JP2004133212A - 光スイッチ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリコンからなる半導体基板101を備え、半導体基板101には、複数の素子から構成された集積回路を備え、集積回路の上には、層間絶縁膜102を備える。層間絶縁膜102上には、更に配線層104,層間絶縁膜105を備えている。また、半導体基板101の上には、絶縁膜102,105を介して支持部材120が固定され、支持部材120は、ミラー構造体を支持している。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号光の経路を変更する光スイッチ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネット通信網などにおける基盤となる光ネットワークにおいて必須となる波長分割多重技術(WDM)には、光スイッチ装置が必要不可欠な要素部品となる。この種の光スイッチ装置には、光導波路型やMEMS(Micro Electro Mechanical System)型などがあるが、中でも、可動する微細な反射面を有するMEMS型の光スイッチ装置が有望視されている。
【0003】
このMEMS型の光スイッチ装置は、例えば、固定構造体と可動ミラーを有する反射構造体とから構成されている。固定構造体は、土台となる基板及びこの上に形成された電極などである。反射構造体は、支持材と可動部材を有し、ミラーとして作用する可動部材が、固定構造体と離間してトーションバネなどのバネ部材によって支持部材に接続されている。このような構造は、例えば、薄膜形成技術やフォトリソグラフィ技術を基本にしてエッチングすることなどで立体的に微細加工を行うマイクロマシン技術を利用して作製することが可能である。このように構成された光スイッチは、固定構造体と可動する反射構造体との間に働く引力、あるいは反発力によって反射構造体が可動することで光路を切り替えるスイッチング動作を行う。
【0004】
上述したような光スイッチ装置をマイクロマシン技術で作製する場合には、大別して2つのタイプがある。一つは、いわゆる表面マイクロマシンによって作製されるタイプであり、他方はバルクマイクロマシンによって作製されるタイプである。
まず前者の表面マイクロマシンタイプについて説明する。表面マイクロマシンは、例えば、図9の側面図に示すように構成されている。図9において、基板901には、回動可能に支持部材902が設けられ、また、枠体904が、ヒンジ903を介して支持部材902に支持され、枠体904には、図示しないトーションバネを介してミラー905が連結支持されている。
【0005】
ミラー905の下部には、ミラー905を駆動するための静電力を発生する電極部906が、図示しない配線に接続して形成されている。このような構造は、例えば、酸化シリコン膜を基板の表面に形成する工程,電極配線構造を基板上に形成する工程,ミラーとなるポリシリコン膜を酸化シリコン膜上に形成する工程,及び酸化シリコン膜の所望の部分を犠牲層としてフッ酸等でエッチングしてミラーを基板より分離した状態にする工程などによって作製される。
【0006】
これらの表面マイクロマシン技術を構成する要素技術は、大規模集積回路のプロセス技術の応用である。このため、薄膜を形成して作製する構造の高さ方向の大きさは、たかだか数μmに制限される。ミラーの回転を可能とするため、下部の電極部906とミラー905との間隔を10μm以上設ける必要がある光スイッチ装置では、酸化シリコンからなる犠牲層の除去とともに、ポリシリコン膜の内部応力によってミラー905を持ち上げることや、支持部材902を静電力によって回動させることによりミラー905の部分を電極部906より離間させる方法がとられている。
【0007】
一方、バルクマイクロマシンタイプでは、一般的にミラーを構成する基板と電極を構成する基板とを個別に作製し、これらを連結させることによって光スイッチ装置を形成している。ミラーの作製にはSOI(Silicon on Insulator)基板を用いることが提案されている。SOI基板を用いて作製されたミラーは、単結晶のシリコンからなり、表面マイクロマシンで一般的なポリシリコンではない。ポリシリコンからなる構造体では、多結晶であるために応力起因のミラーの反りが発生するが、SOI基板を用いた単結晶シリコンから構成されるミラーでは、反りなどが比較的小さい等の利点を有する。
【0008】
以下、SOI基板を用いた光スイッチの製造について、図10の断面図を用いて概略を説明する。まず、図10(a)に示すように、SOI基板1001の埋め込み酸化膜1002が形成されている側(主表面)より、公知のフォトリソグラフィ技術とDEEP RIEなどのエッチングによって溝1001aを形成することで、埋め込み酸化膜1002上の単結晶シリコン層1003にミラー1004を形成する。
【0009】
このとき、ミラー1004の反射率を向上させるために、ミラー1004表面にAuなどの金属膜を形成する場合もある。なお、DEEP RIEは、例えばシリコンをドライエッチングするときに、SF6とC4F8のガスを交互に導入し、エッチングと側壁保護膜形成とを繰り返すことにより、アスペクト比が50にもなる溝または穴を、毎分数μmのエッチング速度で形成する技術である。
