JP2004062023A - 液晶表示素子および位相差フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的はある特定の波長分散を有する位相差フィルムを用いることにより広視野角を有する垂直配向モードの液晶表示素子を提供すること、および垂直配向モードの広視野角化を実現しうる位相差フィルムを提供することである。
【解決手段】ある特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを液晶セルと偏光フィルムとの間にそれぞれ1枚ずつ配置することにより、電圧無印加状態の液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶表示素子の広視野角化を実現する。
【選択図】 なし
【解決手段】ある特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを液晶セルと偏光フィルムとの間にそれぞれ1枚ずつ配置することにより、電圧無印加状態の液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶表示素子の広視野角化を実現する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子に関するもので、特に電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する垂直配向モードの液晶表示素子およびそれに用いられる位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は時計、電卓などのような小型のものからモニター、テレビといった大型のものまで広く用いられるようになった。このような液晶表示素子においては正の誘電率異方性を有する液晶分子を用いたTN(Twisted Nematic)モードが主流であった。TNモードの液晶表示素子の電圧無印加状態では、一方の基板に隣接する液晶分子の配向方向が、他方の基板に隣接する液晶分子の配向方向に対して約90°ねじれている。
【0003】
TNモードの液晶表示素子では様々な開発がなされているが、良質な黒表示、高コントラストを実現するためには電圧印加状態、つまり液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向している状態で黒を表示する必要がある。しかし、TNモードにおいては電圧印加状態においても液晶パネル基板に隣接する液晶分子は水平配向を維持しているために、液晶分子の複屈折により光の偏光状態が変化し、完全な黒表示ができず、高コントラストの実現が困難となっている。
【0004】
これに対し、垂直配向モード、いわゆるVA(Vertical Aligned)モードの液晶表示素子においては、液晶パネルを構成する一対の基板間に電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直に配向している。垂直配向モードにおいては液晶パネル基板に隣接している液晶分子もパネル面に対し略垂直な配向をしているため、光が液晶層を通過する際にほとんど偏光状態が変化しない。つまり、直交配置の偏光フィルム間に電圧無印加状態の垂直配向モードの液晶セルが存在する場合には、TNモードより良好な、ほぼ完全な黒表示が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、VAモードの液晶表示素子は正面での黒表示はほぼ完全であるが、広い視野角を得るためにはTNモードの液晶表示素子と同じく1枚以上の位相差フィルムを使用する必要がある。VAモードの液晶表示素子の視野角補償には特開平11−95208号公報、特開2000−131693号公報等に記載されているように、1軸性フィルムおよび/または2軸性フィルムが1枚以上用いられることが知られているが、黒表示の液晶表示素子を斜めから見た時の全光線透過率は低減できるものの、透過光の波長依存性が大きく、黒が着色するという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような問題を顧みてなされたものであり、特に液晶表示素子の黒表示を斜めから見たときの透過光の着色が低減された垂直配向モードの液晶表示素子を、ある特定の波長分散を有する位相差フィルムを用いることにより提供すると共にこれを実現する位相差フィルムを提供することを目的としている。
【0007】
いいかえれば、本発明の目的はある特定の波長分散を有する位相差フィルムを用いることにより広視野角を有する垂直配向モードの液晶表示素子を提供すること、および垂直配向モードの広視野角化を実現しうる位相差フィルムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ある特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを液晶セルと偏光フィルムとの間に特定の配置にて使用することにより、垂直配向モードにおいて液晶表示素子の広視野角化を実現することを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
1. 電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶セルと、該液晶セルの上下に相互の透過軸が直交するように配置された一対の偏光フィルムと、該液晶セルと該偏光フィルムとの間にそれぞれ一枚ずつ具備されてなる位相差フィルムとを含む液晶表示素子であって、該位相差フィルムの遅相軸が該位相差フィルムと隣接する偏光フィルムの透過軸に平行あるいは直交するように配置され、かつ、該位相差フィルムが下記式(1)および/または(2)を満たす液晶表示素子。
【0010】
1.025<R(450)/R(550)<1.070 (1)
1.025<K(450)/K(550)<1.070 (2)
(式中のR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける位相差フィルムの面内位相差値であり、下記式(3)によって表される。また、K(450)、K(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける厚み方向位相差値であり、下記式(4)によって表される。
【0011】
R=(nx−ny)×d (3)
K={(nx+ny)/2−nz}×d (4)
式中のnx、ny、nzは三次元屈折率であり、それぞれ位相差フィルム面内のx軸、y軸、およびx軸とy軸に垂直なz軸方向の屈折率である。また、dは位相差フィルムの厚みである。)
2. 位相差フィルムが下記式(5)および(6)を満たすことを特徴とする上記1記載の液晶表示素子。
【0012】
10nm<R(550)<100nm (5)
50nm<K(550)<200nm (6)
3. 位相差フィルムが下記式(7)を満たすことを特徴とする上記1〜2記載の液晶表示素子。
(式中のKSUM(550)は波長550nmにおける位相差フィルム二枚の厚み方向位相差値の和、KLC(550)は波長550nmにおける液晶セルの厚み方向位相差値であり、KOTH(550)は一対の偏光フィルム間における位相差フィルムと液晶セル以外の厚み方向位相差値の和である。)
4. 位相差フィルムの光弾性定数が70×10−12Pa−1以下である上記1〜3記載の液晶表示素子。
5. 位相差フィルムの吸水率1重量%以下である上記1〜4に記載の液晶表示素子。
6. 位相差フィルムが下記式(A)
【0013】
【化7】
【0014】
(上記式(A)においてR1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる少なくとも一種の基であり、Xは下記式(X)
【0015】
【化8】
【0016】
であり、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。)
で示される繰り返し単位および下記式(B)
【0017】
【化9】
【0018】
(上記式(B)においてR11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも一種の基であり、Yは下記式群(Y)
【0019】
【化10】
【0020】
であり、ここでR19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基であり、R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基であり、Ar1〜Ar3はそれぞれ独立に炭素数6〜10のアリール基から選ばれる少なくとも1種の基である。)
で示される繰り返し単位からなり、上記式(A)で表される繰り返し単位が全体の80〜30mol%を占めるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体からなる上記1〜5の記載の液晶表示素子。
7.位相差フィルムが下記式(C)
【0021】
【化11】
【0022】
(上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基から選ばれる。)で示される繰り返し単位が全体の30〜60mol%と、下記式(D)
【0023】
【化12】
【0024】
(上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基から選ばれる。)で示される繰り返し単位が全体の70〜40mol%を占めるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体からなる上記1〜6記載の液晶表示素子。
8. 上記1〜7記載の位相差フィルム。
【0025】
