JP2004204108A - 熱可塑性エラストマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】イソブチレン系ブロック共重合体の特性を保持したまま、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、および密封性に優れ、圧縮永久歪み特性に優れた熱可塑性エラストマーの製造方法を提供する。
【解決手段】末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することにより、熱可塑性を損なうことなく、圧縮永久歪み特性が改良され、イソブチレン系ブロック共重合体の特性を保持したまま、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、および密封性に優れた熱可塑性エラストマーが得られる。
【選択図】なし
【解決手段】末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することにより、熱可塑性を損なうことなく、圧縮永久歪み特性が改良され、イソブチレン系ブロック共重合体の特性を保持したまま、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、および密封性に優れた熱可塑性エラストマーが得られる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性に優れ、特に圧縮永久歪み特性に優れた新規な熱可塑性エラストマーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム弾性を有する軟質高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどに架橋剤や補強剤などを配合して高温高圧下で架橋した、熱硬化性の架橋ゴムが汎用的に利用されている。しかしながらこの様な架橋ゴムでは、高温高圧下で長時間にわたって架橋及び成形を行う工程が必要なことから、成形サイクルが長く、生産性に限界がある。また、架橋ゴムは、熱可塑性を失うため、熱可塑性樹脂のようなリサイクル成形が一般的に不可能である。そのため、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、及び押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成形品を、生産性良く、簡単に製造することのできる熱可塑性エラストマーが近年種々開発されている。このような熱可塑性エラストマーには、現在、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーが開発され、市販されている。
【0003】
これらのうちで、スチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性に優れている。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、またそれらを水素添加したスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが知られている。しかし、これらのブロック共重合体は、圧縮永久歪み特性が不十分であった。
【0004】
一方、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性に優れ、さらにガスバリヤー性、密封性に優れた熱可塑性エラストマーとしては、イソブチレンを主体とする重合体ブロックと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとを含有するイソブチレン系ブロック共重合体が知られている。しかしながら、このイソブチレン系ブロック共重合体は、圧縮永久歪みに問題があった。
【0005】
また、イソブチレンを主体とする重合体ブロックを含有するイソブチレン系ブロック共重合体とゴムの架橋物からなる熱可塑性重合体組成物が知られている(再公表特許WO98/14518)(特許文献1)。この組成物は圧縮永久歪特性が改善されたものであるが圧縮永久歪みの値が70℃、22時間という条件において35〜65と未だ不十分であるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
再公表特許WO98/14518
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の課題に鑑み、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、制振性に優れ、特に圧縮永久歪み特性に優れた熱可塑性エラストマーの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部当たり10〜200重量部のオレフィン系樹脂(B)を含有する熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体(A)がアリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基が導入されたものである熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、架橋剤がヒドロシリル基含有化合物である熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、さらに可塑剤(C)を添加することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の数平均分子量が1000〜500,000であり、末端に1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を有することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法である。
【0015】
本発明で使用するイソブチレン系ブロック共重合体(A)のイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)とは、イソブチレンが50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める重合体のことをいう。イソブチレンを主体とする重合体ブロック中の、イソブチレン以外の単量体は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、芳香族ビニル類、脂肪族オレフィン類、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とは、芳香族ビニル系化合物が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック中の芳香族ビニル化合物以外の単量体としてはカチオン重合可能な単量体であれば特に制限はないが、脂肪族オレフィン類、ジエン類、アリルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。
【0017】
重合体ブロック(b)の芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。
【0018】
芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック中の、イソブチレン以外の単量体は、上記カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されず、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)中のイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(b)の割合に関しては、特に制限はないが、物性と加工性のバランスから、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)が95〜20重量部、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(b)が5〜80重量部であることが好ましく、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)が90〜60重量部、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(b)が10〜40重量部であることが特に好ましい。
【0020】
また本発明のイソブチレン系ブロック共重合体(A)の好ましい構造としては、得られる組成物の物性および加工性の点から、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の少なくとも一つと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)の少なくとも二つとからなる構造が好ましい。上記構造としては特に制限はないが、例えば、(b)−(a)−(b)から形成されるトリブロック共重合体、{(b)−(a)}単位の繰り返しを持つマルチブロック共重合体、及び(b)−(a)からなるジブロック共重合体をアームとする星状ポリマーなどから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。さらに、イソブチレン系ブロック共重合体(A)中に、上記構造以外に、イソブチレンを主体とする重合体、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体、及び(a)−(b)からなるジブロック共重合体の少なくとも1種が含まれても良い。しかし、物性および加工性の点から、イソブチレン系ブロック共重合体(A)中に含まれるイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の少なくとも一つと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)の少なくとも二つとからなる構造のものが50重量%以上になるのが好ましい。
