【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、品質、性能のバラツキが小さく、信頼性の高められた炭素繊維用アクリル系前駆体繊維、特に機械的特性に優れた炭素繊維を製造するための炭素繊維用アクリル系前駆体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、補強繊維として有用な高強度系や炭素繊維製造用のプリカーサー等に使用可能なアクリル系繊維の高性能化に関しては、これまで多くの技術が開示されている。これらの技術の中で重合体中の異物に起因する欠点を回避するため、重合に供給する原料を濾過する方法が、例えば特開昭61−108716号公報や特開昭61−152812号公報、特開平1−271401号公報等によって提案されている。
【0003】
一方、重合体あるいはその紡糸原液を濾過する方法が、例えば特開昭58−115121号公報、特開昭58−220821号公報、特開昭59−88924号公報によって提案されている。これらは、いずれも目開きの小さなフィルターによる濾過技術であり、特に、特開昭58−220821号公報においては、紡糸原液を5μm以下の開孔径を持つフィルターを用いて濾過することが示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アクリル系重合体中の異物に起因する繊維欠陥の発生や、それに伴う物性低下を極力抑制するために、重合原料や紡糸原液などを濾過することは上述の通り知られている。
【0005】
しかし、かかる従来技術においてはフィルターの開孔径をただ単に小さくするに止まるためフィルターの目詰まりが早く、フィルターの濾圧上昇速度が著しく増大する。換言すれば、フィルター寿命が極めて短く、フィルター交換の都度、製糸工程の停機を行う必要があるという問題点があった。
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、フィルターの長寿命化を図り、かつ製糸工程の稼働時間の延長化を図ることことが可能な炭素繊維用アクリル系前駆体の製造方法を提供することにある。
【0007】
さらに、重合体ないし紡糸原液を清浄化し、異物に起因する製糸工程での糸切れを未然に防止することにより工程の安定化を図ることが可能な炭素繊維用アクリル系前駆体の製造方法を提供することにある。
【0008】
さらには、紡糸原液を清浄化し、異物に起因する物性低下を小さくすることで補強繊維用や炭素繊維製造用アクリル系繊維の高強度化あるいは高強伸度化を図ることが可能な素繊維用アクリル系前駆体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)アクリロニトリル系重合体溶液を紡糸するに先立ち、開孔径の大きなフィルターの開孔径をA(μm)とし、それに続く次のフィルターの開孔径をB(μm)としたときの比B/A(×100)が10〜80%であり、かつ最終フィルターの開孔径が5μm以下であるフィルターを用いて2段以上の多段濾過を行うことを特徴とする炭素繊維用アクリル系前駆体の製造方法。
【0010】
(2)アクリロニトリル系重合体溶液を濾過するにあたり、開孔径の大きなフィルターの濾過通過流量a(dm3 /hr)を基準として、それに続く次のフィルターの濾過通過流量b(dm3 /hr)との比a/bが2以上となるように、開孔径の大きなフィルターで循環濾過した重合体溶液をそれに続く次のフィルターで濾過することを特徴とする前記(1)に記載の炭素繊維用アクリル系前駆体の製造方法。
【0011】
なお、開孔径の大きなフィルターでの循環濾過とは、開孔径の大きなフィルターにおいて、フィルター出側から出た濾液の一部を入り側に戻す濾過をいう(フィルター出側から出た濾液の一部は、次のフィルターの入り側へ入る)。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳しく説明をする。
【0013】
本発明のアクリル系重合体は、少なくと85mol%、好ましくは90mol%以上のアクリロニトリルと、15%以下、好ましくは10mol%以下のアクリロニトリルと共重合性を有する少なくとも1種類以上のモノエチレン性ビニルモノマー成分とのアクリロニトリル系共重合体であることが望ましい。
【0014】
この場合の共重合成分の例としては、カルボキシル基含有ビニル系モノマーのアンモニウム塩、アミン塩またはヒドラン塩からなる群から選ばれた少なくと も1種を挙げることができる。
【0015】
ここで、カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸等を例示することができる。
【0016】
本発明においては、カルボキシル基含有ビニルモノマーのアンモニウム塩、アミン塩またはヒドラン塩を1種類共重合するものであるが、その理由は該共重合成分を共重合することにより、紡糸時の失透化現象を防止して緻密な構造のアクリル繊維を製造することが可能となり、そのような緻密な構造のアクリル繊維を焼成することにより高品位の炭素繊維が得られるからである。
【0017】
