酸化チタンウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マイカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カリウム、珪砂、珪藻土、カオリン、クレー、セピオライト、陶土、炭酸バリウム等が好適である。これらの顔料はそれぞれ単独で使用しても、或いは2種以上を併用してもよく、例えば各種着色顔料及び/又は各種体質顔料とを併用することも可能である。
【0020】
水性エマルジョン塗料中でのこれらの顔料の配合量については、コロイダルシリカとその他の顔料とを合わせたPWCが30〜90、好ましくは40〜80となるように配合する。
【0021】
ここで、PWCとはPigment Weight Concentration (顔料質量濃度)のことであり、下記の式により算出される。
PWC=[(含有顔料質量%)/(全塗料固形分質量%)]×100
PWCが30未満である場合には、易洗浄性が十分に発揮されない。逆に90を越えると成膜性が低下し、塗膜に割れ、剥離等が発生する傾向があるので好ましくない。
【0022】
本発明の水性エマルジョン塗料において、コロイダルシリカはその他の顔料との合計配合量の10〜85質量%を占めることが好ましい。配合量が合計配合量の10質量%未満である場合には易洗浄性が十分には発揮されない。逆に配合量が合計配合量の85質量%を越える場合には成膜性が低下し、塗膜に割れ、剥離等が発生する傾向があるので好ましくない。
【0023】
本発明の自己浄化性水性塗料組成物には、さらに、Ag、Cu、Zn、Sn、Pbのような金属を塗料及び塗膜が変色しない程度に添加することができる。さらに、これら金属類を酸化チタンの表面に吸着させたコロイド溶液を添加することも可能である。
このような金属が添加された表面層は、表面に付着した細菌や黴や藻を死滅させることができ、よって防汚性をより向上させることができる。
【0024】
またさらに、一般に抗菌剤や防かび剤などに用いられる有機薬剤、たとえばジンクピリチオンやイミダゾール系薬剤、チアゾールやイソチアゾール系薬剤、フェノール系薬剤、ブロム系薬剤、ヨウド系薬剤についても塗料及び塗膜が変色しない範囲で添加しても良い。
【0025】
その他、公知の変色防止剤を任意に添加しても良い。例えば、メチルベンゾトリアゾールやメチルベンゾトリアゾールのカリウム塩、3−ベンゾトリアゾール−5−t−ブチル−4−ヒドロキシプロピオン酸メチルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の水性エマルジョン塗料は、以上に説明したアクリル樹脂系エマルジョン及びシリカ粒子及び水及び無機顔料を必須成分として含有し、その上に、必要に応じて、メタノール、エタノール、メチルセロソルブ、エチレングリコール等の各種親水性有機溶剤、中和剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、凍結防止剤、造膜助剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含有することもできる。しかし、塗料に関しては、近年、作業環境、周辺への影響、臭いなどの観点から、溶剤系塗料よりも水系塗料(水性塗料)、特に造膜助剤などの溶剤を含まない、もしくはほとんど含まない塗料を用いる傾向が高まりつつあり、揮発性有機溶剤を含有しないことが好ましい。
【0027】
本発明の塗料組成物は、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、羽根式攪拌機、マグネチックスターラー、高速分散機、乳化機、自転公転プロペラレス混和機などにて混合、分散処理を行う。
【0028】
本発明の塗料組成物で被覆可能な基材としては、無機材料、金属材料、有機材料あるいはそれらの複合体であり、特に限定されるものではない。例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリ−ト、タイル、目地、窯業系無機質板、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体、それらの表面に有機または無機の皮膜やフィルムを有するもの等である。
窯業系無機質板とは、繊維強化セメント板、珪酸カルシウム板、スレート板、パーライトセメント板、ALC、GRC、窯業系サイディング等の基材であり、特に限定されない。プラスチック基材とは、繊維強化プラスチック、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリプロピレン(PP)、アクリルブタジレンスチレン共重合体樹脂(ABS)樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の成形体およびフィルム状にしたものが挙げられ、特に限定しない。有機被膜としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、メタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等の被膜が挙げられ、無機被膜としては、アルカリシリケート系、りん酸系、ほう酸系等の被膜が挙げられるが、特に限定しない。
【0029】
本発明の塗料組成物は易洗浄性、低汚染性を期待される物品に適用される。該塗膜被覆物品としては、建築物や構造物や車輌の外装や内装などが挙げられ、より具体的には、屋根材、瓦、カラートタン、カラー鉄板、窯業系建材、サイディング材、セメント壁、アルミサイディング、カーテンウォール、塗装鋼板、石材、ALC、タイル、ガラスブロック、サッシ、ビルサッシ、網戸、雨戸、門扉、出窓、天窓、窓枠、トップライト、カーポート、サンルーム、ベランダ、ベランダ手すり、屋根樋、板ガラス、着色ガラス、ガラス用フィルム、太陽熱温水器等の集熱器用カバ−、エアコン室外機、店舗看板、サイン、広告塔、ショーケース、ショーウィンドウ、冷蔵・冷凍ショーケース、シャッタ−、屋外ベンチ、自動販売機、遮音壁、防音壁、道路化粧板、ガードフェンス、桁美装板、トンネル内装板、道路反射鏡、標識板、碍子、保護板、保護膜、料金所、料金ボックス、街灯、道路、舗装路、舗道、プラント外壁、プラント内壁、石油貯蔵タンク、煙突、機械装置、農業用ガラス、ガラス温室、ビニールハウス、テント、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オ−トバイ、自動車用ガラス、キッチン設備部材、浴室設備部材、衛生陶器、陶磁器、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ−ド、換気扇、フィルム、ワッペンなどが挙げられる。
