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JP2003239030A - ホウ素含有高剛性Al合金 - Google Patents

ホウ素含有高剛性Al合金

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JP2003239030A
JP2003239030A JP2002040589A JP2002040589A JP2003239030A JP 2003239030 A JP2003239030 A JP 2003239030A JP 2002040589 A JP2002040589 A JP 2002040589A JP 2002040589 A JP2002040589 A JP 2002040589A JP 2003239030 A JP2003239030 A JP 2003239030A
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less
alloy
rigidity
boron
compound
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JP2002040589A
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Katsura Kajiwara
桂 梶原
Yasuhiro Ariga
康博 有賀
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低コストで生産性に優れた溶解鋳造法によっ
ても製造することができ、強度、靭性および耐摩耗性等
の機械的特性に優れていることは勿論のこと、高い剛性
率を発揮すると共に、被削性および塑性加工性をも向上
したAl合金を提供する。 【解決手段】 B:1.5超〜20%(質量%の意味、
以下同じ)を含有すると共に、結晶構造がAlB2型で
あるB含有化合物の平均サイズが200μm以下であ
り、且つ該化合物のうちサイズが50μm以下のものが
AlB2型B含有化合物全体に対する個数割合で50%
以上を占めるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた強度、靭性
および耐磨耗性を発揮すると共に、剛性率の向上を図る
ことのできるAl合金に関するものであり、殊にこれら
の特性が要求される自動車部品の素材として有用なB含
有Al合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、環境保全や燃費向上という観点か
ら自動車の軽量化が進められており、その一環として自
動車用部品の素材に鉄系材料からAl合金材料への移行
が行われつつある。しかしながら、一般的なAl合金で
は、鉄系材料に比べて機械的特性に劣る傾向がある。即
ち、自動車用部品には、強度、靭性および耐摩耗性等の
機械的特性に優れていることは勿論のこと、軽量化およ
び小型化という観点から高い剛性率(応力/歪比)も要
求されるのであるが、通常のAl合金ではこれらの特性
が十分ではないという問題がある。
【0003】こうしたことから、自動車用部品として使
用されるAl合金としては、通常Siを比較的多く含有
させることによって上記各特性を満足させることが行わ
れている。即ち、Al−Si系合金では、Siを含有さ
せることによって、熱膨張率の低下や剛性率の向上が図
れると共に、優れた耐摩耗性が発揮できるといわれてい
る。こうしたAl−Si系Al合金としては、A403
2FD(JIS H4140)等の鍛造用Al合金やA
C8AおよびAC9B(JIS H5202)等の鋳物
用Al合金の他、粉末冶金法によるAl−Si合金等が
知られている(例えば、特開平6−158211号)。
しかしながら、これらのAl−Si系Al合金では、い
ずれも下記の様な問題を有しており、自動車用部品の素
材として特性的に十分とは言えないのが実状である。
【0004】上記各Al合金のうち、A4032FDや
AC8Aでは、11〜13%程度のSiの含有によっ
て、耐熱性や強度の点では優れたものとなるのである
が、上記程度のSiの含有では耐摩耗性の点で依然とし
て十分ではない。また、上記AC9Bでは、18〜20
%程度のSiを含むものであり、優れた耐摩耗性を発揮
するものであるが、初晶Si粒子が粗大化することに起
因して、切削工具が早期に摩耗して被削性の点で劣り、
しかも塑性加工性や靭性が却って劣るという問題があ
る。
【0005】こうした問題を解決する為に、例えば特開
平6−293933号の様な技術も提案されている。こ
の技術では、合金組成の最適化と共に、合金組織におけ
る初晶Siおよび共晶Si並びにSi析出物の粒径や分
布を制御することによって、溶解鋳造法によって得られ
るAl合金の耐磨耗性、被削性および塑性加工性を大幅
に改善すると共に、優れた強度、靭性および延性を発揮
させるものである。しかしながら、こうしたAl合金を
溶解鋳造法で得るには、その製造条件での制約が多く、
上記の様な御を安定的に行なうことは困難である。
【0006】また、上記技術では、初晶Siの粗大化を
防止する為にPを含有させたり、共晶Siの微細化を図
るためにNa,SbおよびSr等の成長抑制元素を含有
させることも示されているが、これらの合金元素は基本
的にAl合金の強度劣化を招くものであり、これらの合
金成分の含有はAl合金の機械的特性を却って劣化させ
ることになる。更に、上記技術では、Si含有化合物の
形態を制御することによってAl合金の特性を発揮させ
るものであるが、Si含有化合物は高温保持時に再固溶
および成長し易く、またその化合物のサイズが変動し易
く、安定的に上記特性を発揮させることができないとい
う欠点がある。
【0007】一方、粉末冶金法によって製造されたAl
合金では、固溶限以上の多量のSiを含有できるばかり
でなく、Fe,Ni,Mn,Cu,Mg等の合金元素も
広い範囲で含有でき、しかも初晶Siを溶解鋳造法に比
べて非常に小さくできるので、耐熱強度や耐摩耗性を著
しく向上できるという利点を有している。しかしなが
ら、粉末冶金法では原料粉末が高コストであると共に、
その製造工程が多いものであるので溶解鋳造法に比べて
生産性が低いものとなる。
【0008】また粉末冶金法を適用した技術として、S
iの代わりに窒素化合物を含有させたAl基複合材料も
提案されており(例えば、特開平6−57363号)、
この複合材料では剛性率の面では優れた特性を発揮する
といえるが、粉末冶金法を適用することによるコスト面
や生産面での不利は避けられず、しかもマトリックス成
分にも焼結助剤を混合しなければならない(Mg,Z
n,Al−Cu−Mgなど)という制約があって汎用性
が低く、極く限られた用途でしか使用できないという問
題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした状況
