JP2004214227A - 層間接続部及び多層配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】確実に層間接続でき、且つ信頼性の高い多層配線板を提供する。
【解決手段】導体層と、該導体層の少なくとも一部と接している絶縁層とを有し、かつ、該導体層とは反対側の面に、該絶縁層を貫通して、該絶縁層表面から突出している導体ポストを有し、さらに、該導体ポストの先端表面に形成された錫を主成分とする半田層を有する配線基板の該導体ポストと、銅層、拡散防止金属層、金被膜の順で構成されている層間接続用ランドを有する被接続層の金皮膜面とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】導体層と、該導体層の少なくとも一部と接している絶縁層とを有し、かつ、該導体層とは反対側の面に、該絶縁層を貫通して、該絶縁層表面から突出している導体ポストを有し、さらに、該導体ポストの先端表面に形成された錫を主成分とする半田層を有する配線基板の該導体ポストと、銅層、拡散防止金属層、金被膜の順で構成されている層間接続用ランドを有する被接続層の金皮膜面とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間接続部及び多層配線板に関するものである。更に詳しくは、層間の電気的接続と接着を同時に行うことにより得られる層間接続部およびその層間接合部を有する多層配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高機能化、並びに、軽薄短小化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできており、これらの電子機器に使用される半導体パッケージは、従来にも増して、益々、小型化かつ多ピン化が進んできている。
【0003】
従来の回路基板は、プリント配線板と呼ばれ、ガラス繊維の織布にエポキシ樹脂を含浸させた積層板からなる、ガラスエポキシ板に貼り付けられた銅箔をパターニングした後、複数枚重ねて積層接着し、ドリルで貫通穴を開けて、この穴の壁面に銅めっきを行ってビアホールを形成し、層間の電気接続を行った配線基板の使用が主流であった。しかし、搭載部品の小型化、高密度化が進み、上記の配線基板では配線密度が不足して、部品の搭載に問題が生じるようになってきている。このような中、更なる小型、軽量化、多ピン化および高速信号伝送を実現させるために、配線の高密度化、ビアの小径化とともに層間絶縁層の薄膜化が求められており、従来のビルドアップ法のような逐次積層法に代わる新たな層間接続方式を用いた多層配線板が提案されている。
【0004】
このような中で、層間接続用のランドを有する配線パターンと、配線パターンとの層間接続用のランドを有する被接続体の、いずれかのランド上に導体ポストが形成され、少なくとも、導体ポストの先端表面または相対するランドの表面に半田層が形成され、導体ポストと相対するランドとを接着剤層を介して、密着・加圧・加熱の工程を経て半田接合させた層間接続部を有する多層配線板(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特願2001−384834号(第12−26頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術によれば、半田接合によって得られる層間接合部に形成される合金層は、接着剤層の硬化工程などによる高温の熱履歴が与えられると、合金成長時の原子の拡散速度の差異によって、カーケンダルボイドが発生することがあり、特に、主に銅からなる被接続層に被覆されている金皮膜に半田接合した場合の被接続層と半田層の界面にのみカーケンダルボイドが成長することがあり、ボイド防止による接続の信頼性向上が求められている。
【0007】
本発明は、半導体チップを搭載する多層配線板における、層間接続のこのような現状の問題点に鑑み、確実に層間接続でき、且つ高温の熱履歴に対しても信頼性の高い層間接続部またはそれを有する多層配線板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
(1) 層間接続用の導体ポストの先端に形成された錫を主成分とする半田層と、少なくとも銅層、拡散防止金属層からなる導体層の拡散防止層とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする層間接続部、
(2) 導体層が、金層を含むものであり、該金層と半田層とを半田接合させた第1項記載の層間接続部、
(3) 導体層が、層間接続用ランドである第1項または第2項に記載の層間接続部、
(4) 導体層が、導体回路層である第1項または第2項に記載の層間接続部、
(5) 拡散防止金属層が、ニッケルからなるものである第1項〜第4項のいずれかに記載の層間接続部、
(6) 層間接続部が、半田層の融点よりも高い合金を形成してなる第1項〜第5項のいずれかに記載の層間接続部、
(7) 半田接合が、半田層と接着剤層とを接触させ、半田層の融点以上の温度で加熱して半田層を溶融し、次いで、圧着して行われる第1項〜第6項のいずれかに記載の層間接続部、
(8) 第1項〜第7項のいずれかに記載の層間接続部を有することを特徴とする多層配線板、
(9) 絶縁層と、該絶縁層に接して、少なくとも銅層、拡散防止金属層の順でなる導体回路層とを有する配線基板を複数枚含んで得られる第8項記載の多層配線板、
(10) 導体回路層が、絶縁層から一方の面を露出するように絶縁層中に埋め込まれているものである第9項記載の多層配線板、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、層間接続用の導体ポストの先端に形成された錫を主成分とする半田層と、少なくとも銅層、拡散防止金属層からなる導体層の拡散防止層とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする層間接続部である。前記導体層は、層間接続用ランド、導体回路層のいずれであっても良い。更に、本発明は、この層間接続部を有する多層配線板である。
【0010】
本発明において、導体層に拡散防止金属層を形成する目的は、半田層と導体層との半田接合部に、それぞれの層を形成する金属層における拡散速度の差により発生するカーケンダルボイドを抑制することである。本発明においては、導体層側にのみ拡散防止金属層を設けることにより、半田接合部には導体ポストを形成する金属と、半田層を形成する金属と、導体層の拡散防止金属層の上に更に金属層が形成される場合はその金属とからなる合金が形成され、この合金の融点は、半田層の融点よりも高くなることが好ましい。この合金が形成されることにより、チップリフロー工程、パッケージリフロー工程などに予想される半田融点以上の熱履歴に対しても、接合部は再溶融しないことを特徴としている。
【0011】