【0021】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の数平均分子量に特に制限はないが、1,000から500,000が好ましく、50,000か200,000が特に好まい。数平均分子量が1,000未満の場合、機械的な特性等が十分に発現されず、また、200,000を超える場合、成形性等の低下が大きい。
【0022】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)が含有するアルケニル基とは、本発明の目的を達成するための(A)成分の架橋反応に対して活性のある炭素−炭素二重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。具体例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基を挙げることができる。これらの中でも、反応性の面から、アリル基が好ましい。
【0023】
また、本発明で使用するイソブチレン系ブロック共重合体(A)は末端にアルケニル基を含有するものであるが、含有するアルケニル基の割合は、1分子あたり少なくとも0.2個以上であれば使用可能であり、架橋度の面から、1分子あたり1個以上であることが好ましく、1.5個以上であることが最も好ましい。アルケニル基の割合が小さくなると、得られる熱可塑性エラストマーの架橋度が低下し、圧縮永久歪みが悪化する傾向がある。なお、イソブチレン系ブロック共重合体(A)が、一般的な鎖状ポリマーの場合、末端の数は、1分子あたり2個であるため、アルケニル基の割合も1分子あたり最大で2個である。また、三官能の開始剤を使って、分岐状ポリマーを使用した場合、1分子あたり3個であるため、アルケニル基の割合も1分子あたり最大で3個となる。
【0024】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の末端へのアルケニル基の導入方法としては特開平3−152164号公報や特開平7−304909号公報に開示されているような、水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法が挙げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するためにはアルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行う方法などが挙げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているように単量体の重合時に不飽和基を導入することも可能である。これらの中でも、反応性が高く、重合体中のハロゲン原子を除去できる点で、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法が好ましい。
【0025】
本発明で使用するオレフィン系樹脂(B)とはエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンの含有量が50〜100モル%であるα−オレフィン単独重合体または共重合体であり、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン共重合体、エチレンヘキセン共重合体、エチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などが例示される。これらは、要求される特性に応じて使い分けることができ、耐熱性が要求される場合は、ポリプロピレンが好ましく、絶縁性などの電気特性が要求される場合は、ポリエチレンが好ましく、接着性などの極性が必要な場合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などが好ましい。これらの中でも、耐熱性や機械特性の面から、ポリプロピレンが最も好ましい。
【0026】
オレフィン系樹脂(B)の配合量は、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、10〜200重量部であることが好ましく、20〜100部であるのが更に好ましい。オレフィン系樹脂(B)の配合量が200重量部を越えると、圧縮永久歪み特性の改善が乏しくなる傾向にある。また20重量部を下回ると成形性に問題が生じる傾向にある。
【0027】
上述の、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することで、熱可塑性エラストマーを製造することができる。動的に架橋するというのは、溶融混練しながら架橋反応を進行させることを指しており、このような方法を用いることで、架橋後のエラストマーに熱可塑性を付与することができるわけである。
【0028】
ここで形成される架橋体中には(A)または(B)いずれかが単独で架橋した物か、(A)と(B)が同時に架橋体中に含まれ架橋した物が含まれる。これらのうち(A)単独で架橋体を形成するのが好ましい。
【0029】
末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)を架橋する手段としては、公知な方法を用いることができ特に制限は無いが、例えば、加熱による熱架橋、架橋剤による架橋を行うことができる。これらの中でも、反応速度および架橋効率の面で、架橋剤としてヒドロシリル基含有化合物を用いる方法が好ましい。
【0030】
本発明で使用しうるヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式(I)または(II)で表される鎖状ポリシロキサン;
R1 3SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 3 (I)
HR1 2SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 2H (II)
(式中、R1およびR2は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R3は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
一般式(III)で表される環状シロキサン;
【0031】
【化1】
(式中、R4およびR5は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R6は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表し、かつ3≦d+e+f≦10を満たす。)
等の化合物を用いることができる。さらに上記のヒドロシリル基(Si−H基)を有する化合物のうち、(A)および(B)成分との相溶性が良いという点から、特に下記の一般式(IV)で表されるものが好ましい。
【0032】
【化2】
(式中、g、hは整数であり2≦g+h≦50、2≦g、0≦hである。R7は水素原子またはメチル基を表し、R8は炭素数2〜20の炭化水素基で1つ以上の芳香環を有していても良い。iは0≦i≦5の整数である。
【0033】
末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)と架橋剤は任意の割合で混合することができるが、反応性および経済性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると架橋が不十分でべとつきのある強度の小さいエラストマーしか得られず、また、0.2より小さいと、架橋後もエラストマー中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のあるエラストマーが得られない。
【0034】
重合体(A)と架橋剤との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
【0035】
ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等を挙げることができる。
【0036】
また、遷移金属触媒としても特に限定されず、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジアルケニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10-1〜10-8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10-3〜10-6molの範囲で用いるのがよい。10-8molより少ないと硬化が十分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は高価であるので10-1mol以上用いないのが好ましい。
【0037】
これらのうち、相溶性、架橋効率、スコーチ安定性の点で、白金ビニルシロキサンが最も好ましい。
【0038】
