JP2004163320A - 杭鉛直度管理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アーム傾斜計29,31でそれぞれ検出される起伏角度θ2’,θ3’間の差異と、アーム5の撓み長さLとを利用して、アーム撓み補正手段32はアーム5の枢着部6から先端までの真の直線長さLtと、この直線長さLtと水平面との間をなす角度である真の起伏角度θtを算出する。そして、真の起伏角度θtと、杭芯15が貫入位置Pの垂直線上に位置するときの枢着部6から杭芯15に至る水平面に沿ったロッド距離L2とにより、アーム5の枢着部6から先端までの目標アーム長さLnを算出する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、起伏可能に回動し且つ伸縮自在なアームの先端に杭を取り付けて、杭入作業を行なうものにおいて、アームを伸縮させて杭の鉛直度が保たれるように管理する杭鉛直度管理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅地盤においては、例えばスウェーデン式サウンディング試験機などを用いて原位置における土の貫入抵抗を測定し、その硬軟または締まり具合、さらに土層の構成を測定し、地耐力を推定する地盤調査が予め行なわれる。そして、この地盤調査の結果、軟弱な地盤であると判断された場合には、セメント系の固化剤をスラリー状態にし、対象となる地盤に注入しながら機械混合攪拌することによって、地盤土を柱状固化して地盤強化を図る地盤改良工事が行なわれている。
【0003】
この一連の施工工事においては、軟弱地盤の正確な挿入位置に杭芯の先端を合わせることは勿論、特に施工中における杭芯の鉛直度(傾斜状態)や深度を正しく管理することが求められる。すなわち、杭芯を常時垂直に保ったまま軟弱地盤に打ち込まなければ、完成した改良地盤がジグザグの状態に施工され、地盤強化を満足に図ることができない。また、杭芯の挿入深さが不足した場合などにも、同様の問題が発生する。
【0004】
さらに、こうした杭芯の鉛直度や深度の管理は、ハンマーなどで杭芯を垂直に打ち込む専用の杭打ち車両ではなく、とりわけ汎用の工事車両である建柱車のように、伸縮自在で垂直方向に回動するアームの先端に杭芯を取り付けて、このアームにより杭芯を押し込んで作業するものでは一層困難なものとなる。この場合、先ずアームの先端に杭芯を取付けた状態で、作業者が目標位置を目視で確認しながら、工事車両のオペレータに合図を送り、杭芯の先端と目標位置の位置合わせを行なう。次に、目標位置の近辺にいる作業者の目視による合図を頼りに、オペレータはアームの出し入れとアームの回動を行ないながら、杭芯を垂直に且つ所定の深さまで掘削する作業が行なわれる。しかし、どの程度アームを出し入れしたり、アームを回動させるのかは、あくまでもオペレータの勘に委ねられているため、作業に際しては相当な熟練が必要であった。
【0005】
こうした杭打ち時における杭芯の鉛直度を管理するものとしては、例えば特許文献1にあるような、杭打設における杭の鉛直矯正方法が知られている。これは、2つの観測点のそれぞれに電子トータルステーションを設置し、この電子トータルステーションにより杭に設けたマークを視準追尾することで、杭を保持する杭打設作業装置の前後傾斜手段と左右傾斜手段を制御して、杭の鉛直性を保つようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特公平4−73729号公報(明細書段落番号
【0006】等)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記方法では、杭打ち作業を行なう毎に、杭から離れた位置に電子トータルステーションを設置しなければならず、煩わしい。しかも、杭を前後方向若しくは左右方向にどの程度動かせばよいかという情報は得られるものの、それに基づき現時点でアームをどの程度伸縮させるのかは判らず、結局は作業者が電子トータルステーションに代わっただけで、作業車両を操作するオペレータの技量で杭作業の良否が左右される。
【0008】
こうした問題を回避するために、先に本願出願人は特願2001−380710において、基端にある枢着部を中心に起伏可能に回動し、且つ伸縮自在なアームの先端に取付けられる杭の鉛直度を管理する杭鉛直度管理装置において、アームの枢着部から先端までの長さを検出するアーム長検出手段と、アームの起伏角度を検出するアーム角度検出手段とを備えるとともに、アームの先端を前記杭の貫入位置に一致させたときに、アーム長検出手段とアーム角度検出手段からそれぞれ取り込んだ杭の最終姿勢におけるアームの長さおよび起伏角度と、このアーム角度検出手段から取り込まれる現在のアームの起伏角度とから、杭が貫入位置の垂直線上に位置するアームの目標長さを算出する制御手段を備えたものを提案している。
【0009】
しかし、打設中の杭芯を押し込む力と杭芯が軟弱地盤から受ける反発力がアームを押し上げる力となって、アーム自身に撓みが生じるため、アームの基端と先端での起伏角度にズレを生じるようになり、アームの目標長さに実際のアーム長を合わせて施工しても、杭を目標となる貫入位置に垂直に打ち込むことができない。
【0010】
加えて、杭芯の打設中はアームが撓むだけでなく、アームを保持する保持体としての建柱車も前後に浮き上がりや縦揺れを起こし、アーム角度検出手段で検出するアーム起伏角度に更なる誤差が生じる。このため、車両本体の浮き上がりや縦揺れ角をも考慮したアームの目標長さの算出を行なわなければ、杭芯の鉛直度を正しく保つことができないという不都合を生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決しようとするもので、施工中にアームが撓んだ場合でも、オペレータの技量に左右されることなく、正しく杭作業を行なうことができる杭鉛直度管理装置を提供することをその目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1における杭鉛直度管理装置は、前記目的を達成するために、基端にある枢着部を中心に起伏可能に回動し、且つ伸縮自在なアームの先端に取付けられる杭の鉛直度を管理する杭鉛直度管理装置において、前記アームに沿った枢着部から先端までの撓み長さを検出するアーム長検出手段と、前記アーム基端の起伏角度を検出する第一アーム角度検出手段と、前記アーム先端の起伏角度を検出する第二アーム角度検出手段と、前記アーム長検出手段,第一アーム角度検出手段および第二アーム角度検出手段からの検出出力に基づき、前記アームの枢着部から先端までの真の直線長さを算出すると共に、この直線と水平面との間の真の起伏角度を算出するアーム撓み補正手段と、前記杭が貫入位置の垂直線上に位置するときの前記枢着部から前記杭に至る水平面に沿った距離と前記真の起伏角度とから、前記杭が貫入位置の垂直線上に位置する前記アームの枢着部から先端までの目標直線長さを算出する制御手段とを備えて構成される。
