JP2004256395A - 白血球遊走能調節剤 - Google Patents
白血球遊走能調節剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004256395A JP2004256395A JP2003045510A JP2003045510A JP2004256395A JP 2004256395 A JP2004256395 A JP 2004256395A JP 2003045510 A JP2003045510 A JP 2003045510A JP 2003045510 A JP2003045510 A JP 2003045510A JP 2004256395 A JP2004256395 A JP 2004256395A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lactoferrin
- leukocyte
- regulator
- leukocyte migration
- manufactured
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
Abstract
【解決手段】ラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする白血球遊走能調節剤であって、該白血球がインフルエンザウイルス感染呼吸器に遊走される白血球であること、並びに組織傷害、気管支炎、中耳炎、肺炎の予防及び/又は治療に効果を有すること、を望ましい態様としている。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする白血球遊走能調節剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、インフルエンザウイルスに感染した宿主の気管や肺等の呼吸器において誘導される白血球の遊走能を抑制する調節剤であって、インフルエンザウイルス感染症を発症した宿主の症状緩和効果、及びインフルエンザウイルス感染症によって引き起こされる合併症とされる組織傷害、気管支炎、中耳炎、肺炎などの予防及び/又は治療に効果を有する白血球遊走能調節剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ウイルス感染の宿主免疫機構に及ぼす影響が、ウイルス感染症における症状の重篤化と密接に関係していることが明らかにされてきた。例えば、インフルエンザウイルスを感染させたマウスでは、好中球、マクロファージ、リンパ球などの白血球が気管や肺等の呼吸器に過剰に遊走して組織傷害を引き起こし、重篤化の大きな要因となることが明らかにされている(例えば、非特許文献1)。ウイルス感染症には、アシクロビル、アジドチミジン、リバビリン、インターフェロンをはじめとする抗ウイルス剤が使用されているが、これらの薬剤はその副作用と耐性ウイルス出現が臨床上の問題となっている。これらの抗ウイルス剤による根本治療に加えて、ウイルス感染防御能が無い薬剤も症状緩和の目的で対症療法的に使用されている。例えば、C型慢性肝炎ウイルス感染患者には、抗ウイルス作用の無いグリチルリチンが肝炎の症状緩和の目的で投与されている。
【0003】
インフルエンザ感染症は、感染した呼吸器へ白血球等の遊走が活発となって組織傷害を引き起こし、中耳炎、気管支炎、インフルエンザ肺炎、インフルエンザ脳炎、インフルエンザ心筋炎、インフルエンザ筋炎等の合併症を併発することがあり、重篤化した場合は死に至ることがある。特に小児や高齢者などのハイリスク群では、それらの合併症による重篤化を防ぐための対策が重要な課題であると考えられている(例えば、非特許文献2)。インフルエンザウイルスを感染させたマウスでは、漢方の有効成分であるイソフェルラ酸の投与によって、抗ウイルス効果は観察されないものの、肺胞および気管内腔への白血球の遊走が抑制され、組織傷害の抑制などの症状緩和作用が認められている(例えば、非特許文献1又は3)。さらに、生体における抗酸化酵素であるヘムオキシゲナーゼを遺伝子導入により呼吸器で発現させたマウスでは、普通のマウスと比較して、肺に検出されるウイルス量に変化は観察されないものの、肺胞および気管内腔への白血球の遊走が抑制され、組織傷害が抑制されるなどの症状緩和作用が認められている(例えば、非特許文献4)。
【0004】
ラクトフェリンは、哺乳類の乳汁、唾液、涙液、気道粘液等の分泌液に含有される鉄結合性糖タンパク質であり(例えば、非特許文献5)、工業的には牛乳から大量スケールで精製される(例えば、特許文献1)。ラクトフェリンには、抗菌性、抗ウイルス活性、腸管からの鉄吸収調節作用、細胞増殖作用、免疫調節作用等の多様な生物機能が報告されており(例えば、非特許文献5)、すでにインフルエンザウイルス感染防御剤(例えば、特許文献2)、病原性細菌及びウイルス感染防御剤(例えば、特許文献3)、大腸菌付着防止剤(例えば、特許文献4)等に関する技術が開示されている。しかしながら、ラクトフェリンがウイルス感染に伴う組織傷害や炎症を引き起こす可能性がある白血球の遊走を調節する効果は一切報告されていなかった。
【0005】
【特許文献1】
特公平6−13560号公報
【特許文献2】
特許第3061376号公報
【特許文献3】
特開平11−286452号公報
【特許文献4】
特許第2832517号公報
【0006】
【非特許文献1】
ジャーナル・オブ・バイロロジー(Journal of Virology)、アメリカ、第74巻、2000年、p.2472−2476
【非特許文献2】
日本臨床、第58巻、2000年、p.2249−2281
【非特許文献3】
