JP2004168585A - 補強用鋼繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼繊維の形状および材質を改良することにより、特に曲げ靭性性能に優れ、コンクリートに対する補強効果が向上された補強用鋼繊維を提供する。
【解決手段】コンクリート中に均一に分散されてコンクリートの強度を高める補強用鋼繊維1である。長手方向両端部近傍に夫々2個以上、特には2個の波形部A1,A2を有し、2個以上の波形部のうち、少なくとも隣接する1組A1,A2の波高が、中央寄りよりも端部側において高くなっている。好適には、2個以上の波形部の波高が、中央寄りから端部側に向かって順に高くなっている。
【選択図】 図1
【解決手段】コンクリート中に均一に分散されてコンクリートの強度を高める補強用鋼繊維1である。長手方向両端部近傍に夫々2個以上、特には2個の波形部A1,A2を有し、2個以上の波形部のうち、少なくとも隣接する1組A1,A2の波高が、中央寄りよりも端部側において高くなっている。好適には、2個以上の波形部の波高が、中央寄りから端部側に向かって順に高くなっている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートやモルタル等の中に混入して強度および靭性を向上させる補強用鋼繊維(以下、単に「鋼繊維」とも称する)に関し、詳しくは、その形状および材質を改良することにより補強効果を向上した補強用鋼繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鋼繊維をコンクリート中に均一に分散させてコンクリート自体の引っ張り強度や曲げ強度、曲げタフネス、ひび割れ性等の機械的強度を改善することが行われている。かかる鋼繊維に要求される特性としては、引っ張り強度およびコンクリートとの密着性が特に重要な因子になっている。これらの特性のうち、引っ張り強度については、鋼繊維の材質や直径を適宜選択することにより目的とする値を確保することができるが、鋼繊維とコンクリートとの密着性に関しては、これまで十分なものが得られていないのが実情であった。
【0003】
鋼繊維のコンクリートに対する密着性の形態は、コンクリートに付加される応力に応じて種々変化し、コンクリートに応力が付加される初期段階では、鋼繊維とコンクリートとの界面における接着による形態であり、応力が付加される後期の段階、即ち、より高い歪みが加わる段階では、かかる接着による密着から、その相互間における摩擦抵抗による密着に移行するものと考えられ、この後期段階における摩擦抵抗を高めるための物理的、機械的な密着方法が従来より検討されてきた。
【0004】
この点に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、鋼繊維の両端を折り曲げてフックを設けた形状となしてコンクリートの摩擦抵抗を高める技術が記載されており、特許文献2には、波形を付与した鋼繊維とすることによりコンクリートの摩擦抵抗を高める技術が記載されている。
【0005】
しかし、前者の鋼繊維の両端部にフックを設けたコンクリート補強鋼繊維では、要求されるに十分な摩擦抵抗が得られない場合があり、補強効果に劣るという欠点があった。また、後者の鋼繊維の長さ全域にわたって波形を付与した鋼繊維では、鋼線の強度が低い場合、鋼繊維の中央付近でコンクリートにひびが入ると、摩擦抵抗が大きいために鋼繊維が破断する場合があり、また補強方向の有効長さが短縮されるという問題があった。
【0006】
上述の問題を解決する鋼繊維として、本出願人は先に、繊維の側面から見た形状が、中央部付近はほぼ直線であり、両端部付近は波形状の湾曲部を1乃至5個夫々有している補強鋼繊維を提案した(特許文献3を参照)。また、より高い密着性の要求、特にコンクリートの圧縮強度が30N/mm2以上の場合の最大曲げ応力および曲げタフネスの特性を更に向上させる要求に対して、中央部分が真直部であり、これに連続する波形状部、前記真直部と同方向に伸びる真直部、および、フック形状部または波形状部を順次備えたコンクリート補強用鋼繊維についても提案している(特許文献4を参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公昭60−9976号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開平5−19400号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】
