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JP2004204327A - 連続溶融金属めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

連続溶融金属めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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Yasutaka Morikawa
容任 森川
Munehiro Ishioka
宗浩 石岡
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JFE Steel Corp
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Abstract

【課題】空中ポット方式で溶融金属めっき鋼板を製造する際に、溶融金属浴槽からの溶融金属の流下を操業上問題のないレベルで長時間に亘って防止する。
【解決手段】空中ポット方式の溶融金属浴槽底部の開口部から鋼板を下から上に通過させて鋼板に溶融めっきを施す際に、溶融金属浴槽の下側に溶融金属受け槽を設け、さらに溶融金属受け槽の開口部上方に前記溶融金属受け槽の開口部から溶融金属が流下するのを防止するスリットノズルを設け、該スリットノズルの気体噴射角度を水平上向きに40〜80度の範囲内とし、気体の噴射圧力Pは、P>ρgh+1/2ρ{(Q/A)2−V2}を満足させる。ρは溶融金属の密度、gは重力加速度、hはスリットノズルからの噴流が鋼板に衝突する地点から溶融金属浴槽液面までの距離、Qは溶融金属浴槽に送られる溶融金属の流量、Aは溶融金属浴槽底部の開口部面積、Vはライン速度。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属めっき鋼板を連続的に製造する方法に関し、特に溶融金属浴槽底部に設けた開口部から鋼板を下から上に向かって通過させることで溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む。以下同じ。)を製造するのに好適な溶融金属めっき鋼板の方法(所謂空中ポット方式による溶融金属めっき鋼板の製造方法)に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、亜鉛、アルミニウムや、その合金などの溶融金属めっき鋼板は、従来、一般的には以下のように製造されている。すなわち、冷間圧延後の薄鋼板に対し、前処理工程で表面の洗浄を施し、無酸化性あるいは還元性の雰囲気に保たれた焼鈍炉内において表面酸化膜を除去し、焼鈍を行い、次いで冷却して溶融金属浴温度とほぼ同程度まで冷却して溶融金属浴中に侵入させる。その後、鋼板を浴から引き上げ、鋼板表面に付着した過剰の溶融金属をガスワイピングノズルで払拭している。
【0003】
従来の溶融金属めっき鋼板の製造に用いられる装置の溶融金属浴周辺部分を図4に示す。鋼板1は非酸化性雰囲気に保たれたスナウト20から溶融金属浴21に引き込まれ、シンクロール19およびサポートロール4を経て鉛直方向に引き上げられ、ガスワイピングノズル11で過剰の溶融金属が払拭される。
【0004】
しかしながら、このような従来型の装置では、溶融金属浴中でドロス等の不純物が発生し、これらが浴中ロール(シンクロール19やサポートロール4)に付着して、鋼板1に押し疵を発生させる。あるいは、鋼板1に付着してプレス等の加工時に表面欠陥となる。このような欠陥を防止するため、浴中ロールを取り出して手入れを行ったり、ドロスが溶融金属浴中で浮遊しないように整流板を浴底部に設置するなどの対応が施されている。さらに、浴中ロールには、溶融金属による溶損に起因した回転不良が発生し、めっき欠陥を発生する。その対策として、定期的に浴中ロールを交換したり、ロール表面にセラミックス等を溶射する処理が施されている。
【0005】
このように、従来の製造装置で溶融金属めっき鋼板の製造を行うと、品質や操作性が悪くなる欠点があった。
【0006】
近年、同一の溶融金属めっきラインで、めっき金属組成の異なる溶融金属めっき鋼板、すなわちめっき品種の異なる溶融金属めっき鋼板が製造されるようになってきた。溶融金属浴槽は浴中機器を設置するために極めて大容量になる。そのため数種類の溶融金属めっき鋼板を同一ラインで製造する場合、めっき品種切り替え時の浴入れ替えに多大の時間、費用、労力を必要としている。
【0007】
