JP2004232055A - 焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼結後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能な焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂を必須成分として含有する焼結体製造用有機バインダ。この有機バインダ100重量部に対し、焼結可能無機粉末40〜600重量部を含有せしめてなる焼結体製造用樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリ乳酸樹脂を必須成分として含有する焼結体製造用有機バインダ。この有機バインダ100重量部に対し、焼結可能無機粉末40〜600重量部を含有せしめてなる焼結体製造用樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結可能無機粉末を成形するために使用する有機バインダおよびこの有機バインダと焼結可能無機粉末とからなる焼結体製造用樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、焼結後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能な焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、焼結可能無機粉末を複雑な形状の成形体に成形するためには、射出成形法が利用されている。この射出成形法は、焼結可能無機粉末に流動性をもたせるために種々の有機バインダを添加し、加熱混練した後、これを成形用原料として射出成形し、得られた射出成形体を脱脂・焼結することにより、焼結体製品を得る方法である。
【0003】
ここで、従来から焼結可能無機粉末の成形に用いられている有機バインダとしては、ポリプロピレン、メタクリル酸エステル、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体および低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、あるいはこれらとパラフィンワックス、ジエチルフタレート、ステアリン酸などの可塑剤や滑剤を併用したものが知られている。
【0004】
また、解重合型ポリマーであるポリアセタール樹脂の単独または他の重合体と共に使用した有機バインダ(例えば、特許文献1参照)が知られており、この有機バインダは、ポリアセタール樹脂が具備する剛性に基づく射出成形体の形状保持性および加熱による脱脂工程での射出成形体の形状保持性に優れるばかりか、加熱による脱脂後に残渣が残らず、加熱による脱脂工程が早いことから生産効率を高めることができるなどの効果が奏されると主張されている。
【0005】
更に、ポリアセタール樹脂に対し、この均質ポリアセタール樹脂に可溶であるか、または1μm未満の平均粒度で分散可能である脂肪族ポリウレタン、脂肪族未架橋ポリエポキシド、ポリ−(C2 〜C6 )−アルキレンオキシド、脂肪族ポリアミドおよびポリアクリレートならびにそれらの混合物を加えた組成物からなる有機バインダ(例えば、特許文献2参照)についても知られており、この有機バインダは、焼結体のひび割れ、膨れの防止に効果があると主張されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるポリアセタール樹脂を使用した有機バインダは、このポリアセタール樹脂が化学的に安定であることから、多くの他の有機成分との間の相溶性が悪く、例えばバインダを構成する他の樹脂をはじめ、ワックス、滑剤などとの親和性が悪いために、バインダを構成する各成分が相分離し易く、均質な焼結成形体が得られないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載される組成物からなる有機バインダでは、ポリアセタール樹脂が具備する剛性が損なわれることに起因して、形状保持性が不十分となり、射出成形後および焼結後の焼結体の変形量が大きいという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−247802号公報(第3〜7頁)
【特許文献2】
特開平5−098306号公報(第3〜9頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
したがって、本発明の目的は、脱脂工程および焼結工程後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能な焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸を必須成分とする有機バインダにより、上記の課題が効果的に解決できることを見い出し、本願発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、焼結可能無機粉末を成形するために使用する有機バインダであって、ポリ乳酸樹脂を必須成分として含有することを特徴とする焼結体製造用有機バインダを提供するものである。
【0013】