一方、導体層の拡散防止金属層表面に金層を形成する目的は、多層配線板製造用配線基板を複数枚積層して多層配線板を得る際に、酸化された拡散防止金属層が酸化されていると半田接合がし難くなるため、半田層中に拡散しやすい金層を形成しておくことにより、導体ポストの半田層と拡散防止金属層とが、より半田接合しやすいようにするためである。なお、接着剤層に表面清浄化機能を有する樹脂を用いることにより、その機能が拡散防止金属層の酸化膜を充分除去できるのであれば、金被膜は不要である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。図1、図2は、本発明を具体化した実施形態の一例であり、以下、図1、図2を参照して詳細を説明する。
【0012】
本発明の層間接続部あるいは多層配線板を得るための製造方法の第1の例としては、まず、金属箔101と絶縁層102からなる2層構造体を用意し(図1(a))、絶縁層102にビア103を形成する(図1(b))。
金属箔101は容易に入手可能な銅箔を用いるのが好ましい。2層構造体は、金属箔101上に樹脂ワニスを印刷、カーテンコート、バーコート等の方法で直接塗布することにより得ることができる。さらには、市販の樹脂付銅箔(例えば、ポリイミド付銅箔)のような2層構造体を用意しても良い。また、2層構造体は、ガラスエポキシ両面銅張積層板の一方の銅箔を全面エッチングして得ることもできる。
【0013】
ビア103の形成方法は、この製造方法に適する方法であればどのような方法でも良く、レーザー、プラズマによるドライエッチング、ケミカルエッチング等が挙げられる。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、エキシマレーザ等を使用することができる。
絶縁層102がガラスエポキシのように補強繊維を含む場合には、樹脂とガラスクロスを貫通してビア103を形成することができる炭酸ガスレーザーを使用することが好ましい。絶縁層102がポリイミド等の補強繊維を含まない場合には、より微細なビア103を形成できる紫外線レーザーを使用することが好ましい。また、絶縁層102を感光性樹脂とした場合には、絶縁層102を選択的に感光し、現像することでビア103を形成することもできる。
【0014】
次に、金属箔101を電解めっき用リード(給電用電極)として、銅ポスト104を電解めっきにより形成し(図1(c))、次に、銅ポスト104の先端表面に半田被膜105を電解めっきにより形成する(図1(d))。これらの電解めっきにより、絶縁層102のビア103が形成されている部分に、導体ポスト106が形成される。
【0015】
銅ポスト104を形成する方法としては、電解めっきにより形成する方法以外に、無電解めっきにより形成する方法、銅を含有するペーストを印刷する方法が挙げられる。電解めっきにより銅ポスト104を形成すれば、銅ポスト104の先端の形状を自由に制御することができるため、非常に好ましい。また、導体ポスト106のうち、銅ポストが占める体積比を極力高くすることで、低抵抗で安定した導体ポスト106を得ることができる。
【0016】
半田被膜105の形成方法としては、電解めっきにより形成する方法以外に、無電解めっきにより形成する方法、半田を含有するペーストを印刷する方法が挙げられる。特に、電解めっきによる方法では、無電解めっきによる方法よりも、めっき可能な金属が多種多様であり、また薬液の管理も容易であるため、非常に好適である。
半田被膜105の材質としては、Snを主成分とする半田を使用することが好ましい。より好ましくは、環境に優しいPbフリー半田である。
【0017】
次に、金属箔101上にパターニングされためっきレジスト(図示せず)を形成し、続いて、金属箔101を電解めっき用リード(給電用電極)として、拡散防止金属層107を電解めっきにより形成した後、さらに、金被膜108を電解めっきにより形成し、めっきレジストを除去する(図1(e))。この電解めっきにより、金属箔101上のめっきレジストが形成されていない部分に、拡散防止金属層107、金皮膜108が形成される。拡散防止金属層107の材質として、好ましくは、ニッケルが挙げられる。また、めっきレジストは、例えば、金属箔101上に紫外線感光性のドライフィルムレジストをラミネートし、ネガフィルム等を用いて選択的に感光し、その後現像することにより形成できる。
【0018】
最後に、形成した金皮膜108をエッチングレジストとして、金属箔101を選択的にエッチングすることにより、銅回路109を形成して、導体回路110を得るとともに、配線基板120を得る(図1(f))。このとき、配線基板120が多層配線板用の配線基板の場合、導体回路のパターンには、接続用ランドも同時に形成されている。拡散防止金属層107が金被膜108で覆われているため、銅をエッチングするために使用するエッチング液は、酸性・アルカリ性のどちらを使用しても問題ない。好ましくは、拡散防止金属層107がニッケルの場合には、市販のアルカリ性エッチング液を用いることで、ニッケルを溶解させずに、銅のみをエッチングすることができるため、銅回路109を容易に得ることができる。
【0019】
続いて、上記で得た配線基板120を用いて得られる多層配線板について詳細に説明する。図3は、本発明の第1の実施形態である配線基板120を用いた場合の多層配線板の製造方法の例を説明するための図で、図3(b)は得られる多層配線板の構造を示す断面図である。
【0020】
まず、上記で得られた配線基板120の絶縁層102表面に接着剤層111を形成し、続いて、接着剤層111が形成された配線基板120を複数枚と、コア基板130とを位置合わせする(図3(a))。以下の説明においては、便宜上、配線基板120を複数枚積層して層間接続部ならびに多層配線板を得る方法を述べるが、導体ポストと、拡散防止金属層が形成されている被接続層との半田接合によって得られる層間接続部であれば何ら制限されるころはない。従って、本発明においては、配線板120に形成されている導体回路は、拡散防止金属層が形成されていることは必須ではなく、何らかの拡散防止金属層が形成されている被接続層を有する回路基板に接合して得られる層間接合部であってもよい。
【0021】
接着剤層111の形成は、使用する樹脂に応じて適した方法で良く、例えば、樹脂ワニスを、印刷、カーテンコート、バーコート等の方法で直接塗布したり、ドライフィルムタイプの樹脂を真空ラミネート、真空プレス等の方法で積層したりする方法が挙げられる。なお、図3(a)では、絶縁層102表面に接着剤層111を形成する例を示したが、導体回路110側とコア基板130表面に接着剤層111を形成しても構わない。
【0022】
位置合わせは、多層配線板製造用配線基板120及びコア基板130に、予め形成されている位置決めマークを、画像認識装置により読み取り位置合わせする方法、位置合わせ用のピン等で位置合わせする方法等を用いることができる。
【0023】
最後に、複数の多層配線板製造用配線基板120とコア基板130とを熱圧着する(図3(b))。熱圧着工程では、例えば、真空プレスを用いて、半田被膜105の半田が溶融するまで加熱するとともに、加圧して半田被膜105と導体回路110aとを半田接合させ、更に加熱して接着剤層111を硬化させて、一体化させる。以上の工程により、導体回路110aと導体ポスト106とを半田被膜105にて半田接合し、各層間を接着剤層111にて接着した多層配線板140を得ることができる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態である多層配線板製造用配線基板の製造方法の第2の例を説明するための図で、図2(f)は得られる多層配線板製造用配線基板の構造を示す断面図である。