【0030】
本発明による塗膜被覆物品は、その表面を易洗浄性、低汚染性などにしたい部位を含む基材の表面に塗料が塗布され、その後乾燥または硬化されて塗膜を形成する。
【0031】
ここで塗料組成物を塗布する手段はとくに限定されず、刷毛塗り、スポンジ塗り、スプレーコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどの方法が挙げられる。
【0032】
ここで塗膜の硬化は、室温放置、強制乾燥、加熱、紫外線照射等によって実施することができる。
【0033】
また、本発明の塗料組成物が適用される基材表面は清浄であることが好ましい。特に乗物筐体や建築物の内壁や外壁等、既設の基材に塗布する場合には、予め洗浄剤の使用など、公知の方法にて洗浄することが望ましい。
【0034】
本発明の水性エマルジョン塗料を用いる塗装方法においては、水性エマルジョン塗料の通常の塗装方法に従って、例えば被塗物表面にアンダーコート層を介して、又はアンダーコート層を介さないで製膜できる。アンダーコート層は有機樹脂塗膜、無機樹脂塗膜、粉体塗装用塗膜、電着塗装塗膜などに利用されるもので、公知の塗膜組成物塗膜の中から1種あるいは2種以上を併用して使用することができる。アンダーコート層は基材と塗膜とを強固に密着させる効果、基材の吸水や吸湿を抑える効果、基材の防錆の効果、立体的な凹凸模様を形成して特殊な意匠を付加する効果などを有することができる。
【0035】
本発明の塗膜に接して形成されるアンダーコート層としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フタル酸樹脂、アルキド樹脂、シリコンアルキド樹脂などの有機樹脂系塗膜や無機塗膜などを用いることができる。
【0036】
また、本発明の易洗浄性水性塗料組成物は、常温で硬化、塗膜を形成することができ、現場施工等には有利である。
【0037】
【実施例】
(塗料組成物の調製)
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。粒子径の測定は、光子相関分光法(PCS)により、測定機種としてMALVERN社のZETASIZER 3000HS を用いて測定した。なお、粒径はcumulant解析を使ったサイズ平均値である。なお、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0038】
実施例1
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)20.8重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックス40)21.7重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)23.2重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して127重量部であった。
【0039】
実施例2
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)9.6重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスS)32.9重量部、アクリル系エマルジョン(平均粒子径 150nm、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)23.2重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して127重量部であった。
【0040】
比較例1
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)8.1重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックス50)35.8重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル)22.7重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)21.7重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)11.7重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して124重量部であった。
【0041】
比較例2
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)42.5重量部、アクリル系樹脂エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)23.2重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して122重量部であった。
【0042】
比較例3
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)2重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスS)2重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)61.6重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して116重量部であった。
【0043】
比較例4
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスS)72重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)11.6重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)11.5重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)2.7重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)2.2重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して190重量部であった。