特開平10−194802号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】
特開2000−119052号公報(特許請求の範囲等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、年々高まりつつあるコンクリート強度に関する要求水準の要請から、さらに強靭なコンクリート構造を得るために、より補強効果の高い補強用鋼繊維を実現することが求められていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、鋼繊維の形状および材質を改良することにより、特に曲げ靭性性能に優れ、コンクリートに対する補強効果が向上された補強用鋼繊維を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の補強用鋼繊維は、コンクリート中に均一に分散されて該コンクリートの強度を高める補強用鋼繊維において、長手方向両端部近傍に夫々2個以上の波形部を有し、該2個以上の波形部のうち、少なくとも隣接する1組の波高が、中央寄りよりも端部側において高くなっていることを特徴とするものである。特には、前記2個以上の波形部の波高が、中央寄りから端部側に向かって順に高くなっていることが好ましく、また、前記波形部を、長手方向両端部近傍に夫々2個有するものとすることも好ましい。
【0011】
本発明の補強用鋼繊維においては、炭素含有量が0.12重量%以上であることが好ましい。また、好適には、長手方向最端部に位置する波形部の波高が、0.4mm以上の高さであり、長手方向端部の断面中心が、長手方向中央付近における直線状部の断面中心に対し、線径の2/3以内の偏差を有する。さらに、本発明の補強繊維は、好適には、長さ30〜60mmで、線径0.5〜1.0mmのものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(イ)に、本発明の補強用鋼繊維の一例の長手方向断面図を示す。本発明の補強用鋼繊維1は、長手方向両端部近傍に夫々2個以上、図示する例では2個の波形部A1,A2を有し、この2個以上の波形部A1,A2の波高w1,w2が、中央寄りから端部側に向かって高くなっている。即ち、w1およびw2がw1<w2を満たすような形状に形成されている点に特徴がある。これにより、鋼繊維とコンクリートとの間の摩擦抵抗を高めて、コンクリート破損時におけるコンクリートの脱落までの鋼繊維の変形量を大きく確保することができ、コンクリートの脱落を良好に防止することが可能となる。
【0013】
ここで、波形状の鋼繊維がコンクリートから引き抜かれるときの摩擦抵抗につき検討すると、この抵抗力は、鋼繊維の外形によって形成されるコンクリート内の波形状の空間を、鋼繊維が曲げ加工されながら引き抜かれるときの加工抵抗力であると考えられる。一方、鋼繊維が引き抜かれる際には、鋼繊維自体の曲げ加工以外に、鋼繊維の周囲のコンクリート壁の破壊現象が伴う。このコンクリート壁の破壊が起こった場合、鋼繊維が通過するための波形状の空間が大きくなるので、曲げ加工量は低下し、そのために摩擦抵抗が低減することになる。
【0014】
この場合、鋼繊維の端部近傍に形成された複数の波形部が全て同一の波高を有しているとすると(図2(イ)および(ロ)中の波形部A’1,A’2の波高w’1,w’2を参照)、1本の鋼繊維が引き抜かれる際に、引き抜き方向前方に位置する、即ち、中央寄りの波形部の引き抜きに伴ってその周辺のコンクリート壁が破壊されることにより、隣接する引き抜き方向後方の波形部は、先行する波形部が引き抜かれた部分を容易に通過できることとなり、即ち、各波形部において、コンクリート壁に対する引抜抵抗力は各一回しか働かないことになる。
【0015】
一方、本発明におけるように、連続する波形部の波高を中央寄りから端部側に向かって増大させて形成した場合、先行する中央寄りの波形部が引き抜かれた部分でコンクリート壁が破壊されていたとしても、その波形部よりも波高の大きい端部側の波形部がその部分を通過するためにはより大きな空間が必要となるので、端部側の波計部が完全に引き抜かれるまでには複数回の曲げ加工ないしコンクリートの破壊を伴うことになり、従って、引抜抵抗力が増大するのである。
【0016】