【0013】
この場合、杭の打設中は、杭を地面に押し込む力と杭が地面から受ける反発力とによって、アーム自身に撓みが生じ、この撓んだ状態のアームの撓み長さがアーム長検出手段で検出される。それと共にアームが撓むと、第一アーム角度検出手段と第二アーム角度検出手段でそれぞれ検出される起伏角度に差異を生じ、この差異と前記アームの撓み長さとを利用して、アーム撓み補正手段はアームの枢着部から先端までの真の直線長さと、この直線と水平面との間をなす真の起伏角度を算出する。そして、このようにして得られた真の起伏角度と、予め分っている杭が貫入位置の垂直線上に位置するときの枢着部から杭に至る水平面に沿った距離とによって、制御手段がアームの枢着部から先端までの目標直線長さを算出する。
【0014】
したがって、アーム撓み補正手段が算出する真の直線長さが、目標直線長さに一致するように、オペレータがアームを出し入れすれば、施工中にアームが撓んだ場合でも、杭の鉛直度を保った状態で貫入位置に打ち込むことが可能になり、オペレータの技量に左右されることなく、正しく杭作業を行なうことができる。
【0015】
また本発明の請求項2の杭鉛直度管理装置は、請求項1の構成において、前記アームを保持する保持体の傾きを検出する傾斜検出手段をさらに備え、前記アーム撓み補正手段は、前記第一アーム角度検出手段および第二アーム角度検出手段からの各検出出力から、前記杭が地面に押し込まれるときの前記保持体の浮き上がり角度を差し引いて、前記真の直線長さや真の起伏角度を算出するものである。
【0016】
この場合は、杭が地面に押し込まれるときの保持体の浮き上がり角度を傾斜検出手段からの検出出力で得ることができるので、第一アーム角度検出手段や第二アーム角度検出手段で検出されるアーム基端やアーム先端の各起伏角度から浮き上がり角度を差し引いて、真の直線長さや真の起伏角度を算出することができる。したがって、保持体の浮き上がりや縦揺れ角をも考慮したアームの目標直線長さの算出が可能となり、杭の鉛直度をより正しく保つことができる。
【0017】
【発明の実施形態】
以下、本発明における杭鉛直度管理装置について、添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本装置の概略構成図である。同図において、1は改良工事を行なう必要のある地面である軟弱地盤、2は軟弱地盤1上に配置された汎用の工事作業機としての建柱車である。建柱車2の構成は周知のように、車両本体3の上部に取付けられた水平方向に回動可能な保持機構4と、この保持機構4に基端が枢着される伸縮自在なアーム5とを備えており、アーム5は基端部にある枢着部6を中心に起伏可能に回動するようになっている。なお、7は軟弱地盤1の表面に当接する回動可能な車輪、8は作業時などにおいて車両本体3の倒れを防止する接地脚である。ここでの建柱車2は、アーム5を保持する保持体として設けられているが、車両以外のものであってもよい。
【0019】
前記アーム5は、基端に保持機構4との枢着部6を設けた筒状のアーム基部11と、このアーム基部11の先端より出没する第一アーム可動部12と、第一アーム可動部12が出没するのに伴って、この第一アーム可動部12の先端より出没する第二アーム可動部13の3段で構成され、アーム5ひいては第二アーム可動部13の先端には、工具である杭すなわち杭芯15を軸方向に回動可能な状態で取付ける杭取付部16が設けられる。ここでの杭芯15は、従来例における杭芯102と同様に、その先端で軟弱地盤1の掘削を行なう掘削部17と、掘削された穴18内にセメント系の固化剤19を注入するセメント注入部20とをそれぞれ備えている。なお、実施例におけるアーム5は3段で構成されるが、2段若しくは4段以上でもよく、その段数については特に限定されない。
【0020】
25は、前記アーム5の枢着部6から先端までの長さをアーム長さLとして検出するアーム長検出手段としてのワイヤー式エンコーダである。このエンコーダ25は、アーム可動部12の先端側にその一端を取付けた線材26と、線材26を回転体(図示せず)に巻き取って収納するエンコーダ本体27とにより構成され、アーム5の伸縮に伴う線材26の巻き取り長さを、エンコーダ本体27内にある回転体の回転数から換算して、アーム長さLを計測するものである。特に本実施例のエンコーダ25は、アーム5が撓んだときにもアーム5に沿った長さ(撓み長さ)を検出できるように、線材26が貫通するリング状の保持具28をアーム基部11および第一アーム可動部12の各先端に取付けている。なお、アーム長検出手段はワイヤー式のエンコーダに限定されるものではない。
【0021】
29は、アーム5の基端にあるアーム基部11の起伏角度すなわち水平面に対する傾き角である角度θ2’を検出する第一アーム角度検出手段としてのアーム傾斜計である。また31は、アーム5の先端にある第二アーム可動部13の起伏角度θ3’を検出する別のアーム傾斜計である。そして、これらのアーム傾斜計29,31とは別に、施工中における建柱車2の傾き(車体角)を検出する車両傾斜計30を備えている。車両傾斜計30は、杭芯15が地面に押し込まれたときの建柱車2の浮き上がり角度θ4Δを算出するためのものであるが、具体的には例えばアナログ出力型の傾斜計などが使用され、高感度磁気センサと磁石を先端に取付けた振り子との組み合せにより、XY方向に振り子の角度に応じた電圧を出力する。アーム傾斜計29はアーム5の基端寄りに取付けられると共に、車両傾斜計30は保持機構4に取付けられるが、車両傾斜計30は保持機構4以外の例えば車両本体3に直接取付けてもよい。
【0022】
