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JP2004055932A - 磁電変換素子及びその作製方法 - Google Patents

磁電変換素子及びその作製方法 Download PDF

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JP2004055932A JP2002213182A JP2002213182A JP2004055932A JP 2004055932 A JP2004055932 A JP 2004055932A JP 2002213182 A JP2002213182 A JP 2002213182A JP 2002213182 A JP2002213182 A JP 2002213182A JP 2004055932 A JP2004055932 A JP 2004055932A
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Abstract

【課題】素子の作製工程の簡略化と確実性を向上させ、歩留まりの高い磁電変換素子及びその作製方法を提供する。
【解決手段】バイアス磁石4に樹脂封止された磁電変換素子チップ1が設けられ、リードフレーム3と磁電変換素子チップ1の電極パッドとが電気的に接続され、リードフレーム3の脚部とバイアス磁石4とがエポキシ樹脂6により樹脂封止されている。チップ封止樹脂2とシリコーン7は、絶縁性ケース8内に収納されていて、リードフレーム3の脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられている。そして、これら全体が非磁性保護ケース5内に封止されて磁電変換素子が構成されている。これにより、非磁性保護ケースを使用して作製される磁電変換素子の作製工程を簡素化でき、かつ不良がほとんど無いために、収率を大幅に向上することができる。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁電変換素子及びその作製方法に関し、より詳細には、外部磁場強度を検知する磁電変換素子及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、磁電変換素子は、素子の入力端子間にバイアスをかけ、周囲の磁場強度の変化に応じて、素子内を流れるキャリアの行路が変化することで、出力端子に起電力が生じたり、素子の抵抗値が変化することで外部磁場強度の測定を行える素子である。
【0003】
これら磁電変換素子の中では、外部の磁場強度に応じて素子の抵抗値が変化する、いわゆる磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗素子と、ホール起電力を利用したホール素子の2種類がある。これらの磁電変換素子の感度は、素子を構成する薄膜の電子移動度に比例するため、できるだけ電子移動度の高い材料を選択する必要があり、一般的にはInSb、InAsといった化合物半導体が用いられている。
【0004】
特に半導体の中でも最も電子移動度の高いInSbを感磁部として用いると、磁気インクにより形成されたパターン(紙幣認識)や磁気バーコード、切符の磁気情報の認識などの微弱な磁気の検出を行うことができる。これらのような微弱磁気情報を認識するためには、磁気センサの感磁部と磁気媒体との距離を極力短くすることが必要であるため、通常は磁気センサのパッケージと磁気媒体とを接触させた状態で動作させる必要があり、これらの用途での磁気センサのパッケージは耐磨耗性を向上させるために、金属製のCANパッケージを用いている。
【0005】
図10は、従来の非磁性保護ケースに封止された磁電変換素子の構造図で、図中符号13は磁電変換素子チップ、33はリードフレーム、43はバイアス磁石、53は非磁性保護ケース、63はエポキシ樹脂、83は絶縁性ケース、93は接続ピンを示している。バイアス磁石43に磁電変換素子チップ13が設けられ、接続ピン93と磁電変換素子チップ13とはリードフレーム33により電気的に接続されている。バイアス磁石43と接続ピン93は絶縁性ケース83内に収納され、さらに接続ピン93はエポキシ樹脂63で封止されていて、全体が非磁性保護ケース53内に挿入されている。
【0006】
