JP2004143515A - Rolling/sliding contact component, and its production method - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は転がり、すべり接触部品およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、転がり軸受部品、ローラカムフォロワなどの転がり接触部品、またはすべり軸受部品、自動車エンジン用ロッカアームのローラ支持軸、自動車エンジン用カムリフタ、一方向クラッチの内外両輪のうちのカム面が形成される部品などのすべり接触部品に関する。
【0002】
なお、この明細書において、「転がり接触」という語には、純然たる転がり接触だけではなく、すべり接触を伴う転がり接触を含むものとする。
【0003】
【従来の技術】
たとえば、異物が混入した潤滑油を用いて使用される転がり軸受の軌道輪および転動体においては、転がり軸受の長寿命化を図るために、軌道輪の軌道面および転動体の転動面の表面硬さを増大させること、軌道輪の軌道面および転動体の転動面における表層部に所定量の微細球状炭化物を分散して析出させること、ならびに軌道輪の軌道面および転動体の転動面の表層部に所定の圧縮残留応力を付与することが要求される。ここで、表面硬さの増大は、異物による圧痕の生成を防止することを目的とするものであり、微細球状炭化物の分散析出は、耐摩耗性の向上や、鋼中に炭化物等の硬い第2相を析出させて材料を強化する分散強化や、降伏強さおよび変形抵抗の増大や、靭性の向上を目的とするものであり、所定の圧縮残留応力の付与は、異物により発生する亀裂の進展の抑制を目的とするものである。
そして、本出願人は、先に、JIS SUJ2などの高炭素クロム軸受鋼より所定の形状に形成された加工済み軸受部品素材を、カーボンポテンシャルが1.2%以上である浸炭雰囲気中において840〜870℃で3時間以上加熱することにより浸炭処理を施した後急冷し、これにより表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の全炭素量を1.0〜1.6wt%とするとともに、前記表層部のマトリックス中の固溶炭素量を0.6〜1.0wt%とし、前記表層部に球状炭化物を析出させて球状炭化物の量を面積率で5〜15%でかつその粒径を3μm以下とすることを特徴とする転がり軸受部品の製造方法と、軸受鋼より所定の形状に形成された加工済み軸受部品素材を、カーボンポテンシャルが0.9〜1.1%の雰囲気中において930〜970℃で1時間以上加熱することにより既存の炭化物をマトリックス中に溶け込ませる処理を施した後急冷し、ついでカーボンポテンシャルが1.2%以上の雰囲気中において840〜870℃で3時間以上加熱することにより浸炭処理を施した後急冷し、これにより表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の全炭素量を1.0〜1.6wt%とするとともに、前記表層部のマトリックス中の固溶炭素量を0.6〜1.0wt%とし、さらに前記表層部に球状炭化物を析出させて球状炭化物の量を面積率で10〜20%でかつその粒径を2μm以下とすることを特徴とする転がり軸受部品の製造方法とを提案している(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特願2002−158887号(請求項5、請求項6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者等が、異物が混入した潤滑油を用いて使用される転がり軸受の一層の長寿命化を図る目的で研究を重ねた結果、次の知見を得た。
【0006】
すなわち、特許文献1記載の2つの製造方法は、主として、析出した球状炭化物を微細化して結晶粒内の強度を増大させることにより長寿命化を図っているのであるが、転がり軸受の転がり疲労や圧壊による破損起点においては、しばしば結晶粒界で破壊が生じていることが判明した。この結晶粒界での破壊は、浸炭の際にオーステナイト粒界に沿って炭化物が偏析し、結晶粒界強度が結晶粒内強度に対して相対的に弱くなっていることが原因であると考えられる。
【0007】
この発明は、上述した知見に基づいてなされたものであって、異物が混入した潤滑油を用いた際の一層の長寿命化を図ることができる転がり、すべり接触部品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段と発明の効果】
請求項1の発明による転がり、すべり接触部品は、鋼よりなり、浸炭処理が施されて、表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号が11以上となされていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明において、旧オーステナイト結晶粒の粒度番号は、JIS G0551に記載されている方法に基づき、腐食液として、たとえばAGSエッチング液(山本化学工具研究社製)を用いることによって知ることができる。
【0010】
請求項1の発明によれば、表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号が11以上となされているので、転がり、すべり接触部品の結晶粒内および結晶粒界の双方の強度を増大させることができる。すなわち、鋼を含めた多結晶体の降伏応力σyと結晶粒度dとの関係は、σy=σ0+Kyd−1/2となる。但し、σ0、Ky:材料によって異なる係数である。したがって、結晶粒度が小さくなれば、結晶粒内および結晶粒界の強度(≒転がり疲労強度)が向上する。
【0011】
請求項1の発明の転がり、すべり接触部品において、表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の球状炭化物の量が面積率で5〜15%でかつその粒径が3μm以下であることが好ましい。この場合、炭化物の面積率が通常より高く、かつ球状炭化物の粒径が小さいので、分散、析出硬化により、転がり、すべり接触部品の結晶粒内が強化される。
