JP2004174886A - インクジェット記録方法および記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸引回復動作後にインクタンクのインク供給能力が落ちてしまった場合において、インク供給不足によるバサ不吐を発生することなく印字可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と前記インクタンク状態判定手段により得られるインクタンク状態と前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)とによって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】インクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と前記インクタンク状態判定手段により得られるインクタンク状態と前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)とによって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、特に、記録手段吐出口内のインクをリフレッシュするための回復手段を備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションの出力機器として用いられる記録装置は画像情報に基づいて用紙やプラスチック薄板等の被記録材(記録媒体)に画像を記録していくように構成されている。前記記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分けることが出来る。
【0003】
被記録材の搬送方向(副走査方向)と交叉する方向に主走査するシリアルスキャン方式を採るシリアルタイプの記録装置においては、被記録材を所定の記録位置にセットした後、被記録材に沿って移動するキャリッジ上に搭載した記録手段によって画像を記録(主走査)し、1行分の記録を終了した後に所定量の紙送り(ピッチ搬送)を行い、その後に再び停止した被記録材に対して、次の行の画像を記録(主走査)するという動作を繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行われる。
【0004】
上記記録装置のうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から被記録剤にインクを吐出して記録を行うものであり、記録手段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することが記録することが出来、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式である為騒音が少ない。しかも、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。中でも、紙幅方向に多数の吐出口を配列したラインタイプの記録手段を使用するライン型の装置は、記録の一層の高速化が可能である。
【0005】
特に、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット式の記録手段(記録ヘッド)は、エッチング、蒸着、スパッタリング等の半導体プロセスを経て、基板上に製膜された電気熱変換体、電極、液路壁、天板などを形成することにより、高密度の液路配置(吐出口配置)を有するものを容易に製造することができ、一層のコンパクト化を図ることが出来る。
【0006】
インクジェット記録装置は上述した様々なメリットにより需要が増大している。特に、カラー印字においては、そのメリットを最大限に生かすことが出来る。カラー印字が可能なインクジェット記録装置においては一般的に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、BK(黒)の4色インクを用いて印字を行うものと、さらにフォトシアン、フォトマゼンタの2色を加えた6色インクを用いて記録を行うものが主流となっている。こうした様々インクを貯留、供給するインクタンクがインクジェットプリンタにおいては必要となる。インクタンクの種類としては、色毎に個別となっているものや、3色ないし4色が一体となっているもの等がある。
【0007】
一般に、インクジェット記録装置に使用される吐出用液体収納用容器(インクタンク)においては、インクジェットヘッドにインクを供給するための液体供給口と、インク消費に見合った容積の空気を吐出用液体収納容器内に導入する為の大気連通口との二つの開口部を備えている。
【0008】
以上のような二つの開口部を備えている吐出用液体収納部には、まず、記録時にインクジェットヘッドにインク切れ等を伴わず安定的にインクを供給できること、非記録時には様々な環境の変化においてもインクの漏れを確実に防止することなどが要求される。
【0009】
このような要求を満たすべく、吸収体(負圧発生部材)を内在させたインクタンク(吐出用液体収納部)では、インクを良好に導出させる構成として、例えば、吸収体と供給口の間に吸収体より高い毛管力を有する部材を配した図8に示すような構成の吐出溶液体収納部Aが知られている。これは、容器Aの上壁Bに大気連通口Cを、底壁Dにインク供給口Eを開口させると共に、内部に連続多孔質部材Fを収容した単室のインク収容器Aであり、圧接部材G全体が容器Aの内側においてインク供給口Eを覆うように配置されている。
【0010】
更には、液体の収容効率の改善を図る構成として図9に示すような、大気と連通する大気連通口Cと記録手段に対し液体を供給する為のインク供給口Eとを備え、内部に負圧発生部材収納室Fと負圧発生部材収納室底部の連通路Gを介して連通し、連通路を除いては実質的に密閉である液体収納室Hとを備えている吐出液体収納部が知られている。
【0011】
またインクジェット記録装置においては、上記吐出液体収納部から記録ヘッドへと吐出液体(記録インク)を供給する為の補助手段として、吐出口面を覆うキャップと該キャップに接続された吸引ポンプからなる吸引回復機構を設けることも行われている。個の吸引回復機構による回復動作は、吸引ポンプによって発生された負圧により記録ヘッドの吐出口内からインクを強制的に吸出することにより、吐出口内の気泡や増粘インク等の異物を排出して吐出口内のインクをリフレッシュし、それによって正常な吐出状態を回復するものである。このような吸引回復動作には、記録ヘッドの状況に応じていくつかの種類を持つことが多い。吸引回復動作の種類の一例としては、記録ヘッドとインクタンクが別梱包されている場合などに記録ヘッド及びインクタンクを本体に装着した後に行われる1回目の吸引回復動作(着荷時吸引とも呼ぶ)や、インクタンク交換後の吸引回復動作(インクタンク交換吸引とも呼ぶ)。また、不吐出やヨレなどを解消する為の吸引回復動作(通常吸引とも呼ぶ)などがある。これらはその要求される吸引性能と各吸引動作の頻度により、吸引量や吸引圧などが規定されており、吸引量の多い順に並べると、着荷時吸引、インクタンク交換吸引、通常吸引となる事が一般的である。
【0012】
以上のようなインクジェット記録装置において、近年の大きな流れとして高速化と高画質化の2つが存在する。その各々を達成する技術として、例えば高速達成の手段としては、給排紙やキャリッジ移動速度の高速化、より効果的には吐出口数の増加がある。例えば被記録媒体一面に記録を行う際に、吐出口数が倍となれば単純には記録走査数を半分にすることができ、記録に要する時間は半分になる。
【0013】
他方、高画質達成の手段としては、更なる微小液滴の追求、すなわち吐出口径や発泡エネルギーの微小化が行われている。微小液滴にすることは、粒状感(ハイライトなどでのザラツキ感)を抑え、ある一定領域へのドット配置を多様にし、全体としての階調性を向上させることができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような記録ヘッド技術の向上に対し、いわゆる消耗品と呼ばれるインクタンクは、変更しづらいという現状があり、そのため記録ヘッドが要求する性能をインクタンクが十分に満たしていないという問題が発生してきている。
【0015】
通常記録ヘッドは、一つのベースとなる記録ヘッドから幾つかの記録ヘッドへと拡張していく。例えば図10(a)に示すような基本のヘッド(ここでは説明の便宜上吐出口数を7とした)から、高速化を目指してノズル数(吐出口数)を増やしたもの(同図(b))や、高画質化のため穴径ならびにヒータを小型化したもの(同図(c))などである。このようにして記録ヘッドは発展していくことがあるが、インクタンクに関しては、従来機種(同図(a)の記録ヘッド)と後継機種(同図(b)、(c)の記録ヘッド)で同じ物を使用することが多い。これはコストや製造ライン、売り場面積など様々な要因による。そしてこのような場合、すでに流通しているインクタンクをもって、全ての記録ヘッドを使用することになる。
【0016】
ここで、図10(a)の記録ヘッドの要求する仕様に対して設計された図9に示したような負圧発生部材収納室と液体収納室とを持つインクタンクを、その後図10(b)に示した記録ヘッドのようなノズル数を増やしたヘッドに装着して着荷時吸引を行うと、吸引時のインク流量が同図(a)の記録ヘッドと比較して多くなるため、液体収納室から負圧発生部材収納室へとインクを供給する(気液交換が行われる)能力以上のインク供給量が必要となるため液体収納室のインクではなく、負圧発生部材収納室のインクが優先的に使われることになり、液体供給口と大気連通口との間に空気の道(エアパス)ができてしまう。こうなると、吸引動作に動作によって期待される記録ヘッドへのインクの供給が不充分なものとなり、高い密度で印字を行おうとするとインク供給が印字に間に合わず、インク落ち(バサ落ち)が発生する。このようなエアパスの発生によるインク供給不足は図8に示した、液体収納室を持たない負圧発生部材収納室のみのインクタンクにおいても同様に起こる。
【0017】
