JP2004003585A - 緩み止めボルト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の緩み止めボルトは、ボルト軸部の先端部に前記ボルト軸部と同軸に形成されたボルト先端部と、前記ボルト軸部の外周に形成された主雄螺子部と、前記ボルト先端部の前記ボルト軸部側の外周に前記主雄螺子部の谷底と同一若しくは深い環状に形成された環状溝部と、前記雌螺子に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°変位して前記ボルト先端部の外周に形成された副雄螺子部と、を備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナット等の雄螺子に螺合して被締結部材を締結するとともに、被締結部材やナット等に振動等の外力がかかった際の螺着力、締結力の低下を防止できる緩み止めボルト及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車や航空機,電車等の輸送機器,各種の産業機械・機器,搬送パイプラインや電力等の送電装置,等における各種部分の締結には、ボルト・ナットが高い頻度で使用されており、また、ボルト・ナットは各種の締結部分の締結に用いられる機械要素として高い重要度を占めている。
しかしながら、従来から、ボルト・ナットで締結される被締結部材やナット等にかかる振動等の外力により雌螺子に螺合されたナット等が緩み、螺着力や締結力が低下して被締結部材の締結部が緩んだり外れたりするトラブルが後を絶たず、被締結部材の締結部の安全性の向上のため、被締結部材やナット等にかかる振動等の外力により緩みを防止するボルトやナットが望まれていた。
このため、近年、ナット等の雌螺子からボルトが緩むのを防止するために種々のボルトやナットが開発されており、特に、緩みを防止する緩み止めボルトとして特開昭57−37114号公報、特開平8−109915号公報、特開平9−280239号公報、特開平11−37130号公報、実開昭57−89016号、実開昭61−69517号公報等に種々のものが開示されている。これらは、螺子のフランクや座面に緩み防止のための回転止めを形成し変形して摩擦力を増加するもの等であり、一旦螺合した後に取り外すのが困難で繰り返し使用性に欠けるものであった。
【0003】
繰り返し使用性を有する緩み止めボルトとしては、例えば、実開平4−36116号公報(以下、イ号公報という)に「主ボルトと、前記主ボルトの端部の軸端に螺子部と等径かつ等ピッチの雄螺子が形成されて回転不能にかつ軸方向移動可能に配設された可変螺子と、前記主ボルト及び前記可変螺子の軸心部に挿通し前記主ボルトの螺子部に対して軸方向に正逆回転させることにより前記可変螺子を前記主ボルトの螺子部に対して軸方向に接離移動自在にする調整軸と、を備えた緩み止め付きボルト」が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)イ号公報に記載の技術は、部品点数が多く構成が複雑であるため製造に工数を要し生産性に欠けるという課題を有していた。
(2)部品点数が多く螺合する螺子部が多いため、螺子面のかじりや磨耗が発生し易く破損し易いという課題を有していた。
(3)調整軸を所定方向に回転させて可変螺子を軸方向の外側に押圧すると、可変螺子が主ボルトの螺子部から離間し、螺子部及び可変螺子のフランクが雌螺子のフランクを圧接して緩み止めを行うが、調整軸と可変螺子とを螺合する螺子部が緩み易く、これが緩んだ場合は螺子部及び可変螺子が雌螺子を圧接する力が弱まり、この結果、主ボルトが雌螺子から緩み易くなるという課題を有していた。
(4)締結作業を行う場合は、雌螺子に主ボルトを締結した後に調整軸を所定方向に回転して可変螺子を軸方向の外側に押圧しなければ緩み止めを行うことができず、作業工数を要し締結作業性に欠けるという課題を有していた。
(5)螺着時に緩み止め機構により非常に大きな力を必要とし、雌螺子の螺子山を破壊するという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、簡単な構造で生産性に優れるとともに、被締結部材やナット等に外力がかかった際の螺着力の低下を防止することができ、半永久的に高い締結力を維持することができ、被締結部材の締結部の安全性を著しく向上でき、また締結作業性にも優れ、さらに繰り返し使用性にも優れる緩み止めボルトを提供することを目的とする。
また、本発明は、簡便で作業性に優れるとともに生産性に優れ、さらに信頼性に優れる緩み止めボルトの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記従来の課題を解決するために本発明の緩み止めボルト及びその製造方法は、以下の構成を有している。
【0007】
本発明の請求項1に記載の緩み止めボルトは、雌螺子に螺合して被締結部材を締結する緩み止めボルトであって、ボルト軸部の先端部に前記ボルト軸部と同軸に形成されたボルト先端部と、前記ボルト軸部の外周に形成された主雄螺子部と、前記ボルト先端部の前記ボルト軸部側の外周に環状に形成された環状溝部と、前記主雄螺子部に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°変位して前記ボルト先端部の外周に形成された副雄螺子部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)雌螺子に締め付けられた緩み止めボルトは、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相が所定量変位しているため、その締め付け力で発生する圧接力の主雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向と副雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向とが180°異なり相反している。このため、この圧接力と螺子のリード角等によって生じるトルクの方向が、主雄螺子部と副雄螺子部とでは正逆異なるので、ナットや被締結部材等に振動等の外力が加わり雌螺子から主雄螺子部が緩もうとする回転方向の力が加わると、副雄螺子部のフランクに発生するトルクが締め付け方向に作用するため、緩み止めボルトが雌螺子から緩むのを確実に防止でき半永久的に高い締結力を維持することができる。
(2)ボルト先端部の外周に、主雄螺子部に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に変位されて形成された副雄螺子部を備えているので、被締結部材を締結する際に緩み止めボルトを雌螺子に螺合することにより、副雄螺子部が主雄螺子部の方向に雌螺子を押圧する反力と主雄螺子部が副雄螺子部の方向に雌螺子を押圧する反力と、又は副雄螺子部が主雄螺子部と反対側の方向に雌螺子を押圧する反力と主雄螺子部が副雄螺子部と反対側の方向に雌螺子を押圧する反力とが生じ、これによって主雄螺子部及び副雄螺子部と雌螺子との間で大きな摩擦力を得ることができ、振動等により雌螺子から主雄螺子部等が緩み螺着力が低下するのを確実に防止できる。
(3)雌螺子に緩み止めボルトを締め付け締結力を加えると、緩み止めボルトの副雄螺子部が雌螺子によって変形されて弾性変形を生じ、弾性変形内でその反力により雌螺子に主雄螺子部と副雄螺子部をより強固に密着させて締結することができるので、緩み止めボルトと雌螺子の螺着力をより向上でき振動等の外力により緩み止めボルトが雌螺子から緩むのをより確実に防止できる。