【0010】
つぎに、SOI基板1001の裏面にミラー1004の形成領域が開口したレジストパターンを形成し、水酸化カリウム水溶液などのエッチング液を用いてSOI基板1001の裏面より選択的にシリコンをエッチングする。このエッチングでは、埋め込み酸化膜1002をエッチングストッパ層として用い、図10(b)に示すように、ミラー1004の形成領域に対応するSOI基板1001の裏面に開口部1001bを形成する。次いで、埋め込み酸化膜1002の開口部1001bに露出している領域を、フッ酸を用いて選択的に除去することで、図10(c)に示すように、SOI基板1001に支持された回動可能なミラー1004が形成された状態とする。
【0011】
一方、シリコン基板1011をシリコン窒化膜あるいはシリコン酸化膜からなる所定のマスクパターンをマスクとし、水酸化カリウム水溶液で選択的にエッチングすることで、図10(d)に示すように、凹部構造が形成された状態とする。次いで、凹部構造上に蒸着法などにより金属膜を形成し、この金属膜を公知の超深度露光を用いたフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とによりパターニングし、図10(e)に示すように、電極部1012を形成する。
【0012】
最後に、図10(c)に示すミラー1004が形成されたSOI基板1001と、図10(e)に示すシリコン基板1011とを貼り合わせることで、図10(f)に示すように、電界印加によってミラー1004が可動する光スイッチ装置が製造できる。
【0013】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を本件の出願時までに発見するには至らなかった。
【0014】
【非特許文献1】
Pamela R.Patterson,Dooyoung Hah,Guo−Dung J.Su,Hiroshi Toshiyoshi,and Ming C.Wu,”MOEMS ELECTOROSTATIC SCANNING MICROMIRRORS DESIGN AND FABRICATION” Electochemical Society Proceedings Vol2002−4 p369−380,(2002)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述した表面マイクロマシン技術による光スイッチの作製では、ミラーの作製過程で、図9に示す支持部材902のように、可動構造体として支持構造体を形成するため、支持構造体を形成する工程の歩留りが他の工程の歩留りより低く、光スイッチ装置の製造歩留りを低下させる要因となっている。また、ミラー以外にも可動部分があるという可動部分の多さは、光スイッチの信頼性を低下させる要因となる。
【0016】
一方、バルクマイクロマシン技術による光スイッチの作製では、前述した表面マイクロマシンによる作製方法に比較して、ミラーの可動空間を稼ぐための犠牲層エッチングなどの工程がないので、歩留りや信頼性の点では有利な方法である。しかしながら、図10に示したこの製造方法では、ミラーの可動空間は主に、KOH溶液等によるSiの異方性エッチングによって作製されるため、以下に記す問題がある。まず、ミラー側のSOI基板においてミラーを回動可能とするためには、ほぼ基板の厚さに相当するSiのエッチングが必要となる。このとき、エッチングすべきSiの厚さは少なくとも数百μmに相当する。
【0017】
KOH溶液をエッチャントとし、例えば、市販されている厚さ625μmの、表面がSi(100)の6インチSOI基板の裏面側を、上述したようにアルカリ水溶液で異方性エッチングすると、約55度の傾斜角度を持つ(111)面を露出するようにエッチングされる。例えば、埋め込み酸化膜上のシリコン層の厚さを10μm、埋め込み酸化膜の厚さを1μmとすると、図10(b)に示したSiエッチングすべき厚さは614(=625−10−1)μmになる。
【0018】
このようなSiエッチング後において500μm角のミラーの領域を確保しようとすると、上述の異方性によって、SOI基板の裏面においては、約600μm角の領域をエッチング除去することになる。従って、一つのミラーを形成するために、ミラーの可動には関係しない無駄な領域が多くなる。これでは、チップ内におけるミラー形成部の占有する面積が大きくなり、光スイッチ装置の集積度を向上させる上で不利となる。
【0019】
さらに、このような加工法は、エッチングのために、基板の表側と裏側両方での位置合わせが必要になり、いわゆる両面アライナー工程など複雑な工程を必要とする点も欠点である、また、電極部を形成する側の基板も、ミラーの可動空間を作るために10μm以上のKOH溶液によるエッチングが必要となる。このとき、ミラーが形成される基板と同様に異方性エッチングのため、ミラーの可動空間となる凹部構造を形成しようとすると、シリコン基板の表面において、10μm角以上の領域をはじめに占有してパターニングしなければならないので、やはり電極側の集積度も上げられない。