本発明でいう、垂直配向モードの液晶セルとは、少なくとも一方が透明である電極付き基板が向かい合うように一定の距離をおいて配置されており、この隙間に挟持された液晶分子長軸が電圧無印加状態において基板に略垂直な方向に配向した構造を有するものである。略垂直な方向に配向とは基板と表示画素部における液晶分子長軸とのなす角度の平均値が略垂直であることであり、一般には80°以上であり、よりこの好ましくは85°以上であり、さらに好ましくは87°以上である。また、特開2001−235750号公報に記載されているような電圧無印加時においても表示画素部以外では液晶が基板に対して並行配向しているようなものであっても良い。なお、ここで基板とは、ガラス、高分子フィルム等のプラスチックが挙げられる。
【0026】
垂直配向モードの液晶セルにおいて、平行基板間に液晶を垂直配向させただけでは電圧印加状態に液晶がさまざまな方位角方向に傾き、配向の不連続な部分、いわゆるディスクリネーションがランダムに生じ均一表示が得られないという現象がある。このディスクリネーションに関しては様々な研究が行われており、SID98DIGEST,(1998)p.1081「A Wide Viewing Angle Polymer Stabilized Homeotropic Aligned LCD」やDisplay99Late newspapers,(1999)p.31「A Wide Viewing Angle Back Side Exposure MVA TFT LCD with Novel Structure and Process」に記載されているように基板に突起体を形成すること、あるいは特開平7−199190号公報に記載されているように画素電極に窓部を設けることにより電圧印加時の液晶分子の傾く方向を制御しているものがある。さらに、シャープ技報第80号2001年8月p.11「Continuous Pinwheel Alignment (CPA) モードを用いたASV−LCDの開発」に記載されているように、液晶にカイラル材を加えることにより電圧印加時に液晶がねじれながら倒れるようになっているリバースTN方式もある。このように垂直配向モードの液晶セルの電圧印加状態における液晶の配向状態は様々な形態をとるものがあるが、本発明は電圧印加状態の液晶配向状態によって制限されるものではない。
【0027】
また、液晶の屈折率異方性と液晶を挟持している基板間距離との積で表される、波長550nmにおける液晶セルの厚み方向位相差値は、通常−450〜−250nm程度となるように設定される。
【0028】
本発明の(透過型の)液晶表示素子では、このような液晶セルの上下にその透過軸が略直交するような角度で一対の偏光フィルムが配置される。
【0029】
本発明によれば、驚くべきことに、液晶セルと偏光フィルムの間に、特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを、その遅相軸が隣接する当該偏光フィルムの透過軸と平行あるいは直交するように一枚ずつ配置することにより、垂直配向モードの液晶表示素子の視野角が格段に向上する。図1には本発明の液晶表示素子の一例を示した。図1では、かかる位相差フィルムが、偏光フィルム(HLC2−5618)と液晶セルの間に配置され、かつ該位相差フィルムの遅相軸は、隣接する該偏光フィルムの透過軸と平行になっている。液晶セルの上下に配置された一対の該位相差フィルムの波長分散値、面内位相差値、厚み方向位相差値は等しいことが望ましい。もちろん、本発明には、位相差フィルムの遅相軸が隣接する該偏光フィルムの透過軸と直交する場合も含まれるし、一対の位相差フィルムの波長分散値、面内位相差値、厚み方向位相差値が等しくなくてもよい。なお後述するが、偏光フィルムには通常保護フィルムが付されており、位相差フィルムはかかる保護フィルムを介して偏光フィルムと隣接してもよい。さらには、位相差フィルムと偏光フィルムとの隣接は通常粘着剤を介する場合が多いので、そのような粘着剤からなる粘着層があってもよい。
【0030】
ここで、かかる特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムとは、下記式(1)および(2)
1.025<R(450)/R(550)<1.070 (1)
1.025<K(450)/K(550)<1.070 (2)
の少なくとも一方を満足する。ここで、式中のR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける位相差フィルムの面内位相差値であり、下記式(3)によって表される。また、K(450)、K(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける厚み方向位相差値であり、下記式(4)によって表される。
【0031】
R=(nx−ny)×d (3)
K={(nx+ny)/2−nz}×d (4)
式中のnx、ny、nzは三次元屈折率であり、それぞれ位相差フィルムの面内x軸、y軸、およびx軸とy軸に垂直なz軸方向の屈折率である。また、dは位相差フィルムの厚みである。
【0032】
上記位相差フィルムはより好ましくは下記式(8)および/または(9)を満たすことである。
【0033】
1.03<R(450)/R(550)<1.06 (8)
1.03<K(450)/K(550)<1.06 (9)
また、位相差フィルムの波長550nmにおける面内位相差値は10〜100nmであり厚み方向位相差値は50〜200nmであることが好ましく、より好ましくは面内位相差値15〜65nmであり厚み方向位相差値80〜180nmであることである。また、偏光フィルム間に存在する光学異方層の厚み方向位相差値の和は−150nm〜150nmであることが好ましく、より好ましくは−100nm〜100nmである。なお、ここでいう光学異方層とは、液晶セルと二枚の位相差フィルム以外に例として偏光フィルムの保護膜(通常はトリアセチルセルロース(以下「TAC」)が挙げられる。通常TACフィルムは面配向しており、50nm程度の厚み方向位相差値を有している。
【0034】
上記の位相差フィルムは垂直配向モードの液晶表示素子の視野角補償に最適であり、これを用いることにより本発明の液晶表示素子は優れた視野角特性を有することが可能となる。
【0035】
また、位相差フィルムはそのハンドリング性および安定性の点から光弾性定数が70×10−12Pa−1以下で吸水率が0.1重量%以下であることが好ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶表示素子は、電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶セルと、該液晶セルの上下に相互の透過軸が直交するように配置された一対の偏光フィルムと、該液晶セルと該偏光フィルムとの間に位相差フィルムがそれぞれ一枚ずつ具備されてなり、かつ該位相差フィルムの遅相軸が該位相差フィルムと隣接する偏光フィルムの透過軸に平行あるいは直交するように配置されてなる液晶表示素子であって、該位相差フィルムが上記式(1)および/または(2)を満たすことを特徴とする液晶表示素子である。
【0037】
上記特性を満足する位相差フィルムの具体的な材料について以下に説明する。
【0038】
例えば、位相差フィルムが高分子配向フィルムからなる場合、光弾性定数は70×10−12Pa−1以下、好ましくは60×10−12Pa−1以下であることが好ましい。70×10−12Pa−1を越えると、位相差フィルムを貼り合わせる際の張力によって位相差が発現したり、他の材料との寸法安定性のミスマッチから生じる応力によって位相差が発現したりすることにより表示斑の問題が発生する場合がある。また、ガラス転移点温度が120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であることが好ましい。120℃未満では、表示素子の使用条件にもよるが、配向緩和などの問題が発生する場合がある。また、吸水率は1重量%以下であることが好ましい。高分子材料の吸水率が1重量%未満では位相差フィルムとして実用する上で光学特性変化や寸法変化などの問題がある場合があり、フィルム材料はフィルム吸水率が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の条件を満たすように選択することが良い。
【0039】
本発明に用いられる位相差フィルムは、2種類以上ブレンドした高分子組成物(ブレンド体とよぶことがある)からなるものでも共重合体からなるものでもよい。
【0040】
かかる高分子配向フィルムを構成する高分子材料は特に限定されず、耐熱性に優れ、光学性能が良好で、溶液製膜ができる材料、例えばポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリスルフィン系共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの熱可塑性ポリマーが好適である。この熱可塑性ポリマーを用いた場合、異なる位相差波長分散を有する高分子のブレンド体、あるいは異なる位相差波長分散を有するモノマー単位からなる共重合体により目的とする位相差フィルムを得ることができる。また、正の屈折率異方性を有する高分子と負の屈折率異方性を有する高分子とからなるブレンド体、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とからなる共重合体がより好適である。それらは2種類以上組み合わせてもよく、また1種類以上のブレンド高分子と1種類以上の共重合体とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
