JP2004218156A - 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固有粘度差が0.1〜0.4の範囲にある2種類のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されており、該2種類のポリエステルが、特定のチタン化合物とリン化合物との反応生成物からなる触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルである潜在捲縮性ポリエステル複合繊維とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、互いに固有粘度が異なる2種類のポリエステルポリマーがサイドバイサイド型に貼り合わされた潜在捲縮性ポリエステル複合繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
固有粘度の異なるポリエステルをサイドバイサイドまたは偏心芯鞘型に複合したポリエステル複合繊維は潜在捲縮性能を有する繊維素材として衣料用布帛に使用されている。布帛に適度のストレッチ性を付与するポリエステル複合繊維を得るためには、2種のポリエステルの固有粘度差を可能な限り大きくし、繊維にしたときの熱収縮差を大きくして潜在捲縮性を充分に付与しておくことが必要である。しかし、2種類のポリエステルに固有粘度差があると、吐出糸条の屈曲、ピクツキ、旋回等が進行し、ついには吐出糸条が紡糸口金面に付着して断糸するという現象が起こる。このような異常吐出現象が起こると、紡糸運転に支障をきたすのみならず、正常な複合が妨げられ、繊維軸方向に貼り合わせ斑が発生したり、ピクツキ、旋回等異常吐出を経た吐出ポリマー糸条が冷却・固化の過程で繊維構造斑を内在し、得られたポリエステル複合繊維は品質斑(毛羽など)が多いものとなる。
【0003】
このような問題を改善するため、特許文献1には、1対をなす吐出孔が紡糸口金面と直交する方向に対してなす各々の傾斜角度および1対の吐出孔間の距離等を適正化した溶融紡糸用口金から、互いに粘度の異なるポリエステルを吐出させて、サイドバイサイド型に接合させる複合繊維の製造方法が提案されている。確かにこのような溶融紡糸口金を用いれば、2種類のポリエステルの固有粘度差があっても、紡糸初期においては、上記のような現象は少なくなる。しかしながら、紡糸時間の経過とともに、紡糸吐出孔周辺に異物が発生し始め、時間と共に蓄積量が多くなり、吐出糸条の屈曲、ピクツキ、旋回等が進行し、ポリエステル複合繊維の品質斑(毛羽など)が発生するようになる。しかも複合紡糸に用いられるような特殊な構造の紡糸口金を使用した場合、吐出孔周辺異物の蓄積がより早く出現し、短時間内に、ポリエステル複合繊維は品質斑(毛羽など)の多いものとなるという問題がある。
【0004】
一方、未延伸糸を、低温および低倍率で延伸する、いわゆる不均一延伸を行うことにより、太繊度部と細繊度部を有する繊維を成形することができ、かかる繊維を用いて特殊な風合いおよび外観を有する布帛を得ることができる。しかしながら上記のような品質斑の多い複合繊維の未延伸糸を不均一延伸にかけた場合、通常の均一延伸よりもさらに毛羽の発生が多くなって、得られた太細複合繊維は製品として使用できないといった問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特公昭61−60163号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、溶融紡糸時のポリマー吐出異常による細化斑を内在せず、毛羽などの品質斑が少なく、かつ好ましい白度を有する潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究したところ、適正な重縮合触媒から得られたポリエステルを複合化することにより、毛羽が少なく、しかも色相にも優れた、極めて品質の高い潜在捲縮性ポリエステル繊維が得られることがわかった。
【0008】
すなわち、本発明によれば、固有粘度差が0.1〜0.4の範囲にある2種類のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されており、該2種類のポリエステルが、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物からなる触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルであることを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が提供される。
【0009】
【化4】
【0010】
(R1、R2、R3、R4は、それぞれ同一もしくは異なって、アルキル基またはフェニル基であり、kは1〜4の整数である。なお、kが2〜4の場合には、複数のR2およびR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0011】
【化5】
【0012】
(R5は、炭素原子数1〜20個のアルキル基または炭素原子数6〜20個のアリール基であり、nは1または2である。)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル複合繊維は、固有粘度差が0.1〜0.4の範囲にある2種類のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されている複合繊維である。
【0014】