メディエーター・オブ・インフラメーション(Mediators of Inflammation)、イギリス、第10巻、2001年、p.93−96
【非特許文献4】
ジーン・セラピー(Gene Therapy)、イギリス、第8巻、2001年、p.1499−1507
【非特許文献5】
アニュアル・レビュー・オブ・ニュートリション(Annual Review of Nutrition)、アメリカ、第15巻、1995年、p.93−110
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、前記特許文献2又は特許文献3には、ラクトフェリンによるインフルエンザウイルスの感染防御及び感染症の治療効果が開示されていたが、感染症を発症した宿主の呼吸器等において誘導される白血球遊走を調節する効果は示されていなかった。また、感染症に伴って白血球が遊走された呼吸器における炎症反応や組織傷害を予防又は改善する効果についても開示されていなかった。
【0008】
白血球は本来、外から侵入した異物から体を守るという免疫機能の主役を担い、空気中の細菌やウイルス等の異物が体内に侵入すると、これを認識し、すばやく攻撃して、抗体(異物をキャッチするもの)を作り、体の外に排除しようとする機能を有しており、その際に放出されたメディエーターによって炎症が起こる。本発明者らは、感染症などの際に、白血球が活性化して異常に反応したり、過剰な炎症反応が起きると重篤化して合併症を併発することに注目し、その原因の一つとして考えられる過剰な白血球遊走をコントロールすることが可能な手段を鋭意検討してきた結果、乳中に含まれる蛋白質であるラクトフェリンに白血球遊走能を抑制する効果が存在することを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、インフルエンザ等のウイルスによる感染症によって引き起こされる組織傷害や炎症等の重症合併症の原因と考えられる過剰の白血球遊走を抑制する効果を有する白血球遊走能調節剤を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の態様は、ラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする白血球遊走能調節剤であって、該白血球がインフルエンザウイルス感染呼吸器に遊走される白血球であること、並びに組織傷害、気管支炎、中耳炎、肺炎の予防及び/又は治療に効果を有すること、を望ましい態様としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施態様に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0012】
本発明に使用されるラクトフェリンは、ウシ、ヒト、ヤギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類の初乳、移行乳、常乳、末期乳、またはこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等から常法(例えば、イオンクロマトグラフィー等)によって分離されたラクトフェリンである。より簡便には、市販のラクトフェリン(例えば森永乳業社製等)を使用することができる。また、遺伝子操作によって微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等で生産した各種ラクトフェリンを使用してもよい。
【0013】
本発明における白血球遊走能調節効果とは、白血球の遊走能を抑制あるいは促進することで、宿主の生理機能を正常に維持する効果を意味する。本発明のラクトフェリンにおいては、特に白血球の遊走能を抑制する効果を有し、これに伴って、インフルエンザウイルス感染症を発症した宿主の症状緩和効果、及びインフルエンザウイルス感染症によって引き起こされる合併症とされる組織傷害、気管支炎、中耳炎、肺炎などの予防及び/又は治療において極めて有効であると考えられる。
【0014】
ラクトフェリンは、白血球遊走能を調節する作用を有しているので、白血球遊走能調節剤(以下、「本発明の調節剤」という場合がある。)の有効成分として使用することができる。ここで、「有効成分」とは、白血球遊走能を調節する作用を有する成分を意味し、ラクトフェリンが本発明の調節剤の主成分である必要はなく、また、本発明の調節剤にはラクトフェリン以外に白血球遊走能を調節する作用を有する成分が含まれていてもよい。
【0015】
本発明において、白血球遊走能調節剤とは、インフルエンザ等のウイルスによる感染症によって引き起こされる気管や肺等の呼吸器における組織傷害や炎症等の重症合併症の原因と考えられる過剰の白血球遊走を抑制する効果を有し、白血球の遊走能を調節することによって、インフルエンザウイルス感染症などによって併発される各種重症合併症や炎症性疾患、組織傷害等の症状緩和作用を有する効果も包含するが、過剰の白血球遊走に起因する疾患に対する予防及び/又は治療の使用に限定されるものではない。本発明の白血球遊走能調節剤は、その有効成分が乳タンパク質等の食品素材に含まれるものであるので、ヒトに対する安全性が高く、飲食品に含有させた組成物として日常的に経口摂取することによってインフルエンザウイルスなどの感染症によって引き起こされる重症合併症等に対する予防及び/又は治療に効果が発揮される特徴を併せ持つ。
【0016】
本発明の白血球遊走能調節剤の形態は特に限定されるものではなく、本発明の形態としては、例えば、医薬組成物が挙げられる。本発明の白血球遊走能調節剤を摂取する形態としては、調製粉乳、経腸栄養食、機能性食品等の各種飲食品組成物に配合して摂取する形態が挙げられる。
【0017】