【0012】
また、請求項1の発明の転がり、すべり接触部品において、表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の残留オーステナイト量が20〜40vol%であることが好ましい。この場合、潤滑油中に混入した異物により発生する表層部の圧縮応力を緩和することができるとともに、亀裂の進展を抑制することができ、その結果転がり、すべり接触部品を用いた製品の一層の長寿命化を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明による転がり、すべり接触部品の製造方法は、鋼より所定の形状に形成された加工済み転がり、すべり接触部品素材を、カーボンポテンシャルが0.9〜1.1%の雰囲気中において930〜970℃で1.0時間以上加熱することにより既存の炭化物をマトリックス中に溶け込ませる処理を施し(第1処理)、ついで830〜900℃に降温するとともに、雰囲気中のカーボンポテンシャルを0.6〜0.8%として0.5時間以上加熱した後急冷し(第2処理)、ついでカーボンポテンシャルが1.1〜1.6%の浸炭雰囲気中において830〜870℃で加熱することにより浸炭処理を施した後急冷し(第3処理)、これにより表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上とすることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明の熱処理条件について説明する。
【0015】
第1処理
この処理は、粗大炭化物を全て消失させるものである。この処理における雰囲気中のカーボンポテンシャルを0.9〜1.1%に限定したのは、転がり、すべり接触部品素材に対して浸炭および脱炭を起こさせないためである。1.1%を越えると炭素含有量が1wt%程度である軸受鋼(例えば高炭素クロム軸受鋼)に対して浸炭が起こり、0.9%未満であると脱炭が起こる。
【0016】
また、この処理における加熱温度を930〜970℃に限定したのは、930℃未満であると球状焼鈍後存在している第2相としての炭化物のマトリックス中への固溶が不十分であり、970℃を越えると焼割れを起こしたり、結晶粒が粗大化したりする可能性があるからである。
【0017】
さらに、この処理における加熱時間を1.0時間以上に限定したのは、1.0時間未満であると球状焼鈍後存在している第2相としての炭化物のマトリックス中への固溶が不十分になるからである。
【0018】
第2処理
この処理は、後工程である浸炭処理の際に析出する炭化物が結晶粒界に偏析することを防止し、これにより浸炭前組織の結晶粒界に極微細炭化物が析出しないようにするものである。この処理における雰囲気中のカーボンポテンシャルを0.6〜0.8%に限定したのは、転がり、すべり接触部品素材に対して浸炭および脱炭を起こさせないためである。
【0019】
また、この処理における加熱温度を830〜900℃に限定したのは、830℃未満であると結晶粒界での炭化物の析出量が過剰になり、900℃を越えると結晶粒微細化の効果がなく、旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上にすることができないからである。
【0020】
さらに、この処理における加熱時間を0.5時間以上に限定したのは、0.5時間未満であると後工程である浸炭処理で析出する炭化物の結晶粒界への偏析を防止することができず、その結果結晶粒界への極微細炭化物の析出を抑制することができないからである。
【0021】
第3処理
この処理は、結晶粒内に微細球状炭化物を析出させるものである。この処理における雰囲気中のカーボンポテンシャルを1.1〜1.6%に限定したのは、1.1%未満では浸炭を行うことができず、1.6%を越えると大量の煤が発生するからである。
【0022】
また、この処理における加熱温度を830〜870℃に限定したのは、830℃未満では浸炭を行うことができず、870℃を越えると粗大炭化物が発生するからである。
【0023】
なお、この処理における加熱時間は1.0時間以上が好ましい。表面から深さ0.5mm程度まで浸炭するためには、これ以上の時間を要するからである。
【0024】
請求項2の発明によれば、上記第2処理により、特に第1処理の加熱温度である930〜970℃から830〜900℃に降温することにより旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上にすることができる。したがって、結晶粒内および結晶粒界の双方の強度を増大させることが可能となり、異物が混入した潤滑油を用いた際の一層の長寿命化を図ることができる。
【0025】
請求項3の発明による転がり、すべり接触部品の製造方法は、鋼より所定の形状に形成された加工済み転がり、すべり接触部品素材を、カーボンポテンシャルが0.8〜1.0%の雰囲気中において870〜925℃で1.0時間以上加熱することにより既存の炭化物をマトリックス中に溶け込ませる処理を施した後急冷し(第1処理)、ついでカーボンポテンシャルが1.1〜1.6%の浸炭雰囲気中において830〜870℃で加熱することにより浸炭処理を施した後急冷し(第2処理)、これにより表面から最大せん断応力が作用する深さまでの範囲の表層部の旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上とすることを特徴とするものである。
【0026】
請求項3の発明の熱処理条件について説明する。
【0027】
第1処理
この処理は、粗大炭化物をほぼ全て消失させるものである。この処理における雰囲気中のカーボンポテンシャルを0.8〜1.0%に限定したのは、転がり、すべり接触部品素材に対して浸炭および脱炭を起こさせないためである。
【0028】
また、この処理における加熱温度を870〜925℃に限定したのは、870℃未満であると結晶粒界での炭化物の析出量が過剰になり、925℃を越えると結晶粒が粗大化し、旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上にすることができないからである。