の下でなされたものであって、その目的は、低コストで
生産性に優れた溶解鋳造法によっても製造することがで
き、強度、靭性および耐摩耗性等の機械的特性に優れて
いることは勿論のこと、高い剛性率を発揮すると共に塑
性加工性をも向上したAl合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すること
のできた本発明のホウ素含有Al合金とは、B:1.5
超〜20%を含有すると共に、結晶構造がAlB2型で
あるB含有化合物の平均サイズが200μm以下であ
り、且つ該化合物のうちサイズが50μm以下のもの
が、AlB2型B含有化合物全体に対する個数割合で5
0%以上を占めるものである点に要旨を有するものであ
る。またこのAl合金においては、AlB2型B含有化
合物が、Bを含有する全化合物に対する個数割合で80
%以上を占めるものであることが好ましい。
【0011】本発明のホウ素含有Al合金においては、
基本成分としてBを含有するものであり、他の成分につ
いては特に限定されるものではないが、本発明で適用で
きるAl合金成分系としては下記(a)〜(g)の各種
のものが好ましく、いずれもAlB2型B含有化合物の
分布状態を適切に制御することによって、各種機械的特
性を向上させることができる。
【0012】(a)Bの他に、Fe:2%以下(0%を
含む)および/またはSi:2%以下(0%を含む)を
含有し(以下、「1000系組成」と呼ぶ)、残部が実
質的にAlからなるA1合金。
【0013】(b)Bの他に、Cu:1.5〜7%を含
有し、必要によって、(i)Mg:1.8%以下(0%を
含まない),Mn:1.2%以下(0%を含まない),
Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3
%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%
を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まな
い)よりなる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2
%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%未
満(0%を含まない)を含有し(以下、「2000系組
成」と呼ぶ)、残部が実質的にAlからなるA1合金。
【0014】(c)Bの他に、Mn:0.3〜2%を含
有し、必要によって、(i)Mg:1.8%以下(0%を
含まない),Cu:0.6%以下(0%を含まない)C
r:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%
以下(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含ま
ない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よ
りなる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2%以
下(0%を含む)および/またはSi:2%以下(0%
を含まない)を含有し(以下、「3000系組成」と呼
ぶ)、残部が実質的にAlからなるAl合金。
【0015】(d)Bの他に、Si:2〜16%を含有
し、必要によって、Mg:11%以下(0%を含まな
い),Cu:5%以下(0%を含まない),Cr:0.
4%以下(0%を含まない),Ni:0.6%(0%を
含まない),Mn:0.6%以下(0%を含まない),
Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5
%(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含
まない)およびFe:2%以下(0%を含まない)より
なる群から選ばれる1種以上を含有し(以下、「400
0系組成」と呼ぶ)、残部が実質的にAlからなるA1
合金。
【0016】(e)Bの他に、Mg:2〜8%を含有
し、必要によって、(i)Cu:0.6%以下(0%を含
まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:
0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下
(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まな
い)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)より
なる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2%以下
(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0
%を含まない)を含有し(以下、「5000系組成」と
呼ぶ)、残部が実質的にAlからなるAl合金。
【0017】(f)Bの他に、Mg:0.3〜1.5%
およびSi:0.3〜1.5%を含有し、必要によって
Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以
下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含
まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Z
n:0.5%(0%を含まない),Ti:0.3%以下
(0%を含まない)およびFe:2%以下(0%を含ま
ない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有し(以
下、「6000系組成」と呼ぶ)、残部が実質的にAl
からなるAl合金。
【0018】(g)Bの他に、Mg:1〜4%およびZ
n:0.8〜8%を含有し、必要によって、(i)Cu:
3%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を
含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),
Zr:0.3%以下(0%を含まない)およびTi:
0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれ
る1種以上や、(ii) Fe:2%以下(0%を含まな
い)および/またはSi:2%未満(0%を含まない)
を含有し(以下、「7000系組成」と呼ぶ)、残部が
実質的にAlからなるAl合金。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明者らは、各種機械的特性を