(4)被締結部材と座面との間が磨耗して緩みが生じた場合であっても、副雄螺子部が雌螺子を主雄螺子部の方向に押圧する反力、又は副螺子部が雌螺子を主雄螺子部と反対側の方向に押圧する反力によって、緩み止めボルトが雌螺子から外れるのを防止することができ振動の激しい自動車や橋梁等に適用した場合でもボルトやナットが外れて落下するという落下事故を防止することができる。
(5)雌螺子に螺合された緩み止めボルトの副雄螺子部が雌螺子によって変形されて生じた弾性変形による反力により、雌螺子に主雄螺子部と副雄螺子部を強固に密着するので、弾性変形内で雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度のばらつきによるガタツキを吸収することができ安定性に優れるとともに、変位量が小さいので、締結時に緩み止めボルトやナット等の螺子部に傷を付け難く、また弾性変形によって反力を安定して得ることができるので、同一の雌螺子であれば一旦螺合させた緩み止めボルトを取り外した後に再度螺着して繰り返し使用することができ、繰り返し使用性に優れる。
(6)主雄螺子部の谷底と同一若しくは深く形成された環状溝部を有しているので、雌螺子に主雄螺子部を螺着する際にスムーズに螺着することができるとともに圧縮若しくは引張変形を容易にすることができ、設計の自由度を増すとともに圧縮変形の際に主雄螺子部等が座屈するのを防止することができる。
【0008】
ここで、ボルト先端部としては、ボルト軸部の先端部に、ボルト軸部と一体に形成又はボルト軸部に溶接等により固着されてボルト軸部と同軸に形成され、ボルト軸部の外周と同じ外径に形成された外周を有するものが用いられる。ボルト先端部の長さとしては、ボルト先端部の材質や螺着される雌螺子の材質等に応じて、主雄螺子部及び副雄螺子部が雌螺子と確実に螺着するための必要なかみあいが得られる長さで形成される。
ボルト先端部の反対側のボルト軸部には、六角ボルトのような六角柱状等の多角状,六角穴つきボルトのような頂面に六角穴等の穴部を有する円柱状,アイボルトのような輪状等に形成されたボルト頭を形成することができる。また、植込みボルト,控えボルト等のようにボルト頭を有さず螺子部が形成されたものや、基礎ボルト等のようにL形,J形等の形状に形成されたものも用いることができる。
【0009】
主雄螺子部としては、緩み止めボルトが螺着される雌螺子に応じて、メートル螺子やインチ螺子等の三角螺子状や台形螺子状等で、かつ、雌螺子に応じたピッチで、ボルト軸部の外周に形成される。1条螺子の他、2条乃至複数条の多条螺子を形成することもできる。また、主雄螺子部の長さとしては、ボルト軸部やボルト先端部の材質、主雄螺子部が螺着される雌螺子の材質等に応じて、雌螺子との螺着に必要なかみあい長さが得られる長さで形成される。
【0010】
環状溝部としては、ボルト軸部の軸心に対して略直交して若しくは斜交して形成され、ボルト先端部の外周に主雄螺子部の谷底と同一若しくは深い環状に形成され主雄螺子部と副雄螺子部とを分離するものが用いられる。特に、環状溝部が主雄螺子部の谷底よりも深く形成されボルト先端部を薄肉にしたものが好適に用いられる。弾性変形が容易だからである。環状溝部が主雄溝部の谷底と同一の深さで形成されると、環状溝部におけるボルト先端部の機械的強度が大きく伸びが生じ難いため、雌螺子や主雄螺子部の螺子山を潰し易くなる傾向がみられる。
なお、環状溝部がボルト軸部の軸心に対して斜交して形成される場合は、主雄螺子部のリード角と略平行する角度で形成することができる。これにより主雄螺子部と環状溝部で分離されて形成された副雄螺子部に、雌螺子がかみ込むことなく螺着できる。
【0011】
副雄螺子部としては、環状溝部によって主雄螺子部と離間されて、ボルト先端部の外周に、主雄螺子部と同じピッチで、かつ、主雄螺子部に対する位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°変位させて形成される。
主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相が、24°より小さくなるにつれ雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度のばらつきによるガタツキによって弾性変形量が少なくなり主雄螺子部と副雄螺子部によって雌螺子に得られる反力が小さく、緩み止めボルトと雌螺子の螺着力が低下する傾向がみられ、72°〜90°になると締結する前のトルクが大きく作業性が低下するとともに使用時に焼付きを生じ易くなる傾向がみられる。90°より大きくなるにつれ、締結時に緩み止めボルトの螺子部が雌螺子にかみ込み易く締結に必要な力が大きくなり締結作業性に欠け、さらに締結時に緩み止めボルトやナット等の螺子部に傷を付け易くなり繰り返し使用性が低下する傾向がみられるため好ましくない。特に、副雄螺子部の螺合される雌螺子に対する位相が12°より小さくなるか100°より大きくなると、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
なお、副雄螺子部の位相は、主雄螺子部側又は主雄螺子部と反対側のいずれに変位していてもよい。いずれの場合も、締結した際に生じる圧接力の主雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向と副雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向とを180°異ならせることができるからである。
副雄螺子部の形状や条数としては、主雄螺子部と同様のものが用いられる。
【0012】
雌螺子としては、ナットの中心部や機械部品等に植設されたもの、板状や塊状等の構造物の所定部に螺設されたもの等を用いることができる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の緩み止めボルトであって、前記ボルト先端部が、前記ボルト先端部の軸中心に前記ボルト先端部の先端から少なくとも前記環状溝部まで形成された先端凹部を備えた構成を有している。この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)先端凹部によって環状溝部の軸部を薄肉にし、弾力や曲げ応力等の機械的強度を最適にして螺子部に応じた反力を得ることができ、螺子部の損傷を防止するとともに緩み難くすることができる。
【0014】
ここで、先端凹部としては、ボルトの径の大小若しくは環状溝部の幅の広狭に合わせてボルト先端部の軸中心にボルト先端部の先端から環状溝部の一部にかけて乃至は環状溝部を超えて形成されたものが用いられる。例えば、環状溝部の幅が広い場合は、先端凹部は環状溝部の幅の中央付近まででもよく、また該幅が狭い場合は該幅の少なくとも全幅にわたって先端凹部が穿設される。特に、先端凹部が環状溝部の全幅にわたって形成された場合は、薄肉にされた環状溝部の軸部を長く形成して弾性変形を容易にすることができるため好適に用いられる。
なお、環状溝部に対応する先端凹部の内径を大きくした大径凹部を形成することもできる。大径凹部を形成することによっても、環状溝部におけるボルト先端部の肉厚を所定の厚みに薄くすることができ、ボルト先端部の弾性変形を容易にすることができる。また、先端凹部や大径凹部は、ボルト先端部に形成された環状溝部を超えてボルト軸部の一部にも形成してよい。