本発明の調節剤は、ラクトフェリンそれ自体であってもよいし、ラクトフェリン以外の成分を含有していてもよい。ラクトフェリン以外の成分は、摂取の形態に応じて適宜選択できる。例えば、ラクトフェリン粉末やラクトフェリン水溶液(シロップ等)等を本発明の白血球遊走能調節剤として配合して各種飲食品を調製してもよい。
【0018】
医薬組成物は、例えば、ラクトフェリンを、薬学的に許容され得る賦形剤その他任意の添加剤を用いて製剤化することにより製造でき、製剤化したラクトフェリンは、インフルエンザウイルスなどの感染症によって引き起こされる重症合併症等に対する予防及び/又は治療剤として使用できる。製剤化する場合、製剤中のラクトフェリンの含有量は、通常0.001〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%である。製剤化にあたっては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。
【0019】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられ、結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マグロゴール等が挙げられ、崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられ、滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられ、安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられ、矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられ、注射剤用溶剤としては、例えば、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
【0020】
医薬組成物の投与経路としては、例えば、経口投与、経腸投与等の非経口投与が挙げられ、医薬組成物の投与剤形としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等が挙げられる。また、医薬組成物は、飲食品、飼料等に配合して投与することもできる。投与投与量及び投与回数は、目的とする作用効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、投与量は、成人1日当たり通常10mg〜10gの範囲から適宜選択でき、投与回数は、1日1回から数回の範囲から適宜選択できる。
【0021】
飲食品組成物に配合して摂取する形態としては、例えば、ラクトフェリン粉末やラクトフェリン水溶液(シロップ等)等を本発明の白血球遊走能調節剤として配合した清涼飲料、乳飲料等又はこれらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末;加工乳、発酵乳等の乳製品;経腸栄養食;機能性食品等が挙げられる。
【0022】
飲食品組成物の形状としては、タブレット状のサプリメントを例示することができる。これによって、一日当りの食事量及び摂取カロリーを他の食品の摂取量を加味した上でコントロールする必要が無く、また、有効成分の摂取量を正確に把握できる。
【0023】
本発明において、ラクトフェリンによる白血球遊走能調節作用を評価するために、以下の報告、『ジャーナル・オブ・バイロロジー(Journal of Virology)、アメリカ、第74巻、2000年、p.2472−2476』、及び『ジーン・セラピー(Gene Therapy)、イギリス、第8巻、2001年、p.1499−1507』に基づき、インフルエンザ感染モデルマウスによる、炎症細胞数抑制作用、及び肺コンソリデーション(肺炎症の重症度)として検討した。詳細は、後記する試験例の方法に従った。
【0024】
次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。
[試験例1]
本試験は、インフルエンザウイルス感染症を発症した宿主の呼吸器における白血球遊走、及び組織傷害に対するラクトフェリンの抑制作用を調べるために行った。
【0025】
(1)試料の調製
ラクトフェリン(森永乳業社製)を、精製水に12.5%の濃度に溶解して試験試料とした。供試ウイルスとして、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)株を用いた。
【0026】
(2)試験方法
7週齢のBALB/C雌性マウス(日本エス・エル・シー社から購入)12匹を、糞食防止ネットを設置したケージに入れ、標準固形飼料(日本クレア社製)と飲水で一週間馴化飼育した。次に、マウスを6匹ずつ2群に分け、そのうち試験群としては前記試験試料0.5mlをゾンデで経口投与した。またもう1群には対照群として精製水0.5mlをゾンデで経口投与した。これらの経口投与は、感染1日前から開始し、感染5日後まで一日一回ずつ7日間行った。感染日には、すべてのマウスに麻酔下でインフルエンザウイルス660PFU(プラーク形成単位)を含むリン酸緩衝液10μlを経鼻的に接種した。感染6日後に解剖を行い、気道に注射針を差し込み、1mlの血清無添加イーグルMEM培地(日水製薬社製)を注射器で注入した後、同じ注射器内に液を回収した。同様の注入と回収を、さらに2回、合計3回繰り返した。このようにして採取した気管支肺胞洗浄液を1000回転で遠心分離した。この気管支肺胞洗浄液の上清中のウイルス量を定法〔ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイロロジー(Journal of General Virology)、イギリス、第71巻、1990年、p.2149−2155〕によって測定した。