固有粘度差が0.1未満の場合は、貼り合わせ成分間の熱収縮差が不充分であり、潜在捲縮性能が不充分となる。なお、ここで潜在捲縮性能とは、熱処理によって捲縮が発現する繊維である。具体的には、ポリエステル複合繊維が、実施例に記載した方法で測定した全捲縮率TC(%)が1.5%以上となる潜在捲縮性を有していることが好ましい。固有粘度差が0.4を越える場合は、2成分の貼り合わせ不良が発生したり、吐出ポリマーの屈曲、ピクツキ、旋回等が激しくなったりして、得られた複合繊維の品質が劣ったものとなることが多い。また、低粘度サイドのポリエステルの固有粘度を0.4〜0.7の範囲、高粘度サイドのポリエステルの固有粘度を0.6〜0.9の範囲とすると、ポリマー吐出状態がより安定するので好ましい。
【0015】
本発明においては、前述の2種類のポリエステルが、上記式(I)で表されるチタン化合物と上記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物からなる触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルであることが肝要である。これにより、溶融紡糸時のポリマー吐出異常による細化斑を内在せず、毛羽などの品質斑が少なく、好ましい色相を有する複合繊維とすることができる。
【0016】
上記チタン化合物(I)としては、具体的には、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドに例示されるチタンテトラアルコキシド、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネートなどのアルキルチタネートを挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドを用いることが好ましく、特にチタンテトラブトキシドを用いることが好ましい。
【0017】
一方、上記リン化合物(II)としては、具体的には、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノ−n−プロピルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノオレイルホスフェート、モノテトラコシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェートおよびモノアントリルホスフェートなどのモノアルキルホスフェートまたはモノアリールホスフェート、並びに、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジテトラコシルホスフェート、ジフェニルホスフェートなどのジアルキルホスフェートまたはジアリールホスフェートを例示することができる。なかでも、上記式(II)においてnが1であるモノアルキルホスフェートまたはモノアリールホスフェートが好ましい。
【0018】
これらのリン化合物は、混合物として用いてもよく、例えばモノアルキルホスフェートとジアルキルホスフェートの混合物、モノフェニルホスフェートとジノフェニルホスフェートの混合物を、好ましい組み合わせとして挙げることができる。特に混合物中、モノアルキルホスフェートが全混合物量を基準として50%以上、特に90%以上を占めるような組成とするのが好ましい。
【0019】
上記式(I)のチタン化合物と上記式(II)のリン化合物との反応生成物の調整方法は特に限定されず、例えば、グリコール中で加熱することにより製造することができる。すなわち、該チタン化合物と該リン化合物とを含有するグリコール溶液を加熱すると、グリコール溶液が白濁して析出物が発生する。この析出物をポリエステル製造用の触媒として用いればよい。
【0020】
ここで用いることのできるグリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を例示することができるが、得られた触媒を用いて製造するポリエステルを構成するグリコール成分と同じものを使用することが好ましい。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合にはエチレングリコール、ポリトリメチレンテレフタレートである場合には1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレンテレフタレートである場合にはテトラメチレングリコールをそれぞれ用いることが好ましい。
【0021】
なお、前記触媒は式(I)のチタン化合物、式(II)のリン化合物及びグリコールの3者を同時に混合し、加熱する方法によっても製造することができる。しかし、加熱により式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物とが反応してグリコールに不溶の析出物が反応生成物として析出するので、この析出までの反応は均一な反応であることが好ましい。したがって、効率よく反応析出物を得るためには、式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物とのそれぞれについて予めグリコール溶液を調整し、その後、これらの溶液を混合し加熱する方法により製造することが好ましい。
【0022】
また、加熱時の温度は、反応温度が余りに低すぎると、反応が不十分となったり反応に過大な時間を要したりするので、均一な反応により効率よく反応析出物を得るには、50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましく、反応時間は1分間〜4時間が好ましい。なかでも、グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合には50℃〜150℃、ヘキサメチレングリコールを用いる場合には100℃〜200℃の範囲がより好ましい温度であり、また、反応時間は30分間〜2時間がより好ましい範囲である。