このような従来の磁電変換素子の作製方法は、磁電変換素子チップ13の入出力電極の電極パッドをリードフレーム33と接続し、対向側のリードフレームを樹脂成形された接続ピン93と各々接続したものを、非磁性保護ケース53内に挿入して、最後に樹脂封止して磁電変換素子を完成させている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の磁電変換素子の作製方法では、磁電変換素子チップの電極パッドとリードフレームとの接続がフリップチップ方式で行われており、接続部の強度が十分に保たれず、リードフレームのタイバーを切る工程時やタイバーカット後にピンとリードフレームを接続する際に応力がかかり電極パッドとリードフレームが剥れてしまうという問題があった。
【0008】
このような問題を改善するために、金属配線が施されたガラスエポキシ基板に、磁電変換素子チップをダイボンディングし、電極パッドとガラスエポキシ基板上の金属配線をワイヤーボンディングにより接続する方法があるが、ワイヤーがむき出しのまま用いられているため、非磁性保護ケースと接触してしまったり、ワイヤー自体が細く強度も弱いため、素子作製工程中に断線してしまうといった問題があった。
【0009】
さらに、従来の磁電変換素子では素子チップの電極パッドに接続されている端子と、素子の端子ピンが別々に構成されており、端子ピンを成形樹脂に差し込み固定する工程や、素子チップの電極パッドと接続されている端子と素子の端子ピンを電気的に接続する工程を行わなければならず、工程が煩雑であった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、素子の作製工程の簡略化と確実性を向上させ、歩留まりの高い磁電変換素子及びその作製方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リードフレームと磁電変換素子チップの電極パッドとが電気的に接続され、前記リードフレームの脚部が樹脂封止された磁電変換素子において、前記リードフレームの脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられ、全体が非磁性保護ケース内に封止されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記磁電変換素子チップがホール素子からなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記磁電変換素子チップが磁気抵抗素子からなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記リードフレームの脚部の断面積が、0.05〜5mmであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4いずれかに記載の発明において、前記磁電変換素子と前記非磁性保護ケースとの間に緩衝材が挿入されていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記緩衝材が低硬度樹脂からなることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記緩衝材がシリコーンからなることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかに記載の発明において、前記磁電変換素子チップの感磁部がInAsSb1−y(0≦y≦1)からなることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載の発明は、リードフレームと磁電変換素子チップの電極パッドを電気的に接続させる第一の工程と、前記リードフレーム上の磁電変換素子チップを樹脂によりモールディングする第二の工程と、前記リードフレームの脚部を直角に折り曲げる第三の工程と、前記樹脂を研磨する第四の工程と、全体を非磁性保護ケース内に封止する第五の工程とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記磁電変換素子チップがホール素子からなることを特徴とする。
【0021】
また、請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記磁電変換素子チップが磁気抵抗素子からなることを特徴とする。
【0022】
また、請求項12に記載の発明は、請求項9,10又は11に記載の発明において、前記リードフレームの脚部の断面積が、0.05〜5mmであることを特徴とする。
【0023】
また、請求項13に記載の発明は、請求項9乃至12いずれかに記載の発明において、前記磁電変換素子と非磁性保護ケースとの間に緩衝材が挿入されていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記緩衝材が低硬度樹脂からなることを特徴とする。