【0015】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の緩み止めボルトであって、前記環状溝部における前記ボルト先端部が、軸方向に所定量だけ圧縮若しくは引張変形された弾性部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)環状溝部におけるボルト先端部が圧縮若しくは引張変形された弾性部は弾性を有するので、螺合された雌螺子によって生じる副雄螺子部等の弾性変形に加え、螺合された雌螺子によって生じる弾性部の伸び若しくは収縮によって、雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度のばらつきによるガタツキ等を吸収するとともに、弾性部の弾力によって雄螺子部に生じる反力をさらに大きくすることができ、緩み止めボルトが雌螺子から緩むのをより確実に防止できる。
(2)主雄螺子部と副雄螺子部とを同一ピッチかつ同一位相で形成した後、環状溝部を圧縮若しくは引張変形させることで主雄螺子部と副雄螺子部の位相を容易にずらすことができるので、製造が容易で生産性に優れる。
【0016】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の緩み止めボルトであって、前記環状溝部の軸方向の変形量αが、前記主雄螺子部のピッチの大きさをPとしたとき、(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P、好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)P、より好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)である構成を有している。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)環状溝部を変形量αで変形することにより、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に確実に変位させることができるので、製品得率が高いとともに生産性に優れる。
(2)nの値を変えることにより環状溝部を所定の変形量にすることができ、環状溝部の変形が弾性限度以内であれば弾性部の弾力を変化させることができるので、弾性部の変位と反力との関係が安定的に得られ、得られる反力のばらつきが小さく安定性に優れる。
【0017】
ここで、環状溝部の変形量αとしては、変形後の軸方向の環状溝部の長さL1を変形前の軸方向の環状溝部の長さL2から減じた長さ(L2−L1)が用いられ、主雄螺子部のピッチの大きさをPとしたとき、(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P、好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)P、より好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)が好ましいとされる。環状溝部の変形量が、(n+1/15)Pより小さくなる若しくは(n−1/15)Pより大きくなるにつれナット等の雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度ばらつきによるガタツキを吸収し難く弾性変形量が少なくなり主雄螺子部と副雄螺子部によって雌螺子に得られる反力が小さく、緩み止めボルトと雌螺子の螺着力が低下する傾向がみられ、(n+1/5)P〜(n+1/4)Pになると締結前のトルクが大きく作業性が低下するとともに使用時に焼付き等が発生し易くなる傾向がみられる。(n+1/4)Pより大きくなる若しくは(n−1/4)Pより小さくなるにつれ、締結時に緩み止めボルトの雄螺子部が雌螺子部にかみ込み易く締結に必要な力が大きくなり締結作業性に欠け、さらに締結時に緩み止めボルトや雌螺子に傷を付け易くなり繰り返し使用性が低下する傾向がみられるため好ましくない。特に、環状溝部の変形量が(n+1/30)Pより小さくなる若しくは(n−1/30)Pより大きくなるか、(n+5/18)Pより大きくなる若しくは(n−5/18)Pより小さくなると、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
【0018】
nは0以上の整数が用いられる。変形量α=(n+1/30)Pの場合を例にとって説明すると、α=nP+1/30・Pであって、nが整数の場合に変形量nPによっては位相のずれは発生せず、それを超えて変形された変形量1/30・Pによって位相のずれを形成することができるからである。さらに、nは0〜4好ましくは1〜3が好適に用いられる。nが0のときは環状溝部の変形量が小さいため弾性部の弾力が大きくなり弾性部のわずかな変位により得られる反力の大きさが著しく異なりばらつきが大きく安定性が乏しくなる傾向がみられ、3より大きくなるにつれ環状溝部の変形量が大きく弾性部の弾力が小さくなり弾性部の変位によって得られる反力が小さくなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。特に、nが4より大きくなるとこの傾向が著しいため好ましくない。
【0019】
圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さL2は、(a)主雄螺子部のピッチの大きさをP、環状溝部の底部の径をA、先端凹部の内径をBとしたとき、P≦L2≦5P+A−B、又は、(b)圧縮変形後の環状溝部の軸方向の長さをL1、弾性部の軸方向に対する変形角をθとしたとき、L2=L1/cosθ(但し、10°≦θ≦75°)が好適に用いられる。
これにより、以下のような作用が得られる。
(1)圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さが所定範囲にあるので環状溝部の座屈荷重を適量にし、圧縮変形させて副雄螺子部の位相を所定範囲に容易に変位させることができ、生産性に優れるとともに安定性に優れる。
(2)圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さが所定範囲にあるので、圧縮変形した場合に環状溝部内に弾性部を納めることができ、形成される弾性部の大きさ等の自由度に優れる。
(3)弾性部の変形角θが所定の範囲で形成されると、弾性部の最適な弾力が得られるとともに弾性部の変位と反力との関係が安定的に得られ、得られる反力のばらつきが小さく安定性に優れる。
【0020】
ここで、圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さL2は、主雄螺子部のピッチの大きさをP、環状溝部の底部の径をA、先端凹部の内径をBとしたとき、P≦L2≦5P+A−Bが好適に用いられる。圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さが主雄螺子部の1ピッチの大きさPより小さくなるにつれ、環状溝部におけるボルト先端部の機械的強度が大きく環状溝部を圧縮変形させるために大きな荷重を要しプレス設備等の設備負荷が大きくなるとともに環状溝部以外の副雄螺子部等も変形し易く副雄螺子部等のピッチが小さくなり副雄螺子部がナット等の雌螺子にかみ込み易くなる傾向がみられ、さらに変形量αを大きくすることができず安定性を高め難い傾向がみられ、5P+A−Bより大きくなるにつれ座屈荷重が小さくなるとともに安定性が低下し主雄螺子部と副雄螺子部との軸がずれ易く雌螺子を副雄螺子部や主雄螺子部に螺着し難くなり、また副雄螺子部の機械的強度が小さく疲労し易いため長期信頼性が低下する傾向がみられるため好ましくない。