【0023】
グリコール中で加熱する式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物との配合割合は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率として1.0〜3.0の範囲にあることが好ましく、さらに1.5〜2.5であることが好ましい。該範囲内にある場合には、リン化合物とチタン化合物とがほぼ完全に反応して未完全な反応物が存在しなくなるので、該反応生成物をそのまま使用しても得られるポリエステルの色相改善効果は良好であり、また、過剰な未反応のリン化合物もほとんど存在しないので、ポリエステル重合反応性を阻害することがなく生産性も高いものとなる。
【0024】
上記の触媒においては、前記式(I)(但し、k=1)のチタン化合物と、式(II)のリン化合物成分との反応生成物は、下記(IV)により表される化合物を含有するものが好ましい。
【0025】
【化6】
【0026】
(ただし、式(IV)中のR6およびR7基は、それぞれ独立に、前記チタン化合物のR1、R2、R3、R4および前記リン化合物のR5のいずれか1つ以上に由来する2〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または、6〜12個の炭素原子を有するアリール基である。)
式(IV)で表されるチタン化合物とリン化合物との反応生成物は、高い触媒活性を有しているので、これを用いて得られるポリエステルは、良好な色調(低いb値)を有し、実用上十分に低いアセトアルデヒド、残留金属および環状三量体の含有量を有し、かつ実用上十分なポリマー性能を有する。なお、該式(IV)で表される反応生成物は50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましい。
【0027】
本発明においては、チタン化合物を予め下記一般式(III)で表される多価カルボン酸および/またはその酸無水物と反応モル比(2:1)〜(2:5)の範囲で反応させた後、リン化合物と反応させた反応生成物を用いることがより好ましい。
【0028】
【化7】
【0029】
(ただし、mは2〜4の整数である。)
かかる多価カルボン酸およびその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物を好ましく、特にチタン化合物との反応性がよく、また得られる反応生成物とポリエステルとの親和性が高いことから、トリメリット酸無水物が好ましい。
【0030】
該チタン化合物と多価カルボン酸またはその無水物との反応は、前記多価カルボン酸またはその無水物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物を滴下し、0℃〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお、このときの溶媒としては、多価カルボン酸またはその無水物の一部または全部を溶解し得るものから適宜選択すればよい。なかでも、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、キシレンなどが好ましく使用される。
【0031】
この反応におけるチタン化合物と式(III)の化合物またはその無水物とのモル比は適宜に選択することができるが、チタン化合物の割合が多すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり軟化点が低下したりする傾向があり、逆にチタン化合物の量が少なすぎると重縮合反応が進みにくくなる傾向があるため、チタン化合物と多価カルボン酸化合物またはその無水物との反応モル比は、(2:1)〜(2:5)とすることが好ましい。
【0032】
この反応によって得られる反応生成物は、そのまま前述のリン化合物との反応に供してもよく、あるいはこれをアセトン、メチルアルコールおよび/または酢酸エチルなどで再結晶して精製した後にリン化合物と反応させてもよい。
【0033】
本発明において、上記反応生成物の存在下にポリエステルを重縮合するにあたっては、上記のようにして得た析出物を含むグリコール液は、析出物とグリコールとを分離することなくそのままポリエステル製造用触媒として用いてもよく、遠心沈降処理または濾過などの手段により析出物を分離した後、該析出物を再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコールおよび/または水などにより再結晶して精製した後、この精製物を該触媒として用いてもよい。なお、該触媒は、固体NMRおよびXMAの金属定量分析で、その構造を確認することできる。
【0034】
本発明において、ポリエステルポリマーを得るに当たっては、上記析出物は重縮合反応時に反応系内に存在していればよい。このため該析出物の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0035】
また、重縮合反応では、必要に応じてトリメチルホスフェートなどのリン安定剤をポリエステル製造における任意の段階で加えてもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤、消泡剤その他の添加剤などを配合してもよい。
【0036】