【0020】
また、ICやLSIと言ったプレーナプロセスで作製される制御回路と、上記光スイッチ装置を一体化しようとしても、上述したような異方性エッチングに始まる電極基板の作り方では、ミラーの制御のために必要なICやLSIをあらかじめ電極基板側に作り込んでおくことや、多層配線構造を取ることも非常に困難である。このため、上述したような製造方法では、制御のための素子の高集積化やミラー当たり多数の電極配線が必要な複雑な制御系の達成が、困難なものとなっている。従って、上述した光スイッチの製造方法では、光スイッチ構造自体は小型化が可能であっても、外部に制御回路が必要となるため所望の性能を得るための装置、例えば光スイッチ装置としては大きなものとなってしまうという問題がある。
【0021】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、集積度の低下や歩留りの低下を抑制した状態で、駆動制御回路などを含む集積回路が形成された半導体基板の上にミラー素子が一体に形成された光スイッチ装置を、従来より容易により製造できるようにすることを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の実施の形態に係る光スイッチ装置は、集積回路が形成された半導体基板上に絶縁膜を介して固定された支持部材、この支持部材の上に固定された枠部及び枠部の内側に支持された板状の可動部を備えたミラー構造体、可動部の少なくとも一部に設けられた光を反射する反射部、半導体基板上に絶縁膜を介して設けられた可動部に対向する固定電極から構成された光スイッチ素子と、可動部及び固定電極に所定の電位を印加して光スイッチ素子を駆動する集積回路に組み込まれた駆動制御回路とを少なくとも備えたものである。
この光スイッチ装置は、集積回路が形成された半導体基板上において、枠部により支持された反射部を備えて可動する可動部が、固定構造体である支持部材によって固定電極の上部に空間を備えて配置されている。
【0023】
上記光スイッチ装置において、支持部材は、積層された複数の構造体から構成しても良く、例えば、支持部材は、半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1構造体と、この第1構造体の上に積層された第2構造体とから構成され、固定電極は、少なくとも第2構造体の厚さだけ支持部材より低く形成されているようにしてもよい。また、支持部材は、半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1構造体と、この第1構造体の上に積層された第2構造体と、この第2構造体の上に積層された第3構造体とから構成され、固定電極は、半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1構造体と同一の厚さの第4構造体と、この第4構造体の上に積層された第2構造体と同一の厚さの第5構造体とを含み、少なくとも第3構造体の厚さだけ支持部材より低く形成されているようにしてもよい。
【0024】
また、上記光スイッチ装置において、固定電極は、ミラー構造体に近づくほど可動部の中央部に向かって細くなるように形成されているようにしてもよい。
また、上記光スイッチ装置において、可動部は、可動電極を備えるようにしてもよい。また、可動部に発生している電荷を放電する放電手段を備えるようにしてもよい。また、複数の光スイッチ素子が、半導体基板上にマトリクス状に配列されているようにしてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における光スイッチ装置の構成例を示す概略的な断面図(a),平面図(b),及び斜視図(c)である。図1では、主に光スイッチ装置の1構成単位である一つのミラーを備えたスイッチ素子を部分的に示している。
【0026】
この光スイッチ装置の構成について説明すると、まず、例えば、シリコンからなる半導体基板101を備え、半導体基板101には、複数の素子から構成された集積回路(図示せず)が形成されている。集積回路の上には、層間絶縁膜102が形成されている。層間絶縁膜102上には、更に配線層104,層間絶縁膜105が形成されている。また、半導体基板101の上には、絶縁膜102,105を介して支持部材120が固定され、支持部材120は、ミラー構造体を支持している。
【0027】
本実施の形態において、支持部材120は、金などの導電材料から構成され、層間絶縁膜105に形成されたスルーホールを通じ、層間絶縁膜102上に形成された所定の配線層104に電気的に接続されている。また、支持部材120は、金属パターン(第1構造体)121,金属パターン122,金属パターン123,金属パターン124,金属パターン125から構成された積層構造体である。
【0028】
