JP2004113897A - ドープの濾過方法及びその方法を用いたフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】ドープの濾過において微小サイズの異物まで効率的に除去でき、しかも濾過寿命も長くできる。
【解決手段】ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物を濾過により除去するドープの濾過方法において、ドープ中の異物を、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器38、38を直列に配置して濾過する。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物を濾過により除去するドープの濾過方法において、ドープ中の異物を、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器38、38を直列に配置して濾過する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はドープの濾過方法及びその方法を用いたフィルムに係り、特にセルロースアシレートフィルムの製膜に使用されるセルロースアシレート溶液のドープから異物を濾過する濾過方法及びその方法を用いたフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレート、特にセルローストリアセテートから形成されたフィルム(以下、TACフィルムと称する)は、その強靱性と難燃性とから写真感光材料のフィルムベースなどとして利用されている。また、TACフィルムは、光学的等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルムやカラーフィルムの用途に適している。
【0003】
TACフィルムは、一般的に溶液製膜法により製造され、メルトキャスト法などの他の製造方法と比較して、光学的性質や物性が優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜法は、ポリマーを溶媒(主に有機溶媒)に溶解してドープを調製した後、このドープを流延バンドや流延ドラムなどの流延支持体に流延して製膜する方法である。
【0004】
溶液製膜法に用いられるドープ中のポリマーには、天然素材を原料として用いるものがあり、その原料中には、ドープの有機溶媒に溶解しないものや、溶解しにくいものを少量含んでいる場合がある。また、ポリマー及びその他の原料中に含まれる不純物や、原料の搬送工程及び溶解工程で混入するゴミや埃などの異物などがドープ中に含まれる場合もある。なお、本発明において、ポリマーが溶媒に溶解しなかった未溶解ポリマー、ドープ中でゾル化しているポリマー、原料中の不純物、前記異物などの溶媒に溶解しないもの全てを異物と称する。これらの異物を含有するドープは、ドープを調製して流延するまでに濾過により除去され、これにより製膜されたフィルムに欠陥が生じるのを防止している。従って、ドープ中の異物まで精度良く除去する必要があり、通常、濾過により異物を除去している。
【0005】
ドープを濾過する従来の濾過方法の考えは、ドープ中から精度よく異物を除去するために、なるべく孔径の小さなフィルタを備えた単一の濾過器を使用していた。例えば特許文献1には、ドープを保留粒子径8μm以下の濾紙を用いて濾過して製膜することが開示されている。また、特許文献2には、ドープを濾水時間20秒以上の濾紙を用い、且つ16Kg/cm2 以下の濾過圧力で濾過、製膜することが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−256477号公報
【0007】
【特許文献2】特開2000−204173号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、近年のように高品質のフィルムが要望され、除去すべき異物サイズが小さくなっている現状では、それに応じてますます微小孔径のフィルタを使用しなくてはならず、濾過寿命が極端に悪くなるという問題がある。このように濾過寿命が短くなるとドープ調製の調製時間が長くなり、ドープを溶液製膜法で製造するフィルムの生産性も落ちてしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、ドープの濾過において微小サイズの異物まで効率的に除去でき、しかも濾過寿命も長くでき、この濾過方法を使用することで生産性を落とさずに高品質のフィルムを製造することができるドープの濾過方法及びフィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物を濾過により除去するドープの濾過方法において、前記ドープ中の異物を、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置して濾過することを特徴とする。ここで「孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器」とは、2基以上直列に配置した焼結金属フィルタの濾過器において、焼結金属フィルタの孔径が全ての濾過器とも同一であることをいう。
【0011】
このように、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置してドープを濾過することにより、焼結金属フィルタの孔径よりも微小な異物までを精度良く除去でき、しかも1基の焼結金属フィルタの孔径を小さくして同じ異物除去性能を得る場合に比べて格段に濾過寿命を長くできる。これにより、高品質のフィルムが要望され、除去すべき異物サイズが小さくなっても、それに応じて焼結金属フィルタの孔径を小さくする必要がないので、濾過寿命の低下を抑制でき、フィルム製造の生産性を向上できる。
【0012】