【0029】
さらに、この処理における加熱時間を1.0時間以上に限定したのは、1.0時間未満であると炭化物のマトリックス中への固溶が不十分になるからである。
【0030】
第2処理
この処理は、結晶粒内に微細球状炭化物を析出させるものである。この処理における雰囲気中のカーボンポテンシャルを1.1〜1.6%に限定したのは、1.1%未満では浸炭を行うことができず、1.6%を越えると大量の煤が発生するからである。
【0031】
また、この処理における加熱温度を830〜870℃に限定したのは、830℃未満では浸炭を行うことができず、870℃を越えると粗大炭化物が発生するからである。
【0032】
なお、この処理における加熱時間は1.0時間以上が好ましい。表面から深さ0.5mm程度まで浸炭するためには、これ以上の時間を要するからである。
【0033】
請求項3の発明によれば、上記第1処理により、特に第1処理の加熱温度を925℃以下とすることにより旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上にすることができる。したがって、結晶粒内および結晶粒界の双方の強度を増大させることが可能となり、異物が混入した潤滑油を用いた際の一層の長寿命化を図ることができる。
【0034】
なお、請求項2および3の発明において、最後に焼戻し処理が施される。
【0035】
請求項1〜3の発明において、内部起点剥離の要因となる最大剪断応力が作用する表面からの深さは、接触条件によって異なるが、多くの転がり、すべり接触部品おいて0.5mm程度までである。そして、この範囲内において、旧オーステナイト結晶粒の粒度番号を11以上とすることにより、結晶粒内および結晶粒界の双方の強度を向上させ、その結果所定の目的が達成されるからである。
【0036】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0037】
実施例1〜2および比較例1〜6
表1に示す2種の鋼を用意し、これらの鋼を用いて型番6206の転がり軸受に用いられる8種類の内輪素材を形成した。
【0038】
【表1】
【0039】
ついで、これらの内輪素材に、図1〜図8に示す熱処理条件で、熱処理を施して内輪(実施例1〜2および比較例1〜6)を製造した。
【0040】
図1に示す熱処理条件1は、カーボンポテンシャル1.1%の雰囲気中において950℃で2時間加熱し、ついで860℃に降温するとともに雰囲気中のカーボンポテンシャルを0.7%として0.5時間加熱した後80℃に油冷し、ついでカーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において850℃で3.5時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0041】
図2に示す熱処理条件2は、カーボンポテンシャル0.9%の雰囲気中において900℃で2時間加熱した後80℃に油冷し、ついでカーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において850℃で3.5時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0042】
図3に示す熱処理条件3は、カーボンポテンシャル0.6%の雰囲気中において830℃で0.7時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0043】
図4に示す熱処理条件4は、カーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において850℃で3.5時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0044】
図5に示す熱処理条件5は、カーボンポテンシャル1.1%の雰囲気中において950℃で2時間加熱した後80℃に油冷し、ついでカーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において850℃で3.5時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0045】
図6に示す熱処理条件6は、カーボンポテンシャル0.8%の雰囲気中において930℃で5時間加熱し、ついで850℃に降温してカーボンポテンシャル0.8%の雰囲気中において0.7時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0046】
図7に示す熱処理条件7は、カーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において930℃で5時間加熱し、ついで850℃に降温するとともに雰囲気中のカーボンポテンシャルを1.1%として0.7時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0047】
図8に示す熱処理条件8は、カーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において930℃で5時間加熱した後80℃に油冷し、ついでカーボンポテンシャル1.3%の雰囲気中において850℃で3.5時間加熱した後80℃に油冷するものである。
【0048】
なお、上述した全ての熱処理においては、図示は省略したが、最後に160℃で2時間加熱する焼戻し処理が施される。
【0049】
実施例1〜2および比較例1〜6の内輪の鋼種、熱処理条件、軌道面の表面硬さ(HRC)、軌道最表面に析出した球状炭化物の量(面積率)、軌道最表面に析出した球状炭化物の最大粒径、表面から深さ50μmの位置での残留オーステナイト量(γR量)、表面から深さ50μmの位置での圧縮残留応力、および旧オーステナイト結晶粒のJIS G0551に基づく、および腐食液としてAGSエッチング液(山本化学工具研究社製)を用いることにより測定した粒度番号は、表2に示す通りである。