このような問題点に対処するために、底部に開口部のある溶融金属浴槽に溶融金属を保持し、開口部下方から鋼板を通過させてめっきを行う技術、いわゆる空中ポットが開発されている。例えば、特許文献1には、循環による空中ポットが開示され、鋼板導入部に静圧を印加することが記載されている。また、特許文献2には、溶融金属を電磁力により保持し、鋼板通過位置において気体を噴射する空中ポットが開示されている。さらに、特許文献3には、一対の回転ドラム間に溶融金属を供給する方法が開示されている。さらにまた、特許文献4には、溶融金属めっき浴槽底部に鋼板との間を0.05〜1mmに保持するシール板を設置した装置が、特許文献5には、シール板設置めっき浴下部に圧力室を設ける装置がそれぞれ開示されている。
【0008】
上記空中ポットで問題となるのは、溶融金属が溶融金属浴槽底部の開口部から流下して、開口部下方の搬送ロールやめっき前の鋼板等に付着することであり、従って溶融金属をいかに保持して溶融金属浴槽底部の開口部から流下させないかということであり、これまでに開示された技術の多くもその点に着目したものである。
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1や特許文献2のように気体の静圧や電磁力により溶融金属の流下を防止する技術は、浴面の高さや流下溶融金属の複雑な流動状態等に応じて気体圧力や電磁力を制御する必要があり、これら従来技術ではその十分な制御方法が得られていない。また、単に気体を鋼板に対して垂直方向に噴射して溶融金属の流下を防止する方法では、少量の溶融金属の流下に対しては効果があるものの、実際の溶融金属浴槽から流下するのを防止するための十分なシール力を得られず、あくまでも補助的な手段にすぎない。
【0010】
また、特許文献4や特許文献5に開示されているようなシール板を設ける技術は、鋼板とシール板との間を0.05〜1mmに保持する必要があるが、実際には鋼板がシール板と接触し鋼板表面が疵つくといった問題点がある。さらに、特許文献3に開示された回転ドラム間に溶融金属を供給する方法は、鋼板と接していないロール端部での流下が問題となる。
【0011】
このように、上記従来技術はいずれも、溶融金属の流下を操業上問題のないレベルで長時間に亘って防止することが困難であったり、鋼板表面に疵が発生したりする問題がある。
【0012】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を改善すべく検討を行い、鋼板にめっきする溶融金属供給浴の下側に流下溶融金属受け浴を設けて該溶融金属供給浴から流下する溶融金属を受け、さらに該流下溶融金属受け浴下側の鋼板通過開口部に非酸化性の気体を供給し鋼板に噴き付ける装置を設けて溶融金属の温度以下の気体を鋼板に噴き付けることで、鋼板を通過させる溶融金属浴からの溶融金属の流下があっても、流下した溶融金属浴がさらに下方に流下することを防止すれば、前記従来技術の問題点を大幅に改善できることを見出し、特許出願した(特許文献6)。
【0013】
以下に、先行技術文献情報について記載する。
【0014】
【特許文献1】
特開昭63−109148号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭63−303045号公報
【0016】
【特許文献3】
特開平1−139744号公報
【0017】
【特許文献4】
特開平4−36447号公報
【0018】
【特許文献5】
特開平9−53164号公報
【0019】
【特許文献6】
特開2001−200353号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献6に開示される技術では、溶融金属浴から流下した溶融金属浴が下方に流下するのを確実に防止できない場合があることが明らかになった。
【0021】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、金属板を通過させる溶融金属浴槽からの溶融金属の流下を操業上問題のないレベルで長時間に亘って防止することができ、また鋼板表面に疵発生の問題を解消できる溶融金属めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の手段は、次のとおりである。
(1)金属のインゴットを投入して溶解を行う溶解浴槽から溶融金属が供給される溶融金属浴槽底部に設けた開口部から鋼板を下から上に向かって通過させて鋼板に溶融めっきを施す溶融金属めっき鋼板の製造方法において、前記溶融金属浴の下側に、前記溶融金属浴から流下する溶融金属を受けるとともに、その下部に鋼板を下から上に通過させる開口部を備える溶融金属受け槽を設け、さらに前記溶融金属受け槽の前記開口部上方の鋼板の表裏両側に前記溶融金属受け槽の開口部から溶融金属が流下するのを防止するための気体を噴射するスリットノズルを設け、該スリットノズルの気体噴射角度は水平方向に対して上方に40〜80度の範囲内にするとともに、気体の噴射圧力Pは下式を満足することを特徴とする連続溶融金属めっき鋼板の製造方法。