本発明の請求項2は、請求項1において、焼結金属フィルタを備えた濾過器でドープを濾過する前に、濾紙フィルタを備えた濾過器で予め粗濾過することを特徴とするもので、これにより、焼結金属フィルタの濾過寿命を更に延ばすことができる。
【0013】
本発明の請求項3は、請求項1又は2において、焼結金属フィルタを備えた濾過器の後に、該焼結金属フィルタの孔径よりも大きな孔径の焼結金属フィルタを備えた保証用濾過器を配置することを特徴とするものである。これにより、焼結金属フィルタのフィルタ交換時等に、外部からの異物が万が一ドープ中に混入しても、保証用濾過器で除去することができるので、フィルムに発生する異物に起因した故障を極力なくすことができる。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項1〜3の何れか1において、ドープはセルロースアシレート溶液であることを特徴とする。これは、写真感光材料のフィルムベース、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム等を溶液製膜方法で製膜するためのドープとして優れた適性を備えているセルロースアシレート溶液の濾過は、厳密な異物除去が要求されることから、従来の単一の濾過方法では目詰まりが極端に早くなる。従って、本発明の濾過方法をセルロースアシレート溶液に適用することは極めて有効である。特に、セルロースアシレート溶液の種類の中でも、セルロースアセテートがより好ましく、セルローストリアセテート(TAC)が最も好ましい。
【0015】
本発明の請求項5は、前記目的を達成するために、請求項1〜4の何れか1のドープの濾過方法で得られたドープを使用して溶液製膜法により製造されたフィルムを特徴とするものであり、本発明のドープの濾過方法を使用することにより高品質なフィルムを得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るドープの濾過方法及びフィルムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0017】
図1は、本発明に係るドープの濾過方法を組み込んだドープ調整ラインの概念図である。
【0018】
ドープ調製ライン10は、溶媒タンク11から必要な量の溶媒を仕込みタンク12に送液する。溶媒タンク11には、溶媒(混合溶媒を用いるときも以下の説明においては、単に溶媒と称する場合もある)が注入されている。この溶媒は、送液量を調整しながら送液される。
【0019】
次に、計量器14に仕込まれているポリマーを仕込みタンク12に計量しながら送り込む。ポリマーは、前述した溶媒に対して15重量%〜20重量%仕込むことが好ましく、これにより調製されたドープを製膜して得られるフィルムの品質が良好なものが得られる。しかしながら、本発明において溶媒に仕込むポリマー量は前述した範囲に限定されるものではない。なお、ポリマーにはTACを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
さらに、可塑剤タンク15から必要量の可塑剤を仕込みタンク12に送り込む。なお、可塑剤には、トリフェニルホスフェートを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。なお、本発明において仕込みタンク12に送り込む可塑剤の量は、前述したポリマーに対して5重量%〜20重量%であると、調製されたドープから製膜されたフィルムの可塑性が製品として最も好ましい柔軟性を持つものが得られる。しかしながら、本発明において仕込みタンク12に送り込む可塑剤の量は前述した範囲に限定されるものではない。
【0021】
また、前述した説明においては、仕込みタンク12に仕込む順番が、溶媒、ポリマー、可塑剤の順であったが、本発明は必ずしもこの順に限定されるものではない。例えば、ポリマーを計量し、仕込みタンク12に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することも可能である。また、可塑剤は必ずしも仕込みタンク12に予め送り込む必要はなく、後の工程でポリマーと溶媒との混合物に混合することもできる。
【0022】
仕込みタンク12には、モータ17により回転する上下2段式の攪拌翼18が備えられている。攪拌翼18が回転することにより、仕込みタンク12内に送り込まれていた溶媒、ポリマー、必要に応じて送り込まれていた可塑剤及びその他の添加剤を攪拌することで、溶媒にポリマーなどの溶質を粗溶解させる。粗溶解とは、溶質が完全に溶媒に溶解していない状態を意味している。本発明においてドープ原液を調製するために、仕込みタンク12中で攪拌翼18により攪拌する時間は、120〜540分であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0023】
仕込みタンク12で調整されたドープ原液はポンプ20により配管22を流れて貯留タンク28に送られる。この仕込みタンク12と貯留タンク28との間には加熱器23が設置され、ドープ原液中の更なる未溶解物を加熱溶解することが好ましい。加熱温度としては60〜120°Cが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、加熱器23で加熱した場合には、その後に冷却器25を通して、ドープ原液を構成している主要溶媒の沸点以下まで冷却することが、良好な品質のフィルムを製膜するためのドープ原液を調製するために好ましい。
【0024】
その後、第1濾過工程24に送液される。第1濾過工程24には、濾紙フィルタを備えた濾過器26が設られ、ドープ中の大径サイズから小径サイズの異物のうち比較的大径サイズの異物が粗濾過される。図1では、濾紙フィルタを備えた1基の濾過器26を示したが、同一の孔径の濾紙フィルタを2基以上直列に配置してもよい。この場合には、1基の場合よりも濾紙フィルタの孔径を大きくしても同じ異物除去性能を得ることができ、濾過寿命も延ばすことができる。
【0025】