カルボン酸のアンモニウム塩、アミン塩またはヒドラン塩の共重合体を得る方法としては、直接これらを共重合してもよいが、カルボン酸の共重合体にアンモニア、ヒドラジンあるいはアミン等を混合してカルボキシル基の末端水素をアンモニア、ヒドラジンまたは第4級アミンイオン等で置換してもよい。
【0018】
さらに、上記カルボキシル基含有ビニル系モノマー等の他に、次のようなビニルモノマーを耐炎化反応促進を目的に第3成分として共重合してもよい。
【0019】
このような耐炎化促進の効果を有するビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の前記カルボキシル基含有ビニル化合物およびそれらのアルキルエステル類、オキシアルキルアクリル化合物などを例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
また、上記共重合モノマーの他に、次のようなビニルモノマーをポリマー溶解性、紡糸時の失透化現象防止効果を目的に第4成分として共重合してもよい。
【0021】
このような紡糸時の失透化現象防止効果を有するビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸の低級アルキルエステル類、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩、酢酸ビニルや塩化ビニルなど例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0022】
もちろん、これらのアクリロニトリル系共重合体は、本発明の目的を達成するのに支障がない限り、単独または混合して用いることができ、さらに他の公知のアクリロニトリル系共重合体と併用してもよい。
【0023】
上記したアクリロニトリル系重合体は、公知の水系懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合、乳化懸濁重合法によって製造することができる。重合は、バッチ法または連続重合法で製造することができる。
【0024】
本発明のアクリロニトリル系重合体の極限粘度は1.0〜4.0の範囲が好ましく、1.2〜1.8がさらに好ましい。
【0025】
極限粘度が1.0未満であると、紡糸工程や焼成工程において単糸同士が融着しやすく、また極限粘度が4.0を越えると紡糸原液の溶液粘度が高くなるとともに、延伸性が低下するので、通常の紡糸方法では製糸が非常に困難になる。
【0026】
アクリロニトリル系重合体から炭素繊維用アクリル系前駆体を製造する際、ジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、硝酸、ロダンソーダ水溶液および塩化亜鉛水溶液等の該重合体の溶媒からなるポリマー溶液を紡糸原液とするが、そのポリマー濃度は18〜22重量が好ましく、19.0〜20.0がさらに好ましい。
【0027】
本発明におけるフィルターには、種々のフィルターを用いることができるが、フィルターを通過する薬品(濾過する物質)に対して耐薬品性であることが重要であることはいうまでもない。
【0028】
例として、不織布フィルター、膜型フィルター、中空糸型フィルターなどを挙げることができる。また、フィルターを構成する物質としては、ガラス繊維、焼結金属、ポリプロピレン、ポリテトラクロロエチレン等が好適である。
【0029】
本発明において、アクリロニトリル系重合体溶液は、90Wt%以上のアクリロニトリルを含有するものであることが好ましい。
【0030】
本発明の実施に当たって、90wt%以上のアクリロニトリルを含有するアクリロニトリル系重合体溶液を濾過する際には、まず2段以上の多段フィルターによる濾過を行う。
【0031】
この時、開孔径の大きなフィルターの開孔径をA(μm)とし、それに続く次のフィルターの開孔径をB(μm)としたとき、これらの比B/A(×100)が10〜80%であり、かつ最終フィルターは開孔径が5μm以下のフィルターを用いることが重要である。基準としたフィルターの開孔径Aと後段のフィルターの開孔径Bとの比B/Aが80%を越えると前段と後段のフィルターとの開孔径差が小さくなり過ぎるために濾過段数が増大し、効率のよい異物の捕集ができなくなり、且つ段数がアップしたことにより設備イニシャルコストが大幅に増大する。
【0032】
また、前記開孔径比B/Aが10%未満では、前段と後段のフィルターの開孔径差が大きくなり過ぎるために不純物が各フィルターにうまく分配されず、フィルターの寿命が極端に短くなる。
【0033】
このような観点から前段と後段のフィルターの開孔径比が10〜80%でかつ最終フィルターの開孔径が5μm以下のものを用いた2〜10段の多段濾過が望ましい。
【0034】
本発明においては、開孔径の大きなフィルターと、それに続く次のフィルターを少なくとも有するものであり、それに続くフィルターは最終フィルターを兼ねることもある。
【0035】
ここでいうフィルターの開孔径とは、炭素粒子、石英粒子、球形粒子などをふるい分けしたとき、95%以上の濾過精度で捕集できる開孔径を意味する。
【0036】
たとえば、開孔径が5μmとは、原液中に5μmにふるい分けした粒子を添加し、一定圧力、温度下で濾過した際に下記式で表される捕集効率ηが95%以上であるフィルターのことである。
