JP2004359730A - 樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】環状2量体オリゴマーの成形品表面への析出が無く、実用上十分な耐熱温度、成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに高い機械的強度を有するポリ乳酸と脂肪族エステル構造を持つ重合体からなる樹脂組成物およびその成形品を提供すること。
【解決手段】1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体オリゴマーの含有量が0.8wt%以下である、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物及びその成形品。
【選択図】 なし
【解決手段】1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体オリゴマーの含有量が0.8wt%以下である、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物及びその成形品。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体オリゴマーの含有量が0.8wt%以下である脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物及び外観の改良された成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、成形材料としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等プラスチックス材料が大量に使用され消費されてきた。これらのプラスチックス材料の一部はリサイクルされる物もあるが、一般に回収された後、消却処理や土中埋設処理等の処理を受ける。しかし回収に多大な労力及び費用を要するため、あるいは回収が困難なため回収されずに放置される場合がある。近年、これらの環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として大きな期待が寄せられている。
【0003】
微生物によって分解されるプラスチックとしては、微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)および発酵により生産されるL乳酸を原料としたポリ乳酸(PLLA)等が代表的なものである。
【0004】
なかでも、ポリ乳酸は透明性を有する熱可塑性樹脂であるが、物性面では伸び、柔軟性が低く、また、軟化温度も低いという欠点を有している。さらに、環境中での生分解速度も遅く、また、加水分解に対しては不安定でありその改良が望まれていた。
【0005】
一方、コハク酸及びブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)は、ポリエチレン類似の物性を有する成形性・生分解性の良好なポリマーである。しかし、比較的剛性が要求される分野や引張強度が要求される分野では、十分な強度を持たない。剛性を改善するためには、タルク等の充填材の使用により改善は可能であるが、流動性の低下等の問題があり流動性を低下させない剛性の改良が望まれていた。
【0006】
以上のように、既存の生分解性プラスチックはそれぞれ特徴を有する反面、不十分な部分が多く、本発明者らは、鋭意研究により、ポリ乳酸とポリエステルカーボネート等の脂肪族エステル構造を持つ重合体を混合する事で、強度、耐熱性、成形性、生分解性のバランスの取れたプラスチックの開発に成功した(特許文献1参照)。しかし、コハク酸及びブタンジオールを主成分とする脂肪族エステル構造を持つ重合体は、環状2量体オリゴマーを含んでおり、環状2量体オリゴマーが成形品表面に析出して外観を悪化させる問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−109664号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、環状2量体オリゴマーの成形品表面への析出が無く、実用上十分な耐熱温度、成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに高い機械的強度を有するポリ乳酸と脂肪族エステル構造を持つ重合体からなる樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体(各々2分子反応したもの)のオリゴマーの含有量が0.8wt%以下である脂肪族エステル構造を持つ重合体をポリ乳酸樹脂と混合する事により、本目的を達成できる事を見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体オリゴマーの含有量が0.8wt%以下である、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物及びその成形品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における脂肪族エステル構造を持つ重合体としては、コハク酸および1.4ブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート、及び脂肪族ポリエステルカーボネート等が例示される。中でも、脂肪族ポリエステルカーボネートが特に好ましい。上記脂肪族エステル構造を持つ重合体は、単独でも、ブレンドの形態でも使用可能である。以下、脂肪族エステル構造を持つ重合体として、主に脂肪族ポリエステルカーボネートを使用した場合について述べる。
【0012】
本発明における脂肪族ポリエステルカーボネートとは、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とを反応させて数平均分子量10,000以下の脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで、該脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させて得られるカーボネート単位含有量が少なくとも3モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が2,000〜50,000ポイズで、融点が70〜180℃である。