また、記録ヘッドの吐出口数を増やさなくても、図10(b)の記録ヘッドのように吐出口面積を小さくしても、同様の現象が起こる場合がある。これは、吐出口面積を小さくすることにより、吐出口表面のメニスカス耐圧が大きくなることに起因する。メニスカス耐圧が大きなると、今までの吸引条件では、吸引圧が低くて吸引が行えなくなることがある。この場合には吸引圧(吸引ポンプにより生じさせる負圧)をより高い負圧にすることが必要となる。
【0018】
これによりメニスカスを破るのだが、このさい、インクタンクには今まで以上の負圧がかかることになり、先の条件と同じくエアパスが出来やすくなってしまうのである。
【0019】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、記録に先立ち行われる吸引回復動作によりインクタンクのインク供給能力が落ちてしまった場合において、ある流量以上の負荷がインクタンクにかからないよう記録比率がある一定以上の記録データでは分割印字を行うことにより、どのような吸引回復動作後においてもインク供給不足によるバサ不吐を発生することなく印字可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と前記インクタンク状態判定手段により得られるインクタンク状態と前記前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)とによって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを有すること特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、複数の記録ヘッドを有するシリアルプリンタを例に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態では、記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることとする。
【0023】
以上によれば、記録頁内での分割印字を、インクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が得られる。
【0024】
また、本発明の他の実施形態として、記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることにする。
【0025】
以上によれば、前述した着荷時吸引やインクタンク交換吸引のようなエアパスができる、インクタンクにとって厳しい吸引回復の後においてのみ分割印字をするか否かの判定をすることになり、分割印字を行うのは特殊(着荷時吸引回復動作など)な吸引回復動作の後のみとなり、通常の使用状況下では分割印字による印刷速度の低下を回避でき、かつ特殊な吸引回復動作の後には記録頁内でインクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において分割印字が実施されるので、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置を得ることができる。
【0026】
(実施例1)
第1実施例は記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることによりインクタンクから記録ヘッドへのインク供給不足により生じるバサ落ちを防止するものである。
【0027】
(記録装置の構成)
図1は本発明を適用したインクジェット記録装置の実施例の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1において、記録手段としてのヘッドカートリッジ1はキャリッジ2上に交換可能に搭載されており、このヘッドカートリッジ1はそれぞれが異なる種類(色等)のインクで記録する4個のヘッドカートリッジ1A,1B,1C,1Dで構成されている。各カートリッジ1A〜1Dのそれぞれには、記録ヘッド部を駆動する信号を受けるためのコネクターが設けられている。なお以下の説明では前記記録手段1A〜1Dの全体または任意の1つを指す場合、単に記録手段(記録ヘッドまたはヘッドカートリッジ)1で示すことにする。
【0028】
前記複数のカートリッジ1は、それぞれ異なる色のインクで記録するものであり、それらのインクタンク(図9)部には例えばシアン、マゼンタ、イエロー、黒などの異なるインクが収納されている。各記録手段1はキャリッジ2に位置決めして交換可能に搭載されており、そのキャリッジ2には、前記コネクターを介して各記録手段1に駆動信号等を伝達するためのコネクターホルダー(電気接続部)が設けられている。
【0029】
キャリッジ2は、主走査方向で装置本体に設置されたガイドシャフト3に沿って移動方向に案内支持される。そしてキャリッジ2は、主走査モータ4により、モータプーリ5、従動プーリ6、及びタイミングベルト7を介して駆動され、その位置及び移動を制御される。用紙やプラスチック薄板等の被記録媒体8は、2組の搬送ローラの回転により第1の記録ヘッドH1の吐出口面と対向する位置(記録部)を通して搬送(紙送り)される。なお被記録媒体8は、記録部において平坦な記録面を形成できるように、その裏面をプラテン(不図示)により指示されている。この場合、キャリッジ2に搭載された各カートリッジ1は、それらの吐出口面がキャリッジ2から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間で被記録媒体8と平坦になるように保持されている。
【0030】
前記記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また前記記録ヘッド1は前記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
【0031】
図2は、前記記録ヘッド1のインク吐出部13の主要部構造を部分的に示す模式的斜視図である。図2において被記録媒体8と所定の隙間(約0.5〜2[mm]程度)をおいて対面する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22が形成され、共通液室23を各吐出口22とを連通する各流路24の壁面に沿ってインク吐出量のエネルギーを発生するために電気熱変換体(発熱抵抗体など)25が配設されている。本例においては、記録ヘッド1は吐出口22がキャリッジ2の走査方向と交差する方向に並ぶような位置関係で、該キャリッジ2に搭載されている。こうして画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体25を駆動(通電)して、流路24内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口22からインクを吐出させる記録ヘッド1が構成されている。
【0032】
図1に示すインクジェット記録装置では、図示左側にキャリッジ2のホームポジションが設定され、このホームポジションの近傍に回復系ユニット14が配設されている。回復系ユニット14には、ホームポジションにある各ヘッドカートリッジ1の吐出口面21のそれぞれに対応する位置において上下方向に昇降可能であり、上昇して各吐出口面21に密着してそれらの吐出口22を密閉可能(キャッピング可能)な4個のキャップ15が設けられている。このキャップ15は、各記録ヘッド1の吐出口面21をキャッピングすることにより、吐出口22近傍におけるインクの乾燥蒸発(インクの増粘、固着)やごみ等の異物の付着を防ぐ為のものである。また、前記各キャップ15は、吸引ポンプ16に連結されおり、キャッピング状態で該吸引ポンプを作動させることにより吐出口22からインクを排出させる吸引回復操作を行うためのものでもある。この吸引回復操作は吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための処理操作である。
【0033】
図1において、回復系ユニット14の記録領域側部分にはブレードホルダー17に保持されたワイピング部材としてのブレード18が配設されている。このブレード18は、キャリッジ2との相対移動を利用して各記録手段(ヘッドカートリッジ)1の吐出口面21を拭き取り清掃(クリーニング)するためのものであり、ゴムなどの弾性部材で構成されている。このワイピング部材としてのブレード18は、吐出口面21を傷つけることのないように記録ヘッド1より硬度が低い材料で作られている。また、ブレード18と記録ヘッド1との相対的な位置関係に対する許容度を増すために、該ブレード18は弾性部材で作られることが多い。
【0034】
インクジェット記録装置においては、ある時間連続してインク吐出が行われない吐出口では、インクが蒸発乾燥してしまい結果として吐出性能の低下や記録画像の画質低下を引き起こすことがある。そこで、これを防止する為に、インクジェット記録装置では、ある時間間隔ごとに記録データとは無関係に所定の場所で吐出口22からインク吐出を行い、該吐出口22内のインクを排出することでフレッシュなインクにする予備吐出動作が行われる。そのため、インクジェット記録装置では上記予備吐出動作で排出(吐出)されるインクを受けるための予備吐出受け部(不図示)を設けることも行われている。
【0035】
(制御システムの構成)
図3は本発明を適用したインクジェット記録装置の一実施例における制御システムの構成を例示するブロック図である。図3において、41は記録信号を入力するインターフェースであり、42はマイクロプロセッサユニット(MPU)であり、43はこのMPU42が実行する制御プログラムを格納するプログラムROMであり、44は前記記録信号や記録ヘッド1に供給される記録データ等の各種データを保存しておくDRAMである。このDRAM44では、記録ドット数や記録時間なども記憶(カウント)出来るようになっている。45は記録ヘッド1に対する記録データの供給制御を行うゲートアレイであり、インターフェース41とMPU42とDRAM44との間のデータの転送制御も行うように構成されている。
【0036】
図3において、4は記録ヘッド1を搭載したキャリッジ2を搬送する為のキャリアモータ(主走査)であり、20は記録用紙等の被記録材8を搬送する為の搬送モータである。46は記録ヘッド1を駆動する為のヘッドドライバであり、47は搬送モータ20を駆動する為のモータドライバであり、48はキャリアモータ(主走査モータ)4を駆動する為のモータドライバであり49は各種の検出を行うためのセンサ群である。このセンサ49は例えば、被記録材(用紙等)8の有無を検知するセンサ、キャリッジ2がホームポジションにあることを検知するセンサ、記録ヘッド1の温度を検知するセンサなどであり、これらにより、被記録材8の有無やキャリッジ2の位置や環境温度などを認識することが出来る。