ミラー構造体は、支持部材120に固定された板状の枠部130と、枠部130の内側に、半導体基板101より離間して支持された板状の可動部とから構成されている。本実施の形態においては、図1に示すように、上記可動部を、一対の連結部161を介して枠部130の内側に支持された可動枠132と、1対の連結部162を介して可動枠132の内側に支持されたミラー部131とから構成した。また、ミラー部131は、例えば、直径500μm程度の円板であり、図1(a)の紙面において上方の面に反射面が形成されている。本実施の形態では、ミラー部131の上方の面の全域に反射面が形成されている。なお、反射面は、ミラー部131の一部に形成するようにしてもよい。
【0029】
加えて、枠部130,可動枠132,及びミラー部131からなるミラー構造体は、例えば金などの導電材料から構成されている。従って、本実施の形態では、ミラー部131は、支持部材120を介して前述した配線層に電気的に接続された可動電極でもある。なお、ミラー構造体を絶縁材料から構成し、この表面に金属膜を形成してミラー部に可動電極を設けるようにしてもよい。
【0030】
ここで、ミラー構造体についてより詳細に説明する。可動枠132は、枠部130の開口領域の中心を通る所定の軸を中心に回動可能となるように、上記軸上の2箇所に設けられたトーションバネのように作用する一対の連結部161により、枠部130に吊設しかつ軸着している。また、ミラー部131は、枠部130の開口領域の中心を通って上記軸とは直交する直交軸を中心に回動可能となるように、上記直交軸上の2箇所に設けられたトーションバネのように作用する一対の連結部162により、可動枠132に吊設しかつ軸着している。
【0031】
従って、ミラー部131は、2軸動作が可能な状態となっている。前述したように4つの制御電極部140を備え、ミラー部131を2軸動作可能な状態とすることで、例えば、図1(c)に示すように、ミラー部131を回動させることが可能となる。なお図1(c)は、可動枠132を約10°,ミラー部131を約10°回動させた状態を示している。
【0032】
一方、ミラー部131の下方の半導体基板101上には、絶縁膜102,105を介してミラー部131の回動動作を制御するための制御電極部(固定電極)140が形成されている。
本実施の形態において、制御電極部140は、金などの導電材料から構成され、層間絶縁膜105に形成されたスルーホールを通し、層間絶縁膜102上に形成された所定の配線層104に電気的に接続されている。また、制御電極部140も、金属パターン141,142,143,144が積層されて構成された積層構造体である。
【0033】
制御電極部140を構成する金属パターン141は、支持部材120を構成する金属パターン121と同じ膜厚に形成され、金属パターン142は金属パターン122と同じ膜厚に形成され、金属パターン143は金属パターン123と同じ膜厚に形成され、金属パターン144は金属パターン124と同じ膜厚に形成されている。従って、制御電極部140は支持部材120より、電極パターン125の膜厚だけ低く形成されている。
【0034】
なお、支持部材120を2つの金属パターンから構成し、この下層の金属パターンと同じ膜厚の金属パターンで制御電極部140を構成するなど、支持部材120を2層の積層構造体としてもよく、支持部材120を3層の積層構造体とし、制御電極部140を2層の積層構造体としてもよく、制御電極部140が支持部材120より少なくとも1層少ない状態となっていればよい。
【0035】
また、本実施の形態において、制御電極部140を構成する各金属パターンは、下層の金属パターンほど面積が大きく形成されている。また、各制御電極部140は、上部に行くほど、すなわち、ミラー構造体に近づくほど、可動部であるミラー部131の中央部に向かって細くなるように、各金属パターンが積層されている。このように構成することで、制御電極部140の上部をミラー部131により近づけた状態で、ミラー部131の可動範囲をより大きくすることが可能となる。
【0036】
制御電極部(固定電極)140は、例えば、図1(b)の平面図に示すように、4つの制御電極140a,140b,140c,140dから構成され、制御電極140a,140cと制御電極140b,140dとは、一対の連結部161を通る軸に対称に配置し、制御電極140a,140bと制御電極140c,140dとは、一対の連結部162を通る軸に対象に配置されている。このように、複数の制御電極部を備えることで、ミラー部131の姿勢をより細かく制御することが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態の光スイッチ装置では、半導体基板101に形成されている図示していない集積回路の一部として、制御回路150が構成されている。制御回路150は、例えば、固定電極である制御電極部140のうちいずれかの制御電極と可動電極であるミラー部131との間に所定の電位差を生じさせることにより、選択された制御電極(固定電極)とミラー部(可動電極)131とに電荷を誘導し、これらの電荷にクーロン力を作用させることで、ミラー部131を可動させる。
【0038】
ミラー部131は、誘導された電荷に働く静電力による回転軸周りのトルクと、可動部が回転することにより連結部161,162に生じた逆向きのトルクが釣り合う位置で静止する。また、制御回路150は、制御電極とミラー部131との間の電位差を解消し、ミラー部131に発生している電荷を放電させることで、ミラー部131の可動状態を解消させる。