図2は、装置の機能的な構成を示すブロック図である。同図において、35はエンコーダ25から得られたアーム5の撓み長さLと、アーム傾斜計29から得られたアーム基部11の角度θ2’と、およびアーム傾斜計31から得られた第二アーム可動部13の起伏角度θ3’の他に、車両傾斜計30から得られた建柱車2の打設開始時と打設中の角度差を浮き上がり角度θ4Δとして計算して取り込み、アーム5が撓んでいないと仮定したアーム5の真の直線長さLtと真の起伏角度θtを算出して、アーム5の先端に取付けた杭芯15が鉛直な状態で目標となる貫入位置Pを貫入するように、目標となるアーム5の直線長さ(目標アーム直線長さ)Lnを算出し、この算出結果を出力手段である表示器36に出力する演算処理部である。この演算処理部35は、例えばマイクロコンピュータなどの制御手段から構成される。また、37はオペレータが操作するタッチパネルなどの操作部で、この操作部からの指示により表示器36の表示内容を切換たり、各種パラメータを設定できるようになっている。
【0023】
演算処理部35は、より具体的には、最初にロッドである、杭芯15をアーム5に装着しない状態で、アーム5の先端を軟弱地盤1の表面上の貫入位置P(図1参照)に一致させた基準姿勢において、車両傾斜計30で得られた水平面を基準とした車両本体3の傾斜角と、エンコーダ25で得られた枢着部6からアーム5の先端部までのアーム長さL0と、アーム傾斜計29で得られた水平面を基準としたアーム基部11の角度θ2’とを取り込み記憶する基準姿勢記憶手段38と、杭芯15をアーム5に装着しない状態で前記アーム5の先端を貫入位置Pに一致させたときのアーム長さLxと角度θxから、アーム5の先端に杭芯15を鉛直状態で装着したと仮定した場合に、水平面に沿った枢着部6から杭芯15に至る距離を、ロッド距離L2として算出する杭芯距離算出手段39を備えている。
【0024】
また演算処理部35は、前記基準姿勢における各データを記憶した後、アーム5の先端に杭芯15を装着し、杭芯15の下端が軟弱地盤1の貫入位置Pを押し付ける状態にして、アーム5を杭入施工作業の直前の開始位置まで移動させたときに、後述するアーム撓み補正手段32によって算出されるアーム5が撓んでいないと仮定したアーム5の真の直線長さLtと真の起伏角度θtとを、それぞれ開始長さLoと開始角度θ0として記憶すると共に、これらの値から改めて算出されるロッド距離L2を記憶して、表示器36に出力する施工開始アーム位置記憶手段40とを備えている。
【0025】
それ以外にも演算処理部35は、アーム5の基端および先端の角度θ2,θ3を検出するアーム傾斜計29,31からの各検出出力に基づき、アーム5の枢着部6から先端までの真の直線長さLtを算出すると共に、この直線と水平面との間のなす角度である真の起伏角度θtを算出するアーム撓み補正手段32を備えている。特に本実施例におけるアーム撓み補正手段32は、施工開始時と施工中に車両傾斜計30にてそれぞれ検出される車体角の差から、杭芯15が軟弱地盤1に押し込まれるときの建柱車2の浮き上がり(縦揺れ)角度θ4Δを算出し、この浮き上がり角度θ4Δを、アーム傾斜計29,31からの各検出出力から差し引くことで、前記真の直線長さLtや真の起伏角度θtをより精度良く算出するようにしている。また、アーム撓み補正手段32は前述したように、アーム5が杭入施工作業の開始位置にあるときの、アーム5の真の直線長さLtと真の起伏角度θtとを、それぞれ開始長さLoと開始角度θ0として算出している。
【0026】
さらに演算処理部35は、アーム撓み補正手段32で得られる真の起伏角度θtと、開始アーム位置記憶手段40にて予め算出したロッド距離L2とから、杭芯15が貫入位置Pの垂直線上に位置するときの、アーム5の枢着部6から先端までの目標直線長さ(目標アーム長さ)Lnを算出して、それをアーム撓み補正手段32で得られる真の直線長さLtに一致した現在のアーム長さL1と共に表示器36に出力する目標アーム長さ算出手段41と、オペレータがアーム5の伸縮を操作することにより、目標アーム長さ算出手段41で得た目標アーム長さLnの許容範囲内に現在の真の直線長さLtが達すると、前記アーム5の開始長さL0と、現在のアーム5の直線長さ(アーム長さ)L1と、施工開始時におけるアーム基部11の角度(開始角度)θ0とアーム撓み補正手段32で得られる現時点でのアーム5の真の起伏角度θとの差から得られる動作角度θ1のそれぞれから余弦定理を利用して、杭芯15の貫入深さすなわち深度Hを算出し、これを表示器36に出力する杭深度算出手段42をそれぞれ備えている。
【0027】
さらに43はパラメータ設定変更手段であって、これは例えば、施工時に各種データを収集するサンプリング時間およびサンプリング間隔や、前記目標アーム長さLnの許容範囲を設定したり変更する機能を有する。そして、施工開始時におけるアーム5の開始長さL0や、そのときのアーム5の開始角度θ0や、杭芯距離算出手段39および開始アーム位置記憶手段40で得られたロッド距離L2や、施工中における深度Hや、この深度を算出したときの補正された現在のアーム長さL1などが、例えば携帯電話などのデータ送信手段44を介して、図示しないセンターに随時送られるようになっている。
【0028】
次に、図5〜図11に示す表示器36の正面図を参照しながら、その表示構成と本装置における動作を併せて説明する。図5は作業中における表示器36のメイン表示形態を示したもので、45は工番表示部、46は杭番号表示部である。工番表示部45に表示される工番は、作業を行なう住所と件名を特定するために、この住所と件名に関連付けられて予めセンターで採番されるもので、ここでは管理がしやすいように、日付け入りの13桁からなる数字が重複しないように割り当てられている。工番の入力はこのメイン表示とは別の工番入力画面で行なわれて、図示しないメモリカードに一旦格納され、作業開始時に呼出して工番表示部45に表示することができる。このとき杭番号表示部46に表示される数字は「001」から開始し、一つの杭作業が終了する毎に、数字が+1ずつ自動的に加算されるようになっている。
【0029】