またラジカル架橋のためにはラジカル開始剤を添加するのが好ましい。ラジカル開始剤としては有機過酸化物等が用いられ、特に限定はない。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3が好ましい。
【0039】
有機過酸化物の配合量は、特に限定はないが、反応速度と架橋効率の面から、イソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲が好ましい。
【0040】
本発明では、有機過酸化物による架橋処理に際し、エチレン系不飽和基を有する架橋助剤を配合することができる。エチレン系不飽和基を有する架橋助剤とは、例えばジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、又はエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー等である。これらは単独で用いても、少なくとも2種以上を用いてもよい。このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が達成できる。
【0041】
これらの中でも特に、エチレングリコールジメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。これらは、取扱いやすく、有機過酸化物可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均一かつ効果的で、硬さとゴム弾性のバランスのとれた熱可塑性エラストマーが得られる。
上記架橋助剤の添加量は、添加時におけるイソブチレン系重合体100重量部に対して0.5〜10.0重量部の範囲が好ましい。架橋助剤の添加量が0.5部を下回れば架橋助剤としての効果が得られず、10重量部を越えると架橋助剤の単独のゲル化がすすみ物性低下をもたらすおそれがあり、また経済的にも不利である。
【0042】
本発明の製造方法では、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)に加えて、成形性や柔軟性を更に向上させるため、さらに可塑剤(C)を添加するのが好ましい。可塑剤(C)としては、ゴムの加工の際に用いられる鉱物油、または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることができる。また、これら可塑剤は、架橋剤や架橋助剤の分散媒としても機能し、溶融混練時の架橋剤や架橋助剤の拡散性を向上することで、架橋度の均一性を高まる。
【0043】
鉱物油としては、パラフィン系、ナフテン系、及び芳香族系の高沸点石油成分が挙げられるが、架橋反応を阻害しないパラフィン系及びナフテン系が好ましい。液状もしくは低分子量の合成軟化剤としては、特に制限はないが、ポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、ポリαオレフィン類等が挙げられる。これらの可塑剤(C)は1種以上を用いることができる。可塑剤(C)の配合量は、、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、10〜300重量部であることが好ましい。配合量が300重量部を越えると、機械的強度の低下や成形性に問題が生じる。
【0044】
また本発明には、さらには、各用途に合わせた要求特性に応じて、物性を損なわない範囲で補強剤、充填剤、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、またそれらを水素添加したスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などのエラストマー、そのほかにも、ヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系の酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、充填剤、補強剤等を適宜配合することができる。
【0045】
本発明の製造方法において、最も好ましい組成範囲としては、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、オレフィン系樹脂(B)20〜100重量部、可塑剤(C)10〜300重量部である。
【0046】
また、本発明における溶融混練の方法は特に限定されず、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)、オレフィン系樹脂(B)、および、場合により用いられる上記可塑剤(C)などの各種成分が均一に加熱混合され得る方法であれば、当業界で知られる、いずれの方法でもよい。その中でも、以下に例示する方法によって好ましく行うことができる。
【0047】
例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式または開放式のバッチ型混練装置を用いて製造する場合は、架橋剤及び架橋助剤以外の全ての成分を予め混合し均一になるまで溶融混練し、次いでそれに架橋剤を添加して架橋反応が十分に溶融混練を停止する方法を採用することができる。
【0048】
また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続型の溶融混練装置を用いて製造する場合は、架橋剤以外の全ての成分を予め押出機などの溶融混練装置によって均一になるまで溶融混練した後ペレット化し、そのペレットに架橋剤をドライブレンドした後更に押出機などの溶融混練装置で溶融混練して、組成物を動的に架橋する方法、もしくは、架橋剤以外のすべての成分を押出機などの溶融混練装置によって溶融混練し、そこに押出機のシリンダーの途中から架橋剤を添加して更に溶融混練し、組成物を動的に架橋する方法などを採用することができる。
【0049】
上述した溶融混練の方法における溶融温度としては、140〜210℃が好ましい。140℃よりも低い温度では、オレフィン系樹脂(B)の溶融が不十分となり、混練が不均一となる傾向があり、210℃よりも高い温度では、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の熱分解が進行する傾向がある。
【0050】
本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂に対して一般に採用される成型方法及び成形装置を用いて成形でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形などによって溶融成形できる。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、CDダンパー、建築用ダンパー、自動車、車両、家電製品向け制振材等の制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品として有効に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0052】
尚、実施例に先立ち各種測定法、評価法、実施例について説明する。
【0053】
(硬度)
JIS K 6352に準拠し、試験片は12.0mm圧プレスシートを用いた。
【0054】
(引張破断強度)
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、3号型ダンベルに打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0055】
(引張破断伸び)
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、3号型ダンベルに打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0056】
(圧縮永久歪み)
JIS K 6262に準拠し、試験片は12.0mm厚さプレスシートを使用した。100℃×22時間、25%圧縮の条件にて測定した。
また、以下に実施例及び比較例で用いた材料の略号とその具体的な内容は、次のとおりである。
【0057】
(動的粘弾性)
JIS K−6394(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの動的性質試験方法)に準拠し、縦6mm×横5mm×厚さ2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測制御社製)を用い、損失正接tanδを測定した。測定周波数は0.5Hzとした。
【0058】
(溶融粘度)
試験条件:試験温度170℃ ダイス半径1mmでキャピラリーレオメーター(東洋精機社製)を用い溶融粘度を測定した。
成分(A):ASIBS:末端にアルケニル基が導入されたポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体
成分(B):PP1:ポリプロピレン、三井化学社製(商品名「ハイポールJ300」)
成分(B):PP2:ポリプロピレン、グランドポリマー社製(商品名「グランドポリプロJ709W」)
成分(B):PE:低密度ポリエチレン、日本ポリケム社製(商品名ノバッテクHJ970)
成分(C):可塑剤:パラフィン系プロセスオイル、出光興産株式会社製(商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」)
SIBS:ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体
IIR:ブチルゴム、JSR社製(商品名「Butyl065」)