【0039】
なお、本実施の形態では、図1(b)の平面図に示すように、支持部材120を、制御電極部140が形成されている空間を囲う枠状の構造体としたが、これに限るものではない。支持部材120は、ミラー構造体の枠部130の所定の箇所を支持する状態となっていればよい。例えば、図1(b)において、上記空間の4隅の枠部130下部に分離した状態で支持部材が設けられていてもよい。
【0040】
上述したように、本実施の形態によれば、駆動制御回路などを含む集積回路が形成された半導体基板の上にミラー素子が一体に形成された光スイッチ装置を、従来より容易により製造できるようになる。図2は、図1に示したスイッチ素子を、例えば半導体基板上の1平面上に、マトリクス状の配置して構成した光スイッチ装置の例である。
【0041】
以下、本実施の形態における光スイッチ装置の製造方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、例えばシリコンなどの半導体からなる半導体基板101上に、前述した制御回路などを構成する能動回路(図示せず)を形成した後、シリコン酸化物からなる層間絶縁膜102を形成する。また、層間絶縁膜102に、接続口を形成してから、この接続口を介して下層の配線などに接続電極103を介して接続する配線層104を形成する。
【0042】
これらは、公知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術とにより形成できるものである。例えば、上記能動回路は、CMOSLSIプロセスで作製することができる。また、接続電極103及び配線層104は、Au/Tiからなる金属膜を形成し、これを加工することで形成できる。上記金属膜は、下層のTiは膜厚0.1μm程度とし、上層のAuは膜厚0.3μm程度とすればよい。
【0043】
この金属膜の形成は次のようにすればよい。シリコン酸化膜の上にスパッタ法や蒸着法などによりAu/Tiを形成する。次いで、フォトリソグラフィ技術により所定のパターンを形成する。このとき、電極配線、後述するミラー基板を貼り合わせるための接続部及びワイヤボンディング用パッドを形成するためのレジストパターンを同時に形成する。このレジストパターンをマスクとし、ウエットエッチング法によりAu/Ti膜を選択的に除去し、レジストパターンを除去すれば、配線層104が形成できる。また、配線層104には、電極配線,後述するミラー基板を接続するための接続部,ワイヤボンディング用パッド(図示せず)などが形成されている。
【0044】
これらを形成した後、配線層104を覆う層間絶縁膜105を形成する。層間絶縁膜105は、例えば、感光性有機樹脂であるポリベンゾオキサゾールを塗布することで膜厚数μm程度に形成したポリイミド膜から構成することができる。なお、層間絶縁膜105は、他の絶縁材料から形成するようにしてもよい。
【0045】
つぎに、図3(b)に示すように、層間絶縁膜105に、配線層104の所定部分が露出する開口部105aを形成する。上述したように、層間絶縁膜105を感光性有機樹脂で形成した場合、開口部105aが形成される領域が開口するように露光現像してパターンを形成し、パターンを形成した後でアニールして膜を硬化させることで、開口部105aを備えた層間絶縁膜105を形成することができる。
【0046】
つぎに、図3(c)に示すように、開口部105a内を含めて層間絶縁膜105上を覆うシード層106を形成する。シード層106は、例えば、Ti/Cu/Tiからなる金属膜であり、膜厚はTi,Cuとも0.1μm程度とすればよい。
つぎに、図4(a)に示すように、平坦部における膜厚が17μm程度の犠牲パターン401を形成する。犠牲パターン401は、例えば、感光性有機樹脂であるポリベンザオキサゾールからなる膜をフォトリソグラフィ技術で加工することで形成できる。
【0047】
例えば、まず、ポリベンサオキサゾールを塗布することで、ポリイミド膜を形成し、このポリイミド膜の上に、フォトマスクを使用したコンタクトアライナやレチクルを使用したステッパを用いて露光し、所定のパターンの感光部を形成する。この感光部は、ミラー電極パターンやミラー基板を接続するための接続部分及びワイヤボンディング用パッドを形成する部分などを開口させる領域である。次いで、このような感光部が形成されたポリイミド膜を現像し、感光部を現像液に溶解し、所望の開口領域を備えた犠牲パターン401を形成する。
【0048】
つぎに、図4(b)に示すように、犠牲パターン401の開口部内に露出したシード層106上に、電解メッキ法によりCuからなる金属パターン121,141を犠牲パターン401と同じ厚さに形成する。このとき、金属パターン121,141と犠牲パターン401との表面が、ほぼ同一平面を形成するように平坦な状態にする。
【0049】