【0021】
また、圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さL2は、圧縮変形後の環状溝部の軸方向の長さをL1、弾性部の軸方向に対する変形角をθとしたとき、L2=L1/cosθ(但し、10°≦θ≦75°)が好適に用いられる。弾性部の軸方向に対する変形角θが10°より小さくなるにつれ、環状溝部の変形量が小さいため弾性部の弾力が大きくなり弾性部のわずかな変位により得られる反力の大きさが著しく異なりばらつきが大きく安定性が乏しくなる傾向がみられ、75°より大きくなるにつれ環状溝部の変形量が大きく弾性部の弾力が小さくなり弾性部の変位によって得られる反力が小さくなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0022】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1に記載の緩み止めボルトであって、前記環状溝部の軸部の横断面積が、前記ボルト軸部の谷底における横断面積の5〜50%である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)環状溝部の軸部の横断面積を規定することによって副雄螺子部が雌螺子に与える反力Qを所定範囲に設定できるので、(数1)によって表される締め付け前の空トルクTqを約1〜50N・m程度に抑えることができ、締結作業性に優れる。
【数1】
(2)環状溝部の軸部の肉厚を所定厚みに形成して機械的強度を所定範囲にできるので、ボルト先端部を変形させて副雄螺子部の位相を所定範囲に容易に変位させることができる。また、環状溝部の軸部に適量の伸びが生じ易く、雌螺子に螺着された際に軸部が伸びることにより雌螺子や副雄螺子部の螺子山を潰し難く装着性に優れる。
【0023】
ここで、環状溝部の軸部の横断面積としては、先端凹部を有していない場合は環状溝部の外縁(底部の径)で囲まれた面積、先端凹部を有している場合は環状溝部の外縁(底部の径)で囲まれた面積から先端凹部の内縁(内径)で囲まれた面積を減じたものが用いられ、ボルト軸部の谷底における横断面積の5〜50%が好ましいとされる。横断面積が5%より小さくなるにつれ座屈荷重が小さくなるとともに機械的強度が低下する傾向がみられ、50%より大きくなるにつれ、軸部の座屈荷重が大きくなるとともに伸びや収縮が生じ難くなり空トルクが大きくなるとともにフランクを傷めたり焼付きを起こしたりする傾向がみられるため好ましくない。
【0024】
なお、先端凹部が形成されたときのボルト先端部の副雄螺子部における肉厚(副雄螺子部の谷底から先端凹部の内周壁までの厚み)は、ボルト先端部の材質等に応じて、雌螺子との螺着に必要な機械的強度が得られる厚みで形成される。
【0025】
本発明の請求項6に記載の緩み止めボルトの製造方法は、雌螺子に螺合して被締結部材を締結する緩み止めボルトの製造方法であって、ボルト軸部の軸中心に先端から穿設して先端凹部を形成する先端凹部形成工程と、前記ボルト軸部の先端側の所定部の外周に雄螺子の谷底と同一若しくはそれより深い環状溝部を形成する環状溝部形成工程と、前記ボルト軸部と略平行に所定荷重を所定時間印加して前記環状溝部形成工程で形成された前記環状溝部における前記ボルト軸部を、変形量αが前記雄螺子のピッチの大きさをPとしたとき、(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)Pより好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)だけ変形させて弾性部を形成する弾性部形成工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)先端凹部が形成された環状溝部におけるボルト軸部を変形させることで、位相のずれた主雄螺子部と副雄螺子部を容易に形成することができるので、製造が容易で生産性に優れる。
(2)環状溝部におけるボルト軸部が変形量αで変形されているので、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に確実に変位させることができるので、信頼性に優れるとともに作業性に優れる。
【0026】
ここで、環状溝部形成工程や先端凹部形成工程としては、旋盤やフライス等を用いた切削加工によって、雄螺子が形成されたボルト軸部の外周やボルト軸部の先端側に環状溝部や先端凹部を形成するものが用いられる。
先端凹部をボルト軸部の軸中心の先端から少なくとも環状溝部まで穿設して形成すれば、環状溝部形成工程に次いで先端凹部形成工程を行ってもよいし、先端凹部形成工程に次いで環状溝部形成工程を行ってもよい。
弾性部形成工程としては、加圧装置を用いてボルト軸部と略平行に所定荷重を所定時間印加するものが用いられる。荷重の印加は冷間で行うと好ましい。機械的強度が向上されるとともに高い寸法精度が得られるからである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1における緩み止めボルトの全体斜視図であり、図1(b)は図1(a)の軸方向における要部断面端面図である。
図中、1は実施の形態1における緩み止めボルト、2は緩み止めボルト1のボルト軸部、3はボルト軸部2の先端部にボルト軸部2と一体で同軸に形成されたボルト先端部、4はボルト先端部3と反対側のボルト軸部2の端部に六角柱状に形成されたボルト頭、5は先端側のボルト軸部2の外周に1条乃至複数条の三角螺子や台形螺子、角螺子、鋸歯螺子状等(図は三角螺子を示す)に形成された主雄螺子部、6はボルト先端部3のボルト軸部2側の外周に主雄螺子部5の谷底と同一乃至はより深い環状に形成された環状溝部、7は環状溝部6におけるボルト先端部3が主雄螺子部5のピッチの大きさをPとしたとき、変形量αが(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P、好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)P、より好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)だけ圧縮変形されてボルト先端部3の外周側に膨出し軸方向に圧縮された弾性部である。なお、弾性部7は引張変形させ肉厚を薄くして形成することもできる。8は環状溝部6を除くボルト先端部3の外周に主雄螺子部5と同一ピッチに形成された副雄螺子部、9はボルト先端部3の軸中心にボルト先端部3の先端から環状溝部6の幅の全部を超えてボルト軸部2の一部まで形成された先端凹部である。L1は圧縮変形して圧縮された環状溝部6(弾性部7)の軸方向の長さ、θは弾性部7の軸方向に対する変形角である。
【0028】
以上のように構成された実施の形態1における緩み止めボルトの製造方法について、以下図面を用いて説明する。
図2(a)は実施の形態1における緩み止めボルトの環状溝部を圧縮変形する以前の状態を示す要部断面図であり、図2(b)はボルトを加工しボルト先端部と先端凹部を形成したボルトの断面図である。
図2(a)において、5aはボルト軸部2の外周に1条乃至複数条の三角螺子状に形成された雄螺子である。
図2(b)において、6aはボルト先端部3のボルト軸部2側の外周に環状に形成された環状溝部、7aは環状溝部6aの軸部、8aは環状溝部6aによって雄螺子5aと分離されて形成された雄螺子である。Aは環状溝部6aの底部の径、Bは先端凹部9の内径、L2は圧縮変形前の環状溝部6aの軸方向の長さ、雄螺子5a,8aは螺合される雌螺子と同一ピッチかつ同一位相で形成されている。
