JP2004352809A - ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリ塩化ビニル系防水シートとの付着性(下地追従性)に優れるとともに、可塑剤移行抑制作用(耐汚染性)を有し、塗布時の塗布性および乾燥性が良好であるうえに、耐水性、耐候性、耐摩耗性、耐久性、及び難燃性にも優れている、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料を提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル系防水シート用難燃性保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有する。また、難燃性保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%と、難燃剤5〜30重量%と、分散剤0.5〜10重量%とを含有するのが、好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリ塩化ビニル系防水シート用難燃性保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有する。また、難燃性保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%と、難燃剤5〜30重量%と、分散剤0.5〜10重量%とを含有するのが、好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビニル系防水シートに難燃性保護塗膜層を形成するために用いられる、とくに付着性に優れた保護塗料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建築物の陸屋根や傾斜屋根等には、防水層として軟質ポリ塩化ビニル系防水シートを敷設することが広く行なわれているが、施工後長期の年月を経ると、可塑剤の揮散によるクラックの発生や紫外線による表面劣化等により防水性能が損なわれるため、防水シートの保護を目的として、予め防水シートの表面に耐候性の保護塗膜層を形成させることが多くなっている。
【0003】
このような保護塗膜形成のための保護塗料としては、従来、つぎの特許文献に記載のようなものが知られていた。
【0004】
【特許文献1】
「特開平11−5938号公報」
本出願人は、先に、エチレンと、酢酸ビニルと、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタアクリル酸、メタアクリル酸誘導体よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアクリル樹脂水性エマルジョンと、を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体エマルジョンを含有することを特徴とする、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の発明を提案した。
【0005】
【特許文献2】
「特開平9−25381公報」
この特許文献2には、難燃性塗料用のバインダーをはじめとして、疎水性被着体用接着剤、粘着剤、難燃性を要求されない一般の塗料用バインダー、繊維バインダー、モルタル混和剤等の各種の用途に供され、特に難燃性塗料用バインダーとして用いた場合には、塗膜の難燃性および耐水性が飛躍的に向上したものが得られる水性エマルジョン、及び該水性エマルジョンを用いた難燃性塗料が開示されている。この特許文献2記載の水性エマルジョンは、分散質がビニルエステル系重合体(A)、並びにメタクリル酸エステル単位、アクリル酸エステル単位およびスチレン系単量体単位のうちの少なくとも一種からなる重合体(B)からなり、重合体(A)は主として分散質の中心部に存在し、重合体(B)は主として分散質の周辺部に存在し、重合体(A)と重合体(B)との重量比率が9:1〜1:9であり、分散剤が50重量%以上の乳化剤からなるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の先行技術としての特許文献1記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料では、耐水性に欠点があるエチレン/酢酸ビニル樹脂を用いているため、低温時の施工で、夜露や降雨の影響があれば、成膜不良を起こし、下地との付着性を阻害するという問題があった。また、特許文献2記載の水性エマルジョンおよびこれを用いた難燃性塗料では、多量の乳化剤を使用しており、このような乳化剤の存在下では、塗膜の耐水性が低下するという問題があった。しかも特許文献2記載の水性エマルジョンおよびこれを用いた難燃性塗料は、布、紙、木材、合板、コンクリート、モルタル、ALC板、フレキシブル板、金属板などからなる壁面、床面、天井面などに対して使用することが明記されており、防水シートの保護塗料として難燃性などの安全性を考慮したものは、従来より知られていない。
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、ポリ塩化ビニル系防水シートとの付着性(下地追従性)に優れるとともに、可塑剤移行抑制作用(耐汚染性)を有し、塗布時の塗布性および乾燥性が良好であるうえに、耐水性、耐候性、耐摩耗性、耐久性、及び難燃性にも優れている、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料およびその製造方法を提供しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究の結果、保護塗料を構成する樹脂として、アクリル樹脂水性エマルジョンを用いるとともに、難燃性付与剤として金属水酸化物等の難燃剤を用いることにより、所期の保護塗料を形成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項2記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%と、難燃剤5〜30重量%と、分散剤0.5〜10重量%とを含有することを特徴としている。
【0011】
上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、アクリル樹脂エマルジョンが、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むものであることが、好ましい。
【0012】
また、上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、難燃剤が、金属水酸化物、ケイ酸塩、およびポリリン酸アンモニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの化合物であるのが、好ましい。ここで、金属水酸化物が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムであり、ケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウムであるのが、好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、分散剤が、アニオン系分散剤またはアニオン系分散剤とノニオン系分散剤との混合物であるのが、好ましい。
【0014】
また、上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンが、アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して10〜150重量部の割合で配合されているのが、好ましい。
【0015】
上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、ケイ酸質系骨材が、アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して10〜300重量部の割合で配合されているのが、好ましい。
【0016】
本発明の請求項9に記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法は、酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有するものである。