つぎに、図4(c)に示すように、前述と同様にして、所望の開口パターンを有し、平坦部における膜厚が17μm程度の犠牲パターン402を形成し、犠牲パターン402の開口部内に露出した金属パターン121,141上に、電解メッキ法によりCuからなる金属パターン122,142を犠牲パターン402と同じ厚さに形成する。このとき、金属パターン122は、この下の金属パターン121と同じ大きさに形成する。また、金属パターン142は、この下の金属パターン141よりも小さくかつ隣り合う金属パターン142同士の間隔を、隣り合う金属パターン141同士の間隔となるように形成する。
【0050】
つぎに、図4(d)に示すように、前述と同様にして、平坦部における膜厚が17μm程度の犠牲パターン403を形成し、犠牲パターン403の開口部内に露出した金属パターン122,142上に、電解メッキ法によりCuからなる金属パターン123,143を犠牲パターン403と同じ厚さに形成する。このとき、金属パターン123は、この下の金属パターン122と同じ大きさに形成する。また、金属パターン143は、この下の金属パターン142よりも小さくかつ隣り合う金属パターン143同士の間隔を、隣り合う金属パターン141同士の間隔となるように形成する。
【0051】
つぎに、図4(e)に示すように、前述と同様にして、平坦部における膜厚が17μm程度の犠牲パターン404を形成し、犠牲パターン404の開口部内に露出した金属パターン123,143上に、電解メッキ法によりCuからなる金属パターン124,144を犠牲パターン404と同じ厚さに形成する。このとき、金属パターン124は、この下の金属パターン123と同じ大きさに形成する。また、金属パターン144は、この下の金属パターン143よりも小さくかつ隣り合う金属パターン144同士の間隔を、隣り合う金属パターン141同士の間隔となるように形成する。
【0052】
つぎに、図5(a)に示すように、前述と同様にして、平坦部における膜厚が17μm程度の犠牲パターン405を形成し、犠牲パターン405の開口部に露出した金属パターン124上に、電解メッキ法によりCuからなる金属パターン125を犠牲パターン405と同じ厚さに形成する。このとき、金属パターン125は、この下の金属パターン125と同じ大きさに形成する。なお、ここでは、犠牲パターン405の金属パターン144上部には、開口部を形成せず、犠牲パターン405により金属パターン144を覆った状態とする。
【0053】
つぎに、図5(b)に示すように、金属パターン125の表面を含む犠牲パターン405表面に、Au/Tiからなる金属膜から構成されたシード層406を形成する。シード層406は、例えば、膜厚0.1μmのTi層と、この上に形成された膜厚0.1μmのAu層とから構成する。シード層406を形成したら、金属パターン125の上部が部分的に開口したレジストパターン407を形成する。
【0054】
つぎに、図5(c)に示すように、レジストパターン407の開口部内に露出したシード層406上に、電解メッキ法によりAuからなる膜厚1μm程度の金属膜408を形成する。次いで、図5(d)に示すように、レジストパターン407を除去したら、金属膜408をマスクとしてウエットエッチング法によりシード層406をエッチング除去し、図5(e)に示すように、金属パターン126が形成された状態とする。
【0055】
つぎに、図6(a)に示すように、例えばオゾンアッシャーを用いて灰化することで、犠牲パターン401,402,403,404,405を除去し、図6(a)に示すように、金属パターン121,122,123,124,125,及び金属パターン126からなる構造体と、金属パターン141,142,143,145からなる構造体とが形成され、これらの間に空間を備えた状態とする。
【0056】
この後、金属パターン121,141などをマスクとし、ウエットエッチング法によりシード層106を選択的にエッチング除去することで、図6(b)に示すように、支持部材120と制御電極部140とが形成された状態とする。ここで、制御電極部140は、隣り合う各金属パターン141,142,143,145同士の間隔を同一の状態とし、かつ、上部に行くほど、すなわち以降で形成されるミラー構造体に近づくほど小さくなるように形成した。この結果、制御電極部140は、ミラー部131の中央部に向かって細くなるように形成された状態となる。
【0057】
この後、ミラー部131が回動可能に連結部(図示せず)を介して設けられた枠部130を、支持部材120上に接続固定することで、図6(c)に示すように光スイッチ装置が形成される。枠部130の支持部材120への接続固定は、例えば、ハンダや異方性導電性接着剤により接着固定することで行えばよい。
【0058】
以上説明した製造方法によれば、最初にミラー駆動及び制御のための能動回路(集積回路)を下層電極基板に形成しておき、この後、上述したように制御電極部や固定された支持部材を形成し、支持部材の上にミラー基板を接続して光スイッチ装置を製造するようにした。また、上述では、制御電極部や支持部材を、金属(導電体)パターンを積層することにより形成した。この結果、本実施の形態によれば、光スイッチ装置の小型化を可能とし、また、高い性能の光スイッチ装置を得ることができる。
【0059】