【0025】
また、請求項15に記載の発明は、請求項13に記載の発明において、前記緩衝材がシリコーンからなることを特徴とする。
【0026】
また、請求項16に記載の発明は、請求項9乃至13いずれかに記載の発明において、前記磁電変換素子チップの感磁部がInAsSb1−y(0≦y≦1)からなることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の磁電変換素子の一実施例を示す構成図で、図2は、本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨した後の素子の上面図で、図3は、本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨する工程を示す側面図である。
【0028】
図中符号1は磁電変換素子チップ、2はチップ封止樹脂、3はリードフレーム、4はバイアス磁石、5は非磁性保護ケース、6はエポキシ樹脂、7は緩衝材としてのシリコーン、8は絶縁性ケース、12は研磨して取り去られるチップ封止樹脂部分、13は磁電変換素子チップ1の電極パッドを示している。バイアス磁石4に樹脂封止された磁電変換素子チップ1が設けられ、リードフレーム3と磁電変換素子チップ1の電極パッド13とが電気的に接続され、リードフレーム3の脚部とバイアス磁石4とがエポキシ樹脂6により樹脂封止されている。
【0029】
一方、チップ封止樹脂2とシリコーン7は、絶縁性ケース8内に収納されていて、リードフレーム3の脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられている。そして、これら全体が非磁性保護ケース5内に封止されて磁電変換素子が構成されている。
【0030】
本発明に用いられる磁電変換素子チップ1の感磁層は、高い出力を得るために出来るだけ高い電子移動度を有していることが好ましく、Si、GaAs、InSbやInAsおよびそれらの混晶系であるInAsSbなどが好ましいものとなる。また、磁電変換素子チップ1の基板は、固体形状を示すものであればどんなものでも良く、例えば、半導体でも誘電体でもセラミックでもガラス基板でも用いることができる。
【0031】
また、マイカ等のフレキシブル性を有する基板上に感磁層を形成し、他の基板上に転写しても良い。また、半導体基板の中でもGaAs、Si、InP、GaPなどの基板を用いると、感磁層の高い電子移動度が得られるようになり、特に好ましいものとなる。
【0032】
また、感磁層のより高い電子移動度を得るための方法として、基板と感磁層との間に緩衝層を挿入しても良い。緩衝層としては半導体でも誘電体でも良く、誘電体としてはSiO、Siなどが用いられ、半導体としては感磁層と格子定数がなるべく近いものを選択することが好ましく、GaAs、InAs、AlAs、GaSb、AlSbのような2元系、InGaAs、AlGaAs、GaAsSb、AlAsSb、AlGaSb、AlInSbのような3元系、AlGaAsSbのような4元系を用いても良い。
【0033】
本発明での感磁層を形成する方法としては、真空蒸着法が一般的に用いられるが、分子線エピタキシー(MBE)法は、薄膜の膜厚や組成の制御性が高く特に好ましい方法である。
【0034】
また、感磁層を形成する際に、感磁層の温度ドリフトを小さくするように、IV族元素やVI族元素を不純物として混入させたものを用いても良い。本発明におけるIV族元素の例としてSn、Si、Ge、Pbなどが挙げられ、VI族元素としてはS、Se、Teなどが挙げられる。また、感磁層へのIV族元素およびVI族元素のドープ量は、所望の温度特性に応じて適宜選択されるが、磁場感度の兼ね合いからキャリア密度は、1×1016/cm以上1×1018/cm以下とすることが好ましく、より好ましくは、2×1016/cm以上5×1017/cm以下とするのが良い。
【0035】
本発明での電極として用いられる材料は、Cu単層やTi/Au、Ni/Au、Cr/Au、Ti/Cu、Ni/Cu、Cr/Cu、Cu/Ni/Auのような積層としても良い。この電極材料は、作製した磁電変換素子の使用される動作条件と環境条件とに耐えられる材質であれば、どのような材料を用いてもかまわない。また、電極を形成する方法としては、電子ビーム蒸着や抵抗加熱蒸着といった一般的な真空蒸着法や、スパッタ法やメッキ法によって形成しても良い。また、電極形成後に電極と動作層とのオーミック接触性を良好にするために、急昇温熱アニール(RTA)法を用いて熱処理することも好ましい。