【0025】
本発明の多層配線板製造用配線基板の製造方法の第2の例が第1の例と異なるのは、金属箔101を選択的にエッチングして、導体回路110を形成する代わりに、金属板201を電解めっき用リード(給電用電極)として、電解めっきにより導体回路210を形成する点であり、基本的な製造方法は、ほとんど同じである。金属板201は金属箔であってもよい。以下、第2の例について、第1の例と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0026】
まず、金属板201上にパターニングされためっきレジスト(図示せず)を形成し、続いて、金属板201を電解めっき用リード(給電用電極)として、金皮膜層208、拡散防止金属層207および銅回路209を電解めっきにより形成した後、めっきレジストを除去する(図2(a))。この電解めっきにより、金属板201上のめっきレジストが形成されていない部分に、導体回路210(金皮膜層208、拡散防止金属層208および銅回路209)が形成される。
金属板201の材質は、この製造方法に適するものであればどのようなものでも良いが、特に、使用される薬液に対して耐性を有するものであって、最終的にエッチングにより除去可能であることが必要である。そのような金属板201の材質としては、例えば、銅、銅合金等が挙げられる。
一方、めっきレジストは、例えば、金属板201上に紫外線感光性のドライフィルムレジストをラミネートし、ネガフィルム等を用いて選択的に感光し、その後現像することにより形成できる。
【0027】
拡散防止金属層207の材質は、第1の例と同様、好ましくはニッケルが挙げられる。ここで、拡散防止金属層207を形成する目的は、半田接合しやすくするためと、金属板201が銅または銅合金である場合に、金属板201をエッチングにより除去する際に、銅回路209がエッチングされないように保護することにもある。
【0028】
次に、導体回路210上に絶縁層202を形成し(図2(b))、続いて、絶縁層202にビア203を形成する(図2(c))。絶縁層202を構成する樹脂は、この製造方法に適するものであればどのようなものでも使用できる。また、絶縁層202の形成は、使用する樹脂に応じて適した方法で良く、樹脂ワニスを印刷、カーテンコート、バーコート等の方法で直接塗布したり、ドライフィルムタイプの樹脂を真空ラミネート、真空プレス等の方法で積層したりする方法が挙げられる。特に、市販されている樹脂付銅箔は入手が容易であり、真空ラミネートにより、導体回路210の凹凸を埋め込みながら成形し、最後に銅箔をエッチングすれば、絶縁層202の表面が導体回路210の凹凸に影響されることなく、非常に平坦になるので、導体回路層が、絶縁層から一方の面を露出するように絶縁層中に埋め込まれた配線基板を用いることが、より好ましい。一方、ビア203の形成方法は、第1の例と同様である。
【0029】
次に、銅ポスト204及び半田被膜205を形成し、導体ポスト206を形成する(図2(d)〜(e))。これらの形成方法は、第1の例と同様である。
【0030】
最後に、金属板201をエッチングして、配線基板220を得る(図2(f))。図2(f)に示された配線基板は、導体回路210が、銅回路209と拡散防止金属層207と金皮膜層208の3層からなる例を示している。また、拡散防止金属層207が金被膜で覆われているため、金属板201をエッチングするために使用するエッチング液は、酸性・アルカリ性のどちらを使用しても問題ない。
【0031】
上記の配線基板を用いて得られる多層配線板の詳細については、図4に示すとおりであるが、基本的には図3に示された多層配線板と同様である。
【0032】
本発明において接着剤層を形成する接着剤としては、半田表面や被接続金属表面に存在する酸化膜の除去機能や、酸化膜の還元機能などを示す表面清浄化機能を有し絶縁信頼性の高い性能を有するものであることが、より好ましい。半田表面と層間接続用ランドが、接着剤層と接触させることで、接着剤の表面清浄化機能により金属表面を清浄化することができる。また、半田接合させる際には、半田の融点以上に達するまで加熱して、半田を溶融させて、ついで所定の圧力をかけて半田接合させることがより好ましい。半田の加熱溶融工程においては、半田層の表面の酸化膜が還元されて溶融し、溶融半田の表面張力により凸形状、更には最安定なドーム形状を形成することができ、また、層間接続用ランドを形成する金属表面を清浄化することができる。両表面を清浄化することで、半田が非接合表面に接触したとき、被接合表面に対して濡れ拡がろうとする力が働き、半田接合部における接着剤層が排除される。これより、接着剤層を用いた半田接合には、樹脂残りが発生しにくく、且つその電気的接続信頼性は高いものとなる。
【0033】
本発明に用いる好ましい接着剤の具体例としては、例えば、少なくとも1つ以上のフェノール性水酸基を有する樹脂と、その硬化剤として作用する樹脂の組み合わせからなる樹脂組成物が挙げられる。
【0034】
本発明において好ましい接着剤に用いる少なくとも1つ以上のフェノール性水酸基を有する樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、および、ポリビニルフェノール樹脂から選ばれるのが好ましく、これらの1種以上を用いることができる。また、フェノールフタリン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸なども好ましい。
【0035】
本発明において好ましい接着剤に用いるフェノール性水酸基を有する樹脂の、硬化剤として作用する樹脂としては、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂等が用いられる。具体的にはいずれも、ビスフェノール系、フェノールノボラック系、アルキルフェノールノボラック系、ビフェノール系、ナフトール系やレソルシノール系等のフェノールベースのものや、脂肪族、環状脂肪族や不飽和脂肪族等の骨格をベースとして変性されたエポキシ化合物やイソシアネート化合物が挙げられる。
【0036】
好ましい接着剤におけるフェノール性水酸基を有する樹脂は、接着剤中に、5wt%以上80wt%以下で含まれることが好ましい。5重量%未満であると、金属表面を清浄化する作用が低下し、半田接合できなくなる恐れがある。また、80重量%より多いと、十分な硬化物が得られず、接合強度と信頼性が低下する恐れがある。フェノール性水酸基を有する樹脂の硬化剤として作用する樹脂の配合量は、例えば、エポキシ基当量またはイソシアネート基当量が、少なくともフェノール性水酸基を有する樹脂のヒドロキシル基当量に対し0.5倍以上、1.5倍以下が好ましいが、良好な金属接合性と硬化物物性が得られる場合はこの限りではない。また、接着剤には、上記成分の他に、無機充填材、硬化触媒、着色料、消泡剤、難燃剤、カップリング剤等の各種添加剤や、溶剤を添加しても良い。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0038】
<接着剤ワニスの調合例1>
