JP2004084844A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
トロイダル型無段変速機 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004084844A JP2004084844A JP2002248526A JP2002248526A JP2004084844A JP 2004084844 A JP2004084844 A JP 2004084844A JP 2002248526 A JP2002248526 A JP 2002248526A JP 2002248526 A JP2002248526 A JP 2002248526A JP 2004084844 A JP2004084844 A JP 2004084844A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- power roller
- ball
- trunnion
- toroidal
- continuously variable
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Friction Gearing (AREA)
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
【課題】パワーローラのディスク軸方向の揺動範囲あるいは平行移動範囲にかかわらず、常にパワーローラの揺動あるいは平行移動に追従する転がり接触が確保されることにより、パワーローラの揺動抵抗あるいは平行移動抵抗を低く抑えることができるトロイダル型無段変速機を提供すること。
【解決手段】第1パワーローラ10は、入力ディスク3の動力を出力ディスク8に伝達する内輪30と、該内輪30に対しパワーローラ軸受31を介して回転自在に支持された外輪32と、トラニオン14のパワーローラ支持面14aと前記外輪32の背面32aとの間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、前記背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造と、による無限軌道背面ボールベアリング33,34(背面ボールベアリング)とした。
【選択図】 図3
【解決手段】第1パワーローラ10は、入力ディスク3の動力を出力ディスク8に伝達する内輪30と、該内輪30に対しパワーローラ軸受31を介して回転自在に支持された外輪32と、トラニオン14のパワーローラ支持面14aと前記外輪32の背面32aとの間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、前記背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造と、による無限軌道背面ボールベアリング33,34(背面ボールベアリング)とした。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の変速機として適用されるトロイダル型無段変速機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、外輪の背面支持技術が開示されたトロイダル型無段変速機としては、例えば、特開平8−240252号公報に記載のものが知られている。
【0003】
この従来出典には、トラニオンのパワーローラ支持面と外輪の背面との間に介装される背面ベアリングとして、ニードルローラを転動体とし、複数のニードルローラを保持器のローラ穴に装着した保持器付き背面ローラベアリングを用いたものが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のトロイダル型無段変速機にあっては、ニードルローラを保持する保持器が、パワーローラの揺動角度範囲より小さい角度範囲にてストッパに当たるように構成されているため、ストッパに当たる前は、パワーローラの揺動に追従する転がり接触により低い揺動抵抗となるが、ストッパに当たってしまうと、その後は転がりでパワーローラの揺動に追従できなくなり、滑りとなってしまい、揺動抵抗が増大してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、パワーローラのディスク軸方向の揺動範囲あるいは平行移動範囲にかかわらず、常にパワーローラの揺動あるいは平行移動に追従する転がり接触が確保されることにより、パワーローラの揺動抵抗あるいは平行移動抵抗を低く抑えることができるトロイダル型無段変速機を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明では、入力ディスクと、出力ディスクと、これら入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイド状溝に挟持される複数のパワーローラと、該パワーローラを回転可能に支持するトラニオンとを備え、前記パワーローラは、入力ディスクの動力を出力ディスクに伝達する内輪と、該内輪に対しパワーローラ軸受を介して回転自在に支持された外輪と、前記トラニオンのパワーローラ支持面と前記外輪の背面との間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、前記背面ベアリングを、前記外輪の背面と前記トラニオンのパワーローラ支持面とを転動面とする複数のボールと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボールを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとした。
【0007】
ここで、「遊設構造」とは、転動体であるボールが転動しながら自由に移動できるボール軌道溝やボール軌道穴や広い領域に形成されたボール保持溝等をいい、このうち、ボール軌道穴は、トラニオンにボール径よりも少し大きな内径の穴を形成しても良いし、また、内径がボール径よりも少し大きなパイプ部材の内面により形成しても良い。
【0008】
また、「パワーローラ」は、トラニオンに対しパワローラ支持軸を介して揺動可能に支持しても良いし、また、トラニオンのパワーローラ収納面に対し平行移動可能に支持しても良い。
【0009】
【発明の効果】
本発明のトロイダル型無段変速機にあっては、背面ベアリングとして、転動体をボールとする保持器無しの背面ボールベアリングを採用したため、パワーローラのディスク軸方向の揺動範囲あるいは平行移動範囲にかかわらず、常にパワーローラの揺動あるいは平行移動に追従する転がり接触が確保されることにより、パワーローラの揺動抵抗あるいは平行移動抵抗を低く抑えることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトロイダル型無段変速機を実現する実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、第1実施例は請求項1,2,3に係る発明に対応し、第2実施例は請求項4に係る発明に対応し、第3実施例は請求項5に係る発明に対応し、第4実施例は請求項6,7に係る発明に対応する。
【0011】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速機構を示す概略図で、エンジンからの回転駆動力は、図外のトルクコンバータおよび前後進切換え機構を介して入力軸1に入力される。
【0012】
前記入力軸1と同軸上にトルク伝達軸2が配置され、該トルク伝達軸2の両端部位置には、第1入力ディスク3と第2入力ディスク4を、軸方向移動可能にスプライン結合している。
【0013】
前記第1入力ディスク3の背面と入力軸1との間には、入力トルクに応じて軸方向推力を発生するローディングカム機構5を介装している。
【0014】
前記第2入力ディスク4の背面とトルク伝達軸2の端部に螺合されたローディングナット6との間には、両入力ディスク3,4にプリロードを付与する皿バネ7を介装している。
【0015】
前記両入力ディスク3,4の中間位置には、トルク伝達軸2に遊装した出力ディスク8を配置している。この出力ディスク8は、2つの出力ディスクの背面を互いに合わせて一体結合したもので、出力ディスク8の外周部には出力ギア9を形成している。
【0016】
前記第1入力ディスク3の出力ディスク8側対向面と、前記第2入力ディスク4の出力ディスク8側対向面と、前記出力ディスク8の両入力ディスク3,4に対向する対向面には、それぞれトロイド状溝3a,4a,8a,8bを形成している。
【0017】
前記トロイド状溝3a,8aとの間には、左右2個の第1パワーローラ10,10を油膜せん断力により動力の受け渡しを可能に挟持している。同様に、トロイド状溝4a,8bとの間には、左右2個の第2パワーローラ11,11を油膜せん断力により動力の受け渡しを可能に挟持している。
【0018】
そして、第1入力ディスク3と出力ディスク8と第1パワーローラ10,10により第1トロイダル変速部12を構成し、第2入力ディスク4と出力ディスク8と第2パワーローラ11,11により第2トロイダル変速部13を構成している。
【0019】
上記変速機構において、各パワーローラ10,10,11,11は、後述する作動により変速比に応じた傾転角が得られるようにそれぞれ傾転され、両入力ディスク3,4の入力回転を無段階(連続的)に変速して出力ディスク8に伝達する。
【0020】
図2は第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速制御系を示す概略図である。第1パワーローラ10,10は、トラニオン14,14の一端部に支持されていて、パワーローラ回転軸15a,15aを中心として回転自在であり、揺動軸15c,15cを中心として揺動自在である。この第1パワーローラ10,10を支持するトラニオン14,14は、傾転軸15b,15bを中心に傾転可能に設けられていて、その他端部には、トラニオン14,14を軸方向に移動させる油圧アクチュエータとしてのサーボピストン16,16を設けている。なお、第2パワーローラ11,11も同様に、図外のトラニオンの一端に支持されていて、トラニオンを軸方向に移動させる油圧アクチュエータとしてのサーボピストンを設けている。そして、4個のトラニオンは、これらが同期して動くように図外の同期ワイヤにより連結されている。
【0021】
前記サーボピストン16,16を作動制御する油圧制御系として、ピストン16a,16aにより画成されるハイ側油室16b,16bに接続されるハイ側油路17と、ロー側油室16c,16cに接続されるロー側油路18と、ハイ側油路17を接続するポート19aとロー側油路18を接続するポート19bを有する変速制御弁19とが設けられている。
