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JP2004244766A - 歩留りの改善された製紙原料組成物 - Google Patents

歩留りの改善された製紙原料組成物 Download PDF

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JP2004244766A JP2003037450A JP2003037450A JP2004244766A JP 2004244766 A JP2004244766 A JP 2004244766A JP 2003037450 A JP2003037450 A JP 2003037450A JP 2003037450 A JP2003037450 A JP 2003037450A JP 2004244766 A JP2004244766 A JP 2004244766A
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Abstract

【課題】従来の製紙原料組成物がもつ欠点、特に歩留り性及びろ水性を向上させることを目的とする。
【解決手段】パルプ成分を含有する水性スラリーに対し、カチオン性ポリマーを含有するカチオン系凝結剤及びアニオン性補助剤とを配合した製紙原料組成物とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な製紙原料組成物、さらに詳しくは、中性域又はアルカリ性域での紙の製造に用い、得られる紙の品質を保持又は品質を向上させて併用する慣用の製紙用助剤の配合量を少なくすることができ、生産コストの削減及び抄紙マシンの汚れの低減化、さらには地球環境に対する影響の低減化などを図ることができる上に、ろ水性、歩留り性の良好な新規な製紙原料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
中性域又はアルカリ性域での紙の製造に際しては、酸性域での紙の製造方法に比べ、得られる紙の経時変化が少なく、白色度が向上する上に、抄紙機の腐蝕率が低くなるという利点があるため、最近は酸性抄紙法に代わり、一般的に採用されている。
【0003】
ところで、酸性域での紙の製造に際しては、通常、紙力増強剤やサイズ剤の定着性及びパルプや顔料などの凝集性を向上させ、さらにサイズ効果を増大させるために硫酸バンドを用いているが、中性域又はアルカリ性域での紙の製造に際しても、同様の目的で硫酸バンドが使用されている。
【0004】
しかしながら、この硫酸バンドは酸性域ではその効力を発揮するのに必要な正電荷が、十分に大きく保たれるのに対し、中性域やアルカリ性域では小さくなるため、その効力が酸性域におけるよりも低下するのを免れない(非特許文献1参照)。
【0005】
そして、この硫酸バンドの効力低下は、パルプ繊維の表面電荷中和能力が低下することを意味し、これにより紙力増強剤、サイズ剤、歩留り剤、ろ水剤などの製紙用助剤の定着率低下が起こる。その結果、製紙原料の歩留り性やろ水性、紙のサイズ度、紙力の低下を生じ、それを補うためさらに製紙用助剤が増量されるが、このように製紙用助剤が過剰になると、抄紙マシンの汚染や断紙などの原因になり、結果的に生産性が低下する。
【0006】
一方、抄紙マシンの汚染の重要な原因の1つにピッチ汚れがある。このピッチ汚れは、木材パルプからの脂肪酸、樹脂酸、精油や、古紙からのホットメルト樹脂、印刷インクや製紙工程で用いられる消泡剤、耐水化剤、サイズ剤のような添加剤に起因することが知られている。
【0007】
そして、近年廃棄物再利用の面から古紙の使用量が増加するとともに、その中の異物、例えばパルプ由来のピッチ成分、コートブロークからの塗工カラー成分などによる汚れが原因となって、抄紙速度、歩留り、紙質などの低下や生産能率の低下が問題とされている。
【0008】
このような問題を解決するためにも硫酸バンドの使用量が重要な意味を有することになるが、中性域やアルカリ性域では前記したように硫酸バンドの効果が低下し、その結果、抄紙工程に悪影響を与える弊害物質の捕獲性が低下する。したがって、これを補うため硫酸バンドを過剰に添加する必要があるが、この硫酸バンドが凝集力を失った水酸化アルミニウムの凝集体を形成し、抄紙系の配管やフローチェストに付着して汚染するなど、好ましくない事態を招来する。
【0009】
このような問題に対処するために、これまで(1)抄紙の際に多価第四級アンモニウム塩を含むポリマーを添加したのち、アニオン性サイズ剤を添加し、サイズ度を向上させる方法(特許文献1参照)、(2)ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウム塩の共重合体を製紙原料スラリー中に添加することにより、ロジン系サイズ剤の定着性を改善する方法(特許文献2参照)などが提案されている。