P>ρgh+1/2ρ{(Q/A)2−V2
ただし、ρは溶融金属の密度(kg/m3)、gは重力加速度(m/s2)、hはスリットノズルからの噴流が鋼板に衝突する地点から溶融金属浴槽の液面までの距離(m)、Qは溶融金属浴槽に送られる溶融金属の流量(m3/s)、Aは溶融金属浴槽底部の開口部面積(m2)、Vはライン速度(m/s)。
【0023】
(2)溶融金属浴槽内の液面の高さ(H)を20〜100mmとすることを特徴とする(1)に記載の連続溶融金属めっき鋼板の製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施に使用される溶融金属めっき鋼板の製造装置の構成例を示す概略断面図である。図1において、1は鋼板、2は焼鈍炉、3はデフレクターロール、4はサポートロール、5は鋼板1の両側に配置された一対の押さえロール、6はめっき装置(空中ポット)である。
【0026】
めっき装置6は、めっき金属インゴットを溶かす溶解浴槽13から溶融金属8が供給され、浴面高さの制御された溶融金属浴槽9と、鋼板1に付着した過剰の溶融金属を気体により払拭するガスワイピングノズル11と、溶融金属浴槽9の下側に設けられた溶融金属受け浴槽10と、溶融金属受け浴槽10内に設置したスリットノズル12と、スリットノズル12の圧力を調整する圧力調整装置7と、溶融金属受け浴槽10とめっき金属インゴットを溶かす溶解浴槽13とを連結する溶融金属経路16とを備えている。
【0027】
鋼板1は、焼鈍炉2内で焼鈍、冷却された後、デフレクターロール3で鉛直方向に搬送され、サポートロール4で形状矯正が行われ、その後一対の押さえロール5を介してめっき装置(空中ポット)6に搬送される。一対の押さえロール5は、鋼板の振動を抑え、パスラインを決めるために設けられている。なお、上記押さえロール5およびサポートロール4は必須なものではないが、鋼板振動の抑制の観点からは押さえロール5を、また鋼板形状の観点からはサポートロール4を設置することが好ましい。
【0028】
めっき装置(空中ポット)6では、鋼板1は、溶融金属受け浴槽10底部の開口部10aを通って溶融金属受け浴槽10を通過し、さらに溶融金属浴槽9底部の開口部9aを通って溶融金属浴槽9中を下から上へ通過して溶融めっきされ、鋼板1に付着した過剰の溶融金属はスワイピングノズル11から気体を吹き付けて払拭される。
【0029】
溶解浴槽13からの溶融金属8は、ポンプ等の溶融金属移送装置14により供給経路15に供給される。一方、上記溶融金属流動経路15を溶融金属受け浴槽10に流下した溶融金属8が溶解浴槽13に戻される。
【0030】
溶融金属浴槽9は、下側に設けられた開口部9aを通ってその中を下から上へ通過する鋼板1に溶融金属を供給するための浴槽であり、図示しない機構により浴面の位置が制御されている。浴面高さの制御方式は特に限定されるものではないが、例えば、後記する図3に示すようなオーバーフロー堰を設けるものが挙げられる。
【0031】
上記開口部9aは鋼板との接触がないように5mm以上の開口幅であることが好ましい。したがって、開口部9aから溶融金属が流下することは避けられない。本装置では流下した溶融金属を受け止めるために、溶融金属受け浴槽10を溶融金属浴槽9の下側に設けている。溶融金属受け浴槽10は、溶融金属浴槽9の下方に密接して設けられ、開口部9aから流下する溶融金属をスリットノズル12(後記)により吹き飛ばし、吹き飛ばした溶融金属を受け止める機能を有している。
【0032】
スリットノズル12は溶融金属浴槽底部の開口部から流下してくる溶融金属に対向してガスを噴射することにより、溶融金属受け浴槽底部の開口部10aからの溶融金属の流下を防止する。この時のガス噴射は、溶融金属が流下してくる方向になるべく対向する角度、つまり水平方向に対して上方に90度に近い角度が望ましい。しかし、この角度が大きくなると、スリットノズル先端部から鋼板までの距離が大きくなり、衝突圧力が弱まる。逆に、噴射圧力を高くすると、溶融金属浴面からスプラッシュを発生させてしまい、圧力調整が非常に難しい。
【0033】
ガス噴射角度と溶融金属受け浴槽底部の開口部からの溶融金属のリーク流量の関係について詳細な検討を行った結果、図2に示すように、ガス噴射角度が水平方向に対して40度未満では、ガス噴射圧力を高めても、溶融金属の流下を防止することができなかった。一方、80度を超えた角度では、溶融金属浴面からスプラッシュを発生させない範囲でガス噴射圧力を調整すると、溶融金属の流下が発生することが判明した。なお、図2において、ガス噴射角度は水平方向に対する上向き角度、リーク流量は溶融金属受け浴槽底部10の開口部10aの鋼帯幅方向の単位長さ、単位時間あたりの溶融金属の流下量である。