【0022】
前記変速制御弁19のライン圧ポート19cには、図外のオイルポンプ及びリリーフ弁を有する油圧源からのライン圧が供給される。
【0023】
前記変速制御弁19の変速スプール19dは、トラニオン14,14の軸方向及び傾転方向を検知し、変速制御弁19にフィードバックするレバー20及びプリセスカム21と連動すると共に、ステップモータ22により軸方向に変位するように駆動される。
【0024】
前記ステップモータ22を駆動制御する電子制御系として、CVTコントロールユニット23が設けられ、このCVTコントロールユニット23には、スロットル開度センサ24、エンジン回転センサ25、入力ディスク回転センサ26、出力軸回転センサ(車速センサ)27、インヒビタースイッチ28、油温センサ29等からの入力情報が取り込まれる。
【0025】
図3は第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン14を示す正面図、図4は第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用された第1パワーローラ10及びトラニオン14を示す断面図、図5は第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン14を示す背面図、図6は第1実施例の背面ベアリングとして採用された無限軌道背面ボールベアリングのボール軌道溝とパイプ状保持器の連結部を示す断面図である。なお、第2パワーローラ11及びそのトラニオンについても同じ構造である。
【0026】
第1パワーローラ10は、図4に示すように、入力ディスク3の動力を出力ディスク8に伝達する内輪30と、該内輪30に対しパワーローラ軸受31を介して回転自在に支持された外輪32と、前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aと前記外輪32の背面32aとの間に介装された背面ベアリングと、を有する。
【0027】
前記背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとした。
【0028】
前記背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aに形成され、両端部をトラニオン14の両側面位置まで延ばしたボール軌道溝33b,34bと、前記トラニオン14の背面及び両側面に巻き付け、両端をボール軌道溝33b,34bに開口したパイプ状保持器33c,34cと、前記ボール軌道溝33b,34bおよびパイプ状保持器33c,34cの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列した複数のボール33a,34aと、を有する無限軌道背面ボールベアリングとした。
【0029】
前記ボール軌道溝33bは、図6に示すように、ボール33aの半径程度の深さを持つ直線状の半円弧溝とし、ボール軌道溝33bのうちパイプ状保持器33cに連なる両端部には円弧溝部33b’を形成している。また、パイプ状保持器33cは、図6に示すように、内径がボール33aの外径より少し大きな径を持つ弾性部材により構成し、パイプ状保持器33cのうちボール軌道溝33bに連なる両端部に、パワーローラ10が最大揺動位置まで揺動しても外輪32の背面32aと干渉しないように、外側のみにパイプ案内部33c’を形成している。
【0030】
前記パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、前記無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのうち、前記パワーローラ支持軸35より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリング33と、前記パワーローラ支持軸35より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリング34とによる構成とした。
【0031】
ここで、パワーローラ支持軸35の揺動中心は、図3に示すように、トラニオン軸部35bの中心軸である揺動軸15cであり、パワーローラ支持軸35のオフセット量は、揺動軸15cとパワーローラ回転軸15aとの長さLである。
【0032】
なお、図3及び図4において、36はトラニオンシャフト、37は内輪支持ベアリング、38は軸支持ベアリング、39はシャフト部潤滑油溝、40はトラニオン部潤滑油路、41は支持軸部潤滑油路、42は外輪部潤滑油路である。
【0033】
次に、作用を説明する。
【0034】
[変速比制御作用]
トロイダル型無段変速機は、トラニオン14,14を傾転軸15bの方向に変位し、パワーローラ10,10を傾転させることによって変速比を変える。
【0035】
つまり、CVTコントロールユニット23からの目標変速比が得られる駆動指令によりステップモータ22を回転させるとによって変速スプール19dが変位すると、サーボピストン16,16の一方のサーボピストン室に作動油が導かれ、他方のサーボピストン室から作動油が排出され、トラニオン14,14が傾転軸15bの方向に変位する。
【0036】
これにより、パワーローラ10,10のパワーローラ回転軸15a,15aがディスク回転中心位置に対してオフセットする。このオフセットによりパワーローラ10,10と入出力ディスク3,8との接触部で発生するサイドスリップ力によりパワーローラ10,10が傾転する。
【0037】
この傾転運動およびオフセットは、プリセスカム21及びレバー20を介して変速スプール19dに伝達され、ステップモータ22との釣り合い位置で静止し、所定の傾転角となった時点でトラニオン14,14に与えた変位が元のディスク回転中心位置に戻され、パワーローラ10,10の傾転動作を停止することでなされる。変速比は、パワーローラ10,10の傾転角により決まる。なお、パワーローラ11,11についても同様の変速比制御作用を示す。
【0038】
[パワーローラの背面支持作用]
上記変速比制御において、入出力ディスク3,8とパワーローラ10,10の内輪30のトルク伝達は、油膜せん断による摩擦によって行われる。よって、入出力ディスク3,8には、変速比の変化にかかわらずパワーローラ10,10との摩擦接触を保つようにローディング力が作用し、パワーローラ10,10は、変速比に応じた入出力ディスク3,8の間隔の変化に追従して揺動軸15cを中心とする揺動運動を行う。
【0039】
また、入出力ディスク3,8に対するパワーローラ10,10の組み付け時、多少の製造誤差やバラツキがあっても入出力ディスク3,8とパワーローラ10,10との摩擦接触を保ちながら組み付けることができるように、パワーローラ10,10は、揺動軸15cを中心として揺動し、組み付け時のバラツキを吸収する。
【0040】
以上のように、パワーローラ10の外輪32の背面32aとトラニオン14のパワーローラ支持面14aとの間には、パワーローラ10の揺動をスムーズに行わせるために背面ベアリングが設けられている。
【0041】
しかしながら、従来のように、背面ベアリングとして、ニードルローラを転動体とし、複数のニードルローラを保持器のローラ穴に装着した保持器付き背面ローラベアリングを用いた場合、ニードルローラを保持する保持器が、パワーローラの揺動角度範囲より小さい角度範囲にてストッパに当たるように構成されているため、ストッパに当たる前は、パワーローラの揺動に追従する転がり接触により低い揺動抵抗となるが、ストッパに当たってしまうと、その後は転がりでパワーローラの揺動に追従できなくなり、滑りとなってしまい、揺動抵抗が増大してしまう。
【0042】
これに対し、第1実施例では、背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造(ボール軌道溝33b,34bおよびパイプ状保持器33c,34c)による第1無限軌道背面ボールベアリング33および第2無限軌道背面ボールベアリング34としたため、パワーローラ10のディスク軸方向の揺動範囲にかかわらず、常にパワーローラ10の揺動に追従する転がり接触が確保され、パワーローラ10の揺動抵抗を低く抑えることができる。
【0043】
また、無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのうち、パワーローラ支持軸35より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリング33と、パワーローラ支持軸35より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリング34とによる構成としたことで、外輪32の背面32aに作用する力が、2列のボール33a,34aにより分担して受けられることで、外輪32のトラニオン14に対する片当たり支持が防止され、2列のボール33a,34aにより規定される面上をパワーローラ10,10が揺動するという安定した揺動運動を確保することができる。
【0044】
そして、パワーローラ10の揺動抵抗(フリクション)が低く安定することにより、トラクション保証性能(同期安定性)が向上する。すなわち、トロイダル型無段変速機は、動力を伝達するために、入出力ディスク3,8とパワーローラ10,10を大きな力で押し付け、オイルをガラス状化させているが、熱やフリクションによりロスが発生する。パワーローラ10,10が揺動する際の揺動抵抗も押し付け力の大きなロスとなる。そして、ロスした後の押し付け力が、動力を伝達し得る力以下になると、4つのパワーローラ10,10,11,11が同期しなくなり(「傾転割れ」という)、動力を伝達できなくなる。よって、揺動抵抗が低く安定することによりロスが少なくなると、同期安定性が向上する。加えて、ロスが少なくなると、元々の押し付け力を低く抑えることができ、動力伝達効率の向上を期待することもできる。
【0045】
なお、トラニオン14に大きなローディング力が作用した時には、トラニオン14が変形し、ボール33a,34aが脱落するのではという懸念があるが、
▲1▼ボール33a,34aの径をトラニオン14及び外輪32の変形量に対し十分に大きく設定している。
▲2▼ボール軌道溝33b,34bに対するパイプ状保持器33c,34cの開口部を外輪32の背面32aにて蓋ができるように開口部の大きさを設定している。という理由により、トラニオン14が大きく変形してもボール33a,34aが脱落することは無い。
【0046】
次に、効果を説明する。