架橋剤1:平均9個の繰り返し単位からなるポリメチルハイドロジェンシロキサン中のヒドロシリル基が、平均2.5個のα−メチルスチレンとヒドロシリル化により結合した、α−メチルスチレン変性H−オイル
架橋剤2:反応型臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド化合物、田岡化学工業社製(商品名「タッキロール250−1」)
架橋触媒:0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアリルジシロキサン錯体 1%キシレン溶液
架橋助剤1:酸化亜鉛
架橋助剤2:ステアリン酸。
【0059】
(製造例1)[末端にアルケニル基が導入されたポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ASIBS)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー201mL(2132mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p− ジクミルクロライド2.6g(11.2mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン9.9mL(90.0mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー52g(499mmol)、n−ヘキサン23.9mLおよび塩化ブチル34.3mLの混合溶液を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから45分後に、アリルトリメチルシラン12ml(10.0mmol)を加えた。そのままの温度で60分攪拌した後、約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
【0060】
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。スチレン添加前のイソブチレン重合体のMnが10500、Mw/Mnは1.40であり、スチレン重合後のブロック共重合体のMnが15000、Mw/Mnが1.50であるブロック共重合体が得られた。
【0061】
(製造例2)[スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー232mL(2871mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.647g(2.8mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー77.9g(748mmol)、n−ヘキサン23.9mLおよび塩化ブチル34.3mLの混合溶液を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから45分後に、約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
【0062】
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。スチレン添加前のイソブチレン重合体のMnが50,000、Mw/Mnは1.40であり、スチレン重合後のブロック共重合体のMnが67,000、Mw/Mnが1.50であるブロック共重合体が得られた。
【0063】
(実施例1)
製造例1で製造したASIBS、PP1を表1に示した割合で、可塑剤も含めた全体の仕込み量が40gとなるように計量し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋製機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤1を表1に示した割合で添加し、さらに架橋触媒を50μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は180℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、及び圧縮永久歪みを上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
成分(C)の配合量を150部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
成分(B)のPP1の配合量を35部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
成分(B)をPP2に変更し、成分(C)の配合量を50部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
成分(B)をPP2に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、硬度、圧縮永久歪み、及び動的粘弾性を上記方法に従って測定した。それぞれの物性を表2、表5、及び表6に示す。
【0068】
(実施例6)
成分(C)の配合量を200部に変更した以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表2に示す。
【0069】
(実施例7)
成分(B)の配合量を35部に変更した以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表2に示す。
【0070】
(実施例8)
成分(B)の配合量を50部に変更した以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表2に示す。
【0071】
(実施例9)
成分(C)の配合量を0部に変更した以外は実施例8と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表3に示す。
【0072】
(実施例10)
成分(B)をPEに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表3に示す。
【0073】
(比較例1)
製造例2で製造したSIBSを180℃に設定したラボプラストミルを用いて10分間溶融混練した後、180℃でシート状に成形した。得られたシートの、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、及び圧縮永久歪みを上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表4に示す。
【0074】
(比較例2)
製造例2で製造したSIBS、IIRを表1に示した割合で、180℃に設定したラボプラストミル(東洋製機社製)を用いて5分間溶融混練し、次いで架橋剤2及び架橋助剤1及び架橋助剤2を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで180℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は180℃でシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、及び圧縮永久歪みを上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表4に示す。
【0075】
(比較例3)
オレフィン系熱可塑性エラストマーであるエーイーエスジャパン社のサントプレーン211−45の樹脂組成物を成形し、動的粘弾性、および溶融粘度を上記方法に従って測定した。それぞれの物性を表5と表6に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
本発明の製造方法で得られた熱可塑性エラストマー、すなわち実施例1,2,3,4,5,6は、硬度では41〜74(JIS A)と比較例1に示すイソブチレン系ブロック共重合体であるSIBS単体の硬度(JIS A:47)を含む幅広い硬度域をとりながらも、圧縮永久歪みの値がSIBS単体の値よりもかなり低い値である。そして比較例2に示す架橋物にIIRを用いた場合と比較すると本発明の製造方法で得られた熱可塑性エラストマーは圧縮永久歪みの値において優れていることが明らかである。
【0082】
実施例5と比較例3の動的粘弾性を比較してみると本発明の実施例5の方がtanδが高い。tanδは制振材料の減衰性を表し、その値が大きいほど、減衰性は高い。つまり実施例5の方が制振性に優れていることが分かる。
【0083】
実施例5と比較例3の溶融粘度を比較してみると本発明の実施例5の方が粘度が低いことが分かる。これは押し出し成形および射出成形性に優れていることが示唆される。
【0084】
【発明の効果】
このように、本発明の製造方法で得られる熱可塑性エラストマーは、イソブチレン系重合体の特性を保持したまま、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、制振性に優れ、特に圧縮永久歪み特性に優れている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性に優れ、特に圧縮永久歪み特性に優れた新規な熱可塑性エラストマーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴム弾性を有する軟質高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどに架橋剤や補強剤などを配合して高温高圧下で架橋した、熱硬化性の架橋ゴムが汎用的に利用されている。しかしながらこの様な架橋ゴムでは、高温高圧下で長時間にわたって架橋及び成形を行う工程が必要なことから、成形サイクルが長く、生産性に限界がある。また、架橋ゴムは、熱可塑性を失うため、熱可塑性樹脂のようなリサイクル成形が一般的に不可能である。そのため、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、及び押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成形品を、生産性良く、簡単に製造することのできる熱可塑性エラストマーが近年種々開発されている。このような熱可塑性エラストマーには、現在、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーが開発され、市販されている。