波形部がn個の場合には(図示せず)、中央寄りから連続する波形部A1,A2・・・Anのうち、少なくとも隣接する1組AkおよびAk+1の波高wkおよびwk+1が、wk<wk+1を満たし、即ち、中央寄りよりも端部側において高くなるようにすることで、本発明の効果を得ることができる。好適には、波形部A1,A2・・・Anの波高w1,w2・・・wnが、中央寄りから端部側に向かって順に高くなるような形状、即ち、全ての波形部がwn<wn+1を満たすような形状に形成されていることが好ましい。これにより、最も効果的に本発明の効果を得ることができる。
【0017】
本発明において鋼繊維の両端部近傍のみに波形部を設け、中央部C(図1(イ)参照)については直線状に形成するのは、鋼繊維の破断強さに見合う引抜力を持たせれば十分であるので、中央部分の波形部は不要だからである。なお、両端部近傍の波形部は、通常、図示するように同一方向に設けるが、特に制限されるものではなく、互いに逆方向に設けてもよい。
【0018】
鋼繊維の材質としては、炭素含有量が0.12重量%以上、好ましくは0.15〜0.20重量%程度のものを用いることが好適であり、これにより鋼繊維の変形を適切に抑制して、コンクリートの脱落をより効果的に防止することができる。鋼繊維の線径としては、0.5〜1.0mm程度とすることができるが、この場合、炭素含有量が0.17重量%の鋼繊維を用いることにより、1000〜1500MPa程度の抗張力を得ることができる。
【0019】
また、鋼繊維の長さは、特に制限はないが、好適には40〜50mm程度とする。あまり短過ぎると、本発明に係る引抜力が十分に働かず、一方長過ぎても、性能は向上するがコンクリート施工性の低下をまねく上、コスト高となる。さらに、波形部の波長Lは、3〜6mm程度とすることができる。波長Lが3mm未満であると波形付け加工が困難になるとともに、小さな屈曲形状になると鋼繊維本体の強度低下を起こし、鋼繊維が破断して、必要な引抜抵抗力が得られない。一方、6mmを超えると、中央の直線状部が短くなって鋼繊維の長さの効果が低下してしまう。
【0020】
波形部の波高は、好ましくは0.05〜0.8mmであり、特に、長手方向最端部に位置する波形部の波高については、0.4mm以上の高さであることが好ましい。波形部の波高が低過ぎると十分な屈曲効果が得られず、鋼繊維のコンクリートからの引抜抵抗力が低下してしまう。一方、波高が高過ぎると必要以上の引抜抵抗力となり、鋼繊維が破断して、必要な引抜抵抗力が得られないことのほか、鋼繊維の長さの効果が低下してしまう。また、最端部の波高を0.4mm以上と高くすることにより、コンクリートの脱落までの鋼繊維の変形を大きく取ることができるので、引抜抵抗力を十分高めて、コンクリートの脱落防止効果をより良好に得ることができる。
【0021】
同様の観点より、本発明の鋼繊維における長手方向端部の断面中心bは、長手方向中央付近における直線状部Cの断面中心cに対し、線径の2/3以内の偏差xを有することが好ましい(図1(ロ)参照)。例えば、線径を0.75mmとした場合には、長手方向端部の断面中心bの、長手方向中央付近における直線状部の断面中心cに対する偏差xは、好適には±0.5mm以内とする。即ち、図2(イ)および(ロ)に示すように、長手方向端部の断面中心b’が、長手方向中央付近における直線状部Cの断面中心c’に対して線径の2/3を超える偏差x’を持つような、いわば両端部が中心線から大きく外れた形状を有する従来の鋼繊維に比べると、本発明の鋼繊維は、両端部が中心線に近い位置にあり、鋼繊維全体として直線的な形状となっているといえる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例
炭素含有量0.17重量%、線径5.5mmの鋼線材を、通常のダイス伸線加工により線径0.75mm、強度1400MPaの鋼繊維とし、これを複数本一面上に平行に引き揃えて、水溶性接着剤を用いて固着し、帯状体とした。この帯状体に対し、形付け部材および切断用カッターを備えた回転式治具を用いて形付けおよび切断処理を行って、図1に示すような、長手方向両端部近傍に夫々2個の波形部A1,A2を有する長さ43mmの補強用鋼繊維1を得た。この補強用鋼繊維1の各部の寸法は、下記の表1中に示したとおりである。
【0023】
従来例1
炭素含有量0.09重量%、線径5.5mmの鋼線材を、通常のダイス伸線加工により線径0.75mm、強度1300MPaの鋼繊維とし、実施例と同様の回転式治具を用いて、図2に示すような補強用鋼繊維11を得た。この補強用鋼繊維11の各部の寸法は、下記の表1中に示したとおりである。
