JP2004134287A - 組電池の異常検出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セル(単電池)を複数個直列に接続した組電池、または複数のセルを並列に接続したセル並列回路を複数組直列に接続した組電池の過充電状態または過放電状態を検出する組電池の異常検出装置であって、組電池の内部抵抗を推定し、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値および過放電しきい値を変更し、セルまたはセル並列回路の両端電圧が過充電しきい値を超えたときに過充電検出信号を出力し、セルまたはセル並列回路の両端電圧が過放電しきい値を下回ったときに過放電検出信号を出力する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は組電池の異常状態を検出する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の単電池(以下、セルと呼ぶ)が直列に接続された組電池において、セル電圧が過放電しきい値以下になった場合にそのセルが過放電状態にあると判定し、セル電圧が過充電しきい値以上になった場合にそのセルが過充電状態にあると判定する組電池の異常検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】
特開平05−258778号公報(第2−3頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の組電池の異常検出装置では、過放電しきい値と過充電しきい値をそれぞれ固定値としているので、セルの内部抵抗が増大するとセル電圧の変化が急峻になり、セル電圧がしきい値を超えて異常状態を検出してから充放電を禁止したのでは制御が間に合わなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、組電池の異常を早期に確実に検出するようにした組電池の異常検出装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、組電池の内部抵抗を推定し、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値および過放電しきい値を変更する。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、組電池の異常を早期に確実に検出することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
セル(単電池)をn個直列に接続した組電池に対して本願発明を適用した一実施の形態を説明する。なお、本願発明は、セルを複数個直列に接続した組電池に限定されず、複数のセルを並列に接続したセル並列回路を複数組直列に接続した組電池に対しても適用することができる。
【0009】
また、本願発明は、電池の温度が低くなるほど電池内部の化学反応が緩やかになって電池の内部抵抗が増大する種類のすべての電池に対して適用することができる。
【0010】
《発明の第1の実施の形態》
図1は第1の実施の形態の構成を示す。組電池1はn個のセル11,12,13,・・,1nが直列に接続されている。この組電池1の各セル11〜1nの両端C0−C1、C1−C2、C2−C3、・・、Cn−1−Cnには、電流バイパス回路21〜2n、過充電検出回路31〜3nおよび過放電検出回路41〜4nがそれぞれ並列に接続される。
【0011】
電流バイパス回路21〜2nは、セル両端の電圧が所定の電圧を超えたときに、それまでセルに流れていた充電電流をバイパスし、セルの充電を停止する回路である。この電流バイパス回路21〜2nには、抵抗器とツェナーダイオードとを直列に接続した回路や、抵抗器とトランジスターとを直列にした回路など、種々の回路を用いることができる。
【0012】
図2は、過充電検出回路31〜3nと過放電検出回路41〜4nの詳細を示す。なお、これらの回路は各セル11〜1nに対してすべて共通である。過充電検出回路31〜3nは、コンパレーターC1、インバーターIV1、トランジスター(FET)Q1および抵抗器R1〜R3から構成される。まず、しきい値切り換え信号SIGがローレベルの状態でトランジスターQ1がオフしている場合を考えると、コンパレーターC1は、制御電源電圧Vccを抵抗器R1と抵抗器(R2+R3)とで分圧したしきい値電圧Vc1とセル電圧Vcとを比較する。
【数1】
Vc1=(R2+R3)/(R1+R2+R3)・Vcc