【0037】
図1及び図3において、ホストからの記録データがインターフェース41を介して送られてくると、ゲートアレイ45を通してDRAM44に記録データが一時的に蓄えられる。その後DRAM44のデータをゲートアレイ45によってラスターデータから記録ヘッド1で記録するための画像イメージに変換し、再度DRAM44に記憶する。そのデータを、再度ゲートアレイ45によってヘッドドライバ46を介して記録ヘッド1に送り、対応する位置の吐出口からインクを吐出させて記録を行う。その際、ゲートアレイ45に記録させるドットのカウンターを構成しておき、記録させるドットを高速でカウントできる構成としておく。
【0038】
前記モータドライバ48を介してキャリアモータ(主走査モータ)4を作動させ、記録ヘッド1の記録速度に合わせて該記録ヘッドを主走査方向へ動かし、その主走査における記録は行われる。当該主走査の記録が完了すると、搬送モータ用のモータドライバ47を介して搬送モータ20を作動させ、被記録材8主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ所定ピッチだけ搬送(紙送り)する。そして、次のラインの記録を行うべく、前期モータドライバ48を介して再びキャリアモータ(主走査モータ)4を作動させ、記録ヘッド1の記録速度に合わせて該記録ヘッドを主走査方向へ動かし、その主走査(次のラインの主走査)における記録が行われる。以下、これらを繰り返すことにより、被記録材8の全体における記録が行われる。
【0039】
(分割印字の判定方法)
各記録走査における記録比率の検出方法について以下に説明する。1走査中(1主走査中)における記録比率のカウントにおいて、単に1走査分に記録するドット数をカウントしてしまうと、例えば1行全体に均等にドットが配されている場合と局所的にドットが密集して配されている場合があり、これらを区別して処理することが出来なくなってしまう。
【0040】
図4は1走査中における記録比率の局所性を例示する説明図であり、(a)は記録ドットが均一なデューティで配されている場合を示し、(b)は記録ドットが局所的に高いデューティで配されている場合を示す図である。図−において、(a)及び(b)は共に縦256ドット、横3500ドットの領域の中にドットが配されて記録される総ドット数が89600ドットである場合を示し、(a)では記録領域の中に均一に10%のデューティでドットが配されており、(b)では記録領域中の局所的な縦256ドット、横350ドットの領域の中に89600ドットが集中して配されている。従って、図4の(b)は局主的な領域においては記録比率100%であるが、縦256ドット横3500ドットの領域に対しては同図(a)と同様に10%の記録比率となってしまう。
【0041】
図5は、本発明を適用したインクジェット記録装置における記録比率を算出するための単位領域の一例を示す説明図である。図6に示す本実施例においては、記録比率を算出するための単位領域を設け、これにより主走査による1行(1ライン)の領域を複数の単位領域の大きさに分割し、その分割された複数の領域でそれぞれ記録比率をカウントするように構成されている。図5においては、各色(各記録ヘッド1)の吐出口の数を256、各単位領域を縦256ドット、横256ドットの領域とし、各単位領域に番号をつけて区別するようにしている。この単位領域の総ドット数は256×256=65536ドットとなり、この単位領域内に65536ドット記録したものを100%の記録比率として計算される。
【0042】
そして、記録ヘッド1による印字を、吐出口数分行うか、吐出口の排紙側半分のみに限定して使用するかの判定の一つは、1主走査の記録領域中に記録比率が所定値を超える単位領域が1ヶ所でも存在するか否かに基づいて行うようにしている。この単位領域の大きさは、特に上記した大きさに限定されるものではない。
【0043】
図6は本発明を適用したインクジェット記録装置の第1実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。図6を参照して本発明によるインクジェット記録装置の分割印字について説明する。図6において、まず記録開始命令を受けると、記録紙等の被記録材8を給紙し、1記録走査分のデータの取得を行う(ステップS101)。
【0044】
次にステップS102へ進んで各記録ヘッド1ごとに記録比率が50%を超える単位領域があるか否かをチェックする。50%を超える単位領域がなければ、ステップS103へ進んで、吐出口分の記録走査を行い、その後、吐出口数分の搬送(紙送り)を行う(ステップS104)。一方、50%を超える記録領域が一つでもあれば記録データのうち、排紙側半分のデータの記録走査を行い(ステップS105)、被記録材8を主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ記録した幅分(吐出口数の半分)のピッチだけ搬送(紙送り)する(ステップS106)。次に先の記録データのうち、給紙側の残り半分の記録走査を行い(ステップS107)。被記録材8を主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ記録した幅分(吐出口数の半分)のピッチだけさらに搬送(紙送り)する(ステップS108)。
【0045】
ついで、ステップS109で、1頁分の記録が終了したか否かの判別し、1頁分の記録が終了していれば記録紙(被記録材)8を排紙する。また、その頁の記録がいまだ終了しておらず記録を継続する場合は上記ステップS101〜ステップS109の動作を頁の記録が終了するまで繰り返す。
【0046】
以上説明した実施例によれば、記録手段1から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向への記録走査で、被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段(ステップS102)と、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって、記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを具備する構成とすることにしたので、記録頁内での分割印字を、インクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が得られる。
【0047】
(第2実施例)
本実施例に用いる記録装置の構成ならびに制御システムの構成は前述の実施例1と同様とする。
【0048】
第2実施例は記録手段1(記録ヘッド1)から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることによりインクタンクから記録ヘッドへのインク供給不足により生じるバサ落ちを防止するものである。
【0049】
(分割印字の判定方法)
図7は、本発明を適用したインクジェット記録装置の第2の実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。図6の第1実施例の場合は、どのような吸引回復動作かは関係無く、常にある一定以上の記録比率を持つ記録データの印刷命令において分割印字動作となる。しかし、前述したように吸引回復動作はその求められる回復性能に応じて複数の種類を持っており、通常の印字途中に入る吸引回復ではインクタンクにエアパスができるほど強力な吸引を入れることは少なく、前述したように着荷時吸引やインクタンク交換吸引でエアパスができるような、インクタンクにとって厳しい吸引回復が入ることが多い。これは、前記着荷時吸引ならびにインクタンク交換吸引では記録ヘッド側にインクがまるで供給されていない状態であることが想定されるため、吸引されるインク量として、通常吸引の倍から3倍程度の吸引回復動作が入ることがあり、更にこのような吸引では、通常吸引と同じ強さで吸引すると吸引量の増加に伴い吸引回復時間の増加にもつながるため、吸引圧(吸引ポンプにより生じさせる負圧)をより高い負圧にして、より時間の短縮を狙うこともあるからである。
【0050】
そこで本実施例では、図7に示すように、もっとも最近行った吸引回復動作がいかなる吸引かを判定するステップS100が追加挿入されている。そして、このステップS100において判定した結果、もっとも最近行われた吸引が例えばエアパスを生じさせない通常の回復吸引であった場合には通常の記録動作(ステップS112〜ステップS114)を行い、エアパスを生じさせるような吸引回復(着荷時吸引やインクタンク交換等)であった場合には、ステップS101において1記録走査分のデータの取得を行った後、ステップS102へと進んで各記録ヘッド1ごとに記録比率が50%を超える単位領域があるか否かをチェックするように構成されている。図7に示した第2実施例は、上記の点で図6の第1実施例と相違しており、その他の点では第1実施例と実質的に同じ構成となっている。
【0051】
すなわち、図7の第2実施例でも、ステップS102で各記録ヘッド1ごとに記録比率が50%を超える単位領域があるか否かをチェックし、50%を超える単位領域がなければ、ステップS103へ進み、50%を超える記録領域が一つでもあれば記録データのうち、排紙側半分のデータの記録走査を行う(ステップS105)というように、その後は第1実施例の場合と同じ流れとなるように構成されている。そのため、図7の第2実施例では、図6の第1実施例と同じ部分を同一符号で示し、それらの詳細な説明は省略する。
【0052】