【0013】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法は、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とから脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および該脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0014】
第1工程は、触媒の存在下、温度100〜250℃で、反応に伴って副生する水及び過剰のジヒドロキシ化合物を除去しながら、数平均分子量10,000以下のポリエステルオリゴマーを製造する工程である。反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0015】
第2工程は、第1工程で得られたポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。カーボネート化合物の沸点によっては反応初期には加圧とする。減圧度を調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0016】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的耐熱性を有するポリマーが得られない。一方、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を、少なくとも3モル%以上、通常5〜30モル%とすることが好ましい。
【0017】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族2塩基酸としては、コハク酸が必須成分として使用され、それ以外に例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等を適宜併用することができる。またテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸も、生分解性を損なわない範囲で使用可能である。なお上記の2塩基酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。
【0018】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールが必須成分として使用され、それ以外に例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を適宜併用することができる。
【0019】
本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。
【0020】
これらの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。従って、本発明においては、脂肪族ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオール、脂肪族2塩基酸としてコハク酸を、それぞれ50モル%以上含むことが必要である。
【0021】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられるカーボネート化合物の具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネートを、また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、フェノール、アルコール類の様なヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物や環状カーボネート化合物も使用できる。
【0022】
第2工程において、カーボネート化合物を添加する際、グリコール成分を添加することにより、ブロック共重合化が可能である。添加するグリコールは第1工程で使用したグリコールと同一でも異なっても良い。
【0023】
脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の分子量はスチレン換算のGPCによる重量平均分子量で10万以上が望ましい。10万以下では所望の強度が達成されない。
【0024】
上記の脂肪族ポリエステルカーボネートの他に、脂肪族エステル構造を持つ重合体としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等が挙げられ、脂肪族2塩基酸としてコハク酸、及び脂肪族ジヒドロキシ化合物として1.4ブタンジオールが必須成分であり、公知の方法で製造が可能である。さらに、多価イソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物などを添加、反応させ連鎖延長を行い、分子量をさらに高める事もできる。多価イソシアネート化合物としては、例えばイソシアネート基を2個以上有する化合物で、具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
1.4ブタンジオールとコハク酸を主成分とする脂肪族エステル構造を持つ重合体の環状2量体オリゴマー低減方法としては、公知の製造法で可能である。例えば、該粒状樹脂と有機溶剤及び/または水とを接触させる抽出法、樹脂を溶融、減圧下で表面更新できる槽型反応器、横型反応器、ベント付き2軸押出機等で行う脱揮処理法が例示される。これらの処理方法により、脂肪族エステル構造を持つ重合体中の環状2量体オリゴマーは0.8%以下とする事が好ましい。環状オリゴマー濃度が0.8%を越えると、ポリ乳酸と混合した際に成形品表面に環状2量体オリゴマーが析出し、成形品外観を悪化させる。
【0026】