【0037】
捕集効率η(%)=((λ0−λ1)/λ0 )×100
λ0 :原液中の粒径(X=5μm)の個数
λ1 :濾液中の粒径(X=5μm)の個数
前記アクリロニトリル系重合体溶液を濾過する際、最小開孔径を有するフィルターを紡糸口金直近に設置し濾過することが望ましい。
【0038】
この紡糸原液は一般に粘度が高く、このため最小開孔径を有するフィルターの開孔径は5μm以下、好ましくは1〜5μm程度のものが好適である。
【0039】
なお、開孔径の大きなフィルターの開孔径Aは5〜20μmであることが好ましく、それに続く次のフィルターの開孔径(最終フィルターを含む)Bは、1〜16μmであることが好ましい。
【0040】
また、アクリロニトリル系重合体溶液を濾過するにあたり、開孔径の大きなフィルターの濾過通過流量a(dm3 /hr)を基準として、それに続く次のフィルターの濾過通過流量b(dm3 /hr)との比b/aが2以上となるように、開孔径の大きなフィルターで循環濾過した重合体溶液をそれに続く次のフィルターで濾過することが重要である。比b/aが2未満であると濾過回数アップによる異物捕集効果が得られないだけでなく、濾過面積減少により濾過段数が増大し、さらに悪化すると開孔径の小さなフィルターの濾過寿命が短くなる。
【0041】
濾過通過流量とは、濾材(フィルター)を通過する流量のことであり、たとえば、供給設備であるポンプの回転数により測定は可能である。
【0042】
なお、dはデシ=10−1をあらわす。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
なお、本例中に記載した物性の測定は以下の方法で求めたものである。
(1)原液中の異物の個数
採取原液を0.1μmの濾材で濾過し、濾材上に光束を当て発光する異物の個数を数えた。
(2)原糸(アクリル系繊維束)表面の傷の個数
製糸工程において油剤付与後の乾燥緻密化工程の糸条を採取し、長さ5cmの単糸を100本ランダムにサンプリングし、顕微鏡(50倍)で観察し、ねじれ、変形、キズを単糸1mあたりの数に換算した。
(3)炭素繊維のストランド引っ張り強度評価
空気中210〜250℃で耐炎化処理し、次いで窒素雰囲気下1400℃まで加熱して炭素繊維を得、次いで濃度0.1モル/dm3 の硫酸水溶液を電解液として、10クーロン/gで電解処理、水洗し、150℃の空気中で乾燥した炭素繊維に、JIS−R−7601に規定されている方法によって、エポキシ樹脂を含浸し、引張試験機にてストランド強度を測定した。
【0045】
実施例1
重合に際して、アクリロニトリル、ジメチルスルホキシド(以下DMSO) はそれぞれ、1.2μm、0.6μmの開孔径をもつポリプロピレン製不織布フィルター、並びに0.2μmの開孔径をもつポリテトラクロロエチレン製膜型フィルターで3段濾過し、一方、共重合成分としてのイタコン酸及び開始剤、また重合度調節剤はいずれもジメチルスルホキシドに溶解後、0.6μm、0.2μmの目開きを持つフィルターで2段濾過を行った。
【0046】
単量体組成をアクリロニトリル(AN)/アクリル酸メチル(MEA)/メタクリル酸スルホン酸ナトリウム(SMAS)/イタコン酸(IA)=95.2/4.0/0.2/0.6(mol%)とし、DMSOを溶媒として重合を行い極限粘度1.50の共重合体19.5〜21.5%を含む重合原液を得た。
【0047】
該原液を本発明の濾過工程である、20μm、5μmの開孔径を持つ金属焼結フィルターで2段濾過を行った。この際、開孔径の大きい20μm金属焼結フィルターにおいては、20μmのフィルターを通過した濾液の一部が再度20μmフィルターで濾過されるようなプロセスにした。
【0048】
そして、開孔径が20μmのフィルターに400dm3 /hrを通液し、最小開孔径を有する5μmフィルターにも同様に400dm3 /hrと、各段において同一になるようにした。
【0049】
この紡糸原液を孔径0.55mmφ、孔数48000の口金より30℃、60%DMSO水溶液中に吐出し凝固せしめ、以後、温水浴中での4〜5倍に延伸後、水洗、油剤付与、乾燥緻密化等のプロセスを経て、1.1dtex(デシテックス)の繊維束を得た。
【0050】
ここで得られた繊維束を210〜250℃の温度で耐炎化した後、N2雰囲気下で最高温度1400℃の加熱炉を用いて炭化処理し炭素繊維ストランドを得た。
【0051】
この場合の濾過時における濾過寿命(最終フィルターの濾過圧力損失が2MPaに到達するまでの単位濾過面積あたり濾液通過量)、および原糸表面の傷、炭素繊維物性(ストランド強度)を測定し表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1
実施例1において多段濾過をせず5μmの目開きを持つ金属焼結フィルターで1段濾過を行った以外は、実施例1と全く同様の操作を行い炭素繊維ストランドを得た。この結果を表1に示した。
これらの結果が示すように、実施例1において濾過寿命が4.2倍に向上したことが分かる。
【0054】
実施例2
実施例1において、各段における開孔比差の割合を変えず最終フィルターの開孔径を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様とした。