実施の形態1では、圧縮変形前の環状溝部6aの軸方向の長さL2が、P≦L2≦5P+A−B(但し、Pは雄螺子5a,8aのピッチの大きさである)の大きさで形成されている。また、軸部7aの横断面積π・(A2−B2)/4が、ボルト軸部2の谷底(雄螺子5aの谷底)における横断面積の5〜50%に形成されている。さらに、弾性部7の変形角θ(図1(b)参照)が10°≦θ≦75°でL2=L1/cosθの関係で形成されている。
【0029】
まず、本体形成工程において、プレス成形等の塑性加工や切削加工等でボルト頭4と一体に形成され雄螺子5aが螺設されたボルト軸部2を形成する(図2(a)参照)。
次いで、環状溝部形成工程において、ボルト軸部2の先端側の所定部の外周に雄螺子5aの谷底よりも多少深い環状溝部6aを形成し、ボルト先端部3を形成する。
次いで、先端凹部形成工程において、ボルト先端部3の軸中心にボルト先端部3の先端から環状溝部6aの幅を超えてボルト軸部2の一部まで深く穿設して先端凹部9を形成する(図2(b)参照)。
次いで、弾性部形成工程において、ボルト先端部3の先端とボルト頭4との間にボルト軸部2と略平行に環状溝部6におけるボルト先端部3の座屈荷重より大きな荷重を所定時間印加する。これにより、環状溝部6におけるボルト先端部3を、変形量αが(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P、好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)P、より好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、Pは雄螺子5a,8aのピッチ、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)だけ圧縮変形させて弾性部7を形成する。この結果、雄螺子5aが主雄螺子部5となり、雄螺子8aが、主雄螺子部5に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に変位した副雄螺子部8となる(図1(b)参照)。
【0030】
なお、本実施の形態においては、プレス成形等の塑性加工や切削加工等でボルト頭4とボルト軸部2とを一体に形成しボルト軸部2に環状溝部6aを形成する場合について説明したが、予め環状溝部6aが形成されたボルト先端部3を形成しボルト軸部2の先端に抵抗溶接や摩擦溶接等の溶接や嵌合等によって固着してボルト先端部3をボルト軸部2と同軸に形成することもできる。この場合は、先端凹部9をボルト先端部3に予め形成しておいてもよいし、ボルト先端部3をボルト軸部2に固着した後に穿設して形成してもよい。
また、環状溝部形成工程において環状溝部6aを形成した後、先端凹部形成工程において先端凹部9を形成する場合について説明したが、先端凹部形成工程において先端凹部9を形成した後、環状溝部形成工程において環状溝部6aを形成する場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
また、弾性部形成工程において、環状溝部6aを捻じって変形量αだけ圧縮変形若しくは引張変形させる場合もある。この場合も同様の作用が得られる。
【0031】
次に、実施の形態1における緩み止めボルトの変形例について、以下図面を用いて説明する。
図3は実施の形態1における緩み止めボルトの変形例を示す要部断面端面図である。
図中、10は実施の形態1の変形例における緩み止めボルト、11はボルト先端部3のボルト軸部2側の外周に主雄螺子部5の谷底と同じ深さでボルト軸部2の軸方向と略直交する環状に形成された環状溝部、12はボルト先端部3の軸中心にボルト先端部3の先端から穿設形成された先端凹部、12aは環状溝部11の内部のボルト先端部3に先端凹部12の内径よりも大きな径で形成された先端凹部12の大径凹部、13は環状溝部11におけるボルト先端部3が(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P、好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)P、より好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、Pは主雄螺子部5のピッチ、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)変形量αだけ圧縮変形されて大径凹部12aの内部に膨出した弾性部である。
この変形例のように、弾性部はボルト先端部の外周側に膨出するだけでなく、先端凹部の内部側に膨出させることもできる。なお、この場合は、弾性部形成工程において、弾性部が先端凹部の内部側に膨出するように外周側を拘束してやればよい。
【0032】
次に、以上のように構成された実施の形態1における緩み止めボルトの使用時における動作について、以下図面を用いて説明する。
図4は実施の形態1における緩み止めボルトで被締結部材を締結した状態を示す要部断面図であり、図5は実施の形態1における緩み止めボルトで被締結部材を締結した際に弾性部に生じる反力と変位との関係を模式的に示す図であり、縦軸は弾性部に生じる反力を示し、横軸は弾性部の変形量を示す。
図4において、20は板状や塊状等の構造物20aの所定部に螺設された雌螺子、21は緩み止めボルト1で構造物20aに締結される被締結部材、22は被締結部材21に穿設され緩み止めボルト1が挿通されるボルト孔である。なお、図中Bは緩み止めボルト1を雌螺子20に螺合した際に主雄螺子部5と雌螺子20の螺合部分に加工精度ばらつき等によるガタツキによって形成される隙間(バックラッシ)、B´は副雄螺子部8と雌螺子20の螺合部分に形成されるバックラッシを示す。バックラッシB,B´は各々反対方向に生じている。
【0033】
被締結部材21を緩み止めボルト1で締結する場合、被締結部材21のボルト孔22に緩み止めボルト1を挿通し、図4に示すように、緩み止めボルト1を雌螺子20に螺合すると、弾性部7の軸方向の変形量αによって生じる雌螺子20と副雄螺子部8との位相のずれに相当する変形量(図5の0P2に等しいとする)からバックラッシB(又はB´)の軸方向の長さに相当する量(図5のP1P2に等しいとする)との差分の変形(図5に示す0P1)が弾性部7に生じ、弾性部7の弾性変形に伴う反力(図5に示すP)が生じる。弾性部7に生じた反力(P)によって、副雄螺子部8,主雄螺子部5が雌螺子20のフランクの正逆方向から押すことにより強固に締結される。
雌螺子20に一旦螺合させた緩み止めボルト1を取り外せば、弾性部7に生じる反力は0になるとともに弾性部7の復元力によって変位も0になる。この取り外した緩み止めボルト1を雌螺子20に再度螺着すれば、弾性部7に生じる反力(P)によって、副雄螺子部8と主雄螺子部5のフランクを雌螺子20のフランクに強固に密着させて、何度でも繰り返し被締結部材21を締結することができる。
【0034】