【0050】
【表2】
【0051】
評価試験1
実施例1〜2および比較例1〜6の内輪を、JIS SUJ2からなりかつ通常の浸炭窒化処理が施されてなる外輪および玉と組み合わせて型番6206C3の玉軸受を組立てた。そして、これらの玉軸受を使用し、異物が混入した潤滑油を用いて寿命試験を行った。試験条件は表3に示す通りである。
【0052】
【表3】
【0053】
なお、表3に示す試験機は、同時に2個の玉軸受の試験を行うことが可能であり、表3中のラジアル荷重は、1つの玉軸受のラジアル荷重を意味する。
【0054】
寿命試験の結果も表3に示す。
【0055】
表3中のL10寿命は、試験機に同じ内輪を備えた玉軸受を2個セットし、いずれかの玉軸受の内輪が破損するまでの時間を計測するという試験を5回繰り返し、破損までの時間の平均をとったものである。
【0056】
以上の結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜2は、軸受鋼の中でも最も大量生産されるJIS SUJ2を用いているので、特に材料コストが安くなる。さらに、これを用いた軸受の長寿命化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱処理条件1を示す線図である。
【図2】熱処理条件2を示す線図である。
【図3】熱処理条件3を示す線図である。
【図4】熱処理条件4を示す線図である。
【図5】熱処理条件5を示す線図である。
【図6】熱処理条件6を示す線図である。
【図7】熱処理条件7を示す線図である。
【図8】熱処理条件8を示す線図である。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
BACKGROUND OF THE INVENTION 1. Field of the Invention The present invention relates to a rolling and sliding contact component and a method of manufacturing the same, and more particularly, a rolling bearing component, a rolling contact component such as a roller cam follower, or a sliding bearing component, a roller support shaft of a rocker arm for an automobile engine, a cam lifter for an automobile engine, and the like. The present invention relates to a sliding contact part such as a part of the inner and outer wheels of a directional clutch on which a cam surface is formed.
[0002]
In this specification, the term "rolling contact" includes not only pure rolling contact but also rolling contact accompanied by sliding contact.
[0003]
[Prior art]
For example, in the case of a raceway and a rolling element of a rolling bearing used by using lubricating oil mixed with foreign matter, in order to extend the life of the rolling bearing, the surface of the raceway surface of the raceway and the rolling surface of the rolling element are required. Increasing the hardness, dispersing and depositing a predetermined amount of fine spherical carbides on the surface layer of the raceway surface of the race and the rolling surface of the rolling element, and the raceway surface of the race and the rolling surface of the rolling element It is required that a predetermined compressive residual stress be applied to the surface layer portion. Here, the increase in surface hardness is intended to prevent the formation of indentations due to foreign matter, and the dispersed precipitation of fine spherical carbides improves the wear resistance and harden the carbides such as carbides in steel. The purpose is to strengthen the material by precipitating two phases, to increase the yield strength and the deformation resistance, and to improve the toughness. The purpose is to control progress.