本発明で使用されるポリ乳酸樹脂とは、実質的にL−乳酸及び/又はD−乳酸由来のモノマー単位のみで構成されるポリマーである。ここで「実質的に」とは本発明の効果を損なわない範囲で、L−乳酸またはD−乳酸に由来しない、他のモノマー単位を含んでも良いという意味である。ポリ乳酸の製造方法としては、既知の任意の重合方法を採用する事ができる。最も代表的に知られているのは、乳酸の無水環状二量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)であるが、乳酸を直接縮合重合してもかまわない。また、分子量としては、重量平均分子量で、50,000〜1,000,000の範囲が好ましい。かかる範囲を下回ると機械物性等が十分発現されず、上回る場合は加工性に劣る。
【0027】
ポリ乳酸が、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来するモノマー単位からだけなる場合には、重合体は結晶性で高融点を有する。しかも、L−乳酸、D−乳酸由来のモノマー単位の比率(L/D比と略称する)を変化させることにより結晶性・融点を自在に調節する事ができるので、用途に応じ、実用特性を制御する事を可能にする。本発明において、高い耐熱性と成形特性のバランスを考えた場合、L/D比はL/D=90/10〜99/1が好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂を任意の比率で混合できるが、より好ましくは脂肪族エステル構造を持つ重合体1〜80重量%に対しポリ乳酸樹脂99〜20重量%である。脂肪族エステル構造を持つ重合体の添加量が1重量%未満だとポリ乳酸樹脂の引張り伸度への改善効果は小さく、ポリ乳酸樹脂の添加量が20重量%未満では、脂肪族エステル構造を持つ重合体の剛性(弾性率)改善効果が小さい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、主として上記の脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸からなるが、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤、及び熱可塑性樹脂、木粉、でんぷん等も同様に加えることができる。これらの添加剤等は、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂との混合物が有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で混合できる。
【0030】
本発明の生分解性樹脂の製造に際しては、少なくとも一方の樹脂の溶融する温度以上で機械的に混合することにより得ることができる。混合装置に関しては特に制限はなく、単軸、二軸押出機等の常法を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的に推奨される。また脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸以外の成分を配合する際にも、同様の混合方法にて製造できる。
【0031】
混合時の温度は、100℃以下では樹脂の溶融粘度が高いかまたは溶融しないため、具体的には100℃から300℃の範囲が好適である。300℃以上では樹脂の熱分解が起こるため好ましくない。300℃以下であっても高温下での着色や劣化、熱分解等を防止するために窒素雰囲気下で短時間に混合することが好ましい。具体的な混合時間としては、20分以内が推奨される。また、樹脂中のオリゴマー、残存モノマー、発生ガス等の除去のためにベント口を設置し減圧下に混合することもできる。
【0032】
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物を用いて成形された物品であり、具体的な成形形態、成形方法としては、射出成形品、押し出し成形品、インフレーション成形法、真空圧空成形品、ブロー成形品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成形品が例示されるがそれらに限定されるものではない。また接着剤、エマルジョン等の使用法も可能である。特に、本発明の樹脂組成物はフィルム成形性が良く、場合によっては脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸及び各種添加剤等も同時に混合し、直接成形機に投入し成形品を得ることもできる。
【0033】
得られる樹脂組成物および成形品は、環状2量体オリゴマーの成形品表面への析出を防止し、高い機械的強度と実用上充分な軟化温度を有すると共に、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。以上のごとく、本発明によれば、実用上充分な耐熱性、強度および生分解性を有する樹脂組成物および成形品を得ることができる。
【0034】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例において、融点は、DSC(パーキンエルマー社製DSC Pyris−1)を用いて測定した。また、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−21H使用)によりスチレン換算のMw、Mnとして測定した。また、カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。環状2量体オリゴマー量は、ポリマーをアセトン溶液で抽出後、分離した母液を濃縮し、ジクロロメタン溶液で希釈後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所GC14B)により分析した。
【0035】
溶融粘度はフローテスター(島津製作所製CFT−500C)を用いて温度190℃、荷重60kgにて測定した。 脂肪族ポリエステルカーボネートのオリゴマーの水酸基価、酸価はJIS K−1557に準じて測定した。
【0036】
製造例1
攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に、コハク酸18,740g(158.7モル)、1,4−ブタンジオール21,430g(237.8モル)、ジルコニウムアセチルアセトネート745mgおよび酢酸亜鉛1.40gを仕込み、窒素雰囲気下で温度150〜220℃、2時間反応し水を留出させた。つづいて、減圧度150〜80mmHgの減圧度で3時間熟成し脱水反応を進行させ、更に最終的に減圧度2mmHg以下となるよう徐々に減圧度を増してさらに水と1、4−ブタンジオールを留出させ、総留出量が10,460gになったところで反応を停止した。得られたオリゴマー(A−1)の数平均分子量は1,780、末端水酸基価は102KOHmg/gであり、酸価は0.51KOHmg/gであった。
