JP2004181501A - マグネシウム基合金の伸線方法および伸線装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マグネシウム基合金の被加工材を複数枚のダイスに連続的に挿通して複数パスの伸線を行うマグネシウム基合金の伸線方法である。被加工材は重量%でAl:0.1〜12.0%を含む。各ダイス13よりも上流において被加工材20を加熱手段11で加熱して伸線を行う。加熱温度は150℃〜350℃が望ましい。加熱手段11とダイス13との間に冷却手段12を設けることも好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマグネシウム基合金の伸線方法に関するものである。特に、細線を容易に得ることができるマグネシウム基合金の伸線方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム基合金は、アルミニウムよりも軽く、比強度、比剛性が鋼やアルミニウムよりも優れており、航空機部品、自動車部品などの他、各種電気製品のボディーなどにも広く利用されている。例えば、特許文献1には、Mg−Zn−X系(X:Y、Ce、Nd、Pr、Sm、Mm)の高強度のマグネシウム基合金が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−3375号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Mgおよびその合金は、最密六方格子構造であるため延性に乏しく、塑性加工性が極めて悪い。そのため、Mgおよびその合金のワイヤを得ることは極めて困難であった。例えば、鋳造材の熱間圧延や熱間押出しによって丸棒が得られるものの、靭性が低く伸線することが難しい。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術で得られる材料形状は、直径6mm、長さ270mmの短い棒材にすぎず、記述されている方法(粉末の押し出し)で長尺の線材を得ることはできない。特に、Y、La、Ce、Nd、Pr、Sm、Mm等の添加元素を数原子%オーダーで含むため、高コストであるだけでなく、リサイクル性にも劣る。
【0006】
従って、本発明の主目的は、強度と靭性に優れたマグネシウム基合金線を得ることができるマグネシウム基合金の伸線方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数パスの伸線を連続して行う際、各パスの伸線条件を特定することで上記の目的を達成する。
【0008】
すなわち、本発明マグネシウム基合金の伸線方法は、マグネシウム基合金の被加工材を複数枚のダイスに連続的に挿通して複数パスの伸線を行うマグネシウム基合金の伸線方法であって、前記被加工材は重量%でAl:0.1〜12.0%を含み、各ダイスよりも上流において被加工材を加熱して伸線を行うことを特徴とする。
【0009】
各パスにおいて被加工材を加熱して連続伸線を行うことで、延性に乏しいマグネシウム基合金が伸線できる。特に、加熱と伸線による塑性加工により、マグネシウム基合金の結晶粒径を微細かつ均一にし、多パスの伸線を可能にすることで、細径のワイヤを得ることができる。
【0010】
ここで、被加工材の加熱温度は150℃〜350℃とすることが好ましい。特に、ダイス直前の被加工材の温度を150℃〜350℃とすることが望ましい。このような温度範囲に被加工材の加熱温度を限定することで、複数パスの伸線を確実に行うことができる。特に、3パス以上、より好ましくは5パス以上の多パスの伸線を行うことができる。より好ましい加熱温度は200〜300℃である。
【0011】
上記被加工材の加熱手段は特に限定されないが、高周波加熱装置により加熱することが好ましい。高周波加熱装置によりインラインにて均一な被加工材の加熱を行うことができる。高周波の周波数は数kHz〜数百kHzとすることで所定温度に昇温することができる。加熱の効率を考えると高周波の周波数は100kHz程度が有効である。
【0012】
被加工材の加熱温度を200℃以上とした場合、加熱された被加工材をダイス挿入直前に200℃未満に冷却して各ダイスを通過させることが望ましい。加熱したままの被加工材では強度が低く、伸線すると断線しやすいが、加熱された被加工材を冷却することで、断線を生じることなくより多パスの伸線を行って、細径の線材を得ることができる。冷却の具体的手段は衝風や水冷が挙げられる。好ましい冷却速度は50℃/sec以上程度である。
【0013】