【0047】
(1) 入力ディスク3と、出力ディスク8と、これら入出力ディスク3,8の対向面にそれぞれ形成されたトロイド状溝3a,8aに挟持される2つの第1パワーローラ10,10と、該第1パワーローラ10,10を傾転可能に支持するトラニオン14,14とを備え、前記第1パワーローラ10は、入力ディスク3の動力を出力ディスク8に伝達する内輪30と、該内輪30に対しパワーローラ軸受31を介して回転自在に支持された外輪32と、前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aと前記外輪32の背面32aとの間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、前記背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとしたため、第1パワーローラ10のディスク軸方向の揺動範囲にかかわらず、常に第1パワーローラ10の揺動に追従する転がり接触が確保されることにより、第1パワーローラ10の揺動抵抗を低く抑えることができる。
【0048】
(2) 背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aに形成され、両端部をトラニオン14の両側面位置まで延ばしたボール軌道溝33b,34bと、前記トラニオン14の背面及び両側面に巻き付け、両端をボール軌道溝33b,34bに開口したパイプ状保持器33c,34cと、前記ボール軌道溝33b,34bおよびパイプ状保持器33c,34cの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列した複数のボール33a,34aと、を有する無限軌道背面ボールベアリングとしたため、ボール軌道溝33b,34bに存在するボール33a,34aのみが第1パワーローラ10からの力を受け、パイプ状保持器33c,34cに存在するボール33a,34aは第1パワーローラ10からの力を受けないというように、無限軌道での移動分担によりボール33a,34aへ負荷が与えられることで、ボール33a,34aの摩耗が低く抑えられ、ボール耐久性を確保することができる。
【0049】
(3) パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、前記無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのうち、前記パワーローラ支持軸35より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリング33と、前記パワーローラ支持軸35より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリング34とによる構成としたため、パワーローラ10のディスク軸方向の揺動範囲にかかわらず、2列のボール33a,34aにより規定される面をパワーローラ10が転がり揺動する安定した動作が確保され、パワーローラ10の揺動抵抗が低く安定になることにより、4つのパワーローラ10,10,11,11の同期安定性(=トラクション保証性能)を向上させることができる。
【0050】
(第2実施例)
この第2実施例は、2つの無限軌道背面ボールベアリングにかかるトラクション力の大きさを考慮し、ボール径に大小関係を設定した例である。
【0051】
すなわち、図7及び図8に示すように、前記第1無限軌道背面ボールベアリング33と第2無限軌道背面ボールベアリング34のうち、パワーローラ10の揺動中心(トラニオン軸部35bの揺動軸15c)から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’のボール径を、パワーローラ10の揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aのボール径より大きく設定した。なお、33b’はボール軌道溝、33c’はパイプ状保持器であり、他の構成は、第1実施例と同じであるため、図示並びに説明を省略する。
【0052】
作用を説明すると、パワーローラ10が揺動するとき、揺動中心から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’は、揺動スパンが長くなる分、外輪32から与えられるモーメント力が大きくなり、揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aは、揺動スパンが短くなる分、外輪32から与えられるモーメント力が小さくなる。
【0053】
このため、第1無限軌道背面ボールベアリング33と第2無限軌道背面ボールベアリング34とで同じ径のボールを使用した場合、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール摩耗が大きくなり、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボールが摩耗限度になると耐久性限界となる。
【0054】
これに対し、第2実施例のように、パワーローラ10の揺動中心から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’のボール径を、パワーローラ10の揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aのボール径より大きく設定すると、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール摩耗が小さく抑えられ、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’の摩耗限度時期と、第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aの摩耗限度時期とをほぼ同じ時期とすることができ、両無限軌道背面ボールベアリング33,34の耐久性を向上させることができる。
【0055】
次に、効果を説明する。
【0056】
(4) 第1無限軌道背面ボールベアリング33と第2無限軌道背面ボールベアリング34のうち、パワーローラ10の揺動中心から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’のボール径を、パワーローラ10の揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aのボール径より大きく設定したため、両無限軌道背面ボールベアリング33,34の耐久性を向上させることができる。
【0057】
(第3実施例)
第3実施例は、パワーローラ10の揺動に合わせた形状のボール軌道溝にすると共に、トラニオン14の背面位置においてパイプ状保持器をクロスさせ、一つの無限軌道とした例である。
【0058】
すなわち、図9及び図10に示すように、パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、無限軌道背面ボールベアリング50を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのパワーローラ支持軸35より上下位置に形成され、上に凸と下に凸の第1湾曲ボール軌道溝50a及び第2湾曲ボール軌道溝50bと、トラニオン14の背面位置においてクロスさせて巻き付け、両端をボール軌道溝50a,50bに開口した第1パイプ状保持器50c及び第2パイプ状保持器50dと、前記両湾曲ボール軌道溝50a,50bおよび両パイプ状保持器50c,50dの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列したボール50eと、を有する構成とした。
【0059】
そして、両パイプ状保持器50c,50dは、図11に示すように、内径がボール50eの外径より少し大きな径を持つ弾性部材により構成し、両パイプ状保持器50c,50dのうちボール軌道溝50a,50bに連なる両端部に、パワーローラ10が最大揺動位置まで揺動しても外輪32の背面32aと干渉しないように、外側のみにパイプ案内部50c’,50d’を形成している。なお、他の構成は、第1実施例と同じであるため、図示並びに説明を省略する。
【0060】
作用を説明すると、ボール軌道溝を直線ではなく、上に凸の第1湾曲ボール軌道溝50aと下に凸の第2湾曲ボール軌道溝50bとしたため、パワーローラ10の揺動方向とボール50eの転動方向が一致し、ボール50eの滑りが最小に抑えられ、パワーローラ10の揺動時にボール50eを確実に転がりとして使うことが可能となる。この結果、揺動抵抗(フリクション)が低く抑えられる。
【0061】
また、トラニオン14の背面位置において第1パイプ状保持器50cと第2パイプ状保持器50dとをクロスさせて巻き付けることで、長い全長による一つの無限軌道としたため、この無限軌道に連なる複数のボール50eのうち、外輪32の背面32aに接触するボール50eの使用率が低下する。
【0062】
次に、効果を説明する。
【0063】
(5) パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、無限軌道背面ボールベアリング50を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのパワーローラ支持軸35より上下位置に形成され、上に凸と下に凸の第1湾曲ボール軌道溝50a及び第2湾曲ボール軌道溝50bと、トラニオン14の背面位置においてクロスさせて巻き付け、両端をボール軌道溝50a,50bに開口した第1パイプ状保持器50c及び第2パイプ状保持器50dと、前記両湾曲ボール軌道溝50a,50bおよび両パイプ状保持器50c,50dの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列したボール50eと、を有する構成としたため、パワーローラ10の揺動方向とボール50eの転動方向が一致し、パワーローラ10の揺動抵抗を低く抑えることができると共に、無限軌道に連なる複数のボール50eのうち、外輪32の背面32aに接触するボール50eの使用率を低下させることができる。この結果、無限軌道背面ボールベアリング50の高寿命化が達成される。
【0064】
(第4実施例)
この第4実施例は、背面ベアリングを、設定領域に形成されたボール保持溝に複数のボールを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリングとした例である。
【0065】