高分子組成物であれば、光学的に透明である必要があることから相溶ブレンドまたは、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。ブレンド高分子の具体的な組み合わせとしては、例えば負の光学異方性を有する高分子としてポリ(メチルメタクリレート)と、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(ビニリデンフロライド)、ポリ(エチレンオキサイド)及びポリ(ビニリデンフロライド−コ−トリフルオロエチレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(フェニレンオキサイド)と負の光学異方性を有する高分子としてポリスチレン、ポリ(スチレン−コ−ラウロイルマレイミド)、ポリ(スチレン−コ−シクロヘキシルマレイミド)及びポリ(スチレン−コ−フェニルマレイミド)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、負の光学異方性を有するポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)と正の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせ、正の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)と負の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−スチレン)との組み合わせ、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせを好適に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に透明性の観点から、ポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリ(フェニレンオキサイド)とを組み合わせたブレンドポリマー、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとを組み合わせたブレンド体が好ましい。
【0042】
また、共重合体としては例えばポリ(ブタジエン−コ−ポリスチレン)、ポリ(エチレン−コ−ポリスチレン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等を用いることが出来る。特に、フルオレン骨格を有するセグメントは負の光学異方性となり得るため、フルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等はより好ましく用いられる。
【0043】
上記高分子材料は、2種類以上の共重合体のブレンド体でもよく、1種以上の共重合体と上記ブレンド体または他のポリマーとからなるブレンド体であってもよく、2種類以上のブレンド体または共重合体または他のポリマーのブレンド体でもよい。
【0044】
ビスフェノール類とホスゲンあるいは炭酸ジフェニルなどの炭酸エステル形成性化合物と反応させて製造されるポリカーボネート共重合体は透明性、耐熱性、生産性に優れており特に好ましく用いることが出来る。ポリカーボネート共重合体としては、フルオレン骨格を有する構造を含む共重合体であることが好ましく、具体的には下記式(A)
【0045】
【化13】
【0046】
で示される繰り返し単位20〜70mol%と下記式(B)
【0047】
【化14】
【0048】
で示される繰り返し単位80〜30mol%からなるポリカーボネート共重合体、または高分子組成物またはこれらの混合物である。
【0049】
上記式(A)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0050】
Xは下記式(X)
【0051】
【化15】
【0052】
であり、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基としては上記したものと同じものをあげることができる。
【0053】
上記式(B)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0054】
Yは下記式群
【0055】
【化16】
【0056】
であり、R19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれ、かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。Ar1〜Ar3としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げられる。
【0057】
上記ポリカーボネートとしては、好ましくは下記式(C)
【0058】
【化17】
【0059】
で示される繰り返し単位30〜60mol%と、下記式(D)
【0060】
【化18】
【0061】
で示される繰り返し単位70〜40mol%からなるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体である、
さらに好ましくは上記式(C)で示される繰り返し単位45〜55mol%と上記式(D)で示される繰り返し単位55〜45mol%からなるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体である。
【0062】
上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、取り扱い性の点から好ましくはメチル基である。
【0063】
上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、経済性、フィルム特性等から水素原子が好ましい。
【0064】
本発明における位相差フィルムは、上記したフルオレン骨格を有するポリカーボネートを用いたものが好ましい。このフルオレン骨格を有するポリカーボネートとしては、例えば上記式(A)で表わされる繰り返し単位と上記式(B)で表わされる繰り返し単位とからなる異なる組成比のポリカーボネート共重合体のブレンド体がよく、上記式(A)の含有率はポリカーボネート全体の20〜70mol%が好ましく、より好ましくは30〜60mol%であり、さらに好ましくは40〜55mol%である。
【0065】
上記共重合体は、上記式(A)および(B)で表わされる繰り返し単位をそれぞれ2種類以上組み合わせたものでもよく、ブレンド体の場合も、上記繰り返し単位はそれぞれ2種類以上組み合わせてもよい。
【0066】
ここで上記モル比は共重合体、ブレンド体に関わらず、高分子配向フィルムを構成するポリカーボネートバルク全体で、例えば核磁気共鳴(NMR)装置により求めることができる。
【0067】
上記した共重合体および/またはブレンド体は公知の方法によって製造し得る。ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法等が好適に用いられる。ブレンド体の場合は、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。
【0068】
上記ポリカーボネートの極限粘度は0.3〜2.0dl/gであることが好ましい。0.3未満では脆くなり機械的強度が保てないといった問題があり、2.0を超えると溶液粘度が上がりすぎるため溶液製膜においてダイラインの発生等の問題や、重合終了時の精製が困難になるといった問題がある。
【0069】
位相差フィルムは透明であることが好ましく、ヘーズ値は3%以下、全光線透過率は85%以上であることが好ましい。
【0070】
かかる位相差フィルム中には、さらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等が含有されていてもよい。
【0071】
本発明の位相差フィルムは上記ポリカーボネートなどの未延伸フィルムに延伸等を行い、高分子鎖を配向させた高分子配向フィルムからなるものである。かかるフィルムの製造方法としては、公知の溶融押し出し法、溶液キャスト法等が用いられるが、膜厚むら、外観等の観点から溶液キャスト法がより好ましく用いられる。溶液キャスト法における溶剤としては、メチレンクロライド、ジオキソラン等が好適に用いられる。
【0072】
延伸法としては、例えば、フィルム流れ方向に速度差のついたクリップにてフィルムを幅方向に広げる同時二軸延伸法、フィルム幅方向をピンあるいはクリップにより把持し、把持した部分のフィルム流れ方向速度差を利用する縦一軸延伸方法、把持した部分を幅方向に広げる横一軸延伸法等があり、またこれらの延伸方法やロール速度差を利用するロール縦一軸延伸方法等を組み合わせた逐次二軸延伸法等が挙げられる。
【0073】
位相差フィルムを得るための連続延伸法の例をいくつか挙げたが、本発明の位相差フィルムの延伸方法はこれらに限定されるものではなく、生産性の観点から連続延伸が好ましいが、連続延伸である必要はない。
【0074】
上述したような延伸方法に代表される公知の技術にて延伸する際、フィルム中には延伸性を向上させる目的で、公知の可塑剤であるジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル、脂肪族二塩基エステル、グリセリン誘導体、グリコール誘導体等が含有してもよい。延伸時には、先述のフィルム製膜時に用いた有機溶剤をフィルム中に残留させ延伸しても良い。この有機溶剤の量としてはポリマー固形分対比1〜20重量%であることが好ましい。
【0075】
また、上記可塑剤や液晶等の添加剤は、本発明の位相差フィルムの位相差波長分散を変化させ得るが、添加量は、ポリマー固形分対比10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0076】
位相差フィルムの膜厚としては、1μmから300μmであることが好ましい。なお、本発明では位相差フィルムと表現しているが、共通して「フィルム」といい、あるいは「シート」といわれるいずれのものも含む意味である。
【0077】
先述したように、位相差フィルムの位相差波長分散を特定の値にするためには、高分子配向フィルムを構成する高分子の化学構造が重要であり、位相差波長分散はかなりの部分がその化学構造で決まるが、製膜条件、添加剤、延伸条件、ブレンド状態、分子量等によっても変動することに留意されるべきである。
【0078】