以上のように、実施の形態1における緩み止めボルトは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)雌螺子に締め付けられた緩み止めボルトは、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相が所定量変位しているため、その締め付け力で発生する圧接力の主雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向と副雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向とが180°異なり相反している。このため、この圧接力と螺子のリード角等によって生じるトルクの方向が、主雄螺子部と副雄螺子部とでは正逆異なるので、ナットや被締結部材等に振動等の外力が加わり雌螺子から主雄螺子部が緩もうとする回転方向の力が加わると、副雄螺子部のフランクに発生するトルクが締め付け方向に作用するため、緩み止めボルトが雌螺子から緩むのを確実に防止でき半永久的に高い締結力を維持することができる。
(2)ボルト先端部の外周に、主雄螺子部に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に変位されて形成された副雄螺子部を備えているので、被締結部材を締結する際に緩み止めボルトを雌螺子に螺合することにより、副雄螺子部が主雄螺子部の方向に雌螺子を押圧する反力と主雄螺子部が副雄螺子部の方向に雌螺子を押圧する反力と、又は副雄螺子部が主雄螺子部と反対側の方向に雌螺子を押圧する反力と主雄螺子部が副雄螺子部と反対側の方向に雌螺子を押圧する反力とが生じ、これによって主雄螺子部及び副雄螺子部と雌螺子との間で大きな摩擦力を得ることができ、振動等により雌螺子から主雄螺子部等が緩み螺着力が低下するのを確実に防止できる。また、変位量が従来と比べて小さいので、螺着時に少ない抵抗で容易に螺着できる。
(3)雌螺子に緩み止めボルトを締め付け締結力を加えると、緩み止めボルトの副雄螺子部が雌螺子の締結によって変形されて弾性変形を生じ、弾性変形内でその反力により雌螺子に主雄螺子部と副雄螺子部をより強固に密着させて締結することができるので、緩み止めボルトと雌螺子の螺着力をより向上でき振動等の外力により緩み止めボルトが雌螺子から緩むのをより確実に防止できる。
(4)被締結部材と座面との間が磨耗して緩みが生じた場合であっても、副雄螺子部が雌螺子を主雄螺子部の方向に押圧する反力、又は副螺子部が雌螺子を主雄螺子部と反対側の方向に押圧する反力によって、緩み止めボルトが雌螺子から外れるのを防止することができ自動車や電車等の振動が激しい車両や橋梁等でのボルトやナットの落下事故を防止することができる。
(5)雌螺子に螺合された緩み止めボルトの副雄螺子部が雌螺子によって変形されて生じた弾性変形による反力により、雌螺子に主雄螺子部と副雄螺子部を強固に密着するので、雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度のばらつきによるガタツキを吸収することができ安定性に優れるとともに、位相の変位量が小さいので、締結時に緩み止めボルトやナット等の螺子部に傷を付け難く、また弾性変形によって反力を安定して得ることができるので、同一の雌螺子であれば一旦螺合させた緩み止めボルトを取り外した後に再度螺着して繰り返し使用することができ、繰り返し使用性に優れる。
(6)主雄螺子部の谷底と同一若しくは深く形成された環状溝部を有しているので、雌螺子に主雄螺子部を螺着する際にスムーズに螺着することができるとともにボルト先端部を薄肉にして圧縮変形を容易にすることができ、圧縮変形の際に主雄螺子部等が座屈するのを防止することができる。
(7)環状溝部におけるボルト先端部が圧縮変形された弾性部は弾性を有するので、螺合された雌螺子によって生じる副雄螺子部等の弾性変形に加え、螺合された雌螺子によって生じる弾性部の伸びによって、雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度のばらつきによるガタツキ等を吸収するとともに、弾性部が有する弾力によって発生する応力により、生じる反力をさらに大きくすることができ、緩み止めボルトが雌螺子から緩むのをより確実に防止できる。
(8)主雄螺子部と副雄螺子部とを同一ピッチかつ同一位相で形成した後、環状溝部を圧縮変形させることで主雄螺子部と副雄螺子部の位相を容易にずらすことができるので、製造が容易で生産性に優れる。
(9)先端凹部を備えているので、環状溝部が形成されたボルト先端部を薄肉にすることができ、ボルト先端部の圧縮変形が容易で生産性に優れる。
(10)環状溝部を変形量αだけ圧縮することにより、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に確実に変位させることができ、変形量が適量なので締結時に螺子部に傷を付けたり使用時に焼付きが生じ難く繰り返し使用性に優れ、さらに螺子部のピッチや角度等にバラツキを生じても締結時にフランク同士の圧接が十分得られ安定性に優れる。また、製品得率が高く生産性に優れる。
(11)nの値を変えることにより環状溝部を所定の変形量にすることができ、環状溝部の変形が弾性限度内であれば弾性部の弾力を変化させることができるので、弾性部の変位と反力との関係が安定的に得られ、得られる反力のばらつきが小さく安定性に優れる。
(12)圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さL2がP≦L2≦5P+A−Bの所定範囲にあるので、環状溝部の座屈荷重を適量にし、圧縮変形させて副雄螺子部の位相を所定範囲に容易に変位させることができ、生産性に優れるとともに安定性に優れる。
(13)圧縮変形前の環状溝部の軸方向の長さL2が所定範囲にあるので、圧縮変形した場合に環状溝部内に弾性部を納めることができ、形成される弾性部の大きさ等の自由度に優れる。
(14)環状溝部の軸部の横断面積を規定することによって副雄螺子部が雌螺子に与える反力を所定範囲に設定できるので、雌螺子や雄螺子部を破損することなしに緩み止めを行うことができる。
(15)環状溝部の軸部の肉厚を所定厚みに形成して機械的強度を所定範囲にできるので、ボルト先端部を圧縮変形する際には副雄螺子部の位相を所定範囲に容易に変位させることができる。また、環状溝部の軸部に適量の伸びが生じ易く、雌螺子に螺着された際に軸部が伸びることにより雌螺子や副雄螺子部の螺子山を潰し難く装着性に優れる。
(16)弾性部の変形角θが所定の範囲で形成されているので、弾性部の最適な弾力が得られるとともに弾性部の変位と反力との関係が安定的に得られ、得られる反力のばらつきが小さく安定性に優れる。
(17)JISやASME、DIN等で規格化されたボルトを加工するので、汎用性に優れる。
【0035】
なお、実施の形態1においては、環状溝部6を変形量α(nは0以上の整数)だけ圧縮変形した場合について説明したが、環状溝部6に引張荷重を印加して、変形量α(nが0の場合)が−5/18・P≦α≦−1/30・P好ましくは−1/4・P≦α≦−1/15・Pより好ましくは−1/5・P≦α≦−1/15・Pの範囲になるようにすることもできる。この場合も同様の作用が得られる。
【0036】
(実施の形態2)
図6は実施の形態2における緩み止めボルトで被締結部材を締結した状態を示す要部断面図であり、図7は実施の形態2における緩み止めボルトで被締結部材を締結した際に主雄螺子部と副雄螺子部にかかる応力と歪みとの関係を模式的に示す図であり、縦軸は主雄螺子部と副雄螺子部にかかる応力を示し、横軸は主雄螺子部と副雄螺子部の歪み量を示す。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、30は実施の形態2における緩み止めボルト、31はボルト先端部3のボルト軸部2側の外周に主雄螺子部5の谷底よりも多少大きな深さでボルト軸部2の軸方向と略直交する環状に形成された環状溝部、31aは環状溝部31の軸部、32は環状溝部31からボルト先端部3の先端に向けてボルト先端部3の外周に主雄螺子部5と同一ピッチ、かつ、主雄螺子部5に対する位相が、12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に変位されて旋盤等で螺刻若しくは転造して形成された副雄螺子部である。