すなわち、図12に示すように、背面ベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aと外輪32の背面32aのうち、パワーローラ支持面14aに設定された領域にボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリング60とした。
【0066】
より詳しく説明すると、パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、前記領域軌道背面ベアリング60を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aにパワーローラ10の揺動範囲より狭い範囲領域(図12のハッチングにて示す領域)でバスタブ状のボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた構成とした。なお、他の構成は、第1実施例と同じであるため、図示並びに説明を省略する。
【0067】
作用を説明すると、転動体として従来のニードルローラに代えてボール60bとし、複数のボール60bを、外輪32の背面32aに対し、全面的に敷き詰めることにより、パワーローラ10が揺動する時の揺動抵抗(フリクション)が低減し、動力伝達効率が向上するし、同期安定性が向上する。
【0068】
また、バスタブ状のボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた構成としたため、従来のニードルローラのような精度を必要とせず、領域軌道背面ボールベアリング60の管理が容易となる。
【0069】
次に、効果を説明する。
【0070】
(6) 背面ベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aと外輪32の背面32aのうち、パワーローラ支持面14aに設定された領域にボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリング60としたため、従来のニードルローラと保持器による背面ベアリングに比べ、精度を必要とせず、領域軌道背面ボールベアリング60の管理を容易に行うことができる。
【0071】
(7) パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、領域軌道背面ベアリング60を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aにパワーローラ10の揺動範囲より狭い範囲領域でバスタブ状のボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた構成としたため、簡単な構成としながら、パワーローラ10が揺動する時の揺動抵抗の低減を図ることができ、この結果、動力伝達効率や同期安定性を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明のトロイダル型無段変速機を第1実施例〜第4実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0073】
例えば、第1実施例〜第4実施例では、パワーローラをパワーローラ支持軸により揺動可能に支持する例を示したが、例えば、トラニオンのパワーローラ収納凹部の上下位置に傾斜面を設け、この傾斜面に沿ってパワーローラが平行移動可能に設けられたものにも適用することができる。
【0074】
第1実施例〜第4実施例では、遊設機構としてボール転動溝と、パイプ状保持器と、ボール保持溝とを用いた例を示したが、トラニオンに形成したボール穴等を遊設機構として用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速機構を示す概略図である。
【図2】第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速制御系を示す概略図である。
【図3】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す正面図である。
【図4】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン及びパワーローラを示す断面図である。
【図5】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す背面図である。
【図6】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用された無限軌道背面ボールベアリングのパイプ状保持器とボール転動溝との連結部を示す断面図である。
【図7】第2実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す側面図及び正面図である。
【図8】第2実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す背面図である。
【図9】第3実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す側面図及び正面図である。
【図10】第3実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す背面図である。
【図11】第3実施例のトロイダル型無段変速機に採用された無限軌道背面ボールベアリングのパイプ状保持器とボール転動溝との連結部を示す断面図である。
【図12】第4実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン及びパワーローラを示す断面図及び正面図である。
【符号の説明】
3 第1入力ディスク
4 第2入力ディスク
8 出力ディスク
10 第1パワーローラ
11 第2パワーローラ
14 トラニオン
14a トラニオン14のパワーローラ支持面
15a パワーローラ回転軸
15b 傾転軸
15c 揺動軸
30 内輪
31 パワーローラ軸受
32 外輪
32a 外輪32の背面
33 第1無限軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
34 第2無限軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
33a,34a ボール
33b,34b ボール軌道溝
33c,34c パイプ状保持器
35 パワーローラ支持軸
35a パワーローラ軸部
35b トラニオン軸部
33’ 第1無限軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
33a’ ボール
33b’ ボール軌道溝
33c’ パイプ状保持器
50 無限軌道背面ボールベアリング
50a 第1湾曲ボール軌道溝
50b 第2湾曲ボール軌道溝
50c 第1パイプ状保持器
50d 第2パイプ状保持器
50e ボール
60 領域軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
60a ボール保持溝
60b ボール
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の変速機として適用されるトロイダル型無段変速機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、外輪の背面支持技術が開示されたトロイダル型無段変速機としては、例えば、特開平8−240252号公報に記載のものが知られている。
【0003】
この従来出典には、トラニオンのパワーローラ支持面と外輪の背面との間に介装される背面ベアリングとして、ニードルローラを転動体とし、複数のニードルローラを保持器のローラ穴に装着した保持器付き背面ローラベアリングを用いたものが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のトロイダル型無段変速機にあっては、ニードルローラを保持する保持器が、パワーローラの揺動角度範囲より小さい角度範囲にてストッパに当たるように構成されているため、ストッパに当たる前は、パワーローラの揺動に追従する転がり接触により低い揺動抵抗となるが、ストッパに当たってしまうと、その後は転がりでパワーローラの揺動に追従できなくなり、滑りとなってしまい、揺動抵抗が増大してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、パワーローラのディスク軸方向の揺動範囲あるいは平行移動範囲にかかわらず、常にパワーローラの揺動あるいは平行移動に追従する転がり接触が確保されることにより、パワーローラの揺動抵抗あるいは平行移動抵抗を低く抑えることができるトロイダル型無段変速機を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明では、入力ディスクと、出力ディスクと、これら入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイド状溝に挟持される複数のパワーローラと、該パワーローラを回転可能に支持するトラニオンとを備え、前記パワーローラは、入力ディスクの動力を出力ディスクに伝達する内輪と、該内輪に対しパワーローラ軸受を介して回転自在に支持された外輪と、前記トラニオンのパワーローラ支持面と前記外輪の背面との間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、前記背面ベアリングを、前記外輪の背面と前記トラニオンのパワーローラ支持面とを転動面とする複数のボールと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボールを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとした。
【0007】
ここで、「遊設構造」とは、転動体であるボールが転動しながら自由に移動できるボール軌道溝やボール軌道穴や広い領域に形成されたボール保持溝等をいい、このうち、ボール軌道穴は、トラニオンにボール径よりも少し大きな内径の穴を形成しても良いし、また、内径がボール径よりも少し大きなパイプ部材の内面により形成しても良い。
【0008】
また、「パワーローラ」は、トラニオンに対しパワローラ支持軸を介して揺動可能に支持しても良いし、また、トラニオンのパワーローラ収納面に対し平行移動可能に支持しても良い。
【0009】
【発明の効果】