【0024】
従来例2
炭素含有量0.17重量%の鋼線材を用いた以外は従来例1と同様にして、 補強用鋼繊維11を得た。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例および従来例で得られた各鋼繊維をコンクリート中に混入し、均一に分散させて、鋼繊維補強コンクリート試料を作製した。この各コンクリート試料につき、3等分点曲げ試験を行い、5mm曲げ荷重(kN)を測定して、補強強度を評価した。この結果を、各任意の回数での測定により得た曲げ荷重値の頻度の度数として、図3〜5に夫々示す。
【0027】
図3〜5の結果からわかるように、図1に示す形状の鋼繊維を用いて補強した実施例のコンクリート試料においては、図2に示す従来の鋼繊維を用いて補強した従来例1の試料において見られた曲げ荷重15.0kN未満の発生頻度がほとんどなくなり、良好に曲げ靭性が向上していることが確かめられた。従来例2の試料では、炭素含有率を高めたことにより、従来例1に比して、全体として曲げ荷重値は向上しているが、実施例では、この従来例2と比べても平均曲げ荷重値が高くなっており、より強靭な補強コンクリートが得られていることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、鋼繊維の形状および材質を改良することにより、特に曲げ靭性性能に優れ、コンクリートに対する補強効果が向上された補強用鋼繊維を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補強用鋼繊維を示す、(イ)は断面図であり、(ロ)は、その長手方向の一端部の拡大図である。
【図2】従来の補強用鋼繊維を示す、(イ)は断面図であり、(ロ)は、その長手方向の一端部の拡大図である。
【図3】実施例の曲げ靭性性能を示すグラフである。
【図4】従来例1の曲げ靭性性能を示すグラフである。
【図5】従来例2の曲げ靭性性能を示すグラフである。
【符号の説明】
1,11 補強用鋼繊維
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートやモルタル等の中に混入して強度および靭性を向上させる補強用鋼繊維(以下、単に「鋼繊維」とも称する)に関し、詳しくは、その形状および材質を改良することにより補強効果を向上した補強用鋼繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鋼繊維をコンクリート中に均一に分散させてコンクリート自体の引っ張り強度や曲げ強度、曲げタフネス、ひび割れ性等の機械的強度を改善することが行われている。かかる鋼繊維に要求される特性としては、引っ張り強度およびコンクリートとの密着性が特に重要な因子になっている。これらの特性のうち、引っ張り強度については、鋼繊維の材質や直径を適宜選択することにより目的とする値を確保することができるが、鋼繊維とコンクリートとの密着性に関しては、これまで十分なものが得られていないのが実情であった。
【0003】
鋼繊維のコンクリートに対する密着性の形態は、コンクリートに付加される応力に応じて種々変化し、コンクリートに応力が付加される初期段階では、鋼繊維とコンクリートとの界面における接着による形態であり、応力が付加される後期の段階、即ち、より高い歪みが加わる段階では、かかる接着による密着から、その相互間における摩擦抵抗による密着に移行するものと考えられ、この後期段階における摩擦抵抗を高めるための物理的、機械的な密着方法が従来より検討されてきた。
【0004】
この点に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、鋼繊維の両端を折り曲げてフックを設けた形状となしてコンクリートの摩擦抵抗を高める技術が記載されており、特許文献2には、波形を付与した鋼繊維とすることによりコンクリートの摩擦抵抗を高める技術が記載されている。
【0005】
しかし、前者の鋼繊維の両端部にフックを設けたコンクリート補強鋼繊維では、要求されるに十分な摩擦抵抗が得られない場合があり、補強効果に劣るという欠点があった。また、後者の鋼繊維の長さ全域にわたって波形を付与した鋼繊維では、鋼線の強度が低い場合、鋼繊維の中央付近でコンクリートにひびが入ると、摩擦抵抗が大きいために鋼繊維が破断する場合があり、また補強方向の有効長さが短縮されるという問題があった。