第1濾過工程24で粗濾過されたドープ原液は、貯留タンク28に送液される。貯留タンク28のドープ原液はポンプ27により配管29を通って第2濾過工程36に送液される。第2濾過工程36には、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器38、38が直列に配置される(図1では2基の濾過器38を示した)。焼結金属フィルタの形状は、円筒形、円板形、ディスク状等のものが適宜使用される。このように、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器38を直列に配置してドープを濾過することにより、焼結金属フィルタの孔径よりも微小な異物までを精度良く除去でき、しかも1基の焼結金属フィルタの孔径を小さくして同じ異物除去性能を得る場合に比べて格段に濾過寿命を長くできる。例えば、5μmの孔径を有する焼結金属フィルタを備えた1基の濾過器38で得られる異物除去性能と同じ性能を2基の濾過器38で得ようとする場合、焼結金属フィルタの孔径を約10μm、即ち約2倍まで大きくすることができる。更に直列配置する濾過器38の数を増やす場合には、焼結金属フィルタの孔径を更に大きくすることが可能なので、設備費や生産性との兼ね合いで濾過器38の配置数を決めるとよい。
【0026】
第2濾過工程36で濾過されたドープ原液は、中間タンク40に一旦貯留されてから、ポンプ42によって保証濾過器44に送液されて仕上げ濾過される。これにより、高品質なフィルムを製造する上で悪影響のあるサイズの異物が除去されたドープが調製され、次工程の溶液製膜ラインに送られる。保証濾過器44は、第2濾過工程36のフィルタ交換時等に、外部からの異物が万が一濾過器38内のドープに混入しても、保証濾過器44で除去できるようにしたもので、第2濾過工程36で使用する焼結金属フィルタの孔径よりも大きな孔径の焼結金属フィルタが使用される。例えば、第2濾過工程36での焼結金属フィルタの孔径を10μmとした場合には、保証濾過器44の焼結金属フィルタの孔径は40μm〜80μm程度にするとよい。
【0027】
溶液製膜ラインについては、周知のラインを使用することができ特に図示しないが、一般的にはダイから流延支持体(流延バント又は流延ドラム)に流延した薄膜のドープを流延支持体から剥離した後、テンター装置、乾燥装置等を経てフィルムに製造される。
【0028】
尚、本発明に用いられるポリマーとしては、セルロースエステルを用いることが好ましい。また、セルロースエステルの中では、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、セルロースアセテートを使用することが好ましい。さらに、このセルロースアセテートの中では、その平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のセルローストリアセテート(TAC)を使用することが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。本発明では、セルロースアシレート粒子を使用し、使用する粒子の90重量%以上が0.1〜4mmの粒子径、好ましくは1〜4mmを有する。また、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の粒子が0.1〜4mmの粒子径を有する。さらに、使用する粒子の50重量%以上が2〜3mmの粒子径を有することが好ましい。より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の粒子が2〜3mmの粒子径を有する。セルロースアシレートの粒子形状は、なるべく球に近い形状を有することが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる溶媒を、塩素系有機溶媒を主溶媒とすることも、非塩素系有機溶媒を主溶媒とすることも可能である。
【0030】
塩素系有機溶媒とは、一般的にハロゲン化炭化水素化合物を意味しており、代表的な例として、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また非塩素系有機溶媒としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などがあるが、これらに限定されるものではない。溶媒は、市販品の純度であれば、特に制限される要因はない。溶媒は、単独(100重量%)で使用しても良いし、炭素数1〜6のエステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類を混合して使用するものでもよい。使用できる溶媒の例には、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,メチルーt−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなど)などが挙げられる。なお、本発明に用いられる有機溶媒には、前述した塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とを混合して用いることも可能である。
【0031】
本発明のドープ中には添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤などがある。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他の可塑剤を用いることができる。
【0032】
紫外線吸収剤としては例えば、オキシベンゾフエノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル酢塩系化合物及びその他の紫外線吸収剤を用いることができる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。
【0033】
【実施例】
以下に本発明のドープ濾過方法を実施した本実施例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0034】