セル電圧Vcがしきい値Vc1を超えるとコンパレーターC1の出力がローレベルになり、インバーターIN1でハイレベルに反転されて過充電検出信号としてOR素子51〜5nへ出力される。
【0013】
次に、しきい値切り換え信号SIGがハイレベルに変化してトランジスターQ1がオンし、抵抗器R3の両端が短絡されると、コンパレーターC1は、制御電源電圧Vccを抵抗器R1とR2とで分圧したしきい値電圧Vc2とセル電圧Vcとを比較する。
【数2】
Vc2=R2/(R1+R2)・Vcc
セル電圧Vcがしきい値Vc2を超えるとコンパレーターC1の出力がローレベルになり、インバーターIN1でハイレベルに反転されて過充電検出信号としてOR素子51〜5nへ出力される。
【0014】
このように、しきい値切り換え信号SIGにより過充電検出用しきい値をVc1とVc2の間で切り換えることができる。しきい値切り換え信号SIGがローレベルのときは過充電検出用しきい値Vc1が選択され、しきい値切り換え信号SIGがハイレベルのときは過充電検出用しきい値Vc2が選択される。ここで、上述したように過充電しきい値Vc2はしきい値Vc1より低い。
【数3】
Vc2<Vc1
したがって、ローレベルのしきい値切り換え信号SIGで高い過充電しきい値Vc1が選択され、ハイレベルのしきい値切り換え信号SIGで低い過充電しきい値Vc2が選択される。
【0015】
過放電検出回路41〜4nは、コンパレーターC2、インバーターIV2、トランジスター(FET)Q2および抵抗器R4〜R6から構成される。まず、しきい値切り換え信号SIGがローレベルの状態でトランジスターQ2がオフしている場合を考えると、コンパレーターC2は、制御電源電圧Vccを抵抗器(R4+R5)と抵抗器R6とで分圧したしきい値電圧Vd1とセル電圧Vcとを比較する。
【数4】
Vd1=R6/(R4+R5+R6)・Vcc
セル電圧Vcがしきい値Vd1より低くなるとコンパレーターC2の出力がハイレベルに反転し、過放電検出信号としてOR素子51〜5nへ出力される。
【0016】
次に、しきい値切り換え信号SIGがハイレベルに変化すると、インバーターIV2の出力がローレベルになってトランジスターQ2がオンし、抵抗器R4の両端が短絡される。コンパレーターC2は、制御電源電圧Vccを抵抗器R5と抵抗器R6とで分圧したしきい値Vd2とセル電圧Vcとを比較する。
【数5】
Vd2=R6/(R5+R6)・Vcc
セル電圧Vcがしきい値Vd2より低くなるとコンパレーターC2の出力がハイレベルに反転し、過放電検出信号としてOR素子51〜5nへ出力される。
【0017】
このように、しきい値切り換え信号SIGにより過放電検出用しきい値をVd1とVd2の間で切り換えることができる。しきい値切り換え信号SIGがローレベルのときは過放電検出用しきい値Vd1が選択され、しきい値切り換え信号SIGがハイレベルのときは過放電検出用しきい値Vd2が選択される。ここで、上述したように過放電しきい値Vd2はしきい値Vd1より高い。
【数6】
Vd2>Vd1
したがって、ローレベルのしきい値切り換え信号SIGで低い過放電しきい値Vc1が選択され、ハイレベルのしきい値切り換え信号SIGで高い過放電しきい値Vc2が選択される。
【0018】
図1に戻って説明を続けると、OR素子51〜5nは、いずれかのセル11〜1nの過充電検出信号または過放電検出信号を入力し、OR素子6へ出力する。充放電制御回路7は、OR素子6からいずれかのセル11〜1nの過充電検出信号が入力されると組電池1の充電を停止し、OR素子6からいずれかのセル11〜1nの過放電検出信号が入力される組電池1の放電を停止する。
【0019】
充放電制御回路7は、しきい値切り換え信号SIGにより過充電検出回路31〜3nのしきい値Vc1とVc2を切り換えるとともに、過放電検出回路41〜4nのしきい値Vd1とVd2を切り換える。ローレベルのしきい値切り換え信号SIGで過充電検出しきい値Vc1と過放電検出しきい値Vd1を選択し、ハイレベルのしきい値切り換え信号SIGで過充電検出しきい値Vc2と過放電検出しきい値Vd2を選択する。
【0020】
図3は、組電池の内部抵抗が小さい場合の充電時の電圧変化と、内部抵抗が大きい場合の充電時の電圧変化を示す。一般に、電池は温度が低くなるにしたがって電池内部の化学反応が緩やかになるため、電池の内部抵抗が大きくなる。電池の温度が高い状態で充電を行う場合には、図3に示す内部抵抗小の特性曲線にしたがって電池電圧(セル電圧)Vcが上昇する。電池電圧Vcが過充電しきい値Vc1に達すると、過充電検出回路31〜3nから過充電検出信号が充放電制御回路7へ出力される。充放電制御回路7は、過充電検出信号を受信すると直ちに充電停止処理を実行する。