【0010】
しかしながら、前記(1)及び(2)の方法においては、定着剤を添加した後、せん断ステップがあるため、凝集したパルプ繊維やその他の成分(重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、白土、レーキ、合成プラスチック顔料などの填料など)がせん断により崩壊してしまうため、歩留り性及びろ水性が低下してしまうという問題があった。
【0011】
【非特許文献1】
紙パ技協誌,第56巻,第8号,第58〜65ページ
【特許文献1】
特開昭54−96104号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】
特開平9−188994号公報(特許請求の範囲その他)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、このような従来の製紙原料組成物がもつ欠点、特に歩留り性及びろ水性を向上させることを目的としてなされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特に中性域又はアルカリ性域における製紙に用いる製紙原料組成物について、さらに研究を重ねた結果、前記したカチオン系凝結剤とともにアニオン系補助剤を用いることにより、製紙の際のろ水性及び歩留り性を向上させうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)パルプ成分を含有する水性スラリーに対し、カチオン性ポリマーを含有するカチオン系凝結剤及びアニオン性補助剤とを配合したことを特徴とする製紙原料組成物、
(2)パルプ成分を0.5〜5.0質量%濃度で含有する水性スラリーに対し、粘度平均分子量少なくとも200000のカチオン性ポリマーを含有するカチオン系凝結剤及びアニオン系補助剤とを配合した前記(1)記載の製紙原料組成物、
(3)該カチオン系凝結剤が粘度平均分子量少なくとも200000のカチオン性ポリマー及びカチオン性モノマーからなる前記(1)又は(2)記載の製紙原料組成物、
(4)カチオン系凝結剤中のカチオン性ポリマーとカチオン性モノマーの割合が質量比で95:5ないし50:50の範囲にある前記(3)記載の製紙原料組成物、
(5)カチオン系凝結剤の含有量がパルプ成分乾燥質量に基づき、0.005〜0.1質量%の範囲にある前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の製紙原料組成物、
(6)カチオン性ポリマーが、第四級アンモニウム塩残基含有カチオン性モノマーとアクリルアミドとの共重合体であり、かつカチオン性モノマー単位の含有割合が5モル%以上70モル%未満の範囲にある前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の製紙原料組成物、
(7)アニオン系補助剤の含有量が組成物中の乾燥固形分の質量に基づき、0.005〜0.5質量%の範囲にある前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の製紙原料組成物、及び
(8)アニオン系補助剤が、ベントナイト、アニオン性シリカゲル、リグニンスルホン酸アルカリ塩、アニオン性コロイダルシリカ及びアニオン性ポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の製紙原料組成物、
を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるカチオン系凝結剤は、カチオン性ポリマーを含有するものである。このカチオン性ポリマーとしては、好ましくは、粘度平均分子量200000以上のものが用いられる。ここでいう粘度平均分子量とは、極限粘度法により測定したポリビニルアルコール換算の粘度平均分子量である。この粘度平均分子量が200000より小さいものを用いると、パルプ繊維間での架橋的作用が十分に発揮されにくいため、歩留り向上効果が得られない上、製紙用助剤の配合割合を減少させる効果が得られない。歩留り向上効果及び製紙用助剤の使用量削減効果などの点で、このカチオン性ポリマーの好ましい粘度平均分子量は、1000000以上、より好ましくは1500000以上である。また、粘度平均分子量の上限については特に制限はないが、製造効率や取り扱い性などを考慮すると20000000程度である。特に、歩留り向上効果、製紙用助剤の使用量削減効果及び取り扱い性などの面から、該粘度平均分子量は1500000〜5000000の範囲が好適である。