【0044】
比較例5
低汚染性を謳っている市販されている水性エマルジョン樹脂塗料
【0045】
(基材への塗布方法)
150mm×65mmに裁断した繊維強化セメント板(JIS A5430に準拠したもの)にウレタン変性アクリルエマルジョン系下塗り剤(スズカファイン、商品名サミプラホワイト)をローラー塗布し、室温で24時間乾燥させた。続いて、前記で調製した実施例1の塗料組成物をローラー塗りした。実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の塗料組成物及び市販の水性樹脂エマルジョン塗料(低汚染塗料)についても、前記塗布方法にしたがい塗布を行った。最後に、上記被塗装物を室温で7日間乾燥させて試験片1〜6を得た。
試験片1:実施例1の塗料を塗布
試験片2:実施例2の塗料を塗布
試験片3:比較例1の塗料を塗布
試験片4:比較例2の塗料を塗布
試験片5:比較例3の塗料を塗布
試験片6:比較例4の塗料を塗布
試験片7:比較例5の塗料を塗布
【0046】
また、50mm×50mmに裁断したポリカーボネイト板(JIS Aに準拠したもの)に微弾性下塗り剤(ジャパンハイドロテクトコーティングス株式会社、商品名RP11)をローラー塗布し、室温で24時間乾燥させた。
続いて、前記で調製した実施例1の塗料組成物をローラー塗りした。
実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の塗料組成物及び市販水性樹脂エマルジョン塗料(低汚染塗料)についても、前記塗布方法にしたがい塗布を行った。最後に、上記被塗装物を室温で7日間乾燥させて試験片7〜12を得た。
試験片8 :実施例1の塗料を塗布
試験片9 :実施例2の塗料を塗布
試験片10:比較例1の塗料を塗布
試験片11:比較例2の塗料を塗布
試験片12:比較例3の塗料を塗布
試験片13:比較例4の塗料を塗布
試験片14:比較例5の塗料を塗布
【0047】
次に、上記各試験片について、クラックの有無、密着性、耐アルカリ性、撥油性(水中油接触角を測定)を評価し、その結果を(表1)に示す。また、易洗浄性および塵、埃の付着性評価についてはその結果を(表2)に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
評価方法は以下の通りである。
クラックの有無:光学顕微鏡(キーエンス製VF−7500)を用いて試験片表面を観察してクラックの有無を確認した。
密着性:JIS K5600に基づく碁盤目試験法を行った。すなわち、作製した試験片の塗膜の上からカッターで2mm幅の碁盤目の切込みを入れた。大きさは1cm角にし、碁盤目の数を25個とした。その後その碁盤目を完全に覆うようにセロハンテープを貼り付けた。その後、すばやく引き剥がして付着して残っている碁盤目の数を数えた。
耐アルカリ性:水酸化カルシウム飽和水溶液に室温で7日間浸漬し、取り出した後蒸留水にて洗浄し、十分乾燥させた後、目視外観にて評価を行なった。
耐湿試験:JIS K5600に基づく耐湿試験を行った。すなわち、作成した試験片を50℃、95±5%の恒温恒湿槽に24時間放置、乾燥させた後、目視外観にて評価を行なった。
撥油性:オレイン酸の水中油接触角を、協和界面科学製CX−150を用いて測定した。
【0051】
油汚れの洗浄性評価は、食品油例えばサラダ油、オリーブ油、カノーラ油、ごま油などの主成分であるオレイン酸を用いた。予め乾燥秤量した試験片7〜12について、オレイン酸を100g/平方m滴下後、水を含ませたスポンジで洗浄し、50℃にて1時間乾燥という洗浄工程を10回繰り返した後に各試験片を秤量し、洗浄前後の重量差を求めた。
【0052】
低汚染性評価は、予め 色差を測定した試験片8〜14を試験用ダスト(JISZ 8901試験用ダスト 15種)に埋没させ、10秒間前後に振動させた後引き上げた後、試験片表面をエアーブローした。日本電色工業株式会社製NR−3000を用いて汚染前後の試験片の測定を行い、汚染前後での色差(ΔE)を求めた。
【0053】
(評価)(1)塗膜断面分析用試料、試験片9の塗膜表面及び試験片9を破断してサンプリングした破断面に白金を約50Åの厚さでコーティングして塗膜断面の分析用試料を作製した。
【0054】
(2)塗膜断面の観察、分析塗膜断面をSEM(日立製作所社製、S800)、EDX(堀場製作所社製、EMAX−2770)により分析した。SEMで観察した塗膜表面の二次電子像を図1、図2に示す。分析視野の光触媒性塗膜の膜厚は40μmであった。次いで、分析視野中央部、塗膜最表面から基材側界面まで線上にEDX分析を行った。シリコン(Si)にいて検出した塗膜最表面から基材側界面までのX線強度の変化を図2に示す。
【0055】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、油汚れの易洗浄効果、埃、塵汚れの低付着性効果が発揮される。また、プラスチックなどの有機系基材表面に形成する塗膜の厚みを厚くしても、クラックが発生せず、しかも剥離強度に優れた塗膜となる水性塗料組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の塗膜表面のSEM像である
【図2】比較例2の塗膜表面のSEM像である
【図3】実施例2の塗膜表面から基材まで各部位のシリコン(Si)X線強度(cps)である
【発明の属する技術分野】
本発明は、易洗浄性および低汚染性に優れた塗膜を形成できる水性塗料組成物、該塗膜が形成された被覆物品および該塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、構造物や建造物の表面を被覆する塗膜には、基材を外気から遮断し保護する目的や着色等により基材が本来持つものとは異なる意匠を付与する目的以外に、さまざまな機能を付与することが提案され、実用化されている。汚れに対する易洗浄性についても、基材を被覆することで、汚れの易洗浄性や汚れの低付着性を発現する塗料が実用化されている。例えば、基材表面に複数の金属種からなる酸化物を含む表層部が形成されており、かつ前記層の最表面にはM1−O−M2及び/またはM1−O−M1(M1,M2は異なる金属種)結合が形成されていることを特徴とするトンネル用内装材や、アルカリ珪酸塩を含む表層部が形成されていることを特徴とするトンネル用内装材が提供されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、これら汚れの易洗浄性や低付着性を有する部材は、加熱または焼成といった煩雑な成膜工程が必要であり、簡便な塗膜形成工程の実現が課題である。また、表層部の膜厚は0.1〜10μmと薄膜であり、顔料等の着色剤により基材が本来持つものとは異なる意匠を付与する目的に用いることは困難である。