なお、本発明の焼結体製造用有機バインダにおいては、前記有機バインダが、ポリ乳酸樹脂5〜95重量%およびポリアセタール樹脂5〜95重量%からなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の焼結体製造用樹脂組成物は、上記有機バインダ100重量部に対し、焼結可能無機粉末40〜600重量部を含有せしめてなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の焼結体製造用有機バインダに用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他の単量体モノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の単量体の共重合量成分は、全単量体に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%がであることがより好ましい。
【0017】
本発明においては、相溶性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が70%以上含まれるかあるいはD体が70%以上含まれることが好ましく、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが特に好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが更に好ましい。
【0018】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0020】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
【0021】
全有機バインダ中に占めるポリ乳酸樹脂の量は、5〜100重量%、好ましくは5〜95重量%である。
【0022】
本発明の焼結体製造用有機バインダには、更にポリアセタール樹脂を含有させることが可能である。
【0023】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーであり、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料とする重合反応によって得られるいわゆるポリアセタールホモポリマー、および主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーのいずれであってもよく、また他の構造単位を含有するコポリマー、つまりブロックコポリマー、ターポリマーおよび架橋ポリマーのいずれであってもよい。これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からはポリアセタールコポリマーの使用が好ましい。
【0024】
本発明におけるポリアセタール樹脂は、バインダ組成物に流動性を付与すると共に、脱脂時の変形を防止する機能を果たす。
【0025】
ポリアセタール樹脂を使用する場合の添加量は、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂の合計に対し、5〜95重量%である。つまり、全有機バインダ中に占めるポリアセタール樹脂の添加量は、通常0〜95重量%、好ましくは5〜95重量%である。
【0026】
ポリアセタール樹脂の製造方法については特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。ポリアセタルホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化することにより製造する方法などが挙げられる。
【0027】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法の例としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型撹拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去することにより製造する方法などが挙げられる。
【0028】
これらポリアセタール樹脂の粘度は、成形材料として使用できる程度の範囲であれば特に制限はないが、ASTM D1238法によるメルトフローレート
(MFR)が測定可能であり、MFRが1.0〜50g/10分の範囲のものであることが好ましく、1.5〜35g/10分のものであることが特に好ましい。
【0029】
なお、本発明の焼結体製造用有機バインダに対しては、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質ポリオレフィン系ポリマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなど)などの少なくとも1種以上を更に添加することができるが、この場合のこれら樹脂の添加量は、焼結体製造用有機バインダ100重量部に対し0〜5重量部とすることが望ましい。
【0030】
本発明の焼結体製造用樹脂組成物は、上記焼結体製造用有機バインダと焼結可能無機粉末とからなる。
【0031】