【0003】
これらのうちで、スチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性に優れている。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、またそれらを水素添加したスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが知られている。しかし、これらのブロック共重合体は、圧縮永久歪み特性が不十分であった。
【0004】
一方、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性に優れ、さらにガスバリヤー性、密封性に優れた熱可塑性エラストマーとしては、イソブチレンを主体とする重合体ブロックと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロックとを含有するイソブチレン系ブロック共重合体が知られている。しかしながら、このイソブチレン系ブロック共重合体は、圧縮永久歪みに問題があった。
【0005】
また、イソブチレンを主体とする重合体ブロックを含有するイソブチレン系ブロック共重合体とゴムの架橋物からなる熱可塑性重合体組成物が知られている(再公表特許WO98/14518)(特許文献1)。この組成物は圧縮永久歪特性が改善されたものであるが圧縮永久歪みの値が70℃、22時間という条件において35〜65と未だ不十分であるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
再公表特許WO98/14518
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の課題に鑑み、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、制振性に優れ、特に圧縮永久歪み特性に優れた熱可塑性エラストマーの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部当たり10〜200重量部のオレフィン系樹脂(B)を含有する熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体(A)がアリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基が導入されたものである熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、架橋剤がヒドロシリル基含有化合物である熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、さらに可塑剤(C)を添加することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の数平均分子量が1000〜500,000であり、末端に1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を有することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法である。
【0015】
本発明で使用するイソブチレン系ブロック共重合体(A)のイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)とは、イソブチレンが50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める重合体のことをいう。イソブチレンを主体とする重合体ブロック中の、イソブチレン以外の単量体は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、芳香族ビニル類、脂肪族オレフィン類、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン等のジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とは、芳香族ビニル系化合物が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック中の芳香族ビニル化合物以外の単量体としてはカチオン重合可能な単量体であれば特に制限はないが、脂肪族オレフィン類、ジエン類、アリルエーテル類、β−ピネン等の単量体が例示できる。
【0017】
重合体ブロック(b)の芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。
【0018】
芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック中の、イソブチレン以外の単量体は、上記カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されず、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)中のイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)と芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(b)の割合に関しては、特に制限はないが、物性と加工性のバランスから、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)が95〜20重量部、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(b)が5〜80重量部であることが好ましく、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)が90〜60重量部、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック(b)が10〜40重量部であることが特に好ましい。
【0020】
また本発明のイソブチレン系ブロック共重合体(A)の好ましい構造としては、得られる組成物の物性および加工性の点から、イソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の少なくとも一つと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)の少なくとも二つとからなる構造が好ましい。上記構造としては特に制限はないが、例えば、(b)−(a)−(b)から形成されるトリブロック共重合体、{(b)−(a)}単位の繰り返しを持つマルチブロック共重合体、及び(b)−(a)からなるジブロック共重合体をアームとする星状ポリマーなどから選ばれる少なくとも1種を使用することができる。さらに、イソブチレン系ブロック共重合体(A)中に、上記構造以外に、イソブチレンを主体とする重合体、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体、及び(a)−(b)からなるジブロック共重合体の少なくとも1種が含まれても良い。しかし、物性および加工性の点から、イソブチレン系ブロック共重合体(A)中に含まれるイソブチレンを主体とする重合体ブロック(a)の少なくとも一つと、芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)の少なくとも二つとからなる構造のものが50重量%以上になるのが好ましい。
【0021】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の数平均分子量に特に制限はないが、1,000から500,000が好ましく、50,000か200,000が特に好まい。数平均分子量が1,000未満の場合、機械的な特性等が十分に発現されず、また、200,000を超える場合、成形性等の低下が大きい。
【0022】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)が含有するアルケニル基とは、本発明の目的を達成するための(A)成分の架橋反応に対して活性のある炭素−炭素二重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。具体例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基を挙げることができる。これらの中でも、反応性の面から、アリル基が好ましい。
【0023】
また、本発明で使用するイソブチレン系ブロック共重合体(A)は末端にアルケニル基を含有するものであるが、含有するアルケニル基の割合は、1分子あたり少なくとも0.2個以上であれば使用可能であり、架橋度の面から、1分子あたり1個以上であることが好ましく、1.5個以上であることが最も好ましい。アルケニル基の割合が小さくなると、得られる熱可塑性エラストマーの架橋度が低下し、圧縮永久歪みが悪化する傾向がある。なお、イソブチレン系ブロック共重合体(A)が、一般的な鎖状ポリマーの場合、末端の数は、1分子あたり2個であるため、アルケニル基の割合も1分子あたり最大で2個である。また、三官能の開始剤を使って、分岐状ポリマーを使用した場合、1分子あたり3個であるため、アルケニル基の割合も1分子あたり最大で3個となる。