【0016】
このカチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーを構成単位として含む単独重合体又は共重合体が好ましい。このようなカチオン性ポリマーを構成する第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマーとしては、例えば2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルベンジルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルトリエチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサルフェート、2‐(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムブロミド、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルメチルジエチルアンモニウムクロリド、3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
これらの中でも、カチオン量と分子量とを所望の値に調節しやすいという点で、特にジアリルジメチルアンモニウムクロリドを用いた単独重合体又は共重合体が好ましい。
【0017】
このカチオン性ポリマーは前記カチオン性モノマーとこれと共重合可能な単量体、例えばエチレン性不飽和化合物との共重合体であってもよい。この共重合体を構成するエチレン性不飽和化合物としては、例えばエチレン性不飽和モノカルボン酸類やジカルボン酸類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、芳香族ビニル化合物、不飽和アミド化合物及び不飽和ニトリル化合物などが挙げられる。このようなものの例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2‐メチルブチル、(メタ)アクリル酸tert‐ブチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシヘキシル、スチレン、α‐メチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。中でも入手が容易で、重合が容易に行われるという点で、(メタ)アクリルアミド、特にアクリルアミドが好ましい。なお、(メタ)アクリルという用語は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0018】
カチオン性ポリマーが共重合体の場合、カチオン性ポリマー中の第四級アンモニウム塩残基を有するカチオン性モノマー単位の含有量は、5モル%以上40モル%未満の範囲が好ましい。このカチオン性モノマー単位の含有量が5モル%未満では、所望のカチオン量が得られにくいし、40モル%以上ではパルプや填料の歩留りを向上させにくい上、使用する慣用の製紙用助剤の使用量も削減しにくい。
【0019】
さらに、このカチオン性ポリマーは、カチオン量が1.3〜5.3meq/gの範囲にあることが望ましい。ここでいうカチオン量とは、カチオン性ポリマー1g中に含まれるカチオン性モノマーの当量を意味し、2.5mol/mのポリビニル硫酸カリウムを用いたコロイド滴定法により求められる。カチオン量が1.3meq/gよりも小さいと、製紙原料スラリーの負電荷、特にパルプの表面電荷を十分に中和することができないため、ろ水性、歩留り性などの抄紙物性が低下する原因となる。また、5.3meq/gより大きいと歩留り性が低くなるおそれがある。ろ水性、歩留り性及びサイズ度などを考慮すると、好ましいカチオン量は2.2〜4.5meq/gの範囲である。
【0020】
このカチオン性ポリマーの重合方法としては、特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、固体重合法など任意の方法を用いることができる。この際用いる重合開始剤としては、水溶性のアゾ化合物や過酸化物、例えば過酸化水素、2,2´‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)二塩酸塩、水溶性無機酸化物、または水溶性還元剤と水溶性無機酸化物や有機過酸化物との組合せなどがある。上記水溶性無機酸化物の例としては、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。また、水溶性還元剤の例としては、水に可溶な通常のラジカル酸化還元重合触媒成分として用いられる還元剤、例えばエチレンジアミン四酢酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩、あるいはこれらと鉄、銅、クロムなどの重金属との錯化合物、スルフィン酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩、L‐アスコルビン酸又はそのナトリウム塩やカリウム塩やカルシウム塩、ピロリン酸第一鉄、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0021】
