JP2004269790A - ポリイミド樹脂粉体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】実用上十分に高いイミド化率を有するポリイミド樹脂の粉体を安定的に得るポリイミド樹脂粉体の製造方法を提供する目的とする。
【解決手段】ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、イミド化を化学的に行い、粉体を抽出する溶媒として水分量が500ppm以下の溶媒を用いる製造方法によって上記課題を解決しうる。
【解決手段】ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、イミド化を化学的に行い、粉体を抽出する溶媒として水分量が500ppm以下の溶媒を用いる製造方法によって上記課題を解決しうる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可溶性ポリイミド樹脂からポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法において、実用上十分に高いイミド化率を実現したポリイミド樹脂粉体を得る製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、高い耐熱性、高い電気絶縁性に優れていることから高温環境下で使用される電子部品に広く使用されている。また、単に耐熱性に優れるのみでなく、用途に応じて種々の機能を合わせ持つことが要求とされる。例えば、フレキシブルプリント配線基板やLSI用の層間絶縁膜などに用いられているポリイミド樹脂では、ポリイミドフィルムとして用いられ、フィルムの熱膨張係数、誘電率が小さいことが必要とされる。また、光通信関係、特に光導波路用途に用いられるポリイミド樹脂は屈折率を所望の値に制御できることや、透明性の高いことが要求される。
【0003】
ところで、ポリイミド樹脂は、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を粉体状にしたものを有機溶剤に溶解した後に、加工することで用いられる場合が増えてきている。そのため、ポリイミド樹脂状態での有機溶剤への溶解性が必要とされる。有機溶剤に溶解しうるポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を含む溶液をイミド化してポリイミド樹脂を含む溶液を得、抽出によりポリイミド樹脂の粉体を得ることができる。このように得られた粉体を用途に応じて所望の溶剤に溶解して、加工するのである。
【0004】
一方、ポリイミド樹脂は、その信頼性に大きく影響する要因であるイミド化率が充分に高いことが望まれる。一般的に、ポリアミック酸のイミド化方法には、熱的に脱水閉環する熱的イミド化方法、脱水剤及びイミド化促進剤を用いる化学的イミド化方法が知られている。このうち、熱的イミド化方法は、例えば、ポリアミック酸の状態でフィルムなどに成型し、その後イミド化するような方法の場合では、特許文献1のように、ガラス転移温度の高いポリイミド樹脂を熱イミド化法において充分にイミド化を進めるためには、高熱でイミド化反応を行う必要があり、熱イミド化反応でポリイミド樹脂を製造すると分子量低下が生じる場合がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−8734(実施例1〜15)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、実用上十分に高いイミド化率を有するポリイミド樹脂の粉体を安定的に得るポリイミド樹脂粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリイミド樹脂の粉体を得る際の抽出条件について検討した所、抽出する際の溶媒中の水分量を少なくすることにより、使用に際し十分なイミド化率が得られることを見出した。
1)ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、
前記イミド化はイミド化促進剤を用いて行い、
前記ポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法が、水分量が500ppm以下である溶媒中にポリイミド樹脂を含む溶液を投入する方法であることを特徴とするポリイミド粉体の製造方法。
2)前記ポリイミド樹脂の粉体の抽出を、相対湿度10%以下の乾燥環境下で行うことを特徴とする1)記載のポリイミド粉体の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるポリイミド樹脂粉体の製造方法は、ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、
前記イミド化はイミド化促進剤を用いて行い、
前記ポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法が、水分量が500ppm以下である溶媒中にポリイミド樹脂を含む溶液を投入する方法であることを特徴とするポリイミド粉体の製造方法である。この製造方法は少なくと下記の3工程を含むのでそれぞれについて一例を挙げて説明する。
(1)ポリアミック酸の製造
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
(3)ポリイミド樹脂粉体の抽出
(1)本発明のポリアミック酸の製造方法
ポリアミック酸の製造方法は下記方法に特定されるものではなく、種々の方法を用いることが可能である。その一例を以下に示す。
【0009】
ジアミンを溶解した有機溶媒中に、酸二無水物を分散し、攪拌することで完全に溶解させ重合させる方法、酸二無水物を有機溶媒中に溶解及び/または分散させた後、ジアミンを用いて重合させる方法、酸二無水物とジアミンの混合物を有機溶媒中で反応させて重合する方法などがあるが、公知の重合方法を用いればよい。
反応時間は、約1時間から5時間反応させることが好ましいが、ポリアミック酸溶液の粘度が、50Pa・s以上になるまで反応を行うことが好ましく、さらに好ましくは100Pa・s以上、最も好ましくは200Pa・sまで反応を行うころとが好ましい。ポリアミック酸溶液の粘度が200Pa・s以上であるとポリアミック酸溶液からポリイミド樹脂へと成形する際に取扱う上で最も好ましい。上記粘度は、23℃に保温された水浴中で23℃に保温し、B型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定することができる。
