JP2004239381A - 樹脂製プーリ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外側円筒部1の外周面1xに設けられたV溝1vの側面1wに、周方向に多数の突起5aを形成する。これらの突起5aは、滑りに対する抵抗となって、ベルトとV溝1vとの間の微小な滑りを防止する。従って、この樹脂製プーリは、ベルトの張力を高めに設定しなくとも、エンジンのクランクシャフトの角速度変動に起因するVリブドベルトとV溝の間の滑りが抑制され、トルクを確実に伝達することができる。また、ベルトの張力を従来に比べ低く設定できることで、ベルト自身の寿命の低下を防止する効果を奏する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用エンジンにおける補機類の回転軸に取り付けられた従動プーリ等、無端ベルトを掛け渡した動力伝達機構に用いられる合成樹脂製プーリに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用エンジンのカムシャフトや補機類は、このエンジンのクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリと、これらカムシャフトや補機類の回転軸端部に固定した従動プーリとの間にVリブドベルト(無端ベルト)を掛け渡し、このベルトの走行による動力伝達によって回転駆動されている。
【0003】
上記エンジンは、爆発工程時のみに駆動エネルギーを発生し、他の工程では駆動力を発揮しないため、その駆動源としてのクランクシャフトには、その回転中常に角速度の微小変動が生じている。このため、通常のエンジンにおけるクランクシャフトには、フライホイール等を取り付けることにより慣性力を大きくして、スムースランニングに近づける手段が採用されている。しかしながら、この手段によっても、クランクシャフトの角速度変動を完全に抑制することは難しく、ガソリンエンジンで最大1.5〜2.0度程度、ディーゼルエンジンで最大6〜8度程度の角速度変動が生じてしまう。また同時に、各プーリ間に掛け渡された無端ベルトの速度も変動することとなる。
【0004】
一方、エンジンに備えられたオルタネータ等の補機類は、一定速度で駆動する方が効率が良いことから、前述のクランクシャフトの角速度変動を吸収するために、補機類の回転軸とこの回転軸に支持された従動プーリとの間には、一方向クラッチ等の角速度変動吸収手段が設けられている。この角速度変動吸収手段は、クランクシャフトの角速度増加時にはプーリのトルクを補機類の回転軸に伝達し、クランクシャフトの角速度減少時に、補機類の慣性により回転軸の回転がプーリより早くなった場合には、一方向クラッチ等の係合を解除させて、補機類の回転が略一定速度となるように構成されている(例えば、特許文献1あるいは特許文献2等を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特公平7−72585号公報
【特許文献2】特開2001−304381号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のような樹脂製プーリにおいては、角速度が変動するクランクシャフト(駆動プーリ)を駆動源として、略一定速度で回転しようとするオルタネータ等の補機類を駆動しようとするために、これら補機類の回転軸に設けられた従動プーリとVリブドベルト(無端ベルト)との間で微小な滑り(スリップ)が生じ、この従動プーリ前後のVリブドベルトに局所的な伸び縮みが発生している。
【0007】
また、自動車用のエンジンの分野においては、エンジンの出力向上あるいはディーゼル化によって、このようなプーリを用いた動力伝達機構の伝達効率向上が課題となっている。そのため、クランクシャフトの角速度変動に起因するVリブドベルトのスリップを更に低減すべく、近年、各プーリ間のベルト張力を高める対策が施されてきている。
【0008】
ところが、Vリブドベルトには、スリップを防止するためにその張力を高めることと相反して、前述の局所的な伸び縮みに対応する余力(弾性)が減少し、寿命が低下してしまうという問題があった。また、ベルトの張力を上げることは、樹脂製プーリ自身にも高剛性化等の対応が要求される上、このプーリと補機類との間に介在配置される転がり軸受や一方向クラッチ等も対応をとる必要があり、全体としてのコスト上昇の要因ともなってしまう。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、掛け渡されるVリブドベルトの張力が低くても駆動力の伝達効率が高く、このベルトの寿命を低下させることのない樹脂製プーリを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、速度変動を伴いつつ一定方向に走行するVリブドベルトと係合する複数条のV溝を外周面に有する樹脂製プーリにおいて、前記V溝の側面には、非連続の突起が周方向に複数形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記突起の個々の形状としては、Vリブドベルトの速度増加時にはこのベルトの滑りを防止し、Vリブドベルトの速度減少時にはこのベルトの回転方向の逆方向への滑りを許容する形状が好ましい。(請求項2)
【0012】
本発明は、Vリブドベルトを掛け渡した動力伝達機構に用いられる合成樹脂製プーリにおいて、Vリブドベルトとの係合面となるプーリ外周面のV溝(Vリブ)の側面に、このベルトの周方向の滑りを防止する突起を設けることにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、樹脂製プーリ外周面のV溝側面にこの突起を形成することにより、クランクシャフトの角速度変動に起因するVリブドベルトとV溝の間の滑りを防止することができる。また、この構成により、Vリブドベルトの張力を高く設定しなくても、Vリブドベルトの滑りが防止され、トルクが確実に伝達される。従って、本発明の樹脂製プーリは、Vリブドベルトの走行による駆動力の伝達効率が向上するとともに、Vリブドベルトの張力を従来に比べ低く設定できることで、ベルト自身の寿命を低下させることがない。
【0014】
なお、この突起を、Vリブドベルトがこのベルトの走行方向と逆方向にのみスリップする形状とすることで、一方向クラッチの原理と同様に、Vリブドベルトの加速時には、トルクを確実に伝達して伝達効率を向上させ、Vリブドベルトの減速時には、このベルトとV溝との間の微小な滑りによって、Vリブドベルトが走行方向と逆方向に引っ張られるのを防止することができる。従って、この樹脂製プーリは、Vリブドベルトが局所的に伸ばされたり縮んだりすることを緩和することで、このベルトの寿命を向上させる効果を奏することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態における樹脂製プーリの構造を示す外観斜視図であり、図2は、この樹脂製プーリの外周面に形成されたV溝の拡大図である。