以上説明した実施例によれば、記録手段1から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、もっとも最近行われた吸引回復動作がどのようなものであったかを判定する吸引回復判定手段と、次の主走査方向への記録走査で被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって、記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを具備する構成とすることにしたので、前述した着荷時吸引やインクタンク交換吸引のようなエアパスができる、インクタンクにとって厳しい吸引回復の後においてのみ分割印字をするか否かの判定をすることになる。このようにすれば、分割印字を行うのは特殊(着荷時吸引回復動作など)な吸引回復動作の後のみとなり、通常の使用状況下では分割印字による印刷速度の低下を回避しながら、かつ記録頁内でインクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において分割印字を実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が得られる。
【0053】
前述の図6および図7に示した各実施例のフローチャートでは、説明の便宜上ドットカウント数や、記録比率の値を1つにして説明してきたが、複数色のインクや複数の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置においては、各インク毎あるいは各記録ヘッドにドットカウンタを用意し、記録比率の閾値との比較などを各インク毎あるいは、各記録ヘッド毎に実行して判断するようにしても良い。また、単にドット数をカウントするのではなく、このドット数に記録ヘッドの温度や環境温度で重み付けしたり、記録デューティで重み付けしたりして、ドット数からある値に変換してカウントしていき、それらの値に対して閾値を設けるようにしても良い。更に上記実施例ではインクタンクの状態を推定するために、最も最近行われた吸引回復動作を判定することにしているが、これに限らず、記録ヘッドの走査回数や、先の吸引回復動作からの経過時間、もしくはこれらを組み合わせた形などで判定しても良い。本実施例では図−に示すように、負圧発生部材収納室と液体収納室とを持つインクタンクを用いることとしたが、液体収納室を持たず、インクタンク内全てが負圧発生部材であるようなインクタンクを用いても本発明の効果を得ることができる。
【0054】
(その他)
なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式の記録ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0055】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。
【0056】
この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて、書く沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印可することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことが出来る。
【0057】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に記載されているような吐出口、液路電気熱変換体の組合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59―123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59―138461号公報に基づいた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録を確実に効率よく行うことが出来るようになるからである。
【0058】
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応して長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0059】
加えて、上例のようなシリアルタイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0060】
また、本発明の記録装置の構成として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定出来るので、好ましいものである。これらを具体的にあげれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子或いはこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出手段をあげることができる。
【0061】
また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数についても、例えば単色のインクに対応して1個のみが設けられたもののほか、記録色や濃度を異にする複数のインクに対応して複数個設けられるものであっても良い。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては記録ヘッドを一体的に構成するか複数個によるかのいずれでも良いが、異なる色の複数カラー、または、混色によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備えた装置にも本発明はきわめて有効である。
【0062】
さらに加えて、以上説明した本発明実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以上で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよい。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与によってはじめて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合のインクは、特開昭54―56847号公報あるいは特開昭60―71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対してもっとも有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0063】
さらに加えて、本発明インクジェット方式の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明によれば、記録手段1から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向への記録走査で、被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって、記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを具備する構成とすることにしたので、記録頁内での分割印字を、インクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るインクジェット記録装置の概略構成を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1中の記録手段のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図3】本発明を適用したインクジェット記録装置の1実施例の制御システムの構成を例示するブロック図である。
【図4】1走査中における記録比率の局所性を例示する説明図である。
【図5】本発明を適用したインクジェット記録装置における記録比率を算出するための単位領域の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明を適用したインクジェット記録装置の第1実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用したインクジェット記録装置の第2実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図8】吐出用液体収納容器の一例を示す断面図である。
【図9】吐出用液体収納容器の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における記録ヘッドの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1、1A、1B、1C、1D ヘッドカートリッジ
2 キャリッジ
3 ガイドシャフト
4 主走査モータ
5 モータプーリ
6 従動プーリ
7 タイミング・ベルト
8 被記録媒体(被記録材)
9,10,11,12 搬送ローラ
13 記録ヘッド部
14 回復系ユニット
15 キャップ
16 吸引ポンプ
17 ブレードホルダー
18 ブレード
20 搬送モータ
21 吐出口面
22 吐出口
23 共通液室
24 液路
25 電気熱変換体
42 MPU
43 ROM
44 DRAM
45 ゲートアレイ
49 各種センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、特に、記録手段吐出口内のインクをリフレッシュするための回復手段を備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションの出力機器として用いられる記録装置は画像情報に基づいて用紙やプラスチック薄板等の被記録材(記録媒体)に画像を記録していくように構成されている。前記記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分けることが出来る。
【0003】
被記録材の搬送方向(副走査方向)と交叉する方向に主走査するシリアルスキャン方式を採るシリアルタイプの記録装置においては、被記録材を所定の記録位置にセットした後、被記録材に沿って移動するキャリッジ上に搭載した記録手段によって画像を記録(主走査)し、1行分の記録を終了した後に所定量の紙送り(ピッチ搬送)を行い、その後に再び停止した被記録材に対して、次の行の画像を記録(主走査)するという動作を繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行われる。
【0004】