本発明に用いられる焼結可能無機粉末とは、当該粉末を融点以下かつ一部液相を生ずる温度に加熱した場合に、焼き締まって固体を生成するすることのできる粉末であり、金属粉末、金属酸化物粉末、金属炭化物粉末、金属窒化物粉末および金属ホウ化物粉末などを例示することができる。具体的には、金属粉末としては、鉄、アルミニウム、銅、チタン、モリブデン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属粉およびこれらの金属を主成分とするステンレス粉、高速度粉、超合金粉、磁性材料粉などの合金粉が挙げられる。金属酸化物粉末としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、ムライト、コーヂュライト、酸化ベリウム、酸化トリウムなどの粉末が挙げられる。金属炭化物粉末としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化ジルコニア、炭化チタニウム、炭化ジルコニウム、炭化タングステンなどの粉末が挙げられる。金属窒化物粉末としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブなどのの粉末が挙げられる。金属ホウ化物粉末としては、ホウ化クロム、ホウ化ジルコニウムなどの粉末が挙げられる。
【0032】
本発明の焼結体製造用樹脂組成物におけるこれら焼結可能無機粉末の量は、上記焼結体製造用有機バインダ100重量部に対し、40〜600重量部の範囲とする。すなわち、上記焼結体製造用有機バインダ15〜70重量%に対し、30〜80重量%の範囲とする。
【0033】
焼結可能無機粉末には、粉末のほか、焼結助剤、成形助剤、および物性向上のための他の粉末などを適宜あらかじめ添加しておくこともできる。添加の方法としては、単に混合してもよいし、粉末の表面にコーティングしてもよい。
【0034】
焼結可能無機粉末の平均粒径は、レーザー回析法での測定におけるメジアン径において、通常0.01μm〜50μm、好ましくは0.1μm〜20μmである。粒径が0.01μmより小さいと、焼結性は良くなるものの、かさ高くハンドリング性や成形性が劣る傾向となる。また、粒径が50μmを越えると、焼結性が劣る傾向となる。
【0035】
以下に、本発明の焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物を成形して焼結体を得る方法について説明する。
【0036】
焼結体製造用樹脂組成物を混練する場合、混練を行う前に必要に応じて各成分あるいは混合物を乾燥しておいてもよい。混練の方法は、全成分を一度に仕込み混練する方法、有機バインダ成分のみをまず加えて混練し、ついで焼結可能無機粉末を加えて混練する方法、および有機バインダ成分を後から加える方法などが挙げられる。混練はバンバリーミキサー、プラストミル、ニーダー、加圧ニーダー、ロールミルおよびスクリュー式押出機などの通常の混練機を用いて行うことができる。混練温度は、通常150〜350℃、好ましくは150〜250℃で、混練時間は通常20秒〜2時間、好ましくは1分〜1時間である。
【0037】
焼結体製造用樹脂組成物を用いて射出成形する場合には、通常のプランジャー式、スクリュー式などの射出成形機を用いることができる。成形条件は金型形状や射出成形用組成物によって異なるが、成形圧力は通常100〜3000Kg/cm2 、好ましくは200〜2000Kg/cm2 、シリンダー温度は通常150〜350℃、好ましくは150〜250℃である。
【0038】
その他にも、本発明の焼結体製造用樹脂組成物を用いて、押出成形やプレス成形などを行うこともできる。加熱により熱分解しやすい組成物については、減圧下あるいは不活性雰囲気中で混練、成形する方法を採用してもよい。
【0039】
脱脂処理は、酸化性、還元性または不活性ガス雰囲気中、減圧、常圧または加圧下で、通常1〜60℃/hr、好ましくは10〜40℃/hrの昇温速度で、250〜500℃程度まで、好ましくは250〜350℃まで昇温し、その温度で通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間保持することにより行われる。
【0040】
本発明の焼結体製造用樹脂組成物からなる成形体は、形を保持するために粉末の中に埋め込んだり、冶具で支えたりする必要はなく、そのまま脱脂炉中の棚板に並べて脱脂することができる。ここで、成形体を置く棚板として通風可能な構造のものを用い、成形体の下面にも雰囲気ガスの流れをあてることによって、脱脂時間を短縮することができる。このような棚板としてはステンレスなどの金網やセラミックなどを格子状に成形したものなどが用いられる。
【0041】
焼結処理は、通常、酸化性、還元性または不活性ガス雰囲気中、真空、常圧または加圧下で、600〜2000℃程度まで昇温して行う。昇温速度は通常50〜1000℃/hrであり、最高温度で10分〜10時間保持する。真空中で焼結を行う場合の真空度は、通常10−2torr以上、好ましくは10−3torr以上である。
【0042】
脱脂を粉末中に埋め込んて行う従来法においては、焼結に移る前に脱脂体の表面に付着している粉を払い落とす工程が必要であり、脱脂から焼結まで連続的に行うことが困難であったが、本発明の焼結体製造用組成物を使用することにより、そのような工程は不要となり、同一の加熱炉で連続して焼結まで行うことが可能である。
【0043】
以上説明したように、本発明の焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物によれば、脱脂工程および焼結工程後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能である。
【0044】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜3]