【0021】
ここで、電池電圧Vcが過充電しきい値Vc1に達してから実際に充電が停止されるまでには、「制御遅れ時間」が存在する。そのため、図3に示すように、電池電圧Vcが過充電しきい値Vc1に達した後も、制御遅れ時間の間、そのまま電池電圧Vcが上昇を続けることになる。しかし、電池温度が高い状態で充電を行った場合は電池電圧Vcが緩やかに上昇するから、制御遅れ時間の間、電池電圧Vcが上昇し続けても充電停止制御が実行される前に電池電圧Vcが電池劣化開始電圧に達することはない。
【0022】
一方、電池温度が低い状態で充電を行った場合は、電池の内部抵抗が大きいから電池電圧Vcの変化が急峻になり、図3に示す内部抵抗大の特性曲線にしたがって電池電圧Vcが上昇する。電池電圧Vcが過充電しきい値Vc1に達すると、過充電検出回路31〜3nから過充電検出信号が充放電制御回路7へ出力され、充放電制御回路7が直ちに充電停止処理を実行する。ところが、電池温度が低い状態で充電を行った場合は電池電圧Vcが急激に上昇するから、制御遅れ時間の間、電池電圧Vcが上昇し続けて、充電停止制御が実行される前に電池劣化開始電圧に達してしまう。つまり、充電停止制御が間に合わず、電池の劣化が生じることになる。
【0023】
そこで、この第1の実施の形態では、組電池1の内部抵抗の増大を推定し、内部抵抗の増大が推定された場合には過充電しきい値Vc1を低いしきい値Vc2に切り換える。これにより、内部抵抗の増大により充電時に電池電圧Vcが急激に上昇しても、過充電しきい値Vc1よりも低いしきい値Vc2を超えた時点で過充電検出回路31〜3nから過充電検出信号が出力され、充放電制御回路7により充電停止制御が実行される。その結果、制御遅れ時間の間、電池電圧Vcが上昇し続けても、充電停止制御が実行される前に電池電圧Vcが電池劣化開始電圧に達することはなく、過充電による電池の劣化を避けることができる。
【0024】
ここで、内部抵抗増大時の過充電しきい値Vc2には、組電池1の通常の使用条件下で予想される最大の内部抵抗発生時に、制御遅れ時間後の電池電圧Vcが電池劣化開始電圧を超えない値を設定する。
【0025】
図4は、組電池の内部抵抗が小さい場合の放電時の電圧変化と、内部抵抗が大きい場合の放電時の電圧変化を示す。上述したように、一般に、電池は温度が低くなるにしたがって電池内部の化学反応が緩やかになるため、電池の内部抵抗が大きくなる。電池の温度が高い状態で放電を行う場合には、図4に示す内部抵抗小の特性曲線にしたがって電池電圧(セル電圧)Vcが低下する。電池電圧Vcが過放電しきい値Vd1に達すると、過放電検出回路41〜4nから過放電検出信号が充放電制御回路7へ出力される。充放電制御回路7は、過放電検出信号を受信すると直ちに放電停止処理を実行する。
【0026】
ここで、電池電圧Vcが過放電しきい値Vd1に達してから実際に放電が停止されるまでには、「制御遅れ時間」が存在する。そのため、図4に示すように、電池電圧Vcが過放電しきい値Vd1に達した後も、制御遅れ時間の間、そのまま電池電圧Vcが低下を続けることになる。しかし、電池温度が高い状態で充電を行った場合は電池電圧Vcが緩やかに低下するから、制御遅れ時間の間、電池電圧Vcが低下し続けても放電停止制御が実行される前に電池電圧Vcが電池劣化開始電圧に達することはない。
【0027】
一方、電池温度が低い状態で放電を行った場合は、電池の内部抵抗が大きいから電池電圧Vcの変化が急峻になり、図4に示す内部抵抗大の特性曲線にしたがって電池電圧Vcが低下する。電池電圧Vcが過放電しきい値Vd1に達すると、過放電検出回路41〜4nから過放電検出信号が充放電制御回路7へ出力され、充放電制御回路7が直ちに放電停止処理を実行する。ところが、電池温度が低い状態で放電を行った場合は電池電圧Vcが急激に低下するから、制御遅れ時間の間、電池電圧Vcが低下し続けて、放電停止制御が実行される前に電池劣化開始電圧に達してしまう。つまり、放電停止制御が間に合わず、電池の劣化が生じることになる。
【0028】
そこで、この第1の実施の形態では、組電池1の内部抵抗の増大を推定し、内部抵抗の増大が推定された場合には過放電しきい値Vd1を高いしきい値Vd2へ切り換える。これにより、内部抵抗の増大により放電時に電池電圧Vcが急激に低下しても、過放電しきい値Vd1よりも高いしきい値Vd2を下回った時点で過放電検出回路41〜4nから過放電検出信号が出力され、充放電制御回路7により直ちに放電停止制御が実行される。その結果、制御遅れ時間の間、電池電圧Vcが低下し続けても、放電停止制御が実行される前に電池電圧Vcが電池劣化開始電圧を下回ることがなく、過放電による電池の劣化を避けることができる。
