JP2004113445A - 超音波照射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】強力超音波の照射において、簡単な装置の構成により照射領域に対する一様な超音波照射と良質なモニタ用超音波画像の観察を可能にする。
【解決手段】超音波発生部21の電気音響変換素子から所定の変換素子を変換素子選択回路31によって選択して複数の変換素子群として共通接続し、変換素子駆動部13によって駆動して被検体1に強力超音波を照射する。更に、前記変換素子選択回路31によって共通接続される変換素子の位置を、選択回路移動機構部32によって所定方向に移動し、強力超音波の照射位置を照射対象領域内で移動する。一方、イメージング用超音波プローブ22をプローブ回転機構部15によって回転制御することによって、前記照射位置を含む被検体1の断面の超音波画像データを収集し表示部16にて表示する。
【選択図】 図1
【解決手段】超音波発生部21の電気音響変換素子から所定の変換素子を変換素子選択回路31によって選択して複数の変換素子群として共通接続し、変換素子駆動部13によって駆動して被検体1に強力超音波を照射する。更に、前記変換素子選択回路31によって共通接続される変換素子の位置を、選択回路移動機構部32によって所定方向に移動し、強力超音波の照射位置を照射対象領域内で移動する。一方、イメージング用超音波プローブ22をプローブ回転機構部15によって回転制御することによって、前記照射位置を含む被検体1の断面の超音波画像データを収集し表示部16にて表示する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体に向けて超音波を照射する超音波照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、最小侵襲治療と呼ばれる治療法が注目を集めており、悪性腫瘍治療の分野においても最小侵襲治療への積極的な試みが行なわれている。特に悪性腫瘍の場合、その治療の多くを外科的手術に頼っているが、従来の外科的手術による治療、即ち広範囲の組織切除を行なう場合には、その臓器が持つ本来の機能や外見上の形態を大きく損なう場合が多く、生命を長らえたとしても患者に対して多大な負担を与えることになる。このような従来の外科的治療に対してQOL(quality−of−life)を考慮した最小侵襲治療装置の開発が強く望まれており、腫瘍組織に対して強力な超音波を集束させることによって加熱し、熱変性壊死させる超音波治療法の研究が進められている。
【0003】
このような超音波治療法においては、直径が5mm〜10mmの腫瘍領域全体を一様なエネルギーで加温することが求められているが、従来のような超音波集束技術によれば強力超音波のエネルギーは予め設定される直径2mm〜3mmの超音波集束領域に集中して照射されるため、腫瘍領域全体を強力超音波で一様に加温することは困難であった。
【0004】
このような問題点に対して、強力超音波の発生部を例えば2000〜3000個の電気音響変換素子で構成し、これらの変換素子を駆動して強力超音波を照射するための駆動信号の位相を制御することによって、その集束点の位置を電子的に制御する、いわゆるフェーズドアレイ技術の適用は、装置が極めて複雑となるため実現が困難となる。
【0005】
このため、少ない変換素子数と簡単な駆動回路の構成によって、超音波エネルギーを腫瘍の大きさに対応した領域に分散して照射する照射方法が提案されている。この方法では、強力超音波の発生部を例えば4〜24個の電気音響変換素子で構成し、これらの変換素子の中から選択された第1の変換素子群に第1の駆動信号を供給し、この駆動信号に対して180度以下の任意の角度の位相差を有する第2の駆動信号を残りの変換素子で構成される第2の変換素子群に供給する。このような駆動方法によって腫瘍領域内に音圧の極大点を複数個形成し、超音波エネルギーを分散させている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば少ない変換素子数と簡単な駆動回路によって超音波の照射領域を拡張することが可能となる。
【0006】
一方、凹面状の強力超音波発生部を機械的に連続移動させながら強力超音波を照射する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば予め設定された軌道に沿って強力超音波の焦点領域を移動することができるため、腫瘍の大きさや形状に制約されずに移動範囲や移動間隔が任意に設定でき、正確な一様加温が可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−166940号公報(第4−7頁、第1−8図)
【0008】
【特許文献2】特開平11−226046号公報(第3−4頁、第1−4図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示されている方法によれば、振動素子数が少ないためにその配列間隔が大きいことや、位相が0度と180度以下の任意の角度の2段階制御に限定されるために位相合わせの精度が悪い。このため、集束される強力超音波の波面を整えることができず、設定した照射領域以外の部位においても許容できない加温領域(副極大領域)が形成される場合がある。更に、また照射領域内における音圧分布を一様にすることも困難である。
【0010】
一方、特許文献2に示されている方法によれば、照射領域を拡張するために強力超音波発生部を機械的に移動する際に、この強力超音波発生部に一体化して取り付けられるカップリング膜やその中に収納されるカップリング液、更にはモニタ用のイメージング用超音波プローブをも同様に移動する必要がある。このため移動機構が複雑かつ大規模となり操作性に問題がある。また、この方法によって、例えば肝臓癌の治療を行う場合には、強力超音波発生部を移動することにより強力超音波の被検体への入射口が体表近傍の肋骨によって塞がれてしまい、所望の部分に強力超音波の一部が到達しないのみならず、肋骨部位において顕著な発熱を呈する。更に、イメージング用超音波プローブによって送受信される超音波も、この肋骨の影響を受けて超音波画像上において音響陰影や多重反射などが発生するため画質は著しく劣化する。
【0011】
例えば、図16(a)に示すように、被検体1の肋骨3の後方に位置する腫瘍2の右端に集束点9が形成されるように強力超音波を照射した後、図16(b)のように同じ腫瘍2の左端を照射するために強力超音波発生部6を被検体の体表面に沿って水平方向にΔX移動させた場合、肋骨3に照射される強力超音波は、肋骨表面における音響インピーダンスのミスマッチングのためにその透過が阻害される。即ち、肋骨3及びその周囲部の正常組織は強力超音波の照射によって発熱し損傷を受ける。またこの方法では、イメージング用超音波プローブ5は強力超音波発生部6の中央部に固定されているため、この強力超音波発生部6の移動に伴って、その画像領域8の内部に肋骨が含まれる場合が多い。このような場合には、イメージング用超音波プローブ5から発生した送信超音波は肋骨表面においてその大部分が反射し、この反射波は超音波画像の画質を劣化させる。
【0012】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は強力な超音波を生体内に照射する際に、装置の構成を複雑にすることなく、所望の領域に対して一様な超音波照射と良質なモニタ用超音波画像の観察が可能な超音波照射装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波照射装置は、複数の電気音響変換素子を備え、超音波を発生する超音波発生手段と、前記電気音響変換素子の中から所定の電気音響変換素子を選択し、かつ、この選択を切り換え可能な電気音響変換素子選択手段と、この電気音響変換素子選択手段によって選択された複数の電気音響変換素子群を駆動する電気音響変換素子駆動手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に係る本発明の超音波照射装置は、複数の電気音響変換素子を備え、超音波を発生する超音波発生手段と、前記電気音響変換素子の中から所定の電気音響変換素子を選択し、かつ、この選択を切り換え可能な電気音響変換素子選択手段と、この電気音響変換素子選択手段によって選択された複数の電気音響変換素子群を駆動する電気音響変換素子駆動手段と、前記照射位置を含む被検体断面の超音波画像データを生成する超音波画像生成手段と、前記超音波画像データを表示する表示手段とを備えることを特徴としている。
【0015】
従って、本発明によれば、電気音響変換素子の選択を順次切り換えることによって、被検体に接近して置かれた超音波発生部から照射される強力超音波の照射位置を容易に移動することができる。このため、所望の領域を照射するための超音波走査を正確かつ容易に行うことが可能な超音波照射装置を提供できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図9を用いて説明する。
【0017】
この実施の形態で述べる超音波照射装置は、腫瘍を強力な超音波によって加熱、焼灼して治療したり、遺伝子導入効率を高めるための超音波照射併用法の実現を目的として構成されるものであり、その特徴は、生体と接触するアプリケータの内部に2次元配列した電気音響変換素子の中から予め設定された複数の電気音響変換素子を、このアプリケータと分離して配置された変換素子選択回路によって選択することにある。
【0018】
図1〜図2を用いて本発明の実施の形態における超音波照射装置の構成を説明する。図1は本実施の形態における超音波照射装置全体の概略構成を示すブロック図であり、図2はこの超音波照射装置の構成要素の1つである超音波発生部の構成を示す。なお、以下では、腫瘍の焼灼に本発明の超音波照射装置を適用した場合の実施の形態について述べるが、遺伝子導入を目的とした場合においても同様の装置構成と手順によって超音波照射を行うことが可能である。
【0019】
この超音波照射装置は、被検体1に強力な超音波を照射するとともに、この照射領域の超音波照射効果のモニタリングを目的とした画像データを収集するアプリケータ11と、このアプリケータ11の内部に2次元に配列された電気音響変換素子の中から所定の変換素子を選択して強力超音波による走査を行なう超音波走査部12と、この選択された変換素子に対して駆動信号を供給する変換素子駆動部13と、上記選択された変換素子によって照射される強力超音波によって焼灼される腫瘍2を含む断面を画像化する超音波イメージング装置14と、アプリケータ11に回転自在に設けられるイメージング用超音波プローブ22を回転移動し、超音波画像断面を設定するプローブ回転機構部15を備えている。
【0020】
更に、超音波照射装置は超音波イメージング装置14によって生成される画像データを表示する表示部16と、患者IDや焼灼条件、更には腫瘍2の形状や大きさなどの情報を入力する操作部17と、プローブ回転機構部15及び超音波走査部12に設けられる選択回路移動機構部32を制御する機構制御部18と、以上述べた各ユニットを統括的に制御するシステム制御部19を備えている。
【0021】
アプリケータ11は、強力超音波を照射する超音波発生部21と、この照射領域の超音波画像を撮影するためのイメージング用超音波プローブ22とを備え、超音波発生部21のほぼ中央部に開口した孔部50にイメージング用超音波プローブ22が挿入されている。この超音波発生部21及びイメージング用超音波プローブ22の先端部は、例えば脱気水からなるカップリング液23によって充満されたアプリケータ11の上部に取り付けられている。このアプリケータ11の被検体1との接触部は、被検体1やカップリング液23とほぼ等しい音響インピーダンスと可撓性を有する高分子材料を用いたカップリング膜24で構成されている。即ち、超音波発生部21から照射される強力超音波やイメージング用超音波プローブ22によって送受信される画像用の超音波は、被検体1とほぼ等しい音響特性を有するカップリング膜24やカップリング液23を介して被検体1に対して効率良く送受信される。