【0018】
ここで、アクリル樹脂水性エマルジョンの主成分であるアクリル樹脂のモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタアクリル酸、メタアクリル酸誘導体が挙げられ、これらの中から選択される1種または2種以上のモノマーを用いる。
【0019】
上記のアクリル酸誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。また、上記のメタアクリル酸誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタアクリル酸エステル、メタアクリルアミド、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0020】
中でも、アクリル樹脂水性エマルジョンは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むのが、好ましい。
【0021】
上記アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレ−ト、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、メタアクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えばメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%と、難燃剤5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%と、分散剤0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%とを含有するものである。
【0024】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料において、アクリル樹脂エマルジョンが10重量%未満であれば、難燃性と可塑剤移行抑制作用は向上するが、防水シートへの付着性と耐摩耗性とが低下するので、好ましくない。またアクリル樹脂エマルジョンが30重量%を超えると、逆に、防水シートへの付着性と耐摩耗性とは向上するが、難燃性と可塑剤移行抑制作用とが低下するので、好ましくない。
【0025】
難燃剤が5重量%未満であれば、耐摩耗性は向上するが、難燃性が低下するので、好ましくない。また難燃剤が30重量%を超えると、逆に、難燃性は向上するが、耐摩耗性が低下するので、好ましくない。
【0026】
分散剤が0.5重量%未満であれば、酸化チタン粉末およびケイ酸質骨材の分散性が悪化するので、好ましくない。また分散剤が10重量%を超えると、防水シート保護塗膜の耐水性が低下するので、好ましくない。
【0027】
上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、アクリル樹脂エマルジョンが、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むものであることが、好ましい。
【0028】
上記の難燃剤としては、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、およびポリリン酸アンモニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの化合物を用いるのが、好ましい。
【0029】
また、上記の分散剤としては、アニオン系分散剤またはアニオン系分散剤とノニオン系分散剤との混合物を用いるのが、好ましい。
【0030】
本発明の保護塗料で使用するアクリル樹脂は、水性媒体中で乳化重合してエマルジョンを形成する必要があるので、アクリル樹脂の平均粒径は0.2〜1.0μmであることが好ましい。0.2μm未満では、塗布時の乾燥性が低下し、一方、1.0μmを超えるとエマルジョンとしての安定性が低下してアクリル樹脂の均一分散性が低下するので、好ましくない。中でも0.4〜0.6μmであるのがより好ましい。
【0031】
また、アクリル樹脂エマルジョン(アクリル樹脂+水)中におけるアクリル樹脂の含有量(樹脂分)は、25〜75重量%であることが好ましい。25重量%未満では、水の含有量が多く乾燥性が低下するため保護塗膜を形成させるのに時間を要するし、しかも所要の塗膜厚さを得るために4〜5回以上塗布を行なわなければならず、塗膜形成の効率が非常に低下するので、好ましくない。また、75重量%を超えると、保護塗料の粘度が増大するため、刷毛跡が顕著に残ってしまうなど塗布性が低下するので、好ましくない。中でも、35〜60重量%であるのがより好ましい。
【0032】
本発明において、塗膜に隠蔽性を持たせる観点から、酸化チタンを保護塗料の成分として含有させるのが好ましい。また、その配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して10〜150重量部とするのがよい。ここで、アクリル樹脂100重量部に対して酸化チタンが、10重量部未満では隠蔽力が不充分であり、また、酸化チタンを150重量部を超えて配合すると、防水シートとの付着性が不充分となるので、好ましくない。特に酸化チタンの配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して30〜120重量部であることが好ましい。
【0033】
酸化チタンの平均粒径は0.10〜0.35μmであることが好ましい。0.10μm未満では塗布時の乾燥性が低下し、0.35μmを超えると保護塗料としての安定性が低下して酸化チタンの均一分散が達成されにくくなるので、好ましくない。中でも0.20〜0.30μmであるのがより好ましい。
【0034】
本発明の保護塗料には、さらにケイ酸質系骨材を配合するのが好ましく、これにより塗膜にクラックが発生するのを効果的に防止することができるとともに、塗膜の防滑性も向上し、またケイ酸質系骨材は廉価であるからコスト的にも有利となる。
【0035】
ケイ酸質系骨材としては、特に限定されるものではないが、例えばケイ砂、タルク、カオリナイト、パイロフィライト等が挙げられる。
【0036】
ケイ酸質系骨材の配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して10〜300重量部であることが好ましい。10重量部未満では前記効果がほとんど得られず、一方300重量部を超えると、塗膜の強度が低下したり付着性が低下するので、好ましくない。中でも50〜200重量部であるのが一層好ましい。
【0037】
また、ケイ酸質系骨材の平均粒径は0.01〜0.5mmであることが好ましい。0.01mm未満では、塗膜の表面状態は良好であるが塗膜の乾燥性が低下し、0.5mmを超えると塗布性が低下することに加えて、塗膜の表面が粗くなって耐水性が低下するので、好ましくない。中でも0.05〜0.3mmであることがより好ましく、このような市販品として、シェルモールドケイ砂7号(竹折礦業所製)、シェルモールドケイ砂8号(竹折礦業所製)が好適なものとして挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の保護塗料には、上記のアクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、分散剤、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタン、およびケイ酸質系骨材の他に、保護塗料の諸性質の向上を目的として、他の無機粉末充填材や各種添加剤を配合することができる。ここで、無機粉末充填材としては、シリカや珪藻土などの二酸化ケイ素、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩、窒化アルミニウムや窒化ホウ素等の窒化物、カーボンブラックやグラファイト等の炭素類、その他金属粉等が挙げられ、また、添加剤としては、例えば凍結防止剤、消泡剤、増粘剤、着色剤、成膜助剤、防腐剤等が挙げられる。