47は施工中の各部の測定値をデジタル表示で表わすデジタル表示部で、これはコラムすなわち杭芯15の深度Hを表わす深度表示部48と、杭芯15の積算回転数を表わす積算回転数表示部49と、固化剤19であるセメントミルクの積算流量を表わす積算流量表示部50と、アーム撓み補正手段32により算出された現在のアーム5の角度θを表わす現在アーム角度表示部51と、施工時における前記目標アーム長さLnを表わす目標アーム長表示部52と、アーム撓み補正手段32により算出された現在のアーム5の長さL1を表わす現在アーム長表示部53とにより構成される。これらの各表示部48〜53には、現在の測定値が数字として表示される。また、54はアナログ表示を併用したメータ表示部で、これはセメントミルクの瞬時流量をデジタルおよびアナログ表示する瞬時流量表示部55と、杭芯15の圧入圧をデジタルおよびアナログ表示する圧入圧表示部56と、杭芯15の移動速度を表示する移動速度表示部57と、杭芯15の回転速度を表示する回転速度表示部58とにより構成される。これらの瞬時流量表示部55,圧入圧表示部56および速度表示部57の右下にはメータの最大スケール値が数字で表示されているが、この値は任意に変更することができる。
【0030】
さらに、表示器36の表示画面にはタッチパネルを利用した操作部37として、開始指示手段であるスタートボタン60と、停止指示手段であるストップボタン61と、再開指示手段である施工ボタン62と、一時停止指示手段である継杭ボタン63とを備えている。スタートボタン60は各部の測定を開始する際に操作するもので、測定開始を指示すると杭番号表示部46に表示される杭番号が+1加算されると共に、工番表示部45に表示される工番のなかで、杭番号表示部46に表示される杭番号に関する各部の動作情報が演算処理部35に取込まれ、かつ表示器36に表示されるようになる。なお、建柱車2そのものが作業を開始していない場合は、スタートボタン60の操作を無効にし、不必要な動作情報の取込みを防止する。一方、ストップボタン61は各部の測定を終了する際に操作するもので、測定終了を指示すると、演算処理部35への各部の動作情報の取込みが停止する。また、継杭ボタン63は継杭またはトラブル発生時に操作するもので、これを押すと各部の測定が一時停止する。さらに、施工ボタン62は施工再開時に操作するもので、これを押すと各部の測定が再スタートする。
【0031】
その他に、表示器36の表示画面下部には、表示部37の画面切換操作手段として、工番入力画面切換ボタン64と、データ送信画面切換ボタン65と、グラフ画面切換ボタン66と、ポンプ画面切換ボタン67と、垂直施工支援切換ボタン68と、パラメータ画面切換ボタン69が設けられており、いずれか一つのボタン64〜69を操作することにより、図5に示すメイン表示とは別の画面が表示器36で表示されるようになっている。また70は、セメントミルクを注入するための自動運転するポンプ(図示せず)の動状況を表示するポンプ運転状況表示部である。なお、これ以降は、本発明に関連する垂直施工支援動作と、それに対応するパラメータ設定についての説明だけを行なう。
【0032】
図12におけるフローチャートは、図5における垂直施工支援切換ボタン68を押した後の施工手順を示したものである。図12において、最初のステップS1では、建柱車2のアーム5に杭芯15を取付けない状態で、アーム5の先端が軟弱基板1の表面上に予め設定した貫入位置Pに一致するように、オペレータの操作によりアーム5の長さおよび角度を調整し、杭芯15の基準姿勢を確定する。
【0033】
図6は、このときの表示器36の表示形態を表わしたものである。71は現在のアーム5の状態などを模式的に表示するアーム表示部、72はこのアーム表示部71に対応して、既に前述したアーム5の開始角度θ0や、動作角度θ1や、開始長さL0や、現在のアーム長さL1や、ロッド距離L2を数字で表示するデータ数字表示部である。また73は、操作部37の一部をなす杭芯検出ボタンであり、この杭芯検出ボタン73を押す毎に、その押した位置に対応する箇所の表示色が切替わるようになっている。その他ここには、前記図5のメイン表示画面にも表れる現在アーム角度表示部51,目標アーム長表示部52,現在アーム長表示部53が設けられると共に、杭芯15の深度を表示する深度表示部74が設けられる。
【0034】
なお、アーム5の動作中は、一定のサンプリング時間毎に、アーム撓み補正手段32で得られる現時点でのアーム5の真の起伏角度θが現在アーム角度表示部51に表示されると共に、同じくアーム撓み補正手段32で得られる現在のアーム長さL1が現在アーム長表示部53とデータ数字表示部72に表示される。
【0035】
また、表示器36の表示画面にはタッチパネルを利用した操作部37として、アーム5を上下動させたり、アーム5を決められた角度に自動的に動かすアーム角度動作ボタン75と、アーム5を伸縮させるアーム伸縮動作ボタン76と、杭伏せボタン77と、後述するパラメータ設定画面を表示させるパラメータ画面切換ボタン78と、図3のメイン画面に戻すために戻るボタン79が各々設けられる。このように、アーム5の起伏および伸縮動作は、建柱車2に設けられたレバー(図示せず)のみならず、表示器36上に設けられた操作部37によっても行なうことができる。
【0036】
再度図12の説明に戻ると、ステップS1にて貫入位置Pにアーム5の先端を合わせて基準姿勢を確定したら、次のステップS2で杭芯検出ボタン73を押す。すると、ステップS3に移行して、演算処理部35を構成する基準姿勢記憶手段38は、アーム5の先端を貫入位置Pに一致させたときのアーム長さLxと角度θxをアーム撓み補正手段32で算出してそれぞれ取り込み、これらの値を基準姿勢として記憶する。それと共に杭芯距離算出手段39は、アーム5の先端に杭芯15を鉛直状態で装着したときの、水平面に沿った枢着部6から杭芯15に至るロッド距離L2(図6のアーム表示部71を参照)を、前記アーム長さLxと角度θxから次の数式にて算出する。
【0037】
【数1】
【0038】
このロッド距離L2は、杭芯距離算出手段39から表示器36に出力され、データ数字表示部72に常時表示される。
【0039】
こうして杭芯15の基準姿勢を記憶し、ロッド距離L2を算出したら、アーム5の先端に杭芯15を装着し、アーム角度動作ボタン75を押して、アーム5を任意の高さまで引上げる(ステップS5)。このときの表示器36の表示形態を図7に示す。ステップS2で杭芯検出ボタン73に手を触れると、この杭芯検出ボタン73に位置する表示色が別のものになる。これにより、オペレータは杭芯15の基準姿勢がすでに記憶されていることを目視で直接確認できる。また、杭芯15の長さが判っていれば、それを操作部37から入力すれば、演算処理部35はアーム5の先端が杭芯15の長さに引上げられるまでの引上げ角度を自動的に算出できる。したがって、アーム角度動作ボタン75を構成する「自動」ボタンを押したときに、この引上げ角度に自動的にアーム5が引上げるように制御手段である演算算出部35を構成すれば、オペレータの熟練度に左右されず簡単にアーム5を作業開始位置にまで引上げることができる。