【0006】
上述の問題を解決する鋼繊維として、本出願人は先に、繊維の側面から見た形状が、中央部付近はほぼ直線であり、両端部付近は波形状の湾曲部を1乃至5個夫々有している補強鋼繊維を提案した(特許文献3を参照)。また、より高い密着性の要求、特にコンクリートの圧縮強度が30N/mm2以上の場合の最大曲げ応力および曲げタフネスの特性を更に向上させる要求に対して、中央部分が真直部であり、これに連続する波形状部、前記真直部と同方向に伸びる真直部、および、フック形状部または波形状部を順次備えたコンクリート補強用鋼繊維についても提案している(特許文献4を参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公昭60−9976号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開平5−19400号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】
特開平10−194802号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】
特開2000−119052号公報(特許請求の範囲等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、年々高まりつつあるコンクリート強度に関する要求水準の要請から、さらに強靭なコンクリート構造を得るために、より補強効果の高い補強用鋼繊維を実現することが求められていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、鋼繊維の形状および材質を改良することにより、特に曲げ靭性性能に優れ、コンクリートに対する補強効果が向上された補強用鋼繊維を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の補強用鋼繊維は、コンクリート中に均一に分散されて該コンクリートの強度を高める補強用鋼繊維において、長手方向両端部近傍に夫々2個以上の波形部を有し、該2個以上の波形部のうち、少なくとも隣接する1組の波高が、中央寄りよりも端部側において高くなっていることを特徴とするものである。特には、前記2個以上の波形部の波高が、中央寄りから端部側に向かって順に高くなっていることが好ましく、また、前記波形部を、長手方向両端部近傍に夫々2個有するものとすることも好ましい。
【0011】
本発明の補強用鋼繊維においては、炭素含有量が0.12重量%以上であることが好ましい。また、好適には、長手方向最端部に位置する波形部の波高が、0.4mm以上の高さであり、長手方向端部の断面中心が、長手方向中央付近における直線状部の断面中心に対し、線径の2/3以内の偏差を有する。さらに、本発明の補強繊維は、好適には、長さ30〜60mmで、線径0.5〜1.0mmのものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(イ)に、本発明の補強用鋼繊維の一例の長手方向断面図を示す。本発明の補強用鋼繊維1は、長手方向両端部近傍に夫々2個以上、図示する例では2個の波形部A1,A2を有し、この2個以上の波形部A1,A2の波高w1,w2が、中央寄りから端部側に向かって高くなっている。即ち、w1およびw2がw1<w2を満たすような形状に形成されている点に特徴がある。これにより、鋼繊維とコンクリートとの間の摩擦抵抗を高めて、コンクリート破損時におけるコンクリートの脱落までの鋼繊維の変形量を大きく確保することができ、コンクリートの脱落を良好に防止することが可能となる。
【0013】
ここで、波形状の鋼繊維がコンクリートから引き抜かれるときの摩擦抵抗につき検討すると、この抵抗力は、鋼繊維の外形によって形成されるコンクリート内の波形状の空間を、鋼繊維が曲げ加工されながら引き抜かれるときの加工抵抗力であると考えられる。一方、鋼繊維が引き抜かれる際には、鋼繊維自体の曲げ加工以外に、鋼繊維の周囲のコンクリート壁の破壊現象が伴う。このコンクリート壁の破壊が起こった場合、鋼繊維が通過するための波形状の空間が大きくなるので、曲げ加工量は低下し、そのために摩擦抵抗が低減することになる。
【0014】