【0024】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の末端へのアルケニル基の導入方法としては特開平3−152164号公報や特開平7−304909号公報に開示されているような、水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させて重合体に不飽和基を導入する方法が挙げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するためにはアルケニルフェニルエーテルとのフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法、種々のフェノール類とのフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入反応を行う方法などが挙げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているように単量体の重合時に不飽和基を導入することも可能である。これらの中でも、反応性が高く、重合体中のハロゲン原子を除去できる点で、ルイス酸存在下アリルトリメチルシラン等との置換反応を行う方法が好ましい。
【0025】
本発明で使用するオレフィン系樹脂(B)とはエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンの含有量が50〜100モル%であるα−オレフィン単独重合体または共重合体であり、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン共重合体、エチレンヘキセン共重合体、エチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などが例示される。これらは、要求される特性に応じて使い分けることができ、耐熱性が要求される場合は、ポリプロピレンが好ましく、絶縁性などの電気特性が要求される場合は、ポリエチレンが好ましく、接着性などの極性が必要な場合は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などが好ましい。これらの中でも、耐熱性や機械特性の面から、ポリプロピレンが最も好ましい。
【0026】
オレフィン系樹脂(B)の配合量は、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、10〜200重量部であることが好ましく、20〜100部であるのが更に好ましい。オレフィン系樹脂(B)の配合量が200重量部を越えると、圧縮永久歪み特性の改善が乏しくなる傾向にある。また20重量部を下回ると成形性に問題が生じる傾向にある。
【0027】
上述の、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することで、熱可塑性エラストマーを製造することができる。動的に架橋するというのは、溶融混練しながら架橋反応を進行させることを指しており、このような方法を用いることで、架橋後のエラストマーに熱可塑性を付与することができるわけである。
【0028】
ここで形成される架橋体中には(A)または(B)いずれかが単独で架橋した物か、(A)と(B)が同時に架橋体中に含まれ架橋した物が含まれる。これらのうち(A)単独で架橋体を形成するのが好ましい。
【0029】
末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)を架橋する手段としては、公知な方法を用いることができ特に制限は無いが、例えば、加熱による熱架橋、架橋剤による架橋を行うことができる。これらの中でも、反応速度および架橋効率の面で、架橋剤としてヒドロシリル基含有化合物を用いる方法が好ましい。
【0030】
本発明で使用しうるヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式(I)または(II)で表される鎖状ポリシロキサン;
R1 3SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 3 (I)
HR1 2SiO−[Si(R1)2O]a−[Si(H)(R2)O]b−[Si(R2)(R3)O]c−SiR1 2H (II)
(式中、R1およびR2は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R3は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
一般式(III)で表される環状シロキサン;
【0031】
【化1】
(式中、R4およびR5は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R6は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表し、かつ3≦d+e+f≦10を満たす。)
等の化合物を用いることができる。さらに上記のヒドロシリル基(Si−H基)を有する化合物のうち、(A)および(B)成分との相溶性が良いという点から、特に下記の一般式(IV)で表されるものが好ましい。
【0032】
【化2】
(式中、g、hは整数であり2≦g+h≦50、2≦g、0≦hである。R7は水素原子またはメチル基を表し、R8は炭素数2〜20の炭化水素基で1つ以上の芳香環を有していても良い。iは0≦i≦5の整数である。
【0033】
末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)と架橋剤は任意の割合で混合することができるが、反応性および経済性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると架橋が不十分でべとつきのある強度の小さいエラストマーしか得られず、また、0.2より小さいと、架橋後もエラストマー中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のあるエラストマーが得られない。
【0034】
重合体(A)と架橋剤との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
【0035】
ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等を挙げることができる。
【0036】
また、遷移金属触媒としても特に限定されず、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジアルケニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10-1〜10-8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10-3〜10-6molの範囲で用いるのがよい。10-8molより少ないと硬化が十分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は高価であるので10-1mol以上用いないのが好ましい。
【0037】
これらのうち、相溶性、架橋効率、スコーチ安定性の点で、白金ビニルシロキサンが最も好ましい。
【0038】
またラジカル架橋のためにはラジカル開始剤を添加するのが好ましい。ラジカル開始剤としては有機過酸化物等が用いられ、特に限定はない。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3が好ましい。
【0039】
有機過酸化物の配合量は、特に限定はないが、反応速度と架橋効率の面から、イソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部の範囲が好ましい。
【0040】
本発明では、有機過酸化物による架橋処理に際し、エチレン系不飽和基を有する架橋助剤を配合することができる。エチレン系不飽和基を有する架橋助剤とは、例えばジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、又はエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー等である。これらは単独で用いても、少なくとも2種以上を用いてもよい。このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が達成できる。
【0041】
これらの中でも特に、エチレングリコールジメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。これらは、取扱いやすく、有機過酸化物可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均一かつ効果的で、硬さとゴム弾性のバランスのとれた熱可塑性エラストマーが得られる。
上記架橋助剤の添加量は、添加時におけるイソブチレン系重合体100重量部に対して0.5〜10.0重量部の範囲が好ましい。架橋助剤の添加量が0.5部を下回れば架橋助剤としての効果が得られず、10重量部を越えると架橋助剤の単独のゲル化がすすみ物性低下をもたらすおそれがあり、また経済的にも不利である。
【0042】