【0040】
アーム5の引上げ時には、貫入位置Pの垂直線上にアーム5の先端が位置するアーム5の目標長さLnが目標アーム長さ算出手段41で算出され、これが表示器36の目標アーム長表示部52に表示される。この目標アーム長さLnは、アーム撓み補正手段32から算出される現時点でのアーム5の角度θと、前記ロッド距離L2に基づき、次の数式にて算出される。
【0041】
【数2】
【0042】
オペレータは、枢着部6を中心にアーム5を回動させて引上げながら、現在アーム長表示部52に表示される現在のアーム5の長さL1が、この目標アーム長さLnの許容範囲内に入るように、アーム伸縮動作ボタン76を操作してアーム5を伸縮させる(ステップS5)。そして、現在のアーム長さL1が目標アーム長さLnに一致すれば、下端を貫入位置Pに合わせた杭芯15は鉛直な状態となり、杭芯15の垂直な軌跡上にアーム5の先端が位置する。なお、このとき深度表示部74には、アーム撓み補正手段32で算出された現在のアーム長L1と、アーム角度θを基にして、演算処理部35で算出されたアーム5の引上げ長さが表示される。
【0043】
こうして、アーム5を引上げた後、アーム5の先端が貫入位置Pを押した状態で、アーム5が鉛直になっていることを確認したら、ステップS6に移行して、施工開始を指示するために再度施工開始ボタンでもある杭芯検出ボタン73に手を触れる。これにより演算処理部35は、アーム5が杭入施工作業の開始位置にあるものと判断して、そのときアーム撓み補正手段32で得られるアーム5の開始角度θ0と開始長さL0を、施工開始アーム位置記憶手段40にそれぞれ記憶すると共に、この開始角度θ0と開始長さL0を基に、杭芯距離算出手段39はロッド距離L2を再度次の数式にて算出する。
【0044】
【数3】
【0045】
このロッド距離L2は、施工開始アーム位置記憶手段40に記憶されると共に(ステップS7)、施工作業が終了するまで不変である。そして、前記数2における角度θにアーム5の開始角度θ0を代入することで、目標アーム長さLnを算出して、これを目標アーム長表示部52に表示する。
【0046】
なお、施工開始時は杭芯15の先端を貫入位置Pに一致させるため、軟弱地盤1に杭芯15の先端を押し付ける力がアーム5から加えられている。そのため、アーム5は後述する杭芯15の貫入時ほどではないにせよ、多少の反発力が加わり撓んでいる。したがって、目標アーム長さLnを正しく算出するために、アーム撓み補正手段32を利用して、アーム5が撓んでいないと仮定したときのアーム5の開始角度θ0と開始長さL0を算出している。
【0047】
図8は、杭入施工作業の開始時における表示器36の表示形態を示したものである。ここでは、アーム角度表示部51に補正された現在のアーム5の角度θ(施工開始時は開始角度θ0)が表示され、目標アーム長表示部52にその角度θにアーム5が向けられているときの目標アーム長さLnが表示され、アーム長表示部53に現在のアーム長さL1(施工開始時は開始長さL0)が表示され、深度表示部74には杭芯15の先端の深度Hが表示される。この深度Hは、アーム5の開始長さL0から、現在のアーム長さL1と、アーム5の開始角度θ0から現時点でのアーム5の角度θを差し引いた動作角度θ1とにより、余弦定理を利用した次の数式から算出される。
【0048】
【数4】
【0049】
上記数式より、杭芯15の下端が軟弱地盤1に貫入していない作業開始時には、アーム長・アーム起伏角補正演算手段32により補正された現在のアーム長さL1と角度θが、アーム5の開始長さL0と開始角度θ0にそれぞれ一致しており、上記数式により算出された深度Hも0となる。なお、表示器36のデータ数字表示部72には、前記作業開始時におけるアーム5の開始角度θ0と、アーム5の現在の動作角度θ1と、アーム5の開始長さL0と、現在のアーム長さL1と、ロッド距離L2がそれぞれ表示される。
【0050】
これ以降は、通常の地盤改良工事が行なわれる。とりわけ杭芯15により軟弱地盤1を掘削するに際しては、前記施工開始アーム位置記憶手段40に記憶した各データを基に、施工中における杭芯15の深度Hと垂直度の算出が行なわれる。具体的には、杭芯15による掘削が進み、アーム5の角度を下げる操作を例えばアーム角度動作ボタン75で行なうと、目標アーム長さ算出手段41は、アーム撓み補正手段32から得られる現在のアーム5の角度θと、施工開始時に算出したロッド距離L2から、杭芯15が鉛直を維持する目標のアーム長さすなわち目標アーム長さLnを算出し、これを目標アーム長表示部52に表示させる。このとき図9に示すように、現在のアーム長さL1が、目標アーム長さLnの許容範囲(例えば、±0.10m)を外れている場合には、補正された現在のアーム長さL1を表示する現在アーム長表示部53の表示色が変わって例えば赤色に反転する。オペレータはこれを見て、杭芯15が垂直に貫入されるように、アーム5の長さを調節操作して、補正された現在のアーム長さL1を目標アーム長さLnに一致させる(ステップS8)。なお、このとき杭深度算出手段42により算出される深度Hは、補正された現在のアーム長さL1が目標アーム長さLnからずれているため、正しく深度表示部74に表示されない。
【0051】
アーム5の長さを正しく調節したときの表示器36の表示状態を示したのが、図10である。この場合、現在アーム長表示部53に表示される現在のアーム長さL1が、目標アーム長表示部52に表示される表示目標アーム長さLnと一致しており、杭芯15は貫入位置Pを垂直に貫入している。また、深度表示部74に表示される杭芯15の深度Hも正しい値となる。演算処理部35のデータ送信手段44は、現在のアーム長さL1が目標アーム長さLnの許容範囲内にあるときの正しい杭芯15の深度Hを、他のデータと共にセンターに送出するので、杭芯15が鉛直でない状態の誤った深度Hのデータ収集を未然に防ぐことができる。そして、このようなアーム5の長さ調節を繰り返せば、杭芯15を常時ほぼ垂直な状態で貫入位置Pに貫入させることが可能になると共に、正しい深度Hのデータ収集が可能になる。