この場合、鋼繊維の端部近傍に形成された複数の波形部が全て同一の波高を有しているとすると(図2(イ)および(ロ)中の波形部A’1,A’2の波高w’1,w’2を参照)、1本の鋼繊維が引き抜かれる際に、引き抜き方向前方に位置する、即ち、中央寄りの波形部の引き抜きに伴ってその周辺のコンクリート壁が破壊されることにより、隣接する引き抜き方向後方の波形部は、先行する波形部が引き抜かれた部分を容易に通過できることとなり、即ち、各波形部において、コンクリート壁に対する引抜抵抗力は各一回しか働かないことになる。
【0015】
一方、本発明におけるように、連続する波形部の波高を中央寄りから端部側に向かって増大させて形成した場合、先行する中央寄りの波形部が引き抜かれた部分でコンクリート壁が破壊されていたとしても、その波形部よりも波高の大きい端部側の波形部がその部分を通過するためにはより大きな空間が必要となるので、端部側の波計部が完全に引き抜かれるまでには複数回の曲げ加工ないしコンクリートの破壊を伴うことになり、従って、引抜抵抗力が増大するのである。
【0016】
波形部がn個の場合には(図示せず)、中央寄りから連続する波形部A1,A2・・・Anのうち、少なくとも隣接する1組AkおよびAk+1の波高wkおよびwk+1が、wk<wk+1を満たし、即ち、中央寄りよりも端部側において高くなるようにすることで、本発明の効果を得ることができる。好適には、波形部A1,A2・・・Anの波高w1,w2・・・wnが、中央寄りから端部側に向かって順に高くなるような形状、即ち、全ての波形部がwn<wn+1を満たすような形状に形成されていることが好ましい。これにより、最も効果的に本発明の効果を得ることができる。
【0017】
本発明において鋼繊維の両端部近傍のみに波形部を設け、中央部C(図1(イ)参照)については直線状に形成するのは、鋼繊維の破断強さに見合う引抜力を持たせれば十分であるので、中央部分の波形部は不要だからである。なお、両端部近傍の波形部は、通常、図示するように同一方向に設けるが、特に制限されるものではなく、互いに逆方向に設けてもよい。
【0018】
鋼繊維の材質としては、炭素含有量が0.12重量%以上、好ましくは0.15〜0.20重量%程度のものを用いることが好適であり、これにより鋼繊維の変形を適切に抑制して、コンクリートの脱落をより効果的に防止することができる。鋼繊維の線径としては、0.5〜1.0mm程度とすることができるが、この場合、炭素含有量が0.17重量%の鋼繊維を用いることにより、1000〜1500MPa程度の抗張力を得ることができる。
【0019】
また、鋼繊維の長さは、特に制限はないが、好適には40〜50mm程度とする。あまり短過ぎると、本発明に係る引抜力が十分に働かず、一方長過ぎても、性能は向上するがコンクリート施工性の低下をまねく上、コスト高となる。さらに、波形部の波長Lは、3〜6mm程度とすることができる。波長Lが3mm未満であると波形付け加工が困難になるとともに、小さな屈曲形状になると鋼繊維本体の強度低下を起こし、鋼繊維が破断して、必要な引抜抵抗力が得られない。一方、6mmを超えると、中央の直線状部が短くなって鋼繊維の長さの効果が低下してしまう。
【0020】
波形部の波高は、好ましくは0.05〜0.8mmであり、特に、長手方向最端部に位置する波形部の波高については、0.4mm以上の高さであることが好ましい。波形部の波高が低過ぎると十分な屈曲効果が得られず、鋼繊維のコンクリートからの引抜抵抗力が低下してしまう。一方、波高が高過ぎると必要以上の引抜抵抗力となり、鋼繊維が破断して、必要な引抜抵抗力が得られないことのほか、鋼繊維の長さの効果が低下してしまう。また、最端部の波高を0.4mm以上と高くすることにより、コンクリートの脱落までの鋼繊維の変形を大きく取ることができるので、引抜抵抗力を十分高めて、コンクリートの脱落防止効果をより良好に得ることができる。
【0021】
同様の観点より、本発明の鋼繊維における長手方向端部の断面中心bは、長手方向中央付近における直線状部Cの断面中心cに対し、線径の2/3以内の偏差xを有することが好ましい(図1(ロ)参照)。例えば、線径を0.75mmとした場合には、長手方向端部の断面中心bの、長手方向中央付近における直線状部の断面中心cに対する偏差xは、好適には±0.5mm以内とする。即ち、図2(イ)および(ロ)に示すように、長手方向端部の断面中心b’が、長手方向中央付近における直線状部Cの断面中心c’に対して線径の2/3を超える偏差x’を持つような、いわば両端部が中心線から大きく外れた形状を有する従来の鋼繊維に比べると、本発明の鋼繊維は、両端部が中心線に近い位置にあり、鋼繊維全体として直線的な形状となっているといえる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例