【0004】
また、基材表面に、撥油性物質と光触媒粒子を含む塗膜が形成されており、前記塗膜の表面には、前記撥油性物質と前記光触媒粒子が共に露出されており、前記光触媒粒子の少なくともその一部の粒子は、粒子の一部が外気に接するように露出されていることを特徴とする防汚建材が提供されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、塗布工程が2工程、すなわち、基材表面に前記撥油性物質を含む樹脂を被覆し、完全硬化する前に前記光触媒粒子分散液を該撥油物質表面に均一に被覆し、その後完全に硬化させる方法や、基材表面にバインダーを被覆し、完全硬化するまえに、前記光触媒粒子分散液と前記撥油性物質を含む樹脂を、別々に、または同時に、または混合して該バインダー表面に均一に被覆し、その後バインダーを完全に硬化させる方法である。かつ最表面の乾燥制御に風、熱、光のいずれか1つ以上を用い、最表面側から一方的に与える必要があり、簡便な塗膜形成工程とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】特開2000−291390号公報
【特許文献2】特開2000−96800号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前記技術的課題を背景になされたもので、その課題は、汚れの易洗浄性、汚れの低付着性などを有する塗膜を1回の塗布にて形成することのできる水性塗料組成物、さらに、着色顔料などにより基材が本来持つものとは異なる意匠を付与することができる膜厚を有す塗膜を、1回の塗布にて形成することのできる水性塗料組成物、および該塗膜が形成された被覆物品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記課題を解決すべく、(a)アクリル系樹脂エマルジョンと、(b)シリカ粒子と、(c)水と、(d)顔料とを必須成分とし、前記(a)がC2〜C7アルキルアクリレート、C2〜C7アルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを重合させたものであり、かつ(b)の平均粒子径が50nm以下であり、さらに(b)が全固形分の10〜70重量%であることを特徴とする水性塗料組成物をを提供する。また、前期塗料組成物を被覆物対象の基材表面に塗布し、シリカの濃度が外気と接する塗膜最表面側近傍で大きく分布するように濃度勾配を有した傾斜組成塗膜を提供する。
本発明のシリカの濃度勾配を有す傾斜組成塗膜は水性塗料組成物が塗布製膜される過程の配向により形成されるため、塗膜形成工程が簡便である。さらに、組成が連続的に傾斜した密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【0009】
前記したようにシリカ粒子が外気と接する塗膜最表面側近傍で大きく分布するように濃度勾配を有した傾斜組成塗膜を形成することにより、塗膜表面のシリカ層が本来有する親水性に加え、空気中の水分や洗浄水中の水を吸着、吸湿することにより、さらに親水撥油化される。塗膜の水との接触角が30度以下程度に親水化されると同時に水中でのオレイン酸の接触角は70度以上の高い角度を示す。
【0010】
このように親水撥油化された表面には、食品加工や調理の際に飛び散る油のような疎水性の物質は付着しにくい。また、親水撥油化された表面は大気中の湿分を吸着するので、静電気帯電しにくい。塗膜の帯電半減期は極端に短くなり、10秒以下を示す。従って、浮遊煤塵を静電気的に吸着しにくい。その結果、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜は汚れにくくなる。
【0011】
また、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜を、空気中の水分と接触させて、空気中の水分を吸湿することにより塗膜表面を親水撥油化させ、もって、疎水性の汚染物質が塗膜表面に付着するのを防止できる。
このように表面が親水撥油化された本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜は、必要に応じ塗膜表面に水を供給することにより極めて簡単に洗浄することができる。
即ち、親水撥油化された表面の水に対する親和力は、食品油や皮脂のような疎水性物質に対する親和力よりも大きい(表面に形成された薄膜焼成体の湿潤熱は、水に対する湿潤熱が油等の疎水性溶液に対する湿潤熱よりも高い)ので、表面に水を供給すると、表面に付着した汚れは水により表面から容易に釈放され、水により洗い流される。
水を含ませたスポンジなどで、水の供給を行うことで、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜の浄化が可能となり、簡便な方法で塗膜を清潔に保つことができる。
【0012】
また、本発明の塗料組成物は、周辺への影響、臭いなどの観点から問題がなく、建築物や車両等の室内の壁面や天井等の基材に塗布可能であり、基材に被膜を形成した場合に、基材と被膜との密着性が強固であり、耐久性にも優れた塗膜を形成することができる。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分が全固形分の10重量%以上である。基材もしくは下塗り剤との密着性が増し、水性エマルジョンの硬化により得られるバインダーにより耐久性を有し、強度のある塗膜を得ることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、固形分濃度が20重量%以上であるようにする。さらに好ましくは35%以上であるようにする。