【0036】
本発明での磁電変換素子は、ホール素子でも磁気抵抗素子のどちらでも実装することが可能となる。ホール素子を用いる場合、入力電極間長L1と感磁部の幅W1をした場合、その比L1/W1は0.3から4にすることが好ましく、より好ましくは、0.5から3.4にすることで高い磁電変換率が得られる。また、磁気抵抗素子を磁電変換素子として用いる場合は、短絡電極間隔をL2、感磁部の幅をW2とした場合、その比L2/W2は0.1から0.4とすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜0.3とすることで高い磁気抵抗変化率を得ることができる。
【0037】
本発明における磁電変換素子チップと非磁性保護ケースとの間隔には、一定の空隙を設けても良く、低硬度樹脂を埋め込んでも良い。この低硬度樹脂はより硬度が低いことが好ましく、シリコーンなどを用いると、歪みなどによる外乱ノイズの影響を受けにくくなり好ましいものとなる。磁電変換素子チップと非磁性保護ケースとの間隔は、より短くすることで高い出力感度が得られるようになるため、0.5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.3mm以下とするのが良い。
【0038】
本発明における非磁性保護ケースは、対磨耗性に優れており、非磁性であればどのような材質でもかまわない。なかでも銅と亜鉛の合金である真鍮は加工性の点からも好ましく、さらに耐磨耗性を向上させるために真鍮の表面にCrやTiを薄くコーティングしたものを用いても良い。
【0039】
以下、非磁性保護ケースに実装されてなる磁電変換素子の作製方法について説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
磁電変換素子チップ1として磁気抵抗素子を用いて、磁電変換素子を作製した場合の実施例について説明する。まず、薄膜形成方法の一例である分子線エピタキシー法を用いて、GaAs基板上に感磁層としてSnドープInSb薄膜を形成する。工程はGaAs基板にAsを照射しながら650℃で加熱し、表面酸素を脱離させる。次に、580℃に温度を下げてGaAsバッファ層を200nmの厚さで形成する。次に、Asを照射しながら400℃まで温度を下げた後、SnとIn、Sbを同時に基板に照射しながら、動作層膜厚1μmからなるSnドープInSb薄膜を形成した。この際、InSb薄膜の電子移動度は7×1016/cmになるようにSnセル温度を調節した。
【0041】
磁電変換素子チップ1の作製プロセスは、通常のフォトリソグラフィーの技術を用いることができる。まず、InSb/GaAs基板のInSb表面にフォトレジストを、スピンコーターを用いて均一に塗布する。フォトレジストの塗布条件は、100cpの粘度で3200rpmの回転速度で20秒間回転すると2.5μmの厚さとなる。InSbのメサエッチング用のフォトマスクを用いて、露光・現像した後に塩酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にInSb薄膜をメサエッチングする。この場合は、ウエットエッチング法を用いて感磁層のエッチングを行った例を紹介したが、イオンミリングや反応性イオンエッチング法のドライエッチングによってメサエッチングを行っても良い。
【0042】
次に再度、フォトレジストを塗布した後に、短絡電極と電極パッドを形成するための露光・現像を行い、電極形成用のレジストパターンを形成した後に、電子ビーム蒸着法により電極として100nm厚のTiと400nm厚のAuからなる積層電極を形成し、リフトオフ法を用いて所望の電極形状を作製し、素子形状を完成させた。この際の短絡電極間隔L2と感磁層幅W2との比L2/W2は14/70=0.2とした。
【0043】
さらに、保護膜として窒化シリコン薄膜を300nmの厚さでプラズマCVD法により形成し、電極パッド部分のみの窒化シリコン膜を、反応性イオンエッチング装置を用いて除去した。最後に電極と感磁層との接触を改善するために、不活性ガス雰囲気で500℃×2分間の熱処理を行った。次に、磁電変換素子チップ1が形成された基板を、ダイシングソーを用いて各素子に切り分けて磁電変換素子チップ1を完成させた。
【0044】
作製された磁電変換素子チップ1は、専用のリードフレーム3の突起部と磁電変換素子チップ1の電極パッド13をフリップチップボンディング法により接続し、磁電変換素子チップ1とリードフレーム3に応力がかからないように、磁電変換素子チップ1の周囲をチップ封止樹脂2で樹脂封止した。次に、各磁電変換素子をリードフレーム3から切り離し、さらにリードフレーム3の脚部を垂直に折り曲げた。その後、図3に示すように、研磨機を用いてチップ封止樹脂2の感磁面側を研磨し、リードフレーム3を露出させた。リードフレーム3により接続されている各素子チップ1を切り離し、リードフレーム3の脚部を垂直に折り曲げた。