【0037】
次に得られたオリゴマー(A−1)24,000gを攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に仕込み、ジフェニルカーボネート4,680gを添加した。温度210〜220℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。得られたポリエステルカーボネート樹脂(A−2)は、融点が104℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が205,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として14.3%のカーボネート単位を有していた。溶融粘度は11,000ポイズであり、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。環状2量体オリゴマーは、0.90wt%であった。
【0038】
実施例1
製造例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂(1.5kg)を、ヘリカルリボン翼付き撹拌機を備えた、8リットルの槽型反応器に仕込み加熱溶融した。温度230℃、減圧度0.9mmHgで、30rpmの撹拌速度で撹拌しながら1時間脱揮操作を行った。脱揮終了後、反応器底部から220℃の温度でストランド状に取り出し、水冷固化したのちにペレット化した。GPCの測定による重量平均分子量(Mw)は215,000であった。得られたペレット中の環状2量体量は、0.52重量%に減少していた。
この得られたポリエステルカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂、ラクティー5000(島津製作所製)のペレットを真空乾燥機により温度90℃で5時間乾燥し、ポリエステルカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂の混合比が重量比で20/80となるようにV型ブレンダーにて混合し、2軸押出機(スクリュー径35mmφ、L/D=30)に供給し連続的にストランド化、ペレタイズし樹脂混合物を得た。
この混合したペレットを90℃の温度で5時間以上乾燥した後、Tダイを装着した単軸押出し機に供給し、物性試験用の厚さ50ミクロンのフィルムを成形した。成形温度は210℃、引き取り速度は2.5m/分であった。得られたフィルムを23℃、湿度50%の環境にて、3ヶ月間保管した後、外観を目視にてオリゴマー析出の有無を判定した結果、外観に変化はなかった。
【0039】
実施例2
実施例1におけるポリエステルカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂の混合比が、重量比で70/30に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行った。環状オリゴマー析出の判定結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
製造例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂(1.5kg)を、ヘリカルリボン翼付き撹拌機を備えた、8リットルの槽型反応器に仕込み加熱溶融した。温度230℃、減圧度0.9mmHgで、30rpmの撹拌速度で撹拌しながら30分間脱揮操作を行った。脱揮終了後、反応器底部から220℃の温度でストランド状に取り出し、水冷固化したのちにペレット化した。GPCの測定による重量平均分子量(Mw)は210,000であった。得られたペレット中の環状2量体量は、0.78重量%に減少していた。この得られたポリエステルカーボネート樹脂を使用して、実施例1と同様の条件にてポリ乳酸樹脂と混合し、フィルム評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例4
実施例3のポリエステルカーボネート樹脂を使用する以外は、実施例2と同様の条件にてポリ乳酸樹脂と混合し、フィルム評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
製造例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂(A−2)を使用する以外は、実施例2と同様の条件にてポリ乳酸樹脂と混合し、フィルム評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
添加量単位:重量部
フィルム外観判定(3ヶ月後)
○:環状2量体オリゴマーの析出なし、×:析出あり(表面白化)
樹脂1:脂肪族ポリエステルカーボネート、環状2量体オリゴマー=0.52%
樹脂2:脂肪族ポリエステルカーボネート、環状2量体オリゴマー=0.78%
樹脂3:脂肪族ポリエステルカーボネート、環状2量体オリゴマー=0.90%
【0044】
【本発明の効果】
本発明に係るからなる樹脂組成物は、流動性、成形性に優れ、射出成形品、押し出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品、接着剤、エマルジョン用途、その他の成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度と耐熱性を有すると共に、海水中、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。このため、包装材料、漁業、農業、食品分野その他のリサイクルが困難な用途に広く利用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体オリゴマーの含有量が0.8wt%以下である脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物及び外観の改良された成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、成形材料としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等プラスチックス材料が大量に使用され消費されてきた。これらのプラスチックス材料の一部はリサイクルされる物もあるが、一般に回収された後、消却処理や土中埋設処理等の処理を受ける。しかし回収に多大な労力及び費用を要するため、あるいは回収が困難なため回収されずに放置される場合がある。近年、これらの環境問題に対して、自然環境の中で分解する高分子素材の開発が要望されるようになり、その中でも特に微生物によって分解されるプラスチックは、環境適合性材料や新しいタイプの機能性材料として大きな期待が寄せられている。