本発明のトロイダル型無段変速機にあっては、背面ベアリングとして、転動体をボールとする保持器無しの背面ボールベアリングを採用したため、パワーローラのディスク軸方向の揺動範囲あるいは平行移動範囲にかかわらず、常にパワーローラの揺動あるいは平行移動に追従する転がり接触が確保されることにより、パワーローラの揺動抵抗あるいは平行移動抵抗を低く抑えることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトロイダル型無段変速機を実現する実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、第1実施例は請求項1,2,3に係る発明に対応し、第2実施例は請求項4に係る発明に対応し、第3実施例は請求項5に係る発明に対応し、第4実施例は請求項6,7に係る発明に対応する。
【0011】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速機構を示す概略図で、エンジンからの回転駆動力は、図外のトルクコンバータおよび前後進切換え機構を介して入力軸1に入力される。
【0012】
前記入力軸1と同軸上にトルク伝達軸2が配置され、該トルク伝達軸2の両端部位置には、第1入力ディスク3と第2入力ディスク4を、軸方向移動可能にスプライン結合している。
【0013】
前記第1入力ディスク3の背面と入力軸1との間には、入力トルクに応じて軸方向推力を発生するローディングカム機構5を介装している。
【0014】
前記第2入力ディスク4の背面とトルク伝達軸2の端部に螺合されたローディングナット6との間には、両入力ディスク3,4にプリロードを付与する皿バネ7を介装している。
【0015】
前記両入力ディスク3,4の中間位置には、トルク伝達軸2に遊装した出力ディスク8を配置している。この出力ディスク8は、2つの出力ディスクの背面を互いに合わせて一体結合したもので、出力ディスク8の外周部には出力ギア9を形成している。
【0016】
前記第1入力ディスク3の出力ディスク8側対向面と、前記第2入力ディスク4の出力ディスク8側対向面と、前記出力ディスク8の両入力ディスク3,4に対向する対向面には、それぞれトロイド状溝3a,4a,8a,8bを形成している。
【0017】
前記トロイド状溝3a,8aとの間には、左右2個の第1パワーローラ10,10を油膜せん断力により動力の受け渡しを可能に挟持している。同様に、トロイド状溝4a,8bとの間には、左右2個の第2パワーローラ11,11を油膜せん断力により動力の受け渡しを可能に挟持している。
【0018】
そして、第1入力ディスク3と出力ディスク8と第1パワーローラ10,10により第1トロイダル変速部12を構成し、第2入力ディスク4と出力ディスク8と第2パワーローラ11,11により第2トロイダル変速部13を構成している。
【0019】
上記変速機構において、各パワーローラ10,10,11,11は、後述する作動により変速比に応じた傾転角が得られるようにそれぞれ傾転され、両入力ディスク3,4の入力回転を無段階(連続的)に変速して出力ディスク8に伝達する。
【0020】
図2は第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速制御系を示す概略図である。第1パワーローラ10,10は、トラニオン14,14の一端部に支持されていて、パワーローラ回転軸15a,15aを中心として回転自在であり、揺動軸15c,15cを中心として揺動自在である。この第1パワーローラ10,10を支持するトラニオン14,14は、傾転軸15b,15bを中心に傾転可能に設けられていて、その他端部には、トラニオン14,14を軸方向に移動させる油圧アクチュエータとしてのサーボピストン16,16を設けている。なお、第2パワーローラ11,11も同様に、図外のトラニオンの一端に支持されていて、トラニオンを軸方向に移動させる油圧アクチュエータとしてのサーボピストンを設けている。そして、4個のトラニオンは、これらが同期して動くように図外の同期ワイヤにより連結されている。
【0021】
前記サーボピストン16,16を作動制御する油圧制御系として、ピストン16a,16aにより画成されるハイ側油室16b,16bに接続されるハイ側油路17と、ロー側油室16c,16cに接続されるロー側油路18と、ハイ側油路17を接続するポート19aとロー側油路18を接続するポート19bを有する変速制御弁19とが設けられている。
【0022】
前記変速制御弁19のライン圧ポート19cには、図外のオイルポンプ及びリリーフ弁を有する油圧源からのライン圧が供給される。
【0023】
前記変速制御弁19の変速スプール19dは、トラニオン14,14の軸方向及び傾転方向を検知し、変速制御弁19にフィードバックするレバー20及びプリセスカム21と連動すると共に、ステップモータ22により軸方向に変位するように駆動される。
【0024】
前記ステップモータ22を駆動制御する電子制御系として、CVTコントロールユニット23が設けられ、このCVTコントロールユニット23には、スロットル開度センサ24、エンジン回転センサ25、入力ディスク回転センサ26、出力軸回転センサ(車速センサ)27、インヒビタースイッチ28、油温センサ29等からの入力情報が取り込まれる。
【0025】
図3は第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン14を示す正面図、図4は第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用された第1パワーローラ10及びトラニオン14を示す断面図、図5は第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン14を示す背面図、図6は第1実施例の背面ベアリングとして採用された無限軌道背面ボールベアリングのボール軌道溝とパイプ状保持器の連結部を示す断面図である。なお、第2パワーローラ11及びそのトラニオンについても同じ構造である。
【0026】
第1パワーローラ10は、図4に示すように、入力ディスク3の動力を出力ディスク8に伝達する内輪30と、該内輪30に対しパワーローラ軸受31を介して回転自在に支持された外輪32と、前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aと前記外輪32の背面32aとの間に介装された背面ベアリングと、を有する。
【0027】
前記背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとした。
【0028】
前記背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aに形成され、両端部をトラニオン14の両側面位置まで延ばしたボール軌道溝33b,34bと、前記トラニオン14の背面及び両側面に巻き付け、両端をボール軌道溝33b,34bに開口したパイプ状保持器33c,34cと、前記ボール軌道溝33b,34bおよびパイプ状保持器33c,34cの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列した複数のボール33a,34aと、を有する無限軌道背面ボールベアリングとした。
【0029】
前記ボール軌道溝33bは、図6に示すように、ボール33aの半径程度の深さを持つ直線状の半円弧溝とし、ボール軌道溝33bのうちパイプ状保持器33cに連なる両端部には円弧溝部33b’を形成している。また、パイプ状保持器33cは、図6に示すように、内径がボール33aの外径より少し大きな径を持つ弾性部材により構成し、パイプ状保持器33cのうちボール軌道溝33bに連なる両端部に、パワーローラ10が最大揺動位置まで揺動しても外輪32の背面32aと干渉しないように、外側のみにパイプ案内部33c’を形成している。
【0030】
前記パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、前記無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのうち、前記パワーローラ支持軸35より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリング33と、前記パワーローラ支持軸35より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリング34とによる構成とした。
【0031】
ここで、パワーローラ支持軸35の揺動中心は、図3に示すように、トラニオン軸部35bの中心軸である揺動軸15cであり、パワーローラ支持軸35のオフセット量は、揺動軸15cとパワーローラ回転軸15aとの長さLである。
【0032】
なお、図3及び図4において、36はトラニオンシャフト、37は内輪支持ベアリング、38は軸支持ベアリング、39はシャフト部潤滑油溝、40はトラニオン部潤滑油路、41は支持軸部潤滑油路、42は外輪部潤滑油路である。
【0033】
次に、作用を説明する。
【0034】
[変速比制御作用]
トロイダル型無段変速機は、トラニオン14,14を傾転軸15bの方向に変位し、パワーローラ10,10を傾転させることによって変速比を変える。
【0035】
つまり、CVTコントロールユニット23からの目標変速比が得られる駆動指令によりステップモータ22を回転させるとによって変速スプール19dが変位すると、サーボピストン16,16の一方のサーボピストン室に作動油が導かれ、他方のサーボピストン室から作動油が排出され、トラニオン14,14が傾転軸15bの方向に変位する。
【0036】
これにより、パワーローラ10,10のパワーローラ回転軸15a,15aがディスク回転中心位置に対してオフセットする。このオフセットによりパワーローラ10,10と入出力ディスク3,8との接触部で発生するサイドスリップ力によりパワーローラ10,10が傾転する。
【0037】
この傾転運動およびオフセットは、プリセスカム21及びレバー20を介して変速スプール19dに伝達され、ステップモータ22との釣り合い位置で静止し、所定の傾転角となった時点でトラニオン14,14に与えた変位が元のディスク回転中心位置に戻され、パワーローラ10,10の傾転動作を停止することでなされる。変速比は、パワーローラ10,10の傾転角により決まる。なお、パワーローラ11,11についても同様の変速比制御作用を示す。
【0038】
[パワーローラの背面支持作用]
上記変速比制御において、入出力ディスク3,8とパワーローラ10,10の内輪30のトルク伝達は、油膜せん断による摩擦によって行われる。よって、入出力ディスク3,8には、変速比の変化にかかわらずパワーローラ10,10との摩擦接触を保つようにローディング力が作用し、パワーローラ10,10は、変速比に応じた入出力ディスク3,8の間隔の変化に追従して揺動軸15cを中心とする揺動運動を行う。