クレゾールノボラック樹脂(住友デュレズ(株)製,PR−HF−3)106gと、フェノールフタリン(東京化成製)105gと、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、RE−810NM)450gとを、メチルエチルケトン165gに溶解し、接着剤ワニスを作製した。
【0039】
<配線基板の製造:実施例>
銅箔(金属箔101、厚み18μm)、ポリイミド樹脂絶縁膜(絶縁膜102、厚み25μm)からなるフレキシブルプリント配線用基板(住友ベークライト製、A1フレキ)のポリイミド樹脂絶縁膜にUV−YAGレーザーを用いて、トップ径が45μm、ボトム径が25μmのビア(ビア103)を300個形成した。ビア内部およびビア周辺部を、過マンガン酸樹脂エッチング液にて清浄化した後、裏面の銅箔を電解めっき用リード(給電用電極)として、電解銅めっきを行ってビアを銅で充填し、銅ポスト(導体ポスト104)を形成した。ここで、銅ポストの直径が45μmとなるよう、電解銅めっきの時間を調整した。次に、銅ポストの表面に、Sn−Ag半田層(半田皮膜105)を電解めっきによって4μmの厚みで形成した。なお、半田層の先端表面の絶縁膜表面から突出している高さは、10μmであった。
【0040】
次に、銅箔上にドライフィルムレジスト(旭化成製、AQ−2058)をロールラミネートし、位置合わせを行った後、所定のネガフィルムを用いて露光・現像し、導体回路110の形成に必要なめっきレジストを形成した。次に、銅箔を電解めっき用リードとして、ニッケル層(拡散防止金属層107)、続いて金層(金皮膜層108)を電解めっきにより形成した。さらに、レジストを剥離した後、既に形成した金層、あるいはニッケル層をエッチングレジストとして、銅箔を選択的にエッチングして、配線パターン(導体回路110)を形成した。以上の工程により、配線基板120を得ることができた。
【0041】
<配線基板の製造:比較例>
上記実施例の配線基板の製造方法において、銅箔上に、めっきレジストを形成する工程までは、実施例と同様の方法で行った。次に、銅箔を電解めっき用リードとして、金層(金皮膜層108)を電解めっきにより形成した。即ち、ニッケル層をめっきにより形成する工程がないことが、実施例と異なる点である。さらに、レジストを剥離した後、既に形成した金層、あるいはニッケル層をエッチングレジストとして、銅箔を選択的にエッチングして、配線パターン(導体回路110)を形成した。以上の工程により、配線基板120を得ることができた。
【0042】
<多層配線板の製造>
実施例および比較例に示した方法によって得られた配線基板(X:ニッケル層が形成された配線基板、Y:ニッケル層が形成されていない配線基板)に対して、バーコートにより、上記で得た接着剤ワニス(調合例1)を、絶縁層の表面、すなわちSn−Ag半田層が形成された面に塗布した後、80℃で20分乾燥し、20μm厚の接着剤層(接着剤層111)を形成した。
【0043】
一方、厚み12μm銅箔が両面に形成されたFR−5相当のガラスエポキシ両面銅張積層板(住友ベークライト製、ELC−4781)を用い、銅箔を選択的にエッチングして回路パターンを形成し、コア基板(コア基板130)を得た。
【0044】
次に、上記の工程により得られた配線基板(X)または(Y)と、コア基板に、予め形成されている位置決めマークを、画像認識装置により読み取り、両者を位置合わせし、250℃、0.5MPa、1分間の条件で熱圧着した。これにより多層配線板(X’:配線基板(X)を使用)および(Y’:配線基板(Y)を使用)を得た。さらに、得られた多層配線版に、接着剤を硬化させるために200℃60分の熱処理を行った。
【0045】
<半田接合部の断面評価>
得られた多層配線板(X’)および(Y’)の半田接合部を詳細に評価するため、断面研磨し、バフ研磨後、イオンミーリング法により最終仕上げを行った。その後、多層配線板(X’)および(Y’)の配線基板同士の半田接合部を電子顕微鏡で観察するとともに、組成分析を行った。接合部の断面観察は、熱処理を行う前の多層配線版と熱処理後の多層配線板の両方で行った。
【0046】
導体回路にニッケル層の設けられた多層配線板(X’)においては、熱処理前と熱処理後の断面観察においては、カーケンダルボイドの発生は認められなかった。また、接合部には、主にSn、Au、Cuからなる合金が形成されていた。一方、ニッケル層の無い多層配線板(Y’)においては、熱処理前の段階で、導体回路と半田層の界面にカーケンダルボイドと思われる微小ボイドが発生していることが観察された。さらに、200℃60分の熱処理後の断面観察においては、導体層と半田合金の界面のカーケンダルボイドが成長して、剥離寸前にまで拡大していた。また、いずれの場合(X’、Y’)においても、導体ポストと半田の界面には、合金形成されていたが、カーケンダルボイドの発生ならびに、熱処理によるボイドの拡大は観察されなかった。
【0047】
上記の結果から、拡散防止金属層107を形成することにより、カーケンダルボイドの発生と成長を抑制できることは明らかであり、さらに、導体ポストと半田層の界面には、拡散防止金属層を設けなくてもカーケンダルボイドの発生ならびに成長させずに合金を形成することができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、確実に層間接続でき、且つ信頼性の高い多層配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による配線基板の製造方法の第1の例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による配線基板の製造方法の第2の例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態による第1の配線基板を用いた場合の、多層配線板の製造方法の例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態による第2の配線基板を用いた場合の、多層配線板の製造方法の例を示す断面図である。
【符号の説明】
101 金属箔
201 金属板
102、202 絶縁層
103、203 ビア
104、204 銅ポスト
105、205 半田皮膜
106、206 導体ポスト
107、207 拡散防止金属層
108、208 金皮膜層
109、209 銅回路
110、210 導体回路
110a、210a 導体回路
111、211 接着剤層
120、220 配線基板
130、230 コア基板
140、240 多層配線板
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間接続部及び多層配線板に関するものである。更に詳しくは、層間の電気的接続と接着を同時に行うことにより得られる層間接続部およびその層間接合部を有する多層配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の高機能化、並びに、軽薄短小化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできており、これらの電子機器に使用される半導体パッケージは、従来にも増して、益々、小型化かつ多ピン化が進んできている。
【0003】