さらに、得られるポリエステルの色相の改善補助をするために、ポリエステルの製造段階において、アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の有機青色顔料等、無機系以外の整色剤を添加することもできる。
【0037】
次に、前記の触媒を用いて、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、脂肪族グリコールとを重縮合させてポリエステルを製造する方法について説明する。
【0038】
ポリエステルの出発原料となる二官能性芳香族カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0039】
もう一方の出発原料となる脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンメチレングリコール、ドデカメチレングリコールを用いることができる。
【0040】
また、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸など又はそのエステル形成性誘導体を原料として使用することができ、ジオール成分としても脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールなどを原料として使用することができる。
【0041】
さらに、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物を原料として使用することができる。
【0042】
上記の二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及び/又はその低重合体は、いかなる方法によって製造されたものであってもよいが、通常、二官能性芳香族カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを加熱反応させることによって製造される。
【0043】
例えば、ポリエチレンテレフタレートの原料であるテレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、又はテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる方法が一般に採用される。
【0044】
なお、出発原料としてテレフタル酸及びテレフタル酸ジメチルを用いる場合には、ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られた回収テレフタル酸ジメチル又はこれを加水分解して得られる回収テレフタル酸を、ポリエステルを構成する全酸成分の質量を基準として70質量%以上使用したものであってもよい。この場合、前記アルキレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、特に回収されたPETボトル、回収された繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、さらには、これら製品の製造工程において発生するポリマー屑などをポリエステル製造用原料源として用いることは、資源の有効活用の観点から好ましいことである。
【0045】
ここで、回収ポリアルキレンテレフタレートを解重合してテレフタル酸ジメチルを得る方法には特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、回収ポリアルキレンテレフタレートを用いて解重合した後、解重合生成物を、低級アルコール、例えばメタノールによるエステル交換反応に供し、この反応混合物を精製してテレフタル酸の低級アルキルエステルを回収し、これをアルキレングリコールによるエステル交換反応に供し、得られたテレフタル酸/アルキレングリコールエステルを重縮合すればポリエステルを得ることができる。また、上記、回収された、テレフタル酸ジメチルからテレフタル酸を回収する方法にも特に制限はなく、従来方法をいずれを用いてもよい。例えばエステル交換反応により得られた反応混合物からテレフタル酸ジメチルを再結晶法及び/又は蒸留法により回収した後、高温高圧化で水とともに加熱して加水分解してテレフタル酸を回収することができる。この方法によって得られるテレフタル酸に含まれる不純物において、4−カルボキシベンズアルデヒド、パラトルイル酸、安息香酸及びヒドロキシテレフタル酸ジメチルの含有量が、合計で1ppm以下であることが好ましい。また、テレフタル酸モノメチルの含有量が、1〜5000ppmの範囲にあることが好ましい。上述の方法により回収されたテレフタル酸と、アルキレングリコールとを直接エステル化反応させ、得られたエステルを重縮合することによりポリエステルを製造することができる。
【0046】
次に、本発明における重縮合触媒の存在下に、上記で得られた低重合体を、減圧下で、かつポリエステルポリマーの融点以上分解点未満の温度(通常240℃〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族グリコール及び重縮合で発生する脂肪族グリコールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。
【0047】
重縮合反応は、1槽で行ってもよく、複数の槽に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が2段階で行われる場合には、第1槽目の重縮合反応は、反応温度が245〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が100〜1kPa、好ましくは50〜2kPaの条件下で行われ、最終第2槽での重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜290℃、反応圧力は通常10〜1000Paで、好ましくは30〜500Paの条件下で行われる。