また、最初のパスと第2パス以降とで加熱後の冷却条件を変えても良い。つまり、最初のパスにおいて、被加工材の加熱温度を200℃以上とし、加熱された被加工材をダイス挿入直前に200℃未満50℃以上に冷却してダイスを通過させる。続いて、第2パス以降において、被加工材の加熱温度を200℃以上とし、加熱された被加工材をダイス挿入直前に200℃未満に冷却してダイスを通過させることが好ましい。特に、第2パス以降において、室温などの50℃未満にまで冷却しても伸線が可能である。
【0014】
通常、伸線前の母材には押出材が用いられる。押出材は結晶粒径やそのサイズのばらつきが大きく、冷間で伸線することができない。これに対し、一旦200℃以上に加熱して最初のパスでの伸線が行われると、その際の加熱と塑性加工によりマグネシウム基合金の結晶粒径を微細かつ均一にできる。そのため、第2パス以降では、200℃以上に加熱後、室温にまで冷却しても伸線を行うことができる。室温での伸線は、加熱した伸線に比べて線径精度に優れる。
【0015】
本発明方法による連続伸線において、1パスの加工度(断面減少率)は10%以上28%以下であることが好ましい。1パスの加工度が10%未満では加工効率が低く、逆に28%を超えると多パスでの加工が難しく、細径の線材を得ることが難しくなる。
【0016】
本発明方法において、伸線速度は数m〜数十mが好ましい。線径が細くなるほど速い速度で伸線できる傾向にある。実際の伸線速度は、線材の製造効率と断線の有無を考慮して適宜決定すれば良い。
【0017】
さらに、本発明方法では、被加工材に潤滑液が付着した状態で伸線することが好適である。潤滑液を用いることで、断線を抑制してより確実に細線にまで伸線することができる。被加工材に潤滑液を付着させる手段は、潤滑液中に被加工材及びダイスを浸漬したり、潤滑液を被加工材及びダイスにかけること等があげられる。その際、潤滑液が100℃以上に加熱されていることが望ましい。100℃以上に加熱した潤滑液を被加工材に付着させて伸線することで、多パスの伸線を行ってより細径の線材を得ることができる。特に、0.5mm以下のマグネシウム基合金線を得ることもできる。
【0018】
この伸線方法が適用されるマグネシウム基合金には、Al:0.1〜12.0重量%を含有する鋳造用マグネシウム基合金と展伸用マグネシウム基合金のいずれも利用することができる。マグネシウム単体では十分な強度を得ることが難しいが、Alの含有量を上記のように限定したマグネシウム基合金は連続伸線を行うことで好ましい強度と靭性が得られる。特に、0.1〜12.0重量%のAlに加えて、重量%でMn:0.1〜1.0%、Zn:0.1〜2.0%およびSi:0.3〜2.0%から選択される元素を1種以上含むものが好適である。より具体的には、例えば、ASTM記号におけるAM系、AZ系、AS系などが利用できる。
【0019】
AM系におけるAM60は重量%でAl:5.5〜6.5%、Zn:0.22%以下、Cu:0.35%以下、Mn:0.13%以上、Ni:0.03%以下、Si:0.5%以下を含有するマグネシウム基合金である。AM100は重量%でAl:9.3〜10.7%、Zn:0.3%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.1〜0.35%、Ni:0.01%以下、Si:0.3%以下を含有するマグネシウム基合金である。
【0020】
AZ系におけるAZ10は重量%でAl:1.0〜1.5%、Zn:0.2〜0.6%、Mn:0.2%以上、Cu:0.1%以下、Si:0.1%以下、Ca:0.4%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ21は重量%でAl:1.4〜2.6%、Zn:0.5〜1.5%、Mn:0.15〜0.35%、Ni:0.03%以下、Si:0.1%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ31は重量%でAl:2.5〜3.5%、Zn:0.5〜1.5%、Mn:0.15%〜0.5%、Cu:0.05%以下、Si:0.1%以下、Ca:0.04%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ61は重量%でAl:5.5〜7.2%、Zn:0.4〜1.5%、Mn:0.15〜0.35%、Ni:0.05%以下、Si:0.1%以下を含有するマグネシウム基合金である。AZ91は重量%でAl:8.1〜9.7%、Zn:0.35〜1.0%、Mn:0.13%以上、Cu:0.1%以下、Ni:0.03%以下、Si:0.5%以下を含有するマグネシウム基合金である。
【0021】