The present applicant has previously prepared a processed bearing component material formed into a predetermined shape from a high carbon chromium bearing steel such as JIS SUJ2 in a carburizing atmosphere having a carbon potential of 1.2% or more in a carburizing atmosphere. After being carburized by heating at 870 ° C. for 3 hours or more, it is rapidly cooled, and thereby the total carbon content of the surface layer from the surface to the depth where the maximum shear stress acts is 1.0 to 1.6 wt%. At the same time, the amount of solute carbon in the matrix of the surface layer portion is set to 0.6 to 1.0 wt%, and spherical carbide is precipitated on the surface layer portion, and the amount of the spherical carbide is 5 to 15% in area ratio and the A method for manufacturing a rolling bearing component, characterized in that the particle size is 3 μm or less, and a method for manufacturing a processed bearing component material formed into a predetermined shape from bearing steel, using an atmosphere having a carbon potential of 0.9 to 1.1%. An existing carbide is dissolved in the matrix by heating at 930 to 970 ° C. for 1 hour or more in the air, then quenched, and then at 840 to 870 ° C. in an atmosphere having a carbon potential of 1.2% or more. After being carburized by heating for 3 hours or more, it is quenched, and thereby the total carbon content of the surface layer in the range from the surface to the depth where the maximum shear stress acts is 1.0 to 1.6 wt%, The amount of solute carbon in the matrix of the surface layer portion is set to 0.6 to 1.0 wt%, and the spherical carbide is precipitated on the surface layer portion so that the amount of the spherical carbide is 10 to 20% in area ratio and its particle size. And a method for manufacturing a rolling bearing component characterized in that the diameter is set to 2 μm or less (see Patent Document 1).
[0004]
[Patent Document 1]
Japanese Patent Application No. 2002-158887 (Claims 5 and 6)
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
However, the inventors of the present invention have conducted studies for the purpose of further extending the life of a rolling bearing used by using lubricating oil mixed with foreign matter, and have obtained the following findings.
[0006]
That is, the two manufacturing methods described in Patent Literature 1 mainly extend the life by increasing the strength in the crystal grains by refining the precipitated spherical carbides. It has been found that at the fracture starting point due to crushing, fracture often occurs at the crystal grain boundary. This fracture at the grain boundaries is considered to be due to the fact that carbides segregate along the austenite grain boundaries during carburization and the grain boundary strength is relatively weaker than the intra-grain strength. Can be
[0007]
The present invention has been made based on the above findings, and has as its object to provide a rolling and sliding contact component that can achieve a longer life when lubricating oil mixed with foreign matter is used. I do.
[0008]
Means for Solving the Problems and Effects of the Invention
The rolling / sliding contact part according to the invention of claim 1 is made of steel, is carburized, and has a grain size number of prior austenite crystal grains of 11 or more in a surface layer from the surface to a depth where the maximum shear stress is applied. It is characterized by having been done.
[0009]
In the invention of claim 1, the grain number of the prior austenite crystal grains can be known by using, for example, an AGS etching solution (manufactured by Yamamoto Chemical Tool Research Co., Ltd.) as a corrosive solution based on the method described in JIS G0551. it can.
[0010]
According to the first aspect of the present invention, since the grain size number of the prior austenite crystal grains in the surface layer in the range from the surface to the depth where the maximum shearing stress acts is set to 11 or more, the inside of the crystal grains of the rolling and sliding contact parts is formed. And the strength of both the grain boundaries can be increased. In other words, the relationship between the yield stress sigma y of the polycrystalline body, including steel and grain size d is a σ y = σ 0 + K y d -1/2. Here, σ 0 , K y : coefficients that vary depending on the material. Therefore, when the crystal grain size is reduced, the strength of the crystal grains and the grain boundaries (≒ rolling fatigue strength) is improved.
[0011]
In the rolling and sliding contact component according to the first aspect of the present invention, the amount of the spherical carbide in the surface layer in the range from the surface to the depth where the maximum shear stress acts is 5 to 15% by area ratio and the particle size is 3 µm or less. Preferably, there is. In this case, since the area ratio of the carbide is higher than usual and the particle diameter of the spherical carbide is small, the inside of the crystal grains of the rolling and sliding contact parts is strengthened by dispersion and precipitation hardening.
[0012]
Further, in the rolling and sliding contact component according to the first aspect of the present invention, it is preferable that the amount of retained austenite in the surface layer in the range from the surface to the depth where the maximum shear stress acts is 20 to 40 vol%. In this case, it is possible to alleviate the compressive stress of the surface layer generated by the foreign matter mixed in the lubricating oil, and to suppress the growth of cracks. As a result, the rolling and sliding of the product using the sliding contact part can be further improved. The service life can be extended.