【0039】
また、入出力ディスク3,8に対するパワーローラ10,10の組み付け時、多少の製造誤差やバラツキがあっても入出力ディスク3,8とパワーローラ10,10との摩擦接触を保ちながら組み付けることができるように、パワーローラ10,10は、揺動軸15cを中心として揺動し、組み付け時のバラツキを吸収する。
【0040】
以上のように、パワーローラ10の外輪32の背面32aとトラニオン14のパワーローラ支持面14aとの間には、パワーローラ10の揺動をスムーズに行わせるために背面ベアリングが設けられている。
【0041】
しかしながら、従来のように、背面ベアリングとして、ニードルローラを転動体とし、複数のニードルローラを保持器のローラ穴に装着した保持器付き背面ローラベアリングを用いた場合、ニードルローラを保持する保持器が、パワーローラの揺動角度範囲より小さい角度範囲にてストッパに当たるように構成されているため、ストッパに当たる前は、パワーローラの揺動に追従する転がり接触により低い揺動抵抗となるが、ストッパに当たってしまうと、その後は転がりでパワーローラの揺動に追従できなくなり、滑りとなってしまい、揺動抵抗が増大してしまう。
【0042】
これに対し、第1実施例では、背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造(ボール軌道溝33b,34bおよびパイプ状保持器33c,34c)による第1無限軌道背面ボールベアリング33および第2無限軌道背面ボールベアリング34としたため、パワーローラ10のディスク軸方向の揺動範囲にかかわらず、常にパワーローラ10の揺動に追従する転がり接触が確保され、パワーローラ10の揺動抵抗を低く抑えることができる。
【0043】
また、無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのうち、パワーローラ支持軸35より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリング33と、パワーローラ支持軸35より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリング34とによる構成としたことで、外輪32の背面32aに作用する力が、2列のボール33a,34aにより分担して受けられることで、外輪32のトラニオン14に対する片当たり支持が防止され、2列のボール33a,34aにより規定される面上をパワーローラ10,10が揺動するという安定した揺動運動を確保することができる。
【0044】
そして、パワーローラ10の揺動抵抗(フリクション)が低く安定することにより、トラクション保証性能(同期安定性)が向上する。すなわち、トロイダル型無段変速機は、動力を伝達するために、入出力ディスク3,8とパワーローラ10,10を大きな力で押し付け、オイルをガラス状化させているが、熱やフリクションによりロスが発生する。パワーローラ10,10が揺動する際の揺動抵抗も押し付け力の大きなロスとなる。そして、ロスした後の押し付け力が、動力を伝達し得る力以下になると、4つのパワーローラ10,10,11,11が同期しなくなり(「傾転割れ」という)、動力を伝達できなくなる。よって、揺動抵抗が低く安定することによりロスが少なくなると、同期安定性が向上する。加えて、ロスが少なくなると、元々の押し付け力を低く抑えることができ、動力伝達効率の向上を期待することもできる。
【0045】
なお、トラニオン14に大きなローディング力が作用した時には、トラニオン14が変形し、ボール33a,34aが脱落するのではという懸念があるが、
▲1▼ボール33a,34aの径をトラニオン14及び外輪32の変形量に対し十分に大きく設定している。
▲2▼ボール軌道溝33b,34bに対するパイプ状保持器33c,34cの開口部を外輪32の背面32aにて蓋ができるように開口部の大きさを設定している。という理由により、トラニオン14が大きく変形してもボール33a,34aが脱落することは無い。
【0046】
次に、効果を説明する。
【0047】
(1) 入力ディスク3と、出力ディスク8と、これら入出力ディスク3,8の対向面にそれぞれ形成されたトロイド状溝3a,8aに挟持される2つの第1パワーローラ10,10と、該第1パワーローラ10,10を傾転可能に支持するトラニオン14,14とを備え、前記第1パワーローラ10は、入力ディスク3の動力を出力ディスク8に伝達する内輪30と、該内輪30に対しパワーローラ軸受31を介して回転自在に支持された外輪32と、前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aと前記外輪32の背面32aとの間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、前記背面ベアリングを、前記外輪32の背面32aと前記トラニオン14のパワーローラ支持面14aとを転動面とする複数のボール33a,34aと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボール33a,34aを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとしたため、第1パワーローラ10のディスク軸方向の揺動範囲にかかわらず、常に第1パワーローラ10の揺動に追従する転がり接触が確保されることにより、第1パワーローラ10の揺動抵抗を低く抑えることができる。
【0048】
(2) 背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aに形成され、両端部をトラニオン14の両側面位置まで延ばしたボール軌道溝33b,34bと、前記トラニオン14の背面及び両側面に巻き付け、両端をボール軌道溝33b,34bに開口したパイプ状保持器33c,34cと、前記ボール軌道溝33b,34bおよびパイプ状保持器33c,34cの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列した複数のボール33a,34aと、を有する無限軌道背面ボールベアリングとしたため、ボール軌道溝33b,34bに存在するボール33a,34aのみが第1パワーローラ10からの力を受け、パイプ状保持器33c,34cに存在するボール33a,34aは第1パワーローラ10からの力を受けないというように、無限軌道での移動分担によりボール33a,34aへ負荷が与えられることで、ボール33a,34aの摩耗が低く抑えられ、ボール耐久性を確保することができる。
【0049】
(3) パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、前記無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのうち、前記パワーローラ支持軸35より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリング33と、前記パワーローラ支持軸35より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリング34とによる構成としたため、パワーローラ10のディスク軸方向の揺動範囲にかかわらず、2列のボール33a,34aにより規定される面をパワーローラ10が転がり揺動する安定した動作が確保され、パワーローラ10の揺動抵抗が低く安定になることにより、4つのパワーローラ10,10,11,11の同期安定性(=トラクション保証性能)を向上させることができる。
【0050】
(第2実施例)
この第2実施例は、2つの無限軌道背面ボールベアリングにかかるトラクション力の大きさを考慮し、ボール径に大小関係を設定した例である。
【0051】
すなわち、図7及び図8に示すように、前記第1無限軌道背面ボールベアリング33と第2無限軌道背面ボールベアリング34のうち、パワーローラ10の揺動中心(トラニオン軸部35bの揺動軸15c)から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’のボール径を、パワーローラ10の揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aのボール径より大きく設定した。なお、33b’はボール軌道溝、33c’はパイプ状保持器であり、他の構成は、第1実施例と同じであるため、図示並びに説明を省略する。
【0052】
作用を説明すると、パワーローラ10が揺動するとき、揺動中心から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’は、揺動スパンが長くなる分、外輪32から与えられるモーメント力が大きくなり、揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aは、揺動スパンが短くなる分、外輪32から与えられるモーメント力が小さくなる。
【0053】
このため、第1無限軌道背面ボールベアリング33と第2無限軌道背面ボールベアリング34とで同じ径のボールを使用した場合、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール摩耗が大きくなり、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボールが摩耗限度になると耐久性限界となる。
【0054】
これに対し、第2実施例のように、パワーローラ10の揺動中心から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’のボール径を、パワーローラ10の揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aのボール径より大きく設定すると、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール摩耗が小さく抑えられ、第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’の摩耗限度時期と、第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aの摩耗限度時期とをほぼ同じ時期とすることができ、両無限軌道背面ボールベアリング33,34の耐久性を向上させることができる。
【0055】
次に、効果を説明する。
【0056】