【0039】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法は、酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴としている。このように、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製することにより、上記塗料の全成分を同時に混合する際に酸化チタン粉末がいわゆる「二次凝集」や「ブツ」状態になる分散不良を回避することができて、円滑な保護塗料の製造が可能となるものである。
【0040】
なお、本発明にかかる保護塗料を、軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に塗布する際の塗布量は、通常500〜1800g/m2 とするのが望ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1と2、比較例1〜4
まず、本発明によるポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料を調製するために、酸化チタン分散液(塗料用ミルベース)を調製した。
【0043】
二酸化チタン 29.4重量%
(商品名R−5N 堺化学工業株式会社製)
ノニオン性分散剤 2.5重量%
(商品名デモールEP 花王株式会社製)
アニオン性分散剤 5.0重量%
(商品名ディスパーサントSN−5029 サンノプコ株式会社製)
成膜助剤 6.7重量%
(商品名CS−12 長瀬産業株式会社製)
増粘剤 1.1重量%
(商品名hiメトローズ4000 信越化学株式会社製)
消泡剤 1.3重量%
(商品名アデカネートB−1012 旭電化工業株式会社製)
防腐剤 1.0重量%
(商品名スラオフSL 武田薬品工業株式会社製)
水 53.0重量%
上記の酸化チタン分散液(塗料用ミルベース)を使用し、下記の表1に示す配合により、本発明によるアクリル樹脂エマルジョンを用いた防水シート用保護塗料(実施例1と2)、並びにEVA系エマルジョンと、EVA/アクリル系エマルジョンを用いた防水シート用保護塗料(比較例1と2、比較例3と4)を調製した。なお、これらのエマルジョンの材料としては、つぎのものを使用した。
【0044】
アクリル樹脂エマルジョン:商品名AP−604 昭和高分子株式会社製
EVA系エマルジョン:商品名S−400 住友化学工業株式会社製
EVA/アクリル系エマルジョン:商品名P−910 昭和高分子株式会社製
難燃剤:水酸化アルミニウム、商品名B−303 日本軽金属株式会社製
体質顔料:商品名 A重炭 常陸砕石株式会社製
体質顔料:商品名 K重炭 常陸砕石株式会社製
ケイ砂8号:シェルモールドケイ砂8号(竹折礦業所製)
【表1】
上記本発明によるアクリル樹脂エマルジョンを含むポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料(実施例1と2)、並びに比較のためのEVA系エマルジョンと、EVA/アクリル系エマルジョンを含む防水シート用保護塗料(比較例1と2、比較例3と4)について、各種の評価試験を行なった。
【0045】
A.保護塗膜の耐摩耗性試験
本発明によるアクリル樹脂エマルジョンを含む防水シート用保護塗料(実施例1と2)、並びに比較のためのEVA系エマルジョンと、EVA/アクリル系エマルジョンを含む防水シート用保護塗料(比較例1と2、比較例3と4)について、塗膜の耐摩耗性試験を下記のようにして行なった。
【0046】
テーバー試験機(日本理学工業株式会社製)を用い、各塗料を、テーバー試験用基板(120cm×120cm×5cm)に、標準塗布量1.0kg/m2 で、多孔質ローラを用いて塗布し、20℃で7日間養生して、充分乾燥させた塗膜を形成したものを試験に供した。
【0047】
測定条件は、回転数=500、磨耗輪=H−22、荷重=250g、回転速度:60rpm、および室温(20℃)とした。得られた結果を、下記の表2に示した。
【0048】
【表2】
この表2の結果から明らかなように、本発明による実施例1と2の保護塗料による塗膜では、磨耗輪による磨耗試験後の減量が少なく、優れた耐摩耗性を有していた。これに対し、比較例1〜4の保護塗料による塗膜では、磨耗試験後の減量が多いものであり、耐摩耗性に劣るものであった。
【0049】
B.防水シートの表面燃焼性試験
ポリ塩化ビニル系防水シートの表面に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料、および比較例4の防水シート用保護塗料を塗布して保護塗膜を形成した試験体について、表面燃焼性試験を行なった。
【0050】
試験体は、ポリ塩化ビニル系防水シートに、5%に希釈した各塗料を2回塗りで約1kg/m2 塗布して、防水シートの表面に保護塗膜を形成した。これらの試験体を1週間、室温で養生した後、火をつけたタバコを試験体の上に置き、完全にタバコを燃焼させたあと、その表面状態を目視により観察した。また、塗料を塗布しない防水シートの上に火をつけたタバコを直接置き、同様にタバコを燃焼させたあとのその表面状態も観察した。
【0051】
その結果、ポリ塩化ビニル系防水シートの上に火をつけたタバコを直接置いた場合には、シート表面の焦げだけでなく、溶解が確認され、裏面までシートの溶解による変形が見られた。一方、各塗料を塗布した保護塗膜を有する試験体では、表面のみが焦げた。しかし、試験体表面の焦げ方に、保護塗膜の樹脂による違いは見られなかった。
【0052】
C.難燃剤(水酸化アルミニウム)の添加量の影響試験
難燃剤(水酸化アルミニウム)を添加した本発明による実施例1と2の防水シート用保護塗料の塗膜片の燃焼性について、試験した。燃焼性試験は、ガスバーナーの火を塗膜片に当て、そのときの塗膜片の燃焼状態と、火から塗膜片を遠ざけたときの状態を観察した。水酸化アルミニウムの添加量が増えるほど燃えにくくなる傾向を示した。しかし、不燃までは至らなかった。
【0053】
D.保護塗膜の付着性試験
本発明による実施例1と2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した厚み1.5mmの軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に、ローラを用いて800g/m2 塗布した。なお、塗布は2段階とした。すなわち、塗布前に新設防水層表面をブラシを用いて水洗し、表面を乾燥させた後、ローラを用いて400g/m2 塗布し、塗料が乾燥して塗膜が形成された後に、再び400g/m2 塗布し、乾燥させて保護塗膜を形成させた。
【0054】
得られた実施例1と2の保護塗膜について、碁盤目テープ法による塗膜の付着試験を行なった。また、比較のために、比較例1〜4の防水シート用保護塗料の塗膜についても同様の付着試験を行なった。得られた結果を、下記の表3に示した。
【0055】
【表3】
この表3の結果から明らかなように、本発明による実施例1と2の保護塗膜では、防水シートに対する付着性が非常に優れていた。これに対し、比較例1〜4の保護塗膜では、防水シートに対する付着性がかなり劣るものであった。
【0056】
つぎに、上記のようにして得られた実施例2の保護塗膜について、測定条件「標準」および「温冷」の場合について、引張り試験による付着試験を行なった。また、比較のために、比較例4の防水シート用保護塗料についても同様の引張り試験による付着試験を行なった。得られた結果を、下記の表4に示した。
【0057】
なお、測定条件は、「標準」の場合は、各保護塗膜を20℃の恒温室内に14日間保存した後、引張り試験による付着試験を行なった。「温冷」の場合は、各保護塗膜を、−20℃で3時間冷却した後、50℃で3時間加温し、さらに、20℃で18時間、浸水下におき、このサイクルを10回繰り返した後、引張り試験による付着試験を行なった。得られた結果を、下記の表4に示した。
【0058】
【表4】
この表4の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、防水シートに対する引張り試験による付着性が非常に優れていた。これに対し、比較例1〜4の保護塗膜では、防水シートに対する引張り試験による付着性がかなり劣るものであった。
【0059】
E.保護塗膜の可塑剤移行抑制性試験