【0048】
このようにして、本発明の触媒を用いてポリエステルを製造することができるが、この重縮合工程で得られるポリエステルは、通常、溶融状態で押し出しながら、冷却後、粒状(チップ状)のものとなす。
【0049】
得られたポリエステルの固有粘度は0.40〜0.80、好ましくは0.50〜0.70であることが望ましい。
【0050】
上記重縮合工程で得られるポリエステルは、所望によりさらに固相重縮合することができる。
【0051】
該固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステルは、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0052】
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステルを乾燥状態で通常、120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分間から4時間加熱することによって行うことができるが、このような予備結晶化は、粒状ポリエステルを水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、あるいは水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。
【0053】
予備結晶化されたポリエステルは、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステルの固相重縮合反応は進行しないので、予備結晶化されたポリエステルの固有粘度と予備結晶化される前のポリエステルの固有粘度との差は、通常0.06以下である。
【0054】
該固相重縮合工程は、少なくとも1段階からなり、温度が190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が1kPa〜200kPa、好ましくは10kPa〜大気圧の条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。使用する不活性ガスとしては窒素ガスが望ましい。
【0055】
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステルには、必要に応じて水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス、水蒸気含有空気などと接触させる、水処理を行って、チップ中に含まれる触媒を失活させてもよい。
【0056】
このようにして得られた粒状ポリエステルの固有粘度は、0.70以上であることが望ましい。上記のようなエステル化工程と重縮合工程とを含むポリエステルの製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
【0057】
なお、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体は、使用する芳香族ジカルボン酸成分を基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占めるような量で用いられ、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体は脂肪族グリコールを基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占める量で用いられることが好ましい。
【0058】
また、高粘度サイドとしては、イソフタル酸を全酸成分を基準として8〜15モル%共重合したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート系ポリエステルであることが好ましい。
【0059】
本発明においては、2種類のポリエステルの複合面積比(高粘度サイド/低粘度サイド)は40/60〜60/40、より好ましくは55/45〜45/55、の範囲にするのが適当である。高粘度サイドのポリエステル重量比率が60を越える場合には、得られるポリエステル複合繊維の潜在捲縮性が低下する傾向にあり、一方、低粘度サイドのポリエステル重量比率が60を越える場合は、繊維の強度が低くなる傾向がある。
【0060】
次に、本発明のポリエステル複合繊維の断面には総横断面積に対し0.5〜15%、より好ましくは1〜10%の面積を占める中空部を設けると、ポリマー吐出状態がより安定する。なお、中空率が15%を越える場合は、中空破れなどの貼り合わせ不良が起こることがある。
【0061】
なお、本発明のポリエステル複合繊維の総繊度は30〜200dtex、単糸繊度は2〜15dtexの範囲が好ましい。また、強度は2.0〜5.0cN/dtexの範囲、伸度は30〜50%の範囲が衣料用途での加工性、実用性の面から好ましい。
【0062】
本発明においては、繊度斑(U%)が0.7%以下、毛羽数が0.5個/106mであることが好ましい。繊度斑(U%)が0.7%を越えるポリエステル複合繊維は布帛にしたとき染斑などの品質不良が発生する傾向があり、毛羽数が0.5個/106mを越えるポリエステル複合繊維は織編工程の通過性が悪くなる傾向がある。
【0063】