前記固形分濃度が20重量%以上であることで、塗料として適当な膜厚である膜厚1μm以上の塗膜が形成可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、シリカ粒子が全固形分の10〜70重量%、より好ましくは25〜60重量%であるようにする。
前記シリカ粒子が全固形分の10重量%以上であることで、被膜表面は水中での油の接触角が大きく、水洗いによる易洗浄機能を享受することが可能となる。また、塗膜が静電気帯電し難いことから、塵、埃などの汚れが付着し難く、かつその状態により長期に亘って維持されるようになる。
また、シリカ粒子が全固形分の70重量%未満であることで、アクリル樹脂系エマルジョンの硬化により得られるバインダーにより耐久性を有し、強度のある塗膜を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい形態を説明する。
まず、以下に本発明で用いる語について説明する。
本発明において、アクリル系樹脂エマルジョンは、ビニル系単量体としてC1〜C7アルキル(メタ)アクリレート類を主成分とするビニル共重合体であり、さらに、ビニル系単量体としてクロトン酸アルキル類、不飽和ニ塩基酸ジアルキル類、モノカルボン酸ビニルエステル類もしくは芳香族ビニル系単量体類の如き、各種の非官能性の単量体類、3級アミノ基、酸基、中和された酸基、アミド基、シアノ基、水酸基、エポキシ基、加水分解性シリル基の如き官能基を有する各種のビニル系単量体、さらに1分子あたり2個以上の重合性ニ重結合を有する多官能のビニル系単量体類を使用することができる。
【0017】
更に、上記アクリル系樹脂エマルジョンに架橋剤を加えた、架橋性タイプのものや、自己架橋タイプのものや、非架橋性タイプのもの等の各種乾燥(硬化)タイプのもの、一つのエマルジョン粒子中にシェル部と芯部からなるコアシェルタイプのもの、多段乳化重合法によりエマルジョン芯部より殻部へ段階的にモノマー組成を変えたタイプを利用することができる。
【0018】
「シリカ粒子」には、ガラス状シリカ、石英、無定型シリカ、シリカゲル、シリカ粉末、シリカゾルや、シリカ表面をアルミ等で被覆した各種被覆シリカ粒子、及び樹脂粒子や金属酸化物ゾル等の表面をシリカで被覆したシリカ被覆粒子、球状シリカ粒子、棒状シリカ粒子、球状シリカが連結したネックレス状シリカ粒子、等が利用できる。
【0019】
本発明の水性エマルジョン塗料においては、シリカ粒子と併用することのできる顔料として、水性エマルジョン塗料に一般的に用いられている無機着色顔料、有機着色顔料、無機体質顔料が利用できる。
無機着色顔料としては、酸化チタン白、チタンイエロー、スピネルグリーン、亜鉛華、ベンガラ、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒などの金属酸化物系、アルミナホワイト、黄色酸化鉄などの金属水酸化物系、紺青などのフェロシアン化合物系、黄鉛、ジンクロメート、モリブデンレッドなどのクロム酸鉛系、硫化亜鉛、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、セレン化合物系、バライト、沈降性硫酸バリウムなどの硫酸塩系、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムなどの炭酸塩系、含水珪酸塩、クレー、群青などの珪酸塩系、カーボンブラックなどの炭素系、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉末などの金属粉系、雲母・酸化チタン系などのパール顔料系などが挙げられる。
また、有機顔料としてはアントラキノン系、キナクドリン系、ペリレン系、イソインドリン系等のキノン系顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。
また、無機体質顔料としては、酸化チタンウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マイカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カリウム、珪砂、珪藻土、カオリン、クレー、セピオライト、陶土、炭酸バリウム等が好適である。これらの顔料はそれぞれ単独で使用しても、或いは2種以上を併用してもよく、例えば各種着色顔料及び/又は各種体質顔料とを併用することも可能である。
【0020】
水性エマルジョン塗料中でのこれらの顔料の配合量については、コロイダルシリカとその他の顔料とを合わせたPWCが30〜90、好ましくは40〜80となるように配合する。
【0021】
ここで、PWCとはPigment Weight Concentration (顔料質量濃度)のことであり、下記の式により算出される。
PWC=[(含有顔料質量%)/(全塗料固形分質量%)]×100
PWCが30未満である場合には、易洗浄性が十分に発揮されない。逆に90を越えると成膜性が低下し、塗膜に割れ、剥離等が発生する傾向があるので好ましくない。
【0022】
本発明の水性エマルジョン塗料において、コロイダルシリカはその他の顔料との合計配合量の10〜85質量%を占めることが好ましい。配合量が合計配合量の10質量%未満である場合には易洗浄性が十分には発揮されない。逆に配合量が合計配合量の85質量%を越える場合には成膜性が低下し、塗膜に割れ、剥離等が発生する傾向があるので好ましくない。
【0023】
本発明の自己浄化性水性塗料組成物には、さらに、Ag、Cu、Zn、Sn、Pbのような金属を塗料及び塗膜が変色しない程度に添加することができる。さらに、これら金属類を酸化チタンの表面に吸着させたコロイド溶液を添加することも可能である。
このような金属が添加された表面層は、表面に付着した細菌や黴や藻を死滅させることができ、よって防汚性をより向上させることができる。
【0024】
またさらに、一般に抗菌剤や防かび剤などに用いられる有機薬剤、たとえばジンクピリチオンやイミダゾール系薬剤、チアゾールやイソチアゾール系薬剤、フェノール系薬剤、ブロム系薬剤、ヨウド系薬剤についても塗料及び塗膜が変色しない範囲で添加しても良い。
【0025】