上記付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に中毛ローラで、塗布量が2回塗りで1kg/m2 になるように塗布して、塗膜を形成した。この塗膜付き試験体を30℃、50℃および70℃の恒温槽内で、3日間放置した後、ポリ塩化ビニル製のスリッパで所定時間踏み付けを行ない、スリッパ下面への付着状態により塗膜の可塑剤移行抑制性を評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表5に示した。
【0060】
(判定基準)
◎:タック感なし
(抵抗を感じることなく足を上げることができる状態)
○:タック感あり
(足を上げるとき、少し抵抗感がある)
△:試験体上面の塗膜がスリッパ下面に付着し、試験体の一部が床面から少し浮いて直ぐに落ちる
×:試験体上面の塗膜がスリッパ下面に付着し、試験体が床面から全部浮いて直ぐに落ちる
××:試験体上面の塗膜がスリッパ下面に付着し、試験体が床面から浮いてしばらくしてから落ちる
【表5】
この表5の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、70℃の場合を除いて、タック感がなく、試験体上面の塗膜がスリッパ下面にかなり付着しない状態であり、可塑剤移行抑制性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜では、タック感がなく、可塑剤移行抑制性に優れているが、比較例4の保護塗膜では、本発明による実施例2の保護塗膜に比べると、可塑剤移行抑制性がかなり劣るものであった。
【0061】
F.保護塗料の初期乾燥性試験
上記保護塗膜の付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に、wet(湿潤)状態で1mmの厚みで塗布した。この塗膜付き試験体を20℃で、2〜5時間乾燥し、その1時間毎に塗膜の乾燥状態を観察し、評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表6に示した。
【0062】
(判定基準)
○:変化無し
△:指で擦ると削り取れる
×:塗膜軟化
【表6】
この表6の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、2〜5時間のいずれの場合も乾燥状態が良好で、初期乾燥性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜では、2〜4時間の間は乾燥状態が悪く、比較例4の保護塗膜では、2〜3時間の間は乾燥状態が悪く、いずれも初期乾燥性に劣るものであった。
【0063】
G.保護塗膜の耐水性試験
上記付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に、wet(湿潤)状態で1mmの厚みで塗布した。この塗膜付き試験体を20℃で、3時間乾燥した後、水中に1時間浸漬し、塗膜状態を観察し、評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表7に示した。
【0064】
【表7】
この表7の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、塗膜状態に変化が無く、耐水性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜は塗膜状態が悪く、指で擦ると削り取れ、かつ塗膜の一部が流出した。また比較例4の保護塗膜も塗膜状態が悪く、指で擦ると削り取れ、いずれも耐水性に劣るものであった。
【0065】
H.保護塗膜の耐候性試験
上記付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に中毛ローラで、塗布量が2回塗りで1kg/m2 になるように塗布した。この塗膜付き試験体について、キセノンウェザオメーター(東洋精機製作所社製)により1000時間後の塗膜状態を観察し、評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表8に示した。
【0066】
【表8】
この表8の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、塗膜状態に変化が無く、耐候性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜では、チョーキング現象が若干見られ、塗膜状態が悪く、耐候性に劣るものであった。なお、比較例4の保護塗膜では、塗膜状態に変化が無かった。
【0067】
I.保護塗膜の表面燃焼性試験
下地に石綿パーライト板、および石膏ボードを使用し、本発明による実施例2と4の防水シート用保護塗料、および比較例3と4の防水シート用保護塗料を塗布して保護塗膜を形成した試験体について、JIS A1321(1994)に規定する方法により、表面燃焼性試験を行なった。
【0068】
試験体は、塗布量が2回塗りで、約1kg/m2 になるように、石綿パーライト板、および石膏ボードの上面にそれぞれローラで塗布して、保護塗膜を形成した。これらの試験体を1週間、室温で養生した後、所定の方法により燃焼させることにより、その燃焼状態を観察するとともに、発煙量(CA)を測定した。
【0069】
その結果、本発明による実施例2と4の防水シート用保護塗料から形成された塗膜、および比較例3と4の防水シート用保護塗料から形成された塗膜のいずれの場合も、燃焼状態が石綿パーライト板で難燃1級程度、および石膏ボードで難燃2級程度の結果を示し、また発煙量(CA)は、いずれも規格値を大きく下回る値であり、表面燃焼性試験に合格し、難燃性に優れていた。
【0070】
【発明の効果】
本発明によるポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、上述のように、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有することを特徴とするもので、本発明の防水シート用保護塗料によれば、ポリ塩化ビニル系防水シートとの付着性(下地追従性)に優れるとともに、可塑剤移行抑制作用(耐汚染性)を有し、塗布時の塗布性および乾燥性が良好であるうえに、耐水性、耐候性、耐摩耗性、耐久性、及び難燃性にも優れているという効果を奏する。
【0071】
また、本発明によるポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法は、上述のように、酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴とするもので、本発明の方法によれば、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製することにより、上記塗料の全成分を同時に混合する際に酸化チタン粉末がいわゆる「二次凝集」や「ブツ」状態になる分散不良を回避することができて、円滑な保護塗料の製造が可能となるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ塩化ビニル系防水シートに難燃性保護塗膜層を形成するために用いられる、とくに付着性に優れた保護塗料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建築物の陸屋根や傾斜屋根等には、防水層として軟質ポリ塩化ビニル系防水シートを敷設することが広く行なわれているが、施工後長期の年月を経ると、可塑剤の揮散によるクラックの発生や紫外線による表面劣化等により防水性能が損なわれるため、防水シートの保護を目的として、予め防水シートの表面に耐候性の保護塗膜層を形成させることが多くなっている。
【0003】
このような保護塗膜形成のための保護塗料としては、従来、つぎの特許文献に記載のようなものが知られていた。
【0004】
【特許文献1】
「特開平11−5938号公報」
本出願人は、先に、エチレンと、酢酸ビニルと、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタアクリル酸、メタアクリル酸誘導体よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアクリル樹脂水性エマルジョンと、を水性媒体中で乳化重合して得られる共重合体エマルジョンを含有することを特徴とする、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の発明を提案した。