改善したAl合金の実現を目指して、これまでの既成概
念に捕われることなく、様々な角度から検討した。その
結果、適切な量のBを含有させると共に、結晶構造がA
lB2型であるB含有化合物(以下、単に「AlB2型B
含有化合物」と呼ぶことがある)の平均サイズや所定サ
イズのB含有化合物の分布割合を適切に制御してやれ
ば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明
を完成した。
【0020】本発明によれば、成分系の制約を受けるこ
となく、剛性率を上げることが可能になるばかりでな
く、通常の溶解鋳造法によっても、化合物サイズと形態
の制御が容易に行うことができ、これによって強度、靭
性および耐摩耗性等の他、被削性および塑性加工性をも
向上したAl合金が生産性良く製造できるのである。
【0021】本発明のAl合金では、上述の如く適切な
量のBを含有させると共に、Bを含有する化合物のうち
特にAlB2型B含有化合物の平均サイズや所定サイズ
のB含有化合物の分布割合を適切に制御するものである
が、まずこれらを規定した理由について説明する。
【0022】B:1.5超〜20% Bは、B含有化合物(特にAlB2型B含有化合物)を
形成することによって、Al合金の剛性率を高めると共
に、強度や耐摩耗性を高めるのに有効な元素である。ま
た、こうしたB含有化合物は、高温保持中においてもサ
イズ変化が認められず、高温保持中の剛性率安定化とい
う効果も発揮する。これらの効果を発揮させるために
は、1.5%を超えて含有させる必要がある。しかしな
がら、B含有量が過剰になって20%を超えると、硬く
なり過ぎて被削性や塑性加工性が劣化する。尚、B含有
量の好ましい下限は2%程度であり、好ましい上限は1
9%程度である。
【0023】AlB2型B含有化合物の平均サイズが2
00μm以下 AlB2型B含有化合物は、非常に硬い化合物であるの
で、少量の分散でAl合金の強度や剛性率を向上させる
のに有効な成分である。例えば、AlB2の硬さはビッ
カース硬度Hvで1500〜2000程度であり、Si
相(Hv870〜1350)に比べて強度や剛性率が高
いものとなる。また、このAlB2型B含有化合物は、
高温保持中においてもサイズ変化が認められない安定な
化合物なので、Al合金の熱膨張率の低下という効果を
もたらすことになる。これらの効果によって、Siを多
量に含有させずとも、希望する機械的特性が発揮させる
ことができるばかりか、通常の溶解鋳造法においてもB
含有化合物の形態制御が可能になる。
【0024】そして、上記の効果を発揮させるために
は、上記B含有化合物の平均サイズが200μm以下で
ある必要がある。即ち、このB含有化合物の平均サイズ
が200μmを超えると、上記に機械的特性(特に、延
性や剛性率)が却って劣化することになる。尚、上記B
含有化合物の形態は、塊状、針状あるいは板状等、様々
であるが、本発明における「B含有化合物の平均サイ
ズ」とは、板厚方向や板幅方向にかかわらず、その最長
の寸法の平均値の意味である。
【0025】サイズが50μm以下のものが、AlB2
型B含有化合物全体に対する個数割合で50%以上 本発明のAl合金において、高い剛性率を確保するため
には、AlB2型B含有化合物のサイズ分布は微細分状
態であることが必要である。こうした観点から、サイズ
が50μm以下のAlB2型B含有化合物が、AlB2
B含有化合物全体に対する個数割合で50%以上とする
必要がある。即ち、この個数割合が、50%未満になる
と、B含有化合物が均一に分散しておらず(B含有化合
物の希薄なマトリックス領域が増加する)、剛性率向上
効果が表われない。
【0026】本発明では、形態制御の対象とするB含有
化合物をAlB2型とするものであるが、その理由は次
の通りである。Al合金中のB含有化合物としては、A
lB 2、AlB12、TiB2、CrB、FeB、B23
4C等、様々なものが生成することが予想されるが、
このうちTiB2、CrB、FeB、B23、B4C等で
は通常の溶解鋳造法によっては、凝集し易くなって好ま
しくなく、またAlB 12は粗大化合物であり、被削性や
塑性加工性を却って劣化させることになる。これに対し
て、AlB2型B含有化合物であれば上記した要件を満
足することによって、他の要因に影響されることなく上
記効果が発揮されることになる。
【0027】本発明における「AlB2型B含有化合
物」とは、上記のAlB2は勿論のこと、結晶構造が同
じAlB2型であれば、その効果を発揮するので、この
化合物にMg,Mn,Si,Cu,Nb,Cr等の成分
を所定量含有するものも(例えば、0.01〜30原子
%程度)含まれるものである。また、上記効果を発揮さ
せるためには、上記の様なAlB2型B含有化合物は、
B含有化合物中の80%以上となる様に制御することが
好ましい。
【0028】本発明のAl合金は、基本的に溶解鋳造法
(連続鋳造、半連続鋳造)によって製造することを想定
したものであるが、粉末冶金法によって製造することも
でき、いずれの方法によっても鋳物、圧延材、押し出し
材として有効に利用できるAl合金材料が得られる。但
し、溶解鋳造法の方が、製造工程数や製造コストの面で
有利であり、またその後の圧延、押し出し加工、熱処理
等によってアルミマトリックス合金の組成や固溶状態、
析出状態を制御でき、総合的な特性改善という上で好ま
しい。
【0029】本発明におけるB含有化合物は、Al合金
溶湯にBを添加して生成したものの他、原料粉末の段階
で予めB含有化合物の形態にしたものをAl合金溶湯
(またはAl溶湯)に添加したものでも良く、その由来
に限定されない。また、B含有化合物のサイズは、原料
中のB粉末粒子のサイズ、或は予め化合物の形態にした
原料粉末のサイズや、最高溶解温度(即ち、B含有化合
物の溶解保持温度)や保持時間等(溶解鋳造法の場合)
を調整することによって制御することができる。
【0030】上記最高溶解温度は、B含有化合物を再固
溶させて微細化させる上で重要な要件である。この溶解
温度の最適な範囲はB含有量によって変わり、一概には
規定できないが、一般的にはB含有量が多くなるほど高
温(例えば、B含有量が5%の場合に850℃程度)に
なる傾向がある。但し、原料として使用するB粉末やB
含有化合物粉末の粒子径が小さいほど、低温の溶解温度
で制御することができる。
【0031】一方、保持時間に関しては、長時間になる
ほどB含有化合物が成長し易くなって微細粒子の分散状
態を悪化させる傾向があるが、実際の操業に際しては、
昇温時間、成分調整、脱ガス等の処理のためにある程度
の保持時間が必要になってくる。こうした観点からし
て、保持時間は30分以内に収めることが好ましい。
【0032】上記の様な製造条件下において、AlB2
型B含有化合物を、Bを含有する化合物中の80%以上
となる様に制御するには、原料粉末の段階で予めAlB
2型B含有化合物の形態にしたものをAl合金溶湯(ま