本発明において用いられる偏光フィルムは、公知のヨウ素や二色性色素等をポリビニールアルコール等のポリマー(バインダーポリマーともいう)中に分散し、延伸等により少なくともヨウ素等を配向固定したフィルム、主鎖型または側鎖型のポリアセチレンを延伸したフィルム等、公知の偏光フィルムを用いることが可能である。ポリビニールアルコールをバインダーポリマーとして用いたフィルムでは通常、該保護フィルムとしてセルロースアセテートフィルム等が積層されていることが多いので、偏光フィルムはこのような保護フィルムを積層して用いることもできるし、また該保護フィルムを用いずに本発明の位相差フィルムを該保護フィルムの代わりを兼ねさせても良い。
【0079】
用いる偏光フィルムの厚さとしては、上記のようなバインダーポリマーを用いたタイプであれば、通常30〜300μmである。また、液晶性で二色性の材料をコーテイングにより配向固定させたものであれば、厚みは0.01〜30μm程度である。
【0080】
本発明の液晶表示素子は、位相差フィルム、液晶パネル基板、偏光フィルムを組み合わせて用いる。位相差フィルム、液晶パネル基板、偏光フィルムは密着していることが好ましく、密着させるためには公知の粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0081】
また、本発明の液晶表示素子には、上記の位相差フィルム、液晶パネル基板、偏光フィルム等の部材間にてプリズムシート、拡散フィルムなどの各種光学フィルムを用いても良い。
【0082】
本発明の液晶表示素子は主として液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタなどの液晶表示素子として用いられるが、広視野角を必要とする垂直配向モードの液晶表示素子全てに用いることができる。
【0083】
また、位相差フィルムの面内位相差と厚み方向位相差の好ましい値は液晶の厚み方向位相差値、液晶および位相差フィルムの平均屈折率nにより若干変化するが、目的に応じて最適化される。
【0084】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
(評価法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0086】
(1)面内位相差値、厚み方向位相差値の測定
面内位相差R値および厚み方向位相差K値は、分光エリプソメータ『M150』(日本分光(株)製)により測定した。面内位相差値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、厚み方向位相差値は入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッチングすることにより三次元屈折率であるnx、ny、nzを求めた。なお、その際、別のパラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の『アッベ屈折計2−T』)により測定した。
【0087】
(2)吸水率の測定
乾燥させたフィルムの状態で膜厚を 130±50μmとした以外は、JISK 7209記載の『プラスチックの吸水率及び沸騰吸水率試験方法』に準拠して測定した。試験片の大きさは50mm正方形で、水温25℃、24時間サンプルを浸水させた後、重量変化を測定した。単位は重量%である。
【0088】
(3)高分子のガラス転移点温度(Tg)の測定
『DSC2920 Modulated DSC』(TA Instruments社製)により測定した。フィルム成形後ではなく、樹脂重合後、フレークスまたはチップの状態で測定した。
【0089】
(4)フィルム膜厚測定
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0090】
(5)高分子共重合比の測定
『JNM−alpha600』(日本電子社製)のプロトンNMRにより測定した。特にビスフェノールA(BPA)とビスクレゾールフルオレン(BCF)の共重合体の場合には、溶媒として重ベンゼンを用い、それぞれのメチル基のプロトン強度比から算出した。
【0091】
また、以下の実施例、比較例で用いたポリカーボネートのモノマー構造を以下に示す。
【0092】
【化19】
【0093】
[実施例1]
攪拌機、温度計および環流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水を仕込み、これに上記構造を有するモノマー(E)、(F)を50:50のモル比で溶解させ、少量のハイドロサルフィトを加えた。次にこれに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。得られた共重合体の組成比はモノマー仕込み量比とほぼ同等であった。
【0094】
この共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、215℃にて1.4倍に縦一軸延伸した後、215℃にて1.6倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0095】
次に、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板には、保護層としてTACフィルムが液晶セル側に具備されているが、該TACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0096】
このパネルを斜め方向のあらゆる角度から見てもほとんど光漏れはなく、漏れている光についても着色が無いものであった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
[比較例1]
JSR(株)製ARTONを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、175℃にて1.4倍に縦一軸延伸した後、175℃にて1.6倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0100】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0101】
このパネルを斜め方向から見たところ、特に45°方位において光漏れが顕著であり、漏れている光についても着色が確認できた。
【0102】
[比較例2]
帝人化成(株)製C1400を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、165℃にて1.1倍に縦一軸延伸した後、165℃にて1.2倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0103】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0104】
このパネルを斜め方向から見たところ、特に45°方位において光漏れが顕著であり、漏れている光についても着色が確認できた。
【0105】
[比較例3]
JSR(株)製ARTONを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、175℃にて1.3倍に縦一軸延伸した後、175℃にて1.5倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0106】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0107】
このパネルを斜め方向から見てもほとんど光漏れはなかったが、45°方位において若干の光漏れが確認でき、特に短波長の光漏れが顕著であった。
【0108】
[比較例4]
帝人化成(株)製C1400を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、165℃にて1.1倍に縦一軸延伸した後、168℃にて1.2倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0109】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0110】
このパネルを斜め方向から見てもほとんど光漏れはなかったが、45°方位において若干の光漏れが確認でき、特に短波長の光漏れが顕著であった。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、ある特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを液晶セルと偏光フィルムとの間にそれぞれ1枚ずつ配置することにより、電圧無印加状態の液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶表示素子の広視野角化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のVA液晶パネルの構成を表す模式図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子に関するもので、特に電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する垂直配向モードの液晶表示素子およびそれに用いられる位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は時計、電卓などのような小型のものからモニター、テレビといった大型のものまで広く用いられるようになった。このような液晶表示素子においては正の誘電率異方性を有する液晶分子を用いたTN(Twisted Nematic)モードが主流であった。TNモードの液晶表示素子の電圧無印加状態では、一方の基板に隣接する液晶分子の配向方向が、他方の基板に隣接する液晶分子の配向方向に対して約90°ねじれている。
【0003】
TNモードの液晶表示素子では様々な開発がなされているが、良質な黒表示、高コントラストを実現するためには電圧印加状態、つまり液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向している状態で黒を表示する必要がある。しかし、TNモードにおいては電圧印加状態においても液晶パネル基板に隣接する液晶分子は水平配向を維持しているために、液晶分子の複屈折により光の偏光状態が変化し、完全な黒表示ができず、高コントラストの実現が困難となっている。