つぎに、他の製造方法について説明する。この製造方法では、前述した製造方法において、図3(a)〜図5(a)を用いて説明した工程までは、同様である。従って、以降では、これらの説明は省略する。本製造方法では、前述した製造方法と同様にし、金属パターン125を犠牲パターン405と同じ厚さに形成した後、図7(a)に示すように、金属パターン125の表面を含む犠牲パターン405表面に、Au/Tiからなる金属膜から構成されたシード層406を形成する。シード層406は、例えば、膜厚0.1μmのTi層と、この上に形成された膜厚0.1μmのAu層とから構成する。
【0060】
シード層406を形成したら、レジストパターン701を形成する。次いで、図7(b)に示すように、レジストパターン701の形成領域以外に露出しているシード層406上に、電解メッキ法によりAuからなる膜厚1μmの金属膜702を形成する。つぎに、レジストパターン701を除去した後、金属膜702をマスクとしてシード層406を選択的に除去することで、図7(c)に示すように、枠部130とミラー部131とが形成された状態とする。
【0061】
なお、ミラー部131は、トーションバネのように作用する連結部により枠部130に固定されている。連結部は、枠部130とミラー部131との間のレジストパターン701により被覆されていなかった箇所の金属膜702とシード層406とから形成されたものである。
【0062】
以上のようにして枠部130及びミラー部131を形成したら、枠部130とミラー部131との間の開口部を介し、犠牲パターン401,402,403,404,405を、例えばオゾンアッシャーを用いて灰化する。この後、金属パターン121,141をマスクとしてシード層106を選択的に除去することで、図7(d)に示すように、枠部130及びミラー部131の下に、支持部材120と制御電極部140とが形成された状態とする。ミラー部131は、制御電極部140上に所定の間隔をあけて配置された状態となる。
【0063】
以上説明したように、図7を用いて説明した製造方法においても、最初にミラー駆動及び制御のための能動回路を下層電極基板に形成しておき、この後、上述したように制御電極部や支持部材を導電体パターンを積層することにより形成し、支持部材上に枠部及びミラー部を形成して光スイッチ装置を製造するようにした。この結果、本製造方法によれば、光スイッチ装置の小型化を可能とし、また、高い性能の光スイッチ装置を得ることができる。
【0064】
また、本製造方法では、枠部及びミラー部を一枚の金属膜から形成するようにしたので、貼り合わせる工程が不要となり、この点で製造上の利点がある。なお応力による金属ミラーの反りを防ぐため,異なる応力特性を持つメッキ可能な金属を多層に積層して応力を制御したミラーを作製することが可能なことは,当業者であれば容易に推察できよう。
【0065】
つぎに、他の製造方法について説明する。この製造方法では、前述した製造方法において、図3(a)〜図5(a)を用いて説明した工程までは、同様である。従って、以降では、これらの説明は省略する。本製造方法では、前述した製造方法と同様にし、金属パターン125を犠牲パターン405と同じ厚さに形成した後、図8に示すように、金属パターン125の表面を含む犠牲パターン405表面に、比較的低温で薄膜堆積可能なECRCVD法を用いてポリシリコンからなる薄膜801を膜厚1μm形成する。
【0066】
薄膜801を形成したら、図8(b)に示すように、レジストパターン802を形成する。次いで、レジストパターン802の開口部より薄膜801を選択的にエッチング除去し、レジストパターン802を除去することで、図8(c)に示すように、枠部830とミラー部831とが形成された状態とする。
【0067】
以上のようにして枠部830及びミラー部831を形成したら、枠部830とミラー部831との間の開口部を介し、犠牲パターン401,402,403,404,405を、例えばオゾンアッシャーを用いて灰化する。この後、金属パターン121,141をマスクとしてシード層106を選択的に除去することで、図8(d)に示すように、枠部830及びミラー基板831の下に、支持部材120と制御電極部140とが形成された状態とする。ミラー部831は、制御電極部140上に所定の間隔をあけて配置された状態となる。
【0068】
なお、ミラー部831は、トーションバネのように作用する連結部(図示せず)により枠部830に固定されている。連結部は、枠部830とミラー部831との間のレジストパターン802の開口部下の箇所の薄膜801から形成されたものである。
【0069】
以上説明したように、図8を用いて説明した製造方法においても、最初にミラー駆動及び制御のための能動回路を下層電極基板に形成しておき、この後、上述したように制御電極部や支持部材を形成し、支持部材上に枠部及びミラー部を形成して光スイッチ装置を製造するようにした。この結果、本製造方法によれば、光スイッチ装置の小型化を可能とし、また、高い性能の光スイッチ装置を得ることができる。また、本製造方法では、貼り合わせることなくミラーを形成するようにしたので、貼り合わせる工程が不要となり、この点で製造上の利点がある。