従来の回路基板は、プリント配線板と呼ばれ、ガラス繊維の織布にエポキシ樹脂を含浸させた積層板からなる、ガラスエポキシ板に貼り付けられた銅箔をパターニングした後、複数枚重ねて積層接着し、ドリルで貫通穴を開けて、この穴の壁面に銅めっきを行ってビアホールを形成し、層間の電気接続を行った配線基板の使用が主流であった。しかし、搭載部品の小型化、高密度化が進み、上記の配線基板では配線密度が不足して、部品の搭載に問題が生じるようになってきている。このような中、更なる小型、軽量化、多ピン化および高速信号伝送を実現させるために、配線の高密度化、ビアの小径化とともに層間絶縁層の薄膜化が求められており、従来のビルドアップ法のような逐次積層法に代わる新たな層間接続方式を用いた多層配線板が提案されている。
【0004】
このような中で、層間接続用のランドを有する配線パターンと、配線パターンとの層間接続用のランドを有する被接続体の、いずれかのランド上に導体ポストが形成され、少なくとも、導体ポストの先端表面または相対するランドの表面に半田層が形成され、導体ポストと相対するランドとを接着剤層を介して、密着・加圧・加熱の工程を経て半田接合させた層間接続部を有する多層配線板(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特願2001−384834号(第12−26頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術によれば、半田接合によって得られる層間接合部に形成される合金層は、接着剤層の硬化工程などによる高温の熱履歴が与えられると、合金成長時の原子の拡散速度の差異によって、カーケンダルボイドが発生することがあり、特に、主に銅からなる被接続層に被覆されている金皮膜に半田接合した場合の被接続層と半田層の界面にのみカーケンダルボイドが成長することがあり、ボイド防止による接続の信頼性向上が求められている。
【0007】
本発明は、半導体チップを搭載する多層配線板における、層間接続のこのような現状の問題点に鑑み、確実に層間接続でき、且つ高温の熱履歴に対しても信頼性の高い層間接続部またはそれを有する多層配線板を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
(1) 層間接続用の導体ポストの先端に形成された錫を主成分とする半田層と、少なくとも銅層、拡散防止金属層からなる導体層の拡散防止層とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする層間接続部、
(2) 導体層が、金層を含むものであり、該金層と半田層とを半田接合させた第1項記載の層間接続部、
(3) 導体層が、層間接続用ランドである第1項または第2項に記載の層間接続部、
(4) 導体層が、導体回路層である第1項または第2項に記載の層間接続部、
(5) 拡散防止金属層が、ニッケルからなるものである第1項〜第4項のいずれかに記載の層間接続部、
(6) 層間接続部が、半田層の融点よりも高い合金を形成してなる第1項〜第5項のいずれかに記載の層間接続部、
(7) 半田接合が、半田層と接着剤層とを接触させ、半田層の融点以上の温度で加熱して半田層を溶融し、次いで、圧着して行われる第1項〜第6項のいずれかに記載の層間接続部、
(8) 第1項〜第7項のいずれかに記載の層間接続部を有することを特徴とする多層配線板、
(9) 絶縁層と、該絶縁層に接して、少なくとも銅層、拡散防止金属層の順でなる導体回路層とを有する配線基板を複数枚含んで得られる第8項記載の多層配線板、
(10) 導体回路層が、絶縁層から一方の面を露出するように絶縁層中に埋め込まれているものである第9項記載の多層配線板、
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、層間接続用の導体ポストの先端に形成された錫を主成分とする半田層と、少なくとも銅層、拡散防止金属層からなる導体層の拡散防止層とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする層間接続部である。前記導体層は、層間接続用ランド、導体回路層のいずれであっても良い。更に、本発明は、この層間接続部を有する多層配線板である。
【0010】
本発明において、導体層に拡散防止金属層を形成する目的は、半田層と導体層との半田接合部に、それぞれの層を形成する金属層における拡散速度の差により発生するカーケンダルボイドを抑制することである。本発明においては、導体層側にのみ拡散防止金属層を設けることにより、半田接合部には導体ポストを形成する金属と、半田層を形成する金属と、導体層の拡散防止金属層の上に更に金属層が形成される場合はその金属とからなる合金が形成され、この合金の融点は、半田層の融点よりも高くなることが好ましい。この合金が形成されることにより、チップリフロー工程、パッケージリフロー工程などに予想される半田融点以上の熱履歴に対しても、接合部は再溶融しないことを特徴としている。
【0011】
一方、導体層の拡散防止金属層表面に金層を形成する目的は、多層配線板製造用配線基板を複数枚積層して多層配線板を得る際に、酸化された拡散防止金属層が酸化されていると半田接合がし難くなるため、半田層中に拡散しやすい金層を形成しておくことにより、導体ポストの半田層と拡散防止金属層とが、より半田接合しやすいようにするためである。なお、接着剤層に表面清浄化機能を有する樹脂を用いることにより、その機能が拡散防止金属層の酸化膜を充分除去できるのであれば、金被膜は不要である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。図1、図2は、本発明を具体化した実施形態の一例であり、以下、図1、図2を参照して詳細を説明する。
【0012】
本発明の層間接続部あるいは多層配線板を得るための製造方法の第1の例としては、まず、金属箔101と絶縁層102からなる2層構造体を用意し(図1(a))、絶縁層102にビア103を形成する(図1(b))。
金属箔101は容易に入手可能な銅箔を用いるのが好ましい。2層構造体は、金属箔101上に樹脂ワニスを印刷、カーテンコート、バーコート等の方法で直接塗布することにより得ることができる。さらには、市販の樹脂付銅箔(例えば、ポリイミド付銅箔)のような2層構造体を用意しても良い。また、2層構造体は、ガラスエポキシ両面銅張積層板の一方の銅箔を全面エッチングして得ることもできる。
【0013】
ビア103の形成方法は、この製造方法に適する方法であればどのような方法でも良く、レーザー、プラズマによるドライエッチング、ケミカルエッチング等が挙げられる。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、エキシマレーザ等を使用することができる。
絶縁層102がガラスエポキシのように補強繊維を含む場合には、樹脂とガラスクロスを貫通してビア103を形成することができる炭酸ガスレーザーを使用することが好ましい。絶縁層102がポリイミド等の補強繊維を含まない場合には、より微細なビア103を形成できる紫外線レーザーを使用することが好ましい。また、絶縁層102を感光性樹脂とした場合には、絶縁層102を選択的に感光し、現像することでビア103を形成することもできる。
【0014】