【0004】
これに対し、垂直配向モード、いわゆるVA(Vertical Aligned)モードの液晶表示素子においては、液晶パネルを構成する一対の基板間に電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直に配向している。垂直配向モードにおいては液晶パネル基板に隣接している液晶分子もパネル面に対し略垂直な配向をしているため、光が液晶層を通過する際にほとんど偏光状態が変化しない。つまり、直交配置の偏光フィルム間に電圧無印加状態の垂直配向モードの液晶セルが存在する場合には、TNモードより良好な、ほぼ完全な黒表示が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、VAモードの液晶表示素子は正面での黒表示はほぼ完全であるが、広い視野角を得るためにはTNモードの液晶表示素子と同じく1枚以上の位相差フィルムを使用する必要がある。VAモードの液晶表示素子の視野角補償には特開平11−95208号公報、特開2000−131693号公報等に記載されているように、1軸性フィルムおよび/または2軸性フィルムが1枚以上用いられることが知られているが、黒表示の液晶表示素子を斜めから見た時の全光線透過率は低減できるものの、透過光の波長依存性が大きく、黒が着色するという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような問題を顧みてなされたものであり、特に液晶表示素子の黒表示を斜めから見たときの透過光の着色が低減された垂直配向モードの液晶表示素子を、ある特定の波長分散を有する位相差フィルムを用いることにより提供すると共にこれを実現する位相差フィルムを提供することを目的としている。
【0007】
いいかえれば、本発明の目的はある特定の波長分散を有する位相差フィルムを用いることにより広視野角を有する垂直配向モードの液晶表示素子を提供すること、および垂直配向モードの広視野角化を実現しうる位相差フィルムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ある特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを液晶セルと偏光フィルムとの間に特定の配置にて使用することにより、垂直配向モードにおいて液晶表示素子の広視野角化を実現することを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
1. 電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶セルと、該液晶セルの上下に相互の透過軸が直交するように配置された一対の偏光フィルムと、該液晶セルと該偏光フィルムとの間にそれぞれ一枚ずつ具備されてなる位相差フィルムとを含む液晶表示素子であって、該位相差フィルムの遅相軸が該位相差フィルムと隣接する偏光フィルムの透過軸に平行あるいは直交するように配置され、かつ、該位相差フィルムが下記式(1)および/または(2)を満たす液晶表示素子。
【0010】
1.025<R(450)/R(550)<1.070 (1)
1.025<K(450)/K(550)<1.070 (2)
(式中のR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける位相差フィルムの面内位相差値であり、下記式(3)によって表される。また、K(450)、K(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける厚み方向位相差値であり、下記式(4)によって表される。
【0011】
R=(nx−ny)×d (3)
K={(nx+ny)/2−nz}×d (4)
式中のnx、ny、nzは三次元屈折率であり、それぞれ位相差フィルム面内のx軸、y軸、およびx軸とy軸に垂直なz軸方向の屈折率である。また、dは位相差フィルムの厚みである。)
2. 位相差フィルムが下記式(5)および(6)を満たすことを特徴とする上記1記載の液晶表示素子。
【0012】
10nm<R(550)<100nm (5)
50nm<K(550)<200nm (6)
3. 位相差フィルムが下記式(7)を満たすことを特徴とする上記1〜2記載の液晶表示素子。
(式中のKSUM(550)は波長550nmにおける位相差フィルム二枚の厚み方向位相差値の和、KLC(550)は波長550nmにおける液晶セルの厚み方向位相差値であり、KOTH(550)は一対の偏光フィルム間における位相差フィルムと液晶セル以外の厚み方向位相差値の和である。)
4. 位相差フィルムの光弾性定数が70×10−12Pa−1以下である上記1〜3記載の液晶表示素子。
5. 位相差フィルムの吸水率1重量%以下である上記1〜4に記載の液晶表示素子。
6. 位相差フィルムが下記式(A)
【0013】
【化7】
【0014】
(上記式(A)においてR1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる少なくとも一種の基であり、Xは下記式(X)
【0015】
【化8】
【0016】
であり、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。)
で示される繰り返し単位および下記式(B)
【0017】
【化9】
【0018】
(上記式(B)においてR11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも一種の基であり、Yは下記式群(Y)
【0019】
【化10】
【0020】
であり、ここでR19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基であり、R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基であり、Ar1〜Ar3はそれぞれ独立に炭素数6〜10のアリール基から選ばれる少なくとも1種の基である。)
で示される繰り返し単位からなり、上記式(A)で表される繰り返し単位が全体の80〜30mol%を占めるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体からなる上記1〜5の記載の液晶表示素子。
7.位相差フィルムが下記式(C)
【0021】
【化11】
【0022】
(上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基から選ばれる。)で示される繰り返し単位が全体の30〜60mol%と、下記式(D)
【0023】
【化12】
【0024】
(上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基から選ばれる。)で示される繰り返し単位が全体の70〜40mol%を占めるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体からなる上記1〜6記載の液晶表示素子。
8. 上記1〜7記載の位相差フィルム。
【0025】
本発明でいう、垂直配向モードの液晶セルとは、少なくとも一方が透明である電極付き基板が向かい合うように一定の距離をおいて配置されており、この隙間に挟持された液晶分子長軸が電圧無印加状態において基板に略垂直な方向に配向した構造を有するものである。略垂直な方向に配向とは基板と表示画素部における液晶分子長軸とのなす角度の平均値が略垂直であることであり、一般には80°以上であり、よりこの好ましくは85°以上であり、さらに好ましくは87°以上である。また、特開2001−235750号公報に記載されているような電圧無印加時においても表示画素部以外では液晶が基板に対して並行配向しているようなものであっても良い。なお、ここで基板とは、ガラス、高分子フィルム等のプラスチックが挙げられる。
【0026】
垂直配向モードの液晶セルにおいて、平行基板間に液晶を垂直配向させただけでは電圧印加状態に液晶がさまざまな方位角方向に傾き、配向の不連続な部分、いわゆるディスクリネーションがランダムに生じ均一表示が得られないという現象がある。このディスクリネーションに関しては様々な研究が行われており、SID98DIGEST,(1998)p.1081「A Wide Viewing Angle Polymer Stabilized Homeotropic Aligned LCD」やDisplay99Late newspapers,(1999)p.31「A Wide Viewing Angle Back Side Exposure MVA TFT LCD with Novel Structure and Process」に記載されているように基板に突起体を形成すること、あるいは特開平7−199190号公報に記載されているように画素電極に窓部を設けることにより電圧印加時の液晶分子の傾く方向を制御しているものがある。さらに、シャープ技報第80号2001年8月p.11「Continuous Pinwheel Alignment (CPA) モードを用いたASV−LCDの開発」に記載されているように、液晶にカイラル材を加えることにより電圧印加時に液晶がねじれながら倒れるようになっているリバースTN方式もある。このように垂直配向モードの液晶セルの電圧印加状態における液晶の配向状態は様々な形態をとるものがあるが、本発明は電圧印加状態の液晶配向状態によって制限されるものではない。
【0027】
また、液晶の屈折率異方性と液晶を挟持している基板間距離との積で表される、波長550nmにおける液晶セルの厚み方向位相差値は、通常−450〜−250nm程度となるように設定される。
【0028】
本発明の(透過型の)液晶表示素子では、このような液晶セルの上下にその透過軸が略直交するような角度で一対の偏光フィルムが配置される。
【0029】