(4) 第1無限軌道背面ボールベアリング33と第2無限軌道背面ボールベアリング34のうち、パワーローラ10の揺動中心から遠い位置に配置された第1無限軌道背面ボールベアリング33のボール33a’のボール径を、パワーローラ10の揺動中心から近い位置に配置された第2無限軌道背面ボールベアリング34のボール34aのボール径より大きく設定したため、両無限軌道背面ボールベアリング33,34の耐久性を向上させることができる。
【0057】
(第3実施例)
第3実施例は、パワーローラ10の揺動に合わせた形状のボール軌道溝にすると共に、トラニオン14の背面位置においてパイプ状保持器をクロスさせ、一つの無限軌道とした例である。
【0058】
すなわち、図9及び図10に示すように、パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、無限軌道背面ボールベアリング50を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのパワーローラ支持軸35より上下位置に形成され、上に凸と下に凸の第1湾曲ボール軌道溝50a及び第2湾曲ボール軌道溝50bと、トラニオン14の背面位置においてクロスさせて巻き付け、両端をボール軌道溝50a,50bに開口した第1パイプ状保持器50c及び第2パイプ状保持器50dと、前記両湾曲ボール軌道溝50a,50bおよび両パイプ状保持器50c,50dの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列したボール50eと、を有する構成とした。
【0059】
そして、両パイプ状保持器50c,50dは、図11に示すように、内径がボール50eの外径より少し大きな径を持つ弾性部材により構成し、両パイプ状保持器50c,50dのうちボール軌道溝50a,50bに連なる両端部に、パワーローラ10が最大揺動位置まで揺動しても外輪32の背面32aと干渉しないように、外側のみにパイプ案内部50c’,50d’を形成している。なお、他の構成は、第1実施例と同じであるため、図示並びに説明を省略する。
【0060】
作用を説明すると、ボール軌道溝を直線ではなく、上に凸の第1湾曲ボール軌道溝50aと下に凸の第2湾曲ボール軌道溝50bとしたため、パワーローラ10の揺動方向とボール50eの転動方向が一致し、ボール50eの滑りが最小に抑えられ、パワーローラ10の揺動時にボール50eを確実に転がりとして使うことが可能となる。この結果、揺動抵抗(フリクション)が低く抑えられる。
【0061】
また、トラニオン14の背面位置において第1パイプ状保持器50cと第2パイプ状保持器50dとをクロスさせて巻き付けることで、長い全長による一つの無限軌道としたため、この無限軌道に連なる複数のボール50eのうち、外輪32の背面32aに接触するボール50eの使用率が低下する。
【0062】
次に、効果を説明する。
【0063】
(5) パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、無限軌道背面ボールベアリング50を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aのパワーローラ支持軸35より上下位置に形成され、上に凸と下に凸の第1湾曲ボール軌道溝50a及び第2湾曲ボール軌道溝50bと、トラニオン14の背面位置においてクロスさせて巻き付け、両端をボール軌道溝50a,50bに開口した第1パイプ状保持器50c及び第2パイプ状保持器50dと、前記両湾曲ボール軌道溝50a,50bおよび両パイプ状保持器50c,50dの内面の全周にわたり転動可能に並べて配列したボール50eと、を有する構成としたため、パワーローラ10の揺動方向とボール50eの転動方向が一致し、パワーローラ10の揺動抵抗を低く抑えることができると共に、無限軌道に連なる複数のボール50eのうち、外輪32の背面32aに接触するボール50eの使用率を低下させることができる。この結果、無限軌道背面ボールベアリング50の高寿命化が達成される。
【0064】
(第4実施例)
この第4実施例は、背面ベアリングを、設定領域に形成されたボール保持溝に複数のボールを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリングとした例である。
【0065】
すなわち、図12に示すように、背面ベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aと外輪32の背面32aのうち、パワーローラ支持面14aに設定された領域にボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリング60とした。
【0066】
より詳しく説明すると、パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、前記領域軌道背面ベアリング60を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aにパワーローラ10の揺動範囲より狭い範囲領域(図12のハッチングにて示す領域)でバスタブ状のボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた構成とした。なお、他の構成は、第1実施例と同じであるため、図示並びに説明を省略する。
【0067】
作用を説明すると、転動体として従来のニードルローラに代えてボール60bとし、複数のボール60bを、外輪32の背面32aに対し、全面的に敷き詰めることにより、パワーローラ10が揺動する時の揺動抵抗(フリクション)が低減し、動力伝達効率が向上するし、同期安定性が向上する。
【0068】
また、バスタブ状のボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた構成としたため、従来のニードルローラのような精度を必要とせず、領域軌道背面ボールベアリング60の管理が容易となる。
【0069】
次に、効果を説明する。
【0070】
(6) 背面ベアリングを、トラニオン14のパワーローラ支持面14aと外輪32の背面32aのうち、パワーローラ支持面14aに設定された領域にボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリング60としたため、従来のニードルローラと保持器による背面ベアリングに比べ、精度を必要とせず、領域軌道背面ボールベアリング60の管理を容易に行うことができる。
【0071】
(7) パワーローラ10を回転可能に支持するパワーローラ軸部35aに対し、オフセット配置したトラニオン軸部35bを揺動中心とし、パワーローラ10を揺動可能に支持するパワーローラ支持軸35を設け、領域軌道背面ベアリング60を、トラニオン14のパワーローラ支持面14aにパワーローラ10の揺動範囲より狭い範囲領域でバスタブ状のボール保持溝60aを形成し、該ボール保持溝60aに複数のボール60bを敷き詰めた構成としたため、簡単な構成としながら、パワーローラ10が揺動する時の揺動抵抗の低減を図ることができ、この結果、動力伝達効率や同期安定性を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明のトロイダル型無段変速機を第1実施例〜第4実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0073】
例えば、第1実施例〜第4実施例では、パワーローラをパワーローラ支持軸により揺動可能に支持する例を示したが、例えば、トラニオンのパワーローラ収納凹部の上下位置に傾斜面を設け、この傾斜面に沿ってパワーローラが平行移動可能に設けられたものにも適用することができる。
【0074】
第1実施例〜第4実施例では、遊設機構としてボール転動溝と、パイプ状保持器と、ボール保持溝とを用いた例を示したが、トラニオンに形成したボール穴等を遊設機構として用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速機構を示す概略図である。
【図2】第1実施例のトロイダル型無段変速機の変速制御系を示す概略図である。
【図3】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す正面図である。
【図4】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン及びパワーローラを示す断面図である。
【図5】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す背面図である。
【図6】第1実施例のトロイダル型無段変速機に採用された無限軌道背面ボールベアリングのパイプ状保持器とボール転動溝との連結部を示す断面図である。
【図7】第2実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す側面図及び正面図である。
【図8】第2実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す背面図である。
【図9】第3実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す側面図及び正面図である。
【図10】第3実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオンを示す背面図である。
【図11】第3実施例のトロイダル型無段変速機に採用された無限軌道背面ボールベアリングのパイプ状保持器とボール転動溝との連結部を示す断面図である。
【図12】第4実施例のトロイダル型無段変速機に採用されたトラニオン及びパワーローラを示す断面図及び正面図である。
【符号の説明】
3 第1入力ディスク
4 第2入力ディスク
8 出力ディスク
10 第1パワーローラ
11 第2パワーローラ
14 トラニオン
14a トラニオン14のパワーローラ支持面
15a パワーローラ回転軸
15b 傾転軸
15c 揺動軸
30 内輪
31 パワーローラ軸受
32 外輪
32a 外輪32の背面
33 第1無限軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
34 第2無限軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
33a,34a ボール
33b,34b ボール軌道溝
33c,34c パイプ状保持器
35 パワーローラ支持軸
35a パワーローラ軸部
35b トラニオン軸部
33’ 第1無限軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
33a’ ボール
33b’ ボール軌道溝
33c’ パイプ状保持器