【0003】
微生物によって分解されるプラスチックとしては、微生物によって生産されるポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル(PHB)、合成高分子であるポリカプロラクトン(PCL)、コハク酸およびブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)および発酵により生産されるL乳酸を原料としたポリ乳酸(PLLA)等が代表的なものである。
【0004】
なかでも、ポリ乳酸は透明性を有する熱可塑性樹脂であるが、物性面では伸び、柔軟性が低く、また、軟化温度も低いという欠点を有している。さらに、環境中での生分解速度も遅く、また、加水分解に対しては不安定でありその改良が望まれていた。
【0005】
一方、コハク酸及びブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエステルカーボネート(PEC)は、ポリエチレン類似の物性を有する成形性・生分解性の良好なポリマーである。しかし、比較的剛性が要求される分野や引張強度が要求される分野では、十分な強度を持たない。剛性を改善するためには、タルク等の充填材の使用により改善は可能であるが、流動性の低下等の問題があり流動性を低下させない剛性の改良が望まれていた。
【0006】
以上のように、既存の生分解性プラスチックはそれぞれ特徴を有する反面、不十分な部分が多く、本発明者らは、鋭意研究により、ポリ乳酸とポリエステルカーボネート等の脂肪族エステル構造を持つ重合体を混合する事で、強度、耐熱性、成形性、生分解性のバランスの取れたプラスチックの開発に成功した(特許文献1参照)。しかし、コハク酸及びブタンジオールを主成分とする脂肪族エステル構造を持つ重合体は、環状2量体オリゴマーを含んでおり、環状2量体オリゴマーが成形品表面に析出して外観を悪化させる問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−109664号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、環状2量体オリゴマーの成形品表面への析出が無く、実用上十分な耐熱温度、成形性、耐熱性、耐溶剤性ならびに高い機械的強度を有するポリ乳酸と脂肪族エステル構造を持つ重合体からなる樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【0009】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体(各々2分子反応したもの)のオリゴマーの含有量が0.8wt%以下である脂肪族エステル構造を持つ重合体をポリ乳酸樹脂と混合する事により、本目的を達成できる事を見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は1.4ブタンジオールとコハク酸からなる環状2量体オリゴマーの含有量が0.8wt%以下である、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物及びその成形品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明における脂肪族エステル構造を持つ重合体としては、コハク酸および1.4ブタンジオールを主成分とするポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート、及び脂肪族ポリエステルカーボネート等が例示される。中でも、脂肪族ポリエステルカーボネートが特に好ましい。上記脂肪族エステル構造を持つ重合体は、単独でも、ブレンドの形態でも使用可能である。以下、脂肪族エステル構造を持つ重合体として、主に脂肪族ポリエステルカーボネートを使用した場合について述べる。
【0012】
本発明における脂肪族ポリエステルカーボネートとは、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とを反応させて数平均分子量10,000以下の脂肪族ポリエステルオリゴマーを得、次いで、該脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物とを反応させて得られるカーボネート単位含有量が少なくとも3モル%以上であり、重量平均分子量が少なくとも100,000で、温度190℃、荷重60kgにおける溶融粘度が2,000〜50,000ポイズで、融点が70〜180℃である。
【0013】
本発明による脂肪族ポリエステルカーボネートの製造法は、脂肪族2塩基酸および/またはその誘導体と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び/またはヒドロキシカルボン酸化合物とから脂肪族ポリエステルオリゴマーを得る第1工程、および該脂肪族ポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させ脂肪族ポリエステルカーボネートを得る第2工程より構成される。
【0014】
第1工程は、触媒の存在下、温度100〜250℃で、反応に伴って副生する水及び過剰のジヒドロキシ化合物を除去しながら、数平均分子量10,000以下のポリエステルオリゴマーを製造する工程である。反応を促進する目的で300mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0015】