【0034】
また、スリットノズルからのガス噴射圧力は、上方からの溶融金属のエネルギーを上回るように設定すれば、鋼板をつたわって流下する溶融金属をせきとめられることが分かった。ここで、溶融金属のエネルギーとは、スリットノズルからの噴射ガスが鋼板に衝突する地点における位置エネルギーと運動エネルギーの和であり、このエネルギーの最大値はρgh+1/2ρ{(Q/A)2−V2}である。ただし、ρは溶融金属の密度(kg/m3)、gは重力加速度(m/s2)、hはスリットノズル12からの噴流が鋼板1に衝突する地点から溶融金属浴槽の液面までの距離(m)、Qは溶融金属浴槽に送られる溶融金属の流量(m3/s)、Aは溶融金属浴槽底部の開口部面積(m2)、Vはライン速度(m/s)である。したがって、このエネルギーの最大値よりもスリットノズルの噴射ガス圧力Pを高くすればよい。
【0035】
以上から、スリットノズルからのガス噴射は水平方向に対して上方に40度〜80度の範囲にし、ガス圧力を下記(1)式を満足する範囲に設定すれば、溶融金属受け浴槽10の開口部10aからの溶融金属の流下を防止でき、また溶融金属浴槽9の浴面からのスプラッシュの発生を防止できる。ガス圧力Pを下記(1)式を満足する範囲内の下限値近くで設定することにより、ガス流量を少なくすることができ、製造コストを低減できる。
P>ρgh+1/2ρ{(Q/A)2−V2} (1)
また、スリットノズル12から噴射するガスにより、溶融金属が冷え固まるのを防止するために、加熱したガスを噴射することが望ましい。また、めっき前の鋼板に吹き付けるので、非酸化性ガス(例えば窒素ガス)を用いることが好ましい。
【0036】
なお、図1の装置では、溶融金属受け浴槽10の溶融金属が、めっき金属のインゴットを投入して溶解を行う溶解浴槽13に流入可能なように溶融金属流動経路16で連結してあるため、溶融金属浴槽から流下した溶融金属を再度溶融金属浴槽9に供給することができ、経済的である。
【0037】
溶融金属浴槽内の液面の高さ(H)は20〜100mm程度が好ましい。これは、該液面の高さ(H)が20mm未満になるとスリットノズル12からのガス圧力の変動により浴面からスプラッシュが発生しやすくなり、逆に該液面の高さ(H)が100mm超になると、溶融金属受け浴槽10の開口部10aからの溶融金属の流下を防止するのに必要なスリットノズル12からのガス圧力を増大させなければならず、製造コスト増につながるからである。
【0038】
また、スリットノズル12と溶融金属浴槽9下部との間隔(D)は、10〜100mmにするのが望ましい。スリットノズル12からのガス圧力を低下することができるということでは、両者の間隔は小さい方が良いが、両者を近づけすぎると開口部10aから流下する溶融金属がスリットノズル12からの噴流によりスムーズに吹き飛ばされなくなるため、両者の間隔は10mm以上が好ましい。両者の間隔が100mm超になると上記同様に、溶融金属受け浴槽10の開口部10aからの溶融金属の流下を防止するのに必要なスリットノズル12からのガス圧力を増大させなければならず、製造コスト増につながる。
【0039】
図3は、本発明の実施に使用される溶融金属めっき鋼板の製造装置の別の構成例を示す概略断面図である。図3の装置では、図1の装置に対して、さらに溶融金属浴槽9にオーバーフロー堰17と前記オーバーフロー堰17に流入する溶融金属を溶解浴槽13に戻すオーバーフロー経路18とが付設されていることが特徴である。本装置では、鋼板通板中、溶融金属浴槽9内の溶融金属8が堰部17aを超えてオーバーフロー堰17内に流入するように、溶解浴槽13から溶融金属浴槽9へ溶融金属8が供給される。溶融金属浴槽9内の溶融金属8の液面高さの変動が防止されることで、溶融金属受け浴槽10の開口部10aからの溶融金属の流下の防止と溶融金属浴槽9の浴面からのスプラッシュの防止をより確実に行うことができるようになる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、図3に概略を示したような装置を用いて、低融点金属(ウッドメタル、融点:70℃、密度:9650kg/m3、大阪アサヒメタル工場製U−アロイ70)のシール性を検証した。
【0041】
鋼板1(幅120mm)をデフレクターロール3、サポートロール4を介して押さえロール5(ロール径50mm)からめっき装置(空中ポット)6に導入した。溶融金属受け浴槽10における鋼板通過開口部10aと鋼板1との間隔は3mmになるように調整した。スリットノズル12にはスリット幅が1.2mmのノズルを使用し、溶融金属浴槽9下部とノズルとの間隔(溶融金属浴槽9下部とノズルガス噴射部との間隔;D)は20mm、鋼板1とノズルとの間隔は3mmとした。