その他、公知の変色防止剤を任意に添加しても良い。例えば、メチルベンゾトリアゾールやメチルベンゾトリアゾールのカリウム塩、3−ベンゾトリアゾール−5−t−ブチル−4−ヒドロキシプロピオン酸メチルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の水性エマルジョン塗料は、以上に説明したアクリル樹脂系エマルジョン及びシリカ粒子及び水及び無機顔料を必須成分として含有し、その上に、必要に応じて、メタノール、エタノール、メチルセロソルブ、エチレングリコール等の各種親水性有機溶剤、中和剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、凍結防止剤、造膜助剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含有することもできる。しかし、塗料に関しては、近年、作業環境、周辺への影響、臭いなどの観点から、溶剤系塗料よりも水系塗料(水性塗料)、特に造膜助剤などの溶剤を含まない、もしくはほとんど含まない塗料を用いる傾向が高まりつつあり、揮発性有機溶剤を含有しないことが好ましい。
【0027】
本発明の塗料組成物は、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、羽根式攪拌機、マグネチックスターラー、高速分散機、乳化機、自転公転プロペラレス混和機などにて混合、分散処理を行う。
【0028】
本発明の塗料組成物で被覆可能な基材としては、無機材料、金属材料、有機材料あるいはそれらの複合体であり、特に限定されるものではない。例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリ−ト、タイル、目地、窯業系無機質板、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体、それらの表面に有機または無機の皮膜やフィルムを有するもの等である。
窯業系無機質板とは、繊維強化セメント板、珪酸カルシウム板、スレート板、パーライトセメント板、ALC、GRC、窯業系サイディング等の基材であり、特に限定されない。プラスチック基材とは、繊維強化プラスチック、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリプロピレン(PP)、アクリルブタジレンスチレン共重合体樹脂(ABS)樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の成形体およびフィルム状にしたものが挙げられ、特に限定しない。有機被膜としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、メタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等の被膜が挙げられ、無機被膜としては、アルカリシリケート系、りん酸系、ほう酸系等の被膜が挙げられるが、特に限定しない。
【0029】
本発明の塗料組成物は易洗浄性、低汚染性を期待される物品に適用される。該塗膜被覆物品としては、建築物や構造物や車輌の外装や内装などが挙げられ、より具体的には、屋根材、瓦、カラートタン、カラー鉄板、窯業系建材、サイディング材、セメント壁、アルミサイディング、カーテンウォール、塗装鋼板、石材、ALC、タイル、ガラスブロック、サッシ、ビルサッシ、網戸、雨戸、門扉、出窓、天窓、窓枠、トップライト、カーポート、サンルーム、ベランダ、ベランダ手すり、屋根樋、板ガラス、着色ガラス、ガラス用フィルム、太陽熱温水器等の集熱器用カバ−、エアコン室外機、店舗看板、サイン、広告塔、ショーケース、ショーウィンドウ、冷蔵・冷凍ショーケース、シャッタ−、屋外ベンチ、自動販売機、遮音壁、防音壁、道路化粧板、ガードフェンス、桁美装板、トンネル内装板、道路反射鏡、標識板、碍子、保護板、保護膜、料金所、料金ボックス、街灯、道路、舗装路、舗道、プラント外壁、プラント内壁、石油貯蔵タンク、煙突、機械装置、農業用ガラス、ガラス温室、ビニールハウス、テント、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オ−トバイ、自動車用ガラス、キッチン設備部材、浴室設備部材、衛生陶器、陶磁器、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ−ド、換気扇、フィルム、ワッペンなどが挙げられる。
【0030】
本発明による塗膜被覆物品は、その表面を易洗浄性、低汚染性などにしたい部位を含む基材の表面に塗料が塗布され、その後乾燥または硬化されて塗膜を形成する。
【0031】
ここで塗料組成物を塗布する手段はとくに限定されず、刷毛塗り、スポンジ塗り、スプレーコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどの方法が挙げられる。
【0032】
ここで塗膜の硬化は、室温放置、強制乾燥、加熱、紫外線照射等によって実施することができる。
【0033】
また、本発明の塗料組成物が適用される基材表面は清浄であることが好ましい。特に乗物筐体や建築物の内壁や外壁等、既設の基材に塗布する場合には、予め洗浄剤の使用など、公知の方法にて洗浄することが望ましい。
【0034】
本発明の水性エマルジョン塗料を用いる塗装方法においては、水性エマルジョン塗料の通常の塗装方法に従って、例えば被塗物表面にアンダーコート層を介して、又はアンダーコート層を介さないで製膜できる。アンダーコート層は有機樹脂塗膜、無機樹脂塗膜、粉体塗装用塗膜、電着塗装塗膜などに利用されるもので、公知の塗膜組成物塗膜の中から1種あるいは2種以上を併用して使用することができる。アンダーコート層は基材と塗膜とを強固に密着させる効果、基材の吸水や吸湿を抑える効果、基材の防錆の効果、立体的な凹凸模様を形成して特殊な意匠を付加する効果などを有することができる。
【0035】
本発明の塗膜に接して形成されるアンダーコート層としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フタル酸樹脂、アルキド樹脂、シリコンアルキド樹脂などの有機樹脂系塗膜や無機塗膜などを用いることができる。
【0036】
また、本発明の易洗浄性水性塗料組成物は、常温で硬化、塗膜を形成することができ、現場施工等には有利である。
【0037】
【実施例】
(塗料組成物の調製)
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。粒子径の測定は、光子相関分光法(PCS)により、測定機種としてMALVERN社のZETASIZER 3000HS を用いて測定した。なお、粒径はcumulant解析を使ったサイズ平均値である。なお、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0038】
