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JP2004006436A - 電波吸収材料及び電波吸収体 - Google Patents

電波吸収材料及び電波吸収体 Download PDF

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臼井 誠
Yoshiyasu Hanai
花井 義泰
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Abstract

【課題】電波吸収性に優れ、且つ薄型化することができ、数GHz帯以上において用いることができる電波吸収材料及び電波吸収体を提供する。
【解決手段】平均粒径が50μm以下の酸化第一鉄粉末60〜70質量部と、この粉末に対して質量比で85:15となるポリプロピレンとを、混練し、熱プレス成形して厚さ0.3mmの電波吸収層を作製し、その後、金めっきを施したステンレス鋼板に接合し、電波吸収体とした。この電波吸収体の吸収特性を自由空間法により周波数50GHz〜75GHzの範囲で測定した結果、60GHzで39dBの吸収量であり、比周波数帯域幅が7%であって、優れた吸収特性を有するとともに、厚さも0.3mmと非常に薄くすることができた。
【選択図】   図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波吸収材料及び電波吸収体に関し、更に詳しくは、酸化第一鉄を含有し、数GHz帯以上の波長域を吸収領域とする電波吸収材料及びこれを用いた電波吸収体に関する。
本発明の電波吸収材料及び電波吸収体は、ITSレーダや室内無線LAN等の電波の虚像防止、及びパーソナルコンピュータ、携帯電話、バンパー筺体内機器等の種々の電子機器からの不要輻射低減のために、トンネル、ガードレール等の構造物の外壁、室内や乗物内の壁、バンパー筺体内部、電子機器筺体内外壁等に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、電波の利用周波数域が、FM、VHF、UHF等のMHz帯から、自動車のITSレーダ等のGHz帯へ広がりつつあり、ミリ波、即ち、30GHz〜300GHzのような高周波における電波吸収体の開発が進められている。
MHz帯や数GHz帯程度までの電波吸収体としては、スピネル型フェライトの焼結体あるいはその粉体を樹脂等に混練した複合磁性体が一般的に用いられている。一方、ミリ波帯の電波吸収体としては、抵抗被膜を使用したものや、例えば、特開2001−77583号公報及び特開2001−77584号公報に開示されるように、カーボン等の導電性材料を用いて誘電損失により電波吸収させる電波吸収体が提案されている。更に、例えば、特開平11−354972号公報に開示されるように、六方晶フェライトを改良してミリ波帯に適用した電波吸収体が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スピネル型フェライト等の磁性体からなる電波吸収体は、磁気共鳴周波数の関係上、吸収特性が得られる上限の周波数が数GHzまでと限られている。このため、ミリ波帯には適用できない。
また、ミリ波帯の電波吸収体として、抵抗被膜を用いた電波吸収体は、吸収性能は優れるが、その原理上、ある程度の厚さが必要であり、薄型化が困難である。更に、カーボン等の誘電損失材料も十分な吸収特性を得るためにはある程度の厚さが必要であり、やはり薄型化が困難である。このため、小型機器への利用が難しい場合がある。
更に、六方晶フェライトを用いた電波吸収体は、ミリ波帯でも使用できるが、その電波吸収特性は必ずしも十分ではない。
本発明は、上記課題を解決するものであり、数GHz帯以上の波長域で使用でき、実用上、十分な(20dB以上)吸収量を広い帯域で得られる電波吸収特性に優れた電波吸収材料及び電波吸収体を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、数GHz帯以上の波長域の電波を吸収可能な誘電損失材料について種々検討した結果、酸化第一鉄を含有する電波吸収材料が優れた電波吸収特性を有するとの知見に基づきなされたものである。
本発明の電波吸収材料は、酸化第一鉄を含有することを特徴とする。
また、更に保持材を含有する電波吸収材料とすることができる。
本発明の電波吸収体は、上記電波吸収材料を用いてなることを特徴とする。
更に、他の本発明の電波吸収体は、上記電波吸収材料を用いてなる電波吸収層と、この電波吸収層の一面に配設された反射層とを備えることを特徴とする。