50 無限軌道背面ボールベアリング
50a 第1湾曲ボール軌道溝
50b 第2湾曲ボール軌道溝
50c 第1パイプ状保持器
50d 第2パイプ状保持器
50e ボール
60 領域軌道背面ボールベアリング(背面ベアリング)
60a ボール保持溝
60b ボール
Claims (7)
- 入力ディスクと、出力ディスクと、これら入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイド状溝に挟持される複数のパワーローラと、該パワーローラを回転可能に支持するトラニオンとを備え、
前記パワーローラは、入力ディスクの動力を出力ディスクに伝達する内輪と、該内輪に対しパワーローラ軸受を介して回転自在に支持された外輪と、前記トラニオンのパワーローラ支持面と前記外輪の背面との間に介装された背面ベアリングと、を有するトロイダル型無段変速機において、
前記背面ベアリングを、前記外輪の背面と前記トラニオンのパワーローラ支持面とを転動面とする複数のボールと、互いのボール位置関係を拘束することなく複数のボールを設ける遊設構造と、による背面ボールベアリングとしたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項1に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記背面ボールベアリングを、トラニオンのパワーローラ支持面に形成され、両端部をトラニオンの両側面位置まで延ばしたボール軌道溝と、前記トラニオンの背面及び両側面に巻き付け、両端をボール軌道溝に開口したパイプ状保持器と、前記ボール軌道溝およびパイプ状保持器の内面の全周にわたり転動可能に並べて配列した複数のボールと、を有する無限軌道背面ボールベアリングとしたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項2に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記パワーローラを回転可能に支持するパワーローラ軸部に対し、オフセット配置したトラニオン軸部を揺動中心とし、パワーローラを揺動可能に支持するパワーローラ支持軸を設け、
前記無限軌道背面ボールベアリングを、トラニオンのパワーローラ支持面のうち、前記パワーローラ支持軸より上側に配置した第1無限軌道背面ボールベアリングと、前記パワーローラ支持軸より下側に配置した第2無限軌道背面ボールベアリングとによる構成としたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項3に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記第1無限軌道背面ボールベアリングと第2無限軌道背面ボールベアリングのうち、パワーローラの揺動中心から遠い位置に配置された無限軌道背面ボールベアリングのボール径を、パワーローラの揺動中心から近い位置に配置された無限軌道背面ボールベアリングのボール径より大きく設定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項2に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記パワーローラを回転可能に支持するパワーローラ軸部に対し、オフセット配置したトラニオン軸部を揺動中心とし、パワーローラを揺動可能に支持するパワーローラ支持軸を設け、
前記無限軌道背面ボールベアリングを、前記トラニオンのパワーローラ支持面の前記パワーローラ支持軸より上下位置に形成され、上に凸と下に凸の第1湾曲ボール軌道溝及び第2湾曲ボール軌道溝と、前記トラニオンの背面位置においてクロスさせて巻き付け、両端をボール軌道溝に開口した第1パイプ状保持器及び第2パイプ状保持器と、前記両湾曲ボール軌道溝および両パイプ状保持器の内面の全周にわたり転動可能に並べて配列したボールと、を有する構成としたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項1に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記背面ベアリングを、前記トラニオンのパワーローラ支持面と前記外輪の背面のうち、少なくとも一方の面に設定された領域にボール保持溝を形成し、該ボール保持溝に複数のボールを敷き詰めた領域軌道背面ボールベアリングとしたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 請求項6に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記パワーローラを回転可能に支持するパワーローラ軸部に対し、オフセット配置したトラニオン軸部を揺動中心とし、パワーローラを揺動可能に支持するパワーローラ支持軸を設け、
前記領域軌道背面ベアリングを、前記トラニオンのパワーローラ支持面にパワーローラの揺動範囲より狭い範囲領域でバスタブ状のボール保持溝を形成し、該ボール保持溝に複数のボールを敷き詰めた構成としたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002248526A JP2004084844A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | トロイダル型無段変速機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002248526A JP2004084844A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | トロイダル型無段変速機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004084844A true JP2004084844A (ja) | 2004-03-18 |
Family
ID=32055881
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002248526A Pending JP2004084844A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | トロイダル型無段変速機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004084844A (ja) |
-
2002
- 2002-08-28 JP JP2002248526A patent/JP2004084844A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3541764B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3692945B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3752587B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2001227611A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2004169719A (ja) | トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 | |
JP2001165265A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3506230B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2004084844A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3726758B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP4055562B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2012052611A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3498906B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3506225B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3747583B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP3698060B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP4432483B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2004176864A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2002013605A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
US6875151B2 (en) | Toroidal-type continuously variable transmission | |
JP3794371B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP4172102B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2002031205A (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP5516859B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP4329262B2 (ja) | トロイダル型無段変速機 | |
JP2005172065A (ja) | トラクションドライブ式無段変速機 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20051020 |
|
A072 | Dismissal of procedure |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A072 Effective date: 20060418 |