上記記録装置のうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から被記録剤にインクを吐出して記録を行うものであり、記録手段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することが記録することが出来、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式である為騒音が少ない。しかも、多色のインクを使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。中でも、紙幅方向に多数の吐出口を配列したラインタイプの記録手段を使用するライン型の装置は、記録の一層の高速化が可能である。
【0005】
特に、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット式の記録手段(記録ヘッド)は、エッチング、蒸着、スパッタリング等の半導体プロセスを経て、基板上に製膜された電気熱変換体、電極、液路壁、天板などを形成することにより、高密度の液路配置(吐出口配置)を有するものを容易に製造することができ、一層のコンパクト化を図ることが出来る。
【0006】
インクジェット記録装置は上述した様々なメリットにより需要が増大している。特に、カラー印字においては、そのメリットを最大限に生かすことが出来る。カラー印字が可能なインクジェット記録装置においては一般的に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、BK(黒)の4色インクを用いて印字を行うものと、さらにフォトシアン、フォトマゼンタの2色を加えた6色インクを用いて記録を行うものが主流となっている。こうした様々インクを貯留、供給するインクタンクがインクジェットプリンタにおいては必要となる。インクタンクの種類としては、色毎に個別となっているものや、3色ないし4色が一体となっているもの等がある。
【0007】
一般に、インクジェット記録装置に使用される吐出用液体収納用容器(インクタンク)においては、インクジェットヘッドにインクを供給するための液体供給口と、インク消費に見合った容積の空気を吐出用液体収納容器内に導入する為の大気連通口との二つの開口部を備えている。
【0008】
以上のような二つの開口部を備えている吐出用液体収納部には、まず、記録時にインクジェットヘッドにインク切れ等を伴わず安定的にインクを供給できること、非記録時には様々な環境の変化においてもインクの漏れを確実に防止することなどが要求される。
【0009】
このような要求を満たすべく、吸収体(負圧発生部材)を内在させたインクタンク(吐出用液体収納部)では、インクを良好に導出させる構成として、例えば、吸収体と供給口の間に吸収体より高い毛管力を有する部材を配した図8に示すような構成の吐出溶液体収納部Aが知られている。これは、容器Aの上壁Bに大気連通口Cを、底壁Dにインク供給口Eを開口させると共に、内部に連続多孔質部材Fを収容した単室のインク収容器Aであり、圧接部材G全体が容器Aの内側においてインク供給口Eを覆うように配置されている。
【0010】
更には、液体の収容効率の改善を図る構成として図9に示すような、大気と連通する大気連通口Cと記録手段に対し液体を供給する為のインク供給口Eとを備え、内部に負圧発生部材収納室Fと負圧発生部材収納室底部の連通路Gを介して連通し、連通路を除いては実質的に密閉である液体収納室Hとを備えている吐出液体収納部が知られている。
【0011】
またインクジェット記録装置においては、上記吐出液体収納部から記録ヘッドへと吐出液体(記録インク)を供給する為の補助手段として、吐出口面を覆うキャップと該キャップに接続された吸引ポンプからなる吸引回復機構を設けることも行われている。個の吸引回復機構による回復動作は、吸引ポンプによって発生された負圧により記録ヘッドの吐出口内からインクを強制的に吸出することにより、吐出口内の気泡や増粘インク等の異物を排出して吐出口内のインクをリフレッシュし、それによって正常な吐出状態を回復するものである。このような吸引回復動作には、記録ヘッドの状況に応じていくつかの種類を持つことが多い。吸引回復動作の種類の一例としては、記録ヘッドとインクタンクが別梱包されている場合などに記録ヘッド及びインクタンクを本体に装着した後に行われる1回目の吸引回復動作(着荷時吸引とも呼ぶ)や、インクタンク交換後の吸引回復動作(インクタンク交換吸引とも呼ぶ)。また、不吐出やヨレなどを解消する為の吸引回復動作(通常吸引とも呼ぶ)などがある。これらはその要求される吸引性能と各吸引動作の頻度により、吸引量や吸引圧などが規定されており、吸引量の多い順に並べると、着荷時吸引、インクタンク交換吸引、通常吸引となる事が一般的である。
【0012】
以上のようなインクジェット記録装置において、近年の大きな流れとして高速化と高画質化の2つが存在する。その各々を達成する技術として、例えば高速達成の手段としては、給排紙やキャリッジ移動速度の高速化、より効果的には吐出口数の増加がある。例えば被記録媒体一面に記録を行う際に、吐出口数が倍となれば単純には記録走査数を半分にすることができ、記録に要する時間は半分になる。
【0013】
他方、高画質達成の手段としては、更なる微小液滴の追求、すなわち吐出口径や発泡エネルギーの微小化が行われている。微小液滴にすることは、粒状感(ハイライトなどでのザラツキ感)を抑え、ある一定領域へのドット配置を多様にし、全体としての階調性を向上させることができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような記録ヘッド技術の向上に対し、いわゆる消耗品と呼ばれるインクタンクは、変更しづらいという現状があり、そのため記録ヘッドが要求する性能をインクタンクが十分に満たしていないという問題が発生してきている。
【0015】
通常記録ヘッドは、一つのベースとなる記録ヘッドから幾つかの記録ヘッドへと拡張していく。例えば図10(a)に示すような基本のヘッド(ここでは説明の便宜上吐出口数を7とした)から、高速化を目指してノズル数(吐出口数)を増やしたもの(同図(b))や、高画質化のため穴径ならびにヒータを小型化したもの(同図(c))などである。このようにして記録ヘッドは発展していくことがあるが、インクタンクに関しては、従来機種(同図(a)の記録ヘッド)と後継機種(同図(b)、(c)の記録ヘッド)で同じ物を使用することが多い。これはコストや製造ライン、売り場面積など様々な要因による。そしてこのような場合、すでに流通しているインクタンクをもって、全ての記録ヘッドを使用することになる。
【0016】
ここで、図10(a)の記録ヘッドの要求する仕様に対して設計された図9に示したような負圧発生部材収納室と液体収納室とを持つインクタンクを、その後図10(b)に示した記録ヘッドのようなノズル数を増やしたヘッドに装着して着荷時吸引を行うと、吸引時のインク流量が同図(a)の記録ヘッドと比較して多くなるため、液体収納室から負圧発生部材収納室へとインクを供給する(気液交換が行われる)能力以上のインク供給量が必要となるため液体収納室のインクではなく、負圧発生部材収納室のインクが優先的に使われることになり、液体供給口と大気連通口との間に空気の道(エアパス)ができてしまう。こうなると、吸引動作に動作によって期待される記録ヘッドへのインクの供給が不充分なものとなり、高い密度で印字を行おうとするとインク供給が印字に間に合わず、インク落ち(バサ落ち)が発生する。このようなエアパスの発生によるインク供給不足は図8に示した、液体収納室を持たない負圧発生部材収納室のみのインクタンクにおいても同様に起こる。
【0017】
また、記録ヘッドの吐出口数を増やさなくても、図10(b)の記録ヘッドのように吐出口面積を小さくしても、同様の現象が起こる場合がある。これは、吐出口面積を小さくすることにより、吐出口表面のメニスカス耐圧が大きくなることに起因する。メニスカス耐圧が大きなると、今までの吸引条件では、吸引圧が低くて吸引が行えなくなることがある。この場合には吸引圧(吸引ポンプにより生じさせる負圧)をより高い負圧にすることが必要となる。
【0018】
これによりメニスカスを破るのだが、このさい、インクタンクには今まで以上の負圧がかかることになり、先の条件と同じくエアパスが出来やすくなってしまうのである。
【0019】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、記録に先立ち行われる吸引回復動作によりインクタンクのインク供給能力が落ちてしまった場合において、ある流量以上の負荷がインクタンクにかからないよう記録比率がある一定以上の記録データでは分割印字を行うことにより、どのような吸引回復動作後においてもインク供給不足によるバサ不吐を発生することなく印字可能なインクジェット記録装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と前記インクタンク状態判定手段により得られるインクタンク状態と前記前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)とによって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを有すること特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、複数の記録ヘッドを有するシリアルプリンタを例に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態では、記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることとする。
【0023】
以上によれば、記録頁内での分割印字を、インクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が得られる。
【0024】
また、本発明の他の実施形態として、記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることにする。
【0025】