ポリアセタール樹脂として、MFRが9g/10分のポリアセタールコポリマー(東レ社製“アミラス”S761)を、ポリ乳酸樹脂として、D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂を、焼結可能無機粉末として、平均粒径が10μmのステンレス粉であるSUS304をそれぞれ使用し、これらを表1に示した割合で配合した組成物を、加圧ニーダーを用いて、180℃、40分間混練し、この混練物を冷却、粉砕してスクリュー式押出機を用い、加工温度180℃で混練した後、混練物を冷却、破砕して射出成形用の焼結体製造用樹脂組成物を調整した。
[比較例1〜5]
ポリアセタール樹脂および焼結可能無機粉末としては、実施例1〜3と同一品を使用し、更に他成分として脂肪族ポリアミド(ポリカプロアミド)、ポリエチレングリコール(平均分子量:4000)およびポリプロピレン(MFR:7.0g/10min)を使用して、これらを表1に示した割合で配合し、実施例1〜3と同条件にて焼結体製造用樹脂組成物を調整した。
【0045】
上記各焼結体製造用樹脂組成物の射出成形、焼結工程までの各工程は、実施例1〜3、比較例1〜5とも同様に下記の方法で行った。
<射出成形工程>
射出成形機(東芝機械製“IS80EPN”)を用い、シリンダー設定温度180℃、金型温度60℃、成形圧力1500Kg/cm2 の条件で、図1に示す形状の試験片(100mm×12mm×3mm)を成形した。
<脱脂工程、焼結工程>
上記試験片を、図2に示す50mmの間隔を開けた支持台の上に載せて循環炉内に設置し、昇温速度20℃/hrで50℃から350℃まで昇温し、350℃到達後はその温度を2時間保持することにより、脱脂処理を行った。
<焼結工程>
上記脱脂処理が行われた試験片を、支持台の上に載せたまま、炉内において10−3torrより高真空中で、1250℃、2時間の焼結処理を実施することにより焼結体を得た。
<評価>
焼結後の焼結体の性状について、変形量の評価は図3に示した変形量(h)を測定し、変形量1mm以下を二重丸、変形量1〜3mmを○、変形量3mm以上を×と規定し定性的に評価した。また、ひび割れ、膨れについては、焼結体の状態を目視で観察し、ひび割れ、膨れが無いものを二重丸(良好)、ひび割れ、膨れが1mm未満のサイズかつ3箇所未満の個数のものを○(可)、ひび割れ、膨れのサイズが1mm以上または3箇所以上の個数のものを×(不可)と規定し定性的に評価した。
【0046】
これらの測定結果を表1に併せて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物によれば、脱脂工程および焼結工程後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例において焼結体製造用樹脂組成物を射出成形して得られた成形体の斜視図である。
【図2】図2は実施例における試験片の変形の測定方法を示す説明図である。
【図3】図3は実施例における変形量を示す説明図である。
【符号の説明】
1 試験片
2 支持体
3 変形量(h)
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結可能無機粉末を成形するために使用する有機バインダおよびこの有機バインダと焼結可能無機粉末とからなる焼結体製造用樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、焼結後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能な焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、焼結可能無機粉末を複雑な形状の成形体に成形するためには、射出成形法が利用されている。この射出成形法は、焼結可能無機粉末に流動性をもたせるために種々の有機バインダを添加し、加熱混練した後、これを成形用原料として射出成形し、得られた射出成形体を脱脂・焼結することにより、焼結体製品を得る方法である。
【0003】
ここで、従来から焼結可能無機粉末の成形に用いられている有機バインダとしては、ポリプロピレン、メタクリル酸エステル、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体および低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、あるいはこれらとパラフィンワックス、ジエチルフタレート、ステアリン酸などの可塑剤や滑剤を併用したものが知られている。
【0004】
また、解重合型ポリマーであるポリアセタール樹脂の単独または他の重合体と共に使用した有機バインダ(例えば、特許文献1参照)が知られており、この有機バインダは、ポリアセタール樹脂が具備する剛性に基づく射出成形体の形状保持性および加熱による脱脂工程での射出成形体の形状保持性に優れるばかりか、加熱による脱脂後に残渣が残らず、加熱による脱脂工程が早いことから生産効率を高めることができるなどの効果が奏されると主張されている。
【0005】