[0013]
The method for manufacturing a rolling and sliding contact component according to the second aspect of the present invention is a method for manufacturing a processed rolling and sliding contact component material formed into a predetermined shape from steel in an atmosphere having a carbon potential of 0.9 to 1.1%. By heating at 930 to 970 ° C. for 1.0 hour or more, a treatment for dissolving the existing carbide in the matrix is performed (first treatment), and then the temperature is lowered to 830 to 900 ° C. and the carbon potential in the atmosphere is reduced to 0. After heating for at least 0.5 hour at 6 to 0.8%, the steel is rapidly cooled (second treatment), and then carburized by heating at 830 to 870 ° C. in a carburizing atmosphere having a carbon potential of 1.1 to 1.6%. After the treatment, it is quenched (third treatment), whereby the grains of the former austenite grains in the surface layer from the surface to the depth where the maximum shear stress acts are obtained. It is characterized in that a number of 11 or more.
[0014]
The heat treatment conditions according to the second aspect of the present invention will be described.
[0015]
First treatment This treatment is to remove all coarse carbides. The carbon potential in the atmosphere in this treatment is limited to 0.9 to 1.1% in order to prevent rolling and sliding contact parts from carburizing and decarburizing. If it exceeds 1.1%, carburization occurs in bearing steel having a carbon content of about 1 wt% (for example, high carbon chromium bearing steel), and if it is less than 0.9%, decarburization occurs.
[0016]
In addition, the heating temperature in this treatment was limited to 930 to 970 ° C. If the temperature was lower than 930 ° C, the solid solution in the matrix of the carbide as the second phase existing after the spherical annealing was insufficient, If the temperature exceeds 970 ° C., burning cracks may occur or crystal grains may become coarse.
[0017]
Furthermore, the reason why the heating time in this treatment is limited to 1.0 hour or more is that if it is less than 1.0 hour, the solid solution in the matrix of the carbide as the second phase existing after the spherical annealing is insufficient. Because it becomes.
[0018]
2nd treatment This treatment prevents carbides precipitated during the carburizing treatment in the subsequent step from segregating at the crystal grain boundaries, whereby ultra-fine carbides precipitate at the crystal grain boundaries of the structure before carburizing. That is not to do. The reason why the carbon potential in the atmosphere in this treatment is limited to 0.6 to 0.8% is to prevent the rolling and the sliding contact component material from carburizing and decarburizing.
[0019]
In addition, the reason why the heating temperature in this treatment is limited to 830 to 900 ° C. is that if it is lower than 830 ° C., the amount of carbide precipitated at the crystal grain boundary becomes excessive, and if it exceeds 900 ° C., the effect of grain refinement is reduced. This is because the grain size number of prior austenite crystal grains cannot be made 11 or more.
[0020]
Furthermore, the reason why the heating time in this treatment is limited to 0.5 hour or more is that if the heating time is less than 0.5 hour, segregation to the crystal grain boundaries of carbides precipitated in the carburizing treatment in the subsequent step can be prevented. This is because, as a result, the precipitation of ultrafine carbides at the crystal grain boundaries cannot be suppressed.
[0021]
Third treatment This treatment is to precipitate fine spherical carbides in the crystal grains. The reason why the carbon potential in the atmosphere in this treatment is limited to 1.1 to 1.6% is that if less than 1.1%, carburizing cannot be performed, and if it exceeds 1.6%, a large amount of soot is generated. Because.
[0022]
The reason why the heating temperature in this treatment is limited to 830 to 870 ° C. is that carburization cannot be carried out at a temperature lower than 830 ° C., and coarse carbides are generated at a temperature exceeding 870 ° C.
[0023]
Note that the heating time in this treatment is preferably 1.0 hour or more. This is because it takes more time to carburize the surface to a depth of about 0.5 mm.
[0024]
According to the invention of claim 2, the grain size number of the prior austenite crystal grains is made 11 or more by lowering the temperature from 930 to 970 ° C., which is the heating temperature of the first process, to 830 to 900 ° C. by the second process. be able to. Therefore, it is possible to increase the strength of both the inside of the crystal grain and the crystal grain boundary, and it is possible to further prolong the service life when using the lubricating oil mixed with the foreign matter.