【0005】
【発明の効果】
本発明の電波吸収材料によれば、数GHz帯以上の波長域で使用でき、実用上、十分な(20dB以上)吸収を広い帯域で得ることができる等の優れた電波吸収特性を有する電波吸収体を得ることができる。
また、保持材を含有する場合は、任意の形状の電波吸収体を容易に得ることができる。
本発明の電波吸収体によれば、数GHz帯以上の波長域で使用でき、実用上、十分な(20dB以上)吸収量を広い帯域で得ることができる。また、薄型化することもできる。
更に、反射層を備える場合は、電波の透過を確実に防ぐことが可能な電波吸収体とすることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記「酸化第一鉄」は、誘電損失が過大ではなく、且つ過小でもない物質であり、十分に誘電吸収材となり得るものである。この酸化第一鉄は、2価の鉄の酸化物であれば特に限定されず、また、その形状、大きさ等も特に限定されない。通常、粉体であるが、目的、用途等に応じて粒子状、小片状又は塊状であってもよい。粉体あるいは粒子状である場合には、その平均粒径は、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.01〜100μm、更に好ましくは0.01〜50μmである。更に、この粉体あるいは粒子状の酸化第一鉄を含有する電波吸収体がシート状あるいは板状である場合は、酸化第一鉄の平均粒径は、その形状の安定性及び表面の平滑性等を考慮して、電波吸収体の厚さの1/5以下、特に1/10以下であることが好ましい。
【0007】
酸化第一鉄の含有量は、電波吸収材料の全量を100質量%とした場合に、20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、100質量%でもよい。この含有量は、電波吸収体の使用目的及び用途等に応じて適宜調整することができる。尚、100質量%でない場合の残部は、酸化第一鉄の誘電損失の効果を大きく損なわない物質であれば、特に限定されない。
【0008】
本発明の電波吸収材料には、酸化第一鉄の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化第一鉄の誘電損失の効果を大きく損なわない他の無機成分、例えば金属、合金、及びその他の化合物が含有されていてもよい。
【0009】
金属としては、例えば、鉄、亜鉛、ニッケル、銅、マンガン、カルシウム、アルミニウム、モリブデン、クロム等が挙げられる。また、合金としては、これらの金属及び更に他の金属を含む各種のものが挙げられる。更に、その他の化合物としては、アルミナ、シリカ、フェライト、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。更に、カーボン、リン、硫黄等が含有されていてもよい。これらの無機成分は、1種含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。尚、無機成分の形状、大きさ等も特に限定されないが、電波吸収材料としての扱い易さ等を考慮すると、酸化第一鉄と同様の形態であることが好ましい。
【0010】
酸化第一鉄等を含有する電波吸収材料は、それだけで電波吸収体とすることができるが、電波吸収体の形状を維持したり、電波吸収材料を保持あるいは結着する等の目的で、更に保持材を含有させることができる。上記「保持材」によって、酸化第一鉄を、大気や水分等による酸化あるいは変質等から保護することができ、目的、用途等に応じた形状とすることもできる。この保持材としては特に限定されず、誘電損失が大きなゴム、エラストマー、樹脂等の高分子材料を使用することができる。
【0011】
ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。また、エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素ゴム系エラストマー、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。更に、樹脂としては、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、及びフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、アスファルト、セメント、粘土等の無機系バインダ等を保持材として用いることもできる。これらのうち、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂が特に好ましい。