【0005】
【特許文献2】
「特開平9−25381公報」
この特許文献2には、難燃性塗料用のバインダーをはじめとして、疎水性被着体用接着剤、粘着剤、難燃性を要求されない一般の塗料用バインダー、繊維バインダー、モルタル混和剤等の各種の用途に供され、特に難燃性塗料用バインダーとして用いた場合には、塗膜の難燃性および耐水性が飛躍的に向上したものが得られる水性エマルジョン、及び該水性エマルジョンを用いた難燃性塗料が開示されている。この特許文献2記載の水性エマルジョンは、分散質がビニルエステル系重合体(A)、並びにメタクリル酸エステル単位、アクリル酸エステル単位およびスチレン系単量体単位のうちの少なくとも一種からなる重合体(B)からなり、重合体(A)は主として分散質の中心部に存在し、重合体(B)は主として分散質の周辺部に存在し、重合体(A)と重合体(B)との重量比率が9:1〜1:9であり、分散剤が50重量%以上の乳化剤からなるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の先行技術としての特許文献1記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料では、耐水性に欠点があるエチレン/酢酸ビニル樹脂を用いているため、低温時の施工で、夜露や降雨の影響があれば、成膜不良を起こし、下地との付着性を阻害するという問題があった。また、特許文献2記載の水性エマルジョンおよびこれを用いた難燃性塗料では、多量の乳化剤を使用しており、このような乳化剤の存在下では、塗膜の耐水性が低下するという問題があった。しかも特許文献2記載の水性エマルジョンおよびこれを用いた難燃性塗料は、布、紙、木材、合板、コンクリート、モルタル、ALC板、フレキシブル板、金属板などからなる壁面、床面、天井面などに対して使用することが明記されており、防水シートの保護塗料として難燃性などの安全性を考慮したものは、従来より知られていない。
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、ポリ塩化ビニル系防水シートとの付着性(下地追従性)に優れるとともに、可塑剤移行抑制作用(耐汚染性)を有し、塗布時の塗布性および乾燥性が良好であるうえに、耐水性、耐候性、耐摩耗性、耐久性、及び難燃性にも優れている、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料およびその製造方法を提供しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究の結果、保護塗料を構成する樹脂として、アクリル樹脂水性エマルジョンを用いるとともに、難燃性付与剤として金属水酸化物等の難燃剤を用いることにより、所期の保護塗料を形成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項2記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%と、難燃剤5〜30重量%と、分散剤0.5〜10重量%とを含有することを特徴としている。
【0011】
上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、アクリル樹脂エマルジョンが、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むものであることが、好ましい。
【0012】
また、上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、難燃剤が、金属水酸化物、ケイ酸塩、およびポリリン酸アンモニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの化合物であるのが、好ましい。ここで、金属水酸化物が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムであり、ケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウムであるのが、好ましい。
【0013】
さらに、上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、分散剤が、アニオン系分散剤またはアニオン系分散剤とノニオン系分散剤との混合物であるのが、好ましい。
【0014】
また、上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンが、アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して10〜150重量部の割合で配合されているのが、好ましい。
【0015】
上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、ケイ酸質系骨材が、アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して10〜300重量部の割合で配合されているのが、好ましい。
【0016】
本発明の請求項9に記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法は、酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有するものである。
【0018】
ここで、アクリル樹脂水性エマルジョンの主成分であるアクリル樹脂のモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタアクリル酸、メタアクリル酸誘導体が挙げられ、これらの中から選択される1種または2種以上のモノマーを用いる。
【0019】
上記のアクリル酸誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。また、上記のメタアクリル酸誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタアクリル酸エステル、メタアクリルアミド、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0020】
中でも、アクリル樹脂水性エマルジョンは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むのが、好ましい。
【0021】
上記アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレ−ト、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、メタアクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えばメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル、エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%と、難燃剤5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%と、分散剤0.5〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%とを含有するものである。
【0024】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料において、アクリル樹脂エマルジョンが10重量%未満であれば、難燃性と可塑剤移行抑制作用は向上するが、防水シートへの付着性と耐摩耗性とが低下するので、好ましくない。またアクリル樹脂エマルジョンが30重量%を超えると、逆に、防水シートへの付着性と耐摩耗性とは向上するが、難燃性と可塑剤移行抑制作用とが低下するので、好ましくない。
【0025】
難燃剤が5重量%未満であれば、耐摩耗性は向上するが、難燃性が低下するので、好ましくない。また難燃剤が30重量%を超えると、逆に、難燃性は向上するが、耐摩耗性が低下するので、好ましくない。
【0026】
分散剤が0.5重量%未満であれば、酸化チタン粉末およびケイ酸質骨材の分散性が悪化するので、好ましくない。また分散剤が10重量%を超えると、防水シート保護塗膜の耐水性が低下するので、好ましくない。