本発明のポリエステル複合繊維は、前述の固有粘度の異なる2種のポリエステルを各々常法で乾燥し、2基の溶融押出機(スクリュウーエクストルーダー)を装備した通常の複合紡糸設備で溶融し、通常のサイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合紡糸口金(中空複合繊維の場合は中空形成性吐出孔を穿設した紡糸口金を使用する)を用いて、2種のポリマー流を複合し、冷却、固化後、油剤を付与して紡糸引き取りし、延伸することで製造することができる。このとき紡糸引き取りし、一旦未延伸糸として巻き取った後、延伸を別途行っても良く、紡糸引き取り後、一旦巻取ることなく、連続して延伸を行っても良い。溶融紡糸温度は、275〜300℃の範囲が、紡糸安定性の観点より、好ましい。紡糸引き取り速度および延伸倍率は、例えば、ポリエステル複合繊維の強度および伸度が上記範囲となるように適宜設定すればよい。延伸予熱温度は、80〜100℃が好ましい。
【0064】
また、本発明のポリエステル複合繊維は、延伸工程で、繊維の長さ方向に太繊度部と細繊度部が形成された複合繊維であってもよい。これにより、かかる複合繊維からは、優れたスパナイズ感触(綿織編物に類似した感触)を有する布帛を得ることができる。この際、この太細部を有するポリエステル繊維の毛羽数が0.5個/106m以下であることが好ましい。通常、固有粘度差の異なる2種類のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合された未延伸複合糸を、低温および低倍率で延伸を行って得た太細ポリエステル複合繊維は、極めて毛羽の多いものとなる。毛羽数が0.5個/106mを越える太細ポリエステル複合繊維は織編工程の通過性が悪くなる傾向にある。しかし、本発明のポリエステル複合繊維は、前述のポリエステルからなるため、繊維の長さ方向に太繊度部と細繊度部を有するにもかかわらず、毛羽数が0.5個/106m以下といった低い水準に押さえることができる。
【0065】
このような繊維の長さ方向に太繊度部と細繊度部を有する複合繊維を得るには、通常の均一延伸に比較し、低倍率および低温の条件で行われることが望ましい。延伸予熱温度は、使用するポリエステルのガラス転移温度近傍が望ましく、延伸倍率は使用するポリエステルの自然延伸倍率近傍で、ポリエステル複合繊維の伸度が30〜60%の範囲となるように設定するのが望ましい。
【0066】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0067】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
【0068】
(2)ポリマー吐出状態
複合紡糸中に、紡糸口金より吐出されているポリマーの吐出状態を観察し、次の基準で吐出状態を格付けした。複合紡糸開始1時間後、3日後および、7日後に観察を行った。
レベル1:吐出糸条がほぼ一定の流下線を描いて、安定に走行している
レベル2:吐出糸条に小さな屈曲、ピクツキ、旋回等が見られる。
レベル3:吐出糸条が大きく屈曲、ピクツキあるいは旋回している。一部ポリマーが紡糸口金面に接触し、断糸が頻発している。
【0069】
(3)複合面積比
ポリエステル複合繊維を任意の繊維横断面方向に切り取り、市販の顕微鏡にて倍率750倍で繊維横断面を写真撮影し、構成単糸横断面全てについて、2種のポリエステル横断面が各々占める面積を測定し、その比率(高粘度サイド占有面積/低粘度サイド占有面積)を「複合面積比」(測定した全単糸横断面についての平均値)とした。
(4)中空率(%)および中空率のばらつき
前項のポリエステル複合繊維断面顕微鏡写真で、各単糸断面の中空部面積(A)および断面を囲む面積(B)を測定し、下記式で計算し、測定した全単糸横断面についての平均値を中空率(%)とした。
中空率(%)=A/B×100
また、測定値の変動率(標準偏差/平均値×100)を中空率のばらつきとした。
【0070】
(5)繊度斑(U%)
ツェルベーガーウースター社製のUSTER TESTER 4型を用い400m/minの走行速度で測定した。
【0071】
(6)毛羽数(個/106m)
パッケージ巻き(あるいはパーン巻き)としたポリエステル複合繊維250個を、毛羽検出装置付きの整経機に掛けて、400m/minの速度で、42時間整経引き取りした。整経機が停止するごとに、目視で毛羽の有無を確認し、確認された毛羽の全個数を繊維糸条長106m当たりに換算し、毛羽数とした。
【0072】
(7)染斑
ポリエステル複合繊維を12ゲージ丸編機で30cm長の筒編みとし、染料(テラシールブルーGFL)を用い、100℃、40min染色し、均染性を検査員が目視にて下記基準で格付けした。
レベル1:均一に染色されており、染斑がほとんど認められない
レベル2:縞状あるいは斑点状の染斑が少し認められる
レベル3:縞状あるいは斑点状の染斑が一面に認められる
(8)全捲縮率TC(%)
極細仮撚加工糸に0.044cN/dtex(50mg/デニール)の張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作る。カセ作成後、カセの一端に0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後0.00177cN/dtex(2mg/デニール)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び0.00177cN/dtex+0.177cN/dtex(2mg/デニール+200mg/デニール)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtex(200mg/デニール)の荷重を除去し、1分間経過後の長さL2を測定し、次の算式で捲縮率を算出した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