たはAl溶湯)に添加する場合にはその段階で調整すれ
ば良いが、Al合金溶湯にBを添加してB含有化合物を
生成させる場合には、BがAlに固溶する温度にまで上
げ(例えば、1200〜1300℃程度)、その冷却過
程で晶出させることで生成させれば良い。
【0033】本発明のホウ素含有Al合金においては、
基本成分としてBを含有するものであり、他の成分につ
いては特に限定されるものではないが、本発明で適用で
きるAl合金成分系としては上記(a)〜(g)に示し
た各成分系(1000〜7000系の各組成)のものが
挙げられる。いずれの成分系においても、Bを含有しな
い場合に比べて強度や剛性率を10%程度高くすること
ができる。これらの成分系における各元素の好ましい範
囲設定理由は下記の通りである。
【0034】(a)1000系組成[Bの他にFe:2
%以下(0%を含む)および/またはSi:2%以下
(0%を含む)を含有] 1000系組成においては、FeやSiはAl合金中で
Al−Fe系化合物[例えば、Al13FeやAlmFe
(但し、mは正の整数)等]またはAl−Fe−Si系
化合物(例えば、α―AlFeSi等)の種々の晶出物
や析出物を形成し、結晶粒の微細化を図って強度を高め
たり、加工性(圧延、押し出し、引き抜く)を高める作
用を発揮する。また、FeやSi含有させることによっ
て、硬度や成形性を高めることができる他、Siの含有
によって耐食性をも向上させることができる。但し、F
eやSiは、電気伝導性や熱伝導性を高めるという点か
らすれば、これらの成分の含有量をできるだけ少なくし
てAlの純度を高めることが好ましい。これらの観点か
ら、FeやSiは、いずれも2%以下まで含有させるこ
とができる。
【0035】(b)2000系組成(Bの他にCu:
1.5〜7%を含有) 2000系組成において、Cuは時効析出することによ
って、硬化や強度の上昇に寄与する元素である。即ち、
Al−Cu系Al合金において、Cuはα→GPゾーン
→θ’-CuAl2相→θ-CuAl2相という一連の析出
過程において、θ-CuAl2相およびその中間層である
GPゾーンやθ’-CuAl2相を形成し、硬化や強度上
昇効果を発揮する。このような作用を有効に発揮させる
ためいは、Cu含有量は1.5%以上とするのが良い。
Cu含有量のより好ましい下限は1.6%程度であり、
更に好ましくは1.7%以上とするのが良い。一方、C
u含有量が過剰になって、7%を超えると粗大な析出物
を形成して脆くなってしまう。Cu含有量のより好まし
い上限は6.9%程度であり、更に好ましくは6.8%
以下とするのが良い。
【0036】この2000系組成においては、必要によ
って、Mg:1.8%以下(0%を含まない),Mn:
1.2%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下
(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含ま
ない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)および
Ti:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から
選ばれる1種以上を含有することも有効である。
【0037】このうち、MgはAl2CuMgやAl16
CuMg4等の化合物が時効析出することによって、強
度や硬度の上昇に寄与する効果を発揮する。特に、Cu
量が少ない範囲では、Mgによる硬化作用が支配的にな
ってくる。しかしながら、Mgの含有量が1.8%を超
えると、粗大な化合物が形成されて脆くなる。尚Mgの
より好ましい上限は1.7%程度である。
【0038】また、Mn,Cr,ZrおよびTiは、結
晶粒を微細化して強度、延性および靭性等を向上させる
元素である。こうした効果は、その含有量が多くなるに
つれて大きくなるが、含有量が過剰になって上記の範囲
を超えると粗大な化合物が形成されて脆くなってしま
う。尚、これらのより好ましい上限は、Mn:1.1
%、Cr:0.3%、Zr:0.2%、Ti:0.2%
である。
【0039】更に、Znは強度の向上に寄与するが、そ
の含有量が過剰になって0.5%を超えると、粗大なA
l−Zn系か化合物が形成されて脆くなってしまう。
尚、Zn含有量のより好ましい上限は0.4%である。
【0040】この2000系組成には、必要によって、
更にFe:2%以下(0%を含まない)および/または
Si:2%以下(0%を含まない)を含有することも有
効である。これらを含有することによって、前記100
0系組成と同様の効果が得られる。特に、Al合金がM
gを含む場合には、Siの含有によって、Mg2Si等
の時効析出物を形成し、硬度上昇に寄与することにな
る。
【0041】(c)3000系組成(Bの他にMn:
0.3〜2%を含有) 3000系組成において、Mnは固溶硬化作用および加
工硬化作用を発揮し、強度の上昇に寄与する元素であ
る。こうした作用を発揮させるためには、0.3%以上
含有させるのが良く、より好ましくは0.4%以上含有
させるのが良い。しかしながら、2%を超えて含有させ
ると粗大な析出物を形成して脆くなってしまう。尚、M
n含有量より好ましい上限は1.9%程度であり、更に
好ましくは1.8%以下にするのが良い。
【0042】この3000系組成においては、必要によ
って、Mg:1.8%以下(0%を含まない),Cu:
0.6%以下(0%を含まない)Cr:0.4%以下
(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含ま
ない),Zn:0.5%(0%を含まない)およびT
i:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選
ばれる1種以上を含有させることも有効である。
【0043】このうち、Mgは固溶強化して硬化に寄与
するのに有効な元素である。こうした効果はその含有量
が増加するにつれて大きくなるが、Mg含有量が1.8
%を超えると、粗大な化合物が形成されて脆くなる。
尚、Mgのより好ましい上限は、1.7%程度である。
【0044】またCuはAl2CuやAl2CuMg等を
形成して硬化に寄与する寄与する元素である。しかしな
がら、Cu含有量が過剰になって0.6%を超えるとA
2CuMgが粗大になって脆くなる。尚、Cuのより
好ましい上限は、0.5%程度である。
【0045】Cr,ZrおよびTiは、結晶粒を微細化
して強度、延性および靭性等を向上させる元素である。
こうした効果は、その含有量が多くなるにつれて大きく
なるが、含有量が過剰になって上記の範囲を超えると粗
大な化合物が形成されて脆くなってしまう。尚、これら
のより好ましい上限は、Cr:0.3%、Zr:0.2
%、Ti:0.2%である。
【0046】Znは強度の向上に寄与するが、その含有