更に、ポリアセタール樹脂に対し、この均質ポリアセタール樹脂に可溶であるか、または1μm未満の平均粒度で分散可能である脂肪族ポリウレタン、脂肪族未架橋ポリエポキシド、ポリ−(C2 〜C6 )−アルキレンオキシド、脂肪族ポリアミドおよびポリアクリレートならびにそれらの混合物を加えた組成物からなる有機バインダ(例えば、特許文献2参照)についても知られており、この有機バインダは、焼結体のひび割れ、膨れの防止に効果があると主張されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるポリアセタール樹脂を使用した有機バインダは、このポリアセタール樹脂が化学的に安定であることから、多くの他の有機成分との間の相溶性が悪く、例えばバインダを構成する他の樹脂をはじめ、ワックス、滑剤などとの親和性が悪いために、バインダを構成する各成分が相分離し易く、均質な焼結成形体が得られないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載される組成物からなる有機バインダでは、ポリアセタール樹脂が具備する剛性が損なわれることに起因して、形状保持性が不十分となり、射出成形後および焼結後の焼結体の変形量が大きいという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−247802号公報(第3〜7頁)
【特許文献2】
特開平5−098306号公報(第3〜9頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
したがって、本発明の目的は、脱脂工程および焼結工程後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能な焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸を必須成分とする有機バインダにより、上記の課題が効果的に解決できることを見い出し、本願発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、焼結可能無機粉末を成形するために使用する有機バインダであって、ポリ乳酸樹脂を必須成分として含有することを特徴とする焼結体製造用有機バインダを提供するものである。
【0013】
なお、本発明の焼結体製造用有機バインダにおいては、前記有機バインダが、ポリ乳酸樹脂5〜95重量%およびポリアセタール樹脂5〜95重量%からなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の焼結体製造用樹脂組成物は、上記有機バインダ100重量部に対し、焼結可能無機粉末40〜600重量部を含有せしめてなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の焼結体製造用有機バインダに用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他の単量体モノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の単量体の共重合量成分は、全単量体に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%がであることがより好ましい。
【0017】
本発明においては、相溶性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が70%以上含まれるかあるいはD体が70%以上含まれることが好ましく、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが特に好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが更に好ましい。
【0018】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0020】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
【0021】
全有機バインダ中に占めるポリ乳酸樹脂の量は、5〜100重量%、好ましくは5〜95重量%である。
【0022】
本発明の焼結体製造用有機バインダには、更にポリアセタール樹脂を含有させることが可能である。
【0023】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーであり、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料とする重合反応によって得られるいわゆるポリアセタールホモポリマー、および主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーのいずれであってもよく、また他の構造単位を含有するコポリマー、つまりブロックコポリマー、ターポリマーおよび架橋ポリマーのいずれであってもよい。これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からはポリアセタールコポリマーの使用が好ましい。
【0024】
本発明におけるポリアセタール樹脂は、バインダ組成物に流動性を付与すると共に、脱脂時の変形を防止する機能を果たす。
【0025】
ポリアセタール樹脂を使用する場合の添加量は、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂の合計に対し、5〜95重量%である。つまり、全有機バインダ中に占めるポリアセタール樹脂の添加量は、通常0〜95重量%、好ましくは5〜95重量%である。
【0026】
ポリアセタール樹脂の製造方法については特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。ポリアセタルホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化することにより製造する方法などが挙げられる。