全捲縮率TC(%)=[(L1−L2)/L0]×100
なお、測定は10回行い、その平均値を求めた。
【0073】
(9)強度・伸度
JIS−L1013に準拠して測定した。
【0074】
[実施例1]
チタン化合物の調製:
内容物を混合撹拌できる機能を備え付けた2Lの三口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール919gと酢酸10gを入れて混合撹拌した中に、チタンテトラブトキシド71gをゆっくり徐々に添加し、チタン化合物のエチレングリコール溶液(透明)を得た。以下、この溶液を「TB溶液」と略記する。本溶液のチタン原子濃度は1.02%であった。
リン化合物の調製:
内容物を加熱し、混合撹拌できる機能を備え付けた2Lの三口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール656gを入れて撹拌しながら100℃まで加熱した。その温度に達した時点で、モノラウリルホスフェートを34.5g添加し、加熱混合撹拌して溶解し、透明な溶液を得た。以下、この溶液を「P1溶液」と略記する。
触媒の調製:
引き続き、100℃に加熱コントロールした上記のP1溶液(約690g)の撹拌状態の中に、先に準備したTB溶液310gをゆっくり徐々に添加し、全量を添加した後、100℃の温度で1時間撹拌保持し、チタン化合物とリン化合物との反応を完結させた。この時のTB溶液とP1溶液との配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が2.0に調整されたものとなっていた。この反応によって得られた生成物は、エチレングリコールに不溶であったため、白濁状態で微細な析出物として存在した。以下、この溶液を「TP1−2.0触媒」と略記する。
【0075】
得られた反応析出物を分析する為、一部の反応溶液を目開き5μのフィルターでろ過し、その析出反応物を固体として採取した後、水洗、乾燥した。得られた析出反応物をXMA分析法で、元素濃度の分析を行った結果、チタン12.0%,リン16.4%であり、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率は、2.1であった。さらに、固体NMR分析を行ったところ、次のような結果を得た。C−13 CP/MAS(周波数75.5Hz)測定法で、チタンテトラブトキシドのブトキシド由来のケミカルシフト14ppm、20ppm、36ppmピークの消失が認められ、また、P−31 DD/MAS(周波数121.5Hz)測定法で、従来モノラウリルホスフェートでは存在しない新たなケミカルシフトピーク−22ppmを確認した。これらより、本条件で得られた析出物は、明らかにチタン化合物とリン化合物とが反応して新たな化合物となっていることを示す。
【0076】
さらに、予め225部のオリゴマーが滞留する反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜7であった。
【0077】
このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、上記で作成した「TP1−2.0触媒」を3.34部投入した。引き続き系内の反応温度を255から280℃、また、反応圧力を大気圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水,エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。
【0078】
重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押し出し、冷却、カッティングして、固有粘度0.43のポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。
【0079】
一方、上記で作成した「TP1−2.0触媒」を用い、161部の高純度テレフタル酸、18部の高純度イソフタル酸と95部のエチレングリコールとを用いてエステル交換、共重合を行い、それ以外は上記の方法と同様にして、イソフタル酸が全酸成分を基準として10モル%共重合された、固有粘度0.63のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルのペレットを得た。
【0080】
上記2種のポリエステルのペレットを、それぞれ常法で乾燥した後、2基の溶融押出機(スクリュウーエクストルーダー)を装備した複合紡糸機に導入し、溶融し、280℃に保たれたスピンブロックに装備された複合紡糸パックに導入し、複合紡糸口金にて2つのポリマー流を複合面積比が50/50のサイドバイサイド型(中実断面)となるように複合しつつ吐出し、冷却・固化し、油剤を付与して、1450m/minの速度で紡糸引き取りし、263dtex/24filamentsの未延伸糸を得た。該未延伸糸を、予熱温度90℃、延伸倍率2.64倍で延伸し、非接触型ヒーターにて230℃で熱セットして600m/minで巻取り、110dtex/24filamentsのポリエステル複合繊維を得た。
【0081】
本例においては、表1から明らかなように、紡糸口金吐出孔周辺に異物の蓄積が認められず、ポリマー吐出状態は長期間にわたり安定であり、得られたポリエステル複合繊維は、毛羽が少なく、充分な潜在捲縮性能を有し、かつ衣料用として好ましい白度を有していた。