【0012】
保持材の含有量は、酸化第一鉄の含有量が前記の好ましい範囲にあれば特に限定されないが、酸化第一鉄と保持材との合計量を100質量部とした場合に、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは10〜30質量部である。保持材の含有量が過少であると、電波吸収体の形状を保持できなくなることがあり、一方、過多であると、電波吸収性が低下する傾向にある。
【0013】
更に、本発明の電波吸収材料には、必要に応じて、老化防止剤、金属不活性剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の各種の安定剤、及び防菌・防黴剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、着色剤等の各種の添加剤を含有させることができる。
【0014】
本発明の電波吸収体は、電波吸収材料を用いてなるものである。酸化第一鉄のみからなる電波吸収材料、及び酸化第一鉄と、その他の無機成分とを含有する電波吸収材料を使用する場合は、プレス成形法等によって、所定形状の電波吸収体とすることができる。また、更に保持材を含有する電波吸収材料を用いる場合は、酸化第一鉄等が保持材に分散した組成物を圧縮成形、押出成形及びロール成形等の方法により成形することにより電波吸収体とすることができる。
【0015】
この電波吸収体は、目的、用途等に応じて種々の形状、厚さ等とすることができる。形状としては、例えば、円盤状、楕円盤状、板状、球状、直方体状、円柱状、立方体状、半球状、シート状等が挙げられる。本発明の電波吸収材料を用いた場合は、いずれの形状の電波吸収体であっても、その厚さを薄くすることができ、例えば、0.1〜50mm、特に0.1〜10mm、更には0.1〜2mmとすることができる。尚、電波吸収体の厚さは、安定した電波吸収性が得られるように、ばらつきのないように一定であることが好ましい。
【0016】
酸化第一鉄等を含有する電波吸収体の設計にあたっては、通常、無反射曲線が利用される。酸化第一鉄等の無機成分を含む電波吸収材料を用いる場合、酸化第一鉄等の無機成分と保持材とを含む電波吸収材料を用いる場合、のいずれにおいても、この無反射曲線によって目的とする周波数における電波吸収体の最適な厚さを求めることが必要である。特に、酸化第一鉄と保持材とを含む電波吸収材料を使用する場合は、酸化第一鉄等と保持材との混合比を変化させて複数の電波吸収材料を調製する必要がある。そして、各々の電波吸収材料の複素比誘電率を、目的とする周波数において測定し、無反射曲線上にプロットし、最も無反射曲線に近い、あるいは無反射曲線と交差する厚さと波長との比d/λを選択し、λ=光速/周波数の関係を利用して電波吸収体の厚さdを求めることができる。
【0017】
本発明の電波吸収体では、図2のように、電波の一部は表面で反射され、入射した電波は、酸化第一鉄により電波吸収されて減衰し、減衰後の電波は電波吸収体を透過する。
この本発明の電波吸収体は、電子機器からの不要輻射低減、電子機器内での電磁干渉低減、又は異常発振の防止等に好適である。
【0018】
他の本発明の電波吸収体は、電波吸収材料を用いてなる電波吸収層と、この電波吸収層に配設された反射層とを備えるものである。
上記「電波吸収層」としては、上記の本発明の電波吸収体をそのまま用いることができる。更に、上記「反射層」は、電波を十分に反射することができるものであれば、その材質、形状、厚さ等は特に限定されない。この反射層としては、アルミニウム板、ステンレス鋼板、銅板等の金属板、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔、銅箔、金箔等の金属箔を使用することができる。また、金属粉末を含有する樹脂シートあるいは樹脂板、樹脂を含浸させた金属網、表面に金属が塗着又は蒸着された樹脂シートあるいは樹脂板、及びカーボンシート等を用いることもできる。
【0019】
反射層の平面形状は特に限定されないが、電波吸収層と同じであることが好ましい。また、反射層の厚さも特に限定されず、用途に合わせて適宜調整することができる。本発明の電波吸収体では、反射層が薄くても十分な電波吸収性が得られるが、反射層の厚さは、0.02〜5mm、特に0.02〜2mm、更には0.02〜1mmとすることが好ましく、0.05〜0.5mm、特に0.05〜0.1mmとすることがより好ましい。
【0020】