本実施例は、本発明のドープ濾過方法を組み込んだ図1のドープ調製ラインを使用してドープの調製を行った。即ち、仕込みタンクにおいて表1の材料組成を混合溶解してドープ原液を調製し、このドープ原液を濾紙フィルタ(東洋濾紙♯63)を備えた第1濾過工程で粗濾過した後、公称10μm保証の日本精線製の焼結金属フィルタを備えた濾過器を2基直列に配置した第2の濾過工程で濾過した。
【0035】
一方、比較例1及び2は、図2に示したドープ調製ラインを使用してドープの調製を行った。即ち、第1の濾過工程は本実施例と同じであるが、第2の濾過工程には、公称10μm保証の焼結金属フィルタ(比較例1)又は公称5μm保証の焼結金属フィルタ(比較例2)を1基だけ配置した。
【0036】
【表1】
【0037】
そして、本実施例及び比較例1、2について異物除去性能と濾過寿命を比較した。
【0038】
異物除去性能は、本実施例、比較例1、2で得られたドープを使用して溶液製膜ラインで乾燥膜80μmのフィルムをそれぞれ製造し、得られたフィルムをクロスニコル状態で配置した2枚の偏光板の間に置き、一方の偏光板の外側から光を当てて、他方の偏光板の外側から光学顕微鏡(倍率50倍)で認識できる輝点異物を大きさごとに区分けしてカウントした。このカウント操作を1つのフィルムにつき20箇所(合計面積5.5mm2 )行い、合計した輝点異物を表2に示すように、5〜10μm、10〜15μm、15〜20μmの区分の異物数として示した。図3は、表2を棒グラフで表したものである。
【0039】
【表2】
【0040】
表2及び図3から分かるように、第1濾過の粗濾過だけのドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が51個、10〜15μmの異物が17個、15〜20μmの異物が3個あった。
【0041】
比較例1のドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が31個、10〜15μmの異物が9個、15〜20μmの異物が0個あり、第1濾過だけの場合よりも改良されているものの、高品質のフィルムを製造する上で十分ではない。
【0042】
比較例2のドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が22個、10〜15μmの異物が2個、15〜20μmの異物が0個あり、比較例1の場合よりも良い結果であった。
【0043】
これに対し、本実施例のドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が16個、10〜15μmの異物が0個、15〜20μmの異物が0個あり、比較例2の場合よりも更に良い結果が得られた。
【0044】
次に、図4に示すように、本実施例、比較例1、2におけるドープ総流量に対する濾過圧力を調べることで、濾過寿命を対比した。
【0045】
図4の●は本実施例における1段目の焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図1のAの位置で測定したものである。○は本実施例における2段目の焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図1のBの位置で測定したものである。▲は比較例1における焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図2のCの位置で測定したものである。■は比較例2における焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図2のCの位置で測定したものである。
【0046】
図4から分かるように、公称5μm保証の焼結金属フィルタを備えた濾過器を1基備えた比較例2の場合には、ドープの総流量が10(L/200cm2)のときの濾過圧力は0.65MPaとなり、公称10μm保証の焼結金属フィルタを備えた濾過器を1基備えた比較例1の場合には、ドープの総流量が10(L/200cm2)のときの濾過圧力は0.25MPaである。
【0047】
これに対し、公称10μm保証の焼結金属フィルタを備えた濾過器を2基直列に配置して濾過をした本実施例の場合には、ドープの総流量が10(L/200cm2)のときの1段目の焼結金属フィルタの濾過圧力が0.45MPaで比較例2と比較例1の中間であり、2段目の焼結金属フィルタの濾過圧力が0.17MPaで比較例1よりも更に小さくなる。この結果から、本実施例は比較例2と同等以上の異物除去性能を有していながら、比較例2よりも格段に濾過圧力の上昇程度が小さく、実際に濾過寿命も長くなった。
【0048】
以上説明した表2及び図3の異物除去性能と、図4の濾過圧力の上昇程度から分かるように、本発明のように、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置して濾過することにより、ドープの濾過において5〜10μmの微小サイズの異物まで除去でき、しかも濾過寿命も長くできる。従って、フィルム製造の生産製を落とすことなく、高品質なフィルムを製造することができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るドープの濾過方法によれば、ドープの濾過において微小サイズの異物まで除去でき、しかも濾過寿命も長くできる。
【0050】
従って、本発明のドープの濾過方法を使用すれば、生産性を落とさずに高品質なフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドープ濾過方法を組み込んだドープ調製ラインの概念図
【図2】比較例のドープ調製ラインの概念図
【図3】本実施例と比較例の異物除去性能を比較した図
【図4】本実施例と比較例の濾過圧力を比較した図
【符号の説明】