以上によれば、前述した着荷時吸引やインクタンク交換吸引のようなエアパスができる、インクタンクにとって厳しい吸引回復の後においてのみ分割印字をするか否かの判定をすることになり、分割印字を行うのは特殊(着荷時吸引回復動作など)な吸引回復動作の後のみとなり、通常の使用状況下では分割印字による印刷速度の低下を回避でき、かつ特殊な吸引回復動作の後には記録頁内でインクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において分割印字が実施されるので、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置を得ることができる。
【0026】
(実施例1)
第1実施例は記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることによりインクタンクから記録ヘッドへのインク供給不足により生じるバサ落ちを防止するものである。
【0027】
(記録装置の構成)
図1は本発明を適用したインクジェット記録装置の実施例の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1において、記録手段としてのヘッドカートリッジ1はキャリッジ2上に交換可能に搭載されており、このヘッドカートリッジ1はそれぞれが異なる種類(色等)のインクで記録する4個のヘッドカートリッジ1A,1B,1C,1Dで構成されている。各カートリッジ1A〜1Dのそれぞれには、記録ヘッド部を駆動する信号を受けるためのコネクターが設けられている。なお以下の説明では前記記録手段1A〜1Dの全体または任意の1つを指す場合、単に記録手段(記録ヘッドまたはヘッドカートリッジ)1で示すことにする。
【0028】
前記複数のカートリッジ1は、それぞれ異なる色のインクで記録するものであり、それらのインクタンク(図9)部には例えばシアン、マゼンタ、イエロー、黒などの異なるインクが収納されている。各記録手段1はキャリッジ2に位置決めして交換可能に搭載されており、そのキャリッジ2には、前記コネクターを介して各記録手段1に駆動信号等を伝達するためのコネクターホルダー(電気接続部)が設けられている。
【0029】
キャリッジ2は、主走査方向で装置本体に設置されたガイドシャフト3に沿って移動方向に案内支持される。そしてキャリッジ2は、主走査モータ4により、モータプーリ5、従動プーリ6、及びタイミングベルト7を介して駆動され、その位置及び移動を制御される。用紙やプラスチック薄板等の被記録媒体8は、2組の搬送ローラの回転により第1の記録ヘッドH1の吐出口面と対向する位置(記録部)を通して搬送(紙送り)される。なお被記録媒体8は、記録部において平坦な記録面を形成できるように、その裏面をプラテン(不図示)により指示されている。この場合、キャリッジ2に搭載された各カートリッジ1は、それらの吐出口面がキャリッジ2から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間で被記録媒体8と平坦になるように保持されている。
【0030】
前記記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また前記記録ヘッド1は前記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
【0031】
図2は、前記記録ヘッド1のインク吐出部13の主要部構造を部分的に示す模式的斜視図である。図2において被記録媒体8と所定の隙間(約0.5〜2[mm]程度)をおいて対面する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22が形成され、共通液室23を各吐出口22とを連通する各流路24の壁面に沿ってインク吐出量のエネルギーを発生するために電気熱変換体(発熱抵抗体など)25が配設されている。本例においては、記録ヘッド1は吐出口22がキャリッジ2の走査方向と交差する方向に並ぶような位置関係で、該キャリッジ2に搭載されている。こうして画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体25を駆動(通電)して、流路24内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口22からインクを吐出させる記録ヘッド1が構成されている。
【0032】
図1に示すインクジェット記録装置では、図示左側にキャリッジ2のホームポジションが設定され、このホームポジションの近傍に回復系ユニット14が配設されている。回復系ユニット14には、ホームポジションにある各ヘッドカートリッジ1の吐出口面21のそれぞれに対応する位置において上下方向に昇降可能であり、上昇して各吐出口面21に密着してそれらの吐出口22を密閉可能(キャッピング可能)な4個のキャップ15が設けられている。このキャップ15は、各記録ヘッド1の吐出口面21をキャッピングすることにより、吐出口22近傍におけるインクの乾燥蒸発(インクの増粘、固着)やごみ等の異物の付着を防ぐ為のものである。また、前記各キャップ15は、吸引ポンプ16に連結されおり、キャッピング状態で該吸引ポンプを作動させることにより吐出口22からインクを排出させる吸引回復操作を行うためのものでもある。この吸引回復操作は吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための処理操作である。
【0033】
図1において、回復系ユニット14の記録領域側部分にはブレードホルダー17に保持されたワイピング部材としてのブレード18が配設されている。このブレード18は、キャリッジ2との相対移動を利用して各記録手段(ヘッドカートリッジ)1の吐出口面21を拭き取り清掃(クリーニング)するためのものであり、ゴムなどの弾性部材で構成されている。このワイピング部材としてのブレード18は、吐出口面21を傷つけることのないように記録ヘッド1より硬度が低い材料で作られている。また、ブレード18と記録ヘッド1との相対的な位置関係に対する許容度を増すために、該ブレード18は弾性部材で作られることが多い。
【0034】
インクジェット記録装置においては、ある時間連続してインク吐出が行われない吐出口では、インクが蒸発乾燥してしまい結果として吐出性能の低下や記録画像の画質低下を引き起こすことがある。そこで、これを防止する為に、インクジェット記録装置では、ある時間間隔ごとに記録データとは無関係に所定の場所で吐出口22からインク吐出を行い、該吐出口22内のインクを排出することでフレッシュなインクにする予備吐出動作が行われる。そのため、インクジェット記録装置では上記予備吐出動作で排出(吐出)されるインクを受けるための予備吐出受け部(不図示)を設けることも行われている。
【0035】
(制御システムの構成)
図3は本発明を適用したインクジェット記録装置の一実施例における制御システムの構成を例示するブロック図である。図3において、41は記録信号を入力するインターフェースであり、42はマイクロプロセッサユニット(MPU)であり、43はこのMPU42が実行する制御プログラムを格納するプログラムROMであり、44は前記記録信号や記録ヘッド1に供給される記録データ等の各種データを保存しておくDRAMである。このDRAM44では、記録ドット数や記録時間なども記憶(カウント)出来るようになっている。45は記録ヘッド1に対する記録データの供給制御を行うゲートアレイであり、インターフェース41とMPU42とDRAM44との間のデータの転送制御も行うように構成されている。
【0036】
図3において、4は記録ヘッド1を搭載したキャリッジ2を搬送する為のキャリアモータ(主走査)であり、20は記録用紙等の被記録材8を搬送する為の搬送モータである。46は記録ヘッド1を駆動する為のヘッドドライバであり、47は搬送モータ20を駆動する為のモータドライバであり、48はキャリアモータ(主走査モータ)4を駆動する為のモータドライバであり49は各種の検出を行うためのセンサ群である。このセンサ49は例えば、被記録材(用紙等)8の有無を検知するセンサ、キャリッジ2がホームポジションにあることを検知するセンサ、記録ヘッド1の温度を検知するセンサなどであり、これらにより、被記録材8の有無やキャリッジ2の位置や環境温度などを認識することが出来る。
【0037】
図1及び図3において、ホストからの記録データがインターフェース41を介して送られてくると、ゲートアレイ45を通してDRAM44に記録データが一時的に蓄えられる。その後DRAM44のデータをゲートアレイ45によってラスターデータから記録ヘッド1で記録するための画像イメージに変換し、再度DRAM44に記憶する。そのデータを、再度ゲートアレイ45によってヘッドドライバ46を介して記録ヘッド1に送り、対応する位置の吐出口からインクを吐出させて記録を行う。その際、ゲートアレイ45に記録させるドットのカウンターを構成しておき、記録させるドットを高速でカウントできる構成としておく。
【0038】
前記モータドライバ48を介してキャリアモータ(主走査モータ)4を作動させ、記録ヘッド1の記録速度に合わせて該記録ヘッドを主走査方向へ動かし、その主走査における記録は行われる。当該主走査の記録が完了すると、搬送モータ用のモータドライバ47を介して搬送モータ20を作動させ、被記録材8主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ所定ピッチだけ搬送(紙送り)する。そして、次のラインの記録を行うべく、前期モータドライバ48を介して再びキャリアモータ(主走査モータ)4を作動させ、記録ヘッド1の記録速度に合わせて該記録ヘッドを主走査方向へ動かし、その主走査(次のラインの主走査)における記録が行われる。以下、これらを繰り返すことにより、被記録材8の全体における記録が行われる。
【0039】
(分割印字の判定方法)
各記録走査における記録比率の検出方法について以下に説明する。1走査中(1主走査中)における記録比率のカウントにおいて、単に1走査分に記録するドット数をカウントしてしまうと、例えば1行全体に均等にドットが配されている場合と局所的にドットが密集して配されている場合があり、これらを区別して処理することが出来なくなってしまう。
【0040】