【0027】
上記本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料においては、アクリル樹脂エマルジョンが、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むものであることが、好ましい。
【0028】
上記の難燃剤としては、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、およびポリリン酸アンモニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの化合物を用いるのが、好ましい。
【0029】
また、上記の分散剤としては、アニオン系分散剤またはアニオン系分散剤とノニオン系分散剤との混合物を用いるのが、好ましい。
【0030】
本発明の保護塗料で使用するアクリル樹脂は、水性媒体中で乳化重合してエマルジョンを形成する必要があるので、アクリル樹脂の平均粒径は0.2〜1.0μmであることが好ましい。0.2μm未満では、塗布時の乾燥性が低下し、一方、1.0μmを超えるとエマルジョンとしての安定性が低下してアクリル樹脂の均一分散性が低下するので、好ましくない。中でも0.4〜0.6μmであるのがより好ましい。
【0031】
また、アクリル樹脂エマルジョン(アクリル樹脂+水)中におけるアクリル樹脂の含有量(樹脂分)は、25〜75重量%であることが好ましい。25重量%未満では、水の含有量が多く乾燥性が低下するため保護塗膜を形成させるのに時間を要するし、しかも所要の塗膜厚さを得るために4〜5回以上塗布を行なわなければならず、塗膜形成の効率が非常に低下するので、好ましくない。また、75重量%を超えると、保護塗料の粘度が増大するため、刷毛跡が顕著に残ってしまうなど塗布性が低下するので、好ましくない。中でも、35〜60重量%であるのがより好ましい。
【0032】
本発明において、塗膜に隠蔽性を持たせる観点から、酸化チタンを保護塗料の成分として含有させるのが好ましい。また、その配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して10〜150重量部とするのがよい。ここで、アクリル樹脂100重量部に対して酸化チタンが、10重量部未満では隠蔽力が不充分であり、また、酸化チタンを150重量部を超えて配合すると、防水シートとの付着性が不充分となるので、好ましくない。特に酸化チタンの配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して30〜120重量部であることが好ましい。
【0033】
酸化チタンの平均粒径は0.10〜0.35μmであることが好ましい。0.10μm未満では塗布時の乾燥性が低下し、0.35μmを超えると保護塗料としての安定性が低下して酸化チタンの均一分散が達成されにくくなるので、好ましくない。中でも0.20〜0.30μmであるのがより好ましい。
【0034】
本発明の保護塗料には、さらにケイ酸質系骨材を配合するのが好ましく、これにより塗膜にクラックが発生するのを効果的に防止することができるとともに、塗膜の防滑性も向上し、またケイ酸質系骨材は廉価であるからコスト的にも有利となる。
【0035】
ケイ酸質系骨材としては、特に限定されるものではないが、例えばケイ砂、タルク、カオリナイト、パイロフィライト等が挙げられる。
【0036】
ケイ酸質系骨材の配合量は、アクリル樹脂100重量部に対して10〜300重量部であることが好ましい。10重量部未満では前記効果がほとんど得られず、一方300重量部を超えると、塗膜の強度が低下したり付着性が低下するので、好ましくない。中でも50〜200重量部であるのが一層好ましい。
【0037】
また、ケイ酸質系骨材の平均粒径は0.01〜0.5mmであることが好ましい。0.01mm未満では、塗膜の表面状態は良好であるが塗膜の乾燥性が低下し、0.5mmを超えると塗布性が低下することに加えて、塗膜の表面が粗くなって耐水性が低下するので、好ましくない。中でも0.05〜0.3mmであることがより好ましく、このような市販品として、シェルモールドケイ砂7号(竹折礦業所製)、シェルモールドケイ砂8号(竹折礦業所製)が好適なものとして挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の保護塗料には、上記のアクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、分散剤、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタン、およびケイ酸質系骨材の他に、保護塗料の諸性質の向上を目的として、他の無機粉末充填材や各種添加剤を配合することができる。ここで、無機粉末充填材としては、シリカや珪藻土などの二酸化ケイ素、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩、窒化アルミニウムや窒化ホウ素等の窒化物、カーボンブラックやグラファイト等の炭素類、その他金属粉等が挙げられ、また、添加剤としては、例えば凍結防止剤、消泡剤、増粘剤、着色剤、成膜助剤、防腐剤等が挙げられる。
【0039】
本発明のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法は、酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴としている。このように、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製することにより、上記塗料の全成分を同時に混合する際に酸化チタン粉末がいわゆる「二次凝集」や「ブツ」状態になる分散不良を回避することができて、円滑な保護塗料の製造が可能となるものである。
【0040】
なお、本発明にかかる保護塗料を、軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に塗布する際の塗布量は、通常500〜1800g/m2 とするのが望ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1と2、比較例1〜4
まず、本発明によるポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料を調製するために、酸化チタン分散液(塗料用ミルベース)を調製した。
【0043】
二酸化チタン 29.4重量%
(商品名R−5N 堺化学工業株式会社製)
ノニオン性分散剤 2.5重量%
(商品名デモールEP 花王株式会社製)
アニオン性分散剤 5.0重量%
(商品名ディスパーサントSN−5029 サンノプコ株式会社製)
成膜助剤 6.7重量%
(商品名CS−12 長瀬産業株式会社製)
増粘剤 1.1重量%
(商品名hiメトローズ4000 信越化学株式会社製)
消泡剤 1.3重量%
(商品名アデカネートB−1012 旭電化工業株式会社製)
防腐剤 1.0重量%
(商品名スラオフSL 武田薬品工業株式会社製)
水 53.0重量%
上記の酸化チタン分散液(塗料用ミルベース)を使用し、下記の表1に示す配合により、本発明によるアクリル樹脂エマルジョンを用いた防水シート用保護塗料(実施例1と2)、並びにEVA系エマルジョンと、EVA/アクリル系エマルジョンを用いた防水シート用保護塗料(比較例1と2、比較例3と4)を調製した。なお、これらのエマルジョンの材料としては、つぎのものを使用した。
【0044】
アクリル樹脂エマルジョン:商品名AP−604 昭和高分子株式会社製
EVA系エマルジョン:商品名S−400 住友化学工業株式会社製
EVA/アクリル系エマルジョン:商品名P−910 昭和高分子株式会社製
難燃剤:水酸化アルミニウム、商品名B−303 日本軽金属株式会社製
体質顔料:商品名 A重炭 常陸砕石株式会社製
体質顔料:商品名 K重炭 常陸砕石株式会社製
ケイ砂8号:シェルモールドケイ砂8号(竹折礦業所製)
【表1】
上記本発明によるアクリル樹脂エマルジョンを含むポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料(実施例1と2)、並びに比較のためのEVA系エマルジョンと、EVA/アクリル系エマルジョンを含む防水シート用保護塗料(比較例1と2、比較例3と4)について、各種の評価試験を行なった。