【0055】
ここで最終フィルターの開孔径と原液中の異物、炭素繊維の関係を調べ、実施例1の原液中の異物、原糸表面の傷、炭素繊維ストランド強度を対比させて表2に示した。
【0056】
この結果が示すように、最終フィルターの開孔径を5μm以下とすることによって原液中の異物を少なくすることができ、異物に起因する原糸表面の損傷を少なくすることができ、高性能な炭素繊維を得られることが分かる。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例3
実施例1において、開孔径差の割合の変化に伴う濾過形態及びフィルターの開孔径の変化を見るため初段開孔径を20μm、最終フィルターの開孔径を5μm以下とした時の最終フィルターの濾過寿命を調べた結果を表3に示した。
【0059】
この結果が示すように、開孔径の大きなフィルターを基準とした開孔径比が10%より低い場合、濾過の段数アップが著しい。
【0060】
また、80%を越えると隣接する後段のフィルターの開孔径差が大きすぎ効率のよい多段濾過ができないため、濾過寿命が短くなった。
【0061】
【表3】
【0062】
実施例4
実施例1において、開孔径の大きいフィルターへの濾過通過流量a(dm3)と開孔径の小さいフィルターへの濾過通過流量b(dm3)との比(通液比)a/bの変化における影響を見るために、開孔径の大きい20μmのフィルターの濾過通過流量を変化させ、最小開孔径を有する5μmのフィルターに400dm3/hrと一定にした。
【0063】
この際、1段目の20μmのフィルターを通過した原液の一部が20μmのフィルターに再循環されるようにした。 ここで通液比a/bと原液中の異物、炭素繊維の関係を調べ、実施例1の原液中の異物、原糸表面の傷、炭素繊維ストランド強度を対比させて表4に示した。
【0064】
この結果が示すように、通液比a/bを2以上とすることによって原液中の異物を少なくすることができ、異物に起因する原糸表面の損傷を少なくすることができ、高性能な炭素繊維を得られることが分かる。
【0065】
また、開孔径の小さなフィルターの濾過寿命をアップすることができることが分かる。
【0066】
【表4】
【0067】
【発明の効果】
以上述べたとおり、本発明におけるアクリル系重合体溶液の濾過において、特定の多段濾過を適用したことにより重合原液中の異物がその粒子径に応じて的確に捕捉され、開孔の小さいフィルターの濾圧上昇を小さくでき開孔径の小さいフィルターの長寿命化がはかれる。
【0068】
また、特定の最小開孔径を有するフィルターを採用することにより、異物個数(欠陥)の少ないアクリル系重合体溶液が得られる。
【0069】
該アクリル系重合体溶液が得られる炭素繊維用アクリル系前駆体繊維(原糸)は、原糸表面の損傷(欠陥)が少なく、該原糸からは機械的特性(強度)に優れる炭素繊維が得られる。
【0070】
さらに、開孔径の異なるフィルターの濾過通過流量の比を特定することにより、更なるアクリル系重合体溶液中の異物個数(欠陥)の減少、開孔径の小さいフィルターの長寿命化、原糸表面の傷の減少、炭素繊維の高強度化がはかれる。[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention is directed to the production of acrylic precursor fibers for carbon fibers with small variations in quality and performance and improved reliability, particularly for producing carbon fibers having excellent mechanical properties. About the method.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, many techniques have been disclosed for improving the performance of acrylic fibers that can be used as a high-strength fiber useful as a reinforcing fiber or a precursor for producing carbon fibers. Among these techniques, in order to avoid disadvantages caused by foreign substances in the polymer, a method of filtering a raw material supplied to the polymerization is disclosed in, for example, JP-A-61-108716 and JP-A-61-152812. This is proposed by Japanese Patent Application Laid-Open No. 1-271401.