【0029】
ここで、内部抵抗増大時の過放電しきい値Vd2には、組電池1の通常の使用条件下で予想される最大の内部抵抗発生時に、制御遅れ時間後の電池電圧Vcが電池劣化開始電圧を下回らない値を設定する。
【0030】
次に、この第1の実施の形態の組電池1の内部抵抗の推定方法について説明する。組電池1の充電中に、組電池1の充電容量が目標充電容量に達する前にいずれかのセル11〜1nで過充電状態が検出された場合には、過充電状態が検出されたセルの電圧Vcの変化が他のセルの電圧変化よりも急峻であり、そのセルの内部抵抗は他のセルよりも大きいと推定される。したがって、このような場合には、しきい値切り換え信号SIGをハイレベルにして高い過充電しきい値Vc1を低いしきい値Vc2に切り換える。
【0031】
このように第1の実施の形態では、組電池1の充電中に、組電池1の充電容量が目標充電容量に達する前にいずれかのセル11〜1nで過充電状態が検出された場合は、組電池1のいずれかのセルの内部抵抗が大きくなっていると推定し、この推定により過充電しきい値を高い値Vc1から低い値Vc2へ変更するようにした。これにより、次回の過充放電検出サイクルでは低い過充電しきい値Vc2が用いられることになり、特に前回の検出サイクルで過充電状態が検出されたセルの電圧Vcが電池劣化開始電圧に達してセルの劣化が生じるのを避けることができ、組電池の異常を早期に確実に検出することができる。
【0032】
また、組電池1の放電中に、組電池1の放電容量が目標放電容量に達する前にいずれかのセル11〜1nで過放電状態が検出された場合には、過放電状態が検出されたセルの電圧Vcの変化が他のセルの電圧変化よりも急峻であり、そのセルの内部抵抗は他のセルよりも大きいと推定される。したがって、このような場合には、しきい値切り換え信号SIGをハイレベルにして低い過放電しきい値Vd1を高いしきい値Vd2に切り換える。
【0033】
このように第1の実施の形態では、組電池1の放電中に、組電池1の放電容量が目標放電容量に達する前にいずれかのセル11〜1nで過放電状態が検出された場合は、組電池1のいずれかのセルの内部抵抗が大きくなっていると推定し、この推定により過放電しきい値を低い値Vd1から高い値Vd2へ変更するようにした。これにより、次回の過充放電検出サイクルでは高い過放電しきい値Vd2が用いられることになり、特に前回の検出サイクルで過放電状態が検出されたセルの電圧Vcが電池劣化開始電圧に達してセルの劣化が生じるのを避けることができ、組電池の異常を早期に確実に検出することができる。
【0034】
上述した第1の実施の形態では、組電池1の充放電中に、組電池1の充放電容量が目標充放電容量に達する前にいずれかのセル11〜1nで過充電状態または過放電状態が検出された場合には、過充電状態または過放電状態が検出されたセルの内部抵抗は他のセルよりも大きいと推定する例を示したが、内部抵抗の推定方法はこの第1の実施の形態に限定されない。例えば、充放電時の組電池に流れる電流とセルの電圧をサンプリングし、サンプリング結果の電流と電圧を二次元平面上で直線回帰し、この回帰直線の傾きから電池の内部抵抗を推定する方法などを利用することができる。
【0035】
《発明の第2の実施の形態》
上述した第1の実施の形態では、充放電制御回路7により組電池1の内部抵抗を推定する例を示したが、内部抵抗推定手段にハードウエアデバイスを用いる第2の実施の形態を説明する。
【0036】
図5は第2の実施の形態の構成を示す。なお、図1に示す第1の実施の形態の構成と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。温度センサー8は組電池1の温度を検出し、組電池1の温度が予め設定したしきい値以下に低下したらハイレベルのしきい値切り換え信号SIGを過充電検出回路31〜3nと過放電検出回路41〜4nへ出力する。
【0037】
上述したように、一般に電池は温度が低くなるにしたがって電池内部の化学反応が緩やかになるため、電池の内部抵抗が大きくなる。そこで、この第2の実施の形態では、組電池1の温度がしきい値以下に低下したら組電池1の内部抵抗が増大したと判断し、しきい値切り換え信号SIGをハイレベルに切り換える。これにより、過充電しきい値が高い値Vc1から低い値Vc2へ切り換わるとともに、過放電しきい値が低い値Vd1から高い値Vd2へ切り換わる。
【0038】