本発明の製造方法では、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)に加えて、成形性や柔軟性を更に向上させるため、さらに可塑剤(C)を添加するのが好ましい。可塑剤(C)としては、ゴムの加工の際に用いられる鉱物油、または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることができる。また、これら可塑剤は、架橋剤や架橋助剤の分散媒としても機能し、溶融混練時の架橋剤や架橋助剤の拡散性を向上することで、架橋度の均一性を高まる。
【0043】
鉱物油としては、パラフィン系、ナフテン系、及び芳香族系の高沸点石油成分が挙げられるが、架橋反応を阻害しないパラフィン系及びナフテン系が好ましい。液状もしくは低分子量の合成軟化剤としては、特に制限はないが、ポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、ポリαオレフィン類等が挙げられる。これらの可塑剤(C)は1種以上を用いることができる。可塑剤(C)の配合量は、、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、10〜300重量部であることが好ましい。配合量が300重量部を越えると、機械的強度の低下や成形性に問題が生じる。
【0044】
また本発明には、さらには、各用途に合わせた要求特性に応じて、物性を損なわない範囲で補強剤、充填剤、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、またそれらを水素添加したスチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などのエラストマー、そのほかにも、ヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系の酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、界面活性剤、難燃剤、充填剤、補強剤等を適宜配合することができる。
【0045】
本発明の製造方法において、最も好ましい組成範囲としては、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、オレフィン系樹脂(B)20〜100重量部、可塑剤(C)10〜300重量部である。
【0046】
また、本発明における溶融混練の方法は特に限定されず、末端にアルケニル基が導入されたイソブチレン系ブロック共重合体(A)、オレフィン系樹脂(B)、および、場合により用いられる上記可塑剤(C)などの各種成分が均一に加熱混合され得る方法であれば、当業界で知られる、いずれの方法でもよい。その中でも、以下に例示する方法によって好ましく行うことができる。
【0047】
例えば、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式または開放式のバッチ型混練装置を用いて製造する場合は、架橋剤及び架橋助剤以外の全ての成分を予め混合し均一になるまで溶融混練し、次いでそれに架橋剤を添加して架橋反応が十分に溶融混練を停止する方法を採用することができる。
【0048】
また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続型の溶融混練装置を用いて製造する場合は、架橋剤以外の全ての成分を予め押出機などの溶融混練装置によって均一になるまで溶融混練した後ペレット化し、そのペレットに架橋剤をドライブレンドした後更に押出機などの溶融混練装置で溶融混練して、組成物を動的に架橋する方法、もしくは、架橋剤以外のすべての成分を押出機などの溶融混練装置によって溶融混練し、そこに押出機のシリンダーの途中から架橋剤を添加して更に溶融混練し、組成物を動的に架橋する方法などを採用することができる。
【0049】
上述した溶融混練の方法における溶融温度としては、140〜210℃が好ましい。140℃よりも低い温度では、オレフィン系樹脂(B)の溶融が不十分となり、混練が不均一となる傾向があり、210℃よりも高い温度では、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の熱分解が進行する傾向がある。
【0050】
本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂に対して一般に採用される成型方法及び成形装置を用いて成形でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形などによって溶融成形できる。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、CDダンパー、建築用ダンパー、自動車、車両、家電製品向け制振材等の制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、各種容器、文具部品として有効に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0052】
尚、実施例に先立ち各種測定法、評価法、実施例について説明する。
【0053】
(硬度)
JIS K 6352に準拠し、試験片は12.0mm圧プレスシートを用いた。
【0054】
(引張破断強度)
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、3号型ダンベルに打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0055】
(引張破断伸び)
JIS K 6251に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、3号型ダンベルに打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0056】
(圧縮永久歪み)
JIS K 6262に準拠し、試験片は12.0mm厚さプレスシートを使用した。100℃×22時間、25%圧縮の条件にて測定した。
また、以下に実施例及び比較例で用いた材料の略号とその具体的な内容は、次のとおりである。
【0057】
(動的粘弾性)
JIS K−6394(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの動的性質試験方法)に準拠し、縦6mm×横5mm×厚さ2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測制御社製)を用い、損失正接tanδを測定した。測定周波数は0.5Hzとした。
【0058】
(溶融粘度)
試験条件:試験温度170℃ ダイス半径1mmでキャピラリーレオメーター(東洋精機社製)を用い溶融粘度を測定した。
成分(A):ASIBS:末端にアルケニル基が導入されたポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体
成分(B):PP1:ポリプロピレン、三井化学社製(商品名「ハイポールJ300」)
成分(B):PP2:ポリプロピレン、グランドポリマー社製(商品名「グランドポリプロJ709W」)
成分(B):PE:低密度ポリエチレン、日本ポリケム社製(商品名ノバッテクHJ970)
成分(C):可塑剤:パラフィン系プロセスオイル、出光興産株式会社製(商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」)
SIBS:ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体
IIR:ブチルゴム、JSR社製(商品名「Butyl065」)
架橋剤1:平均9個の繰り返し単位からなるポリメチルハイドロジェンシロキサン中のヒドロシリル基が、平均2.5個のα−メチルスチレンとヒドロシリル化により結合した、α−メチルスチレン変性H−オイル
架橋剤2:反応型臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド化合物、田岡化学工業社製(商品名「タッキロール250−1」)
架橋触媒:0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアリルジシロキサン錯体 1%キシレン溶液
架橋助剤1:酸化亜鉛
架橋助剤2:ステアリン酸。
【0059】
(製造例1)[末端にアルケニル基が導入されたポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体(ASIBS)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー201mL(2132mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p− ジクミルクロライド2.6g(11.2mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン9.9mL(90.0mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー52g(499mmol)、n−ヘキサン23.9mLおよび塩化ブチル34.3mLの混合溶液を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから45分後に、アリルトリメチルシラン12ml(10.0mmol)を加えた。そのままの温度で60分攪拌した後、約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