AS系におけるAS21は、重量%でAl:1.4〜2.6%、Zn:0.1%以下、Cu:0.15%以下、Mn:0.35〜0.60%、Ni:0.001%、Si:0.6〜1.4%を含有するマグネシウム基合金である。AS41は重量%でAl:3.7〜4.8%、Zn:0.1%以下、Cu:0.15%以下、Mn:0.35〜0.60%、Ni:0.001%以下、Si:0.6〜1.4%を含有するマグネシウム基合金である。
【0022】
上記化学成分の他にはMgおよび不純物が含まれる合金として利用されることが一般的である。不純物には、Fe、Caなどが挙げられる。
【0023】
また、本発明伸線装置は次の構成を具えることを特徴とする。すなわち、被加工材が挿通されるダイスと、ダイスを通過した被加工材を巻き取る巻取り手段と、ダイスの上流において被加工材を加熱する加熱手段とを有する。これらダイス、巻取り手段及び加熱手段を1パスのユニットとして、複数ユニットが直列に配置されていることを特徴とする。
【0024】
加熱手段は被加工材を150〜350℃に加熱できるものが好適である。具体例としては、高周波加熱装置が挙げられる。
【0025】
さらに、ダイスと加熱手段との間に、加熱された被加工材を冷却する冷却手段を有することが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(伸線装置)
まず、本発明伸線装置を図1に基づいて説明する。図1は同装置の概略構成図である。この装置は、図示しないサプライより被加工材20が供給され、複数パスのユニット10を通って連続伸線が行われる。各パスのユニット10は、上流側から順に、加熱手段11、冷却手段12、ダイス13、巻取り手段14を具えている。加熱手段11は搬送される被加工材20を所定温度に加熱する高周波加熱装置である。冷却手段12は加熱手段で加熱された被加工材20を冷却する衝風冷却装置である。ダイス13は被加工材20を通過させることで減面加工を行う穴ダイスである。このダイス13の上流側には、潤滑油を供給する潤滑油ボックス15が一体化されている。巻取り手段14はダイス13を通過して減面された被加工材20を巻き取る巻取り釜である。図1では3パス分のみ伸線装置のユニットを示しているが、実際にはさらに複数のユニットが下流にも設けられている。
【0027】
このような装置を用いて、順次各ユニットに被加工材を通すことで線材を得る。なお、後述する各試験例において、伸線速度は最終線径φ3.2mmでは10m/min、φ2.4mmでは15m/min、φ1.75mmでは20m/min、φ1.2mmでは30m/min、φ0.8mmでは50m/minである。
【0028】
(試験例1)
AZ31合金、AZ61合金、AM60合金、AS41合金の押出材φ4.0mmを準備し、上記装置を用いて、以下のダイス系列に従って最大8パスの引抜き加工を実施した。
【0029】
ダイス系列:φ4.0→φ3.6→φ3.2→φ2.9→φ2.6→φ2.35→φ2.1→φ1.9→φ1.75(単位は全てmm)
【0030】
ここでは衝風冷却装置は用いず、高周波加熱装置の出口における被加工材の加熱温度を100〜400℃に変化させ、その後、自然放冷にて被加工材をダイスに導入して伸線加工を実施した。ダイス直前の被加工材の温度は加熱温度とほぼ同様のである。潤滑油は、常温のものを潤滑油ボックスに導入し、ダイスと被加工材に供給した。各条件において、連続伸線加工可能なパス数、最終線径、総断面減少率を調べ、伸線加工の可否を評価した。試験結果を表1〜表4に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
表1〜4より明らかなように、100℃の加熱温度ではいずれの合金においても、3パス以下の加工しかできず、十分に連続伸線できるとは言えない。150℃では、AZ61合金では4パス、AZ31、AM60、AS41では6パスの加工が可能であった。更に200℃以上300℃の温度範囲では、すべての合金において、最終パスまで加工可能であった。この温度条件では更なる加工も可能である。また、350℃では6パス以上の加工が可能であり、400℃になると被加工材の強度不足による断線が生じてしまい、ほとんど加工できず、表面酸化も見受けられた。以上の結果から、ダイス上流における被加工材の温度を150℃〜350℃、好ましくは200℃〜300℃に加熱することにより連続伸線加工が可能であることがわかる。
【0036】
(試験例2)
次に、AZ31合金、AZ61合金、AM60合金、AS41合金の押出材φ4.0mmを準備し、以下のダイス系列に従って図1に示す連続伸線機を用いて最大8パスの引抜き加工を実施した。
【0037】
ダイス系列:φ4.0→φ3.6→φ3.2→φ2.9→φ2.6→φ2.35→φ2.1→φ1.9→φ1.75(単位は全てmm)
【0038】