【0022】
超音波発生部21は、図2(a)に示すように2次元にNX個配列された電気音響変換素子41を備えており、同一平面状においてX方向にPx素子、またY方向にPy素子が夫々間隔dx、dyで配列されている。図2(b)は図2(a)のA−A断面における超音波発生部21の断面図を示す。即ち、圧電セラミックスを用いた電気音響変換素子41の第1の面(上面)、及び第2の面(下面)には駆動信号を供給するための電極42a、42bがそれぞれ装着され、電極42aは支持台43に固定されている。また、他の電極42bには強力超音波の照射を効率良く行うための音響マッチング層44が設けられ、更に、その表面は保護膜45によって覆われている。
【0023】
このNX個の電気音響変換素子41にそれぞれに装着された電極42aは、駆動信号供給のためのNXチャンネルからなる信号線46によって後述する変換素子選択回路31と接続され、一方、電極42bは共通接続されて超音波照射装置の接地端子に接続される。
【0024】
イメージング用超音波プローブ22は、強力超音波の照射対象である腫瘍2に対する超音波発生部21の正確な照射と、この照射による焼灼効果を超音波画像によってモニタリングするために備えられている。このイメージング用超音波プローブ22は、通常の超音波診断に用いられているものと同一のものが使用されるが、特に超音波発生部21による照射の妨げにならないために、小さな超音波送受信面で広い範囲の画像化が可能なセクタ走査用の超音波プローブが好適である。本実施の形態では、電子的に超音波ビームの送受信方向を制御して扇状の画像領域を得るセクタ電子走査型の超音波プローブをイメージング用超音波プローブ22として用いる。
【0025】
アプリケータ11のカップリング液23の中に配置されるイメージング用超音波プローブ22の先端部は、例えば1次元にM個配列された微小電気音響変換素子を有し、この図示しない電気音響変換素子は送信時には電気パルスを超音波パルスに変換して被検体1に送信し、また、受信時には被検体1からの超音波信号を電気信号に変換する機能を有している。なお、このイメージング用超音波プローブ22の先端部の構成は図2(b)とほぼ同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
超音波走査部12は、変換素子選択回路31と、選択回路移動機構部32とを備えている。変換素子選択回路31は、超音波発生部21において2次元に配列されたNX個の電気音響変換素子41の中から所定の電気音響変換素子41を選択し共通接続するためのスイッチング回路であり、複数の電極端子を有する1次側の基板、及び2次側の基板が対向して配置され、この2枚の基板がスライドすることによって所定のチャンネルに駆動信号が供給される構造になっている。
【0027】
図3(a)は変換素子選択回路31の具体例を示したものであり、第1の基板51と第2の基板52は対向して配置され、第1の基板51の上面、及び第2の基板52の下面にはそれぞれ間隔dで2次元配列された半球状の第1の電極53、及び図3(a)においては図示されない第2の電極54が取り付けられている。超音波発生部21のNX個の電気音響変換素子41に接続されている信号線46は、第1の基板51の下面よりこの第1の基板51を貫通して第1の電極53に接続されている。即ち、2次元に配列された電気音響変換素子41の配列と、第1の基板51の第1の電極53の配列順序は対応して信号線46によって接続されている。
【0028】
一方、第2の基板52の上面には電気音響変換素子41の駆動を行なう際に、その選択と共通接続を設定する電極55が所定の形状を有して形成されている。例えば図3(a)に示すような同心円状に配置された1つの円型パターンと複数の環型パターンを有したNチャンネルのアニュラアレイ電極55が形成され、これらのNチャンネルの電極55は後述する変換素子駆動部13のNチャンネルの出力端子に接続されている。なお、本実施の形態では説明を簡単にするために図3(a)におけるアニュラアレイ電極55の環型電極数は2としたが、実際には5〜15の環型電極が形成されことが望ましい。
【0029】
次に、図3(b)において図3(a)のB−B断面の一部を示す。変換素子選択回路31において、第1の基板51と第2の基板52は接近して置かれ、第2の基板52の貫通VIAなどを介してアニュラアレイ電極55と接続される第2の電極54は、第1の基板51の第1の電極53と接触して導通状態となっている。このような構成の変換素子選択回路31によって、アニュラアレイ電極55に供給される電気音響変換素子41の駆動信号は、所定の第2の電極54、第1の電極53、及び信号線46を介して超音波発生部21の電気音響変換素子41に供給される。即ち、この変換素子選択回路31によって、超音波発生部21のNX個の電気音響変換素子41の中から第2の基板52において形成されるNチャンネルのアニュラアレイ電極55と導通になっている変換素子41が選択駆動され、超音波発生部21はアニュラアレイ型の超音波発生部21として強力超音波を被検体1に照射する。
【0030】
選択回路移動機構部32は、変換素子選択回路31の第2の基板52を第1の基板51に対して基板面に沿って相対的に移動させるための機構部であり、第2の基板52のアニュラアレイ電極55が機械的に移動することによって、超音波発生部21の電気音響変換素子41において駆動される変換素子41の位置も第2の基板52の移動に対応して移動する。なお、第1の電極53と第2の電極54は移動後もその中心位置を常に一致させる必要があるため、第2の基板52のX方向及びY方向の相対移動距離は第1の電極53あるいは第2の電極54の配列間隔dの整数倍に設定することが望ましい。図3(c)は第1の基板51に対して第2の基板52をX方向に−dだけ移動した場合であり、この移動によって駆動される電気音響変換素子41はX方向に−dxシフトして選択駆動され、強力超音波が照射される。
【0031】
即ち、第2の基板52を第1の基板51に対して相対的に移動することによって、この移動距離や移動方向に対応して電気音響変換素子41を選択駆動することが可能となる。但し、2次元に配列されたNX個の電気音響変換素子41からNチャンネルのアニュラアレイ型変換素子群を選択する場合、図4に示すようにモザイク状の変換素子配列となる。なお、図4(a)は第2の基板52における3チャンネルのアニュラアレイ電極55を、また図4(b)はこのとき選択される電気音響変換素子41を示す。
【0032】
変換素子駆動部13は、超音波発生部21より強力超音波を照射するために電気音響変換素子41に駆動信号を供給する駆動部であり、電気音響変換素子41の共振周波数に対応した周波数の連続波を発生するCW発生器33と、この連続波に所定の遅延時間を与える遅延回路34と、この連続波を増幅するRFアンプ35と、このRFアンプ35の出力信号を電気音響変換素子41に効率良く供給するためにインピーダンスマッチングを行なうマッチング回路36を備えている。但し、アニュラアレイ電極55がNチャンネルの電極から構成される場合には、遅延回路34やRFアンプ35、更にはマッチング回路36もNチャンネル備えられ、遅延回路34ではN種類の遅延時間が設定される。
【0033】
遅延回路34は、超音波発生部21の電気音響変換素子41が照射する強力超音波を所望の領域に集束させるために、Nチャンネルの駆動信号に対して所定の遅延時間を与える。但し、この遅延時間はアニュラアレイ電極55の形状や焦点距離によって一義的に決定される。本実施の形態ではアニュラアレイ電極55の形状別に複数の焦点距離に対応する遅延時間情報が、システム制御部19の図示しない記憶回路にルックアップテーブルとして予め保存されている。
【0034】
図5(a)は3つの電極(N=3)で構成されるアニュラアレイ電極55−1〜55−3に駆動信号を供給する場合の変換素子駆動部13の回路構成を示したものであり、遅延回路34−1〜34−3によって電極55−1〜55−3の駆動信号に与えられる遅延時間を図5(b)に示す。即ち、最外周の電極55−3の駆動信号に対して、中心部の電極55ほどその駆動信号には大きな遅延時間が設定され、この傾向は焦点距離(Fo)が小さくなるほど顕著となる。このNチャンネルの遅延回路34−1〜34−3の出力信号はRFアンプ35−1〜35−3及びマッチング回路36−1〜36−3を経て、変換素子選択回路31における第2の基板52のアニュラアレイ電極55−1〜55−3に供給される。
【0035】
次に、超音波イメージング装置14の構成につき図6を用いて説明する。
【0036】
超音波イメージング装置14は、イメージング用超音波プローブ22から被検体1に対して超音波を放射するための駆動信号を生成する超音波送信部61と、被検体1からの受信超音波をイメージング用超音波プローブ22を介して受信する超音波受信部62と、この受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像データ生成部63と、この画像データを保存する画像データ記憶部64を備えている。
【0037】
超音波送信部61は、レート信号発生器66と、送信遅延回路67と、パルサ68を備えている。レートパルス発生器66は、被検体1に放射する超音波パルスの繰り返し周期を決定するレートパルスを送信遅延回路67に供給する。送信遅延回路67は、Mチャンネルの独立な遅延回路から構成され、イメージング用超音波プローブ22において細い送信超音波ビーム幅を得るために所定の深さに超音波を集束するための遅延時間と、所定の方向に超音波を偏向するための遅延時間をレートパルスに与え、パルサ68に供給する。パルサ68は、Mチャンネルの独立な駆動回路を有しており、イメージング用超音波プローブ22に内蔵された電気音響変換素子を駆動し、被検体1に超音波を送信するための駆動パルスを生成する。
【0038】
超音波受信部62はプリアンプ69と、受信遅延回路70と、加算器71とを備えている。プリアンプ69は、超音波振動子によって電気信号に変換された微小信号を増幅し十分なS/Nを確保する。受信遅延回路70は、細い受信ビーム幅を得るために所定の深さからの超音波を集束するための集束用遅延時間と、超音波ビームの受信指向性を制御し被検体1を走査するための遅延時間をプリアンプ69の出力に与えた後、加算器71に送り、加算器71はMチャンネルの受信信号を加算して1つに纏める。
【0039】
画像データ生成部63は、対数変換器72と、包絡線検波器73と、A/D変換器74とを備えている。画像データ生成部63の入力信号は、対数変換器72で受信信号の振幅を対数変換し、弱い信号を相対的に強調する働きをしている。一般に被検体1からの受信信号は80dB以上の広いダイナミックレンジをもった振幅を有しており、これを23dB程度のダイナミックレンジをもつ通常のテレビモニタに表示するためには弱い信号を強調する振幅圧縮が必要となる。包絡線検波器73は、対数変換された受信信号に対して包絡線検波を行い、超音波周波数成分を除去し、その振幅のみを検出する。A/D変換器74は、この包絡線検波器73の出力信号をA/D変換し超音波画像データを生成する。
【0040】
画像データ記憶部64は、画像データ生成部63において生成された超音波の画像データを一旦保存する記憶回路であり、超音波の送受信方向を変更しながら得られるデータは順次記憶され、2次元の画像データを構成する。