10…ドープ調製ライン、11…溶媒タンク、12…仕込みタンク、14…計量器、15…可塑剤タンク、18…2段羽根式の攪拌翼、20…ポンプ、24…第1濾過工程、26…濾紙フィルタの濾過器、28…貯留タンク、32…2段羽根式の攪拌翼、34…ポンプ、36…第2濾過工程、38…焼結金属フィルタの濾過器、40…中間タンク、42…ポンプ、44…保証濾過器
【発明の属する技術分野】
本発明はドープの濾過方法及びその方法を用いたフィルムに係り、特にセルロースアシレートフィルムの製膜に使用されるセルロースアシレート溶液のドープから異物を濾過する濾過方法及びその方法を用いたフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレート、特にセルローストリアセテートから形成されたフィルム(以下、TACフィルムと称する)は、その強靱性と難燃性とから写真感光材料のフィルムベースなどとして利用されている。また、TACフィルムは、光学的等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルムやカラーフィルムの用途に適している。
【0003】
TACフィルムは、一般的に溶液製膜法により製造され、メルトキャスト法などの他の製造方法と比較して、光学的性質や物性が優れたフィルムを製造することができる。溶液製膜法は、ポリマーを溶媒(主に有機溶媒)に溶解してドープを調製した後、このドープを流延バンドや流延ドラムなどの流延支持体に流延して製膜する方法である。
【0004】
溶液製膜法に用いられるドープ中のポリマーには、天然素材を原料として用いるものがあり、その原料中には、ドープの有機溶媒に溶解しないものや、溶解しにくいものを少量含んでいる場合がある。また、ポリマー及びその他の原料中に含まれる不純物や、原料の搬送工程及び溶解工程で混入するゴミや埃などの異物などがドープ中に含まれる場合もある。なお、本発明において、ポリマーが溶媒に溶解しなかった未溶解ポリマー、ドープ中でゾル化しているポリマー、原料中の不純物、前記異物などの溶媒に溶解しないもの全てを異物と称する。これらの異物を含有するドープは、ドープを調製して流延するまでに濾過により除去され、これにより製膜されたフィルムに欠陥が生じるのを防止している。従って、ドープ中の異物まで精度良く除去する必要があり、通常、濾過により異物を除去している。
【0005】
ドープを濾過する従来の濾過方法の考えは、ドープ中から精度よく異物を除去するために、なるべく孔径の小さなフィルタを備えた単一の濾過器を使用していた。例えば特許文献1には、ドープを保留粒子径8μm以下の濾紙を用いて濾過して製膜することが開示されている。また、特許文献2には、ドープを濾水時間20秒以上の濾紙を用い、且つ16Kg/cm2 以下の濾過圧力で濾過、製膜することが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−256477号公報
【0007】
【特許文献2】特開2000−204173号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、近年のように高品質のフィルムが要望され、除去すべき異物サイズが小さくなっている現状では、それに応じてますます微小孔径のフィルタを使用しなくてはならず、濾過寿命が極端に悪くなるという問題がある。このように濾過寿命が短くなるとドープ調製の調製時間が長くなり、ドープを溶液製膜法で製造するフィルムの生産性も落ちてしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、ドープの濾過において微小サイズの異物まで効率的に除去でき、しかも濾過寿命も長くでき、この濾過方法を使用することで生産性を落とさずに高品質のフィルムを製造することができるドープの濾過方法及びフィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物を濾過により除去するドープの濾過方法において、前記ドープ中の異物を、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置して濾過することを特徴とする。ここで「孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器」とは、2基以上直列に配置した焼結金属フィルタの濾過器において、焼結金属フィルタの孔径が全ての濾過器とも同一であることをいう。
【0011】
このように、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置してドープを濾過することにより、焼結金属フィルタの孔径よりも微小な異物までを精度良く除去でき、しかも1基の焼結金属フィルタの孔径を小さくして同じ異物除去性能を得る場合に比べて格段に濾過寿命を長くできる。これにより、高品質のフィルムが要望され、除去すべき異物サイズが小さくなっても、それに応じて焼結金属フィルタの孔径を小さくする必要がないので、濾過寿命の低下を抑制でき、フィルム製造の生産性を向上できる。
【0012】
本発明の請求項2は、請求項1において、焼結金属フィルタを備えた濾過器でドープを濾過する前に、濾紙フィルタを備えた濾過器で予め粗濾過することを特徴とするもので、これにより、焼結金属フィルタの濾過寿命を更に延ばすことができる。
【0013】
本発明の請求項3は、請求項1又は2において、焼結金属フィルタを備えた濾過器の後に、該焼結金属フィルタの孔径よりも大きな孔径の焼結金属フィルタを備えた保証用濾過器を配置することを特徴とするものである。これにより、焼結金属フィルタのフィルタ交換時等に、外部からの異物が万が一ドープ中に混入しても、保証用濾過器で除去することができるので、フィルムに発生する異物に起因した故障を極力なくすことができる。
【0014】