ここでは、加熱装置出口の被加工材加熱温度を150〜400℃に変化させ、衝風冷却装置によりダイス挿入直前には200℃以下になるように被加工材の温度を調整した。本例においても、用いた潤滑油は常温である。そして、試験例1と同様に伸線加工の可否を評価した。各条件において、連続伸線加工可能なパス数、最終線径、総断面減少率を表5〜表8に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
表5〜8に示すように、150℃の加熱温度では何れの合金においても、2パス以下の加工しかできず、十分に連続伸線できるとは言えない。しかし、200℃以上に加熱すると150℃以下のダイス直前温度であっても、問題なく最終パスまでの加工ができた。更に、各パス間で被加工材を200℃以上に加熱すると、ダイス直前で室温まで低下させても、全ての合金において連続伸線可能であった。従って、各パス間の被加工材温度を200℃以上とし、ダイス挿入直前に200℃以下に冷却しても連続伸線加工は可能である。特に、冷却後の被加工材の温度が常温での加工であれば、線径精度の点で優れる。また、400℃まで昇温してもダイス直前に冷却手段を設けることで、連続伸線加工が可能である。
【0044】
さらに、上記の各合金を用い、最初のパスにおいて、被加工材を250℃に加熱し、ダイス直前の被加工材の温度を30℃または100℃にまで冷却し、第2パス以降において、被加工材を250℃に加熱し、ダイス直前の被加工材の温度を30℃とした伸線加工も行った。その結果、最初のパスにおいてダイス直前の温度を100℃としたものは8パスまで伸線可能であったが、同温度を30℃としたものは、異なる被加工材を使って複数回試験すると1パス目で断線することもあり、8パス目まで加工可能なときもあった。これは、最初のパスに導入される被加工材は結晶粒径が粗く、そのばらつきも大きい押出材であるため、加工可能な場合と加工できない場合があり、基本的にダイス直前の温度が常温では十分な伸線が難しいのに対し、第2パス以降は既に伸線された伸線材で、結晶粒径が微細かつ均一になっているためダイス直前の温度が常温でも伸線が可能になったものと推測される。
【0045】
(試験例3)
AZ31合金、AZ61合金、AM60合金、AS41合金の押出材φ4.0mmを準備し、以下のダイス系列に従って図1に示す連続伸線機を用いて最大8パスの引抜き加工を実施した。
【0046】
▲1▼ダイス系列:φ4.0→φ3.9→φ3.8→φ3.7→φ3.6→φ3.5→φ3.4→φ3.3→φ3.2(単位は全てmm、各断面減少率5〜6%)
▲2▼ダイス系列:φ4.0→φ3.8→φ3.6→φ3.4→φ3.2→φ3.0→φ2.8→φ2.6→φ2.4(単位は全てmm、断面減少率10〜15%)
▲3▼ダイス系列:φ4.0→φ3.6→φ3.2→φ2.9→φ2.6→φ2.35→φ2.1→φ1.9→φ1.75(単位は全てmm、各断面減少率15〜20%)
▲4▼ダイス系列:φ4.0→φ3.5→φ3.0→φ2.6→φ2.2→φ1.9→φ1.6→φ1.4→φ1.2(単位は全てmm、各断面減少率23〜30%)
▲5▼ダイス系列:φ4.0→φ3.3→φ2.7→φ2.2→φ1.8→φ1.5→φ1.2→φ1.0→φ0.8(単位は全てmm、各断面減少率30〜37%)
【0047】
ここでは、加熱装置出口の被加工材加熱温度を200℃とし、衝風冷却装置を用いることなく伸線加工を実施した。ダイス直前の被加工材の温度は加熱温度とほぼ同様の約200℃である。本例においても、用いた潤滑油は常温である。そして、試験例1と同様に伸線加工の可否を評価した。各条件において、連続伸線加工可能なパス数、最終線径、総断面減少率を表9〜表12に示す。
【0048】
【表9】
【0049】
【表10】
【0050】
【表11】
【0051】
【表12】
【0052】
表9〜表12に示すように、ダイス系列が▲1▼▲2▼▲3▼では、すべての合金において、最終まで連続伸線加工が可能であった。しかし、各パスの断面減少率が大きいダイス系列▲5▼では、全く連続伸線できなかった。ダイス系列▲4▼では、すべての合金において5パスの加工が可能であった。6パス目の加工度を見ると29.1%あり、それまでの加工は可能であったことから、1パスの加工度が28%以下であれば連続伸線加工可能と考えられる。
【0053】
(試験例4)
AZ31合金、AZ61合金、AM60合金、AS41合金の押出材φ4.0mmを準備し、衝風冷却装置は用いることなく試験例1における加熱温度200℃の条件にて連続伸線を繰り返し、φ1.1mmのワイヤを得た。ダイス直前の被加工材の温度は加熱温度とほぼ同様の約200℃である。得られたワイヤを以下のダイス系列に従って、図1に示す湿式連続伸線機を用いて引抜き加工を実施した。
【0054】