【0045】
A.保護塗膜の耐摩耗性試験
本発明によるアクリル樹脂エマルジョンを含む防水シート用保護塗料(実施例1と2)、並びに比較のためのEVA系エマルジョンと、EVA/アクリル系エマルジョンを含む防水シート用保護塗料(比較例1と2、比較例3と4)について、塗膜の耐摩耗性試験を下記のようにして行なった。
【0046】
テーバー試験機(日本理学工業株式会社製)を用い、各塗料を、テーバー試験用基板(120cm×120cm×5cm)に、標準塗布量1.0kg/m2 で、多孔質ローラを用いて塗布し、20℃で7日間養生して、充分乾燥させた塗膜を形成したものを試験に供した。
【0047】
測定条件は、回転数=500、磨耗輪=H−22、荷重=250g、回転速度:60rpm、および室温(20℃)とした。得られた結果を、下記の表2に示した。
【0048】
【表2】
この表2の結果から明らかなように、本発明による実施例1と2の保護塗料による塗膜では、磨耗輪による磨耗試験後の減量が少なく、優れた耐摩耗性を有していた。これに対し、比較例1〜4の保護塗料による塗膜では、磨耗試験後の減量が多いものであり、耐摩耗性に劣るものであった。
【0049】
B.防水シートの表面燃焼性試験
ポリ塩化ビニル系防水シートの表面に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料、および比較例4の防水シート用保護塗料を塗布して保護塗膜を形成した試験体について、表面燃焼性試験を行なった。
【0050】
試験体は、ポリ塩化ビニル系防水シートに、5%に希釈した各塗料を2回塗りで約1kg/m2 塗布して、防水シートの表面に保護塗膜を形成した。これらの試験体を1週間、室温で養生した後、火をつけたタバコを試験体の上に置き、完全にタバコを燃焼させたあと、その表面状態を目視により観察した。また、塗料を塗布しない防水シートの上に火をつけたタバコを直接置き、同様にタバコを燃焼させたあとのその表面状態も観察した。
【0051】
その結果、ポリ塩化ビニル系防水シートの上に火をつけたタバコを直接置いた場合には、シート表面の焦げだけでなく、溶解が確認され、裏面までシートの溶解による変形が見られた。一方、各塗料を塗布した保護塗膜を有する試験体では、表面のみが焦げた。しかし、試験体表面の焦げ方に、保護塗膜の樹脂による違いは見られなかった。
【0052】
C.難燃剤(水酸化アルミニウム)の添加量の影響試験
難燃剤(水酸化アルミニウム)を添加した本発明による実施例1と2の防水シート用保護塗料の塗膜片の燃焼性について、試験した。燃焼性試験は、ガスバーナーの火を塗膜片に当て、そのときの塗膜片の燃焼状態と、火から塗膜片を遠ざけたときの状態を観察した。水酸化アルミニウムの添加量が増えるほど燃えにくくなる傾向を示した。しかし、不燃までは至らなかった。
【0053】
D.保護塗膜の付着性試験
本発明による実施例1と2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した厚み1.5mmの軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に、ローラを用いて800g/m2 塗布した。なお、塗布は2段階とした。すなわち、塗布前に新設防水層表面をブラシを用いて水洗し、表面を乾燥させた後、ローラを用いて400g/m2 塗布し、塗料が乾燥して塗膜が形成された後に、再び400g/m2 塗布し、乾燥させて保護塗膜を形成させた。
【0054】
得られた実施例1と2の保護塗膜について、碁盤目テープ法による塗膜の付着試験を行なった。また、比較のために、比較例1〜4の防水シート用保護塗料の塗膜についても同様の付着試験を行なった。得られた結果を、下記の表3に示した。
【0055】
【表3】
この表3の結果から明らかなように、本発明による実施例1と2の保護塗膜では、防水シートに対する付着性が非常に優れていた。これに対し、比較例1〜4の保護塗膜では、防水シートに対する付着性がかなり劣るものであった。
【0056】
つぎに、上記のようにして得られた実施例2の保護塗膜について、測定条件「標準」および「温冷」の場合について、引張り試験による付着試験を行なった。また、比較のために、比較例4の防水シート用保護塗料についても同様の引張り試験による付着試験を行なった。得られた結果を、下記の表4に示した。
【0057】
なお、測定条件は、「標準」の場合は、各保護塗膜を20℃の恒温室内に14日間保存した後、引張り試験による付着試験を行なった。「温冷」の場合は、各保護塗膜を、−20℃で3時間冷却した後、50℃で3時間加温し、さらに、20℃で18時間、浸水下におき、このサイクルを10回繰り返した後、引張り試験による付着試験を行なった。得られた結果を、下記の表4に示した。
【0058】
【表4】
この表4の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、防水シートに対する引張り試験による付着性が非常に優れていた。これに対し、比較例1〜4の保護塗膜では、防水シートに対する引張り試験による付着性がかなり劣るものであった。
【0059】
E.保護塗膜の可塑剤移行抑制性試験
上記付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に中毛ローラで、塗布量が2回塗りで1kg/m2 になるように塗布して、塗膜を形成した。この塗膜付き試験体を30℃、50℃および70℃の恒温槽内で、3日間放置した後、ポリ塩化ビニル製のスリッパで所定時間踏み付けを行ない、スリッパ下面への付着状態により塗膜の可塑剤移行抑制性を評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表5に示した。
【0060】
(判定基準)
◎:タック感なし
(抵抗を感じることなく足を上げることができる状態)
○:タック感あり
(足を上げるとき、少し抵抗感がある)
△:試験体上面の塗膜がスリッパ下面に付着し、試験体の一部が床面から少し浮いて直ぐに落ちる
×:試験体上面の塗膜がスリッパ下面に付着し、試験体が床面から全部浮いて直ぐに落ちる
××:試験体上面の塗膜がスリッパ下面に付着し、試験体が床面から浮いてしばらくしてから落ちる
【表5】
この表5の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、70℃の場合を除いて、タック感がなく、試験体上面の塗膜がスリッパ下面にかなり付着しない状態であり、可塑剤移行抑制性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜では、タック感がなく、可塑剤移行抑制性に優れているが、比較例4の保護塗膜では、本発明による実施例2の保護塗膜に比べると、可塑剤移行抑制性がかなり劣るものであった。
【0061】
F.保護塗料の初期乾燥性試験
上記保護塗膜の付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に、wet(湿潤)状態で1mmの厚みで塗布した。この塗膜付き試験体を20℃で、2〜5時間乾燥し、その1時間毎に塗膜の乾燥状態を観察し、評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表6に示した。
【0062】
(判定基準)
○:変化無し
△:指で擦ると削り取れる
×:塗膜軟化
【表6】
この表6の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、2〜5時間のいずれの場合も乾燥状態が良好で、初期乾燥性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜では、2〜4時間の間は乾燥状態が悪く、比較例4の保護塗膜では、2〜3時間の間は乾燥状態が悪く、いずれも初期乾燥性に劣るものであった。
【0063】
G.保護塗膜の耐水性試験
上記付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に、wet(湿潤)状態で1mmの厚みで塗布した。この塗膜付き試験体を20℃で、3時間乾燥した後、水中に1時間浸漬し、塗膜状態を観察し、評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表7に示した。