【0010】
反応装置には、反応温度を制御するための温度調製装置を備えていることが好ましく、反応溶液温度として60℃以下が好ましく、さらに、40℃以下であることが反応を効率良くしかも、ポリアミック酸の粘度が上昇しやすいことから好ましい。
【0011】
ポリアミック酸の重合に使用される有機溶媒としては、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるが必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いて良い。これらのうちDMF、DMAc、NMPなどのアミド類が好ましく使用される。
【0012】
ポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の重量%は、有機溶媒中にポリアミック酸が5〜50wt%、好ましくは10〜40wt%、更に好ましくは、15〜30wt%溶解されているのが取り扱い面から好ましい。尚、ポリアミック酸の平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した際に重量平均分子量が10000以上、好ましくは50000以上、更に好ましくは100000以上であることがポリイミド樹脂を光学部品に使用する際に好ましい。200000以上になると溶解性が低くなる傾向にある。
【0013】
本発明は、可溶性のポリイミド樹脂を含む溶液から、後述するように貧溶媒に投入して粉体を抽出する方法を用いるので、ポリイミド樹脂は、DMFなどの非プロトン性極性溶媒に溶解することが必要である。なお、ポリイミド樹脂の溶解性の確認方法については後述する。このようなポリイミド樹脂を得るのに好適に用いることのできる酸二無水物は、溶解性を発現すれば特に拘らないが、例として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−6−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−6−フルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−6−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−5−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−5−フルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物が好ましく用いられ、特に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物等のフルオロメチル酸二無水物類、パラ−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエ−ト−3.3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,3″,4,4″−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、1−(2,3−ジカルボキシフェニル)−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物等が挙げられる。
【0014】
さらに、ジアミン類として、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシジベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェニル)スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェニル)スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−フルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、ジアミノポリシロキサンなどを使用することができる。
【0015】
ポリアミック酸溶液の製造反応に用いられる酸二無水物類とジアミン類の使用モル比率は、次式で算出した場合に、0.9以上1.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.95以上1.3以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.98以上1.2以下であることがポリアミック酸溶液から得られるポリイミド樹脂中の未反応の酸二無水物やジアミンを減少させる上で好ましい。
【0016】
(2)本発明のポリアミック酸のイミド化方法
前述のように、熱的にイミド化を行う方法は、化学的方法に比較してイミド化が進行しにくく、充分にイミド化させようとすると、逆に分子量が低下するおそれがあることがわかった。そこで、本発明においては、イミド化はイミド化促進剤を用いて化学的にイミド化する方法を用いる。このとき、脱水剤を併用することが好ましい。
【0017】
化学的イミド化方法に用いられる脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。好適には、無水酢酸を用いることがポリイミド樹脂の抽出工程に適している。
【0018】
イミド化促進剤としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、2−ピコリン、3−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン等の複素環式第3級アミン類などが好ましい。イミド化促進剤のpKBH+は、3、00以上5.50以下、好ましくは4.00以上5.30以下であることが好ましい。
【0019】
ポリアミック酸に対する脱水剤及びイミド化促進剤の添加量は、ポリアミック酸を構成する化学構造式に依存するが、脱水剤の量が、脱水剤/ポリアミック酸中のアミド基のモル比で3〜1.2となるよう用い、イミド化促進剤の量が、イミド化促進剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比で5〜2であるように用いることが好ましい。脱水剤の量が少ないとイミド化が十分に進行しない場合があり、逆に多すぎると分子量の低下を引き起こす場合がある。イミド化促進剤の量が少ないとイミド化が十分に進行する場合がある。逆に多すぎると着色する傾向にあるので、透明性が必要とされる用途に用いる場合には問題となる場合がある。