[0003]
On the other hand, a method of filtering a polymer or a spinning solution thereof has been proposed in, for example, JP-A-58-115121, JP-A-58-220821, and JP-A-59-88924. Each of these is a filtration technique using a filter having a small opening, and in particular, JP-A-58-220821 discloses that a spinning stock solution is filtered using a filter having an opening diameter of 5 μm or less. I have.
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
As described above, it is known to filter a polymerization raw material or a spinning solution in order to minimize the occurrence of fiber defects due to foreign matter in the acrylic polymer and the accompanying deterioration in physical properties.
[0005]
However, in such prior art, the filter is clogged quickly because the opening diameter of the filter is merely reduced, and the rate of increase of the filter pressure is significantly increased. In other words, there is a problem that the life of the filter is extremely short and it is necessary to stop the spinning process every time the filter is replaced.
[0006]
An object of the present invention is to provide a method for producing an acrylic precursor for carbon fiber which can solve the above-mentioned problems of the prior art, extend the life of the filter, and extend the operation time of the yarn-making process. Is to provide.
[0007]
Further, the present invention provides a method for producing an acrylic precursor for carbon fiber, which can stabilize the process by purifying a polymer or a spinning solution and preventing yarn breakage in a spinning process caused by foreign matter. Is to do.
[0008]
Furthermore, acrylic fiber for raw fibers that can improve the strength or elongation of acrylic fibers for reinforcing fibers and carbon fibers by purifying the spinning solution and minimizing deterioration in physical properties due to foreign matter. An object of the present invention is to provide a method for producing a system precursor.
[0009]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, the present invention employs the following configuration. That is,
(1) Prior to spinning the acrylonitrile-based polymer solution, the ratio B / A when the pore size of a filter having a large pore size is A (μm) and the pore size of the subsequent filter is B (μm) A method for producing an acrylic precursor for carbon fiber, wherein (x100) is 10 to 80%, and two or more stages of multi-stage filtration are performed using a filter having an opening diameter of a final filter of 5 μm or less. .
[0010]
(2) In filtering the acrylonitrile-based polymer solution, based on the filtration passage flow rate a (dm 3 / hr) of the filter having a large opening diameter, the subsequent filtration passage flow rate b (dm 3 / hr) of the next filter. The acrylic solution for carbon fibers according to the above (1), wherein the polymer solution which has been circulated and filtered through a filter having a large opening diameter is filtered through a subsequent filter so that the ratio a / b becomes 2 or more. A method for producing a system precursor.
[0011]
Circulation filtration with a filter having a large opening diameter refers to filtration in a filter having a large opening diameter in which a part of the filtrate discharged from the filter outlet side is returned to the inlet side (part of the filtrate discharged from the filter outlet side). Enters the next filter entry).
[0012]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, the present invention will be described in more detail.
[0013]
The acrylic polymer of the present invention comprises at least 85 mol%, preferably 90 mol% or more of acrylonitrile, and 15% or less, preferably 10 mol% or less of at least one kind of monoethylenic vinyl monomer having copolymerizability with acrylonitrile. An acrylonitrile copolymer with the component is desirable.
[0014]
Examples of the copolymerization component in this case include at least one selected from the group consisting of ammonium salts, amine salts and hydrane salts of a carboxyl group-containing vinyl monomer.
[0015]
Here, examples of the carboxyl group-containing vinyl monomer include acrylic acid, methacrylic acid, itaconic acid, crotonic acid, maleic acid, mesaconic acid, citraconic acid, and the like.
[0016]
In the present invention, one kind of an ammonium salt, an amine salt or a hydran salt of a carboxyl group-containing vinyl monomer is copolymerized. The reason for this is that the copolymerization of the copolymerization component causes devitrification during spinning. This is because the phenomenon can be prevented and an acrylic fiber having a dense structure can be manufactured, and a high-quality carbon fiber can be obtained by firing the acrylic fiber having such a dense structure.
[0017]
As a method for obtaining a copolymer of an ammonium salt, an amine salt or a hydrane salt of a carboxylic acid, these may be directly copolymerized.However, a mixture of a carboxylic acid copolymer with ammonia, hydrazine or an amine may be used to prepare a carboxylic acid. The terminal hydrogen of the group may be replaced with ammonia, hydrazine or a quaternary amine ion or the like.
[0018]
Further, in addition to the above-mentioned carboxyl group-containing vinyl monomer and the like, the following vinyl monomers may be copolymerized as the third component for the purpose of promoting a flame-resistant reaction.