【0064】
【表7】
この表7の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、塗膜状態に変化が無く、耐水性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜は塗膜状態が悪く、指で擦ると削り取れ、かつ塗膜の一部が流出した。また比較例4の保護塗膜も塗膜状態が悪く、指で擦ると削り取れ、いずれも耐水性に劣るものであった。
【0065】
H.保護塗膜の耐候性試験
上記付着性試験の場合と同様に、本発明による実施例2の防水シート用保護塗料を、試験体としてスレート板を接着した軟質ポリ塩化ビニル系防水シートからなる防水層表面に中毛ローラで、塗布量が2回塗りで1kg/m2 になるように塗布した。この塗膜付き試験体について、キセノンウェザオメーター(東洋精機製作所社製)により1000時間後の塗膜状態を観察し、評価した。また、比較例2と4の保護塗料についても、同様の評価試験を行なった。得られた結果を、下記の表8に示した。
【0066】
【表8】
この表8の結果から明らかなように、本発明による実施例2の保護塗膜では、塗膜状態に変化が無く、耐候性に優れていた。これに対し、比較例2の保護塗膜では、チョーキング現象が若干見られ、塗膜状態が悪く、耐候性に劣るものであった。なお、比較例4の保護塗膜では、塗膜状態に変化が無かった。
【0067】
I.保護塗膜の表面燃焼性試験
下地に石綿パーライト板、および石膏ボードを使用し、本発明による実施例2と4の防水シート用保護塗料、および比較例3と4の防水シート用保護塗料を塗布して保護塗膜を形成した試験体について、JIS A1321(1994)に規定する方法により、表面燃焼性試験を行なった。
【0068】
試験体は、塗布量が2回塗りで、約1kg/m2 になるように、石綿パーライト板、および石膏ボードの上面にそれぞれローラで塗布して、保護塗膜を形成した。これらの試験体を1週間、室温で養生した後、所定の方法により燃焼させることにより、その燃焼状態を観察するとともに、発煙量(CA)を測定した。
【0069】
その結果、本発明による実施例2と4の防水シート用保護塗料から形成された塗膜、および比較例3と4の防水シート用保護塗料から形成された塗膜のいずれの場合も、燃焼状態が石綿パーライト板で難燃1級程度、および石膏ボードで難燃2級程度の結果を示し、また発煙量(CA)は、いずれも規格値を大きく下回る値であり、表面燃焼性試験に合格し、難燃性に優れていた。
【0070】
【発明の効果】
本発明によるポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料は、上述のように、アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有することを特徴とするもので、本発明の防水シート用保護塗料によれば、ポリ塩化ビニル系防水シートとの付着性(下地追従性)に優れるとともに、可塑剤移行抑制作用(耐汚染性)を有し、塗布時の塗布性および乾燥性が良好であるうえに、耐水性、耐候性、耐摩耗性、耐久性、及び難燃性にも優れているという効果を奏する。
【0071】
また、本発明によるポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法は、上述のように、酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴とするもので、本発明の方法によれば、塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製することにより、上記塗料の全成分を同時に混合する際に酸化チタン粉末がいわゆる「二次凝集」や「ブツ」状態になる分散不良を回避することができて、円滑な保護塗料の製造が可能となるという効果を奏する。
Claims (9)
- アクリル樹脂エマルジョンと、難燃剤と、分散剤とを含有することを特徴とする、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- アクリル樹脂エマルジョン10〜30重量%と、難燃剤5〜30重量%と、分散剤0.5〜10重量%とを含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- アクリル樹脂エマルジョンが、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、およびメタアクリル酸エステルよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のモノマーの重合体または共重合体からなるアクリル樹脂を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- 難燃剤が、金属水酸化物、ケイ酸塩、およびポリリン酸アンモニウム塩よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- 金属水酸化物が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムであり、ケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウムである、請求項4記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- 分散剤が、アニオン系分散剤またはアニオン系分散剤とノニオン系分散剤との混合物である、請求項1〜5のうちのいずれか一項記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- 塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンが、アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して10〜150重量部の割合で配合されている、請求項1〜5のうちのいずれか一項記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- ケイ酸質系骨材が、アクリル樹脂エマルジョン100重量部に対して10〜300重量部の割合で配合されている、請求項1〜6のうちのいずれか一項記載のポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料。
- 塗膜に隠蔽性を持たせる酸化チタンと、水と、分散剤とを含む塗料用ミルベースを予め調製し、ついでこの塗料用ミルベースに、アクリル樹脂エマルジョン、難燃剤、およびケイ酸質系骨材を配合することを特徴とする、ポリ塩化ビニル系防水シート用保護塗料の製造方法。
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---|---|---|---|---|
JP2008019394A (ja) * | 2006-07-14 | 2008-01-31 | Sk Kaken Co Ltd | 発泡性耐火塗料 |
JP2011185584A (ja) * | 2010-03-11 | 2011-09-22 | Mitsubishi Electric Corp | 空気調和機の室内機 |
KR101198330B1 (ko) | 2012-04-04 | 2012-11-06 | 장수관 | 폴리비닐클로라이드 방수시트 및 그 제조 방법 |
CN104130652A (zh) * | 2014-08-15 | 2014-11-05 | 无锡市陆区化学制品厂 | 一种环保型水性涂料 |
CN104692707A (zh) * | 2015-01-29 | 2015-06-10 | 三棵树涂料股份有限公司 | 一种功能型真石漆建筑外墙涂料及其制备方法 |
CN105131764A (zh) * | 2015-08-20 | 2015-12-09 | 浙江好途程节能科技有限公司 | 一种反射隔热质感涂料及其制备方法 |
-
2003
- 2003-05-28 JP JP2003150431A patent/JP2004352809A/ja not_active Withdrawn
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