一方、水溶性有機過酸化物としては、例えばクメンヒドロペルオキシド、p‐サイメンヒドロペルオキシド、tert‐ブチルイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p‐メンタンヒドロペルオキシド、デカリンヒドロペルオキシド、tert‐アミルヒドロペルオキシド、tert‐ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類などが挙げられる。
【0022】
また、この乳化重合における乳化剤としては、通常アニオン性界面活性剤又はそれとノニオン性界面活性剤との組合せが用いられる。このアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤としては、通常の乳化重合に用いられるものの中から任意に選んで用いることができる。このようなアニオン性界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸金属塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0023】
また、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルグリセリンホウ酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなど、ポリオキシエチレン鎖を分子内に有し、界面活性能を有する化合物及び前記化合物のポリオキシエチレン鎖がオキシエチレン、オキシプロピレンの共重合体で代替されている化合物、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0024】
本発明のカチオン系凝結剤においては、カチオン性ポリマーとともにカチオン性モノマーを用いることができる。このカチオン性モノマーは、主としてパルプ繊維内部へ浸透し、製紙原料スラリーのカチオン要求量を調整するもので、前記カチオン性ポリマー中の構成単位を構成するカチオン性モノマーの中から選ぶのが好ましい。このカチオン性モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。このカチオン性モノマーとしては、パルプ繊維内部への浸透性及びカチオン要求量の調整性の面から、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどが好ましく、特にジメチルジアリルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0025】
本発明のカチオン系凝結剤においては、前記カチオン性ポリマーとカチオン性モノマーとの配合割合は、質量比で95:5ないし50:50の範囲内で選ぶのが好ましい。カチオン性モノマーの配合割合がこれより少ないと、その配合効果、特にカチオン要求量の低減が得られなくなるし、この範囲より多いとゼータ電位を低下させにくくなり、その結果、ろ水性やサイズ度が低下する。カチオン要求量の低減、ろ水性及びサイズ度の面から好ましいカチオン性ポリマーとカチオン性モノマーとの配合割合は85:15ないし65:35である。
【0026】
次に、本発明の製紙原料組成物は、パルプ成分を含む水性スラリーに、該パルプ成分に対する濃度が0.005〜0.1質量%の範囲内になるように前記カチオン系凝結剤を配合することにより、十分なろ水性、歩留り性、サイズ度が得られ、さらに水性スラリー中に所望により配合されるサイズ剤、歩留り剤、紙力増強剤、ピッチコントロール剤、デポジットコントロール剤、填料及びスライムコントロール剤などの配合量を削減することができる。配合される薬剤の効果、添加薬剤の配合量減少及びろ水性、歩留り性及びサイズ度などの面から、製紙用助剤の好ましい配合量は、パルプ成分に対して0.005〜0.03質量%の範囲内である。
【0027】
次に、本発明の製紙原料組成物において、カチオン系凝結剤と組み合わせて用いられるアニオン系補助剤としては、例えばベントナイト、コロイド状ケイ酸、リグニンスルホン酸アルカリ塩、アニオン性ポリマーなどを挙げることができる。