本発明によれば、驚くべきことに、液晶セルと偏光フィルムの間に、特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを、その遅相軸が隣接する当該偏光フィルムの透過軸と平行あるいは直交するように一枚ずつ配置することにより、垂直配向モードの液晶表示素子の視野角が格段に向上する。図1には本発明の液晶表示素子の一例を示した。図1では、かかる位相差フィルムが、偏光フィルム(HLC2−5618)と液晶セルの間に配置され、かつ該位相差フィルムの遅相軸は、隣接する該偏光フィルムの透過軸と平行になっている。液晶セルの上下に配置された一対の該位相差フィルムの波長分散値、面内位相差値、厚み方向位相差値は等しいことが望ましい。もちろん、本発明には、位相差フィルムの遅相軸が隣接する該偏光フィルムの透過軸と直交する場合も含まれるし、一対の位相差フィルムの波長分散値、面内位相差値、厚み方向位相差値が等しくなくてもよい。なお後述するが、偏光フィルムには通常保護フィルムが付されており、位相差フィルムはかかる保護フィルムを介して偏光フィルムと隣接してもよい。さらには、位相差フィルムと偏光フィルムとの隣接は通常粘着剤を介する場合が多いので、そのような粘着剤からなる粘着層があってもよい。
【0030】
ここで、かかる特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムとは、下記式(1)および(2)
1.025<R(450)/R(550)<1.070 (1)
1.025<K(450)/K(550)<1.070 (2)
の少なくとも一方を満足する。ここで、式中のR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける位相差フィルムの面内位相差値であり、下記式(3)によって表される。また、K(450)、K(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける厚み方向位相差値であり、下記式(4)によって表される。
【0031】
R=(nx−ny)×d (3)
K={(nx+ny)/2−nz}×d (4)
式中のnx、ny、nzは三次元屈折率であり、それぞれ位相差フィルムの面内x軸、y軸、およびx軸とy軸に垂直なz軸方向の屈折率である。また、dは位相差フィルムの厚みである。
【0032】
上記位相差フィルムはより好ましくは下記式(8)および/または(9)を満たすことである。
【0033】
1.03<R(450)/R(550)<1.06 (8)
1.03<K(450)/K(550)<1.06 (9)
また、位相差フィルムの波長550nmにおける面内位相差値は10〜100nmであり厚み方向位相差値は50〜200nmであることが好ましく、より好ましくは面内位相差値15〜65nmであり厚み方向位相差値80〜180nmであることである。また、偏光フィルム間に存在する光学異方層の厚み方向位相差値の和は−150nm〜150nmであることが好ましく、より好ましくは−100nm〜100nmである。なお、ここでいう光学異方層とは、液晶セルと二枚の位相差フィルム以外に例として偏光フィルムの保護膜(通常はトリアセチルセルロース(以下「TAC」)が挙げられる。通常TACフィルムは面配向しており、50nm程度の厚み方向位相差値を有している。
【0034】
上記の位相差フィルムは垂直配向モードの液晶表示素子の視野角補償に最適であり、これを用いることにより本発明の液晶表示素子は優れた視野角特性を有することが可能となる。
【0035】
また、位相差フィルムはそのハンドリング性および安定性の点から光弾性定数が70×10−12Pa−1以下で吸水率が0.1重量%以下であることが好ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶表示素子は、電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶セルと、該液晶セルの上下に相互の透過軸が直交するように配置された一対の偏光フィルムと、該液晶セルと該偏光フィルムとの間に位相差フィルムがそれぞれ一枚ずつ具備されてなり、かつ該位相差フィルムの遅相軸が該位相差フィルムと隣接する偏光フィルムの透過軸に平行あるいは直交するように配置されてなる液晶表示素子であって、該位相差フィルムが上記式(1)および/または(2)を満たすことを特徴とする液晶表示素子である。
【0037】
上記特性を満足する位相差フィルムの具体的な材料について以下に説明する。
【0038】
例えば、位相差フィルムが高分子配向フィルムからなる場合、光弾性定数は70×10−12Pa−1以下、好ましくは60×10−12Pa−1以下であることが好ましい。70×10−12Pa−1を越えると、位相差フィルムを貼り合わせる際の張力によって位相差が発現したり、他の材料との寸法安定性のミスマッチから生じる応力によって位相差が発現したりすることにより表示斑の問題が発生する場合がある。また、ガラス転移点温度が120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であることが好ましい。120℃未満では、表示素子の使用条件にもよるが、配向緩和などの問題が発生する場合がある。また、吸水率は1重量%以下であることが好ましい。高分子材料の吸水率が1重量%未満では位相差フィルムとして実用する上で光学特性変化や寸法変化などの問題がある場合があり、フィルム材料はフィルム吸水率が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の条件を満たすように選択することが良い。
【0039】
本発明に用いられる位相差フィルムは、2種類以上ブレンドした高分子組成物(ブレンド体とよぶことがある)からなるものでも共重合体からなるものでもよい。
【0040】
かかる高分子配向フィルムを構成する高分子材料は特に限定されず、耐熱性に優れ、光学性能が良好で、溶液製膜ができる材料、例えばポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリスルフィン系共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの熱可塑性ポリマーが好適である。この熱可塑性ポリマーを用いた場合、異なる位相差波長分散を有する高分子のブレンド体、あるいは異なる位相差波長分散を有するモノマー単位からなる共重合体により目的とする位相差フィルムを得ることができる。また、正の屈折率異方性を有する高分子と負の屈折率異方性を有する高分子とからなるブレンド体、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と負の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位とからなる共重合体がより好適である。それらは2種類以上組み合わせてもよく、また1種類以上のブレンド高分子と1種類以上の共重合体とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
高分子組成物であれば、光学的に透明である必要があることから相溶ブレンドまたは、各々の高分子の屈折率が略等しいことが好ましい。ブレンド高分子の具体的な組み合わせとしては、例えば負の光学異方性を有する高分子としてポリ(メチルメタクリレート)と、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(ビニリデンフロライド)、ポリ(エチレンオキサイド)及びポリ(ビニリデンフロライド−コ−トリフルオロエチレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、正の光学異方性を有する高分子としてポリ(フェニレンオキサイド)と負の光学異方性を有する高分子としてポリスチレン、ポリ(スチレン−コ−ラウロイルマレイミド)、ポリ(スチレン−コ−シクロヘキシルマレイミド)及びポリ(スチレン−コ−フェニルマレイミド)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーとの組み合わせ、負の光学異方性を有するポリ(スチレン−コ−マレイン酸無水物)と正の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせ、正の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)と負の光学異方性を有するポリ(アクリロニトリル−コ−スチレン)との組み合わせ、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとの組み合わせを好適に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に透明性の観点から、ポリスチレンとポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリ(フェニレンオキサイド)とを組み合わせたブレンドポリマー、正の光学異方性を有するポリカーボネートと負の光学異方性を有するポリカーボネートとを組み合わせたブレンド体が好ましい。
【0042】
また、共重合体としては例えばポリ(ブタジエン−コ−ポリスチレン)、ポリ(エチレン−コ−ポリスチレン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジエン−コ−スチレン)、ポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等を用いることが出来る。特に、フルオレン骨格を有するセグメントは負の光学異方性となり得るため、フルオレン骨格を有するポリカーボネート共重合体、ポリエステル共重合体、ポリエステルカーボネート共重合体、ポリアリレート共重合体等はより好ましく用いられる。
【0043】
上記高分子材料は、2種類以上の共重合体のブレンド体でもよく、1種以上の共重合体と上記ブレンド体または他のポリマーとからなるブレンド体であってもよく、2種類以上のブレンド体または共重合体または他のポリマーのブレンド体でもよい。