実施例1
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)20.8重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックス40)21.7重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)23.2重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して127重量部であった。
【0039】
実施例2
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)9.6重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスS)32.9重量部、アクリル系エマルジョン(平均粒子径 150nm、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)23.2重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して127重量部であった。
【0040】
比較例1
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)8.1重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックス50)35.8重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル)22.7重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)21.7重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)11.7重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して124重量部であった。
【0041】
比較例2
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)42.5重量部、アクリル系樹脂エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)23.2重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して122重量部であった。
【0042】
比較例3
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスZL)2重量部、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスS)2重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)61.6重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)19.6重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)10.6重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)4.1重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して116重量部であった。
【0043】
比較例4
以下の原料を混合し、塗料組成物を調整した(重量部数は固形分で表示)。
コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名スノーテックスS)72重量部、アクリル系エマルジョン(アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)11.6重量部、着色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名MFカラーMF5765)11.5重量部、体質顔料(日本タルク株式会社、商品名 P−3)2.7重量部、体質顔料(大塚化学株式会社製、商品名 MTW−500)2.2重量部。
このときの水分量は固形分の合計100重量部に対して190重量部であった。
【0044】
比較例5
低汚染性を謳っている市販されている水性エマルジョン樹脂塗料
【0045】
(基材への塗布方法)
150mm×65mmに裁断した繊維強化セメント板(JIS A5430に準拠したもの)にウレタン変性アクリルエマルジョン系下塗り剤(スズカファイン、商品名サミプラホワイト)をローラー塗布し、室温で24時間乾燥させた。続いて、前記で調製した実施例1の塗料組成物をローラー塗りした。実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の塗料組成物及び市販の水性樹脂エマルジョン塗料(低汚染塗料)についても、前記塗布方法にしたがい塗布を行った。最後に、上記被塗装物を室温で7日間乾燥させて試験片1〜6を得た。
試験片1:実施例1の塗料を塗布
試験片2:実施例2の塗料を塗布
試験片3:比較例1の塗料を塗布
試験片4:比較例2の塗料を塗布
試験片5:比較例3の塗料を塗布
試験片6:比較例4の塗料を塗布
試験片7:比較例5の塗料を塗布
【0046】
また、50mm×50mmに裁断したポリカーボネイト板(JIS Aに準拠したもの)に微弾性下塗り剤(ジャパンハイドロテクトコーティングス株式会社、商品名RP11)をローラー塗布し、室温で24時間乾燥させた。
続いて、前記で調製した実施例1の塗料組成物をローラー塗りした。
実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の塗料組成物及び市販水性樹脂エマルジョン塗料(低汚染塗料)についても、前記塗布方法にしたがい塗布を行った。最後に、上記被塗装物を室温で7日間乾燥させて試験片7〜12を得た。
試験片8 :実施例1の塗料を塗布
試験片9 :実施例2の塗料を塗布
試験片10:比較例1の塗料を塗布
試験片11:比較例2の塗料を塗布
試験片12:比較例3の塗料を塗布
試験片13:比較例4の塗料を塗布
試験片14:比較例5の塗料を塗布
【0047】