次に、金属箔101を電解めっき用リード(給電用電極)として、銅ポスト104を電解めっきにより形成し(図1(c))、次に、銅ポスト104の先端表面に半田被膜105を電解めっきにより形成する(図1(d))。これらの電解めっきにより、絶縁層102のビア103が形成されている部分に、導体ポスト106が形成される。
【0015】
銅ポスト104を形成する方法としては、電解めっきにより形成する方法以外に、無電解めっきにより形成する方法、銅を含有するペーストを印刷する方法が挙げられる。電解めっきにより銅ポスト104を形成すれば、銅ポスト104の先端の形状を自由に制御することができるため、非常に好ましい。また、導体ポスト106のうち、銅ポストが占める体積比を極力高くすることで、低抵抗で安定した導体ポスト106を得ることができる。
【0016】
半田被膜105の形成方法としては、電解めっきにより形成する方法以外に、無電解めっきにより形成する方法、半田を含有するペーストを印刷する方法が挙げられる。特に、電解めっきによる方法では、無電解めっきによる方法よりも、めっき可能な金属が多種多様であり、また薬液の管理も容易であるため、非常に好適である。
半田被膜105の材質としては、Snを主成分とする半田を使用することが好ましい。より好ましくは、環境に優しいPbフリー半田である。
【0017】
次に、金属箔101上にパターニングされためっきレジスト(図示せず)を形成し、続いて、金属箔101を電解めっき用リード(給電用電極)として、拡散防止金属層107を電解めっきにより形成した後、さらに、金被膜108を電解めっきにより形成し、めっきレジストを除去する(図1(e))。この電解めっきにより、金属箔101上のめっきレジストが形成されていない部分に、拡散防止金属層107、金皮膜108が形成される。拡散防止金属層107の材質として、好ましくは、ニッケルが挙げられる。また、めっきレジストは、例えば、金属箔101上に紫外線感光性のドライフィルムレジストをラミネートし、ネガフィルム等を用いて選択的に感光し、その後現像することにより形成できる。
【0018】
最後に、形成した金皮膜108をエッチングレジストとして、金属箔101を選択的にエッチングすることにより、銅回路109を形成して、導体回路110を得るとともに、配線基板120を得る(図1(f))。このとき、配線基板120が多層配線板用の配線基板の場合、導体回路のパターンには、接続用ランドも同時に形成されている。拡散防止金属層107が金被膜108で覆われているため、銅をエッチングするために使用するエッチング液は、酸性・アルカリ性のどちらを使用しても問題ない。好ましくは、拡散防止金属層107がニッケルの場合には、市販のアルカリ性エッチング液を用いることで、ニッケルを溶解させずに、銅のみをエッチングすることができるため、銅回路109を容易に得ることができる。
【0019】
続いて、上記で得た配線基板120を用いて得られる多層配線板について詳細に説明する。図3は、本発明の第1の実施形態である配線基板120を用いた場合の多層配線板の製造方法の例を説明するための図で、図3(b)は得られる多層配線板の構造を示す断面図である。
【0020】
まず、上記で得られた配線基板120の絶縁層102表面に接着剤層111を形成し、続いて、接着剤層111が形成された配線基板120を複数枚と、コア基板130とを位置合わせする(図3(a))。以下の説明においては、便宜上、配線基板120を複数枚積層して層間接続部ならびに多層配線板を得る方法を述べるが、導体ポストと、拡散防止金属層が形成されている被接続層との半田接合によって得られる層間接続部であれば何ら制限されるころはない。従って、本発明においては、配線板120に形成されている導体回路は、拡散防止金属層が形成されていることは必須ではなく、何らかの拡散防止金属層が形成されている被接続層を有する回路基板に接合して得られる層間接合部であってもよい。
【0021】
接着剤層111の形成は、使用する樹脂に応じて適した方法で良く、例えば、樹脂ワニスを、印刷、カーテンコート、バーコート等の方法で直接塗布したり、ドライフィルムタイプの樹脂を真空ラミネート、真空プレス等の方法で積層したりする方法が挙げられる。なお、図3(a)では、絶縁層102表面に接着剤層111を形成する例を示したが、導体回路110側とコア基板130表面に接着剤層111を形成しても構わない。
【0022】
位置合わせは、多層配線板製造用配線基板120及びコア基板130に、予め形成されている位置決めマークを、画像認識装置により読み取り位置合わせする方法、位置合わせ用のピン等で位置合わせする方法等を用いることができる。
【0023】
最後に、複数の多層配線板製造用配線基板120とコア基板130とを熱圧着する(図3(b))。熱圧着工程では、例えば、真空プレスを用いて、半田被膜105の半田が溶融するまで加熱するとともに、加圧して半田被膜105と導体回路110aとを半田接合させ、更に加熱して接着剤層111を硬化させて、一体化させる。以上の工程により、導体回路110aと導体ポスト106とを半田被膜105にて半田接合し、各層間を接着剤層111にて接着した多層配線板140を得ることができる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態である多層配線板製造用配線基板の製造方法の第2の例を説明するための図で、図2(f)は得られる多層配線板製造用配線基板の構造を示す断面図である。
【0025】
本発明の多層配線板製造用配線基板の製造方法の第2の例が第1の例と異なるのは、金属箔101を選択的にエッチングして、導体回路110を形成する代わりに、金属板201を電解めっき用リード(給電用電極)として、電解めっきにより導体回路210を形成する点であり、基本的な製造方法は、ほとんど同じである。金属板201は金属箔であってもよい。以下、第2の例について、第1の例と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0026】
まず、金属板201上にパターニングされためっきレジスト(図示せず)を形成し、続いて、金属板201を電解めっき用リード(給電用電極)として、金皮膜層208、拡散防止金属層207および銅回路209を電解めっきにより形成した後、めっきレジストを除去する(図2(a))。この電解めっきにより、金属板201上のめっきレジストが形成されていない部分に、導体回路210(金皮膜層208、拡散防止金属層208および銅回路209)が形成される。
金属板201の材質は、この製造方法に適するものであればどのようなものでも良いが、特に、使用される薬液に対して耐性を有するものであって、最終的にエッチングにより除去可能であることが必要である。そのような金属板201の材質としては、例えば、銅、銅合金等が挙げられる。
一方、めっきレジストは、例えば、金属板201上に紫外線感光性のドライフィルムレジストをラミネートし、ネガフィルム等を用いて選択的に感光し、その後現像することにより形成できる。
【0027】
拡散防止金属層207の材質は、第1の例と同様、好ましくはニッケルが挙げられる。ここで、拡散防止金属層207を形成する目的は、半田接合しやすくするためと、金属板201が銅または銅合金である場合に、金属板201をエッチングにより除去する際に、銅回路209がエッチングされないように保護することにもある。
【0028】