【0052】
続いて図11に基づき、パラメータ画面切換ボタン78を押したときに表示器36に表示されるパラメータ設定画面について説明する。ここでは、表示項目であるサンプリング区間,サンプリングタイマー,アーム許容範囲などの各種設定値を表示するパラメータ値表示部81と、現在時刻の設定を変更する現在時刻設定表示部82がそれぞれ設けられる。また、前述の図6〜図10に示す垂直施工支援画面を表示するための垂直施工支援切換ボタン83と、図11とは別のパラメータ設定画面を表示するためのパラメータ画面切換ボタン84と、図5のメイン表示画面に戻るボタン85も、それぞれ表示器36上にあるタッチパネルの操作部37として設けられる。
【0053】
このなかで、パラメータ値表示部81に表示されるサンプリング区間とは、演算処理部35が収集する各施工データの収集タイミングを設定するもので、この値は任意(例えば1mで割り切れる値)に変更できる。また、サンプリングタイマーとは、前記深度Hが変化しない状態が設定時間(この場合は15秒)続いた場合に、サンプリング区間に深度Hが変化しなくても、優先してデータ収集を行なう。なお、有効ボタン86を操作することで、この機能を無効にすることもできる。さらに、アーム許容範囲とは、前述の杭芯15を垂直に保つために算出した目標アーム長さLnの許容範囲を設定するもので、この値を設定することで、誤った深度Hのデータ収集を未然に防ぐことができる。
【0054】
また別な変形例として、前記図12に示すステップS1からステップS5の各手順を省いて、ステップS6以降の杭芯15を施工開始位置にセットした状態から作業を行なってもよい。これは図12の点線で示される。
【0055】
次に、上記一連の手順において、アーム撓み補正手段32についての動作を詳細に説明する。図3に示すように、杭芯15を軟弱地盤1に貫入する施工作業中は、杭芯15を軟弱地盤1中に押し込む力と、杭芯15が軟弱地盤1から受ける反発力が、アーム5並びに建柱車2を押し上げる力として作用し、アーム5自身が撓むと共に、建柱車2の前方も浮き上がる。図4は、撓みが生じたアーム5の状態を示す説明図で、本実施例のようなアーム5では、第一アーム可動部12が出没するアーム基部11の先端と、第二アーム可動部12が出没する第一アーム可動部12の先端が、それぞれ折れ曲がった状態で撓んでいる。なお同図において、l1はアーム基部11のアーム長、l2は第一アーム可動部12のアーム長、l3は第二アーム可動部13のアーム長で、これらはいずれも直線長さである。また、l4は杭芯15の基端を取付けるのに必要な第二アーム可動部13の先端固定長で、この部分は第二アーム可動部13を最も縮めた状態であっても、第一アーム可動部12の先端よりも外方に突出している。
【0056】
Ltはアーム5の枢着部6からアーム5の先端までの直線上の長さである真の直線長さで、θtはこの真の直線長さLtと水平面との成す角度である真の起伏角度である。θ2はアーム基部11と水平面との成す角度で、θ3は第二アーム可動部13と水平面との成す角度であり、lxは第一アーム可動部12の基端から第二アーム可動部13の先端に至る長さである。θuは第一アーム可動部12と長さlxとの成す角度で、θwは真の直線長さLtとアーム基部11との成す角度であり、θsはアーム基部11に対する第一アーム可動部12の撓み角(外角)で、この場合は、第一アーム可動部12と第二アーム可動部13が同じ量だけ出没する関係で、第一アーム可動部12に対する第二アーム可動部13の撓み角(外角)も同じθsであると仮定している。さらに、θyは第一アーム可動部12と第二アーム可動部13との成す角度(内角)で、θzはアーム基部11と長さlxとの成す角度(内角)である。
【0057】
上記構成において、アーム撓み補正手段32は、アーム5の真の直線長さLtおよびアーム5の真の起伏角度θtを算出する。そのために、まず打設中において、いずれも車両本体3の浮き上がりによる影響を含んだアーム傾斜計29から得られるアーム基部11の水平面に対する角度θ2’と、アーム傾斜計31から得られる第二アーム可動部13の水平面に対する角度θ3’とをそれぞれ取り込むと共に、打設開始時に予め記憶された車両傾斜計30からの車両本体3の車体傾斜角度と、打設中において車両傾斜計30から出力される車両本体3の車体傾斜角度との差を、角度差θ4Δとして算出する。
【0058】
そして、車両本体3の浮き上がりによる影響を取り除いた打設中のアーム基部11の正確な角度θ2と、第二アーム可動部13の正確な角度θ3は、次の数式に示すように、アーム傾斜計29で得られる角度θ2’と、アーム傾斜計31で得られる角度θ3’から、それぞれから前記角度差θ4Δを差し引くことで算出される。
【0059】
【数5】
【0060】
【数6】
【0061】
なお、アーム5の開始長さLoと開始角度θ0を算出する際には、車両本体3はさほど浮き上がっていない。また、施工中も車両本体3がさほど浮き上がらない場合には、アーム傾斜計29で得られる角度θ2’と、アーム傾斜計31で得られる角度θ3’を、そのまま正確な角度θ2,θ3として採用してもよい。
【0062】
次にアーム撓み補正手段32は、アーム5を構成する各部の長さを算出する。具体的には、アーム基部11のアーム長l1と第二アーム可動部13の先端固定長I4は既知の固定長であり、予めアーム撓み補正手段32に記憶されている。また第一アーム可動部12のアーム長l2と、第二アーム可動部13のアーム長I3から先端固定長l4を差し引いた値は、第一アーム可動部12と第二アーム可動部13が同じ量だけ出没する関係で等しくなる。したがって、エンコーダ25により検出されるアーム5の撓み長さLと、アーム基部11のアーム長l1と、第二アーム可動部13の先端固定長I4とから、アーム撓み補正手段32は、次の数式を利用して第一アーム可動部12のアーム長l2と、第二アーム可動部13のアーム長I3とをそれぞれ算出する。
【0063】
【数7】
【0064】
【数8】
【0065】
次にアーム撓み補正手段32は、前記打設中のアーム基部11の正確な角度θ2と、第二アーム可動部13の正確な角度θ3から、以下の数式を利用して撓み角θsを算出する。これは、第一アーム可動部12の撓み角θsと、第二アーム可動部13の撓み角θsが等しいという条件の下で算出される。
【0066】
【数9】
【0067】