第2工程は、第1工程で得られたポリエステルオリゴマーとカーボネート化合物を反応させて高分子量体とする工程であり、触媒の存在下、通常150〜250℃で行われ、反応に伴って副成するヒドロキシ化合物が除去される。カーボネート化合物の沸点によっては反応初期には加圧とする。減圧度を調節して最終的には3mmHg以下の減圧とすることが好ましい。
【0016】
脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量は、脂肪族ポリエステルオリゴマーの末端水酸基量を制御することにより所望の割合とすることができる。カーボネート単位含有量が多すぎると、得られる脂肪族ポリエステルカーボネートの融点が低くなり、実用的耐熱性を有するポリマーが得られない。一方、カーボネート単位含有量が多くなると微生物による分解性が高くなる。従って、カーボネート単位含有量は、適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る量とすることが好ましく、本発明においては脂肪族ポリエステルカーボネート中のカーボネート単位含有量を、少なくとも3モル%以上、通常5〜30モル%とすることが好ましい。
【0017】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族2塩基酸としては、コハク酸が必須成分として使用され、それ以外に例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、アゼライン酸等を適宜併用することができる。またテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸も、生分解性を損なわない範囲で使用可能である。なお上記の2塩基酸はそれらのエステルあるいは酸無水物であってもよい。
【0018】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1,4−ブタンジオールが必須成分として使用され、それ以外に例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等を適宜併用することができる。
【0019】
本発明で使用されるヒドロキシカルボン酸化合物としては、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等が例示され、これらはエステル、環状エステル等の誘導体でも使用できる。
【0020】
これらの脂肪族2塩基酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物およびヒドロキシカルボン酸化合物は、それぞれ単独であるいは混合物として用いることができ所望の組合せが可能であるが、本発明においては適度の生分解性を有し、かつ実用的な耐熱性を実現し得る程度の高い融点のものが好ましい。従って、本発明においては、脂肪族ジヒドロキシ化合物として1,4−ブタンジオール、脂肪族2塩基酸としてコハク酸を、それぞれ50モル%以上含むことが必要である。
【0021】
本発明の脂肪族ポリエステルカーボネートの製造に用いられるカーボネート化合物の具体的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネートなどのジアリールカーボネートを、また、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、フェノール、アルコール類の様なヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物や環状カーボネート化合物も使用できる。
【0022】
第2工程において、カーボネート化合物を添加する際、グリコール成分を添加することにより、ブロック共重合化が可能である。添加するグリコールは第1工程で使用したグリコールと同一でも異なっても良い。
【0023】
脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂の分子量はスチレン換算のGPCによる重量平均分子量で10万以上が望ましい。10万以下では所望の強度が達成されない。
【0024】
上記の脂肪族ポリエステルカーボネートの他に、脂肪族エステル構造を持つ重合体としては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等が挙げられ、脂肪族2塩基酸としてコハク酸、及び脂肪族ジヒドロキシ化合物として1.4ブタンジオールが必須成分であり、公知の方法で製造が可能である。さらに、多価イソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物などを添加、反応させ連鎖延長を行い、分子量をさらに高める事もできる。多価イソシアネート化合物としては、例えばイソシアネート基を2個以上有する化合物で、具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
1.4ブタンジオールとコハク酸を主成分とする脂肪族エステル構造を持つ重合体の環状2量体オリゴマー低減方法としては、公知の製造法で可能である。例えば、該粒状樹脂と有機溶剤及び/または水とを接触させる抽出法、樹脂を溶融、減圧下で表面更新できる槽型反応器、横型反応器、ベント付き2軸押出機等で行う脱揮処理法が例示される。これらの処理方法により、脂肪族エステル構造を持つ重合体中の環状2量体オリゴマーは0.8%以下とする事が好ましい。環状オリゴマー濃度が0.8%を越えると、ポリ乳酸と混合した際に成形品表面に環状2量体オリゴマーが析出し、成形品外観を悪化させる。
【0026】
本発明で使用されるポリ乳酸樹脂とは、実質的にL−乳酸及び/又はD−乳酸由来のモノマー単位のみで構成されるポリマーである。ここで「実質的に」とは本発明の効果を損なわない範囲で、L−乳酸またはD−乳酸に由来しない、他のモノマー単位を含んでも良いという意味である。ポリ乳酸の製造方法としては、既知の任意の重合方法を採用する事ができる。最も代表的に知られているのは、乳酸の無水環状二量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)であるが、乳酸を直接縮合重合してもかまわない。また、分子量としては、重量平均分子量で、50,000〜1,000,000の範囲が好ましい。かかる範囲を下回ると機械物性等が十分発現されず、上回る場合は加工性に劣る。