【0045】
ここでは、リードフレーム3から各々の素子を切り離し、チップ封止樹脂2を研磨する工程について説明したが、リードフレーム3を切り離さずに、全素子の脚部を折り曲げ、感磁面側のチップ封止樹脂2を研磨してリードフレーム3を露出させた後、各素子を切り離しても良い。以上の工程を施し、図2に示すような磁電変換素子を作製した。
【0046】
次に、感磁面の反対側のチップ封止樹脂面にバイアス磁石4を接着した。その後、非磁性保護ケース5内にシリコーン7を塗り、素子チップが接着されているバイアス磁石4を非磁性保護ケース5内に実装した。この際、磁電変換素子の位置精度を上げるために、非磁性保護ケース5の内面形状と、磁電変換素子の封止樹脂形状に成形された絶縁性ケース8をガイドとして用いると良い。さらに、非磁性保護ケース5の開口側にエポキシ樹脂6を注入し、素子チップとバイアス磁石4を固定し、図1に示す磁電変換素子を完成させた。
【0047】
本実施例の方法を用いて、計500個の磁電変換素子を作製したが、全ての素子の端子間で導通があり、各端子間抵抗値や磁気抵抗変化量のバラツキも5%以内で良好な特性を示した。
【0048】
また、従来の方法では素子チップの電極パッドに接続する端子と端子ピンとが別々で、その端子間の接続工程があるため工程の煩雑さを招いていたが、本発明による磁電変換素子の作製方法では、リードフレームの脚部を長く取り、脚部を垂直に折り曲げることで、接続端子と接続ピンを一体化させ、工程の簡素化と端子間の接触不良を改善できた。
【0049】
[実施例2]
磁電変換素子チップとして磁気抵抗素子を用いて、磁電変換素子を作製した場合の実施例について説明する。薄膜形成方法は、実施例1と同様に分子線エピタキシー法を用いて、GaAs基板上に感磁層の膜厚1μmからなるSnドープInSb薄膜を形成した。この際、InSb薄膜の電子移動度は7×1016/cmになるようにSnセル温度を調節した。磁電変換素子チップの作製も実施例1と同様の工程で実施した。
【0050】
図4は、本発明の磁電変換素子の実施例2を示す構成図で、図5は、本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨した後の素子の上面図で、図6は、本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨する工程を示す側面図である。
【0051】
図中符号11は磁電変換素子チップ、21はチップ封止樹脂、31はリードフレーム、41はバイアス磁石、51は非磁性保護ケース、61はエポキシ樹脂、71は緩衝材としてのシリコーン、81は絶縁性ケース、111はAuワイヤー、121は研磨して取り去られるチップ封止樹脂部分、131は磁電変換素子チップ11の電極パッドを示している。バイアス磁石41に樹脂封止された磁電変換素子チップ11が設けられ、リードフレーム31と磁電変換素子チップ11の電極パッド131とが電気的に接続され、リードフレーム31の脚部とバイアス磁石41とがエポキシ樹脂61により樹脂封止されている。
【0052】
一方、チップ封止樹脂21とシリコーン71は、絶縁性ケース81内に収納されていて、リードフレーム31の脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられている。そして、これら全体が非磁性保護ケース51内に封止されて磁電変換素子が構成されている。
【0053】
作製された磁電変換素子チップ11は、専用のリードフレーム31の台座上にダイボンディングし、各電極パッド131とリードフレーム31とはAuワイヤー111で接続した。その後、磁電変換素子チップ11をチップ封止樹脂21で成形した。次に、各素子にリードフレーム31を切り分け、リードフレーム31の脚部を磁電変換素子チップ11の感磁面側に向けて垂直に折り曲げ、図6に示すように、リードフレーム31の台座側のチップ封止樹脂21を研磨機によりリードフレーム31の台座が露出するまで研磨し、図5に示すような磁電変換素子を作製した。
【0054】
次に、感磁面側のチップ封止樹脂面をバイアス磁石41と接着し、非磁性保護ケース51内に実装した。この際、磁電変換素子の位置精度を上げるために、非磁性保護ケース51の内面形状と、磁電変換素子の封止樹脂形状に成形された絶縁性ケース81をガイドとして用いると良い。