次に、導体回路210上に絶縁層202を形成し(図2(b))、続いて、絶縁層202にビア203を形成する(図2(c))。絶縁層202を構成する樹脂は、この製造方法に適するものであればどのようなものでも使用できる。また、絶縁層202の形成は、使用する樹脂に応じて適した方法で良く、樹脂ワニスを印刷、カーテンコート、バーコート等の方法で直接塗布したり、ドライフィルムタイプの樹脂を真空ラミネート、真空プレス等の方法で積層したりする方法が挙げられる。特に、市販されている樹脂付銅箔は入手が容易であり、真空ラミネートにより、導体回路210の凹凸を埋め込みながら成形し、最後に銅箔をエッチングすれば、絶縁層202の表面が導体回路210の凹凸に影響されることなく、非常に平坦になるので、導体回路層が、絶縁層から一方の面を露出するように絶縁層中に埋め込まれた配線基板を用いることが、より好ましい。一方、ビア203の形成方法は、第1の例と同様である。
【0029】
次に、銅ポスト204及び半田被膜205を形成し、導体ポスト206を形成する(図2(d)〜(e))。これらの形成方法は、第1の例と同様である。
【0030】
最後に、金属板201をエッチングして、配線基板220を得る(図2(f))。図2(f)に示された配線基板は、導体回路210が、銅回路209と拡散防止金属層207と金皮膜層208の3層からなる例を示している。また、拡散防止金属層207が金被膜で覆われているため、金属板201をエッチングするために使用するエッチング液は、酸性・アルカリ性のどちらを使用しても問題ない。
【0031】
上記の配線基板を用いて得られる多層配線板の詳細については、図4に示すとおりであるが、基本的には図3に示された多層配線板と同様である。
【0032】
本発明において接着剤層を形成する接着剤としては、半田表面や被接続金属表面に存在する酸化膜の除去機能や、酸化膜の還元機能などを示す表面清浄化機能を有し絶縁信頼性の高い性能を有するものであることが、より好ましい。半田表面と層間接続用ランドが、接着剤層と接触させることで、接着剤の表面清浄化機能により金属表面を清浄化することができる。また、半田接合させる際には、半田の融点以上に達するまで加熱して、半田を溶融させて、ついで所定の圧力をかけて半田接合させることがより好ましい。半田の加熱溶融工程においては、半田層の表面の酸化膜が還元されて溶融し、溶融半田の表面張力により凸形状、更には最安定なドーム形状を形成することができ、また、層間接続用ランドを形成する金属表面を清浄化することができる。両表面を清浄化することで、半田が非接合表面に接触したとき、被接合表面に対して濡れ拡がろうとする力が働き、半田接合部における接着剤層が排除される。これより、接着剤層を用いた半田接合には、樹脂残りが発生しにくく、且つその電気的接続信頼性は高いものとなる。
【0033】
本発明に用いる好ましい接着剤の具体例としては、例えば、少なくとも1つ以上のフェノール性水酸基を有する樹脂と、その硬化剤として作用する樹脂の組み合わせからなる樹脂組成物が挙げられる。
【0034】
本発明において好ましい接着剤に用いる少なくとも1つ以上のフェノール性水酸基を有する樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、および、ポリビニルフェノール樹脂から選ばれるのが好ましく、これらの1種以上を用いることができる。また、フェノールフタリン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸なども好ましい。
【0035】
本発明において好ましい接着剤に用いるフェノール性水酸基を有する樹脂の、硬化剤として作用する樹脂としては、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂等が用いられる。具体的にはいずれも、ビスフェノール系、フェノールノボラック系、アルキルフェノールノボラック系、ビフェノール系、ナフトール系やレソルシノール系等のフェノールベースのものや、脂肪族、環状脂肪族や不飽和脂肪族等の骨格をベースとして変性されたエポキシ化合物やイソシアネート化合物が挙げられる。
【0036】
好ましい接着剤におけるフェノール性水酸基を有する樹脂は、接着剤中に、5wt%以上80wt%以下で含まれることが好ましい。5重量%未満であると、金属表面を清浄化する作用が低下し、半田接合できなくなる恐れがある。また、80重量%より多いと、十分な硬化物が得られず、接合強度と信頼性が低下する恐れがある。フェノール性水酸基を有する樹脂の硬化剤として作用する樹脂の配合量は、例えば、エポキシ基当量またはイソシアネート基当量が、少なくともフェノール性水酸基を有する樹脂のヒドロキシル基当量に対し0.5倍以上、1.5倍以下が好ましいが、良好な金属接合性と硬化物物性が得られる場合はこの限りではない。また、接着剤には、上記成分の他に、無機充填材、硬化触媒、着色料、消泡剤、難燃剤、カップリング剤等の各種添加剤や、溶剤を添加しても良い。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0038】
<接着剤ワニスの調合例1>
クレゾールノボラック樹脂(住友デュレズ(株)製,PR−HF−3)106gと、フェノールフタリン(東京化成製)105gと、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、RE−810NM)450gとを、メチルエチルケトン165gに溶解し、接着剤ワニスを作製した。
【0039】
<配線基板の製造:実施例>
銅箔(金属箔101、厚み18μm)、ポリイミド樹脂絶縁膜(絶縁膜102、厚み25μm)からなるフレキシブルプリント配線用基板(住友ベークライト製、A1フレキ)のポリイミド樹脂絶縁膜にUV−YAGレーザーを用いて、トップ径が45μm、ボトム径が25μmのビア(ビア103)を300個形成した。ビア内部およびビア周辺部を、過マンガン酸樹脂エッチング液にて清浄化した後、裏面の銅箔を電解めっき用リード(給電用電極)として、電解銅めっきを行ってビアを銅で充填し、銅ポスト(導体ポスト104)を形成した。ここで、銅ポストの直径が45μmとなるよう、電解銅めっきの時間を調整した。次に、銅ポストの表面に、Sn−Ag半田層(半田皮膜105)を電解めっきによって4μmの厚みで形成した。なお、半田層の先端表面の絶縁膜表面から突出している高さは、10μmであった。
【0040】
次に、銅箔上にドライフィルムレジスト(旭化成製、AQ−2058)をロールラミネートし、位置合わせを行った後、所定のネガフィルムを用いて露光・現像し、導体回路110の形成に必要なめっきレジストを形成した。次に、銅箔を電解めっき用リードとして、ニッケル層(拡散防止金属層107)、続いて金層(金皮膜層108)を電解めっきにより形成した。さらに、レジストを剥離した後、既に形成した金層、あるいはニッケル層をエッチングレジストとして、銅箔を選択的にエッチングして、配線パターン(導体回路110)を形成した。以上の工程により、配線基板120を得ることができた。
【0041】
<配線基板の製造:比較例>