【0027】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法の例としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型撹拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去することにより製造する方法などが挙げられる。
【0028】
これらポリアセタール樹脂の粘度は、成形材料として使用できる程度の範囲であれば特に制限はないが、ASTM D1238法によるメルトフローレート
(MFR)が測定可能であり、MFRが1.0〜50g/10分の範囲のものであることが好ましく、1.5〜35g/10分のものであることが特に好ましい。
【0029】
なお、本発明の焼結体製造用有機バインダに対しては、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質ポリオレフィン系ポリマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなど)などの少なくとも1種以上を更に添加することができるが、この場合のこれら樹脂の添加量は、焼結体製造用有機バインダ100重量部に対し0〜5重量部とすることが望ましい。
【0030】
本発明の焼結体製造用樹脂組成物は、上記焼結体製造用有機バインダと焼結可能無機粉末とからなる。
【0031】
本発明に用いられる焼結可能無機粉末とは、当該粉末を融点以下かつ一部液相を生ずる温度に加熱した場合に、焼き締まって固体を生成するすることのできる粉末であり、金属粉末、金属酸化物粉末、金属炭化物粉末、金属窒化物粉末および金属ホウ化物粉末などを例示することができる。具体的には、金属粉末としては、鉄、アルミニウム、銅、チタン、モリブデン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属粉およびこれらの金属を主成分とするステンレス粉、高速度粉、超合金粉、磁性材料粉などの合金粉が挙げられる。金属酸化物粉末としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、ムライト、コーヂュライト、酸化ベリウム、酸化トリウムなどの粉末が挙げられる。金属炭化物粉末としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化ジルコニア、炭化チタニウム、炭化ジルコニウム、炭化タングステンなどの粉末が挙げられる。金属窒化物粉末としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブなどのの粉末が挙げられる。金属ホウ化物粉末としては、ホウ化クロム、ホウ化ジルコニウムなどの粉末が挙げられる。
【0032】
本発明の焼結体製造用樹脂組成物におけるこれら焼結可能無機粉末の量は、上記焼結体製造用有機バインダ100重量部に対し、40〜600重量部の範囲とする。すなわち、上記焼結体製造用有機バインダ15〜70重量%に対し、30〜80重量%の範囲とする。
【0033】
焼結可能無機粉末には、粉末のほか、焼結助剤、成形助剤、および物性向上のための他の粉末などを適宜あらかじめ添加しておくこともできる。添加の方法としては、単に混合してもよいし、粉末の表面にコーティングしてもよい。
【0034】
焼結可能無機粉末の平均粒径は、レーザー回析法での測定におけるメジアン径において、通常0.01μm〜50μm、好ましくは0.1μm〜20μmである。粒径が0.01μmより小さいと、焼結性は良くなるものの、かさ高くハンドリング性や成形性が劣る傾向となる。また、粒径が50μmを越えると、焼結性が劣る傾向となる。
【0035】
以下に、本発明の焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物を成形して焼結体を得る方法について説明する。
【0036】
焼結体製造用樹脂組成物を混練する場合、混練を行う前に必要に応じて各成分あるいは混合物を乾燥しておいてもよい。混練の方法は、全成分を一度に仕込み混練する方法、有機バインダ成分のみをまず加えて混練し、ついで焼結可能無機粉末を加えて混練する方法、および有機バインダ成分を後から加える方法などが挙げられる。混練はバンバリーミキサー、プラストミル、ニーダー、加圧ニーダー、ロールミルおよびスクリュー式押出機などの通常の混練機を用いて行うことができる。混練温度は、通常150〜350℃、好ましくは150〜250℃で、混練時間は通常20秒〜2時間、好ましくは1分〜1時間である。
【0037】
焼結体製造用樹脂組成物を用いて射出成形する場合には、通常のプランジャー式、スクリュー式などの射出成形機を用いることができる。成形条件は金型形状や射出成形用組成物によって異なるが、成形圧力は通常100〜3000Kg/cm2 、好ましくは200〜2000Kg/cm2 、シリンダー温度は通常150〜350℃、好ましくは150〜250℃である。
【0038】
その他にも、本発明の焼結体製造用樹脂組成物を用いて、押出成形やプレス成形などを行うこともできる。加熱により熱分解しやすい組成物については、減圧下あるいは不活性雰囲気中で混練、成形する方法を採用してもよい。
【0039】
脱脂処理は、酸化性、還元性または不活性ガス雰囲気中、減圧、常圧または加圧下で、通常1〜60℃/hr、好ましくは10〜40℃/hrの昇温速度で、250〜500℃程度まで、好ましくは250〜350℃まで昇温し、その温度で通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間保持することにより行われる。
【0040】