【0044】
ビスフェノール類とホスゲンあるいは炭酸ジフェニルなどの炭酸エステル形成性化合物と反応させて製造されるポリカーボネート共重合体は透明性、耐熱性、生産性に優れており特に好ましく用いることが出来る。ポリカーボネート共重合体としては、フルオレン骨格を有する構造を含む共重合体であることが好ましく、具体的には下記式(A)
【0045】
【化13】
【0046】
で示される繰り返し単位20〜70mol%と下記式(B)
【0047】
【化14】
【0048】
で示される繰り返し単位80〜30mol%からなるポリカーボネート共重合体、または高分子組成物またはこれらの混合物である。
【0049】
上記式(A)において、R1〜R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜6の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0050】
Xは下記式(X)
【0051】
【化15】
【0052】
であり、R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基である。ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基としては上記したものと同じものをあげることができる。
【0053】
上記式(B)において、R11〜R18はそれぞれ独立に水素原子、ハロン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる。かかる炭素数1〜22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基が挙げられる。この中で、水素原子、メチル基が好ましい。
【0054】
Yは下記式群
【0055】
【化16】
【0056】
であり、R19〜R21、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭素数1〜22の炭化水素基から選ばれる少なくとも1種の基である。かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。R22及びR25はそれぞれ独立に炭素数1〜20の炭化水素基から選ばれ、かかる炭化水素基については、上記したものと同じものを挙げることができる。Ar1〜Ar3としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げられる。
【0057】
上記ポリカーボネートとしては、好ましくは下記式(C)
【0058】
【化17】
【0059】
で示される繰り返し単位30〜60mol%と、下記式(D)
【0060】
【化18】
【0061】
で示される繰り返し単位70〜40mol%からなるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体である、
さらに好ましくは上記式(C)で示される繰り返し単位45〜55mol%と上記式(D)で示される繰り返し単位55〜45mol%からなるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体である。
【0062】
上記式(C)においてR26〜R27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、取り扱い性の点から好ましくはメチル基である。
【0063】
上記式(D)においてR28〜R29はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、経済性、フィルム特性等から水素原子が好ましい。
【0064】
本発明における位相差フィルムは、上記したフルオレン骨格を有するポリカーボネートを用いたものが好ましい。このフルオレン骨格を有するポリカーボネートとしては、例えば上記式(A)で表わされる繰り返し単位と上記式(B)で表わされる繰り返し単位とからなる異なる組成比のポリカーボネート共重合体のブレンド体がよく、上記式(A)の含有率はポリカーボネート全体の20〜70mol%が好ましく、より好ましくは30〜60mol%であり、さらに好ましくは40〜55mol%である。
【0065】
上記共重合体は、上記式(A)および(B)で表わされる繰り返し単位をそれぞれ2種類以上組み合わせたものでもよく、ブレンド体の場合も、上記繰り返し単位はそれぞれ2種類以上組み合わせてもよい。
【0066】
ここで上記モル比は共重合体、ブレンド体に関わらず、高分子配向フィルムを構成するポリカーボネートバルク全体で、例えば核磁気共鳴(NMR)装置により求めることができる。
【0067】
上記した共重合体および/またはブレンド体は公知の方法によって製造し得る。ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法等が好適に用いられる。ブレンド体の場合は、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。
【0068】
上記ポリカーボネートの極限粘度は0.3〜2.0dl/gであることが好ましい。0.3未満では脆くなり機械的強度が保てないといった問題があり、2.0を超えると溶液粘度が上がりすぎるため溶液製膜においてダイラインの発生等の問題や、重合終了時の精製が困難になるといった問題がある。
【0069】
位相差フィルムは透明であることが好ましく、ヘーズ値は3%以下、全光線透過率は85%以上であることが好ましい。
【0070】
かかる位相差フィルム中には、さらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等が含有されていてもよい。
【0071】
本発明の位相差フィルムは上記ポリカーボネートなどの未延伸フィルムに延伸等を行い、高分子鎖を配向させた高分子配向フィルムからなるものである。かかるフィルムの製造方法としては、公知の溶融押し出し法、溶液キャスト法等が用いられるが、膜厚むら、外観等の観点から溶液キャスト法がより好ましく用いられる。溶液キャスト法における溶剤としては、メチレンクロライド、ジオキソラン等が好適に用いられる。
【0072】
延伸法としては、例えば、フィルム流れ方向に速度差のついたクリップにてフィルムを幅方向に広げる同時二軸延伸法、フィルム幅方向をピンあるいはクリップにより把持し、把持した部分のフィルム流れ方向速度差を利用する縦一軸延伸方法、把持した部分を幅方向に広げる横一軸延伸法等があり、またこれらの延伸方法やロール速度差を利用するロール縦一軸延伸方法等を組み合わせた逐次二軸延伸法等が挙げられる。
【0073】
位相差フィルムを得るための連続延伸法の例をいくつか挙げたが、本発明の位相差フィルムの延伸方法はこれらに限定されるものではなく、生産性の観点から連続延伸が好ましいが、連続延伸である必要はない。
【0074】
上述したような延伸方法に代表される公知の技術にて延伸する際、フィルム中には延伸性を向上させる目的で、公知の可塑剤であるジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル、脂肪族二塩基エステル、グリセリン誘導体、グリコール誘導体等が含有してもよい。延伸時には、先述のフィルム製膜時に用いた有機溶剤をフィルム中に残留させ延伸しても良い。この有機溶剤の量としてはポリマー固形分対比1〜20重量%であることが好ましい。
【0075】
また、上記可塑剤や液晶等の添加剤は、本発明の位相差フィルムの位相差波長分散を変化させ得るが、添加量は、ポリマー固形分対比10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0076】
位相差フィルムの膜厚としては、1μmから300μmであることが好ましい。なお、本発明では位相差フィルムと表現しているが、共通して「フィルム」といい、あるいは「シート」といわれるいずれのものも含む意味である。
【0077】
先述したように、位相差フィルムの位相差波長分散を特定の値にするためには、高分子配向フィルムを構成する高分子の化学構造が重要であり、位相差波長分散はかなりの部分がその化学構造で決まるが、製膜条件、添加剤、延伸条件、ブレンド状態、分子量等によっても変動することに留意されるべきである。
【0078】
本発明において用いられる偏光フィルムは、公知のヨウ素や二色性色素等をポリビニールアルコール等のポリマー(バインダーポリマーともいう)中に分散し、延伸等により少なくともヨウ素等を配向固定したフィルム、主鎖型または側鎖型のポリアセチレンを延伸したフィルム等、公知の偏光フィルムを用いることが可能である。ポリビニールアルコールをバインダーポリマーとして用いたフィルムでは通常、該保護フィルムとしてセルロースアセテートフィルム等が積層されていることが多いので、偏光フィルムはこのような保護フィルムを積層して用いることもできるし、また該保護フィルムを用いずに本発明の位相差フィルムを該保護フィルムの代わりを兼ねさせても良い。
【0079】
用いる偏光フィルムの厚さとしては、上記のようなバインダーポリマーを用いたタイプであれば、通常30〜300μmである。また、液晶性で二色性の材料をコーテイングにより配向固定させたものであれば、厚みは0.01〜30μm程度である。
【0080】
本発明の液晶表示素子は、位相差フィルム、液晶パネル基板、偏光フィルムを組み合わせて用いる。位相差フィルム、液晶パネル基板、偏光フィルムは密着していることが好ましく、密着させるためには公知の粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0081】
また、本発明の液晶表示素子には、上記の位相差フィルム、液晶パネル基板、偏光フィルム等の部材間にてプリズムシート、拡散フィルムなどの各種光学フィルムを用いても良い。
【0082】