【0028】
このベントナイトとしては、ナトリウムに富んだモンモリロナイトを主成分とするNa型ベントナイトやカリウムに富んだモンモリロナイトを主成分とするK型ベントナイトなどのアルカリ性を示す膨潤性ベントナイトが好ましい。これらは、市販品として容易に入手することができる。
【0029】
コロイド状ケイ酸としては、水中で水和により表面にOH基を有し、その粒子表面は多孔性で水中では負(−)極に帯電したアニオン性を示すコロイド状ケイ酸が好ましい。
【0030】
また、リグニンスルホン酸アルカリ塩としては、リグニンスルホン酸ナトリウムやリグニンスルホン酸カリウムのようなアルカリを呈するリグニンスルホン酸アルカリ塩が用いられる。
【0031】
次に、アニオン性ポリマーとしては、例えばアニオン性基をもつモノマー単独又はアニオン性基をもつモノマーと中性モノマーとの混合物を重合又は共重合させることによって得られるイオン化しうるアニオン性基をもつモノマー単位を少なくとも5モル%以上、好ましくは20モル%以上を含有するものを挙げることができる。
【0032】
これらのアニオン系補助剤は、組成物中の乾燥固形分の質量に基づき、0.005〜0.5質量%の割合で含有される。この量が0.005質量%未満では、ろ水性及び歩留り性の改善はなされないし、また0.5質量%よりも多くなると、カチオン系凝結剤の配合効果が急激に低下する。好ましい含有割合の範囲は、0.01〜0.2質量%である。
【0033】
本発明の製紙原料組成物においては、このアニオン系補助剤を含有させることにより、これを含有しない場合に比べ、製紙の際の歩留りは5〜7%向上し、ろ水性は10〜40%向上する。
【0034】
本発明の製紙原料組成物においては、パルプ成分を含む水性スラリーが用いられる。この水性スラリーに含まれるパルプとしては、例えばバージンパルプ、脱墨古紙パルプ、コートブロークなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。パルプを2種以上組み合わせる場合、その混合割合としては、特に制限はなく、得ようとする紙の種類に応じて適宜選択される。なお、ここでバージンパルプとは、古紙(再生紙)やコートブロークを含まないパルプを示す。本発明においては、この水性スラリーに含まれる前記パルプの濃度は0.5〜5.0質量%の範囲で選ばれる。
【0035】
本発明の製紙原料組成物のカチオン要求量を調整するためには、前記製紙用原料の配合だけではなく、併用される慣用の製紙用助剤の配合割合も見直す必要がある。例えば本発明製紙用助剤を配合する前の水性スラリーのカチオン要求量を測定し、その結果に応じて本発明製紙用助剤と併用される慣用の製紙用助剤の配合割合を調整し、最も生産性が高く紙質が優れた紙が得られるようにカチオン要求量を調整する。
【0036】
本発明においては、カチオン要求量を低減するように調整して、アニオン系補助剤を添加すれば、歩留り性とろ水性を著しく向上させることができる。これは該スラリー中の負電荷が中和され、パルプ繊維間の電荷的反発が減少し、凝集性が高まると同時にパルプ繊維表面にアニオントラッシュが吸着しやすくなるためである。そして、アニオントラッシュの影響で効果が低下していた硫酸バンド、歩留り剤、紙力増強剤などの製紙用助剤の効果が向上する。
【0037】
また、慣用の製紙用助剤においては、カチオン系凝結剤とアニオン系補助剤との配合により製紙原料組成物のカチオン要求量を初期とほぼ同じにしても該スラリー組成物の性状、例えば大きなフロック発生の低減や、紙質、例えば歩留り率、サイズ効果、地合などを向上させることができる。さらには、カチオン過剰の該スラリー組成物においては、慣用の製紙用助剤と本発明のカチオン系凝結剤及びアニオン系補助剤の配合割合を調整することによりカチオン過剰状態を改善し、該スラリー組成物の性状、紙質、生産性などを向上させることができる。
【0038】
本発明の製紙原料組成物においては、填料や慣用の製紙用助剤の使用量を削減することができる。例えば本発明カチオン系凝結剤及びアニオン性補助剤各々の量が全パルプ成分固形分の1.5質量%である場合、慣用の製紙用助剤の削減率は、紙力増強剤約20〜80%、歩留り剤約7〜40%、硫酸バンド約30〜100%、サイズ剤約15〜60%程度である。
【0039】
サイズ剤は、その使用量を節減することにより紙質を向上させることができる。中性域あるいはアルカリ性域で紙を製造する場合に用いられるサイズ剤としては、AKDサイズ剤、ASAサイズ剤、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。AKDサイズ剤は硫酸バンド存在下においては、サイジング効果が発揮されにくいため、その添加量が増やされる傾向にあるが、このAKDサイズ剤の量を増加させると紙力が低下する傾向が見られる。