なお、上述では、支持部材120及び制御電極部140を銅メッキによって形成する例を示したが、これらは、金メッキなどメッキ可能な金属のメッキにより形成してもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、駆動制御回路などを含む集積回路が形成された半導体基板の上に、駆動制御回路により動作が制御される反射面を有する可動部と、これを支持する固定された支持部材とを備えたミラー素子が形成されているようにした。この結果、本発明によれば、集積度の低下や歩留りの低下を抑制した状態で、従来より容易により微細な光スイッチ装置が製造できるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における光スイッチ装置を構成するスイッチ素子の概略的な構成を示す断面図(a),平面図(b),斜視図(c)である。
【図2】本発明の実施の形態における光スイッチ装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における光スイッチの製造方法を説明する工程図である。
【図4】図3に続く、光スイッチの製造過程を示す工程図である。
【図5】図4に続く、光スイッチの製造過程を示す工程図である。
【図6】図5に続く、光スイッチの製造過程を示す工程図である。
【図7】光スイッチ装置の他の製造方法を説明する工程図である。
【図8】光スイッチ装置の他の製造方法を説明する工程図である。
【図9】従来の光スイッチ装置の概略的な構成を示す側面図である。
【図10】従来の光スイッチ装置の製造過程を概略的に示す工程図である。
【符号の説明】
101…半導体基板、102…層間絶縁膜、103…接続電極、104…配線層、105…層間絶縁膜、120…支持部材、121…金属パターン(第1構造体)、122,123,124,125…金属パターン、130…枠部、131…ミラー部、132…可動枠、140…制御電極部、140a,140b,140c,140d…制御電極、141,142,143,144…金属パターン、150…制御回路、161,162…連結部。
Claims (8)
- 集積回路が形成された半導体基板上に絶縁膜を介して固定された支持部材、
この支持部材の上に固定された枠部及び前記枠部の内側に支持された板状の可動部を備えたミラー構造体、
前記可動部の少なくとも一部に設けられた光を反射する反射部、
前記半導体基板上に絶縁膜を介して設けられた前記可動部に対向する固定電極
から構成された光スイッチ素子と、
前記可動部及び前記固定電極に所定の電位を印加して前記光スイッチ素子を駆動する前記集積回路に組み込まれた駆動制御回路と
を少なくとも備えたことを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項1記載の光スイッチ装置において、
前記支持部材は、積層された複数の構造体から構成されたことを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項2記載の光スイッチ装置において、
前記支持部材は、前記半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1構造体と、この第1構造体の上に積層された第2構造体とから構成され、
前記固定電極は、少なくとも前記第2構造体の厚さだけ前記支持部材より低く形成され
たことを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項2記載の光スイッチ装置において、
前記支持部材は、前記半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1構造体と、この第1構造体の上に積層された第2構造体と、この第2構造体の上に積層された第3構造体とから構成され、
前記固定電極は、前記半導体基板上に絶縁膜を介して形成された前記第1構造体と同一の厚さの第4構造体と、この第4構造体の上に積層された前記第2構造体と同一の厚さの第5構造体とを含み、少なくとも前記第3構造体の厚さだけ前記支持部材より低く形成され
たことを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項4記載の光スイッチ装置において、
前記固定電極は、前記ミラー構造体に近づくほど前記可動部の中央部に向かって細くなるように形成されている
ことを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の光スイッチ装置において、
前記可動部は、可動電極を備えることを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光スイッチ装置において、
前記可動部に発生している電荷を放電する放電手段を備えることを特徴とする光スイッチ装置。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の光スイッチ装置において、
複数の前記光スイッチ素子が、前記半導体基板上にマトリクス状に配列されている
ことを特徴とする光スイッチ装置。
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