数9から第一アーム可動部12および第二アーム可動部13の撓み角θsが求められると、第一アーム可動部12と第二アーム可動部13との成す角度θyは、三角形の内角と外角との関係から、アーム撓み補正手段32により次の数式にて簡単に求めることができる。
【0068】
【数10】
【0069】
上記角度θyが算出されると、アーム撓み補正手段32は、第一アーム可動部12の基端から第二アーム可動部13の先端に至る長さlxを、既に算出された第一アーム可動部12のアーム長l2と、第二アーム可動部13のアーム長I3から、余弦定理によって次の数式のように算出する。
【0070】
【数11】
【0071】
上記長さlxが算出されると、第一アーム可動部12と長さlxとの成す角度θuの余弦(Cosθu)は、第一アーム可動部12の基端から第二アーム可動部13の先端に至る長さlxは、既に算出された第一アーム可動部12のアーム長l2と、第二アーム可動部13のアーム長I3から、余弦定理によって次の数式のように算出できる。
【0072】
【数12】
【0073】
また角度θuは、Cosθuの逆数を取って数13のように算出できる。
【0074】
【数13】
【0075】
但し、上記数13における右辺の180/πは、角度θuの単位をラジアンではなく度(°)として算出するためのものである。続いてアーム撓み補正手段32は、アーム基部11と長さlxとの成す角度θzを算出する。これは、三角形の内角と外角との関係から、次の数式にて求めることができる。
【0076】
【数14】
【0077】
角度θzが求められると、アーム撓み補正手段32は、第一可動部12のアーム長l1と、上記数12で算出した長さlxと、上記数14で算出した角度θzから、アーム5の真の直線長さLtを余弦定理によって、次の数式にて算出する。
【0078】
【数15】
【0079】
また上記数15により、アーム5の真の直線長さLtを算出すると、アーム撓み補正手段32は、アーム5の真の直線長さLtとアーム基部11との成す角度θwの余弦(Cosθw)を、余弦定理によって次の数式のように算出する。
【0080】
【数16】
【0081】
また角度θwは、Cosθwの逆数を取って数17のように算出できる。
【0082】
【数17】
【0083】
但し、上記数17における右辺の180/πは、角度θwの単位をラジアンではなく度(°)として算出するためのものである。これに基づきアーム撓み補正手段32は、アーム5の真の起伏角度θtを、次の数式にて算出する。
【0084】
【数18】
【0085】
このようなアーム撓み補正手段32を備えたことにより、施工開始時や施工中にアーム5が撓んだとしても、エンコーダ25およびアーム傾斜計29,31を設け、場合によっては車両傾斜計30を付加するだけで、アーム5の枢着部6から先端までの真の直線長さLtと、この真の直線長さLtと水平面とのなす角度である真の起伏角度θを正しく算出することができる。したがって、この結果を基にして杭深度算出手段42で正確な杭深度を求めたり、あるいは目標アーム長さ算出手段41で正確な目標アーム長さLnを求めることができるようになる。
【0086】
なお、アーム5の伸縮段数が実施例以外の場合であっても、上述の余弦定理を利用して真の直線長さLtと真の起伏角度θtを算出する手順は同じである。
【0087】
以上のように本実施例では、基端にある枢着部6を中心に起伏可能に回動し、且つ伸縮自在なアーム5の先端に取付けられる杭すなわち杭芯15の鉛直度を管理する杭鉛直度管理装置において、アーム5に沿った枢着部6から先端までの撓み長さLを検出するアーム長検出手段としてのエンコーダ25と、アーム5の基端の起伏角度θ2’を検出する第一アーム角度検出手段としてのアーム傾斜計29と、アーム5の先端の起伏角度θ3’を検出する第二アーム角度検出手段としてのアーム傾斜計31と、アーム傾斜計29,31およびエンコーダ25からの検出出力に基づき、アーム5の枢着部6から先端までの真の直線長さLtを算出すると共に、この直線長さLtと水平面との間のなす角度である真の起伏角度θtを算出するアーム撓み補正手段32と、杭芯15が貫入位置Pの垂直線上に位置するときの枢着部6から杭芯15に至る水平面に沿った距離(ロッド距離L2)と、アーム撓み補正手段32で算出された真の起伏角度θtとから、杭芯15が貫入位置Pの垂直線上に位置するときのアーム5の枢着部6から先端までの目標直線長さ(目標アーム長さLn)を算出する制御手段としての演算処理部35とを備えている。
【0088】
この場合、杭芯15を打設する施工作業中は、杭芯15を軟弱地盤1に押し込む力と杭芯15が軟弱地盤1から受ける反発力とによって、アーム5自身に撓みが生じ、この撓んだ状態のアーム5の撓み長さLがエンコーダ25で検出される。それと共にアーム5が撓むと、アーム傾斜計29,31でそれぞれ検出される起伏角度θ2’θ3’間に差異を生じ、この差異とアーム5の撓み長さLとを利用して、アーム撓み補正手段32はアーム5の枢着部6から先端までの真の直線長さLtと、この直線長さLtと水平面との間をなす角度である真の起伏角度θtを算出する。そして、このようにして得られた真の起伏角度θtと、予め分っている杭芯15が貫入位置Pの垂直線上に位置するときの枢着部6から杭芯15に至る水平面に沿ったロッド距離L2とによって、制御手段である演算処理部35がアーム5の枢着部6から先端までの目標アーム長さLnを算出する。
【0089】
したがって、アーム撓み補正手段32が算出する真の直線長さLtが、目標直線長さLnに一致するように、オペレータがアーム5を出し入れすれば、施工中にアーム5が撓んだ場合でも、杭芯15の鉛直度を保った状態で貫入位置Pに打ち込むことが可能になり、オペレータの技量に左右されることなく、正しく杭作業を行なうことができる。
【0090】
また本実施例では、アーム5を保持する保持体すなわち建柱車2の傾きを検出する傾斜検出手段としての車両傾斜計30をさらに備え、アーム撓み補正手段32は、アーム傾斜計29,31からの各検出出力(θ2’,θ3’)から、杭芯15が地面すなわち軟弱地盤1に押し込まれるときの建柱車2の浮き上がり角度(θ4Δ)を差し引いた値を基に、真の直線長さLtや真の起伏角度θtを算出している。
【0091】