【0020】
(3)ポリイミド樹脂粉体の抽出
本発明者らは、ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法において、イミド化率の高いポリイミド樹脂の粉体の製造について検討を行った結果、ポリイミド樹脂を抽出する工程でイミド化率が低下することを見出した。さらに、抽出する際の条件を種々検討した結果、抽出に使用する溶媒の水分量が多いと、イミド化率が低下してしまう傾向にあることがわかり、最適な条件を見出した。ポリイミド樹脂粉体の抽出について以下に述べる。
【0021】
前記(1)および(2)のようにして得られたポリイミド樹脂を含む溶液から、ポリイミド樹脂を抽出する方法として、ポリイミド樹脂、脱水剤、イミド化促進剤を含有するポリイミド樹脂の溶液をポリイミド樹脂の貧溶媒中に、投入することでポリイミド樹脂を固形状態に抽出する方法を用いることができる。本発明のポリイミド樹脂粉体とは、粉末状、フレーク状、種々の形態を含む固形物状態のものであり、その平均粒径は、好ましくは5mm以下であり、さらには3mm以下、特には1mm以下が好ましい。
【0022】
本発明で用いられるポリイミド樹脂の貧溶媒は、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコールなど、該当するポリイミドの貧溶剤で、ポリアミック酸及びポリイミド樹脂の溶解溶媒として使用した有機溶剤と混和するものが用いられ、上記したアルコール類が好ましく用いられる。
【0023】
本発明においては、上記溶媒中の水分含有量が少ないことが重要である。水分含有量は500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。例えば、予め水分含有量が500ppm以下の溶媒を用いればよい。水分含有量が上記範囲より多いとイミド化率の低下が生じる傾向にある。 さらに工程での吸湿を申しするため、ポリイミド樹脂粉体を抽出する工程は相対湿度10%以下の乾燥環境下で行うことが重要である。例えば、乾燥空気、窒素等の乾燥環境下で作業を行えばよい。
【0024】
注入方法:ポリイミド樹脂の溶液を貧溶媒中に注入する際には、ポリアミック酸溶液の固形分濃度が15%以下、好ましくは10%以下の状態になるように希釈を行った後に、貧溶媒溶液中にポリイミド溶液が糸状になるように投入して注入する。ポリイミド樹脂溶液の投入直前の直径は1mm以下が好ましく、更に好ましくは直径が0.5mmになるように投入することが乾燥工程で完全に溶媒を除去する上で好ましい。貧溶媒量はポリイミド樹脂溶液の3倍以上、好ましくは10倍以上の量である。
【0025】
本願発明では樹脂の投入直後は樹脂が糸状になるので、できるだけ細かいフレーク状のポリイミド樹脂に成形するために、貧溶媒の溶液の回転数は1000回転/分以上の高速回転で攪拌することが好ましく、更に、攪拌翼は1段のパドル翼を用いることが好ましい。また、完全にポリイミド樹脂を投入すると貧溶媒中のポリイミド溶解用に用いている溶媒量が多量になり、イミド樹脂が溶解するので、投入後に貧溶媒を加えることが好ましい。その量は、樹脂を投入する際の貧溶媒の溶媒量と同量以上の溶媒を加えることが好ましく、更に好ましくは2倍量以上の溶媒を添加することが好ましい。大量の溶媒を添加することで貧溶媒中に溶解したイミド樹脂が再度沈殿すると共に、粉末状の樹脂となる。
【0026】
洗浄方法:固形のポリイミド樹脂を取り出して、アルコール等の貧溶媒中で洗浄する。この時の水分含有量も抽出時と同様、500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0027】
乾燥方法:本発明で凝固させフレーク状にした樹脂固形物の乾燥方法は、真空乾燥によってもよいし熱風乾燥によってもよい。乾燥温度は酸素存在下では120℃以上では着色が起こる場合がある。したがって乾燥は120℃以下で行うことが望ましい。真空中や不活性ガス雰囲気でも、120℃以下で行うことが望ましい。
【0028】
上記方法で作製したポリイミド樹脂の分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した際に重量平均分子量が10000以上500000以下であることが好ましく、さらに好ましくは、50000以上400000以下であることが好ましく、特に好ましくは80000以上300000以下であることがポリイミド樹脂を例えばフィルム体に表面に塗布する際に塗布斑が少なく、取扱が容易であることから好ましい。
【0029】
このようにして得られたポリイミド樹脂の粉体は、種々の有機溶剤に可溶であり、用途に応じて溶剤を選択してポリイミド樹脂溶液とし、加工することができる。また、実用上充分なイミド化率および分子量を有する。
ここで実用上十分なイミド化率、分子量とは適用用途により当業者が決定するものであるが、一般的にイミド化率95%以上、好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上であり、重量平均分子量は50000以上、好ましくは80000以上、さらに好ましくは100000以上である。
【0030】
また、本発明のポリイミド樹脂粉体の有機溶剤への溶解性は、特に上記溶剤の中で汎用性の高い、DMF及びMIBKについて溶解性を確認する。本発明における溶剤可溶性とは、溶解性の試験では、極性の高いN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及び揮発性のメチルイソブチルケトン(MIBK)へ固形分が20%になるように溶液中に分散して、完全にポリイミド樹脂を溶液中に分散させた後に、24時間23℃に保たれた恒温室内に置き、上澄み液を取り出して内部の固形分濃度の測定を行う。
【0031】
【数1】
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
本実施例では、反応容器としてステンレス製セパラブルフラスコを備え、該セパラブルフラスコ内の攪拌装置として2枚のパドル翼を備え、冷却装置として20.9kJ/minの冷却能力を持つ装置を備えた反応装置を用いてポリアミック酸を製造した。重合反応中は、水分の混入を防ぐ為に、シリカゲル中を通過させて脱水を行った窒素ガスを0.05L/minで流して重合反応を行った。