量が過剰になって0.5%を超えると、粗大なAl−Z
n系化合物が形成されて脆くなってしまう。尚、Zn含
有量のより好ましい上限は0.4%である。
【0047】この3000系組成においても、上記20
00系組成と同様に、必要によって、更にFe:2%以
下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下
(0%を含まない)を含有することも有効であり、これ
らを含有することによって、前記2000系組成と同様
の効果が得られる。
【0048】(d)4000系組成(Bの他に、Si:
2〜16%を含有) 4000系組成において、Siは初晶Siおよび共晶S
iを形成して強度を増大させ、且つ耐食性を向上させる
のに有効な元素である。こうした効果を発揮させるため
には、2%以上含有させるのが良く、より好ましくは5
%以上含有させるのが良い。しかしながら、16%を超
えて含有さると初晶Siが80μm近くにまで過大に粗
大化し、被削性や塑性加工性、および靭性、延性を阻害
することになる。
【0049】この4000系組成においては、必要によ
って、Mg:11%以下(0%を含まない),Cu:5
%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%
を含まない),Ni:0.6%(0%を含まない),M
n:0.6%以下(0%を含まない),Zr:0.3%
以下(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含ま
ない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)および
Fe:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ば
れる1種以上を含有することも有効である。
【0050】このうちMgは、固溶強化、析出強化に寄
与し、強度および硬度を向上させるのに有効な元素であ
る。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大
するが、過剰になって11%を超えると耐食性に悪影響
が現れると共に、Al合金の鍛造性も劣化する。
【0051】Cuは、固溶強化によって耐力および硬度
を増大させ、時効処理によって耐摩耗性および疲労強度
を改善するのに有効な元素である。こうした効果は、そ
の含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって
5%を超えると鍛造性や耐食性が劣化することになる。
尚、上記効果を発揮させるためのCuのより好ましい下
限は0,5%である。
【0052】Niは、析出物を形成し、その含有量の増
加に伴って耐熱性および耐焼付き性の改善に有効な元素
である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれ
て増大するが、過剰になって0.5%を超えると針状粗
大析出物を多量が析出し、鍛造性、強度、靭性等が著し
く低下することになる。
【0053】Mnは、Fe析出物やAl−Fe−Si系
析出物の形状を球状化且つ微細化して疲労強度を改善す
るのに有効な元素であるが、0.5%を超えて含有させ
ても鍛造性および靭性を劣化させることになる。
【0054】Feは、Niと同様に析出物を形成して、
その含有量の増加に伴って耐熱強度および耐焼付き性を
改善するのに有効な元素である。こうした効果は、その
含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって2
%を超えると、組織の不均一が進行して延性や被削性が
損なわれることになる。
【0055】(e)5000系組成(Bの他に、Mg:
2〜8%を含有) 5000系組成においては、Mgは固溶強化作用および
加工硬化作用を発揮し、強度を高めるのに有用な元素で
ある。このような効果を発揮させるためには、Mgは2
%以上含有させるのが良い。Mg含有量のより好ましい
下限は3%であり、更に好ましくは4%以上含有させる
のが良い。しかしながら、Mg含有量が過剰になって8
%を超えると延性が低下し、耳割れや表面割れ等を生じ
て圧延等の加工処理が困難になる。Mg含有量のより好
ましい上限は7%程度であり、更に好ましくは6%以下
とするのが良い。
【0056】この5000系組成においては、必要によ
って、Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:
1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0
%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まな
い),Zn:0.5%(0%を含まない)およびTi:
0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれ
る1種以上を含有させることも有効であり、これらはい
ずれもAl合金の機械的特性(強度、延性、靭性、硬度
等)の向上に寄与する。
【0057】このうちCuは、Al2CuMgを形成し
て硬化に寄与する。こうした効果は、その含有量が増加
するにつれて増大するが、過剰になって0.6%を超え
るとAl2CuMgが粗大になって脆くなる。尚、Cu
含有量の好ましい上限は0.5%程度である。
【0058】またMn,Cr,ZrおよびTiは結晶粒
を微細化して、強度や靭性を向上させるのに有効な元素
である。これらの効果は、夫々の含有量が増加するにつ
れて増大するが、過剰になって上記範囲を超えると粗大
な化合物が形成されて脆くなる。これらの元素のより好
ましい上限は、Mn:0.9%、Cr:0.3%、Z
r:0.2%、Ti:0.2%である。
【0059】更に、Znは強度の向上に寄与する元素で
あり、その効果は含有量が増加するにつれて増大する
が、過剰になって0.5%を超えると、粗大なAl−Z
n系化合物が形成されて脆くなる。尚、この5000系
組成において、Znのより好ましい上限は0.4%程度
である。
【0060】またこの5000系組成においても、上記
2000系組成や3000系組成と同様に、必要によっ
て、更にFe:2%未満(0%を含まない)および/ま
たはSi:2%未満(0%を含まない)を含有すること
も有効であり、これらを含有することによって、前記2
000系組成と同様の効果が得られる。
【0061】(f)6000系組成(Bの他に、Mg:
0.3〜1.5%およびSi:0.3〜1.5%を含
有) 6000系組成においては、MgおよびSiはMg2
iを形成して硬化に寄与する。このような効果を発揮さ
せるためには、夫々0.3%以上含有させるのが良く、
これより少なくなると強度不足を招くことになる。しか
しながら、いずれも1.5%を超えて過剰に含有される
と、粗大な化合物が形成されて脆くなる。尚、これらの