本発明の電波吸収体では、この反射層を備えることにより、電波吸収性をより高めることができる。この電波吸収体では、酸化第一鉄により電波吸収され、減衰した電波は、反射層により反射され、多重反射で消滅させることができる。即ち、図3のように、入射電波は、酸化第一鉄を含有する電波吸収層を通過することにより、酸化第一鉄により電波吸収され、減衰するとともに、反射層により電波反射され、多重反射で消滅させることができる。
【0021】
反射層を電波吸収層に配設する方法は特に限定されず、通常、これらを接着剤あるいは粘着剤等によって接合して配設することができる。この反射層を備える電波吸収体は、特に、電波が完全に吸収される必要がある用途に好適であり、例えば、自動車レーダの虚像防止や無線LAN室用無反射壁等に最適である。
【0022】
本発明の電波吸収材料は、電波吸収が必要な構造体を形成する原材料に配合して用いることができる。例えば、コンクリート、アスファルト、モルタル又は樹脂等に配合し、これらの原材料を用いて、電波吸収可能なトンネル、ガードレール、カーブしている道路の側壁、建造物の室内の床又は天井、及び乗物内の床、天井等の内装材等とすることができる。更に、テレビ、種々の電子機器、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、バンパー等の筺体等を形成する原材料に配合して、電波吸収性を有する電子機器やバンパー等とすることもできる。
【0023】
また、薄くても電波吸収性に優れるため、塗料や表面仕上げ剤等に混合して、これを上記のそれぞれの構造体に吹き付け法等により塗布し、電波吸収させることもできる。更に、電波吸収材料を紙や不織布等に挟持あるいは内在させ、上記の各々の構造体内に配設することもできる。この場合、酸化第一鉄は、その表面が酸化されても、内部の酸化第一鉄がそのままであれば、電波吸収性は維持されるが、好ましくは、大気や水分等により酸化第一鉄が酸化や変質等することのないように保護されていることが好ましい。
【0024】
本発明の電波吸収材料及び電波吸収体は、数GHz以上のGHz帯域で用いることができ、例えば、30GHz〜300GHz、特に50GHz〜110GHz、更には50GHz〜75GHz、とりわけ60GHz帯付近において優れた電波吸収性を有する。また、目的とする周波数において、特に20dB以上、更には30dB以上の吸収量が得られる。更に、比周波数帯域幅、即ち、20dB以上の吸収周波数帯域幅/中心周波数も従来品と同等以上であり、十分に広い。また、厚さを薄くすることができ、特に2mm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下とすることができる。
【0025】
このため、ミリ波帯の電波の吸収が必要とされる種々の用途において広く利用することができ、例えば、ITSレーダや室内無線LAN等の虚像防止、種々の電子機器、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、バンパー筺体内機器等からの不要輻射低減に好適である。特に、自動車用レーダの誤作動防止のためにトンネル内、ガードレール、カーブしている道路の側壁等の構造物に配置され、又は塗布、吹き付け、混合して用いることができる。また、室内や乗物内の壁、床、天井、レーダ近傍におけるバンパー筺体内部、電子機器筺体内外壁等にも同様に利用することができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
電波吸収特性は自由空間法により測定することができる。以下の実施例及び比較例においては、電波吸収測定装置として、HVS社製のアンテナ部を使用し、測定部としては、アジレント・テクノロジー社製の型式「ネットワークアナライザーHP8510C」を用いた。測定条件は、室温(25℃)で、湿度は39%である。
【0027】
実施例1
平均粒径が50μm以下の酸化第一鉄粉末60〜70質量部と、この酸化第一鉄粉末に対して質量比で85:15となるポリプロピレンとを、170℃で60分間混練し、その後、圧縮成形機により、170℃で3分間熱プレス成形し、所定厚さの複数の電波吸収性シートを得た。次いで、これらの電波吸収性樹脂シートを用いて前記の無反射曲線を利用した方法によりd/λ=0.06を得、設計周波数を60GHzとして、厚さを0.3mmとした。
その後、上記と同様にして厚さ0.3mmの電波吸収層を形成し、この電波吸収層を金めっきが施された厚さ0.5mmのステンレス鋼板の一面に接合し、電波吸収体(図1参照)を作製した。
【0028】
この電波吸収体の電波吸収特性を自由空間法により周波数50GHz〜75GHzの範囲で測定した。その結果、図4のように、60GHzで39dBの吸収量であった。また、比周波数帯域幅は7%であった。