(1)ポリアミック酸溶液の製造
上記セパラブルフラスコに、重合用溶媒としてN,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)223.5gを仕込み、これに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)40.0g(0.125モル)を溶解する。この溶液に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)55.5(0.125モル)gを添加・攪拌して完全に溶解させた。完全に溶解した後、攪拌して重合粘度を200Pa・sまで上昇させた。ポリアミック酸溶液の粘度は、23℃に保温された水浴中で1時間保温し、その時の粘度をB型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定を行った。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン化合物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して30重量%となっている。
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
上記溶液にDMFを加え固形分濃度を15重量%とし、イミド化促進剤としてピリジン(pKBH+;5.17)を30g(イミド化促進剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比=3)添加して、完全に分散させる。分散させた溶液中に無水酢酸を1分間に1gの速度で15.3g(脱水剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比=1.2)を添加してさらに30分間攪拌した。攪拌後に、内部温度を100℃に上昇させて5時間加熱攪拌を行った。
(3)ポリイミド樹脂の抽出
ポリイミド溶液を窒素雰囲気下で、窒素置換等の脱湿処理を施した5Lのメタノール(カールフィッシャー測定法にて測定した水分含有量100ppm)中に垂らして抽出を行った。抽出時、メタノールを1500回転以上に回転した攪拌羽で高速に攪拌しながら抽出を行った。溶液中で、ポリイミド樹脂は、繊維状になる場合もあるが、攪拌を続けることで溶液中に一度繊維状になったものが分解されて粒状に分断される。この作業は、窒素置換することにより相対湿度ほぼ0%で行った。
分断された樹脂固形分溶液中に、更に、5Lのメタノールを添加して完全に固形分を抽出して取り出した。固形分をさらに4回洗浄を行った後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
【0034】
(イミド化率)NMR法にて評価した。芳香族プロトンの積分値をA,アミドのプロトン(11ppm)の積分値をBとし、以下の計算式にて算出した。
イミド化率(モル%)=((A/12−B/2)/(A/12))×100
【0035】
【表1】
(実施例2)
(1)ポリアミック酸溶液の製造
実施例1と同様にして製造した。
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
実施例1と同様にして製造した。
(3)ポリイミド樹脂の抽出
ポリイミド溶液を窒素雰囲気下で、5Lのイソプロパノール(IPA;水分含量100ppm)中に垂らして抽出を行った。抽出時、IPAを1500回転以上に回転した攪拌羽で高速に攪拌しながら抽出を行った。溶液中で、ポリイミド樹脂は、繊維状になる場合もあるが、攪拌を続けることで溶液中に一度繊維状になったものが分解されて粒状に分断される。この作業は、窒素置換することにより相対湿度ほぼ0%で行った。
分断された樹脂固形分溶液中に、更に、5LのIPAを添加して完全に固形分を抽出して取り出した。固形分をさらに4回洗浄を行った後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
【0036】
(評価方法)
実施例1と同様の方法でポリイミド樹脂のイミド化率評価を行った、評価結果を表2に記載する。
【0037】
【表2】
(比較例1)
(1)ポリアミック酸溶液の製造
実施例1同様。
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
上記溶液に、イミド化触媒として4−ピコリン(pKBH+;6.06)を30g(触媒モル数/ポリアミック酸中アミド基モル数=3)添加して、完全に分散させる。分散させた溶液中に無水酢酸を1分間に1gの速度で15.3g(脱水剤モル数/ポリアミック酸中アミド基モル数=1.2)を添加して30分間攪拌した。攪拌後に、内部温度を100℃に上昇させて5時間加熱攪拌を行った。
(3)ポリイミド樹脂の抽出
ポリイミド溶液を窒素雰囲気下で、5Lのメタノール(水分含有量1000ppm)中に垂らして抽出を行った。抽出時、メタノールを1500回転以上に回転した攪拌羽で高速に攪拌しながら抽出を行った。溶液中で、ポリイミド樹脂は、繊維状になる場合もあるが、攪拌を続けることで溶液中に一度繊維状になったものが分解されて粒状に分断される。
分断された樹脂固形分溶液中に、更に、5Lのメタノールを添加して完全に固形分を抽出して取り出した。固形分をさらに4回洗浄を行った後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
(評価方法)
実施例1と同様の方法でポリイミド樹脂の評価を行った、評価結果を表1に記載する。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、前駆体であるポリアミック酸をイミド化促進剤及び脱水剤を用い化学イミド化させ、そのポリイミド溶液からポリイミド粉体を得るために造粒を行う際、造粒溶媒中の水分量を500ppm以下にすることにより実用上十分に高いイミド化率のポリイミド粉体を得ることが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、可溶性ポリイミド樹脂からポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法において、実用上十分に高いイミド化率を実現したポリイミド樹脂粉体を得る製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、高い耐熱性、高い電気絶縁性に優れていることから高温環境下で使用される電子部品に広く使用されている。また、単に耐熱性に優れるのみでなく、用途に応じて種々の機能を合わせ持つことが要求とされる。例えば、フレキシブルプリント配線基板やLSI用の層間絶縁膜などに用いられているポリイミド樹脂では、ポリイミドフィルムとして用いられ、フィルムの熱膨張係数、誘電率が小さいことが必要とされる。また、光通信関係、特に光導波路用途に用いられるポリイミド樹脂は屈折率を所望の値に制御できることや、透明性の高いことが要求される。