さらに、気管支肺胞洗浄液の遠心分離の残さに回収された白血球数を細胞数測定装置(日本光電社製)を用いて測定した。さらに、気管支肺胞洗浄液を回収した後のマウスから肺を摘出し、インフルエンザウイルス感染症による組織傷害の指標であるコンソリデーションを観察した。肺コンソリデーションの重症度は、〔ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディスン(Journal of Experimental Medicine)、アメリカ、第95巻、1952年、p.135−145〕を参考にして、0(コンソリデーションなし)から10(重篤なコンソリデーション)にスコア化した。これらの測定値は、一群6匹の平均値として表示した。
【0027】
(3)試験結果
本試験の結果は表1に示すとおりである。表1は、気管支肺胞洗浄液1ml当りの白血球数及び肺コンソリデーションを表す。表1から明らかなとおり、気管支肺胞洗浄液1ml当りの白血球数は、対照群で9.6×105であるのに対し、ラクトフェリンを投与した試験群では4.8×105に抑制されたことから、ラクトフェリンによるインフルエンザウイルス感染症に対する白血球遊走調節作用が確認された。また、肺コンソリデーションのスコアは、対照群で5.0であるのに対し、ラクトフェリンを投与した試験群では3.8に抑制されたことから、ラクトフェリンによって、インフルエンザウイルス感染症に対する組織傷害抑制作用が確認された。一方、これとは別に気管支肺胞洗浄液の上清中のウイルス量を計測したところ、対照群と試験群の間でウイルス量の差は観察されなかった。これらの結果から、ラクトフェリンは、インフルエンザウイルス感染症に対して抗ウイルス効果を示さないものの、白血球遊走調節作用および組織傷害抑制作用を示すことが明らかになった。
【0028】
【表1】
【0029】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
実施例1
次の組成の白血球遊走能調節効果を有する注射剤を常法により製造した。
ラクトフェリン(森永乳業社製) 2.0(%)
アクチノマイシンD(シグマ社製) 0.005
塩化ナトリウム(和光純薬社製) 0.9
マンニトール(関東化学社製) 1.0
注射用蒸留水(大塚製薬社製) 96.095
【0031】
実施例2
乳糖(メグレ社製)600g、トウモロコシデンプン(日清製粉社製)400g、結晶セルロース(和光純薬工業社製)400g及びラクトフェリン(森永乳業社製)600gを50メッシュのふるい(ヤマト科学社製)により篩い分けし、厚さ0.5mmのポリエチレン製の袋にとり、転倒混合し、全自動カプセル充填機(セセレ・ペディーニ社製。プレス式)を用い、前記粉末をカプセル(日本エランコ社製。1号ゼラチンカプセル、Op. Yellow No.6 Body、空重量75mg)に内容量275mgで充填し、白血球遊走調節効果を有するカプセル剤7000個を得た。
【0032】
実施例3
ホエー蛋白酵素分解物(森永乳業社製)10.8kg、デキストリン(昭和産業社製)36kg、および少量の水溶性ビタミンとミネラルを水200kgに溶解し、水相をタンク内に調製した。これとは別に、大豆サラダ油(太陽油脂社製)3kg、パーム油(太陽油脂社製)8.5kg、サフラワー油(太陽油脂社製)2.5kg、レシチン(味の素社製)0.2kg、脂肪酸モノグリセリド(花王社製)0.2kg、及び少量の脂溶性ビタミンを混合溶解し、油相を調製した。タンク内の水相に油相を添加し、攪拌して混合した後、70℃に加温し、更に、ホモゲナイザーにより14.7MPaの圧力で均質化した。次いで、90℃で10分間殺菌した後、濃縮し、噴霧乾燥して、中間製品粉末約59kgを調製した。この中間製品粉末50kgに、蔗糖(ホクレン社製)6.8kg、アミノ酸混合粉末(味の素社製)167g、およびラクトフェリン(森永乳業社製)60gを添加し、均一に混合して、白血球遊走能調節剤であるラクトフェリンを含有する経腸栄養食粉末約56kgを製造した。
【0033】
実施例4
ラクトフェリン(森永乳業社製)150g、ラクチュロース粉末(森永乳業社製)100g、マルツデキストリン(松谷化学工業社製)635g、脱脂粉乳(森永乳業社製)85g、ステビア甘味料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)1g、ヨーグルト・フレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製)5g、グリセリン脂肪酸エステル製剤(理研ビタミン社製)24gの各粉末を添加して均一に混合し、打錠機(畑鉄鋼所社製)を使用して、錠剤1錠当り0.5gとし、12錠/分の打錠速度、9.8KPaの圧力で前記混合粉末を連続的に打錠し、白血球遊走能調節剤であるラクトフェリンを含有するタブレット1800錠(約900g)を製造した。
【0034】
【発明の効果】
以上詳記したとおり、本発明はラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする白血球遊走能調節剤に関するものであり、本発明により奏される効果は次のとおりである。
(1)インフルエンザウイルス感染症を発症した宿主の呼吸器において誘導される白血球遊走を抑制することができる。
(2)インフルエンザウイルス感染症によって引き起こされる組織傷害、気管支炎、中耳炎、肺炎等の合併症の予防及び/又は治療に効果を有する。
(3)乳等の原料から安価で大量に製造することができる。
(4)ヒトに対する安全性が高く、日常的に摂取することが可能である。