次に、上記各試験片について、クラックの有無、密着性、耐アルカリ性、撥油性(水中油接触角を測定)を評価し、その結果を(表1)に示す。また、易洗浄性および塵、埃の付着性評価についてはその結果を(表2)に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
評価方法は以下の通りである。
クラックの有無:光学顕微鏡(キーエンス製VF−7500)を用いて試験片表面を観察してクラックの有無を確認した。
密着性:JIS K5600に基づく碁盤目試験法を行った。すなわち、作製した試験片の塗膜の上からカッターで2mm幅の碁盤目の切込みを入れた。大きさは1cm角にし、碁盤目の数を25個とした。その後その碁盤目を完全に覆うようにセロハンテープを貼り付けた。その後、すばやく引き剥がして付着して残っている碁盤目の数を数えた。
耐アルカリ性:水酸化カルシウム飽和水溶液に室温で7日間浸漬し、取り出した後蒸留水にて洗浄し、十分乾燥させた後、目視外観にて評価を行なった。
耐湿試験:JIS K5600に基づく耐湿試験を行った。すなわち、作成した試験片を50℃、95±5%の恒温恒湿槽に24時間放置、乾燥させた後、目視外観にて評価を行なった。
撥油性:オレイン酸の水中油接触角を、協和界面科学製CX−150を用いて測定した。
【0051】
油汚れの洗浄性評価は、食品油例えばサラダ油、オリーブ油、カノーラ油、ごま油などの主成分であるオレイン酸を用いた。予め乾燥秤量した試験片7〜12について、オレイン酸を100g/平方m滴下後、水を含ませたスポンジで洗浄し、50℃にて1時間乾燥という洗浄工程を10回繰り返した後に各試験片を秤量し、洗浄前後の重量差を求めた。
【0052】
低汚染性評価は、予め 色差を測定した試験片8〜14を試験用ダスト(JISZ 8901試験用ダスト 15種)に埋没させ、10秒間前後に振動させた後引き上げた後、試験片表面をエアーブローした。日本電色工業株式会社製NR−3000を用いて汚染前後の試験片の測定を行い、汚染前後での色差(ΔE)を求めた。
【0053】
(評価)(1)塗膜断面分析用試料、試験片9の塗膜表面及び試験片9を破断してサンプリングした破断面に白金を約50Åの厚さでコーティングして塗膜断面の分析用試料を作製した。
【0054】
(2)塗膜断面の観察、分析塗膜断面をSEM(日立製作所社製、S800)、EDX(堀場製作所社製、EMAX−2770)により分析した。SEMで観察した塗膜表面の二次電子像を図1、図2に示す。分析視野の光触媒性塗膜の膜厚は40μmであった。次いで、分析視野中央部、塗膜最表面から基材側界面まで線上にEDX分析を行った。シリコン(Si)にいて検出した塗膜最表面から基材側界面までのX線強度の変化を図2に示す。
【0055】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、油汚れの易洗浄効果、埃、塵汚れの低付着性効果が発揮される。また、プラスチックなどの有機系基材表面に形成する塗膜の厚みを厚くしても、クラックが発生せず、しかも剥離強度に優れた塗膜となる水性塗料組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の塗膜表面のSEM像である
【図2】比較例2の塗膜表面のSEM像である
【図3】実施例2の塗膜表面から基材まで各部位のシリコン(Si)X線強度(cps)である
Claims (14)
- 以下の(a)〜(d)を少なくとも含んだ水性塗料組成物であって、(a)成分は炭素数2〜7のアルキルアクリレート、炭素数2〜7のアルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種のモノマーを重合させたものであり、
かつ(b)成分の平均粒子径が50nm以下であり、
かつ(b)成分が全固形分の10〜70重量%であることを特徴とする水性塗料組成物。
(a)アクリル系樹脂エマルジョン
(b)シリカ粒子
(c)水
(d)顔料 - 前記(a)成分の固形分が全固形分の10重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
- 固形分濃度が20重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
- 前記(b)成分の平均粒子径が30nm以下である請求項1〜3に記載の水性塗料組成物。
- 前記(b)成分が全固形分の25〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜4に記載の水性塗料組成物。
- 請求項1〜5何れかに記載の水性塗料組成物であり、乾燥または硬化されると、(b)成分の濃度が外気と接する塗膜最表面側近傍で大きくなるような濃度勾配を有した傾斜組成塗膜となる水性塗料組成物。
- 着色剤を含有していることを特徴とする請求項1〜6に記載の水性塗料組成物。
- 請求項1〜7何れかに記載の水性塗料組成物が基材上に塗布製膜された塗膜であって、シリカ粒子の濃度が外気と接する塗膜最表面側近傍で大きくなるような濃度勾配を有していることを特徴とする塗膜。
- 請求項1〜7何れかに記載の水性塗料組成物が基材上に塗布製膜された塗膜であって、アクリル系樹脂の濃度が基材と接する塗膜界面近傍で大きく分布するように濃度勾配を有して傾斜塗膜を形成していることを特徴とする請求項7記載の塗膜。
- 請求項8〜9何れかに記載の塗膜が基材の表面に形成されたことを特徴とする防汚性部材。
- 塗膜表面の水中でのオレイン酸の接触角が70度以上であることを特徴とする請求項10に記載の防汚性部材。
- 塗膜表面の帯電半減期が10秒以下であることを特徴とする請求項10に記載の防汚性部材。
- 請求項8〜9何れかに記載の塗膜が、有機樹脂塗膜を介して基材の表面に形成されたことを特徴とする防汚性部材。
- 請求項1〜6何れかに記載の水性塗料組成物を被処理物の基材表面に塗布、硬化し、請求項8〜9の何れかに記載の塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
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2003
- 2003-03-31 JP JP2003097230A patent/JP2004300345A/ja active Pending
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