【0003】
ところで、ポリイミド樹脂は、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂を粉体状にしたものを有機溶剤に溶解した後に、加工することで用いられる場合が増えてきている。そのため、ポリイミド樹脂状態での有機溶剤への溶解性が必要とされる。有機溶剤に溶解しうるポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を含む溶液をイミド化してポリイミド樹脂を含む溶液を得、抽出によりポリイミド樹脂の粉体を得ることができる。このように得られた粉体を用途に応じて所望の溶剤に溶解して、加工するのである。
【0004】
一方、ポリイミド樹脂は、その信頼性に大きく影響する要因であるイミド化率が充分に高いことが望まれる。一般的に、ポリアミック酸のイミド化方法には、熱的に脱水閉環する熱的イミド化方法、脱水剤及びイミド化促進剤を用いる化学的イミド化方法が知られている。このうち、熱的イミド化方法は、例えば、ポリアミック酸の状態でフィルムなどに成型し、その後イミド化するような方法の場合では、特許文献1のように、ガラス転移温度の高いポリイミド樹脂を熱イミド化法において充分にイミド化を進めるためには、高熱でイミド化反応を行う必要があり、熱イミド化反応でポリイミド樹脂を製造すると分子量低下が生じる場合がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−8734(実施例1〜15)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、実用上十分に高いイミド化率を有するポリイミド樹脂の粉体を安定的に得るポリイミド樹脂粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリイミド樹脂の粉体を得る際の抽出条件について検討した所、抽出する際の溶媒中の水分量を少なくすることにより、使用に際し十分なイミド化率が得られることを見出した。
1)ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、
前記イミド化はイミド化促進剤を用いて行い、
前記ポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法が、水分量が500ppm以下である溶媒中にポリイミド樹脂を含む溶液を投入する方法であることを特徴とするポリイミド粉体の製造方法。
2)前記ポリイミド樹脂の粉体の抽出を、相対湿度10%以下の乾燥環境下で行うことを特徴とする1)記載のポリイミド粉体の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるポリイミド樹脂粉体の製造方法は、ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、
前記イミド化はイミド化促進剤を用いて行い、
前記ポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法が、水分量が500ppm以下である溶媒中にポリイミド樹脂を含む溶液を投入する方法であることを特徴とするポリイミド粉体の製造方法である。この製造方法は少なくと下記の3工程を含むのでそれぞれについて一例を挙げて説明する。
(1)ポリアミック酸の製造
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
(3)ポリイミド樹脂粉体の抽出
(1)本発明のポリアミック酸の製造方法
ポリアミック酸の製造方法は下記方法に特定されるものではなく、種々の方法を用いることが可能である。その一例を以下に示す。
【0009】
ジアミンを溶解した有機溶媒中に、酸二無水物を分散し、攪拌することで完全に溶解させ重合させる方法、酸二無水物を有機溶媒中に溶解及び/または分散させた後、ジアミンを用いて重合させる方法、酸二無水物とジアミンの混合物を有機溶媒中で反応させて重合する方法などがあるが、公知の重合方法を用いればよい。
反応時間は、約1時間から5時間反応させることが好ましいが、ポリアミック酸溶液の粘度が、50Pa・s以上になるまで反応を行うことが好ましく、さらに好ましくは100Pa・s以上、最も好ましくは200Pa・sまで反応を行うころとが好ましい。ポリアミック酸溶液の粘度が200Pa・s以上であるとポリアミック酸溶液からポリイミド樹脂へと成形する際に取扱う上で最も好ましい。上記粘度は、23℃に保温された水浴中で23℃に保温し、B型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定することができる。
【0010】
反応装置には、反応温度を制御するための温度調製装置を備えていることが好ましく、反応溶液温度として60℃以下が好ましく、さらに、40℃以下であることが反応を効率良くしかも、ポリアミック酸の粘度が上昇しやすいことから好ましい。
【0011】
ポリアミック酸の重合に使用される有機溶媒としては、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルエチルウレアのようなウレア類、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォンのようなスルホキシドあるいはスルホン類、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ―ブチルラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、またはホスホリルアミド類の非プロトン性溶媒、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化アルキル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p−クレゾールメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられることができ、通常これらの溶媒を単独で用いるが必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いて良い。これらのうちDMF、DMAc、NMPなどのアミド類が好ましく使用される。