元素のより好ましい下限は0.4%であり、更に好まし
くは0.5%以上とするのが良い。またより好ましい上
限は、1.4%であり、更に好ましくは1.3%以下と
するのが良い。
【0062】この6000系組成には、必要によってC
u:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下
(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含ま
ない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Z
n:0.5%(0%を含まない),Ti:0.3%以下
(0%を含まない)およびFe:2%以下よりなる群か
ら選ばれる1種以上を含有することも有効であり、これ
らを含有させることによって上記5000系組成と同様
の効果が発揮される。
【0063】(g)7000系組成(Bの他に、Mg:
1〜4%およびZn:0.8〜8%を含有) 7000系組成において、MgおよびZnは、Mg3
3Al2やMgZn2若しくはこの準安定相であるη’
層などの化合物を形成することによって硬化に寄与する
と共に、強度向上作用を発揮するのに有効な元素であ
る。即ち、これらの元素は、所定の熱処理(後記実施例
参照)を施すと時効析出し、これによって450MPa
以上の引張り強度が得られることになる。
【0064】こうした効果を発揮させるためには、Mg
で1%以上、Znで0.8%以上含有させることが好ま
しい。より好ましい下限はMgで1.1%、Znで0.
9%であり、更に好ましくはMgで1.2%以上、Zn
で1.0%以上とするのが良い。しかしながら、これら
の元素が過剰になってMgで4%、Znで8%を超える
と、粗大なAl−Zn系化合物が形成されて脆くなるば
かりか、耐応力腐食割れ性も低下することになる。より
好ましい上限は、Mgで3.9%、Znで7.9%、更
に好ましくはMgで3.8%以下、Znで7.8%以下
とするのが良い。
【0065】この7000系組成においては、Cu:3
%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含
まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Z
r:0.3%以下(0%を含まない)およびTi:0.
3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1
種以上を含有させることも有効である。
【0066】このうちCuは、Al2CuMg2やAl2
Cu等の化合物を形成して硬化に寄与する。Cu含有量
が3%以下であると、これらの化合物は固溶している
が、3%を超えると、時効硬化熱処理を行った際に高温
での過飽和度が大きくなって,粗大な化合物が形成し易
くなる。こうした観点から、Cuを含有させるときには
3%以下とするのが良く、より好ましいは2.9%以下
とするのが良い。
【0067】一方、Mn,Cr,ZrおよびTiは、上
記5000系組成の場合と同様に、結晶粒の微細化を達
成して強度、靭性、延性等を向上させるのに有効な元素
である。またMn,Cr,ZrおよびTiは結晶粒を微
細化して、強度や靭性を向上させるのに有効な元素であ
る。これらの効果は、夫々の含有量が増加するにつれた
増大するが、過剰になって上記範囲を超えると粗大な化
合物が形成されて脆くなる。これらの元素のより好まし
い上限は、Mn:0.9%、Cr:0.3%、Zr:
0.2%、Ti:0.2%である。
【0068】またこの7000系組成においても、上記
2000系、3000系、5000系の各組成と同様
に、必要によって、更にFe:2%以下(0%を含まな
い)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)
を含有することも有効であり、これらを含有することに
よって、前記2000系組成と同様の効果が得られる。
【0069】本発明の各系のAl合金においては、上記
成分の他は実質的にAlからなるものである。ここで、
「実質的にAlからなる」とは、Al以外にも微量成分
を含み得ることを意味し、こうした成分を含むものも本
発明の技術的範囲に含まれるものである。こうした微量
成分としては、P,Na,Sb,Sr,Ni等の許容成
分や、V,Be,Ga,Sn,Ca,Sr,Co等の不
可避不純物が挙げられる。
【0070】以下、実施例によって本発明の作用・効果
をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定する
性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更
することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるもの
である。
【0071】
【実施例】下記表1、2に示す各化学成分組成のAl合
金鋳塊を真空・溶解鋳造法によって作製した。このとき
AlB2型B含有化合物のサイズ分布の影響を確認する
ために、下記表3に示す粒子径のB含有原料を用いると
共に、最高溶解温度および保持時間を調整し、AlB2
型B含有化合物のサイズを制御した。このとき、13
3.3Pa以下のAr雰囲気下で溶解し、真空中、イン
ゴットケースで鋳造してインゴットとした。また、鋳造
後の詳細な製造条件は、各合金系に応じて下記の様に変
えて行った。
【0072】各Al合金の鋳造後の詳細な製造条件 (1)No.1〜14(1000系組成) 上記インゴットを表面面削してから均熱処理(540
℃)し、更に熱間圧延を開始温度540℃で行ない、厚
さ:10mmの板材を製造した。 (2)No.15〜18(2000系組成) 上記インゴットを表面面削してから均熱処理(490
℃、24時間)し、更に熱間圧延を開始温度450℃で
行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T
6処理(500℃で1時間の溶体化処理および180℃
で10時間の時効処理)を施した。 (3)No.19〜22(3000系組成) 上記インゴットを表面面削してから均熱処理(570
℃、10時間)し、更に熱間圧延を開始温度570℃で
行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、焼
鈍処理(200℃で1時間)を施した。 (4)No.23〜26(4000系組成) 鋳造して押し出し用ビレットを作製し、420℃で1時
間加熱し、外径:60mmの丸棒に押し出した後、48
0℃で1時間加熱後、水冷して焼き入れした。その後、
更に170〜180℃にて6時間の焼戻しを行なった。 (5)No.27〜30(5000系組成) 上記インゴットを表面面削してから均熱処理(490
℃、24時間)し、更に熱間圧延を開始温度500℃で