この場合、杭芯15が軟弱地盤Pに押し込まれるときの建柱車2の浮き上がり角度θ4Δを車両傾斜計30からの検出出力で得ることができるので、アーム傾斜計29,31で検出されるアーム5の基端や先端の各起伏角度θ2’,θ3’から浮き上がり角度θ4Δを差し引いて、真の直線長さLtや真の起伏角度θtを算出することができる。したがって、建柱車2の浮き上がりや縦揺れ角をも考慮したアームの目標直線長さ(目標アーム長さLn)の算出が可能となり、杭芯15の鉛直度をより正しく保つことができる。
【0092】
さらにこの場合は、杭芯15を貫入する直前の開始位置までアーム5を回動して引上げたときに、この杭芯15が貫入位置P上で鉛直となるアーム5の開始長さL0と開始起伏角度θ0とを算出し、このアーム5の開始長さL0および開始起伏角度θ0と、現在のアーム5の直線長さL1と、現在のアーム5の起伏角度θとから、余弦定理を利用して杭芯15の深度Hを算出する杭深度算出手段42を備えてもよい。
【0093】
こうすることで、杭深度算出手段42は、杭芯15を貫入する直前の開始位置におけるアーム5の開始長さL0と開始起伏角度θ0とを基にして、現在のアーム5の長さL1と起伏角度θから、余弦定理を利用して深度Hを算出することができる。したがって、杭深度算出手段42が算出した深度Hにより、オペレータは作業中においてアーム5の目標長さLnのみならず、地盤1に貫入した杭芯15の深さを直接同時に知ることができる。
【0094】
さらに本実施例における杭深度算出手段42は、現在のアーム5の長さL1が、演算処理部35で算出したアーム5の目標長さLnの許容範囲内にある場合にのみ、杭芯15の深度Hを算出するように構成している。
【0095】
こうすると杭深度算出手段42は、現在のアーム5の長さL1が、アーム5の目標長さLnの許容範囲内にある時にだけ、算出した杭芯15の深度Hを外部に出力する。したがって、杭深度Hのデータを管理する側では、杭芯15が鉛直でない状態の誤ったデータを取り込む虞れがなく、正しい杭深度Hのデータ管理を行なうことが可能になる。
【0096】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。本発明における杭とは、地盤の貫入位置Pに貫入する棒状体のことをいうもので、例えば鋼管杭でもよく、さらにその目的は本実施例のような地盤改良にのみ限定されるものではない。
【0097】
【発明の効果】
本発明の請求項1における杭鉛直度管理装置によれば、施工中にアームが撓んだ場合でも、オペレータの技量に左右されることなく、正しく杭作業を行なうことができる。
【0098】
本発明の請求項2における杭鉛直度管理装置によれば、保持体の浮き上がりや縦揺れ角をも考慮したアームの目標直線長さの算出を行なうことで、杭の鉛直度をより正しく保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示す杭鉛直度管理装置の全体構成を表わした概略図である。
【図2】同上要部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】同上打設時における杭鉛直度管理装置の全体構成を表わした概略図である。
【図4】同上打設時における杭鉛直度管理装置のアーム5の態様を拡大して表わした概略説明図である。
【図5】同上杭芯の基準姿勢を確定した状態を示す表示器の正面図である。
【図6】同上施工最終姿勢を記憶するときの状態を示す表示器の正面図である。
【図7】同上杭芯を所定の高さまで引上げたときの状態を示す表示器の正面図である。
【図8】同上杭入施工作業の開始時における状態を示す表示器の正面図である。
【図9】同上アームの長さを正しく調節する前の状態を示す表示器の正面図である。
【図10】同上アームの長さを正しく調節したときの状態を示す表示器の正面図である。
【図11】同上パラメータ設定画面を表示したときの状態を示す表示器の正面図である。
【図12】同上杭芯を押し込むまでの動作手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2 建柱車(保持体)
5 アーム
6 枢着部
15 杭芯(杭)
25 エンコーダ(アーム長検出手段)
29 アーム傾斜計(第一アーム角度検出手段)
30 車両傾斜計(傾斜検出手段)
31 アーム傾斜計(第二アーム角度検出手段)
32 アーム撓み補正手段
35 演算処理部(制御手段)
Claims (2)
- 基端にある枢着部を中心に起伏可能に回動し、且つ伸縮自在なアームの先端に取付けられる杭の鉛直度を管理する杭鉛直度管理装置において、
前記アームに沿った枢着部から先端までの撓み長さを検出するアーム長検出手段と、
前記アーム基端の起伏角度を検出する第一アーム角度検出手段と、
前記アーム先端の起伏角度を検出する第二アーム角度検出手段と、
前記アーム長検出手段,第一アーム角度検出手段および第二アーム角度検出手段からの検出出力に基づき、前記アームの枢着部から先端までの真の直線長さを算出すると共に、この直線と水平面との間の真の起伏角度を算出するアーム撓み補正手段と、
前記杭が貫入位置の垂直線上に位置するときの前記枢着部から前記杭に至る水平面に沿った距離と前記真の起伏角度とから、前記杭が貫入位置の垂直線上に位置する前記アームの枢着部から先端までの目標直線長さを算出する制御手段とを備えたことを特徴とする杭鉛直度管理装置。 - 前記アームを保持する保持体の傾きを検出する傾斜検出手段をさらに備え、前記アーム撓み補正手段は、前記第一アーム角度検出手段および第二アーム角度検出手段からの各検出出力から、前記杭が地面に押し込まれるときの前記保持体の浮き上がり角度を差し引いて、前記真の直線長さや真の起伏角度を算出するものであることを特徴とする請求項1記載の杭鉛直度管理装置。
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WO2023210133A1 (ja) * | 2022-04-28 | 2023-11-02 | 株式会社小松製作所 | 取付位置決定方法、作業機、作業機械および姿勢検出センサ |
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2002
- 2002-11-14 JP JP2002330967A patent/JP4043025B2/ja not_active Expired - Lifetime
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