【0012】
ポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の重量%は、有機溶媒中にポリアミック酸が5〜50wt%、好ましくは10〜40wt%、更に好ましくは、15〜30wt%溶解されているのが取り扱い面から好ましい。尚、ポリアミック酸の平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した際に重量平均分子量が10000以上、好ましくは50000以上、更に好ましくは100000以上であることがポリイミド樹脂を光学部品に使用する際に好ましい。200000以上になると溶解性が低くなる傾向にある。
【0013】
本発明は、可溶性のポリイミド樹脂を含む溶液から、後述するように貧溶媒に投入して粉体を抽出する方法を用いるので、ポリイミド樹脂は、DMFなどの非プロトン性極性溶媒に溶解することが必要である。なお、ポリイミド樹脂の溶解性の確認方法については後述する。このようなポリイミド樹脂を得るのに好適に用いることのできる酸二無水物は、溶解性を発現すれば特に拘らないが、例として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−6−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−6−フルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−6−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−5−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ−5−フルオロフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物が好ましく用いられ、特に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物等のフルオロメチル酸二無水物類、パラ−ターフェニル−3,4,3″,4″−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエ−ト−3.3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,3″,4,4″−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、1−(2,3−ジカルボキシフェニル)−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物等が挙げられる。
【0014】
さらに、ジアミン類として、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシジベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェニル)スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェニル)スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エ−テル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−フルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、ジアミノポリシロキサンなどを使用することができる。
【0015】
ポリアミック酸溶液の製造反応に用いられる酸二無水物類とジアミン類の使用モル比率は、次式で算出した場合に、0.9以上1.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.95以上1.3以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.98以上1.2以下であることがポリアミック酸溶液から得られるポリイミド樹脂中の未反応の酸二無水物やジアミンを減少させる上で好ましい。
【0016】
(2)本発明のポリアミック酸のイミド化方法
前述のように、熱的にイミド化を行う方法は、化学的方法に比較してイミド化が進行しにくく、充分にイミド化させようとすると、逆に分子量が低下するおそれがあることがわかった。そこで、本発明においては、イミド化はイミド化促進剤を用いて化学的にイミド化する方法を用いる。このとき、脱水剤を併用することが好ましい。
【0017】
化学的イミド化方法に用いられる脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。好適には、無水酢酸を用いることがポリイミド樹脂の抽出工程に適している。
【0018】
イミド化促進剤としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、2−ピコリン、3−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン等の複素環式第3級アミン類などが好ましい。イミド化促進剤のpKBH+は、3、00以上5.50以下、好ましくは4.00以上5.30以下であることが好ましい。
【0019】
ポリアミック酸に対する脱水剤及びイミド化促進剤の添加量は、ポリアミック酸を構成する化学構造式に依存するが、脱水剤の量が、脱水剤/ポリアミック酸中のアミド基のモル比で3〜1.2となるよう用い、イミド化促進剤の量が、イミド化促進剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比で5〜2であるように用いることが好ましい。脱水剤の量が少ないとイミド化が十分に進行しない場合があり、逆に多すぎると分子量の低下を引き起こす場合がある。イミド化促進剤の量が少ないとイミド化が十分に進行する場合がある。逆に多すぎると着色する傾向にあるので、透明性が必要とされる用途に用いる場合には問題となる場合がある。