【0041】
プローブ回転機構部15は、超音波イメージング装置14によって表示される超音波画像中に、超音波発生部21によって照射される領域が常に表示されるようにイメージング用超音波プローブ22を鉛直方向のプローブ軸を回転軸として回転あるいは回動する。
【0042】
表示部16は、図示しない表示回路とCRTモニタを備えており、イメージング用超音波プローブ22、及び超音波イメージング装置14によって得られる超音波画像を表示する。この場合、超音波イメージング装置14の画像データ記憶部64に保存される超音波画像データは表示回路においてD/A変換された後、テレビフォーマットに変換されCRTモニタに表示される。更に、この超音波画像上に超音波発生部21による照射位置や集束超音波のビーム形状などを重畳して表示することも可能である。また、このCRTモニタには操作者が操作部17の例えばマウスを用いて入力する腫瘍2の位置や輪郭線、更にはこの輪郭線を楕円近似等により変換した図形などが表示される。
【0043】
操作部17は、操作パネル上にキーボード、トラックボール、マウス等を備え、操作者が患者情報や、腫瘍の位置及びサイズなどの腫瘍情報や、焼灼間隔あるいは1焦点当たりの焼灼時間などの焼灼情報を入力するために用いられる。
【0044】
機構制御部18は、プローブ回転機構部15と、超音波走査部12の選択回路移動機構部32を制御する。まず操作部17から入力される腫瘍2の位置や大きさ、更には焼灼間隔などの情報に基づいて設定された移動軌跡に基づいて選択回路移動機構部32の移動を制御し、更に、選択回路移動機構部32の移動によって変化する強力超音波の集束点、即ち、照射位置が超音波画像上で常に表示可能となるようにプローブ回転機構部15を制御する。
【0045】
システム制御部19は、図示しないCPUと図示しない記憶回路を備え、操作部17からのコマンド信号に従って各ユニットの制御やシステム全体の制御を統括して行う。特に、内部のCPUには操作部17を介して送られる操作者の入力コマンドや入力情報が保存される。また、このシステム制御部19は、操作部17から入力される腫瘍2の位置や大きさの情報を読み取り、その外形を例えば楕円近似にて表示部16のCRTモニタ上に表示するとともに、これらの腫瘍情報に基づいて最適な焼灼軌跡の設定などを行う。また、この焼灼軌跡と焼灼間隔、更には1焦点当たりの焼灼時間から腫瘍全体の焼灼に要する時間を算出しCRTモニタ上に表示する。
【0046】
次に、本実施の形態における超音波イメージング装置14によるモニタ用超音波画像データの生成と強力超音波の照射手順を図1〜図9を用いて説明する。但し、図7はこの照射手順を示すフローチャートである。
【0047】
操作者は、まず操作部17より強力超音波の大きさや1焦点当たりの焼灼時間などの焼灼条件を設定し、これらの情報をシステム制御部19の記憶回路に保存する(ステップS1)。次いで、操作者は被検体1の腫瘍観察に対して適当と思われる位置にイメージング用超音波プローブ22が設置されるようにアプリケータ11の位置を設定する(ステップS2)。但し、実際には超音波イメージング装置14を動作状態に切り換え、このとき得られる超音波画像を観測しながらアプリケータ11の位置を調節してもよい。
【0048】
この超音波イメージング装置14による画像生成について図6を用いて説明する。超音波の被検体1への送信に際して、まず超音波送信部61のレートパルス発生器66は、システム制御部19からの制御信号に従い、被検体1に放射する超音波パルスの繰り返し周期を決定するレートパルスを送信遅延回路67に供給する。送信遅延回路67は、送信超音波を所定の深さに集束するための遅延時間と、所定の方向(θ1)に超音波を送信するための遅延時間をレートパルスに与え、このレートパルスをパルサ68に供給する。パルサ68は、イメージング超音波プローブ22に内蔵されている電気音響変換素子を駆動し、被検体1に超音波パルスを放射する。
【0049】
被検体1に放射された超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる被検体1の臓器間の境界面あるいは組織にて反射し、この超音波は送信時と同じ電気音響変換素子によって受信されて電気信号に変換される。この受信信号はプリアンプ69にて増幅され、受信遅延回路70に送られる。受信遅延回路70は、所定の深さからの超音波を集束して受信するための遅延時間と、所定の方向(θ1)に強い受信指向性をもたせて受信するための遅延時間を受信信号に与えた後、加算器71へ送る。加算器71は、プリアンプ69、受信遅延回路70を介して入力される複数の受信信号を加算合成し、1つの受信信号に纏めた後、画像データ生成部63へ供給する。
【0050】
加算器71の出力は、画像データ生成部63において、対数変換、包絡線検波、A/D変換がなされた後、画像データ記憶部64に一旦保存される。
【0051】
次に、超音波の送受信方向をΔθずつ順次更新させながら上記と同様な手順で超音波の送受信を行なう。即ち、システム制御部19は、送信遅延回路67及び受信遅延回路70の遅延時間を上記超音波送受信方向に対応させて順次切り替えながら、画像データを収集する。
【0052】
システム制御部19は、上記手順によって得られる画像データを画像データ記憶部64に順次保存し、所定の範囲の走査が終了した時点で1枚分の画像データを表示部16において表示する。
【0053】
操作者は、表示部16の例えばCRTモニタ上に表示された被検体1の超音波画像を観察し、強力超音波の照射対象である腫瘍2がイメージング用超音波プローブ22のほぼ直下に位置するようにアプリケータ11の位置を調節する(ステップS3)。図8は、このとき表示部16のCRTモニタ上に表示される超音波画像について示す。この場合、イメージング用超音波プローブ22の電気音響変換素子は、例えば図2(a)あるいは図3(a)にて示したX方向に1次元配列されるように初期設定され、従って、最初に表示される超音波画像は図8(a)に示すようにX−Z平面において得られる。
【0054】
操作者は、この最初の超音波画像に表示されている腫瘍2に対して操作部17のマウスを用いて腫瘍像の輪郭を描く(ステップS4)。システム制御部19のCPUは、入力された腫瘍輪郭情報に基づいて例えば楕円近似を行い、更に、この楕円情報に対してイメージング用超音波プローブ22の先端部を座標の基準g(X=0,Y=0,Z=0)とした場合の楕円の中心位置g(Xo、0、Zo)と、この楕円のX方向の最大径(Wx)、及びZ方向の最大径(Wz)を算出してシステム制御部19の記憶回路に保存する。
【0055】
次に、操作者は操作部17において超音波画像断面の変更指示を入力することによって、システム制御部19はこの変更指示信号を機構制御部18に送り、機構制御部18は、この指示信号に基づいてプローブ回転機構部15に回転制御信号を供給して、イメージング用超音波プローブ22をZ軸の周りに90度回転させる。従って、CRTモニタ上には図8(b)に示すようなY−Z平面内における第2の超音波画像が表示される。
【0056】
操作者は、この第2の超音波画像に対しても最初の超音波画像の場合と同様にして、操作部17のマウスを用いて腫瘍像の輪郭を入力し、システム制御部19のCPUは、この輪郭情報基づいて楕円近似を行った後に、この楕円情報から楕円の中心位置g(0,Yo,Zo)と、この楕円のY方向の最大径(Wy)及びZ方向の最大径(Wz’)を算出してシステム制御部19の記憶回路に保存する。なお、Wz≠Wz’の場合にはいずれか一方を選択してもよいが、加算平均値によって求められた値を新たに設定してもよい。
【0057】
システム制御部19は、上記の計測によって得られた腫瘍2の中心位置、及び大きさの情報に基づいて、この腫瘍2を均一に焼灼するために超音波発生部21から照射される強力超音波の焦点の3次元的な移動範囲とその移動軌跡を設定する(ステップS5)。
【0058】
以上のようにして、超音波発生部21による腫瘍2の照射計画、即ち強力超音波の焦点の移動範囲と移動軌跡が決定したならば、操作者は操作部17より照射開始コマンドを入力する。このコマンド入力を読み取ったシステム制御部19は、照射計画にて設定された最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)において、超音波発生部21による強力超音波の集束点が形成されるように変換素子駆動部13における遅延回路34の遅延時間を設定する。即ち、システム制御部19は、記憶回路のルックアップテーブルから焦点距離がZ1におけるN種類の遅延時間情報を読み出し、この情報に基づいて遅延回路34の遅延時間を設定する。
【0059】
次いで、システム制御部19は、変換素子選択回路31においてアニュラアレイ電極55の中心g’(0,0)をg’(X1’,Y1’)に移動させるために、機構制御部18を介して選択回路移動機構部32に移動制御信号を供給する。なお、上記の第2の基板52の基準点g’(0,0)はアプリケータ11において設定した基準座標、即ち、イメージング用超音波プローブ22の先端部の座標g(0,0,0)と対応しており、超音波発生部21において2次元に配列されている電気音響変換素子41の配列中心とも一致している。また、上記アニュラアレイ電極55の移動後の中心位置g(X1’,Y’)は最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)のX座標及びY座標に対応している(ステップS6)。
【0060】
更に、システム制御部19は、上記照射位置g(X1,Y1,Z1)の情報に基づいた回転制御信号を、機構制御部18を介してプローブ回転機構部15に供給し、この照射位置がイメージング用超音波プローブ22によって得られる超音波画像面に一致するように所定の角度だけ回転させる(ステップS7)。
【0061】
システム制御部19により最初の照射位置における電気音響変換素子41の選択と、この照射位置に照射される強力超音波の遅延時間設定と、この照射位置を画像化するためのイメージング用超音波プローブ22の回転角度設定が完了したならば、システム制御部19は、変換素子駆動部13のCW発生器33に対して所定周波数の連続波を発生させる。この連続波はNチャンネルから構成される遅延回路34において強力超音波を集束するための遅延時間が与えられ、RFアンプ35及びマッチング回路36を経て、変換素子選択回路31の第2の基板52におけるアニュラアレイ電極55に供給される。
【0062】
アニュラアレイ電極55に供給された連続波は、同じ第2の基板52の裏面に形成された第2の電極54,更には第1の基板51上に形成された第1の電極53と、この第1の電極53に接続された信号線46を経て超音波発生部21の所定の電気音響変換素子41に供給される。この連続波の駆動によって電気音響変換素子41から照射される強力超音波は、照射計画にて設定された最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)に集束し、この位置の腫瘍組織を焼灼する(ステップS8)。
【0063】
一方、超音波発生部21によって腫瘍組織が焼灼される状況はイメージング用超音波プローブ22及び超音波イメージング装置14によって超音波画像データとして収集され、システム制御部19はこのとき得られる画像データを表示部16において表示する。
【0064】
最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)への強力超音波の照射が予め設定された時間行われた後、照射計画に従って第2の照射位置g(X2,Y2,Z2)、更には第3以降の照射位置に対しても同様の手順によって強力超音波の照射を行なわれる。また、超音波画像上にこれらの焼灼部位が表示されるように、イメージング用超音波プローブ22は回転制御されるため、強力超音波の焼灼によって生ずる腫瘍組織の変性の状態は表示部16において常時、リアルタイム超音波画像として観測することが可能である(ステップS9)。