【0016】
この樹脂製プーリは、図1に示すように、同心状に配置された外側円筒部1と、内側円筒部2と、これら外側円筒部1と内側円筒部2とを一体に連結する環状円板部3を主体として形成されている。また、この樹脂製プーリの外側円筒部外周面1xには、このプーリに掛け渡されるVリブドベルト(図示省略)と係合する複数のV溝(ポリV溝)1v,1v,・・・が形成されているとともに、環状円板部3の両端面には、このプーリの径方向に沿って外側円筒部1と内側円筒部2とを連結する複数の放射状補強リブ4,4,・・・が形成されている。
【0017】
なお、この樹脂製プーリの内側円筒部(ボス部)2とこのプーリを支持する軸(図示省略)との間には、ベルトの走行方向にのみ係合してトルクを伝達する一方向クラッチと、玉軸受等の転がり軸受が介在配置されている。また、この樹脂製プーリを構成する合成樹脂材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド6−6樹脂、フェノール樹脂あるいはポリアセタール樹脂等を使用することができる。また、これらの合成樹脂には、必要に応じてガラス繊維等の強化繊維を混合しても良い。
【0018】
本実施の形態における樹脂製プーリの特徴は、図2の拡大図に示すように、外側円筒部外周面1xの山部1sと谷部1tとの間に形成されたV溝1vの両側面1w,1wに、断面略半球状の突起5aが、周方向に多数形成されている点である。また、これらの突起5aは、滑りに対する抵抗となって、VリブドベルトとV溝1vとの間の微小な滑りを防止する。
【0019】
従って、この樹脂製プーリは、Vリブドベルトの張力を高めに設定しなくとも、クランクシャフトの角速度変動に起因するVリブドベルトとV溝1vの間の滑りが抑制され、トルクが確実に伝達されるようになる。また、Vリブドベルトの張力を従来に比べ低く設定できることで、ベルト自身の寿命を向上させる効果も併せて奏することができる。
【0020】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態における樹脂製プーリの構造を示す外観斜視図であり、図4は、この樹脂製プーリの外周面に形成されたV溝の拡大図である。なお、第1の実施の形態と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記して詳細な説明を省略する。
【0021】
この第2の実施の形態における樹脂製プーリが、第1の実施の形態における樹脂製プーリと異なる点は、V溝1vの側面に形成された突起5bの形状である。
この突起5bは、図4に示すように、それぞれのV溝1vの両側面1w,1wに周方向に多数形成されているとともに、その個々の形状が、このプーリの回転方向(すなわちVリブドベルトの走行方向)の前側から後側にかけてプーリ側面から漸次盛り上がる三角錐状に形成されている。この形状によって、Vリブドベルトの速度増加時には、突起5bの後側に形成された突出部位が抵抗となり、このベルトの滑りが防止される。また逆に、Vリブドベルトの速度減少時には、突起5b前側のテーパー部位が、ベルトの回転方向の逆方向への滑りを許容し、このベルトの樹脂製プーリ前後における局所的な伸縮を緩和することができる。
【0022】
従って、本実施の形態における樹脂製プーリも、第1の実施の形態同様、Vリブドベルトの張力を高めに設定しなくとも、このベルトの走行による駆動力の伝達効率を向上させることができる。また、この樹脂製プーリは、Vリブドベルトの張力を従来に比べ低く設定できることに加え、クランクシャフトの角速度変動に起因するベルトの局所的な伸縮を緩和することができ、もってVリブドベルトの寿命を伸ばす効果を奏することができる。
【0023】
なお、以上実施の形態においては、V溝側面1wに形成される突起の形状例を、プーリの周方向に方向性を持たない例と、方向性を持つ例とを、それぞれ1つづつ示したが、突起の形状はこれらの例に限定されるものではない。例えば、ベルトの速度増加時にはベルトの滑りを防止し、ベルトの速度減少時にはベルトの滑りを許容する、方向性を持った突起の形状例として、第2の実施の形態におけるプーリ側面から漸次盛り上がる三角錐形状に代わって、図5の拡大図に示すような、周方向に対して傾斜した台形状突起5cを形成しても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の樹脂製プーリによれば、Vリブドベルトの張力を高めに設定しなくとも、エンジンのクランクシャフトの角速度変動に起因するVリブドベルトとV溝の間の滑りが抑制され、トルクを確実に伝達することができる。また、Vリブドベルトの張力を従来に比べ低く設定できることで、ベルト自身の寿命の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における樹脂製プーリの外観斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の樹脂製プーリにおけるV溝1vの拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における樹脂製プーリの外観斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の樹脂製プーリにおけるV溝1vの拡大図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の樹脂製プーリにおいてV溝1vの側面1wに形成された突起の別の形状を示す拡大図である。
【符号の説明】
1 外側円筒部
1s 山部
1t 谷部
1v V溝
1w V溝側面
1x 外周面
2 内側円筒部
2y 内周面
3 環状円板部
4 補強リブ
5a,5b,5c 突起
Claims (2)
- 速度変動を伴いつつ一定方向に走行するVリブドベルトと係合する複数条のV溝を外周面に有する樹脂製プーリにおいて、
前記V溝の側面には、非連続の突起が周方向に複数形成されていることを特徴とする樹脂製プーリ。 - 前記突起のそれぞれが、前記Vリブドベルトの速度増加時にはこのベルトの滑りを防止し、前記Vリブドベルトの速度減少時にはこのベルトの走行方向の逆方向への滑りを許容する形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プーリ。
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