炭素含有量0.17重量%、線径5.5mmの鋼線材を、通常のダイス伸線加工により線径0.75mm、強度1400MPaの鋼繊維とし、これを複数本一面上に平行に引き揃えて、水溶性接着剤を用いて固着し、帯状体とした。この帯状体に対し、形付け部材および切断用カッターを備えた回転式治具を用いて形付けおよび切断処理を行って、図1に示すような、長手方向両端部近傍に夫々2個の波形部A1,A2を有する長さ43mmの補強用鋼繊維1を得た。この補強用鋼繊維1の各部の寸法は、下記の表1中に示したとおりである。
【0023】
従来例1
炭素含有量0.09重量%、線径5.5mmの鋼線材を、通常のダイス伸線加工により線径0.75mm、強度1300MPaの鋼繊維とし、実施例と同様の回転式治具を用いて、図2に示すような補強用鋼繊維11を得た。この補強用鋼繊維11の各部の寸法は、下記の表1中に示したとおりである。
【0024】
従来例2
炭素含有量0.17重量%の鋼線材を用いた以外は従来例1と同様にして、 補強用鋼繊維11を得た。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例および従来例で得られた各鋼繊維をコンクリート中に混入し、均一に分散させて、鋼繊維補強コンクリート試料を作製した。この各コンクリート試料につき、3等分点曲げ試験を行い、5mm曲げ荷重(kN)を測定して、補強強度を評価した。この結果を、各任意の回数での測定により得た曲げ荷重値の頻度の度数として、図3〜5に夫々示す。
【0027】
図3〜5の結果からわかるように、図1に示す形状の鋼繊維を用いて補強した実施例のコンクリート試料においては、図2に示す従来の鋼繊維を用いて補強した従来例1の試料において見られた曲げ荷重15.0kN未満の発生頻度がほとんどなくなり、良好に曲げ靭性が向上していることが確かめられた。従来例2の試料では、炭素含有率を高めたことにより、従来例1に比して、全体として曲げ荷重値は向上しているが、実施例では、この従来例2と比べても平均曲げ荷重値が高くなっており、より強靭な補強コンクリートが得られていることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、鋼繊維の形状および材質を改良することにより、特に曲げ靭性性能に優れ、コンクリートに対する補強効果が向上された補強用鋼繊維を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補強用鋼繊維を示す、(イ)は断面図であり、(ロ)は、その長手方向の一端部の拡大図である。
【図2】従来の補強用鋼繊維を示す、(イ)は断面図であり、(ロ)は、その長手方向の一端部の拡大図である。
【図3】実施例の曲げ靭性性能を示すグラフである。
【図4】従来例1の曲げ靭性性能を示すグラフである。
【図5】従来例2の曲げ靭性性能を示すグラフである。
【符号の説明】
1,11 補強用鋼繊維
Claims (7)
- コンクリート中に均一に分散されて該コンクリートの強度を高める補強用鋼繊維において、長手方向両端部近傍に夫々2個以上の波形部を有し、該2個以上の波形部のうち、少なくとも隣接する1組の波高が、中央寄りよりも端部側において高くなっていることを特徴とする補強用鋼繊維。
- 前記2個以上の波形部の波高が、中央寄りから端部側に向かって順に高くなっている請求項1記載の補強用鋼繊維。
- 前記波形部を、長手方向両端部近傍に夫々2個有する請求項1記載の補強用鋼繊維。
- 炭素含有量が0.12重量%以上である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の補強用鋼繊維。
- 長手方向最端部に位置する波形部の波高が、0.4mm以上の高さである請求項1〜4のうちいずれか一項記載の補強用鋼繊維。
- 長手方向端部の断面中心が、長手方向中央付近における直線状部の断面中心に対し、線径の2/3以内の偏差を有する請求項1〜5のうちいずれか一項記載の補強用鋼繊維。
- 長さ30〜60mmで、線径0.5〜1.0mmである請求項1〜6のうちいずれか一項記載の補強用鋼繊維。
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