本発明の請求項4は、請求項1〜3の何れか1において、ドープはセルロースアシレート溶液であることを特徴とする。これは、写真感光材料のフィルムベース、液晶表示装置の偏光板の保護フィルム、光学補償フィルム等を溶液製膜方法で製膜するためのドープとして優れた適性を備えているセルロースアシレート溶液の濾過は、厳密な異物除去が要求されることから、従来の単一の濾過方法では目詰まりが極端に早くなる。従って、本発明の濾過方法をセルロースアシレート溶液に適用することは極めて有効である。特に、セルロースアシレート溶液の種類の中でも、セルロースアセテートがより好ましく、セルローストリアセテート(TAC)が最も好ましい。
【0015】
本発明の請求項5は、前記目的を達成するために、請求項1〜4の何れか1のドープの濾過方法で得られたドープを使用して溶液製膜法により製造されたフィルムを特徴とするものであり、本発明のドープの濾過方法を使用することにより高品質なフィルムを得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るドープの濾過方法及びフィルムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0017】
図1は、本発明に係るドープの濾過方法を組み込んだドープ調整ラインの概念図である。
【0018】
ドープ調製ライン10は、溶媒タンク11から必要な量の溶媒を仕込みタンク12に送液する。溶媒タンク11には、溶媒(混合溶媒を用いるときも以下の説明においては、単に溶媒と称する場合もある)が注入されている。この溶媒は、送液量を調整しながら送液される。
【0019】
次に、計量器14に仕込まれているポリマーを仕込みタンク12に計量しながら送り込む。ポリマーは、前述した溶媒に対して15重量%〜20重量%仕込むことが好ましく、これにより調製されたドープを製膜して得られるフィルムの品質が良好なものが得られる。しかしながら、本発明において溶媒に仕込むポリマー量は前述した範囲に限定されるものではない。なお、ポリマーにはTACを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
さらに、可塑剤タンク15から必要量の可塑剤を仕込みタンク12に送り込む。なお、可塑剤には、トリフェニルホスフェートを用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。なお、本発明において仕込みタンク12に送り込む可塑剤の量は、前述したポリマーに対して5重量%〜20重量%であると、調製されたドープから製膜されたフィルムの可塑性が製品として最も好ましい柔軟性を持つものが得られる。しかしながら、本発明において仕込みタンク12に送り込む可塑剤の量は前述した範囲に限定されるものではない。
【0021】
また、前述した説明においては、仕込みタンク12に仕込む順番が、溶媒、ポリマー、可塑剤の順であったが、本発明は必ずしもこの順に限定されるものではない。例えば、ポリマーを計量し、仕込みタンク12に送り込んだ後に、好ましい量の溶媒を送液することも可能である。また、可塑剤は必ずしも仕込みタンク12に予め送り込む必要はなく、後の工程でポリマーと溶媒との混合物に混合することもできる。
【0022】
仕込みタンク12には、モータ17により回転する上下2段式の攪拌翼18が備えられている。攪拌翼18が回転することにより、仕込みタンク12内に送り込まれていた溶媒、ポリマー、必要に応じて送り込まれていた可塑剤及びその他の添加剤を攪拌することで、溶媒にポリマーなどの溶質を粗溶解させる。粗溶解とは、溶質が完全に溶媒に溶解していない状態を意味している。本発明においてドープ原液を調製するために、仕込みタンク12中で攪拌翼18により攪拌する時間は、120〜540分であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0023】
仕込みタンク12で調整されたドープ原液はポンプ20により配管22を流れて貯留タンク28に送られる。この仕込みタンク12と貯留タンク28との間には加熱器23が設置され、ドープ原液中の更なる未溶解物を加熱溶解することが好ましい。加熱温度としては60〜120°Cが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、加熱器23で加熱した場合には、その後に冷却器25を通して、ドープ原液を構成している主要溶媒の沸点以下まで冷却することが、良好な品質のフィルムを製膜するためのドープ原液を調製するために好ましい。
【0024】
その後、第1濾過工程24に送液される。第1濾過工程24には、濾紙フィルタを備えた濾過器26が設られ、ドープ中の大径サイズから小径サイズの異物のうち比較的大径サイズの異物が粗濾過される。図1では、濾紙フィルタを備えた1基の濾過器26を示したが、同一の孔径の濾紙フィルタを2基以上直列に配置してもよい。この場合には、1基の場合よりも濾紙フィルタの孔径を大きくしても同じ異物除去性能を得ることができ、濾過寿命も延ばすことができる。
【0025】
第1濾過工程24で粗濾過されたドープ原液は、貯留タンク28に送液される。貯留タンク28のドープ原液はポンプ27により配管29を通って第2濾過工程36に送液される。第2濾過工程36には、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器38、38が直列に配置される(図1では2基の濾過器38を示した)。焼結金属フィルタの形状は、円筒形、円板形、ディスク状等のものが適宜使用される。このように、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器38を直列に配置してドープを濾過することにより、焼結金属フィルタの孔径よりも微小な異物までを精度良く除去でき、しかも1基の焼結金属フィルタの孔径を小さくして同じ異物除去性能を得る場合に比べて格段に濾過寿命を長くできる。例えば、5μmの孔径を有する焼結金属フィルタを備えた1基の濾過器38で得られる異物除去性能と同じ性能を2基の濾過器38で得ようとする場合、焼結金属フィルタの孔径を約10μm、即ち約2倍まで大きくすることができる。更に直列配置する濾過器38の数を増やす場合には、焼結金属フィルタの孔径を更に大きくすることが可能なので、設備費や生産性との兼ね合いで濾過器38の配置数を決めるとよい。