このように、組電池1の温度がしきい値以下に低下したら過充電しきい値を高い値Vc1から低い値Vc2へ切り換えるとともに、過放電しきい値を低い値Vd1から高い値Vd2へ切り換えるようにした。つまり、第2の実施の形態では組電池1の温度を検出し、温度検出値に基づいて組電池1の内部抵抗を推定し、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値と過放電しきい値を変更するようにした。これにより、組電池1の異常を早期に確実に検出することができ、組電池1の温度低下時に内部抵抗が増大して充放電時の電圧変化が急峻になっても、セル電圧Vcが電池劣化開始電圧に達してセルの劣化が生じるのを避けることができる。
【0039】
なお、組電池温度のしきい値と過充放電しきい値Vc2、Vd2には、組電池1の通常の使用条件下で予想される最低温度のときに、上述した制御遅れ時間後の電池電圧Vcが電池劣化開始電圧に達しない値を設定する。
【0040】
《発明の第3の実施の形態》
内部抵抗推定手段に他のハードウエアデバイスを用いる第3の実施の形態を説明する。図6は第3の実施の形態の構成を示す。なお、図1に示す第1の実施の形態の構成と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。充放電時間積算回路9は組電池1の充放電時間を積算し、組電池1の充放電時間の積算値が予め設定したしきい値に達したらハイレベルのしきい値切り換え信号SIGを過充電検出回路31〜3nと過放電検出回路41〜4nへ出力する。
【0041】
一般に、電池は劣化が進むにつれて内部抵抗が増大し、電圧変化が急峻になる。そこで、この第3の実施の形態では、組電池1の充放電時間の積算値がしきい値に達したら組電池1の内部抵抗が増大したと判断し、しきい値切り換え信号SIGをハイレベルに切り換える。これにより、過充電しきい値が高い値Vc1から低い値Vc2へ切り換わるとともに、過放電しきい値が低い値Vd1から高い値Vd2へ切り換わる。
【0042】
このように、組電池1の充放電時間の積算値がしきい値に達したら過充電しきい値を高い値Vc1から低い値Vc2へ切り換えるとともに、過放電しきい値を低い値Vd1から高い値Vd2へ切り換えるようにした。つまり、第3の実施の形態では組電池1の充放電時間を積算し、この充放電時間積算値に基づいて組電池1の内部抵抗を推定し、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値と過放電しきい値を変更するようにした。これにより、組電池1の異常を早期に確実に検出することができ、組電池1の長い間の使用により組電池1が徐々に劣化して内部抵抗が増大し、充放電時の電圧変化が急峻になっても、セル電圧Vcが電池劣化開始電圧に達してセルの劣化が生じるのを避けることができる。
【0043】
なお、組電池充放電時間積算値のしきい値と過充放電しきい値Vc2、Vd2には、通常の使用条件下で使用したときに、上述した制御遅れ時間後の電池電圧Vcが電池劣化開始電圧に達しない値を設定する。
【0044】
《発明の第4の実施の形態》
内部抵抗推定手段に他のハードウエアデバイスを用いる第4の実施の形態を説明する。図7は第4の実施の形態の構成を示す。なお、図1に示す第1の実施の形態の構成と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。タイマー回路10は、組電池1の電源投入時点からの稼動時間を計時し、稼動時間が予め設定した所定時間に達したらハイレベルのしきい値切り換え信号SIGを過充電検出回路31〜3nと過放電検出回路41〜4nへ出力する。
【0045】
一般に、電池は、電源投入時点、つまり稼動開始時点では温度が低く、稼動時間が長くなるにしたがって温度が上昇する。つまり、電源投入直後は温度が低いので内部抵抗が高く、電圧変化が急峻になる。そこで、この第4の実施の形態では、電源投入時点から所定の稼動時間の間は組電池1の内部抵抗が高いと判断し、その間はしきい値切り換え信号SIGをハイレベルにする。これにより、電源投入時点から所定の稼動時間の間は、過充電しきい値が高い値Vc1から低い値Vc2へ切り換わるとともに、過放電しきい値が低い値Vd1から高い値Vd2へ切り換わる。
【0046】
このように、組電池1の電源投入時点から所定の稼動時間の間は、過充電しきい値を高い値Vc1から低い値Vc2へ切り換えるとともに、過放電しきい値を低い値Vd1から高い値Vd2へ切り換えるようにした。つまり、この第4の実施の形態では組電池1の電源投入時点からの稼動時間を計時し、組電池1の電源投入からの稼動時間に基づいて組電池1の内部抵抗を推定し、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値と過放電しきい値を変更するようにした。これにより、組電池1の異常を早期に確実に検出することができ、電源投入直後の組電池1の内部抵抗が高くて電圧変化が急峻になっても、セル電圧Vcが電池劣化開始電圧に達してセルの劣化が生じるのを避けることができる。