[0019]
Examples of the vinyl monomer having such an effect of promoting flame resistance include the above-mentioned carboxyl group-containing vinyl compounds such as acrylic acid, methacrylic acid, itaconic acid, and crotonic acid, and alkyl esters thereof, and oxyalkylacryl compounds. It is not limited to these.
[0020]
In addition to the above copolymerizable monomers, the following vinyl monomers may be copolymerized as the fourth component for the purpose of polymer solubility and the effect of preventing devitrification during spinning.
[0021]
Vinyl monomers having such a devitrification preventing effect during spinning include acrylic acid, lower alkyl esters of methacrylic acid, allylsulfonic acid, methallylsulfonic acid, styrenesulfonic acid and alkali metal salts thereof, and acetic acid. Examples include vinyl and vinyl chloride, but are not limited thereto.
[0022]
Of course, these acrylonitrile-based copolymers can be used alone or in combination as long as there is no problem in achieving the object of the present invention, and can be used in combination with other known acrylonitrile-based copolymers. Good.
[0023]
The acrylonitrile-based polymer described above can be produced by a known aqueous suspension polymerization method, solution polymerization method, bulk polymerization, or emulsion suspension polymerization method. The polymerization can be produced by a batch method or a continuous polymerization method.
[0024]
The intrinsic viscosity of the acrylonitrile polymer of the present invention is preferably in the range of 1.0 to 4.0, and more preferably 1.2 to 1.8.
[0025]
When the intrinsic viscosity is less than 1.0, the single yarns are easily fused to each other in the spinning step and the baking step, and when the intrinsic viscosity exceeds 4.0, the solution viscosity of the spinning stock solution increases and the drawability decreases. Therefore, the spinning becomes very difficult with the ordinary spinning method.
[0026]
When producing an acrylic precursor for carbon fiber from an acrylonitrile-based polymer, a polymer solution comprising a solvent of the polymer such as dimethylacetamide, dimethylformamide, dimethylsulfoxide, nitric acid, an aqueous solution of rhoda soda and an aqueous solution of zinc chloride is used as a spinning solution. However, the polymer concentration is preferably 18 to 22% by weight, more preferably 19.0 to 20.0.
[0027]
Although various filters can be used as the filter in the present invention, it goes without saying that it is important that the filter has chemical resistance to chemicals (substances to be filtered) that pass through the filter.
[0028]
Examples include nonwoven fabric filters, membrane filters, hollow fiber filters, and the like. Further, as a material constituting the filter, glass fiber, sintered metal, polypropylene, polytetrachloroethylene, or the like is preferable.
[0029]
In the present invention, the acrylonitrile-based polymer solution preferably contains 90 Wt% or more of acrylonitrile.
[0030]
In carrying out the present invention, when filtering an acrylonitrile-based polymer solution containing 90% by weight or more of acrylonitrile, first, filtration is performed with two or more stages of multi-stage filters.
[0031]
At this time, when the opening diameter of a filter having a large opening diameter is A (μm) and the opening diameter of the subsequent filter is B (μm), the ratio B / A (× 100) is 10 to 80%. It is important to use a filter having an opening diameter of 5 μm or less for the final filter. If the ratio B / A of the standard filter opening diameter A and the subsequent filter opening diameter B exceeds 80%, the difference in the opening diameter between the front and rear filters becomes too small, and the number of filtration stages increases, Efficient collection of foreign matter is no longer possible, and the increase in the number of stages greatly increases equipment initial costs.
[0032]
If the opening diameter ratio B / A is less than 10%, the difference between the opening diameters of the first and second filters becomes too large, so that impurities are not well distributed to each filter, and the life of the filter is extremely shortened.
[0033]
From such a viewpoint, it is desirable to carry out multi-stage filtration of 2 to 10 stages using a filter having an opening diameter ratio of 10 to 80% of the former stage and the latter stage and an opening size of the final filter of 5 μm or less.
[0034]
In the present invention, at least a filter having a large opening diameter and a subsequent filter are provided, and the subsequent filter may also serve as a final filter.
[0035]
Here, the pore diameter of the filter means a pore diameter that can be collected with a filtration accuracy of 95% or more when carbon particles, quartz particles, spherical particles, and the like are sieved.
[0036]
For example, an opening diameter of 5 μm refers to a filter having a collection efficiency η represented by the following formula of 95% or more when particles sieved to 5 μm are added to a stock solution and filtered at a constant pressure and temperature. It is.
[0037]
Collection efficiency η (%) = ((λ 0 −λ 1 ) / λ 0 ) × 100
λ 0 : Number of particle size (X = 5 μm) in stock solution
λ 1 : Number of particle size (X = 5 μm) in the filtrate When filtering the acrylonitrile-based polymer solution, it is desirable to install a filter having a minimum opening diameter near the spinneret and perform filtration.