本発明の焼結体製造用樹脂組成物からなる成形体は、形を保持するために粉末の中に埋め込んだり、冶具で支えたりする必要はなく、そのまま脱脂炉中の棚板に並べて脱脂することができる。ここで、成形体を置く棚板として通風可能な構造のものを用い、成形体の下面にも雰囲気ガスの流れをあてることによって、脱脂時間を短縮することができる。このような棚板としてはステンレスなどの金網やセラミックなどを格子状に成形したものなどが用いられる。
【0041】
焼結処理は、通常、酸化性、還元性または不活性ガス雰囲気中、真空、常圧または加圧下で、600〜2000℃程度まで昇温して行う。昇温速度は通常50〜1000℃/hrであり、最高温度で10分〜10時間保持する。真空中で焼結を行う場合の真空度は、通常10−2torr以上、好ましくは10−3torr以上である。
【0042】
脱脂を粉末中に埋め込んて行う従来法においては、焼結に移る前に脱脂体の表面に付着している粉を払い落とす工程が必要であり、脱脂から焼結まで連続的に行うことが困難であったが、本発明の焼結体製造用組成物を使用することにより、そのような工程は不要となり、同一の加熱炉で連続して焼結まで行うことが可能である。
【0043】
以上説明したように、本発明の焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物によれば、脱脂工程および焼結工程後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能である。
【0044】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜3]
ポリアセタール樹脂として、MFRが9g/10分のポリアセタールコポリマー(東レ社製“アミラス”S761)を、ポリ乳酸樹脂として、D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂を、焼結可能無機粉末として、平均粒径が10μmのステンレス粉であるSUS304をそれぞれ使用し、これらを表1に示した割合で配合した組成物を、加圧ニーダーを用いて、180℃、40分間混練し、この混練物を冷却、粉砕してスクリュー式押出機を用い、加工温度180℃で混練した後、混練物を冷却、破砕して射出成形用の焼結体製造用樹脂組成物を調整した。
[比較例1〜5]
ポリアセタール樹脂および焼結可能無機粉末としては、実施例1〜3と同一品を使用し、更に他成分として脂肪族ポリアミド(ポリカプロアミド)、ポリエチレングリコール(平均分子量:4000)およびポリプロピレン(MFR:7.0g/10min)を使用して、これらを表1に示した割合で配合し、実施例1〜3と同条件にて焼結体製造用樹脂組成物を調整した。
【0045】
上記各焼結体製造用樹脂組成物の射出成形、焼結工程までの各工程は、実施例1〜3、比較例1〜5とも同様に下記の方法で行った。
<射出成形工程>
射出成形機(東芝機械製“IS80EPN”)を用い、シリンダー設定温度180℃、金型温度60℃、成形圧力1500Kg/cm2 の条件で、図1に示す形状の試験片(100mm×12mm×3mm)を成形した。
<脱脂工程、焼結工程>
上記試験片を、図2に示す50mmの間隔を開けた支持台の上に載せて循環炉内に設置し、昇温速度20℃/hrで50℃から350℃まで昇温し、350℃到達後はその温度を2時間保持することにより、脱脂処理を行った。
<焼結工程>
上記脱脂処理が行われた試験片を、支持台の上に載せたまま、炉内において10−3torrより高真空中で、1250℃、2時間の焼結処理を実施することにより焼結体を得た。
<評価>
焼結後の焼結体の性状について、変形量の評価は図3に示した変形量(h)を測定し、変形量1mm以下を二重丸、変形量1〜3mmを○、変形量3mm以上を×と規定し定性的に評価した。また、ひび割れ、膨れについては、焼結体の状態を目視で観察し、ひび割れ、膨れが無いものを二重丸(良好)、ひび割れ、膨れが1mm未満のサイズかつ3箇所未満の個数のものを○(可)、ひび割れ、膨れのサイズが1mm以上または3箇所以上の個数のものを×(不可)と規定し定性的に評価した。
【0046】
これらの測定結果を表1に併せて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の焼結体製造用有機バインダおよび焼結体製造用樹脂組成物によれば、脱脂工程および焼結工程後の焼結体に変形、ひび割れおよび膨れなどのない良好な性状を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例において焼結体製造用樹脂組成物を射出成形して得られた成形体の斜視図である。
【図2】図2は実施例における試験片の変形の測定方法を示す説明図である。
【図3】図3は実施例における変形量を示す説明図である。
【符号の説明】
1 試験片
2 支持体
3 変形量(h)
Claims (3)
- 焼結可能無機粉末を成形するために使用する有機バインダであって、ポリ乳酸樹脂を必須成分として含有することを特徴とする焼結体製造用有機バインダ。
- 前記有機バインダが、ポリ乳酸樹脂5〜95重量%およびポリアセタール樹脂5〜95重量%からなることを特徴とする請求項1記載の焼結体製造用有機バインダ。
- 請求項1または2記載の有機バインダ100重量部に対し、焼結可能無機粉末40〜600重量部を含有せしめてなることを特徴とする焼結体製造用樹脂組成物。
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