【0047】
なお、上記所定の稼動時間と過充放電しきい値Vc2、Vd2には、通常の使用条件下で使用したときに、上述した制御遅れ時間後の電池電圧Vcが電池劣化開始電圧に達しない値を設定する。
【0048】
特許請求の範囲の構成要素と一実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、過充電検出回路31〜3nが過充電検出手段を、過放電検出回路41〜4nが過放電検出手段を、過充電検出回路31〜3nおよび過放電検出回路41〜4nが過充放電検出手段を、充放電制御回路7、温度センサー8、充放電時間積算回路9、タイマー回路10がそれぞれ内部抵抗推定手段およびしきい値変更手段をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0049】
なお、上述した一実施の形態では、組電池の充放電中に目標充放電容量に達する前に過充電検出信号または過放電検出信号が出力されたときは、組電池のいずれかのセルの内部抵抗が大きくなっていると推定する例、または組電池の温度、充放電時間積算値および電源投入時点からの稼動時間に基づいて組電池の内部抵抗を推定する例を示したが、組電池の内部抵抗を推定する方法は上述した一実施の形態の方法に限定されるものではない。
【0050】
また、上述した一実施の形態では、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値および過放電しきい値をそれぞれ2段階に変更する例を示したが、過充電しきい値および過放電しきい値の変更段数は2段階に限定されず、3段階以上としてもよい。あるいは、内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値および過放電しきい値を連続的に変更してもよい。
【0051】
上述した一実施の形態では組電池1の内部抵抗推定値に応じて過充電しきい値と過放電しきい値とを同時に変更する例を示した。これにより、しきい値切り換え信号SIGを送る信号線を1本化することができ、装置を簡素化することができる。もちろん、過充電しきい値と過放電しきい値とを同時に変更せず、それぞれ別個にしきい値切り換え信号線を設けて別々のタイミングで切り換えるようにしてもよい。
【0052】
さらに、上述した第2から第4の実施の形態では、組電池1の内部抵抗推定手段にそれぞれ温度センサー8、充放電時間積算回路9およびタイマー回路10のハードウエアデバイスを用いる例を示した。このようなハードウエアデバイスにより内部抵抗推定手段を構成することによって、過充電検出回路31〜3nおよび過放電検出回路41〜4nもハードウエアデバイスであるから、ハードウエアデバイスのみで組電池の異常検出装置を構成することができ、マイクロコンピューターやA/Dコンバーターを用いずに装置を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】過充電検出回路と過放電検出回路の詳細を示す図である。
【図3】組電池の内部抵抗が小さい場合の充電時の電圧変化と、内部抵抗が大きい場合の充電時の電圧変化を示す図である。
【図4】組電池の内部抵抗が小さい場合の放電時の電圧変化と、内部抵抗が大きい場合の放電時の電圧変化を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図6】第3の実施の形態の構成を示す図である。
【図7】第4の実施の形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 組電池
6、51〜5n OR素子
7 充放電制御回路
8 温度センサー
9 充放電時間積算回路
10 タイマー回路
11、12、13、・・、1n セル(単電池)
31〜3n 過充電検出回路
41〜4n 過放電検出回路
Claims (11)
- 単電池(以下、セルという)を複数個直列に接続した組電池、または複数のセルを並列に接続したセル並列回路を複数組直列に接続した組電池の過充電状態を検出する組電池の異常検出装置であって、
前記セルまたは前記セル並列回路の両端電圧が過充電しきい値を超えたときに過充電検出信号を出力する過充電検出手段と、
前記組電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定手段と、