[0038]
This spinning dope generally has a high viscosity, so that the filter having the minimum pore size has a pore size of 5 μm or less, preferably about 1 to 5 μm.
[0039]
In addition, the opening diameter A of the filter having a large opening diameter is preferably 5 to 20 μm, and the opening diameter B (including the final filter) of the subsequent filter is preferably 1 to 16 μm.
[0040]
Further, in filtering the acrylonitrile-based polymer solution, the filtration passing flow rate a (dm 3 / hr) of a filter having a large opening diameter is used as a reference, and the filtration passing flow rate b (dm 3 / hr) of the next filter is used. It is important that the polymer solution that has been circulated and filtered through a filter having a large pore size is filtered through the subsequent filter so that the ratio b / a is 2 or more. If the ratio b / a is less than 2, not only the foreign matter collecting effect due to an increase in the number of filtrations cannot be obtained, but also the number of filtration stages increases due to a decrease in the filtration area, and if the ratio worsens, the filtration life of a filter having a small opening diameter is shortened. .
[0041]
The filtration passage flow rate is a flow rate that passes through a filter medium (filter), and can be measured by, for example, the rotation speed of a pump that is a supply facility.
[0042]
Note that d represents deci = 10 -1 .
[0043]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described specifically with reference to Examples, but the present invention is not limited thereto.
[0044]
The measurements of the physical properties described in this example were obtained by the following methods.
(1) The number of foreign substances in the stock solution The collected stock solution was filtered with a 0.1 μm filter medium, and the number of foreign substances that emitted light upon irradiating the filter medium with light was counted.
(2) Number of scratches on the surface of the original yarn (acrylic fiber bundle) In the spinning process, yarns in the dry densification process after applying the oil agent were sampled, and 100 single yarns having a length of 5 cm were randomly sampled and subjected to a microscope ( (× 50), and the number of twists, deformations and scratches was converted to the number per 1 m of the single yarn.
(3) Evaluation of Strand Tensile Strength of Carbon Fiber A flame resistance treatment is performed at 210 to 250 ° C. in the air, and then heated to 1400 ° C. in a nitrogen atmosphere to obtain carbon fibers. Then, a sulfuric acid aqueous solution having a concentration of 0.1 mol / dm 3 is added. Electrolytic treatment at 10 coulomb / g, washing with water and drying in air at 150 ° C. as an electrolytic solution impregnate carbon fiber with an epoxy resin by a method specified in JIS-R-7601, and apply it to a tensile tester. The strand strength was measured.
[0045]
Example 1
At the time of polymerization, acrylonitrile and dimethyl sulfoxide (hereinafter referred to as DMSO) were filtered through a nonwoven polypropylene filter having a pore size of 1.2 μm and 0.6 μm and a polytetrachloroethylene membrane filter having a pore size of 0.2 μm, respectively. On the other hand, itaconic acid as a copolymer component, an initiator, and a polymerization degree regulator were all dissolved in dimethyl sulfoxide, and then subjected to two-stage filtration with a filter having openings of 0.6 μm and 0.2 μm.
[0046]
The monomer composition was determined as acrylonitrile (AN) / methyl acrylate (MEA) / sodium methacrylate sulfonate (SMAS) / itaconic acid (IA) = 95.2 / 4.0 / 0.2 / 0.6 (mol%) ), And polymerization was carried out using DMSO as a solvent to obtain a stock polymerization solution containing 19.5 to 21.5% of a copolymer having an intrinsic viscosity of 1.50.
[0047]
The stock solution was subjected to two-stage filtration using a metal sintered filter having an opening diameter of 20 μm and 5 μm, which is a filtration step of the present invention. At this time, in the case of a 20 μm sintered metal filter having a large opening diameter, a process was performed such that a part of the filtrate passed through the 20 μm filter was again filtered by the 20 μm filter.
[0048]
The pore diameter is passed through 400dm 3 / hr to 20μm filter, and 400dm 3 / hr equally to 5μm filter having the minimum pore size, was set to be the same in each stage.
[0049]
This spinning solution is discharged from a die having a hole diameter of 0.55 mmφ and a number of holes of 48,000 into a 60% aqueous solution of DMSO at 30 ° C. to solidify it, and thereafter stretched 4 to 5 times in a warm water bath, washed with water, applied with an oil agent, and dried. Through a process such as densification, a fiber bundle of 1.1 dtex (decitex) was obtained.