【0065】
図9は強力超音波による照射位置の移動方法の具体例を示したものであり、直線状の移動方法と円弧状の移動方法を図9(a)、及び図9(b)に示す。照射位置の移動方法はこれらの方法に限定されないが、照射位置の移動に伴って回転移動するイメージング用超音波プローブ22を考慮して設定することが望ましい。
【0066】
次に、本発明の実施の形態における変換素子選択回路31の変形例について図10〜図12を用いて説明する。上記の本実施の形態においては、超音波発生部21の電気音響変換素子41の配列幅に余裕がある場合について述べてきた。
【0067】
例えば図10(a−1)、及び図10(a−2)に示すように、超音波走査部12におけるアニュラレイ電極55の機械的移動に基づいて、超音波発生部21の電気音響変換素子41を腫瘍2の大きさによって決定される範囲内において中央部から端部にXhだけシフトして選択する場合、電気音響変換素子41の配列幅に余裕があるならば、図10(a−1)の中央部と同様なアニュラアレイ型の選択が図10(a−2)の端部においても可能となり、従って、強力超音波も同様な集束特性が得られる。
【0068】
しかしながら、既に述べたように肝臓癌の治療を行う場合などでは、被検体1へ照射される強力超音波の一部が肋骨に照射されることを避けるために、図10(b−1)に示すように、中央部に強力超音波を照射する場合の電気音響変換素子41の選択において余裕をもたせることができない。このため本変形例においては、図10(a−2)の場合と同様に電気音響変換素子41の選択位置をXhだけ端部にシフトする場合、図10(b−2)に示すように端部が欠けた非対称な選択方法を適用する。
【0069】
図11(a−1)及び図11(a−2)に、本変形例に示した電気音響変換素子41の選択方法における中心部の照射と端部の照射における音圧の2次元分布を、また、これらの2次元分布のC−C,C’−C’における音圧値を図11(b−1)及び図11(b−2)に示す。図11に示すように電気音響変換素子41におけるアニュラアレイパターンの右端が欠けることにより、本来の集束点に発生する音圧ピーク点(主極大)の他に第2の音圧ピーク点(副極大)が発生する。但し、この副極大と主極大の差は一般に10dB以上であれば大きな問題とはならない。因みに最大外径120mmのアニュラアレイ駆動を用いた直径10mmの腫瘍2の焼灼において、Xh=5mmとした場合に発生する副極大は上記許容値を十分満足させることができる。
【0070】
図12は本変形例における変換素子選択回路31の構成を示したものであり、図12(a)は第1の基板51と第2の基板52の位置関係を示し、この図におけるD−Dの断面を図12(b)に示す。例えば第1の基板51にはアニュラアレイ電極55の最大径とほぼ等しい長さを一辺にもつ正方形の第2の基板52にほぼ等しい大きさの有効領域81と、この有効領域81の周囲においてアニュラアレイ電極55の最大移動距離Xhを幅にもつ無効領域82が設定される。そして、有効領域81の第1の電極53は信号線46を介して電気音響変換素子41に接続され、一方、無効領域82の第1の電極53には電気音響変換素子41とほぼ同等なインピーダンス特性を有する擬似変換素子83に接続される。
【0071】
例えば、アニュラアレイ電極55の中心が右側に距離Xhだけ移動した場合、第2の電極54、更には第1の電極53を介してアニュラアレイ電極55の右端部に接続される電気音響変換素子41は存在しなくなり、代わりに電気音響変換素子41とほぼ等しいインピーダンスの擬似変換素子83が接続されるため、変換素子駆動部13の負荷の変動を抑え、インピーダンスマッチングを維持することができる。
【0072】
以上述べた本実施の形態によれば、被検体1に直接接触するアプリケータ11に対し超音波走査部12は分離して構成され、この超音波走査部12においてアニュラレイ電極55を所望の方向に機械的移動させることによって、アプリケータ11の超音波発生部21から照射される強力超音波の照射位置を移動させることができる。従って、比較的簡単な回路構成により照射位置の制御が可能となる。特に、超音波発生部21を肋間に固定したまま照射位置を制御することが可能となるため、肋骨の後方に位置する腫瘍2に対する照射も容易に行うことが可能となる。また、治療の初期段階におけるアプリケータ11と腫瘍位置との位置の微小なズレは超音波走査部12の操作によって容易に補正できるため、操作性においても大幅に改善される。更にモニタ用のイメージング用超音波プローブ22はアニュラアレイ電極55の移動にかかわらず常にアプリケータ11のほぼ中央部に配置されているため肋骨等に起因して生ずる画質劣化を防ぐことができる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。例えば、図3に示した超音波走査部12の変換素子選択回路31では、第1の基板51と第2の基板52にいずれも半球状の形状をした第1の電極53と第2の電極54を対向して配置したが、この形状に限定されるものではなく、例えば図13に示すように第1の基板51には図3と同様の半球状の第1の電極53を配置し、第2の基板52には導電性の電極ブラシ85を第1の電極53に対向して配置する方法であってもよい。またこのとき、半球状の電極が第2の基板52に、また電極ブラシ85が第1の基板51に装着されても構わない。
【0074】
また、図3において変換素子選択回路31の第1の基板51、及び第2の基板52は平板の場合について示したが曲面であってもよい。例えば図14に示すように第1の基板51と第2の基板52は半径の異なるそれぞれの円筒の側面として形成されてもよい。この場合、それぞれの円筒軸を一致させ、第2の基板52は第1の基板51を覆うように配置する。この第2の基板52に接続される選択回路移動機構部32によって、所定の第1の電極53と第2の電極54が接触し駆動信号が超音波発生部21に供給される。
【0075】
更に、第2の基板52において形成される電極パターンはアニュラアレイパターンに限定されない。例えば、図15に示すような多角形のリングから構成されていてもよく、更にリングの形状でなくともよい。
【0076】
一方図1、及び図2に示した超音波発生部21の電気音響変換素子41は同一平面上に配置される場合について示したが、曲面上に配置してもよい。特に被検体1に対して凹面となる支持台43に配置することによって強力超音波の集束効率を向上させることができる。
【0077】
また、本発明の実施の形態においては、腫瘍2の輪郭を楕円近似する方法について述べたが、この方法についても限定されるものではなく、他の形状に設定してもよい。
【0078】
更に、上記の実施の形態に於いては、アプリケータと分離して変換素子選択回路を設けたが、この方法に限定されるものではなく、アプリケータ内部に変換素子選択回路を組み込んでもよい。例えば、電気音響変換素子の直上に電極を作成して変換素子選択回路を設けることもできる。なお、上記の場合で、超音波イメージングプローブ等がアプリケータと一体構成されている場合には、イメージングプローブと干渉しないように変換素子選択回路の移動範囲を調節することが必要になる。
【0079】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、電気音響変換素子の選択を切り換えることによって、被検体に接近して置かれた超音波発生部から照射される強力超音波の照射位置を容易に移動することができる。このため、所望の領域を照射するための強力超音波走査を正確、かつ容易に行うことが可能な超音波照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における超音波照射装置全体の概略構成を示すブロック。
【図2】本発明の実施の形態における超音波発生部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施の形態における変換素子選択回路の構成を示す図。
【図4】本発明の実施の形態における電気音響変換素子の選択例を示す図。
【図5】本発明の実施の形態における変換素子駆動部の回路構成を示す図。
【図6】本発明の実施の形態における超音波イメージング装置のブロック図。
【図7】本発明の実施の形態における超音波照射手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施の形態における腫瘍輪郭設定時の超音波画像を示す図。
【図9】本発明の実施の形態における強力超音波による照射位置の移動方法を示す図。
【図10】本発明の実施の形態の変形例における強力超音波用の電気音響変換素子の選択方法を示す図。
【図11】本発明の実施の形態の変形例における音圧分布を示す図。
【図12】本発明の実施の形態の変形例における変換素子選択回路の構成を示す図。
【図13】本発明の実施の形態における変換素子選択回路の第2の変形例を示す図。
【図14】本発明の実施の形態における変換素子選択回路の第3の変形例を示す図。
【図15】本発明の実施の形態におけるアニュラアレイ電極の変形例を示す図。
【図16】従来の超音波照射装置を示す図。
【符号の説明】
11…アプリケータ
12…超音波走査部
13…変換素子駆動部
14…超音波イメージング装置
15…プローブ回転機構部
16…表示部
17…操作部
18…機構制御部
19…システム制御部
21…超音波発生部
22…イメージング用超音波プローブ
23…カップリング液
24…カップリング膜
31…変換素子選択回路
32…選択回路移動機構部
33…CW発生器
34…遅延回路
35…RFアンプ
36…マッチング回路
50…孔部
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体に向けて超音波を照射する超音波照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、最小侵襲治療と呼ばれる治療法が注目を集めており、悪性腫瘍治療の分野においても最小侵襲治療への積極的な試みが行なわれている。特に悪性腫瘍の場合、その治療の多くを外科的手術に頼っているが、従来の外科的手術による治療、即ち広範囲の組織切除を行なう場合には、その臓器が持つ本来の機能や外見上の形態を大きく損なう場合が多く、生命を長らえたとしても患者に対して多大な負担を与えることになる。このような従来の外科的治療に対してQOL(quality−of−life)を考慮した最小侵襲治療装置の開発が強く望まれており、腫瘍組織に対して強力な超音波を集束させることによって加熱し、熱変性壊死させる超音波治療法の研究が進められている。
【0003】
このような超音波治療法においては、直径が5mm〜10mmの腫瘍領域全体を一様なエネルギーで加温することが求められているが、従来のような超音波集束技術によれば強力超音波のエネルギーは予め設定される直径2mm〜3mmの超音波集束領域に集中して照射されるため、腫瘍領域全体を強力超音波で一様に加温することは困難であった。
【0004】
このような問題点に対して、強力超音波の発生部を例えば2000〜3000個の電気音響変換素子で構成し、これらの変換素子を駆動して強力超音波を照射するための駆動信号の位相を制御することによって、その集束点の位置を電子的に制御する、いわゆるフェーズドアレイ技術の適用は、装置が極めて複雑となるため実現が困難となる。
【0005】