上記実施例の配線基板の製造方法において、銅箔上に、めっきレジストを形成する工程までは、実施例と同様の方法で行った。次に、銅箔を電解めっき用リードとして、金層(金皮膜層108)を電解めっきにより形成した。即ち、ニッケル層をめっきにより形成する工程がないことが、実施例と異なる点である。さらに、レジストを剥離した後、既に形成した金層、あるいはニッケル層をエッチングレジストとして、銅箔を選択的にエッチングして、配線パターン(導体回路110)を形成した。以上の工程により、配線基板120を得ることができた。
【0042】
<多層配線板の製造>
実施例および比較例に示した方法によって得られた配線基板(X:ニッケル層が形成された配線基板、Y:ニッケル層が形成されていない配線基板)に対して、バーコートにより、上記で得た接着剤ワニス(調合例1)を、絶縁層の表面、すなわちSn−Ag半田層が形成された面に塗布した後、80℃で20分乾燥し、20μm厚の接着剤層(接着剤層111)を形成した。
【0043】
一方、厚み12μm銅箔が両面に形成されたFR−5相当のガラスエポキシ両面銅張積層板(住友ベークライト製、ELC−4781)を用い、銅箔を選択的にエッチングして回路パターンを形成し、コア基板(コア基板130)を得た。
【0044】
次に、上記の工程により得られた配線基板(X)または(Y)と、コア基板に、予め形成されている位置決めマークを、画像認識装置により読み取り、両者を位置合わせし、250℃、0.5MPa、1分間の条件で熱圧着した。これにより多層配線板(X’:配線基板(X)を使用)および(Y’:配線基板(Y)を使用)を得た。さらに、得られた多層配線版に、接着剤を硬化させるために200℃60分の熱処理を行った。
【0045】
<半田接合部の断面評価>
得られた多層配線板(X’)および(Y’)の半田接合部を詳細に評価するため、断面研磨し、バフ研磨後、イオンミーリング法により最終仕上げを行った。その後、多層配線板(X’)および(Y’)の配線基板同士の半田接合部を電子顕微鏡で観察するとともに、組成分析を行った。接合部の断面観察は、熱処理を行う前の多層配線版と熱処理後の多層配線板の両方で行った。
【0046】
導体回路にニッケル層の設けられた多層配線板(X’)においては、熱処理前と熱処理後の断面観察においては、カーケンダルボイドの発生は認められなかった。また、接合部には、主にSn、Au、Cuからなる合金が形成されていた。一方、ニッケル層の無い多層配線板(Y’)においては、熱処理前の段階で、導体回路と半田層の界面にカーケンダルボイドと思われる微小ボイドが発生していることが観察された。さらに、200℃60分の熱処理後の断面観察においては、導体層と半田合金の界面のカーケンダルボイドが成長して、剥離寸前にまで拡大していた。また、いずれの場合(X’、Y’)においても、導体ポストと半田の界面には、合金形成されていたが、カーケンダルボイドの発生ならびに、熱処理によるボイドの拡大は観察されなかった。
【0047】
上記の結果から、拡散防止金属層107を形成することにより、カーケンダルボイドの発生と成長を抑制できることは明らかであり、さらに、導体ポストと半田層の界面には、拡散防止金属層を設けなくてもカーケンダルボイドの発生ならびに成長させずに合金を形成することができる。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、確実に層間接続でき、且つ信頼性の高い多層配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による配線基板の製造方法の第1の例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による配線基板の製造方法の第2の例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態による第1の配線基板を用いた場合の、多層配線板の製造方法の例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態による第2の配線基板を用いた場合の、多層配線板の製造方法の例を示す断面図である。
【符号の説明】
101 金属箔
201 金属板
102、202 絶縁層
103、203 ビア
104、204 銅ポスト
105、205 半田皮膜
106、206 導体ポスト
107、207 拡散防止金属層
108、208 金皮膜層
109、209 銅回路
110、210 導体回路
110a、210a 導体回路
111、211 接着剤層
120、220 配線基板
130、230 コア基板
140、240 多層配線板
Claims (10)
- 層間接続用の導体ポストの先端に形成された錫を主成分とする半田層と、少なくとも銅層、拡散防止金属層からなる導体層の拡散防止層とを、接着剤層を介して熱圧着することにより半田接合させて得られることを特徴とする層間接続部。
- 導体層が、金層を含むものであり、該金層と半田層とを半田接合させた請求項1記載の層間接続部。
- 導体層が、層間接続用ランドである請求項1または2に記載の層間接続部。
- 導体層が、導体回路層である請求項1または2に記載の層間接続部。
- 拡散防止金属層が、ニッケルからなるものである請求項1〜4のいずれかに記載の層間接続部。
- 層間接続部が、半田層の融点よりも高い合金を形成してなる請求項1〜5のいずれかに記載の層間接続部。
- 半田接合が、半田層と接着剤層とを接触させ、半田層の融点以上の温度で加熱して半田層を溶融し、次いで、圧着して行われる請求項1〜6のいずれかに記載の層間接続部。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の層間接続部を有することを特徴とする多層配線板。
- 絶縁層と、該絶縁層に接して、少なくとも銅層、拡散防止金属層の順でなる導体回路層とを有する配線基板を複数枚含んで得られる請求項8記載の多層配線板。
- 導体回路層が、絶縁層から一方の面を露出するように絶縁層中に埋め込まれているものである請求項9記載の多層配線板。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006035692A1 (ja) * | 2004-09-30 | 2006-04-06 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | 導電性ペースト、及びそれを用いた多層プリント配線板の製造方法 |
JP2009130050A (ja) * | 2007-11-21 | 2009-06-11 | Furukawa Electric Co Ltd:The | 多層プリント基板およびその製造方法 |
JP2016054188A (ja) * | 2014-09-03 | 2016-04-14 | 大日本印刷株式会社 | 部品内蔵配線基板、部品内蔵配線基板の製造方法、及び部品内蔵配線基板製造用の中間配線層 |
CN112654174A (zh) * | 2020-12-18 | 2021-04-13 | 深圳华麟电路技术有限公司 | 接触探针式连接器与主板转接的铜柱fpc及其制作方法 |
-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002378297A patent/JP2004214227A/ja active Pending
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