行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T
4処理(530℃で1時間の溶体化処理および150℃
で2時間の安定化処理)を施した。 (6)No.31〜34(6000系組成) 上記インゴットを表面面削してから均熱処理(550
℃、8時間)し、更に熱間圧延を開始温度500℃で行
ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T6
処理(530℃で1時間の溶体化処理および180℃で
24時間の時効処理)を施した。 (7)No.35〜38(7000系組成) 上記インゴットを表面面削してから均熱処理(480
℃、24時間)し、更に熱間圧延を開始温度480℃で
行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T
6処理(480℃で1時間の溶体化処理および180℃
で24時間の時効処理)を施した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】得られたAl基合金板材について、下記の
項目について調査した。
【0077】[B含有化合物の評価方法] (試料調整)上記により得られたアルミニウム合金板を
エミリー紙で約0.05〜0.1mmまで研磨した後、
3μmおよび1μm粗さのバフ研磨を行った。ここで、
バフ研磨液にはOPU(ストルアス社製)を用いた。こ
の様にして調製した板試料を用いて、下記の化合物分散
状態の観察およびAl合金の特性評価を行った。
【0078】(B含有化合物の形態の確認)X線回折法
によって化合物の形態(AlB2型)の存在を確認し
た。
【0079】(金属間化合物の分散度)電界放出型走査
電子顕微鏡(「S4500型FE−SEM」:日立製作
所製)を用いて、1000倍で、約100μm×100
μm程度の視野で観察した。このとき、反射電子による
観察を行うと、各金属間化合物が明瞭に観察できるので
好ましく、これによって約0.05μmレベル以上の金
属間化合物の存在状態を観察することができる。
【0080】(B含有化合物の同定)上記電界放出型走
査電子顕微鏡に付随のSEM−EDX(「EMAX−7
000型EDX」:HORIBA製作所製)を用いて、
化合物中のBの存在を確認した。
【0081】(B含有化合物のサイズ、分布、個数割合
の解析)上記の様にして観察されたB含有化合物分布の
画像を用いて、画像解析にて評価した。このときの画像
解析のソフトウェアには「Image−Pro Plu
s」(MEDIA CYBERNETICS社製)を用
いた。そのサイズは、数0.01μmレベルから数μm
まで様々であるが、本発明によって制御した合金の特徴
を定量的に規定できる範囲として、最小平均サイズが
0.05μm以上の化合物を対象に解析を行った。従っ
て、本発明で規定するB含有化合物の分散度は、上記電
界放出型走査電子顕微鏡で観察できるサイズ以上の化合
物を対象とするものである。
【0082】(強度、伸び、剛性率の測定)最終的に加
工した板または押し出し材から、引張り試験片(JIS
13号試験片)を切り出し、引張り試験(JIS Z
2241)を行なうことにより、室温強度、および伸び
を測定した。また、引張り試験から、弾性係数(剛性
率)を測定した。
【0083】(線膨張係数の測定)圧縮荷重試験法によ
って、室温、50〜300℃(50℃間隔)で測定し、
線膨張係数を評価した。
【0084】(耐摩耗性の評価方法)大越式回転円盤に
よる試験によって評価した。この試験は、回転する円盤
(相手材)の側面で所定の荷重Pを負荷しつつ試験片表
面を摩擦し、その比摩耗量で耐摩耗性を評価するもので
ある。このときの条件は、下記の通りである。 相手材:鋳鉄 荷重P:2.1kg 摩擦速度V:0.1m/s
【0085】このようにして得られた結果を下記表4、
5に一括して示すが、この結果から明らかなように、本
発明で規定する要件を満足するホウ素含有Al合金(N
o.1〜4,12,13,15,16,19,20,2
3,24,27,28,31,32,35,36)は、
いずれも各種機械的特性が改善されていることが分か
る。これに対して本発明で規定する要件のいずれかを欠
くAl合金(No.5〜11,14,17,18,2
1,22,25,26,29,30,33,34,3
7,38)では、いずれかの特性が改善されていないこ
とが分かる。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、各
種機械的特性が著しく改善された高剛性Al合金が実現
でき、こうした高剛性Al合金は、従来の鉄系材料に代
わって、自動車のエンジン部品や各種摺動部品として適
用でき、軽量化と性能向上に極めて有用である。しか
も、本発明のAl合金は、原料が安価で生産性に優れた
溶解鋳造法によっても製造できるので、粉末冶金法によ
って得られたAl合金に比べて極めて低コストで製造す
ることができるという利点もある。

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 B:1.5超〜20%(質量%の意味、
    以下同じ)を含有すると共に、結晶構造がAlB2型で
    あるB含有化合物の平均サイズが200μm以下であ
    り、且つ該化合物のうちサイズが50μm以下のものが
    AlB2型B含有化合物全体に対する個数割合で50%
    以上を占めるものであることを特徴とするホウ素含有高
    剛性Al合金。
  2. 【請求項2】 AlB2型B含有化合物が、Bを含有す
    る全化合物に対する個数割合で80%以上を占めるもの
    である請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  3. 【請求項3】 Fe:2%以下(0%を含む)および/
    またはSi:2%以下(0%を含む)を含有し、残部が
    実質的にAlからなるものである請求項1または2に記
    載のホウ素含有高剛性A1合金。
  4. 【請求項4】 Cu:1.5〜7%を含有し、残部が実
    質的にAlからなるものである請求項1または2に記載
    のホウ素含有高剛性A1合金。
  5. 【請求項5】 更に、Mg:1.8%以下(0%を含ま
    ない),Mn:1.2%以下(0%を含まない),C
    r:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%
    以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を
    含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まな
    い)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するもので