このため、少ない変換素子数と簡単な駆動回路の構成によって、超音波エネルギーを腫瘍の大きさに対応した領域に分散して照射する照射方法が提案されている。この方法では、強力超音波の発生部を例えば4〜24個の電気音響変換素子で構成し、これらの変換素子の中から選択された第1の変換素子群に第1の駆動信号を供給し、この駆動信号に対して180度以下の任意の角度の位相差を有する第2の駆動信号を残りの変換素子で構成される第2の変換素子群に供給する。このような駆動方法によって腫瘍領域内に音圧の極大点を複数個形成し、超音波エネルギーを分散させている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば少ない変換素子数と簡単な駆動回路によって超音波の照射領域を拡張することが可能となる。
【0006】
一方、凹面状の強力超音波発生部を機械的に連続移動させながら強力超音波を照射する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば予め設定された軌道に沿って強力超音波の焦点領域を移動することができるため、腫瘍の大きさや形状に制約されずに移動範囲や移動間隔が任意に設定でき、正確な一様加温が可能となる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−166940号公報(第4−7頁、第1−8図)
【0008】
【特許文献2】特開平11−226046号公報(第3−4頁、第1−4図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示されている方法によれば、振動素子数が少ないためにその配列間隔が大きいことや、位相が0度と180度以下の任意の角度の2段階制御に限定されるために位相合わせの精度が悪い。このため、集束される強力超音波の波面を整えることができず、設定した照射領域以外の部位においても許容できない加温領域(副極大領域)が形成される場合がある。更に、また照射領域内における音圧分布を一様にすることも困難である。
【0010】
一方、特許文献2に示されている方法によれば、照射領域を拡張するために強力超音波発生部を機械的に移動する際に、この強力超音波発生部に一体化して取り付けられるカップリング膜やその中に収納されるカップリング液、更にはモニタ用のイメージング用超音波プローブをも同様に移動する必要がある。このため移動機構が複雑かつ大規模となり操作性に問題がある。また、この方法によって、例えば肝臓癌の治療を行う場合には、強力超音波発生部を移動することにより強力超音波の被検体への入射口が体表近傍の肋骨によって塞がれてしまい、所望の部分に強力超音波の一部が到達しないのみならず、肋骨部位において顕著な発熱を呈する。更に、イメージング用超音波プローブによって送受信される超音波も、この肋骨の影響を受けて超音波画像上において音響陰影や多重反射などが発生するため画質は著しく劣化する。
【0011】
例えば、図16(a)に示すように、被検体1の肋骨3の後方に位置する腫瘍2の右端に集束点9が形成されるように強力超音波を照射した後、図16(b)のように同じ腫瘍2の左端を照射するために強力超音波発生部6を被検体の体表面に沿って水平方向にΔX移動させた場合、肋骨3に照射される強力超音波は、肋骨表面における音響インピーダンスのミスマッチングのためにその透過が阻害される。即ち、肋骨3及びその周囲部の正常組織は強力超音波の照射によって発熱し損傷を受ける。またこの方法では、イメージング用超音波プローブ5は強力超音波発生部6の中央部に固定されているため、この強力超音波発生部6の移動に伴って、その画像領域8の内部に肋骨が含まれる場合が多い。このような場合には、イメージング用超音波プローブ5から発生した送信超音波は肋骨表面においてその大部分が反射し、この反射波は超音波画像の画質を劣化させる。
【0012】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は強力な超音波を生体内に照射する際に、装置の構成を複雑にすることなく、所望の領域に対して一様な超音波照射と良質なモニタ用超音波画像の観察が可能な超音波照射装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波照射装置は、複数の電気音響変換素子を備え、超音波を発生する超音波発生手段と、前記電気音響変換素子の中から所定の電気音響変換素子を選択し、かつ、この選択を切り換え可能な電気音響変換素子選択手段と、この電気音響変換素子選択手段によって選択された複数の電気音響変換素子群を駆動する電気音響変換素子駆動手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に係る本発明の超音波照射装置は、複数の電気音響変換素子を備え、超音波を発生する超音波発生手段と、前記電気音響変換素子の中から所定の電気音響変換素子を選択し、かつ、この選択を切り換え可能な電気音響変換素子選択手段と、この電気音響変換素子選択手段によって選択された複数の電気音響変換素子群を駆動する電気音響変換素子駆動手段と、前記照射位置を含む被検体断面の超音波画像データを生成する超音波画像生成手段と、前記超音波画像データを表示する表示手段とを備えることを特徴としている。
【0015】
従って、本発明によれば、電気音響変換素子の選択を順次切り換えることによって、被検体に接近して置かれた超音波発生部から照射される強力超音波の照射位置を容易に移動することができる。このため、所望の領域を照射するための超音波走査を正確かつ容易に行うことが可能な超音波照射装置を提供できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図9を用いて説明する。
【0017】
この実施の形態で述べる超音波照射装置は、腫瘍を強力な超音波によって加熱、焼灼して治療したり、遺伝子導入効率を高めるための超音波照射併用法の実現を目的として構成されるものであり、その特徴は、生体と接触するアプリケータの内部に2次元配列した電気音響変換素子の中から予め設定された複数の電気音響変換素子を、このアプリケータと分離して配置された変換素子選択回路によって選択することにある。
【0018】
図1〜図2を用いて本発明の実施の形態における超音波照射装置の構成を説明する。図1は本実施の形態における超音波照射装置全体の概略構成を示すブロック図であり、図2はこの超音波照射装置の構成要素の1つである超音波発生部の構成を示す。なお、以下では、腫瘍の焼灼に本発明の超音波照射装置を適用した場合の実施の形態について述べるが、遺伝子導入を目的とした場合においても同様の装置構成と手順によって超音波照射を行うことが可能である。
【0019】
この超音波照射装置は、被検体1に強力な超音波を照射するとともに、この照射領域の超音波照射効果のモニタリングを目的とした画像データを収集するアプリケータ11と、このアプリケータ11の内部に2次元に配列された電気音響変換素子の中から所定の変換素子を選択して強力超音波による走査を行なう超音波走査部12と、この選択された変換素子に対して駆動信号を供給する変換素子駆動部13と、上記選択された変換素子によって照射される強力超音波によって焼灼される腫瘍2を含む断面を画像化する超音波イメージング装置14と、アプリケータ11に回転自在に設けられるイメージング用超音波プローブ22を回転移動し、超音波画像断面を設定するプローブ回転機構部15を備えている。
【0020】
更に、超音波照射装置は超音波イメージング装置14によって生成される画像データを表示する表示部16と、患者IDや焼灼条件、更には腫瘍2の形状や大きさなどの情報を入力する操作部17と、プローブ回転機構部15及び超音波走査部12に設けられる選択回路移動機構部32を制御する機構制御部18と、以上述べた各ユニットを統括的に制御するシステム制御部19を備えている。
【0021】
アプリケータ11は、強力超音波を照射する超音波発生部21と、この照射領域の超音波画像を撮影するためのイメージング用超音波プローブ22とを備え、超音波発生部21のほぼ中央部に開口した孔部50にイメージング用超音波プローブ22が挿入されている。この超音波発生部21及びイメージング用超音波プローブ22の先端部は、例えば脱気水からなるカップリング液23によって充満されたアプリケータ11の上部に取り付けられている。このアプリケータ11の被検体1との接触部は、被検体1やカップリング液23とほぼ等しい音響インピーダンスと可撓性を有する高分子材料を用いたカップリング膜24で構成されている。即ち、超音波発生部21から照射される強力超音波やイメージング用超音波プローブ22によって送受信される画像用の超音波は、被検体1とほぼ等しい音響特性を有するカップリング膜24やカップリング液23を介して被検体1に対して効率良く送受信される。
【0022】
超音波発生部21は、図2(a)に示すように2次元にNX個配列された電気音響変換素子41を備えており、同一平面状においてX方向にPx素子、またY方向にPy素子が夫々間隔dx、dyで配列されている。図2(b)は図2(a)のA−A断面における超音波発生部21の断面図を示す。即ち、圧電セラミックスを用いた電気音響変換素子41の第1の面(上面)、及び第2の面(下面)には駆動信号を供給するための電極42a、42bがそれぞれ装着され、電極42aは支持台43に固定されている。また、他の電極42bには強力超音波の照射を効率良く行うための音響マッチング層44が設けられ、更に、その表面は保護膜45によって覆われている。
【0023】
このNX個の電気音響変換素子41にそれぞれに装着された電極42aは、駆動信号供給のためのNXチャンネルからなる信号線46によって後述する変換素子選択回路31と接続され、一方、電極42bは共通接続されて超音波照射装置の接地端子に接続される。
【0024】
イメージング用超音波プローブ22は、強力超音波の照射対象である腫瘍2に対する超音波発生部21の正確な照射と、この照射による焼灼効果を超音波画像によってモニタリングするために備えられている。このイメージング用超音波プローブ22は、通常の超音波診断に用いられているものと同一のものが使用されるが、特に超音波発生部21による照射の妨げにならないために、小さな超音波送受信面で広い範囲の画像化が可能なセクタ走査用の超音波プローブが好適である。本実施の形態では、電子的に超音波ビームの送受信方向を制御して扇状の画像領域を得るセクタ電子走査型の超音波プローブをイメージング用超音波プローブ22として用いる。
【0025】
アプリケータ11のカップリング液23の中に配置されるイメージング用超音波プローブ22の先端部は、例えば1次元にM個配列された微小電気音響変換素子を有し、この図示しない電気音響変換素子は送信時には電気パルスを超音波パルスに変換して被検体1に送信し、また、受信時には被検体1からの超音波信号を電気信号に変換する機能を有している。なお、このイメージング用超音波プローブ22の先端部の構成は図2(b)とほぼ同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0026】
超音波走査部12は、変換素子選択回路31と、選択回路移動機構部32とを備えている。変換素子選択回路31は、超音波発生部21において2次元に配列されたNX個の電気音響変換素子41の中から所定の電気音響変換素子41を選択し共通接続するためのスイッチング回路であり、複数の電極端子を有する1次側の基板、及び2次側の基板が対向して配置され、この2枚の基板がスライドすることによって所定のチャンネルに駆動信号が供給される構造になっている。
【0027】