【0055】
さらに、非磁性保護ケース51の開口側にエポキシ樹脂61を注入し、封止された素子チップとバイアス磁石41を固定し、図4に示すような磁電変換素子を完成させた。
【0056】
本実施例の方法を用いて、計500個の磁電変換素子を作製したが、全ての素子の端子間で導通があり、各端子間抵抗値や磁気抵抗変化量のバラツキも5%以内で良好な特性を示した。
【0057】
[実施例3]
磁電変換素子チップ11として磁気抵抗素子を用いて、磁電変換素子を作製した場合の実施例について説明する。薄膜形成方法は、実施例1と同様に分子線エピタキシー法を用いて、GaAs基板上に感磁層の膜厚1μmからなるSnドープInSb薄膜を形成した。この際、InSb薄膜の電子移動度は7×1016/cmになるようにSnセル温度を調節した。磁電変換素子チップ12の作製も実施例1と同様の工程で実施した。
【0058】
図7は、本発明の磁電変換素子の実施例3を示す構成図で、図8は、本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨した後の素子の上面図で、図9は、本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨する工程を示す側面図である。
【0059】
図中符号12は磁電変換素子チップ、22はチップ封止樹脂、32はリードフレーム、42はバイアス磁石、52は非磁性保護ケース、62はエポキシ樹脂、72は緩衝材としてのシリコーン、82は絶縁性ケース、122は研磨して取り去られるチップ封止樹脂部分、132は磁電変換素子チップ12の電極パッドを示している。バイアス磁石42に樹脂封止された磁電変換素子チップ12が設けられ、リードフレーム32と磁電変換素子チップ12の電極パッド132とが電気的に接続され、リードフレーム32の脚部とバイアス磁石42とがエポキシ樹脂62により樹脂封止されている。
【0060】
一方、チップ封止樹脂22とシリコーン72は、絶縁性ケース82内に収納されていて、リードフレーム32の脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられている。そして、これら全体が非磁性保護ケース52内に封止されて磁電変換素子が構成されている。
【0061】
作製された磁電変換素子チップ12は、専用のリードフレーム32の突起部と磁電変換素子チップ12の電極パッド132をフリップチップボンディング法により接続し、磁電変換素子チップ12とリードフレーム32に応力がかからないように、磁電変換素子チップ12の周囲をチップ封止樹脂22で樹脂封止した。次に、各素子をリードフレーム32から切り離し、リードフレーム32の脚部を垂直に折り曲げた。その後、図9に示すように、研磨機を用いて基板側に接する封止樹脂22を研磨し、基板を露出させるまで研磨し、図8に示すような磁電変換素子を完成させた。
【0062】
次に、感磁面側のチップ封止樹脂面をバイアス磁石42と接着し、非磁性保護ケース52内に実装した。この際、磁電変換素子の位置精度を上げるために、非磁性保護ケース52の内面形状と、磁電変換素子の封止樹脂形状に成形された絶縁性ケース82をガイドとして用いると良い。
【0063】
さらに、非磁性保護ケース52の開口側にエポキシ樹脂62を注入し、封止された素子チップとバイアス磁石42を固定し、図7に示すような磁電変換素子を完成させた。
【0064】
本実施例の方法を用いて、計500個の磁電変換素子を作製したが、全ての素子の端子間で導通があり、各端子間抵抗値や磁気抵抗変化量のバラツキも5%以内で良好な特性を示した。
【0065】
[比較例1]
図10に示すように、実施例1と同様の外観を有する非磁性保護ケース53でパッケージした磁電変換素子を作製する際に、磁電変換素子チップ13をチップ封止樹脂で覆わずに素子を作製する、いわゆる従来の作製方法を用いて磁電変換素子を作製した場合について説明する。
【0066】
まず、実施例1と同様に薄膜形成方法の一例である分子線エピタキシー法を用いて、GaAs基板上に感磁部としてSnドープInSb薄膜を形成する。工程はGaAs基板にAsを照射しながら650℃で加熱し、表面酸素を脱離させる。次に、580℃に温度を下げてGaAsバッファ層を200nmの厚さで形成する。次に、Asを照射しながら400℃まで温度を下げた後、SnとIn、Sbを同時に基板に照射しながら、動作層の膜厚1μmからなるSnドープInSb薄膜を形成した。この際、InSb薄膜の電子移動度は7×1016/cmになるようにSnセル温度を調節した。
【0067】