このように、吸収量及び比周波数帯域幅ともに優れており、且つ厚さも0.3mmと非常に薄型化でき、小型な用途にも多くの空間を必要とせず、好適である。
【0029】
尚、ある波長における吸収量(dB)と吸収量(%)には、10dBで90.0%、20dBで99.0%、30dBで99.9%の相関がみられるが、ほとんどの用途において、通常、20dB以上の吸収量が必要とされており、20dB以上であれば、電波吸収特性に優れているといえる。また、比周波数帯域幅は、20dB以上の吸収周波数帯域幅/中心周波数であり、この幅が広いほど中心周波数付近のより広い周波数域において優れた電波吸収性を有する。
【0030】
実施例2
平均粒径が500μm以下の酸化第一鉄粉末60〜70質量部と、この酸化第一鉄粉末に対して質量比で40:60となる未加硫のスチレンブタジエンゴム及び加硫剤を配合し、混練した後、圧縮成形機により、160℃で10分間熱プレスし、加硫させるとともに成形し、厚さ2mmの電波吸収層を形成し、この電波吸収層を金めっきが施された厚さ0.5mmのステンレス鋼板の一面に接合し、電波吸収体を作製した。
【0031】
この電波吸収体の電波吸収特性を自由空間法により周波数50GHz〜110GHzの範囲で測定した。その結果、図5のように、73GHzで23dBの吸収量であった。
【0032】
実施例3
金めっきされたステンレス鋼板に接合しなかった他は、実施例2と同様にして電波吸収体を作製した。この電波吸収体について上記と同様にして電波吸収特性を測定した。周波数と吸収量との相関を示す図6によれば、金めっきされたステンレス鋼板に接合しなくても、60〜100GHz付近において40〜70%もの優れた吸収量が得られていることが分かる。
【0033】
参考例1
六方晶フェライトを用いて、厚さ0.39mmの電波吸収体を作製した。この電波吸収体の電波吸収特性を自由空間法により周波数50〜75GHzの範囲で測定した結果、周波数60GHzで35dBの吸収量が得られた。また、比周波数帯域幅は3%であった。
このように、六方晶フェライトでは、厚さは薄く、目的とする60GHzにおいて優れた吸収量を有するものの、比周波数帯域幅は3%と狭い。
【0034】
尚、図7は、本発明の更に他の例の電波吸収材料であるが、この電波吸収材料と、六方晶フェライトを用いた場合との吸収量と比周波数帯域幅との関係を示す説明図である。この図7によれば、本発明の電波吸収材料と、六方晶フェライトとでは、例えば、60GHz付近の近似の周波数において同程度の吸収量となり得る。しかし、比周波数帯域幅は、本発明の電波吸収材料のほうが相当に広いことが分かる。
【0035】
尚、本発明においては、これらの実施例に限定されず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、酸化第一鉄、保持材、及び反射層は、実施例のものに限られず、適宜選択することができる。また、酸化第一鉄と保持材との量比も種々変更することができる。また、中心周波数は、酸化第一鉄と保持材との量比及び厚さを変えることにより、適宜変更することができる。更に、直接、コンクリート等の構造体材料に混合し、構造体自体に電波吸収性を付与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射層を有する電波吸収体の横断面を示す模式図である。
【図2】電波吸収体により電波が吸収され、反射される様子を表す模式図である。
【図3】反射層を備える電波吸収体により電波が吸収され、反射される様子を表す模式図である。
【図4】実施例1の電波吸収体の周波数と吸収量との相関を示すグラフである。
【図5】実施例2の電波吸収体の周波数と吸収量との相関を示すグラフである。
【図6】反射層を備えていない実施例3の電波吸収体の、周波数と吸収量との相関を広い周波数範囲に渡って示すグラフである。
【図7】本発明の更に他の例の電波吸収材料と、六方晶フェライトとの、比周波数帯域幅を比較して示すグラフである。
【符号の説明】
1;電波吸収体、2;反射層、3;電波吸収層。

Claims (4)

  1. 酸化第一鉄を含有することを特徴とする電波吸収材料。
  2. 更に、保持材を含有する請求項1に記載の電波吸収材料。
  3. 請求項1又は2に記載の電波吸収材料を用いてなることを特徴とする電波吸収体。
  4. 請求項1又は2に記載の電波吸収材料を用いてなる電波吸収層と、該電波吸収層の一面に配設された反射層とを備えることを特徴とする電波吸収体。
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