    ある請求項4に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  6. 【請求項6】 更に、Fe:2%以下(0%を含まな
    い)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)
    を含有するものである請求項4または5に記載のホウ素
    含有高剛性Al合金。
  7. 【請求項7】 Mn:0.3〜2%を含有し、残部が実
    質的にAlからなるものである請求項1または2に記載
    のホウ素含有高剛性A1合金。
  8. 【請求項8】 更に、Mg:1.8%以下(0%を含ま
    ない),Cu:0.6%以下(0%を含まない)Cr:
    0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下
    (0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まな
    い)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)より
    なる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求
    項7に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  9. 【請求項9】 更に、Fe:2%以下(0%を含まな
    い)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)
    を含有するものである請求項7または8に記載のホウ素
    含有高剛性Al合金。
  10. 【請求項10】 Si:2〜16%を含有し、残部が実
    質的にAlからなるものである請求項1または2に記載
    のホウ素含有高剛性A1合金。
  11. 【請求項11】 更に、Mg:11%以下(0%を含ま
    ない),Cu:5%以下(0%を含まない),Cr:
    0.4%以下(0%を含まない),Ni:0.6%(0
    %を含まない),Mn:0.6%以下(0%を含まな
    い),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:
    0.5%(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0
    %を含まない)およびFe:2%以下(0%を含まな
    い)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するもので
    ある請求項10に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  12. 【請求項12】 Mg:2〜8%を含有し、残部が実質
    的にAlからなるものである請求項1または2に記載の
    ホウ素含有高剛性A1合金。
  13. 【請求項13】 更に、Cu:0.6%以下(0%を含
    まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:
    0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下
    (0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まな
    い)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)より
    なる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求
    項12に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  14. 【請求項14】 更に、Fe:2%以下(0%を含まな
    い)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)
    を含有するものである請求項9または10に記載のホウ
    素含有高剛性Al合金。
  15. 【請求項15】 Mg:0.3〜1.5%およびSi:
    0.3〜1.5%を含有し、残部が実質的にAlからな
    るものである請求項1または2に記載のホウ素含有高剛
    性A1合金。
  16. 【請求項16】 更に、Cu:0.6%以下(0%を含
    まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:
    0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下
    (0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まな
    い),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびF
    e:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれ
    る1種以上を含有するものである請求項15に記載のホ
    ウ素含有高剛性Al合金。
  17. 【請求項17】 Mg:1〜4%およびZn:0.8〜
    8%を含有し、残部が実質的にAlからなるものである
    請求項1または2に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  18. 【請求項18】 更に、Cu:3%以下(0%を含まな
    い),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.
    4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0
    %を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含ま
    ない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するもの
    である請求項17に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  19. 【請求項19】 更に、Fe:2%以下(0%を含まな
    い)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)
    を含有するものである請求項17または18に記載のホ
    ウ素含有高剛性Al合金。
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