【0082】
【表1】
【0083】
[比較例1]
3酸化アンチモン(Sb2O3)を重合触媒として、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを常法にて重縮合し、それ以外は実施例1と同様にして2種類のポリエステルのペレットを得た。得られた2種のポリエステルのペレットを実施例1と同じ方法、条件で複合紡糸、延伸を行い、110dtex/24filamentsのポリエステル複合繊維を得た。本例においては、表1から明らかなように、紡糸時間の経過にともなう紡糸口金吐出孔周辺異物の成長により、吐出糸条の屈曲、ピクツキおよび旋回が認められた。得られたポリエステル複合繊維は、繊度斑(U%)、染斑および毛羽が多く、衣料用として使用できる品質を有していなかった。
【0084】
[実施例2]
実施例1において、モノラウリルホスフェートから代えてモノブチルホスフェートとを用いたこと以外は同様に行った。なお、添加量及び条件についても、併せて下記の通り変更した。
【0085】
エチレングリコール537gにモノブチルホスフェート28.3gを加熱及び溶解し、(以下、これを「P2溶液」と略記する。)その中にTB溶液435gを入れて反応物を得た。この時のTB溶液とP2溶液との配合量比は、チタン原子を基準としてリン原子のモル比率として2.0に調整されたものとなっている。以下これを「TP2−2.0触媒」と略す。この時の加熱温度は、70℃で、反応時間は1時間とした。
【0086】
本反応析出物を分析する為、一部の反応溶液を5μのフィルターでろ過し、その析出反応物を固体として採取し、その後、水洗、乾燥した。得られた析出反応物の元素濃度分析を同じように行った結果、チタン17.0%,リン21.2%で、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率は、1.9であった。本触媒を用いて実施例1と同様にポリエステル繊維の製造を行った。結果を表1に示した。
【0087】
[実施例3]
実施例1で得られた未延伸糸を、予熱温度80℃、延伸倍率2.0倍で延伸し、接触型ヒーターにて150℃で熱セットして600m/minで巻取り、120dtex/24filamentsの太繊度部と細繊度部を有するポリエステル複合繊維を得た。得られたポリエステル複合繊維は、充分な潜在捲縮性能および太細効果を有しており、かつ毛羽数は0.5個/106m以下と少なく、衣料用として好ましい白度を有していた。この得られたポリエステル複合繊維を布帛としたが、製織での工程通過性は良好であり、スパナイズ感触を有する布帛が得られた。
【0088】
[実施例4〜5]
複合面積比を各々表2に示す値とする以外は実施例1と同じ方法、条件でポリエステル複合繊維を得た。表2から明らかなように、いずれのポリエステル複合繊維とも毛羽が少なく、充分な潜在捲縮性能を有していた。また、いずれも衣料用として好ましい白度を有していた。
【0089】
【表2】
【0090】
[実施例6〜8]
ポリエステル複合繊維の中空率を各々表3に示す値とする以外は実施例1と同じ方法、条件でポリエステル複合糸を得た。表3から明らかなように、いずれの例のポリエステル複合繊維とも、毛羽が少なく、充分な潜在捲縮性能を有していた。また、いずれも衣料用として好ましい白度を有していた。
【0091】
【表3】
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、毛羽などの品質斑の少ない潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を提供することができる。さらにこのポリエステル複合繊維、色相にも優れ好ましい白度を有している。また、延伸工程で、繊維長さ方向に太繊度部と細繊度部を形成した、本発明のポリエステル複合繊維は、毛羽も少なく製織での工程通過性が良好であり、スパナイズ感触を有する布帛を得ることができる。
Claims (6)
- 固有粘度差が0.1〜0.4の範囲にある2種類のポリエステルがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に複合されており、該2種類のポリエステルが、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物からなる触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルであることを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
- チタン化合物とリン化合物との配合割合が、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率として1.0〜3.0の範囲にある、請求項1記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜3のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
- 2種類のポリエステルの複合面積比が40/60〜60/40の範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
- 延伸工程で、繊維の長さ方向に太繊度部と細繊度部とが形成された、請求項1〜5のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
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