【0027】
ポリ乳酸が、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来するモノマー単位からだけなる場合には、重合体は結晶性で高融点を有する。しかも、L−乳酸、D−乳酸由来のモノマー単位の比率(L/D比と略称する)を変化させることにより結晶性・融点を自在に調節する事ができるので、用途に応じ、実用特性を制御する事を可能にする。本発明において、高い耐熱性と成形特性のバランスを考えた場合、L/D比はL/D=90/10〜99/1が好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂を任意の比率で混合できるが、より好ましくは脂肪族エステル構造を持つ重合体1〜80重量%に対しポリ乳酸樹脂99〜20重量%である。脂肪族エステル構造を持つ重合体の添加量が1重量%未満だとポリ乳酸樹脂の引張り伸度への改善効果は小さく、ポリ乳酸樹脂の添加量が20重量%未満では、脂肪族エステル構造を持つ重合体の剛性(弾性率)改善効果が小さい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、主として上記の脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸からなるが、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、等の各種添加剤、及び熱可塑性樹脂、木粉、でんぷん等も同様に加えることができる。これらの添加剤等は、脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂との混合物が有する物性を大きく損なわれない範囲で、単独又は二種以上を任意の割合で混合できる。
【0030】
本発明の生分解性樹脂の製造に際しては、少なくとも一方の樹脂の溶融する温度以上で機械的に混合することにより得ることができる。混合装置に関しては特に制限はなく、単軸、二軸押出機等の常法を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的に推奨される。また脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸以外の成分を配合する際にも、同様の混合方法にて製造できる。
【0031】
混合時の温度は、100℃以下では樹脂の溶融粘度が高いかまたは溶融しないため、具体的には100℃から300℃の範囲が好適である。300℃以上では樹脂の熱分解が起こるため好ましくない。300℃以下であっても高温下での着色や劣化、熱分解等を防止するために窒素雰囲気下で短時間に混合することが好ましい。具体的な混合時間としては、20分以内が推奨される。また、樹脂中のオリゴマー、残存モノマー、発生ガス等の除去のためにベント口を設置し減圧下に混合することもできる。
【0032】
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物を用いて成形された物品であり、具体的な成形形態、成形方法としては、射出成形品、押し出し成形品、インフレーション成形法、真空圧空成形品、ブロー成形品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品その他の成形品が例示されるがそれらに限定されるものではない。また接着剤、エマルジョン等の使用法も可能である。特に、本発明の樹脂組成物はフィルム成形性が良く、場合によっては脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸及び各種添加剤等も同時に混合し、直接成形機に投入し成形品を得ることもできる。
【0033】
得られる樹脂組成物および成形品は、環状2量体オリゴマーの成形品表面への析出を防止し、高い機械的強度と実用上充分な軟化温度を有すると共に、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。以上のごとく、本発明によれば、実用上充分な耐熱性、強度および生分解性を有する樹脂組成物および成形品を得ることができる。
【0034】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例において、融点は、DSC(パーキンエルマー社製DSC Pyris−1)を用いて測定した。また、分子量はクロロホルムを溶媒としてGPC(昭和電工(株)製GPC System−21H使用)によりスチレン換算のMw、Mnとして測定した。また、カーボネート単位含有量はNMR(日本電子(株)製NMR EXー270)を使用し、13CNMRによりジカルボン酸エステル単位およびカーボネート単位の合計に対するカーボネート単位の割合(モル%)として測定した。環状2量体オリゴマー量は、ポリマーをアセトン溶液で抽出後、分離した母液を濃縮し、ジクロロメタン溶液で希釈後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所GC14B)により分析した。
【0035】
溶融粘度はフローテスター(島津製作所製CFT−500C)を用いて温度190℃、荷重60kgにて測定した。 脂肪族ポリエステルカーボネートのオリゴマーの水酸基価、酸価はJIS K−1557に準じて測定した。
【0036】
製造例1
攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に、コハク酸18,740g(158.7モル)、1,4−ブタンジオール21,430g(237.8モル)、ジルコニウムアセチルアセトネート745mgおよび酢酸亜鉛1.40gを仕込み、窒素雰囲気下で温度150〜220℃、2時間反応し水を留出させた。つづいて、減圧度150〜80mmHgの減圧度で3時間熟成し脱水反応を進行させ、更に最終的に減圧度2mmHg以下となるよう徐々に減圧度を増してさらに水と1、4−ブタンジオールを留出させ、総留出量が10,460gになったところで反応を停止した。得られたオリゴマー(A−1)の数平均分子量は1,780、末端水酸基価は102KOHmg/gであり、酸価は0.51KOHmg/gであった。