[0025]
The method for manufacturing a rolling and sliding contact part according to the invention of claim 3 is a method for rolling a rolling and sliding contact part material formed into a predetermined shape from steel in an atmosphere having a carbon potential of 0.8 to 1.0%. Heat treatment at 870 to 925 ° C. for 1.0 hour or more gives a treatment to dissolve the existing carbide into the matrix, then quenches (first treatment), and then carburizes with a carbon potential of 1.1 to 1.6%. Carburizing by heating at 830 to 870 ° C. in an atmosphere, followed by rapid cooling (second treatment), whereby the grain size of the prior austenite crystal grains in the surface layer from the surface to the depth where the maximum shear stress acts The number is set to 11 or more.
[0026]
The heat treatment conditions according to the third aspect of the present invention will be described.
[0027]
First treatment This treatment is to remove almost all the coarse carbides. The carbon potential in the atmosphere in this treatment is limited to 0.8% to 1.0% in order to prevent rolling and sliding contact parts from carburizing and decarburizing.
[0028]
The reason why the heating temperature in this treatment is limited to 870 to 925 ° C. is that if it is lower than 870 ° C., the amount of carbide precipitated at the crystal grain boundary becomes excessive, and if it exceeds 925 ° C., the crystal grains become coarse, This is because the grain size number of austenite crystal grains cannot be 11 or more.
[0029]
Furthermore, the reason why the heating time in this treatment is limited to 1.0 hour or more is that if the heating time is less than 1.0 hour, the solid solution of the carbide in the matrix becomes insufficient.
[0030]
Second treatment This treatment is to precipitate fine spherical carbides in the crystal grains. The reason why the carbon potential in the atmosphere in this treatment is limited to 1.1 to 1.6% is that if less than 1.1%, carburizing cannot be performed, and if it exceeds 1.6%, a large amount of soot is generated. Because.
[0031]
The reason why the heating temperature in this treatment is limited to 830 to 870 ° C. is that carburization cannot be carried out at a temperature lower than 830 ° C., and coarse carbides are generated at a temperature exceeding 870 ° C.
[0032]
Note that the heating time in this treatment is preferably 1.0 hour or more. This is because it takes more time to carburize the surface to a depth of about 0.5 mm.
[0033]
According to the third aspect of the present invention, the grain size number of the prior austenite crystal grains can be made 11 or more by the first treatment, particularly by setting the heating temperature of the first treatment to 925 ° C. or less. Therefore, it is possible to increase the strength of both the inside of the crystal grain and the crystal grain boundary, and it is possible to further prolong the service life when using the lubricating oil mixed with the foreign matter.
[0034]
In the second and third aspects of the invention, a tempering process is performed last.
[0035]
In the invention of claims 1 to 3, the depth from the surface on which the maximum shear stress acting as a factor of internal origin peeling varies depending on the contact conditions, but in many rolling and sliding contact parts, it is up to about 0.5 mm. is there. Then, within this range, by setting the grain number of the prior austenite crystal grain to 11 or more, the strength of both the inside of the crystal grain and the crystal grain boundary is improved, and as a result, a predetermined object is achieved.
[0036]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, examples of the present invention will be described together with comparative examples.
[0037]
Examples 1-2 and Comparative Examples 1-6
Two kinds of steels shown in Table 1 were prepared, and these kinds of steels were used to form eight kinds of inner ring materials used for the rolling bearing of Model No. 6206.
[0038]
[Table 1]
[0039]
Next, these inner ring materials were subjected to heat treatment under the heat treatment conditions shown in FIGS. 1 to 8 to produce inner rings (Examples 1 and 2 and Comparative Examples 1 to 6).
[0040]
In the heat treatment condition 1 shown in FIG. 1, heating is performed at 950 ° C. for 2 hours in an atmosphere having a carbon potential of 1.1%, and then the temperature is lowered to 860 ° C. and heating is performed for 0.5 hour with the carbon potential in the atmosphere being 0.7%. Then, the mixture is oil-cooled to 80 ° C., heated at 850 ° C. for 3.5 hours in an atmosphere having a carbon potential of 1.3%, and then oil-cooled to 80 ° C.
[0041]
Heat treatment conditions 2 shown in FIG. 2 are as follows: heating at 900 ° C. for 2 hours in an atmosphere with a carbon potential of 0.9%, oil cooling to 80 ° C., and then 850 ° C. in an atmosphere with a carbon potential of 1.3%. After heating for 5 hours, the mixture is oil-cooled to 80 ° C.