【0060】
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。スチレン添加前のイソブチレン重合体のMnが10500、Mw/Mnは1.40であり、スチレン重合後のブロック共重合体のMnが15000、Mw/Mnが1.50であるブロック共重合体が得られた。
【0061】
(製造例2)[スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)の製造]
2Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、注射器を用いて、n−ヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)456.1mL及び塩化ブチル(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)656.5mLを加え、重合容器を−70℃のドライアイス/メタノールバス中につけて冷却した後、イソブチレンモノマー232mL(2871mmol)が入っている三方コック付耐圧ガラス製液化採取管にテフロン(登録商標)製の送液チューブを接続し、重合容器内にイソブチレンモノマーを窒素圧により送液した。p−ジクミルクロライド0.647g(2.8mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド1.22g(14mmol)を加えた。次にさらに四塩化チタン8.67mL(79.1mmol)を加えて重合を開始した。重合開始から1.5時間同じ温度で撹拌を行った後、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約1mLを抜き取った。続いて、あらかじめ−70℃に冷却しておいたスチレンモノマー77.9g(748mmol)、n−ヘキサン23.9mLおよび塩化ブチル34.3mLの混合溶液を重合容器内に添加した。該混合溶液を添加してから45分後に、約40mLのメタノールを加えて反応を終了させた。
【0062】
反応溶液から溶剤等を留去した後、トルエンに溶解し2回水洗を行った。さらにトルエン溶液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた重合体の分子量を測定した。スチレン添加前のイソブチレン重合体のMnが50,000、Mw/Mnは1.40であり、スチレン重合後のブロック共重合体のMnが67,000、Mw/Mnが1.50であるブロック共重合体が得られた。
【0063】
(実施例1)
製造例1で製造したASIBS、PP1を表1に示した割合で、可塑剤も含めた全体の仕込み量が40gとなるように計量し、170℃に設定したラボプラストミル(東洋製機社製)を用いて3分間溶融混練し、次いで架橋剤1を表1に示した割合で添加し、さらに架橋触媒を50μl添加後、トルクの値が最高値を示すまで170℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は180℃で神藤金属工業社製、加圧プレスにて容易にシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、及び圧縮永久歪みを上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
成分(C)の配合量を150部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
成分(B)のPP1の配合量を35部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
成分(B)をPP2に変更し、成分(C)の配合量を50部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表1に示す。
【0067】
(実施例5)
成分(B)をPP2に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、硬度、圧縮永久歪み、及び動的粘弾性を上記方法に従って測定した。それぞれの物性を表2、表5、及び表6に示す。
【0068】
(実施例6)
成分(C)の配合量を200部に変更した以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表2に示す。
【0069】
(実施例7)
成分(B)の配合量を35部に変更した以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表2に示す。
【0070】
(実施例8)
成分(B)の配合量を50部に変更した以外は実施例5と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表2に示す。
【0071】
(実施例9)
成分(C)の配合量を0部に変更した以外は実施例8と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表3に示す。
【0072】
(実施例10)
成分(B)をPEに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を成形し、物性を評価した。それぞれの物性を表3に示す。
【0073】
(比較例1)
製造例2で製造したSIBSを180℃に設定したラボプラストミルを用いて10分間溶融混練した後、180℃でシート状に成形した。得られたシートの、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、及び圧縮永久歪みを上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表4に示す。
【0074】
(比較例2)
製造例2で製造したSIBS、IIRを表1に示した割合で、180℃に設定したラボプラストミル(東洋製機社製)を用いて5分間溶融混練し、次いで架橋剤2及び架橋助剤1及び架橋助剤2を表1に示した割合で添加し、トルクの値が最高値を示すまで180℃でさらに溶融混練し動的架橋を行った。得られた熱可塑性エラストマー組成物は180℃でシート状に成形することができた。得られたシートの、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、及び圧縮永久歪みを上記方法に従って測定した。それぞれのシートの物性を表4に示す。
【0075】
(比較例3)
オレフィン系熱可塑性エラストマーであるエーイーエスジャパン社のサントプレーン211−45の樹脂組成物を成形し、動的粘弾性、および溶融粘度を上記方法に従って測定した。それぞれの物性を表5と表6に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
本発明の製造方法で得られた熱可塑性エラストマー、すなわち実施例1,2,3,4,5,6は、硬度では41〜74(JIS A)と比較例1に示すイソブチレン系ブロック共重合体であるSIBS単体の硬度(JIS A:47)を含む幅広い硬度域をとりながらも、圧縮永久歪みの値がSIBS単体の値よりもかなり低い値である。そして比較例2に示す架橋物にIIRを用いた場合と比較すると本発明の製造方法で得られた熱可塑性エラストマーは圧縮永久歪みの値において優れていることが明らかである。
【0082】
実施例5と比較例3の動的粘弾性を比較してみると本発明の実施例5の方がtanδが高い。tanδは制振材料の減衰性を表し、その値が大きいほど、減衰性は高い。つまり実施例5の方が制振性に優れていることが分かる。
【0083】
実施例5と比較例3の溶融粘度を比較してみると本発明の実施例5の方が粘度が低いことが分かる。これは押し出し成形および射出成形性に優れていることが示唆される。
【0084】
【発明の効果】
このように、本発明の製造方法で得られる熱可塑性エラストマーは、イソブチレン系重合体の特性を保持したまま、柔軟性に富み、成形加工性、ゴム的特性、制振性に優れ、特に圧縮永久歪み特性に優れている。
Claims (6)
- 末端にアルケニル基が導入された、イソブチレン系重合体ブロック(a)と芳香族ビニル系化合物を主体とする重合体ブロック(b)とからなるイソブチレン系ブロック共重合体(A)と、オレフィン系樹脂(B)の溶融混練時に架橋剤を添加し、動的に架橋することを特徴とする熱可塑性エラストマーの製造方法。
- イソブチレン系ブロック共重合体(A)100重量部当たり10〜200重量部のオレフィン系樹脂(B)を含有する請求項1に記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。
- イソブチレン系ブロック共重合体(A)がアリルトリメチルシランと塩素の置換反応により末端にアリル基が導入されたものである請求項1又は2のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。
- 架橋剤がヒドロシリル基含有化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。
- さらに可塑剤(C)を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。
- イソブチレン系ブロック共重合体(A)の数平均分子量が1000〜500,000であり、末端に1分子あたり少なくとも0.2個のアルケニル基を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。
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