次に、磁電変換素子チップ13の作製プロセスを実施する。磁電変換素子チップ13は実施例1と同様な磁気抵抗素子を用いた。磁電変換素子チップの作製工程は、まずInSb/GaAs基板のInSb表面にフォトレジストをスピンコーターを用いて均一に塗布する。フォトレジストの塗布条件は、100cpの粘度で3200rpmの回転速度で20秒間回転すると2.5μmの厚さとなる。InSbのメサエッチング用のフォトマスクを用いて、露光・現像した後に塩酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にInSb薄膜をメサエッチングする。
【0068】
次に再度、フォトレジストを塗布した後に、短絡電極と電極パッドを形成するための露光・現像を行い、電極形成用のレジストパターンを形成した後に、電子ビーム蒸着法により電極として100nm厚のTiと400nm厚のAuからなる積層電極を形成し、リフトオフ法を用いて所望の電極形状を作製し、素子形状を完成させた。この際の短絡電極間隔L2と動作層幅W2との比L2/W2は14/70=0.2とした。さらに、保護膜として窒化シリコン薄膜を300nmの厚さでプラズマCVD法により形成し、電極パッド部分のみの窒化シリコン膜を、反応性イオンエッチング装置を用いて除去し、磁電変換素子チップ13を完成させた。
【0069】
作製された磁電変換素子チップは、図10に示すように、専用のリードフレーム33の突起部と磁電変換素子チップ13の電極パッド部をフリップチップボンディング法により接続し、リードフレーム33のタイバーを切り離した。次に、非磁性保護ケース53の内側と同形状に加工され、バイアス磁石43の挿入口と接続ピン93の挿入口が開くように整形された樹脂に、3本の接続ピン93を差し込み、かつバイアス磁石43を挿入する。バイアス磁石43の上面にエポキシ樹脂を用いて、リードフレーム33についた磁電変換素子チップ13を接着させ、リードフレーム33の端と接続ピン93を半田付けする。最後に非磁性保護ケース53に差し込み、樹脂で封止し図10に示すような磁電変換素子を完成させた。
【0070】
本比較例の方法を用いて、計500個の磁電変換素子を作製したが、23個の素子で端子間の導通が無く、12個の素子で非磁性保護ケースと電極端子が接触したため端子間が短絡しており、計35個の不良となった。
【0071】
[比較例2]
図11に示すように、実施例1と同様に磁電変換素子チップ14として磁気抵抗素子を用いて、非磁性保護ケース54に封止して作製される磁電変換素子の作製工程において、磁電変換素子チップ14を電気配線が施されたガラスエポキシ基板104上に接着し、磁電変換素子チップ14の電極パッドとガラスエポキシ基板104上の電極端子とをAuワイヤー114によるワイヤーボンディングにより接続した。このガラスエポキシ基板104には3つの接続ピン94が挿入される穴が設けてある。別の工程で非磁性保護ケース54に挿入される成形樹脂に3本の接続ピン94とバイアス磁石44を挿入し、バイアス磁石44上に磁電変換素子チップ14の乗ったガラスエポキシ基板104を接着する。その際、3本の接続ピン94はガラスエポキシ基板104上に設けられた接続穴に挿入されるようにする。次に3本の接続ピン94の各々と接続穴とを半田により接続させる。最後に非磁性保護ケース54に挿入し、端面をエポキシ樹脂64で封止して図11に示すような磁電変換素子を完成させた。
【0072】
本比較例の方法を用いて、計300個の磁電変換素子を作製したが、2個の素子で端子間の導通が無く、9個の素子で非磁性保護ケースと電極端子が接触したため端子間が短絡しており、計11個の不良となった。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、リードフレームと磁電変換素子チップの電極パッドとが電気的に接続され、リードフレームの脚部が樹脂封止された磁電変換素子において、リードフレームの脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられ、全体が非磁性保護ケース内に封止されているので、非磁性保護ケースを使用して作製される磁電変換素子の作製工程を簡素化でき、かつ不良がほとんど無いために、収率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁電変換素子の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨した後の素子の上面図である。
【図3】本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨する工程を示す側面図である。