ダイス系列:φ1.1→φ1.0→φ0.91→φ0.82→φ0.74→φ0.67→φ0.61→φ0.55→φ0.5→φ0.45→φ0.41→φ0.37→φ0.33→φ0.3→φ0.27→φ0.24→φ0.22→φ0.2(単位は全てmm)
【0055】
ここでは、湿式潤滑油を室温、100℃、150℃、200℃に加熱し、加熱した潤滑油を潤滑油ボックスに供給して上記連続伸線を実施した。その結果、すべての合金において、150℃以上の潤滑油温度では最終パスまで加工が可能であった。これに対し、潤滑油温度が100℃以下では、加工初期で断線した。試験例1では150℃の加熱では4〜6パスまでの加工しかできていないが、この試験で6パスを超える加工が可能になったのは、細線であることにより均一な加工が可能になったことや、潤滑油温度の違いなどが考えられる。従って、潤滑油を加熱して行う湿式連続伸線加工では、0.5mm以下の線径の伸線加工に有効である。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明伸線方法によれば、連続伸線を行う際に各パスのダイスの上流で被加工材の加熱を行うことにより、断線を生じることなく多パスの伸線を行うことができ、細径の線材を得ることができる。
【0057】
また、本発明伸線装置によれば、断線を生じることなく細径のマグネシウム基合金線材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明伸線方法に用いる伸線装置の概略構成図である。
【符号の説明】
10 ユニット
11 加熱手段
12 冷却手段
13 ダイス
14 手段
15 潤滑油ボックス
20 被加工材
Claims (12)
- マグネシウム基合金の被加工材を複数枚のダイスに連続的に挿通して複数パスの伸線を行うマグネシウム基合金の伸線方法であって、
前記被加工材は重量%でAl:0.1〜12.0%を含み、
各ダイスよりも上流において被加工材を加熱して伸線を行うことを特徴とするマグネシウム基合金の伸線方法。 - 被加工材の加熱温度が150℃〜350℃であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- 被加工材の加熱温度が200℃以上であり、加熱された被加工材をダイス挿入直前に200℃未満に冷却して各ダイスを通過させることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- 最初のパスにおいて、被加工材の加熱温度が200℃以上であり、加熱された被加工材をダイス挿入直前に200℃未満50℃以上に冷却してダイスを通過させ、
第2パス以降において、被加工材の加熱温度が200℃以上であり、加熱された被加工材をダイス挿入直前に200℃未満に冷却してダイスを通過させることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基合金の伸線方法。 - 高周波加熱装置により被加工材を加熱することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- 1パスの加工度(断面減少率)が10%以上28%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- 被加工材に潤滑液が付着した状態で伸線され、この潤滑液が100℃以上に加熱されていることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- 最終線径が0.5mm以下であることを特徴とする請求項7に記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- さらに、重量%でMn:0.1〜2.0%、Zn:0.1〜2.0%およびSi:0.3〜2.0%から選択される元素を1種以上含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のマグネシウム基合金の伸線方法。
- マグネシウム基合金の被加工材が挿通されるダイスと、ダイスを通過した被加工材を巻き取る巻取り手段と、ダイスの上流において被加工材を加熱する加熱手段とを有し、これらダイス、巻取り手段及び加熱手段を1パスのユニットとして、複数ユニットが直列に配置されていることを特徴とするマグネシウム基合金の伸線装置。
- 加熱手段は、被加工材を150℃〜350℃に加熱可能であることを特徴とする請求項10に記載のマグネシウム基合金の伸線装置。
- 加熱手段とダイスとの間に、加熱された被加工材を冷却する冷却手段を有することを特徴とする請求項10に記載のマグネシウム基合金の伸線装置。
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