前記組電池の内部抵抗推定値に応じて前記過充電しきい値を変更する過充電しきい値変更手段とを備えることを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項1に記載の組電池の異常検出装置において、
前記過充電しきい値変更手段は、前記組電池の内部抵抗推定値が大きいほど前記過充電しきい値を低くすることを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 単電池(以下、セルという)を複数個直列に接続した組電池、または複数のセルを並列に接続したセル並列回路を複数組直列に接続した組電池の過放電状態を検出する組電池の異常検出装置であって、
前記セルまたは前記セル並列回路の両端電圧が過放電しきい値を下回ったときに過放電検出信号を出力する過放電検出手段と、
前記組電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定手段と、
前記組電池の内部抵抗推定値に応じて前記過放電しきい値を変更する過放電しきい値変更手段とを備えることを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項1に記載の組電池の異常検出装置において、
前記過放電しきい値変更手段は、前記組電池の内部抵抗推定値が大きいほど前記過放電しきい値を高くすることを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 単電池(以下、セルという)を複数個直列に接続した組電池、または複数のセルを並列に接続したセル並列回路を複数組直列に接続した組電池の過充電状態または過放電状態を検出する組電池の異常検出装置であって、
前記セルまたは前記セル並列回路の両端電圧が過充電しきい値を超えたときに過充電検出信号を出力し、前記セルまたは前記セル並列回路の両端電圧が過放電しきい値を下回ったときに過放電検出信号を出力する過充放電検出手段と、
前記組電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定手段と、
前記組電池の内部抵抗推定値に応じて前記過充電しきい値および前記過放電しきい値を変更する過充放電しきい値変更手段とを備えることを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項5に記載の組電池の異常検出装置において、
前記過充放電しきい値変更手段は、前記組電池の内部抵抗推定値が大きいほど前記過充電しきい値を低くし、前記過放電しきい値を高くすることを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項5または請求項6に記載の組電池の異常検出装置において、
前記過充放電しきい値変更手段は、前記組電池の内部抵抗推定値に応じて前記過充電しきい値と前記過放電しきい値とを同時に変更することを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項1〜7のいずれかの項に記載の組電池の異常検出装置において、
前記内部抵抗推定手段は、前記組電池の充放電中に目標充放電容量に達する前に前記過充電検出信号または前記過放電検出信号が出力されたときは、前記組電池のいずれかのセルまたはセル並列回路の内部抵抗が大きくなっていると推定することを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項1〜7のいずれかの項に記載の組電池の異常検出装置において、
前記組電池の温度を検出する電池温度検出手段を備え、
前記内部抵抗推定手段は、前記組電池の温度検出値に基づいて前記組電池の内部抵抗を推定することを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項1〜7のいずれかの項に記載の組電池の異常検出装置において、
前記組電池の充放電時間を積算する充放電時間積算手段を備え、
前記内部抵抗推定手段は、前記組電池の充放電時間積算値に基づいて前記組電池の内部抵抗を推定することを特徴とする組電池の異常検出装置。 - 請求項1〜7のいずれかの項に記載の組電池の異常検出装置において、
前記組電池の電源投入時点からの稼動時間を計時する稼動時間計時手段を備え、
前記内部抵抗推定手段は、前記組電池の電源投入時点からの稼動時間に基づいて前記組電池の内部抵抗を推定することを特徴とする組電池の異常検出装置。
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