[0050]
After the fiber bundle obtained here was made flame-resistant at a temperature of 210 to 250 ° C., it was carbonized using a heating furnace having a maximum temperature of 1400 ° C. in an N 2 atmosphere to obtain a carbon fiber strand.
[0051]
In this case, the filtration life (filtration amount per unit filtration area until the filtration pressure loss of the final filter reaches 2 MPa), the scratches on the surface of the raw yarn, and the physical properties of the carbon fiber (strand strength) were measured. It was shown to.
[0052]
[Table 1]
[0053]
Comparative Example 1
A carbon fiber strand was obtained by performing exactly the same operation as in Example 1 except that multistage filtration was not performed and one-stage filtration was performed using a metal sintered filter having a mesh of 5 μm. The results are shown in Table 1.
As shown by these results, it can be seen that in Example 1, the filtration life was improved by 4.2 times.
[0054]
Example 2
Example 1 was the same as Example 1 except that the aperture diameter of the final filter was changed as shown in Table 2 without changing the ratio of the aperture ratio difference in each stage.
[0055]
Here, the relationship between the pore size of the final filter and the foreign matter and carbon fibers in the stock solution was examined, and the foreign matters in the stock solution, scratches on the surface of the yarn, and the strength of the carbon fiber strands of Example 1 are shown in Table 2.
[0056]
As shown by these results, by setting the opening diameter of the final filter to 5 μm or less, it is possible to reduce the amount of foreign matter in the stock solution, reduce the damage to the surface of the raw yarn caused by the foreign matter, and obtain a high-performance carbon. It can be seen that fibers can be obtained.
[0057]
[Table 2]
[0058]
Example 3
In Example 1, in order to observe the change in the filtering form and the opening diameter of the filter according to the change in the ratio of the opening diameter difference, the filtration life of the final filter when the opening diameter of the first stage was 20 μm and the opening diameter of the final filter was 5 μm or less was set. Table 3 shows the results of the examination.
[0059]
As shown by these results, when the opening diameter ratio based on a filter having a large opening diameter is lower than 10%, the number of filtration stages is significantly increased.
[0060]
On the other hand, if it exceeds 80%, the difference in aperture diameter between adjacent filters in the subsequent stage is so large that efficient multi-stage filtration cannot be performed, so that the filtration life is shortened.
[0061]
[Table 3]
[0062]
Example 4
In Example 1, the change in the ratio (flow ratio) a / b of the flow rate a (dm 3 ) passing through the filter having a large opening diameter to the flow rate b (dm 3 ) passing through a filter having a small opening diameter was obtained. To see the effect, the filtration flow rate through a 20 μm filter with a large pore size was varied and kept constant at 400 dm 3 / hr for a 5 μm filter with a minimal pore size.
[0063]
At this time, a part of the stock solution passed through the first-stage 20 μm filter was recycled to the 20 μm filter. Here, the relationship between the liquid passing ratio a / b and the foreign matter and carbon fiber in the stock solution was examined, and the foreign matter in the stock solution, the scratches on the surface of the yarn, and the strength of the carbon fiber strands of Example 1 are shown in Table 4.
[0064]
As shown by these results, by setting the liquid passing ratio a / b to 2 or more, foreign substances in the stock solution can be reduced, and damage to the surface of the raw yarn caused by the foreign substances can be reduced, resulting in high performance. It can be seen that carbon fibers can be obtained.
[0065]
Further, it can be seen that the filtration life of the filter having a small opening diameter can be increased.
[0066]
[Table 4]
[0067]
【The invention's effect】
As described above, in the filtration of the acrylic polymer solution in the present invention, by applying a specific multi-stage filtration, the foreign matter in the polymerization stock solution is accurately captured according to the particle diameter, and the filtration of the filter having a small opening is performed. The increase in pressure can be reduced, and the life of the filter having a small opening diameter can be extended.
[0068]
In addition, by using a filter having a specific minimum opening diameter, an acrylic polymer solution with a small number of foreign substances (defects) can be obtained.
[0069]
The acrylic precursor fiber for carbon fiber (yarn) from which the acrylic polymer solution is obtained has few damages (defects) on the surface of the yarn, and carbon fibers having excellent mechanical properties (strength) are obtained from the yarn. can get.
[0070]
Further, by specifying the ratio of the flow rate of the filtration through the filters having different opening diameters, the number of foreign substances (defects) in the acrylic polymer solution is further reduced, the life of the filter having a small opening diameter is prolonged, and the surface of the yarn is reduced. Scratches are reduced and carbon fibers are strengthened.