【0037】
実施の形態2における緩み止めボルトが実施の形態1と異なる点は、環状溝部を圧縮変形させて副雄螺子部の位相を変位させるのではなく、旋盤等で螺刻等して主雄螺子部5に対する副雄螺子部32の位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に変位させる点である。
【0038】
被締結部材21を緩み止めボルト30で締結する場合も、実施の形態1で説明したのと同様に図6に示すように、被締結部材21のボルト孔22に緩み止めボルト30を挿通し、緩み止めボルト30を雌螺子20に螺合すると、主雄螺子部5と副雄螺子部32とに弾性限度(図7に示すU点)より大きく極限強さ(図7に示すM点)より小さな応力(図7に示すS点)が生じる。これにより、副雄螺子部32に永久歪み(図7に示す0S1)が生じて変形し、雌螺子20と主雄螺子部5,副雄螺子部32の加工精度ばらつき等によるバックラッシB,B´が主雄螺子部5と副雄螺子部32で正逆反対方向に生じる。さらに、弾性変形(図7に示すS1S2)によって生じる反力によって、副雄螺子部32,主雄螺子部5が雌螺子20のフランクの正逆方向から押すことにより強固に締結される。
雌螺子20に一旦螺合させた緩み止めボルト30は、雌螺子20に応じて副雄螺子部32に永久歪み(図7に示す0S1)が生じ変形しており、雌螺子20から取り外した後もこの変形が維持される。この緩み止めボルト30を雌螺子20に再度螺着した場合も、副雄螺子部32の弾性変形(図7に示すS1S2)によって生じる反力が雌螺子20に働き、何度でも強固に締結することができる。
【0039】
以上のように、実施の形態2における緩み止めボルトは構成されているので、実施の形態1に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)旋盤等で螺刻して副雄螺子部の主雄螺子部に対する位相(螺合される雌螺子に対する位相)を変位させるので、圧縮変形させるためのプレス設備等を要さず設備負荷を少なくすることができる。
(2)環状溝部及び先端凹部を形成することによってボルト先端部を薄肉にすることができるので、弾力や曲げ応力等の機械的強度を最適にして螺子部に応じた反力を得ることができ、螺子部の損傷を防止するとともに緩み難くすることができる。
【0040】
なお、実施の形態1における緩み止めボルトは、実施の形態2で説明した弾性変形(図7に示すS1S2)によって生じる反力と、実施の形態1における緩み止めボルトにおいて弾性部7に生じる反力(P)と、を加えた反力が発生しているため、実施の形態2と比較してより大きな反力が得られ大きな螺着力が得られる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明の緩み止めボルトによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)雌螺子に締め付けられた緩み止めボルトは、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相が所定量変位しているため、その締め付け力で発生する圧接力の主雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向と副雄螺子部のフランクが雌螺子のフランクを圧接する方向とが180°異なり相反している。このため、この圧接力と螺子のリード角等によって生じるトルクの方向が、主雄螺子部と副雄螺子部とでは正逆異なるので、ナットや被締結部材等に振動等の外力が加わり雌螺子から主雄螺子部が緩もうとする回転方向の力が加わると、副雄螺子部のフランクに発生するトルクが締め付け方向に作用するため、緩み止めボルトが雌螺子から緩むのを確実に防止でき半永久的に高い締結力を維持することができる緩み止めボルトを提供することができる。
(2)ボルト先端部の外周に、主雄螺子部に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に変位されて形成された副雄螺子部を備えているので、被締結部材を締結する際に緩み止めボルトを雌螺子に螺合することにより、副雄螺子部が主雄螺子部の方向に雌螺子を押圧する反力と主雄螺子部が副雄螺子部の方向に雌螺子を押圧する反力と、又は副雄螺子部が主雄螺子部と反対側の方向に雌螺子を押圧する反力と主雄螺子部が副雄螺子部と反対側の方向に雌螺子を押圧する反力とが生じ、これによって主雄螺子部及び副雄螺子部と雌螺子との間で大きな摩擦力を得ることができ、振動等により雌螺子から主雄螺子部等が緩み螺着力が低下するのを確実に防止できる緩み止めボルトを提供することができる。
(3)雌螺子に緩み止めボルトを締め付け締結力を加えると、緩み止めボルトの副雄螺子部が雌螺子によって変形されて弾性変形を生じ、弾性変形内でその反力により雌螺子に主雄螺子部と副雄螺子部をより強固に密着させて締結することができるので、緩み止めボルトと雌螺子の螺着力をより向上でき振動等の外力により緩み止めボルトが雌螺子から緩むのをより確実に防止できる緩み止めボルトを提供することができる。
(4)被締結部材と座面との間が磨耗して緩みが生じた場合であっても、副雄螺子部が雌螺子を主雄螺子部の方向に押圧する反力、又は副雄螺子部が雌螺子を主雄螺子部と反対側の方向に押圧する反力によって、緩み止めボルトが雌螺子から外れるのを防止することができ振動の激しい自動車や橋梁等に適用した場合でもボルトやナットが外れて落下するという落下事故を防止することができる緩み止めボルトを提供することができる。
(5)雌螺子に螺合された緩み止めボルトの副雄螺子部が雌螺子によって変形されて生じた弾性変形による反力により、雌螺子に主雄螺子部と副雄螺子部を強固に密着するので、弾性変形内で雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度のばらつきによるガタツキを吸収することができ安定性に優れるとともに、位相の変位量が小さいので、締結時に緩み止めボルトやナット等の螺子部に傷を付け難く、また弾性変形によって反力を安定して得ることができるので、同一の雌螺子であれば一旦螺合させた緩み止めボルトを取り外した後に再度螺着して繰り返し使用することができ、繰り返し使用性に優れた緩み止めボルトを提供することができる。
(6)主雄螺子部の谷底と同一若しくは深く形成された環状溝部を有しているので、雌螺子に主雄螺子部を螺着する際にスムーズに螺着することができるとともに圧縮若しくは引張変形を容易にすることができ、設計の自由度を増すとともに圧縮変形の際に主雄螺子部等が座屈するのを防止することができる緩み止めボルトを提供することができる緩み止めボルトを提供することができる。
【0042】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)先端凹部によって環状溝部の軸部を薄肉にし、弾力や曲げ応力等の機械的強度を最適にして螺子部に応じた反力を得ることができ、螺子部の損傷を防止するとともに緩み難くすることができる緩み止めボルトを提供することができる。
【0043】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、