図4は1走査中における記録比率の局所性を例示する説明図であり、(a)は記録ドットが均一なデューティで配されている場合を示し、(b)は記録ドットが局所的に高いデューティで配されている場合を示す図である。図−において、(a)及び(b)は共に縦256ドット、横3500ドットの領域の中にドットが配されて記録される総ドット数が89600ドットである場合を示し、(a)では記録領域の中に均一に10%のデューティでドットが配されており、(b)では記録領域中の局所的な縦256ドット、横350ドットの領域の中に89600ドットが集中して配されている。従って、図4の(b)は局主的な領域においては記録比率100%であるが、縦256ドット横3500ドットの領域に対しては同図(a)と同様に10%の記録比率となってしまう。
【0041】
図5は、本発明を適用したインクジェット記録装置における記録比率を算出するための単位領域の一例を示す説明図である。図6に示す本実施例においては、記録比率を算出するための単位領域を設け、これにより主走査による1行(1ライン)の領域を複数の単位領域の大きさに分割し、その分割された複数の領域でそれぞれ記録比率をカウントするように構成されている。図5においては、各色(各記録ヘッド1)の吐出口の数を256、各単位領域を縦256ドット、横256ドットの領域とし、各単位領域に番号をつけて区別するようにしている。この単位領域の総ドット数は256×256=65536ドットとなり、この単位領域内に65536ドット記録したものを100%の記録比率として計算される。
【0042】
そして、記録ヘッド1による印字を、吐出口数分行うか、吐出口の排紙側半分のみに限定して使用するかの判定の一つは、1主走査の記録領域中に記録比率が所定値を超える単位領域が1ヶ所でも存在するか否かに基づいて行うようにしている。この単位領域の大きさは、特に上記した大きさに限定されるものではない。
【0043】
図6は本発明を適用したインクジェット記録装置の第1実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。図6を参照して本発明によるインクジェット記録装置の分割印字について説明する。図6において、まず記録開始命令を受けると、記録紙等の被記録材8を給紙し、1記録走査分のデータの取得を行う(ステップS101)。
【0044】
次にステップS102へ進んで各記録ヘッド1ごとに記録比率が50%を超える単位領域があるか否かをチェックする。50%を超える単位領域がなければ、ステップS103へ進んで、吐出口分の記録走査を行い、その後、吐出口数分の搬送(紙送り)を行う(ステップS104)。一方、50%を超える記録領域が一つでもあれば記録データのうち、排紙側半分のデータの記録走査を行い(ステップS105)、被記録材8を主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ記録した幅分(吐出口数の半分)のピッチだけ搬送(紙送り)する(ステップS106)。次に先の記録データのうち、給紙側の残り半分の記録走査を行い(ステップS107)。被記録材8を主走査方向と交叉する搬送方向(副走査方向)へ記録した幅分(吐出口数の半分)のピッチだけさらに搬送(紙送り)する(ステップS108)。
【0045】
ついで、ステップS109で、1頁分の記録が終了したか否かの判別し、1頁分の記録が終了していれば記録紙(被記録材)8を排紙する。また、その頁の記録がいまだ終了しておらず記録を継続する場合は上記ステップS101〜ステップS109の動作を頁の記録が終了するまで繰り返す。
【0046】
以上説明した実施例によれば、記録手段1から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向への記録走査で、被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段(ステップS102)と、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって、記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを具備する構成とすることにしたので、記録頁内での分割印字を、インクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が得られる。
【0047】
(第2実施例)
本実施例に用いる記録装置の構成ならびに制御システムの構成は前述の実施例1と同様とする。
【0048】
第2実施例は記録手段1(記録ヘッド1)から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と、次の主走査方向の記録走査でインクタンクから記録ヘッドに対しどのくらいのインク供給が行われるのかを、被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段から推定し、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを備えることによりインクタンクから記録ヘッドへのインク供給不足により生じるバサ落ちを防止するものである。
【0049】
(分割印字の判定方法)
図7は、本発明を適用したインクジェット記録装置の第2の実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。図6の第1実施例の場合は、どのような吸引回復動作かは関係無く、常にある一定以上の記録比率を持つ記録データの印刷命令において分割印字動作となる。しかし、前述したように吸引回復動作はその求められる回復性能に応じて複数の種類を持っており、通常の印字途中に入る吸引回復ではインクタンクにエアパスができるほど強力な吸引を入れることは少なく、前述したように着荷時吸引やインクタンク交換吸引でエアパスができるような、インクタンクにとって厳しい吸引回復が入ることが多い。これは、前記着荷時吸引ならびにインクタンク交換吸引では記録ヘッド側にインクがまるで供給されていない状態であることが想定されるため、吸引されるインク量として、通常吸引の倍から3倍程度の吸引回復動作が入ることがあり、更にこのような吸引では、通常吸引と同じ強さで吸引すると吸引量の増加に伴い吸引回復時間の増加にもつながるため、吸引圧(吸引ポンプにより生じさせる負圧)をより高い負圧にして、より時間の短縮を狙うこともあるからである。
【0050】
そこで本実施例では、図7に示すように、もっとも最近行った吸引回復動作がいかなる吸引かを判定するステップS100が追加挿入されている。そして、このステップS100において判定した結果、もっとも最近行われた吸引が例えばエアパスを生じさせない通常の回復吸引であった場合には通常の記録動作(ステップS112〜ステップS114)を行い、エアパスを生じさせるような吸引回復(着荷時吸引やインクタンク交換等)であった場合には、ステップS101において1記録走査分のデータの取得を行った後、ステップS102へと進んで各記録ヘッド1ごとに記録比率が50%を超える単位領域があるか否かをチェックするように構成されている。図7に示した第2実施例は、上記の点で図6の第1実施例と相違しており、その他の点では第1実施例と実質的に同じ構成となっている。
【0051】
すなわち、図7の第2実施例でも、ステップS102で各記録ヘッド1ごとに記録比率が50%を超える単位領域があるか否かをチェックし、50%を超える単位領域がなければ、ステップS103へ進み、50%を超える記録領域が一つでもあれば記録データのうち、排紙側半分のデータの記録走査を行う(ステップS105)というように、その後は第1実施例の場合と同じ流れとなるように構成されている。そのため、図7の第2実施例では、図6の第1実施例と同じ部分を同一符号で示し、それらの詳細な説明は省略する。
【0052】
以上説明した実施例によれば、記録手段1から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、もっとも最近行われた吸引回復動作がどのようなものであったかを判定する吸引回復判定手段と、次の主走査方向への記録走査で被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって、記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを具備する構成とすることにしたので、前述した着荷時吸引やインクタンク交換吸引のようなエアパスができる、インクタンクにとって厳しい吸引回復の後においてのみ分割印字をするか否かの判定をすることになる。このようにすれば、分割印字を行うのは特殊(着荷時吸引回復動作など)な吸引回復動作の後のみとなり、通常の使用状況下では分割印字による印刷速度の低下を回避しながら、かつ記録頁内でインクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において分割印字を実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が得られる。
【0053】
前述の図6および図7に示した各実施例のフローチャートでは、説明の便宜上ドットカウント数や、記録比率の値を1つにして説明してきたが、複数色のインクや複数の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置においては、各インク毎あるいは各記録ヘッドにドットカウンタを用意し、記録比率の閾値との比較などを各インク毎あるいは、各記録ヘッド毎に実行して判断するようにしても良い。また、単にドット数をカウントするのではなく、このドット数に記録ヘッドの温度や環境温度で重み付けしたり、記録デューティで重み付けしたりして、ドット数からある値に変換してカウントしていき、それらの値に対して閾値を設けるようにしても良い。更に上記実施例ではインクタンクの状態を推定するために、最も最近行われた吸引回復動作を判定することにしているが、これに限らず、記録ヘッドの走査回数や、先の吸引回復動作からの経過時間、もしくはこれらを組み合わせた形などで判定しても良い。本実施例では図−に示すように、負圧発生部材収納室と液体収納室とを持つインクタンクを用いることとしたが、液体収納室を持たず、インクタンク内全てが負圧発生部材であるようなインクタンクを用いても本発明の効果を得ることができる。