Claims (3)
- ラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする白血球遊走能調節剤。
- 白血球が、インフルエンザウイルス感染呼吸器に遊走される白血球である請求項1に記載の白血球遊走能調節剤。
- 組織傷害、気管支炎、中耳炎、肺炎の予防及び/又は治療に効果を有する請求項1又は請求項2に記載の白血球遊走能調節剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003045510A JP2004256395A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 白血球遊走能調節剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003045510A JP2004256395A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 白血球遊走能調節剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004256395A true JP2004256395A (ja) | 2004-09-16 |
JP2004256395A5 JP2004256395A5 (ja) | 2005-07-14 |
Family
ID=33112290
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003045510A Pending JP2004256395A (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 白血球遊走能調節剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004256395A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2014168253A1 (ja) * | 2013-04-09 | 2017-02-16 | 国立大学法人 東京大学 | 白血球の細胞外トラップ形成の阻害剤 |
-
2003
- 2003-02-24 JP JP2003045510A patent/JP2004256395A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2014168253A1 (ja) * | 2013-04-09 | 2017-02-16 | 国立大学法人 東京大学 | 白血球の細胞外トラップ形成の阻害剤 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5715117B2 (ja) | 摂食障害治療剤 | |
WO2020009135A1 (ja) | インフルエンザの重症化を抑制するための抗インフルエンザウイルス剤 | |
US20110262421A1 (en) | Pharmaceutical composition, food or drink, or feed for intestinal disease | |
US7731955B2 (en) | Interleukin-6 suppressive agent | |
US11141382B2 (en) | Sintered nanoparticles and use of the same against a virus | |
JP2010111646A (ja) | 潰瘍性大腸炎治療剤 | |
JP4087249B2 (ja) | B型慢性肝炎治療剤 | |
JP2004256395A (ja) | 白血球遊走能調節剤 | |
JP2004083526A (ja) | 抗ウイルス組成物 | |
WO2015062167A1 (zh) | Metrnl蛋白在制备降血脂降血糖药物中的应用 | |
WO2021217702A1 (zh) | 一种预防或治疗covid-19新冠肺炎的药物、食物及其应用 | |
Singh et al. | Antiviral properties of milk proteins and peptides against SARS-COV-2: A review | |
US11020440B2 (en) | Probiotic for the treatment of psoriasis | |
TW202417462A (zh) | 免疫調節用組成物 | |
JP2007055979A (ja) | ロタウイルス感染による下痢からの回復促進剤 | |
JPWO2019168149A1 (ja) | 認知機能を改善するペプチド | |
JP2011201842A (ja) | 腸由来細胞の増殖促進剤 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041110 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041110 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080122 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20080218 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080313 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080909 |