【0026】
第2濾過工程36で濾過されたドープ原液は、中間タンク40に一旦貯留されてから、ポンプ42によって保証濾過器44に送液されて仕上げ濾過される。これにより、高品質なフィルムを製造する上で悪影響のあるサイズの異物が除去されたドープが調製され、次工程の溶液製膜ラインに送られる。保証濾過器44は、第2濾過工程36のフィルタ交換時等に、外部からの異物が万が一濾過器38内のドープに混入しても、保証濾過器44で除去できるようにしたもので、第2濾過工程36で使用する焼結金属フィルタの孔径よりも大きな孔径の焼結金属フィルタが使用される。例えば、第2濾過工程36での焼結金属フィルタの孔径を10μmとした場合には、保証濾過器44の焼結金属フィルタの孔径は40μm〜80μm程度にするとよい。
【0027】
溶液製膜ラインについては、周知のラインを使用することができ特に図示しないが、一般的にはダイから流延支持体(流延バント又は流延ドラム)に流延した薄膜のドープを流延支持体から剥離した後、テンター装置、乾燥装置等を経てフィルムに製造される。
【0028】
尚、本発明に用いられるポリマーとしては、セルロースエステルを用いることが好ましい。また、セルロースエステルの中では、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、セルロースアセテートを使用することが好ましい。さらに、このセルロースアセテートの中では、その平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のセルローストリアセテート(TAC)を使用することが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。本発明では、セルロースアシレート粒子を使用し、使用する粒子の90重量%以上が0.1〜4mmの粒子径、好ましくは1〜4mmを有する。また、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の粒子が0.1〜4mmの粒子径を有する。さらに、使用する粒子の50重量%以上が2〜3mmの粒子径を有することが好ましい。より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の粒子が2〜3mmの粒子径を有する。セルロースアシレートの粒子形状は、なるべく球に近い形状を有することが好ましい。
【0029】
本発明に用いられる溶媒を、塩素系有機溶媒を主溶媒とすることも、非塩素系有機溶媒を主溶媒とすることも可能である。
【0030】
塩素系有機溶媒とは、一般的にハロゲン化炭化水素化合物を意味しており、代表的な例として、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また非塩素系有機溶媒としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などがあるが、これらに限定されるものではない。溶媒は、市販品の純度であれば、特に制限される要因はない。溶媒は、単独(100重量%)で使用しても良いし、炭素数1〜6のエステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類を混合して使用するものでもよい。使用できる溶媒の例には、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,メチルーt−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなど)などが挙げられる。なお、本発明に用いられる有機溶媒には、前述した塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒とを混合して用いることも可能である。
【0031】
本発明のドープ中には添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤などがある。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他の可塑剤を用いることができる。
【0032】
紫外線吸収剤としては例えば、オキシベンゾフエノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル酢塩系化合物及びその他の紫外線吸収剤を用いることができる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。
【0033】
【実施例】
以下に本発明のドープ濾過方法を実施した本実施例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0034】
本実施例は、本発明のドープ濾過方法を組み込んだ図1のドープ調製ラインを使用してドープの調製を行った。即ち、仕込みタンクにおいて表1の材料組成を混合溶解してドープ原液を調製し、このドープ原液を濾紙フィルタ(東洋濾紙♯63)を備えた第1濾過工程で粗濾過した後、公称10μm保証の日本精線製の焼結金属フィルタを備えた濾過器を2基直列に配置した第2の濾過工程で濾過した。
【0035】
一方、比較例1及び2は、図2に示したドープ調製ラインを使用してドープの調製を行った。即ち、第1の濾過工程は本実施例と同じであるが、第2の濾過工程には、公称10μm保証の焼結金属フィルタ(比較例1)又は公称5μm保証の焼結金属フィルタ(比較例2)を1基だけ配置した。
【0036】
【表1】
【0037】
そして、本実施例及び比較例1、2について異物除去性能と濾過寿命を比較した。
【0038】
異物除去性能は、本実施例、比較例1、2で得られたドープを使用して溶液製膜ラインで乾燥膜80μmのフィルムをそれぞれ製造し、得られたフィルムをクロスニコル状態で配置した2枚の偏光板の間に置き、一方の偏光板の外側から光を当てて、他方の偏光板の外側から光学顕微鏡(倍率50倍)で認識できる輝点異物を大きさごとに区分けしてカウントした。このカウント操作を1つのフィルムにつき20箇所(合計面積5.5mm2 )行い、合計した輝点異物を表2に示すように、5〜10μm、10〜15μm、15〜20μmの区分の異物数として示した。図3は、表2を棒グラフで表したものである。