【0020】
(3)ポリイミド樹脂粉体の抽出
本発明者らは、ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法において、イミド化率の高いポリイミド樹脂の粉体の製造について検討を行った結果、ポリイミド樹脂を抽出する工程でイミド化率が低下することを見出した。さらに、抽出する際の条件を種々検討した結果、抽出に使用する溶媒の水分量が多いと、イミド化率が低下してしまう傾向にあることがわかり、最適な条件を見出した。ポリイミド樹脂粉体の抽出について以下に述べる。
【0021】
前記(1)および(2)のようにして得られたポリイミド樹脂を含む溶液から、ポリイミド樹脂を抽出する方法として、ポリイミド樹脂、脱水剤、イミド化促進剤を含有するポリイミド樹脂の溶液をポリイミド樹脂の貧溶媒中に、投入することでポリイミド樹脂を固形状態に抽出する方法を用いることができる。本発明のポリイミド樹脂粉体とは、粉末状、フレーク状、種々の形態を含む固形物状態のものであり、その平均粒径は、好ましくは5mm以下であり、さらには3mm以下、特には1mm以下が好ましい。
【0022】
本発明で用いられるポリイミド樹脂の貧溶媒は、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコールなど、該当するポリイミドの貧溶剤で、ポリアミック酸及びポリイミド樹脂の溶解溶媒として使用した有機溶剤と混和するものが用いられ、上記したアルコール類が好ましく用いられる。
【0023】
本発明においては、上記溶媒中の水分含有量が少ないことが重要である。水分含有量は500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。例えば、予め水分含有量が500ppm以下の溶媒を用いればよい。水分含有量が上記範囲より多いとイミド化率の低下が生じる傾向にある。 さらに工程での吸湿を申しするため、ポリイミド樹脂粉体を抽出する工程は相対湿度10%以下の乾燥環境下で行うことが重要である。例えば、乾燥空気、窒素等の乾燥環境下で作業を行えばよい。
【0024】
注入方法:ポリイミド樹脂の溶液を貧溶媒中に注入する際には、ポリアミック酸溶液の固形分濃度が15%以下、好ましくは10%以下の状態になるように希釈を行った後に、貧溶媒溶液中にポリイミド溶液が糸状になるように投入して注入する。ポリイミド樹脂溶液の投入直前の直径は1mm以下が好ましく、更に好ましくは直径が0.5mmになるように投入することが乾燥工程で完全に溶媒を除去する上で好ましい。貧溶媒量はポリイミド樹脂溶液の3倍以上、好ましくは10倍以上の量である。
【0025】
本願発明では樹脂の投入直後は樹脂が糸状になるので、できるだけ細かいフレーク状のポリイミド樹脂に成形するために、貧溶媒の溶液の回転数は1000回転/分以上の高速回転で攪拌することが好ましく、更に、攪拌翼は1段のパドル翼を用いることが好ましい。また、完全にポリイミド樹脂を投入すると貧溶媒中のポリイミド溶解用に用いている溶媒量が多量になり、イミド樹脂が溶解するので、投入後に貧溶媒を加えることが好ましい。その量は、樹脂を投入する際の貧溶媒の溶媒量と同量以上の溶媒を加えることが好ましく、更に好ましくは2倍量以上の溶媒を添加することが好ましい。大量の溶媒を添加することで貧溶媒中に溶解したイミド樹脂が再度沈殿すると共に、粉末状の樹脂となる。
【0026】
洗浄方法:固形のポリイミド樹脂を取り出して、アルコール等の貧溶媒中で洗浄する。この時の水分含有量も抽出時と同様、500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0027】
乾燥方法:本発明で凝固させフレーク状にした樹脂固形物の乾燥方法は、真空乾燥によってもよいし熱風乾燥によってもよい。乾燥温度は酸素存在下では120℃以上では着色が起こる場合がある。したがって乾燥は120℃以下で行うことが望ましい。真空中や不活性ガス雰囲気でも、120℃以下で行うことが望ましい。
【0028】
上記方法で作製したポリイミド樹脂の分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した際に重量平均分子量が10000以上500000以下であることが好ましく、さらに好ましくは、50000以上400000以下であることが好ましく、特に好ましくは80000以上300000以下であることがポリイミド樹脂を例えばフィルム体に表面に塗布する際に塗布斑が少なく、取扱が容易であることから好ましい。
【0029】
このようにして得られたポリイミド樹脂の粉体は、種々の有機溶剤に可溶であり、用途に応じて溶剤を選択してポリイミド樹脂溶液とし、加工することができる。また、実用上充分なイミド化率および分子量を有する。
ここで実用上十分なイミド化率、分子量とは適用用途により当業者が決定するものであるが、一般的にイミド化率95%以上、好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上であり、重量平均分子量は50000以上、好ましくは80000以上、さらに好ましくは100000以上である。
【0030】
また、本発明のポリイミド樹脂粉体の有機溶剤への溶解性は、特に上記溶剤の中で汎用性の高い、DMF及びMIBKについて溶解性を確認する。本発明における溶剤可溶性とは、溶解性の試験では、極性の高いN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及び揮発性のメチルイソブチルケトン(MIBK)へ固形分が20%になるように溶液中に分散して、完全にポリイミド樹脂を溶液中に分散させた後に、24時間23℃に保たれた恒温室内に置き、上澄み液を取り出して内部の固形分濃度の測定を行う。
【0031】
【数1】
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
本実施例では、反応容器としてステンレス製セパラブルフラスコを備え、該セパラブルフラスコ内の攪拌装置として2枚のパドル翼を備え、冷却装置として20.9kJ/minの冷却能力を持つ装置を備えた反応装置を用いてポリアミック酸を製造した。重合反応中は、水分の混入を防ぐ為に、シリカゲル中を通過させて脱水を行った窒素ガスを0.05L/minで流して重合反応を行った。