【0054】
(その他)
なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式の記録ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0055】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。
【0056】
この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて、書く沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印可することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことが出来る。
【0057】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に記載されているような吐出口、液路電気熱変換体の組合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59―123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59―138461号公報に基づいた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録を確実に効率よく行うことが出来るようになるからである。
【0058】
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応して長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0059】
加えて、上例のようなシリアルタイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0060】
また、本発明の記録装置の構成として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定出来るので、好ましいものである。これらを具体的にあげれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子或いはこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出手段をあげることができる。
【0061】
また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数についても、例えば単色のインクに対応して1個のみが設けられたもののほか、記録色や濃度を異にする複数のインクに対応して複数個設けられるものであっても良い。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては記録ヘッドを一体的に構成するか複数個によるかのいずれでも良いが、異なる色の複数カラー、または、混色によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備えた装置にも本発明はきわめて有効である。
【0062】
さらに加えて、以上説明した本発明実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以上で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよい。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与によってはじめて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合のインクは、特開昭54―56847号公報あるいは特開昭60―71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対してもっとも有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0063】
さらに加えて、本発明インクジェット方式の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明によれば、記録手段1から被記録材8へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録手段の吐出口22内の増粘・固着インクや気泡などをインクと共に排出させることで該吐出口内のインクをリフレッシュさせ、それによってインクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための吸引回復手段と、次の主走査方向への記録走査で、被記録材8に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と、前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)によって、記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段とを具備する構成とすることにしたので、記録頁内での分割印字を、インクタンクからのインク供給が記録に間に合わなくなる記録比率の領域がある記録走査において実施することができ、インクタンクからのインクの供給不足により発生するバサ落ちを防止することが出来るインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るインクジェット記録装置の概略構成を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1中の記録手段のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図3】本発明を適用したインクジェット記録装置の1実施例の制御システムの構成を例示するブロック図である。
【図4】1走査中における記録比率の局所性を例示する説明図である。
【図5】本発明を適用したインクジェット記録装置における記録比率を算出するための単位領域の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明を適用したインクジェット記録装置の第1実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図7】本発明を適用したインクジェット記録装置の第2実施例における分割印字動作の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図8】吐出用液体収納容器の一例を示す断面図である。
【図9】吐出用液体収納容器の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における記録ヘッドの構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1、1A、1B、1C、1D ヘッドカートリッジ
2 キャリッジ
3 ガイドシャフト
4 主走査モータ
5 モータプーリ
6 従動プーリ
7 タイミング・ベルト
8 被記録媒体(被記録材)
9,10,11,12 搬送ローラ
13 記録ヘッド部
14 回復系ユニット
15 キャップ
16 吸引ポンプ
17 ブレードホルダー
18 ブレード
20 搬送モータ
21 吐出口面
22 吐出口
23 共通液室
24 液路
25 電気熱変換体
42 MPU
43 ROM
44 DRAM
45 ゲートアレイ
49 各種センサ
Claims (6)
- 記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
インクの吐出性能を正常な状態に回復させかつ維持するための複数の吸引回復手段と、
インクタンクが前記複数の回復手段によりどのような状態にあるかを推定するためのインクタンク状態推定手段と
被記録材に付与される単位面積あたりのインク量(単位領域の記録比率)を検出するインク量検出手段と
前記インクタンク状態判定手段により得られるインクタンク状態と前記前記インク量検出手段の検出値(単位領域の記録比率)とによって記録走査を分割して行うか否かを決定するための分割印字決定手段
とを有すること特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記インク量を検出するインク量検出手段が、インク吐出ドット数をカウントするドットカウント手段であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記インクタンク状態推定手段として、前記複数の回復手段のうち、最も最近行われた吸引回復動作がいかなる物であったかを判断するインクタンク状態判定手段であることを特徴とする請求項1ないし2に記載のインクジェット記録装置。
- 前記インクタンク状態推定手段として、吸引回復が行われた後の経過時間をカウントするタイムカウント手段であることを特徴とする請求項1ないし2に記載のインクジェット記録装置。
- 請求項1に記載のインクタンクにおいて、大気と連通する大気連通部と、記録手段に対し液体を供給するための液体供給口と、内部に負圧発生部材を収納した負圧発生部収納室と
を備えたことを特徴とするインクタンク。 - 請求項1に記載のインクタンクにおいて、大気と連通する大気連通部と記録手段に対し液体を供給するための液体供給口とを備え内部に負圧発生部材を収納した負圧発生部材収納室と、前記負圧発生部材収納室と底部の連通路を介して連通するとともに、前記連通路を除いて実質的に密閉である液体収納室と、
前記負圧発生部材収納室と前記液体収納室とを仕切る隔壁と、
を備えたことを特徴とするインクタンク。
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CN108847698B (zh) * | 2018-06-22 | 2021-07-16 | 湖南耐普恩科技有限公司 | 一种超级电容器回收用放电装置 |
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