図3(a)は変換素子選択回路31の具体例を示したものであり、第1の基板51と第2の基板52は対向して配置され、第1の基板51の上面、及び第2の基板52の下面にはそれぞれ間隔dで2次元配列された半球状の第1の電極53、及び図3(a)においては図示されない第2の電極54が取り付けられている。超音波発生部21のNX個の電気音響変換素子41に接続されている信号線46は、第1の基板51の下面よりこの第1の基板51を貫通して第1の電極53に接続されている。即ち、2次元に配列された電気音響変換素子41の配列と、第1の基板51の第1の電極53の配列順序は対応して信号線46によって接続されている。
【0028】
一方、第2の基板52の上面には電気音響変換素子41の駆動を行なう際に、その選択と共通接続を設定する電極55が所定の形状を有して形成されている。例えば図3(a)に示すような同心円状に配置された1つの円型パターンと複数の環型パターンを有したNチャンネルのアニュラアレイ電極55が形成され、これらのNチャンネルの電極55は後述する変換素子駆動部13のNチャンネルの出力端子に接続されている。なお、本実施の形態では説明を簡単にするために図3(a)におけるアニュラアレイ電極55の環型電極数は2としたが、実際には5〜15の環型電極が形成されことが望ましい。
【0029】
次に、図3(b)において図3(a)のB−B断面の一部を示す。変換素子選択回路31において、第1の基板51と第2の基板52は接近して置かれ、第2の基板52の貫通VIAなどを介してアニュラアレイ電極55と接続される第2の電極54は、第1の基板51の第1の電極53と接触して導通状態となっている。このような構成の変換素子選択回路31によって、アニュラアレイ電極55に供給される電気音響変換素子41の駆動信号は、所定の第2の電極54、第1の電極53、及び信号線46を介して超音波発生部21の電気音響変換素子41に供給される。即ち、この変換素子選択回路31によって、超音波発生部21のNX個の電気音響変換素子41の中から第2の基板52において形成されるNチャンネルのアニュラアレイ電極55と導通になっている変換素子41が選択駆動され、超音波発生部21はアニュラアレイ型の超音波発生部21として強力超音波を被検体1に照射する。
【0030】
選択回路移動機構部32は、変換素子選択回路31の第2の基板52を第1の基板51に対して基板面に沿って相対的に移動させるための機構部であり、第2の基板52のアニュラアレイ電極55が機械的に移動することによって、超音波発生部21の電気音響変換素子41において駆動される変換素子41の位置も第2の基板52の移動に対応して移動する。なお、第1の電極53と第2の電極54は移動後もその中心位置を常に一致させる必要があるため、第2の基板52のX方向及びY方向の相対移動距離は第1の電極53あるいは第2の電極54の配列間隔dの整数倍に設定することが望ましい。図3(c)は第1の基板51に対して第2の基板52をX方向に−dだけ移動した場合であり、この移動によって駆動される電気音響変換素子41はX方向に−dxシフトして選択駆動され、強力超音波が照射される。
【0031】
即ち、第2の基板52を第1の基板51に対して相対的に移動することによって、この移動距離や移動方向に対応して電気音響変換素子41を選択駆動することが可能となる。但し、2次元に配列されたNX個の電気音響変換素子41からNチャンネルのアニュラアレイ型変換素子群を選択する場合、図4に示すようにモザイク状の変換素子配列となる。なお、図4(a)は第2の基板52における3チャンネルのアニュラアレイ電極55を、また図4(b)はこのとき選択される電気音響変換素子41を示す。
【0032】
変換素子駆動部13は、超音波発生部21より強力超音波を照射するために電気音響変換素子41に駆動信号を供給する駆動部であり、電気音響変換素子41の共振周波数に対応した周波数の連続波を発生するCW発生器33と、この連続波に所定の遅延時間を与える遅延回路34と、この連続波を増幅するRFアンプ35と、このRFアンプ35の出力信号を電気音響変換素子41に効率良く供給するためにインピーダンスマッチングを行なうマッチング回路36を備えている。但し、アニュラアレイ電極55がNチャンネルの電極から構成される場合には、遅延回路34やRFアンプ35、更にはマッチング回路36もNチャンネル備えられ、遅延回路34ではN種類の遅延時間が設定される。
【0033】
遅延回路34は、超音波発生部21の電気音響変換素子41が照射する強力超音波を所望の領域に集束させるために、Nチャンネルの駆動信号に対して所定の遅延時間を与える。但し、この遅延時間はアニュラアレイ電極55の形状や焦点距離によって一義的に決定される。本実施の形態ではアニュラアレイ電極55の形状別に複数の焦点距離に対応する遅延時間情報が、システム制御部19の図示しない記憶回路にルックアップテーブルとして予め保存されている。
【0034】
図5(a)は3つの電極(N=3)で構成されるアニュラアレイ電極55−1〜55−3に駆動信号を供給する場合の変換素子駆動部13の回路構成を示したものであり、遅延回路34−1〜34−3によって電極55−1〜55−3の駆動信号に与えられる遅延時間を図5(b)に示す。即ち、最外周の電極55−3の駆動信号に対して、中心部の電極55ほどその駆動信号には大きな遅延時間が設定され、この傾向は焦点距離(Fo)が小さくなるほど顕著となる。このNチャンネルの遅延回路34−1〜34−3の出力信号はRFアンプ35−1〜35−3及びマッチング回路36−1〜36−3を経て、変換素子選択回路31における第2の基板52のアニュラアレイ電極55−1〜55−3に供給される。
【0035】
次に、超音波イメージング装置14の構成につき図6を用いて説明する。
【0036】
超音波イメージング装置14は、イメージング用超音波プローブ22から被検体1に対して超音波を放射するための駆動信号を生成する超音波送信部61と、被検体1からの受信超音波をイメージング用超音波プローブ22を介して受信する超音波受信部62と、この受信信号に基づいて超音波画像データを生成する画像データ生成部63と、この画像データを保存する画像データ記憶部64を備えている。
【0037】
超音波送信部61は、レート信号発生器66と、送信遅延回路67と、パルサ68を備えている。レートパルス発生器66は、被検体1に放射する超音波パルスの繰り返し周期を決定するレートパルスを送信遅延回路67に供給する。送信遅延回路67は、Mチャンネルの独立な遅延回路から構成され、イメージング用超音波プローブ22において細い送信超音波ビーム幅を得るために所定の深さに超音波を集束するための遅延時間と、所定の方向に超音波を偏向するための遅延時間をレートパルスに与え、パルサ68に供給する。パルサ68は、Mチャンネルの独立な駆動回路を有しており、イメージング用超音波プローブ22に内蔵された電気音響変換素子を駆動し、被検体1に超音波を送信するための駆動パルスを生成する。
【0038】
超音波受信部62はプリアンプ69と、受信遅延回路70と、加算器71とを備えている。プリアンプ69は、超音波振動子によって電気信号に変換された微小信号を増幅し十分なS/Nを確保する。受信遅延回路70は、細い受信ビーム幅を得るために所定の深さからの超音波を集束するための集束用遅延時間と、超音波ビームの受信指向性を制御し被検体1を走査するための遅延時間をプリアンプ69の出力に与えた後、加算器71に送り、加算器71はMチャンネルの受信信号を加算して1つに纏める。
【0039】
画像データ生成部63は、対数変換器72と、包絡線検波器73と、A/D変換器74とを備えている。画像データ生成部63の入力信号は、対数変換器72で受信信号の振幅を対数変換し、弱い信号を相対的に強調する働きをしている。一般に被検体1からの受信信号は80dB以上の広いダイナミックレンジをもった振幅を有しており、これを23dB程度のダイナミックレンジをもつ通常のテレビモニタに表示するためには弱い信号を強調する振幅圧縮が必要となる。包絡線検波器73は、対数変換された受信信号に対して包絡線検波を行い、超音波周波数成分を除去し、その振幅のみを検出する。A/D変換器74は、この包絡線検波器73の出力信号をA/D変換し超音波画像データを生成する。
【0040】
画像データ記憶部64は、画像データ生成部63において生成された超音波の画像データを一旦保存する記憶回路であり、超音波の送受信方向を変更しながら得られるデータは順次記憶され、2次元の画像データを構成する。
【0041】
プローブ回転機構部15は、超音波イメージング装置14によって表示される超音波画像中に、超音波発生部21によって照射される領域が常に表示されるようにイメージング用超音波プローブ22を鉛直方向のプローブ軸を回転軸として回転あるいは回動する。
【0042】
表示部16は、図示しない表示回路とCRTモニタを備えており、イメージング用超音波プローブ22、及び超音波イメージング装置14によって得られる超音波画像を表示する。この場合、超音波イメージング装置14の画像データ記憶部64に保存される超音波画像データは表示回路においてD/A変換された後、テレビフォーマットに変換されCRTモニタに表示される。更に、この超音波画像上に超音波発生部21による照射位置や集束超音波のビーム形状などを重畳して表示することも可能である。また、このCRTモニタには操作者が操作部17の例えばマウスを用いて入力する腫瘍2の位置や輪郭線、更にはこの輪郭線を楕円近似等により変換した図形などが表示される。
【0043】
操作部17は、操作パネル上にキーボード、トラックボール、マウス等を備え、操作者が患者情報や、腫瘍の位置及びサイズなどの腫瘍情報や、焼灼間隔あるいは1焦点当たりの焼灼時間などの焼灼情報を入力するために用いられる。
【0044】
機構制御部18は、プローブ回転機構部15と、超音波走査部12の選択回路移動機構部32を制御する。まず操作部17から入力される腫瘍2の位置や大きさ、更には焼灼間隔などの情報に基づいて設定された移動軌跡に基づいて選択回路移動機構部32の移動を制御し、更に、選択回路移動機構部32の移動によって変化する強力超音波の集束点、即ち、照射位置が超音波画像上で常に表示可能となるようにプローブ回転機構部15を制御する。
【0045】
システム制御部19は、図示しないCPUと図示しない記憶回路を備え、操作部17からのコマンド信号に従って各ユニットの制御やシステム全体の制御を統括して行う。特に、内部のCPUには操作部17を介して送られる操作者の入力コマンドや入力情報が保存される。また、このシステム制御部19は、操作部17から入力される腫瘍2の位置や大きさの情報を読み取り、その外形を例えば楕円近似にて表示部16のCRTモニタ上に表示するとともに、これらの腫瘍情報に基づいて最適な焼灼軌跡の設定などを行う。また、この焼灼軌跡と焼灼間隔、更には1焦点当たりの焼灼時間から腫瘍全体の焼灼に要する時間を算出しCRTモニタ上に表示する。
【0046】
次に、本実施の形態における超音波イメージング装置14によるモニタ用超音波画像データの生成と強力超音波の照射手順を図1〜図9を用いて説明する。但し、図7はこの照射手順を示すフローチャートである。
【0047】
操作者は、まず操作部17より強力超音波の大きさや1焦点当たりの焼灼時間などの焼灼条件を設定し、これらの情報をシステム制御部19の記憶回路に保存する(ステップS1)。次いで、操作者は被検体1の腫瘍観察に対して適当と思われる位置にイメージング用超音波プローブ22が設置されるようにアプリケータ11の位置を設定する(ステップS2)。但し、実際には超音波イメージング装置14を動作状態に切り換え、このとき得られる超音波画像を観測しながらアプリケータ11の位置を調節してもよい。
【0048】