(1)環状溝部におけるボルト先端部が圧縮若しくは引張変形された弾性部は弾性を有するので、螺合された雌螺子によって生じる副雄螺子部等の弾性変形に加え、螺合された雌螺子によって生じる弾性部の伸び若しくは収縮によって、雌螺子と緩み止めボルトの雄螺子部の加工精度ばらつきによるガタツキ等を吸収するとともに、弾性部の弾力に応じて発生する応力によって、生じる反力をさらに大きくすることができ、緩み止めボルトが雌螺子から緩むのをより確実に防止できる緩み止めボルトを提供することができる。
(2)主雄螺子部と副雄螺子部とを同一ピッチかつ同一位相で形成した後、環状溝部を圧縮若しくは引張変形させることで主雄螺子部と副雄螺子部の位相を容易にずらすことができるので、製造が容易で生産性に優れた緩み止めボルトを提供することができる。
【0044】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)環状溝部を変形量αで変形することにより、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に確実に変位させることができるので、製品得率が高いとともに生産性に優れた緩み止めボルトを提供することができる。
(2)nの値を変えることにより環状溝部を所定の変形量にすることができ、環状溝部の変形が弾性限度以内であれば弾性部の弾力を変化させることができるので、弾性部の変位と反力との関係が安定的に得られ、得られる反力のばらつきが小さく安定性に優れた緩み止めボルトを提供することができる。
【0045】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1の効果に加え、
(1)環状溝部の軸部の横断面積を規定することによって副雄螺子部が雌螺子に与える反力Qを所定範囲に設定できるので、締結前の空トルクTqを約1〜50N・m程度に抑えることができ、締結作業性に優れた緩み止めボルトを提供することができる。
(2)環状溝部の軸部の肉厚を所定厚みに形成して機械的強度を所定範囲にできるので、ボルト先端部を変形させて副雄螺子部の位相を所定範囲に容易に変位させることができる。また、環状溝部の軸部に適量の伸びが生じ易く、雌螺子に螺着された際に軸部が伸びることにより雌螺子や副雄螺子部の螺子山を潰し難く装着性に優れた緩み止めボルトを提供することができる。
【0046】
請求項6に記載の発明によれば、
(1)先端凹部が形成された環状溝部におけるボルト軸部を圧縮変形させることで、位相のずれた主雄螺子部と副雄螺子部を容易に形成することができるので、製造が容易で生産性に優れた緩み止めボルトの製造方法を提供することができる。
(2)環状溝部におけるボルト軸部が変形量αで変形されているので、主雄螺子部に対する副雄螺子部の位相を12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°に確実に変位させることができるので、信頼性に優れるとともに作業性に優れた緩み止めボルトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)実施の形態1における緩み止めボルトの全体斜視図
(b)図1(a)の軸方向における要部断面端面図
【図2】(a)実施の形態1における緩み止めボルトの環状溝部を圧縮変形する以前の状態を示す要部断面図
(b)ボルトを加工しボルト先端部と先端凹部を形成したボルトの断面図
【図3】実施の形態1における緩み止めボルトの変形例を示す要部断面端面図
【図4】実施の形態1における緩み止めボルトで被締結部材を締結した状態を示す要部断面図
【図5】実施の形態1における緩み止めボルトで被締結部材を締結した際に弾性部に生じる力と変位との関係を模式的に示す図
【図6】実施の形態2における緩み止めボルトで被締結部材を締結した状態を示す要部断面図
【図7】実施の形態2における緩み止めボルトで被締結部材を締結した際に主雄螺子部と副雄螺子部にかかる応力と歪みとの関係を模式的に示す図
【符号の説明】
1 緩み止めボルト
2 ボルト軸部
3 ボルト先端部
4 ボルト頭
5 主雄螺子部
5a 雄螺子
6,6a 環状溝部
7 弾性部
7a 軸部
8 副雄螺子部
8a 雄螺子
9 先端凹部
10 緩み止めボルト
11 環状溝部
12 先端凹部
12a 大径凹部
13 弾性部
20 雌螺子
20a 構造物
21 被締結部材
22 ボルト孔
30 緩み止めボルト
31 環状溝部
31a 軸部
32 副雄螺子部
Claims (6)
- 雌螺子に螺合して被締結部材を締結する緩み止めボルトであって、
ボルト軸部の先端部に前記ボルト軸部と同軸に形成されたボルト先端部と、前記ボルト軸部の外周に形成された主雄螺子部と、前記ボルト先端部の前記ボルト軸部側の外周に前記主雄螺子部の谷底と同一若しくは深い環状に形成された環状溝部と、前記主雄螺子部に対する位相が12〜100°好ましくは24〜90°より好ましくは24〜72°変位して前記ボルト先端部の外周に形成された副雄螺子部と、を備えていることを特徴とする緩み止めボルト。 - 前記ボルト先端部が、前記ボルト先端部の軸中心に前記ボルト先端部の先端から少なくとも前記環状溝部まで形成された先端凹部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の緩み止めボルト。
- 前記環状溝部における前記ボルト先端部が、軸方向に所定量だけ圧縮若しくは引張変形された弾性部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の緩み止めボルト。
- 前記環状溝部の軸方向の変形量αが、前記主雄螺子部のピッチの大きさをPとしたとき、(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P、好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)P、より好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)であることを特徴とする請求項3に記載の緩み止めボルト。
- 前記環状溝部の軸部の横断面積が、前記ボルト軸部の谷底における横断面積の5〜50%であることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の緩み止めボルト。
- 雌螺子に螺合して被締結部材を締結する緩み止めボルトの製造方法であって、
ボルト軸部の軸中心に先端から穿設して先端凹部を形成する先端凹部形成工程と、
前記ボルト軸部の先端側の所定部の外周に雄螺子の谷底と同一若しくはそれより深い環状溝部を形成する環状溝部形成工程と、
前記ボルト軸部と略平行に所定荷重を所定時間印加して前記環状溝部形成工程で形成された前記環状溝部における前記ボルト軸部を、変形量αが前記雄螺子のピッチの大きさをPとしたとき、(n+1/30)P≦α≦(n+5/18)P好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/4)Pより好ましくは(n+1/15)P≦α≦(n+1/5)P、又は、(n−5/18)P≦α≦(n−1/30)P好ましくは(n−1/4)P≦α≦(n−1/15)Pより好ましくは(n−1/5)P≦α≦(n−1/15)P(但し、nは0以上の整数とする。αは圧縮方向を正、引張方向を負とする。)だけ変形させて弾性部を形成する弾性部形成工程と、
を備えていることを特徴とする緩み止めボルトの製造方法。
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