【0040】
しかし、本発明に従い、カチオン系凝結剤とアニオン系補助剤の組合せを水性スラリーに配合することにより硫酸バンドの使用量を削減できるため、AKDサイズ剤のサイジング効果が発揮しやすい環境となる。さらに、本発明製紙用助剤を配合することにより、該水性スラリー中のアニオントラッシュを効率よく中和するため、AKDサイズ剤の定着率が向上する。定着率の向上によりAKDサイズ剤の使用量を削減することが可能で、しかも紙質、特に紙力が向上した紙が得られる。
【0041】
さらに、中性ロジンサイズ剤はAKDサイズ剤やASAサイズ剤に比べ添加量を多くする必要があるため、抄紙マシンを汚す可能性が高い。このため、中性ロジンサイズ剤の使用量を削減することが検討されているが、中性ロジンサイズ剤を削減するとサイズ度が低下するだけでなく、サイズ度の経時劣化が発生しやすくなるが、本発明の製紙原料組成物においては、中性ロジンの使用量を削減可能で、しかも抄紙マシンの汚れ防止やサイズ度の向上、サイズ度の経時劣化防止をもたらすことができる。
【0042】
さらに、本発明に従い、カチオン系凝結剤とアニオン系補助剤の組合せを用いることにより填料の使用量を(炭酸カルシウムを使用した場合)約7〜20%削減することができるので、ウェットエンドのトータル的な費用を削減することができる。これらのことにより、生産コストの削減及び抄紙マシンの汚れの低減化、さらには地球環境への悪影響の低下をもたらすことができる。
【0043】
なお、本発明において、カチオン系凝結剤を水性スラリーに配合する場合、その成分のカチオン性ポリマーを乳化重合法、すなわち重合開始剤及び乳化剤を含有する水性媒体中において、例えばエチレン性不飽和化合物及びカチオン性モノマーを所定の割合で混合し、通常30〜80℃の範囲の温度において重合させる方法により調製すれば、所望の共重合体微粒子が均質に分散したエマルションを得ることができ、このエマルションは、そのまま水性スラリーに配合することができるので有利である。
【0044】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例中の紙の物性は、下記の方法に従って求めた。
【0045】
(1)ろ水性
パルプ含有水性スラリー500mlを1200rpmで撹拌しながら、これに各種薬剤を以下の順に10秒間隔で添加した。
▲1▼硫酸バンド、▲2▼カチオン性モノマー、▲3▼カチオン性ポリマー、▲4▼アニオン系補助剤、▲5▼サイズ剤、▲6▼填料、▲7▼歩留り剤(なお、比較例では、上記▲2▼成分や▲3▼成分や▲4▼成分は添加しない場合がある)。
このように調製した製紙原料組成物を100メッシュを張った内径50mmのアクリル性樹脂の円筒型の容器に移し、メスシリンダーを用いてろ水量を300mlとなるまでの時間を測定した。また、JIS K0101によりろ水のホルマジン濁度を測定した。
【0046】
(2)歩留り性
パルプ含有水性スラリー500mlをブリッド式ダイナミックジャー(40メッシュ)に入れ、撹拌しながら(1)と同じ順序で各種薬剤を添加し、規定の時間となったら撹拌したまま下穴から、ろ水100mlを採取し、ろ紙で吸引ろ過後、110℃で60分間乾燥し、乾燥後の質量を測定することにより、歩留り(OPR)を求めた。
【0047】
(3)サイズ度
製紙原料組成物を坪量が70〜75g/mとなるように角型容器に入れ撹拌しながら、角型抄紙機[東西精機(株)社製]に前記スラリー組成物を入れ、撹拌棒で一定の力で2回上下に撹拌し、最後に穏やかに撹拌した。そして前記抄紙機の排水弁を開き、メッシュ(#40)上に形成されたマット(250mm×250mm)の上にろ紙とステンレス鋼板1枚を載せ、ローラーで脱水した。マットをメッシュから剥がし、ろ紙とステンレス鋼板で挟み、2枚ずつをプレス機を用いて荷重0.515N/mm、5分の条件で1回プレスし、さらに前記荷重で2分の条件で1回プレスした。その後、ドラム式ドライヤー(ドラムの表面温度95℃)で3分間乾燥させ、一昼夜調湿(20℃、湿度55%)し、評価用の紙を得た。
この紙を用い、JIS P8122によりステキヒトサイズ度を測定した。
【0048】
(4)引張強度(裂断長)
上記(3)で作製した紙を、JIS P8113に基づき引張強度を測定した。
【0049】
実施例1