[0042]
Heat treatment condition 3 shown in FIG. 3 is to heat at 830 ° C. for 0.7 hours in an atmosphere having a carbon potential of 0.6%, and then oil-cool to 80 ° C.
[0043]
Heat treatment condition 4 shown in FIG. 4 is to heat at 850 ° C. for 3.5 hours in an atmosphere having a carbon potential of 1.3% and then oil-cool to 80 ° C.
[0044]
Heat treatment conditions 5 shown in FIG. 5 are as follows: heating at 950 ° C. for 2 hours in an atmosphere having a carbon potential of 1.1%, oil-cooling to 80 ° C., and then heating at 850 ° C. in an atmosphere having a carbon potential of 1.3%. After heating for 5 hours, the mixture is oil-cooled to 80 ° C.
[0045]
In the heat treatment condition 6 shown in FIG. 6, heating was performed at 930 ° C. for 5 hours in an atmosphere having a carbon potential of 0.8%, and then the temperature was lowered to 850 ° C. and heating was performed for 0.7 hours in an atmosphere having a carbon potential of 0.8%. After that, the mixture is oil-cooled to 80 ° C.
[0046]
The heat treatment condition 7 shown in FIG. 7 is as follows. Heating is performed at 930 ° C. for 5 hours in an atmosphere having a carbon potential of 1.3%, then the temperature is lowered to 850 ° C., and heating is performed for 0.7 hour with the carbon potential in the atmosphere being 1.1%. After that, the mixture is oil-cooled to 80 ° C.
[0047]
The heat treatment conditions 8 shown in FIG. 8 are as follows: after heating at 930 ° C. for 5 hours in an atmosphere having a carbon potential of 1.3%, oil-cooling to 80 ° C., and then at 850 ° C. in an atmosphere having a carbon potential of 1.3%. After heating for 5 hours, the mixture is oil-cooled to 80 ° C.
[0048]
In all the heat treatments described above, although not shown, a tempering treatment of heating at 160 ° C. for 2 hours is finally performed.
[0049]
Steel type of inner ring, heat treatment conditions, surface hardness (HRC) of raceway surface, amount of spherical carbide precipitated on the outermost surface of track (area ratio), precipitated on outermost surface of track in Examples 1 and 2 and Comparative Examples 1 to 6 maximum particle size of the globular carbides, the amount of residual austenite at the position of depth 50μm from the surface (gamma R content), compressive residual stress at a depth of 50μm from the surface, and based on the austenite grain of JIS G0551, and The particle size numbers measured by using an AGS etching solution (manufactured by Yamamoto Chemical Tool Research Co., Ltd.) as the etching solution are as shown in Table 2.
[0050]
[Table 2]
[0051]
Evaluation test 1
The inner rings of Examples 1 and 2 and Comparative Examples 1 to 6 were combined with outer rings and balls made of JIS SUJ2 and subjected to ordinary carbonitriding to assemble a ball bearing of model number 6206C3. A life test was performed using these ball bearings and lubricating oil mixed with foreign matter. The test conditions are as shown in Table 3.
[0052]
[Table 3]
[0053]
In addition, the tester shown in Table 3 can perform the test of two ball bearings simultaneously, and the radial load in Table 3 means the radial load of one ball bearing.
[0054]
Table 3 also shows the results of the life test.
[0055]
L 10 life in Table 3, the ball bearing with the same inner ring tester 2 pieces, repeated 5 times that test measures the time until the inner ring of one of the ball bearing is damaged to failure It is the average of the time.
[0056]
As is clear from the above results, in Examples 1 and 2, which are the products of the present invention, JIS SUJ2, which is the most mass-produced among the bearing steels, is used, so that the material cost is particularly low. Further, it is possible to extend the life of the bearing using this.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram showing a heat treatment condition 1.
FIG. 2 is a diagram showing a heat treatment condition 2.
FIG. 3 is a diagram showing a heat treatment condition 3.
FIG. 4 is a diagram showing a heat treatment condition 4.
FIG. 5 is a diagram showing a heat treatment condition 5.
FIG. 6 is a diagram showing a heat treatment condition 6.
FIG. 7 is a diagram showing a heat treatment condition 7.
FIG. 8 is a diagram showing a heat treatment condition 8.
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