本発明の液晶表示素子は主として液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタなどの液晶表示素子として用いられるが、広視野角を必要とする垂直配向モードの液晶表示素子全てに用いることができる。
【0083】
また、位相差フィルムの面内位相差と厚み方向位相差の好ましい値は液晶の厚み方向位相差値、液晶および位相差フィルムの平均屈折率nにより若干変化するが、目的に応じて最適化される。
【0084】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
(評価法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
【0086】
(1)面内位相差値、厚み方向位相差値の測定
面内位相差R値および厚み方向位相差K値は、分光エリプソメータ『M150』(日本分光(株)製)により測定した。面内位相差値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、厚み方向位相差値は入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッチングすることにより三次元屈折率であるnx、ny、nzを求めた。なお、その際、別のパラメータとして平均屈折率nが必要になるが、これはアッベ屈折計((株)アタゴ社製の『アッベ屈折計2−T』)により測定した。
【0087】
(2)吸水率の測定
乾燥させたフィルムの状態で膜厚を 130±50μmとした以外は、JISK 7209記載の『プラスチックの吸水率及び沸騰吸水率試験方法』に準拠して測定した。試験片の大きさは50mm正方形で、水温25℃、24時間サンプルを浸水させた後、重量変化を測定した。単位は重量%である。
【0088】
(3)高分子のガラス転移点温度(Tg)の測定
『DSC2920 Modulated DSC』(TA Instruments社製)により測定した。フィルム成形後ではなく、樹脂重合後、フレークスまたはチップの状態で測定した。
【0089】
(4)フィルム膜厚測定
アンリツ社製の電子マイクロで測定した。
【0090】
(5)高分子共重合比の測定
『JNM−alpha600』(日本電子社製)のプロトンNMRにより測定した。特にビスフェノールA(BPA)とビスクレゾールフルオレン(BCF)の共重合体の場合には、溶媒として重ベンゼンを用い、それぞれのメチル基のプロトン強度比から算出した。
【0091】
また、以下の実施例、比較例で用いたポリカーボネートのモノマー構造を以下に示す。
【0092】
【化19】
【0093】
[実施例1]
攪拌機、温度計および環流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水を仕込み、これに上記構造を有するモノマー(E)、(F)を50:50のモル比で溶解させ、少量のハイドロサルフィトを加えた。次にこれに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相を分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。得られた共重合体の組成比はモノマー仕込み量比とほぼ同等であった。
【0094】
この共重合体を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、215℃にて1.4倍に縦一軸延伸した後、215℃にて1.6倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0095】
次に、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板には、保護層としてTACフィルムが液晶セル側に具備されているが、該TACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0096】
このパネルを斜め方向のあらゆる角度から見てもほとんど光漏れはなく、漏れている光についても着色が無いものであった。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
[比較例1]
JSR(株)製ARTONを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、175℃にて1.4倍に縦一軸延伸した後、175℃にて1.6倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0100】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0101】
このパネルを斜め方向から見たところ、特に45°方位において光漏れが顕著であり、漏れている光についても着色が確認できた。
【0102】
[比較例2]
帝人化成(株)製C1400を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、165℃にて1.1倍に縦一軸延伸した後、165℃にて1.2倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0103】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0104】
このパネルを斜め方向から見たところ、特に45°方位において光漏れが顕著であり、漏れている光についても着色が確認できた。
【0105】
[比較例3]
JSR(株)製ARTONを塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、175℃にて1.3倍に縦一軸延伸した後、175℃にて1.5倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0106】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0107】
このパネルを斜め方向から見てもほとんど光漏れはなかったが、45°方位において若干の光漏れが確認でき、特に短波長の光漏れが顕著であった。
【0108】
[比較例4]
帝人化成(株)製C1400を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し、165℃にて1.1倍に縦一軸延伸した後、168℃にて1.2倍に横一軸延伸することにより表1に示すような特性の位相差フィルムを得た。
【0109】
次に、実施例1と同様、表2に示すような特性を持つVA液晶セルを作製し、市販のヨウ素系偏光板である(株)サンリッツ製『HLC2−5618』と上記位相差フィルムを実施例1と同様、図1に示す構成となるように粘着剤を用いて積層させた。この偏光板の保護層として用いられているTACフィルムの面内位相差値は2nmであり、厚み方向位相差値は48nmであった。
【0110】
このパネルを斜め方向から見てもほとんど光漏れはなかったが、45°方位において若干の光漏れが確認でき、特に短波長の光漏れが顕著であった。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、ある特定の位相差波長分散を有する位相差フィルムを液晶セルと偏光フィルムとの間にそれぞれ1枚ずつ配置することにより、電圧無印加状態の液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶表示素子の広視野角化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のVA液晶パネルの構成を表す模式図である。
Claims (8)
- 電圧無印加状態において液晶分子長軸がパネル面に対して略垂直な方向に配向した構造を有する液晶セルと、該液晶セルの上下に相互の透過軸が直交するように配置された一対の偏光フィルムと、該液晶セルと該偏光フィルムとの間にそれぞれ一枚ずつ具備されてなる位相差フィルムとを含む液晶表示素子であって、該位相差フィルムの遅相軸が該位相差フィルムと隣接する偏光フィルムの透過軸に平行あるいは直交するように配置され、かつ、該位相差フィルムが下記式(1)および/または(2)を満たす液晶表示素子。
1.025<R(450)/R(550)<1.070 (1)
1.025<K(450)/K(550)<1.070 (2)
(式中のR(450)、R(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける位相差フィルムの面内位相差値であり、下記式(3)によって表され、K(450)、K(550)はそれぞれ波長450nm、550nmにおける厚み方向位相差値であり、下記式(4)によって表される。
R=(nx−ny)×d (3)
K={(nx+ny)/2−nz}×d (4)
式中のnx、ny、nzは三次元屈折率であり、それぞれ位相差フィルム面内のx軸、y軸、およびx軸とy軸に垂直なz軸方向の屈折率であり、dは位相差フィルムの厚みである。) - 位相差フィルムがさらに下記式(5)および(6)を満たす請求項1記載の液晶表示素子。
10nm<R(550)<100nm (5)
50nm<K(550)<200nm (6) - 位相差フィルムの光弾性定数が70×10−12Pa−1以下である請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 位相差フィルムの吸水率1重量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示素子。
- 位相差フィルムが下記式(A)
で示される繰り返し単位および下記式(B)
で示される繰り返し単位からなり、上記式(A)で表される繰り返し単位が全体の80〜30mol%を占めるポリカーボネート共重合体および/またはブレンド体からなる請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示素子。 - 上記請求項1〜7のいずれかに記載の位相差フィルム。
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