【0039】
【表2】
【0040】
表2及び図3から分かるように、第1濾過の粗濾過だけのドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が51個、10〜15μmの異物が17個、15〜20μmの異物が3個あった。
【0041】
比較例1のドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が31個、10〜15μmの異物が9個、15〜20μmの異物が0個あり、第1濾過だけの場合よりも改良されているものの、高品質のフィルムを製造する上で十分ではない。
【0042】
比較例2のドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が22個、10〜15μmの異物が2個、15〜20μmの異物が0個あり、比較例1の場合よりも良い結果であった。
【0043】
これに対し、本実施例のドープで製造したフィルムの場合には5.5mm2 内に5〜10μmの異物が16個、10〜15μmの異物が0個、15〜20μmの異物が0個あり、比較例2の場合よりも更に良い結果が得られた。
【0044】
次に、図4に示すように、本実施例、比較例1、2におけるドープ総流量に対する濾過圧力を調べることで、濾過寿命を対比した。
【0045】
図4の●は本実施例における1段目の焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図1のAの位置で測定したものである。○は本実施例における2段目の焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図1のBの位置で測定したものである。▲は比較例1における焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図2のCの位置で測定したものである。■は比較例2における焼結金属フィルタの濾過装置の濾過圧力であり、図2のCの位置で測定したものである。
【0046】
図4から分かるように、公称5μm保証の焼結金属フィルタを備えた濾過器を1基備えた比較例2の場合には、ドープの総流量が10(L/200cm2)のときの濾過圧力は0.65MPaとなり、公称10μm保証の焼結金属フィルタを備えた濾過器を1基備えた比較例1の場合には、ドープの総流量が10(L/200cm2)のときの濾過圧力は0.25MPaである。
【0047】
これに対し、公称10μm保証の焼結金属フィルタを備えた濾過器を2基直列に配置して濾過をした本実施例の場合には、ドープの総流量が10(L/200cm2)のときの1段目の焼結金属フィルタの濾過圧力が0.45MPaで比較例2と比較例1の中間であり、2段目の焼結金属フィルタの濾過圧力が0.17MPaで比較例1よりも更に小さくなる。この結果から、本実施例は比較例2と同等以上の異物除去性能を有していながら、比較例2よりも格段に濾過圧力の上昇程度が小さく、実際に濾過寿命も長くなった。
【0048】
以上説明した表2及び図3の異物除去性能と、図4の濾過圧力の上昇程度から分かるように、本発明のように、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置して濾過することにより、ドープの濾過において5〜10μmの微小サイズの異物まで除去でき、しかも濾過寿命も長くできる。従って、フィルム製造の生産製を落とすことなく、高品質なフィルムを製造することができる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係るドープの濾過方法によれば、ドープの濾過において微小サイズの異物まで除去でき、しかも濾過寿命も長くできる。
【0050】
従って、本発明のドープの濾過方法を使用すれば、生産性を落とさずに高品質なフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドープ濾過方法を組み込んだドープ調製ラインの概念図
【図2】比較例のドープ調製ラインの概念図
【図3】本実施例と比較例の異物除去性能を比較した図
【図4】本実施例と比較例の濾過圧力を比較した図
【符号の説明】
10…ドープ調製ライン、11…溶媒タンク、12…仕込みタンク、14…計量器、15…可塑剤タンク、18…2段羽根式の攪拌翼、20…ポンプ、24…第1濾過工程、26…濾紙フィルタの濾過器、28…貯留タンク、32…2段羽根式の攪拌翼、34…ポンプ、36…第2濾過工程、38…焼結金属フィルタの濾過器、40…中間タンク、42…ポンプ、44…保証濾過器
Claims (5)
- ポリマーを溶媒に溶解したドープ中の異物を濾過により除去するドープの濾過方法において、
前記ドープ中の異物を、孔径の同一な焼結金属フィルタを備えた2基以上の濾過器を直列に配置して濾過することを特徴とするドープの濾過方法。 - 前記焼結金属フィルタの濾過器で前記ドープを濾過する前に、濾紙フィルタを備えた濾過器で予め粗濾過することを特徴とする請求項1に記載のドープの濾過方法。
- 前記焼結金属フィルタの濾過器の後に、該焼結金属フィルタの孔径よりも大きな孔径の焼結金属フィルタを有する保証濾過器を配置することを特徴とする請求項1又は2に記載のドープの濾過方法。
- 前記ドープはセルロースアシレート溶液であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載のドープの濾過方法。
- 請求項1〜4の何れか1のドープの濾過方法で得られたドープを使用して溶液製膜法により製造されたことを特徴とするフィルム。
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