(1)ポリアミック酸溶液の製造
上記セパラブルフラスコに、重合用溶媒としてN,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)223.5gを仕込み、これに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)40.0g(0.125モル)を溶解する。この溶液に、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(6FDA)55.5(0.125モル)gを添加・攪拌して完全に溶解させた。完全に溶解した後、攪拌して重合粘度を200Pa・sまで上昇させた。ポリアミック酸溶液の粘度は、23℃に保温された水浴中で1時間保温し、その時の粘度をB型粘度計で、ローターはNo.7を回転数は4rpmで測定を行った。なお、この反応溶液における芳香族ジアミン化合物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、全反応液に対して30重量%となっている。
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
上記溶液にDMFを加え固形分濃度を15重量%とし、イミド化促進剤としてピリジン(pKBH+;5.17)を30g(イミド化促進剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比=3)添加して、完全に分散させる。分散させた溶液中に無水酢酸を1分間に1gの速度で15.3g(脱水剤/ポリアミック酸中アミド基のモル比=1.2)を添加してさらに30分間攪拌した。攪拌後に、内部温度を100℃に上昇させて5時間加熱攪拌を行った。
(3)ポリイミド樹脂の抽出
ポリイミド溶液を窒素雰囲気下で、窒素置換等の脱湿処理を施した5Lのメタノール(カールフィッシャー測定法にて測定した水分含有量100ppm)中に垂らして抽出を行った。抽出時、メタノールを1500回転以上に回転した攪拌羽で高速に攪拌しながら抽出を行った。溶液中で、ポリイミド樹脂は、繊維状になる場合もあるが、攪拌を続けることで溶液中に一度繊維状になったものが分解されて粒状に分断される。この作業は、窒素置換することにより相対湿度ほぼ0%で行った。
分断された樹脂固形分溶液中に、更に、5Lのメタノールを添加して完全に固形分を抽出して取り出した。固形分をさらに4回洗浄を行った後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
【0034】
(イミド化率)NMR法にて評価した。芳香族プロトンの積分値をA,アミドのプロトン(11ppm)の積分値をBとし、以下の計算式にて算出した。
イミド化率(モル%)=((A/12−B/2)/(A/12))×100
【0035】
【表1】
(実施例2)
(1)ポリアミック酸溶液の製造
実施例1と同様にして製造した。
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
実施例1と同様にして製造した。
(3)ポリイミド樹脂の抽出
ポリイミド溶液を窒素雰囲気下で、5Lのイソプロパノール(IPA;水分含量100ppm)中に垂らして抽出を行った。抽出時、IPAを1500回転以上に回転した攪拌羽で高速に攪拌しながら抽出を行った。溶液中で、ポリイミド樹脂は、繊維状になる場合もあるが、攪拌を続けることで溶液中に一度繊維状になったものが分解されて粒状に分断される。この作業は、窒素置換することにより相対湿度ほぼ0%で行った。
分断された樹脂固形分溶液中に、更に、5LのIPAを添加して完全に固形分を抽出して取り出した。固形分をさらに4回洗浄を行った後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
【0036】
(評価方法)
実施例1と同様の方法でポリイミド樹脂のイミド化率評価を行った、評価結果を表2に記載する。
【0037】
【表2】
(比較例1)
(1)ポリアミック酸溶液の製造
実施例1同様。
(2)ポリイミド樹脂へのイミド化
上記溶液に、イミド化触媒として4−ピコリン(pKBH+;6.06)を30g(触媒モル数/ポリアミック酸中アミド基モル数=3)添加して、完全に分散させる。分散させた溶液中に無水酢酸を1分間に1gの速度で15.3g(脱水剤モル数/ポリアミック酸中アミド基モル数=1.2)を添加して30分間攪拌した。攪拌後に、内部温度を100℃に上昇させて5時間加熱攪拌を行った。
(3)ポリイミド樹脂の抽出
ポリイミド溶液を窒素雰囲気下で、5Lのメタノール(水分含有量1000ppm)中に垂らして抽出を行った。抽出時、メタノールを1500回転以上に回転した攪拌羽で高速に攪拌しながら抽出を行った。溶液中で、ポリイミド樹脂は、繊維状になる場合もあるが、攪拌を続けることで溶液中に一度繊維状になったものが分解されて粒状に分断される。
分断された樹脂固形分溶液中に、更に、5Lのメタノールを添加して完全に固形分を抽出して取り出した。固形分をさらに4回洗浄を行った後に、真空乾燥装置で100℃に加熱乾燥して、ポリイミド樹脂として取り出した。
(評価方法)
実施例1と同様の方法でポリイミド樹脂の評価を行った、評価結果を表1に記載する。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、前駆体であるポリアミック酸をイミド化促進剤及び脱水剤を用い化学イミド化させ、そのポリイミド溶液からポリイミド粉体を得るために造粒を行う際、造粒溶媒中の水分量を500ppm以下にすることにより実用上十分に高いイミド化率のポリイミド粉体を得ることが出来る。
Claims (2)
- ポリアミック酸を含む溶液をイミド化して可溶性ポリイミド樹脂を含む溶液を得、該溶液からポリイミド樹脂の粉体を抽出するポリイミド樹脂粉体の製造方法であって、
前記イミド化はイミド化促進剤を用いて行い、
前記ポリイミド樹脂の粉体を抽出する方法が、水分量が500ppm以下である溶媒中にポリイミド樹脂を含む溶液を投入する方法であることを特徴とするポリイミド粉体の製造方法。 - 前記ポリイミド樹脂の粉体の抽出を、相対湿度10%以下の乾燥環境下で行うことを特徴とする請求項1記載のポリイミド粉体の製造方法。
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