この超音波イメージング装置14による画像生成について図6を用いて説明する。超音波の被検体1への送信に際して、まず超音波送信部61のレートパルス発生器66は、システム制御部19からの制御信号に従い、被検体1に放射する超音波パルスの繰り返し周期を決定するレートパルスを送信遅延回路67に供給する。送信遅延回路67は、送信超音波を所定の深さに集束するための遅延時間と、所定の方向(θ1)に超音波を送信するための遅延時間をレートパルスに与え、このレートパルスをパルサ68に供給する。パルサ68は、イメージング超音波プローブ22に内蔵されている電気音響変換素子を駆動し、被検体1に超音波パルスを放射する。
【0049】
被検体1に放射された超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる被検体1の臓器間の境界面あるいは組織にて反射し、この超音波は送信時と同じ電気音響変換素子によって受信されて電気信号に変換される。この受信信号はプリアンプ69にて増幅され、受信遅延回路70に送られる。受信遅延回路70は、所定の深さからの超音波を集束して受信するための遅延時間と、所定の方向(θ1)に強い受信指向性をもたせて受信するための遅延時間を受信信号に与えた後、加算器71へ送る。加算器71は、プリアンプ69、受信遅延回路70を介して入力される複数の受信信号を加算合成し、1つの受信信号に纏めた後、画像データ生成部63へ供給する。
【0050】
加算器71の出力は、画像データ生成部63において、対数変換、包絡線検波、A/D変換がなされた後、画像データ記憶部64に一旦保存される。
【0051】
次に、超音波の送受信方向をΔθずつ順次更新させながら上記と同様な手順で超音波の送受信を行なう。即ち、システム制御部19は、送信遅延回路67及び受信遅延回路70の遅延時間を上記超音波送受信方向に対応させて順次切り替えながら、画像データを収集する。
【0052】
システム制御部19は、上記手順によって得られる画像データを画像データ記憶部64に順次保存し、所定の範囲の走査が終了した時点で1枚分の画像データを表示部16において表示する。
【0053】
操作者は、表示部16の例えばCRTモニタ上に表示された被検体1の超音波画像を観察し、強力超音波の照射対象である腫瘍2がイメージング用超音波プローブ22のほぼ直下に位置するようにアプリケータ11の位置を調節する(ステップS3)。図8は、このとき表示部16のCRTモニタ上に表示される超音波画像について示す。この場合、イメージング用超音波プローブ22の電気音響変換素子は、例えば図2(a)あるいは図3(a)にて示したX方向に1次元配列されるように初期設定され、従って、最初に表示される超音波画像は図8(a)に示すようにX−Z平面において得られる。
【0054】
操作者は、この最初の超音波画像に表示されている腫瘍2に対して操作部17のマウスを用いて腫瘍像の輪郭を描く(ステップS4)。システム制御部19のCPUは、入力された腫瘍輪郭情報に基づいて例えば楕円近似を行い、更に、この楕円情報に対してイメージング用超音波プローブ22の先端部を座標の基準g(X=0,Y=0,Z=0)とした場合の楕円の中心位置g(Xo、0、Zo)と、この楕円のX方向の最大径(Wx)、及びZ方向の最大径(Wz)を算出してシステム制御部19の記憶回路に保存する。
【0055】
次に、操作者は操作部17において超音波画像断面の変更指示を入力することによって、システム制御部19はこの変更指示信号を機構制御部18に送り、機構制御部18は、この指示信号に基づいてプローブ回転機構部15に回転制御信号を供給して、イメージング用超音波プローブ22をZ軸の周りに90度回転させる。従って、CRTモニタ上には図8(b)に示すようなY−Z平面内における第2の超音波画像が表示される。
【0056】
操作者は、この第2の超音波画像に対しても最初の超音波画像の場合と同様にして、操作部17のマウスを用いて腫瘍像の輪郭を入力し、システム制御部19のCPUは、この輪郭情報基づいて楕円近似を行った後に、この楕円情報から楕円の中心位置g(0,Yo,Zo)と、この楕円のY方向の最大径(Wy)及びZ方向の最大径(Wz’)を算出してシステム制御部19の記憶回路に保存する。なお、Wz≠Wz’の場合にはいずれか一方を選択してもよいが、加算平均値によって求められた値を新たに設定してもよい。
【0057】
システム制御部19は、上記の計測によって得られた腫瘍2の中心位置、及び大きさの情報に基づいて、この腫瘍2を均一に焼灼するために超音波発生部21から照射される強力超音波の焦点の3次元的な移動範囲とその移動軌跡を設定する(ステップS5)。
【0058】
以上のようにして、超音波発生部21による腫瘍2の照射計画、即ち強力超音波の焦点の移動範囲と移動軌跡が決定したならば、操作者は操作部17より照射開始コマンドを入力する。このコマンド入力を読み取ったシステム制御部19は、照射計画にて設定された最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)において、超音波発生部21による強力超音波の集束点が形成されるように変換素子駆動部13における遅延回路34の遅延時間を設定する。即ち、システム制御部19は、記憶回路のルックアップテーブルから焦点距離がZ1におけるN種類の遅延時間情報を読み出し、この情報に基づいて遅延回路34の遅延時間を設定する。
【0059】
次いで、システム制御部19は、変換素子選択回路31においてアニュラアレイ電極55の中心g’(0,0)をg’(X1’,Y1’)に移動させるために、機構制御部18を介して選択回路移動機構部32に移動制御信号を供給する。なお、上記の第2の基板52の基準点g’(0,0)はアプリケータ11において設定した基準座標、即ち、イメージング用超音波プローブ22の先端部の座標g(0,0,0)と対応しており、超音波発生部21において2次元に配列されている電気音響変換素子41の配列中心とも一致している。また、上記アニュラアレイ電極55の移動後の中心位置g(X1’,Y’)は最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)のX座標及びY座標に対応している(ステップS6)。
【0060】
更に、システム制御部19は、上記照射位置g(X1,Y1,Z1)の情報に基づいた回転制御信号を、機構制御部18を介してプローブ回転機構部15に供給し、この照射位置がイメージング用超音波プローブ22によって得られる超音波画像面に一致するように所定の角度だけ回転させる(ステップS7)。
【0061】
システム制御部19により最初の照射位置における電気音響変換素子41の選択と、この照射位置に照射される強力超音波の遅延時間設定と、この照射位置を画像化するためのイメージング用超音波プローブ22の回転角度設定が完了したならば、システム制御部19は、変換素子駆動部13のCW発生器33に対して所定周波数の連続波を発生させる。この連続波はNチャンネルから構成される遅延回路34において強力超音波を集束するための遅延時間が与えられ、RFアンプ35及びマッチング回路36を経て、変換素子選択回路31の第2の基板52におけるアニュラアレイ電極55に供給される。
【0062】
アニュラアレイ電極55に供給された連続波は、同じ第2の基板52の裏面に形成された第2の電極54,更には第1の基板51上に形成された第1の電極53と、この第1の電極53に接続された信号線46を経て超音波発生部21の所定の電気音響変換素子41に供給される。この連続波の駆動によって電気音響変換素子41から照射される強力超音波は、照射計画にて設定された最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)に集束し、この位置の腫瘍組織を焼灼する(ステップS8)。
【0063】
一方、超音波発生部21によって腫瘍組織が焼灼される状況はイメージング用超音波プローブ22及び超音波イメージング装置14によって超音波画像データとして収集され、システム制御部19はこのとき得られる画像データを表示部16において表示する。
【0064】
最初の照射位置g(X1,Y1,Z1)への強力超音波の照射が予め設定された時間行われた後、照射計画に従って第2の照射位置g(X2,Y2,Z2)、更には第3以降の照射位置に対しても同様の手順によって強力超音波の照射を行なわれる。また、超音波画像上にこれらの焼灼部位が表示されるように、イメージング用超音波プローブ22は回転制御されるため、強力超音波の焼灼によって生ずる腫瘍組織の変性の状態は表示部16において常時、リアルタイム超音波画像として観測することが可能である(ステップS9)。
【0065】
図9は強力超音波による照射位置の移動方法の具体例を示したものであり、直線状の移動方法と円弧状の移動方法を図9(a)、及び図9(b)に示す。照射位置の移動方法はこれらの方法に限定されないが、照射位置の移動に伴って回転移動するイメージング用超音波プローブ22を考慮して設定することが望ましい。
【0066】
次に、本発明の実施の形態における変換素子選択回路31の変形例について図10〜図12を用いて説明する。上記の本実施の形態においては、超音波発生部21の電気音響変換素子41の配列幅に余裕がある場合について述べてきた。
【0067】
例えば図10(a−1)、及び図10(a−2)に示すように、超音波走査部12におけるアニュラレイ電極55の機械的移動に基づいて、超音波発生部21の電気音響変換素子41を腫瘍2の大きさによって決定される範囲内において中央部から端部にXhだけシフトして選択する場合、電気音響変換素子41の配列幅に余裕があるならば、図10(a−1)の中央部と同様なアニュラアレイ型の選択が図10(a−2)の端部においても可能となり、従って、強力超音波も同様な集束特性が得られる。
【0068】
しかしながら、既に述べたように肝臓癌の治療を行う場合などでは、被検体1へ照射される強力超音波の一部が肋骨に照射されることを避けるために、図10(b−1)に示すように、中央部に強力超音波を照射する場合の電気音響変換素子41の選択において余裕をもたせることができない。このため本変形例においては、図10(a−2)の場合と同様に電気音響変換素子41の選択位置をXhだけ端部にシフトする場合、図10(b−2)に示すように端部が欠けた非対称な選択方法を適用する。
【0069】
図11(a−1)及び図11(a−2)に、本変形例に示した電気音響変換素子41の選択方法における中心部の照射と端部の照射における音圧の2次元分布を、また、これらの2次元分布のC−C,C’−C’における音圧値を図11(b−1)及び図11(b−2)に示す。図11に示すように電気音響変換素子41におけるアニュラアレイパターンの右端が欠けることにより、本来の集束点に発生する音圧ピーク点(主極大)の他に第2の音圧ピーク点(副極大)が発生する。但し、この副極大と主極大の差は一般に10dB以上であれば大きな問題とはならない。因みに最大外径120mmのアニュラアレイ駆動を用いた直径10mmの腫瘍2の焼灼において、Xh=5mmとした場合に発生する副極大は上記許容値を十分満足させることができる。
【0070】
図12は本変形例における変換素子選択回路31の構成を示したものであり、図12(a)は第1の基板51と第2の基板52の位置関係を示し、この図におけるD−Dの断面を図12(b)に示す。例えば第1の基板51にはアニュラアレイ電極55の最大径とほぼ等しい長さを一辺にもつ正方形の第2の基板52にほぼ等しい大きさの有効領域81と、この有効領域81の周囲においてアニュラアレイ電極55の最大移動距離Xhを幅にもつ無効領域82が設定される。そして、有効領域81の第1の電極53は信号線46を介して電気音響変換素子41に接続され、一方、無効領域82の第1の電極53には電気音響変換素子41とほぼ同等なインピーダンス特性を有する擬似変換素子83に接続される。
【0071】