【図4】本発明の磁電変換素子の実施例2を示す構成図である。
【図5】本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨した後の素子の上面図である。
【図6】本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨する工程を示す側面図である。
【図7】本発明の磁電変換素子の実施例3を示す構成図である。
【図8】本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨した後の素子の上面図である。
【図9】本発明の磁電変換素子チップをチップ封止樹脂し、リードフレームの脚部を折り曲げ不用部を研磨する工程を示す側面図である。
【図10】従来の非磁性保護ケースに封止された磁電変換素子の構造図である。
【図11】従来の非磁性保護ケースに封止された磁電変換素子の構造図である。
【符号の説明】
1,11,14 磁電変換素子チップ
2,21,22,23,24 チップ封止樹脂
3,31,32,33,34 リードフレーム
4,41,42,43,44 バイアス磁石
5.51.52.53.54 非磁性保護ケース
6,61,62,63,64 エポキシ樹脂
7,71,72 シリコーン
8,81,82,83 絶縁性ケース
93,94 接続ピン
104 ガラスエポキシ基板
111,114 Auワイヤー
12,121,122 研磨して取り去られるチップ封止樹脂部分
13,131,132 磁電変換素子チップの電極パッド

Claims (16)

  1. リードフレームと磁電変換素子チップの電極パッドとが電気的に接続され、前記リードフレームの脚部が樹脂封止された磁電変換素子において、前記リードフレームの脚部が感磁面に対して垂直に折り曲げられ、全体が非磁性保護ケース内に封止されていることを特徴とする磁電変換素子。
  2. 前記磁電変換素子チップがホール素子からなることを特徴とする請求項1に記載の磁電変換素子。
  3. 前記磁電変換素子チップが磁気抵抗素子からなることを特徴とする請求項1に記載の磁電変換素子。
  4. 前記リードフレームの脚部の断面積が、0.05〜5mmであることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の磁電変換素子。
  5. 前記磁電変換素子と前記非磁性保護ケースとの間に緩衝材が挿入されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の磁電変換素子。
  6. 前記緩衝材が低硬度樹脂からなることを特徴とする請求項5に記載の磁電変換素子。
  7. 前記緩衝材がシリコーンからなることを特徴とする請求項5に記載の磁電変換素子。
  8. 前記磁電変換素子チップの感磁部がInAsSb1−y(0≦y≦1)からなることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の磁電変換素子。
  9. リードフレームと磁電変換素子チップの電極パッドを電気的に接続させる第一の工程と、前記リードフレーム上の磁電変換素子チップを樹脂によりモールディングする第二の工程と、前記リードフレームの脚部を直角に折り曲げる第三の工程と、前記樹脂を研磨する第四の工程と、全体を非磁性保護ケース内に封止する第五の工程とを備えたことを特徴とする磁電変換素子の作製方法。
  10. 前記磁電変換素子チップがホール素子からなることを特徴とする請求項9に記載の磁電変換素子の作製方法。
  11. 前記磁電変換素子チップが磁気抵抗素子からなることを特徴とする請求項9に記載の磁電変換素子の作製方法。
  12. 前記リードフレームの脚部の断面積が、0.05〜5mmであることを特徴とする請求項9,10又は11に記載の磁電変換素子の作製方法。
  13. 前記磁電変換素子と非磁性保護ケースとの間に緩衝材が挿入されていることを特徴とする請求項9乃至12いずれかに記載の磁電変換素子の作製方法。
  14. 前記緩衝材が低硬度樹脂からなることを特徴とする請求項13に記載の磁電変換素子の作製方法。
  15. 前記緩衝材がシリコーンからなることを特徴とする請求項13に記載の磁電変換素子の作製方法。
  16. 前記磁電変換素子チップの感磁部がInAsSb1−y(0≦y≦1)からなることを特徴とする請求項9乃至13いずれかに記載の磁電変換素子の作製方法。
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