【0042】
溶融金属受け浴槽10の上には5mm×250mmの鋼板開口部9aを有する溶融金属浴槽9を上記溶融金属受け浴槽10と密接するように連結した。また、溶融金属受け浴槽10と溶解浴槽13とは内径50mmの配管16で連結し、溶融金属受け浴槽10に溜まったウッドメタルを溶解浴槽13に導くようにした。溶融金属(ウッドメタル)は、ポンプ14により周囲に電熱ヒータを取り付けて溶融金属の温度を90℃に保った溶解浴槽13から0.2m3/minの割合で供給浴槽9に移送した。供給浴槽9には浴面高さ(H)を一定(50mm)に保つオーバーフロー堰17を設け、オーバーフロー堰17に流入したウッドメタルはオーバーフロー経路18から溶解浴槽13に戻した。
【0043】
まず、圧力調整装置7を作動させずに、鋼板1を30〜120m/minの速度で上方に引き上げて、前記鋼板引き上げ速度における溶融金属受け浴槽10の鋼板通過開口部10aからのウッドメタルの流下状態を観察した(比較例)。
【0044】
次に、圧力調整装置7を作動させて、鋼板1を30〜120m/minの速度で上方に引き上げて、前記同様に溶融金属受け浴槽10の鋼板通過開口部10aからのウッドメタルの流下状態を観察した(本発明例)。
【0045】
スリットノズル12からガス噴射を行わない場合(比較例)は、30〜120mpmの全ての速度条件において、ウッドメタルの流下が観測されたのに対し、ガス噴射角度を60度に設定し、ヘッダ圧力を前記(1)式を十分満足する50kPaのガス噴射を行った場合は、上記何れの速度条件においても、ウッドメタルの流下を防止できることが確認できた。また、比較例、本発明例のどの条件においても鋼板1と空中ポットとの接触は認められず、通板性にも問題はなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、鋼板を通過させる溶融金属浴からの溶融金属の流下を操業上問題のないレベルで長時間に亘って安定して防止することができる。したがって、浴中機器に起因した欠陥やドロス欠陥などの解消、長時間安定操業の達成、さらに異なる品種との切り替えが容易に行えるなど、いわゆる空中ポット方式のめっき装置の長所を享受することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用される溶融金属めっき鋼板の製造装置の構成例を示す概略断面図である。
【図2】スリットノズルのガス噴射角度とリーク流量の関係を説明するための図。
【図3】本発明の実施に使用される溶融金属めっき鋼板の製造装置の別の構成例を示す概略断面図である。
【図4】従来の溶融金属めっき設備を示す概略断面図。
【符号の説明】
1 鋼板
2 焼鈍炉
3 デフレクターロール
4 サポートロール
5 押さえロール
6 溶融金属めっき装置
7 圧力調整装置
8 溶融金属
9 溶融金属浴槽
10 溶融金属受け浴槽
11 ガスワイピングノズル
12 スリットノズル
13 溶解浴槽
14 溶融金属移送装置(ポンプ)
15 溶融金属供給経路
16 溶融金属経路
17 オーバーフロー堰
18 オーバーフロー経路
19 シンクロール
20 スナウト
21 溶解金属浴槽

Claims (2)

  1. 金属のインゴットを投入して溶解を行う溶解浴槽から溶融金属が供給される溶融金属浴槽底部に設けた開口部から鋼板を下から上に向かって通過させて鋼板に溶融めっきを施す溶融金属めっき鋼板の製造方法において、前記溶融金属浴槽の下側に、前記溶融金属浴槽から流下する溶融金属を受けるとともに、その下部に鋼板を下から上に通過させる開口部を備える溶融金属受け槽を設け、さらに前記溶融金属受け槽の前記開口部上方の鋼板の表裏両側に前記溶融金属受け槽の開口部から溶融金属が流下するのを防止するための気体を噴射するスリットノズルを設け、該スリットノズルの気体噴射角度は水平方向に対して上方に40〜80度の範囲内にするとともに、気体の噴射圧力Pは下式を満足することを特徴とする連続溶融金属めっき鋼板の製造方法。
    P>ρgh+1/2ρ{(Q/A)2−V2
    ただし、ρは溶融金属の密度(kg/m3)、gは重力加速度(m/s2)、hはスリットノズルからの噴流が鋼板に衝突する地点から溶融金属浴槽の液面までの距離(m)、Qは溶融金属浴槽に送られる溶融金属の流量(m3/s)、Aは溶融金属浴槽底部の開口部面積(m2)、Vはライン速度(m/s)。
  2. 溶融金属浴槽内の液面の高さ(H)を20〜100mmとすることを特徴とする請求項1に記載の連続溶融金属めっき鋼板の製造方法。
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