例えば、アニュラアレイ電極55の中心が右側に距離Xhだけ移動した場合、第2の電極54、更には第1の電極53を介してアニュラアレイ電極55の右端部に接続される電気音響変換素子41は存在しなくなり、代わりに電気音響変換素子41とほぼ等しいインピーダンスの擬似変換素子83が接続されるため、変換素子駆動部13の負荷の変動を抑え、インピーダンスマッチングを維持することができる。
【0072】
以上述べた本実施の形態によれば、被検体1に直接接触するアプリケータ11に対し超音波走査部12は分離して構成され、この超音波走査部12においてアニュラレイ電極55を所望の方向に機械的移動させることによって、アプリケータ11の超音波発生部21から照射される強力超音波の照射位置を移動させることができる。従って、比較的簡単な回路構成により照射位置の制御が可能となる。特に、超音波発生部21を肋間に固定したまま照射位置を制御することが可能となるため、肋骨の後方に位置する腫瘍2に対する照射も容易に行うことが可能となる。また、治療の初期段階におけるアプリケータ11と腫瘍位置との位置の微小なズレは超音波走査部12の操作によって容易に補正できるため、操作性においても大幅に改善される。更にモニタ用のイメージング用超音波プローブ22はアニュラアレイ電極55の移動にかかわらず常にアプリケータ11のほぼ中央部に配置されているため肋骨等に起因して生ずる画質劣化を防ぐことができる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。例えば、図3に示した超音波走査部12の変換素子選択回路31では、第1の基板51と第2の基板52にいずれも半球状の形状をした第1の電極53と第2の電極54を対向して配置したが、この形状に限定されるものではなく、例えば図13に示すように第1の基板51には図3と同様の半球状の第1の電極53を配置し、第2の基板52には導電性の電極ブラシ85を第1の電極53に対向して配置する方法であってもよい。またこのとき、半球状の電極が第2の基板52に、また電極ブラシ85が第1の基板51に装着されても構わない。
【0074】
また、図3において変換素子選択回路31の第1の基板51、及び第2の基板52は平板の場合について示したが曲面であってもよい。例えば図14に示すように第1の基板51と第2の基板52は半径の異なるそれぞれの円筒の側面として形成されてもよい。この場合、それぞれの円筒軸を一致させ、第2の基板52は第1の基板51を覆うように配置する。この第2の基板52に接続される選択回路移動機構部32によって、所定の第1の電極53と第2の電極54が接触し駆動信号が超音波発生部21に供給される。
【0075】
更に、第2の基板52において形成される電極パターンはアニュラアレイパターンに限定されない。例えば、図15に示すような多角形のリングから構成されていてもよく、更にリングの形状でなくともよい。
【0076】
一方図1、及び図2に示した超音波発生部21の電気音響変換素子41は同一平面上に配置される場合について示したが、曲面上に配置してもよい。特に被検体1に対して凹面となる支持台43に配置することによって強力超音波の集束効率を向上させることができる。
【0077】
また、本発明の実施の形態においては、腫瘍2の輪郭を楕円近似する方法について述べたが、この方法についても限定されるものではなく、他の形状に設定してもよい。
【0078】
更に、上記の実施の形態に於いては、アプリケータと分離して変換素子選択回路を設けたが、この方法に限定されるものではなく、アプリケータ内部に変換素子選択回路を組み込んでもよい。例えば、電気音響変換素子の直上に電極を作成して変換素子選択回路を設けることもできる。なお、上記の場合で、超音波イメージングプローブ等がアプリケータと一体構成されている場合には、イメージングプローブと干渉しないように変換素子選択回路の移動範囲を調節することが必要になる。
【0079】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、電気音響変換素子の選択を切り換えることによって、被検体に接近して置かれた超音波発生部から照射される強力超音波の照射位置を容易に移動することができる。このため、所望の領域を照射するための強力超音波走査を正確、かつ容易に行うことが可能な超音波照射装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における超音波照射装置全体の概略構成を示すブロック。
【図2】本発明の実施の形態における超音波発生部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施の形態における変換素子選択回路の構成を示す図。
【図4】本発明の実施の形態における電気音響変換素子の選択例を示す図。
【図5】本発明の実施の形態における変換素子駆動部の回路構成を示す図。
【図6】本発明の実施の形態における超音波イメージング装置のブロック図。
【図7】本発明の実施の形態における超音波照射手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施の形態における腫瘍輪郭設定時の超音波画像を示す図。
【図9】本発明の実施の形態における強力超音波による照射位置の移動方法を示す図。
【図10】本発明の実施の形態の変形例における強力超音波用の電気音響変換素子の選択方法を示す図。
【図11】本発明の実施の形態の変形例における音圧分布を示す図。
【図12】本発明の実施の形態の変形例における変換素子選択回路の構成を示す図。
【図13】本発明の実施の形態における変換素子選択回路の第2の変形例を示す図。
【図14】本発明の実施の形態における変換素子選択回路の第3の変形例を示す図。
【図15】本発明の実施の形態におけるアニュラアレイ電極の変形例を示す図。
【図16】従来の超音波照射装置を示す図。
【符号の説明】
11…アプリケータ
12…超音波走査部
13…変換素子駆動部
14…超音波イメージング装置
15…プローブ回転機構部
16…表示部
17…操作部
18…機構制御部
19…システム制御部
21…超音波発生部
22…イメージング用超音波プローブ
23…カップリング液
24…カップリング膜
31…変換素子選択回路
32…選択回路移動機構部
33…CW発生器
34…遅延回路
35…RFアンプ
36…マッチング回路
50…孔部
Claims (14)
- 複数の電気音響変換素子を備え、超音波を発生する超音波発生手段と、
前記電気音響変換素子の中から所定の電気音響変換素子を選択し、かつ、この選択を切り換え可能な電気音響変換素子選択手段と、
この電気音響変換素子選択手段によって選択された複数の電気音響変換素子群を駆動する電気音響変換素子駆動手段とを
備えることを特徴とする超音波照射装置。 - 複数の電気音響変換素子を備え、超音波を発生する超音波発生手段と、
前記電気音響変換素子の中から所定の電気音響変換素子を選択し、かつ、この選択を切り換え可能な電気音響変換素子選択手段と、
この電気音響変換素子選択手段によって選択された複数の電気音響変換素子群を駆動する電気音響変換素子駆動手段と、
前記照射位置を含む被検体断面の超音波画像データを生成する超音波画像生成手段と、
前記超音波画像データを表示する表示手段とを
備えることを特徴とする超音波照射装置。 - 前記超音波発生手段の電気音響変換素子は、2次元に配列されていることを特徴とする請求項1または2記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響変換素子選択手段は、前記電気音響変換素子と接続される複数の第1の電極を配置した第1の電極基板と、前記複数の第1の電極に対して接触可能な位置に複数の第2の電極を配置した移動可能な第2の電極基板を備え、前記複数の第2の電極は所定の形状に共通接続されることを特徴とする請求項1または2記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響変換素子選択手段の第1の電極は前記電気音響変換素子の配列に対応して配列され、対応する前記第1の電極と前記電気音響変換素子は信号線を介して接続されていることを特徴とする請求項4記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響変換素子選択手段の第1の電極または第2の電極の少なくともいずれか一方は導電性の電極ブラシを用いることを特徴とする請求項4記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響変換素子選択手段の第1の電極は、前記電気音響変換素子の素子数より多くの電極数を有し、前記電気音響変換素子に接続されない第1の電極には擬似的な負荷が接続されることを特徴とする請求項4記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響変換素子選択手段の第1の電極基板と第2の電極基盤は半径の異なる円筒状の基板から構成され、前記第1の電極は半径の小さな円筒基板の外側面に配置され、第2の電極は半径の大きな円筒基板の内側面に配置されることを特徴とする請求項4記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響素子選択手段は前記超音波発生手段における電気音響変換素子をアニュラアレイ状に共通接続することを特徴とする請求項1または2記載の超音波照射装置。
- 前記照射位置移動手段は、前記電気音響変換素子選択手段において対向して配置される第1の電極基板と第2の電極基板のうち、少なくともいづれか一方を基板面方向にスライドして移動することを特徴とする請求項1または2記載の超音波照射装置。
- 前記電気音響変換素子駆動手段は、前記複数の電気音響変換素子群の駆動信号に対して所定の遅延時間を与える遅延時間設定手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の超音波照射装置。
- 前記超音波画像生成手段はイメージング用の超音波プローブとプローブ回転制御手段を備え、前記プローブ回転制御手段は前記照射位置移動手段によって設定される照射位置情報に基づいて前記超音波プローブを回転制御することを特徴とする請求項2記載の超音波照射装置。
- 照射計画設定手段を更に備え、前記照射位置移動手段は共通接続される電気音響変換素子の位置を前記照射計画設定手段によって予め設定される照射軌跡に基づいて所定方向に移動することを特徴とする請求項1または2記載の超音波照射装置。
- 腫瘍データ入力手段を更に備え、前記照射計画設定手段は、前記表示手段によって表示される腫瘍画像に基づいて前記腫瘍データ入力手段によって入力される腫瘍情報によって設定されることを特徴とする請求項13記載の超音波照射装置。
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JP2008515557A (ja) * | 2004-10-06 | 2008-05-15 | ガイデッド セラピー システムズ, エル.エル.シー. | ヒト表面組織の制御された熱処理のための方法およびシステム |
JP2013509932A (ja) * | 2009-11-09 | 2013-03-21 | コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ | 予め形成された球状の整合層を備えた湾曲した超音波hifuトランスデューサ |
-
2002
- 2002-09-26 JP JP2002280590A patent/JP2004113445A/ja active Pending
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