【0037】
次に得られたオリゴマー(A−1)24,000gを攪拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた50リットルの反応容器に仕込み、ジフェニルカーボネート4,680gを添加した。温度210〜220℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。得られたポリエステルカーボネート樹脂(A−2)は、融点が104℃で、GPCの測定による重量平均分子量(Mw)が205,000であり、13CNMR測定により、ポリカーボネート成分として14.3%のカーボネート単位を有していた。溶融粘度は11,000ポイズであり、クロロホルムには完全に溶解し、ゲル分はなかった。環状2量体オリゴマーは、0.90wt%であった。
【0038】
実施例1
製造例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂(1.5kg)を、ヘリカルリボン翼付き撹拌機を備えた、8リットルの槽型反応器に仕込み加熱溶融した。温度230℃、減圧度0.9mmHgで、30rpmの撹拌速度で撹拌しながら1時間脱揮操作を行った。脱揮終了後、反応器底部から220℃の温度でストランド状に取り出し、水冷固化したのちにペレット化した。GPCの測定による重量平均分子量(Mw)は215,000であった。得られたペレット中の環状2量体量は、0.52重量%に減少していた。
この得られたポリエステルカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂、ラクティー5000(島津製作所製)のペレットを真空乾燥機により温度90℃で5時間乾燥し、ポリエステルカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂の混合比が重量比で20/80となるようにV型ブレンダーにて混合し、2軸押出機(スクリュー径35mmφ、L/D=30)に供給し連続的にストランド化、ペレタイズし樹脂混合物を得た。
この混合したペレットを90℃の温度で5時間以上乾燥した後、Tダイを装着した単軸押出し機に供給し、物性試験用の厚さ50ミクロンのフィルムを成形した。成形温度は210℃、引き取り速度は2.5m/分であった。得られたフィルムを23℃、湿度50%の環境にて、3ヶ月間保管した後、外観を目視にてオリゴマー析出の有無を判定した結果、外観に変化はなかった。
【0039】
実施例2
実施例1におけるポリエステルカーボネート樹脂とポリ乳酸樹脂の混合比が、重量比で70/30に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行った。環状オリゴマー析出の判定結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
製造例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂(1.5kg)を、ヘリカルリボン翼付き撹拌機を備えた、8リットルの槽型反応器に仕込み加熱溶融した。温度230℃、減圧度0.9mmHgで、30rpmの撹拌速度で撹拌しながら30分間脱揮操作を行った。脱揮終了後、反応器底部から220℃の温度でストランド状に取り出し、水冷固化したのちにペレット化した。GPCの測定による重量平均分子量(Mw)は210,000であった。得られたペレット中の環状2量体量は、0.78重量%に減少していた。この得られたポリエステルカーボネート樹脂を使用して、実施例1と同様の条件にてポリ乳酸樹脂と混合し、フィルム評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例4
実施例3のポリエステルカーボネート樹脂を使用する以外は、実施例2と同様の条件にてポリ乳酸樹脂と混合し、フィルム評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
製造例1で得られたポリエステルカーボネート樹脂(A−2)を使用する以外は、実施例2と同様の条件にてポリ乳酸樹脂と混合し、フィルム評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
添加量単位:重量部
フィルム外観判定(3ヶ月後)
○:環状2量体オリゴマーの析出なし、×:析出あり(表面白化)
樹脂1:脂肪族ポリエステルカーボネート、環状2量体オリゴマー=0.52%
樹脂2:脂肪族ポリエステルカーボネート、環状2量体オリゴマー=0.78%
樹脂3:脂肪族ポリエステルカーボネート、環状2量体オリゴマー=0.90%
【0044】
【本発明の効果】
本発明に係るからなる樹脂組成物は、流動性、成形性に優れ、射出成形品、押し出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、繊維、マルチフィラメント、モノフィラメント、ロープ、網、織物、編み物、不織布、フィルム、シート、ラミネート、容器、発泡体、各種部品、接着剤、エマルジョン用途、その他の成形品を得るのに好適であり、得られる成形品は十分な機械的強度と耐熱性を有すると共に、海水中、土中、活性汚泥中、コンポスト中で容易に微生物により分解される。このため、包装材料、漁業、農業、食品分野その他のリサイクルが困難な用途に広く利用できる。
Claims (3)
- 脂肪族エステル構造を持つ重合体とポリ乳酸樹脂からなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物中の1、4ーブタンジオールとコハク酸からなるオリゴマーの含有量が0.8wt%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
- 脂肪族エステル構造を持つ重合体が、脂肪族ポリエステルカーボネート樹脂、または脂肪族ポリエステルである請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の樹脂組成物からなる成形体。
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