クラフトパルプ(UBKP)0.6質量%濃度のパルプ含有水性スラリーに、パルプ乾燥質量に基づき、硫酸バンド[硫酸アルミニウム;Al(SO]0.7質量%、中性ロジンサイズ剤(アルキルケテンダイマー)0.25質量%、填料としての炭酸カルシウム10質量%及びタルク10質量%、歩留り剤(ポリアクリルアミド)430ppmを、かきまぜながら添加して調製した製紙原料に、アクリルアミド−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量2500000、カチオン量2.3meq/g)とジメチルジアリルアンモニウムクロリドとを質量比95:5で混合してなるカチオン系凝結剤200ppmとアクリル酸エチル−メタクリル酸共重合体からなるアニオン系補助剤200ppmを加えてかきまぜたのち、水酸化ナトリウム水溶液によりpH10に調整した。
このようにして得た製紙原料組成物及びこれを抄紙して得た紙の物性を表1に示す。
【0050】
実施例2
実施例1において、アクリルアミド−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量2500000、カチオン量2.3meq/g)のみからなるカチオン系凝結剤を用いた以外は、全く実施例1と同様にして製紙原料組成物を調製した。
このようにして得た製紙原料組成物及びこれを抄紙して得た紙の物性を表1に示す。
【0051】
実施例3
実施例1において、アクリルアミド−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(粘度平均分子量1500000、カチオン量1.8meq/g)のみからなるカチオン系凝結剤を用いた以外は、全く実施例1と同様にして製紙原料組成物を調製した。
このようにして得た製紙原料組成物及びこれを抄紙して得た紙の物性を表1に示す。
【0052】
比較例1
実施例1において、カチオン系凝結剤及びアニオン系補助剤を加えないこと以外は、全く実施例1と同様にして製紙原料組成物を調製した。
このようにして得た製紙原料組成物及びこれを抄紙して得た紙の物性を表1に示す。
【0053】
比較例2
実施例1において、アニオン系補助剤を加えずにカチオン系凝結剤のみを加えること以外は、全く実施例1と同様にして製紙原料組成物を調製した。
このようにして得た製紙原料組成物及びこれを抄紙して得た紙の物性を表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 2004244766
【0055】
実施例4
実施例1と同じ組成の製紙原料に、実施例1で用いたものと同じカチオン系凝結剤200ppmとともにベントナイト(Al・4SiO・2HO)1000ppm、2000ppm又は3000ppmを添加し、実施例1と同様にして製紙原料組成物を調製した。
このようにして得た製紙原料組成物を抄紙して得た紙の物性を表2に示す。なお、比較のためにベントナイトを添加しないものについても併記した。
【0056】
【表2】
Figure 2004244766
【0057】
【発明の効果】
本発明によると、製紙の際のろ水性及び歩留り性が著しく向上した製紙原料組成物が得られる。

Claims (8)

  1. パルプ成分を含有する水性スラリーに対し、カチオン性ポリマーを含有するカチオン系凝結剤及びアニオン性補助剤とを配合したことを特徴とする製紙原料組成物。
  2. パルプ成分を0.5〜5.0質量%濃度で含有する水性スラリーに対し、粘度平均分子量少なくとも200000のカチオン性ポリマーを含有するカチオン系凝結剤及びアニオン系補助剤とを配合した請求項1記載の製紙原料組成物。
  3. 該カチオン系凝結剤が粘度平均分子量少なくとも200000のカチオン性ポリマー及びカチオン性モノマーからなる請求項1又は2記載の製紙原料組成物。
  4. カチオン系凝結剤中のカチオン性ポリマーとカチオン性モノマーの割合が質量比で95:5ないし50:50の範囲にある請求項3記載の製紙原料組成物。
  5. カチオン系凝結剤の含有量がパルプ成分乾燥質量に基づき、0.005〜0.1質量%の範囲にある請求項1ないし4のいずれかに記載の製紙原料組成物。
  6. カチオン性ポリマーが、第四級アンモニウム塩残基含有カチオン性モノマーとアクリルアミドとの共重合体であり、かつカチオン性モノマー単位の含有割合が5モル%以上70モル%未満の範囲にある請求項1ないし5のいずれかに記載の製紙原料組成物。
  7. アニオン系補助剤の含有量が組成物中の乾燥固形分の質量に基づき、0.005〜0.5質量%の範囲にある請求項1ないし6のいずれかに記載の製紙原料組成物。
  8. アニオン系補助剤が、ベントナイト、アニオン性シリカゲル、リグニンスルホン酸アルカリ塩、アニオン性コロイダルシリカ及びアニオン性ポリマーの中から選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし7のいずれかに記載の製紙原料組成物。
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