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JP2003052365A - 哺乳動物からの間葉系幹細胞の分離及びその利用方法 - Google Patents

哺乳動物からの間葉系幹細胞の分離及びその利用方法

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Publication number
JP2003052365A
JP2003052365A JP2001249653A JP2001249653A JP2003052365A JP 2003052365 A JP2003052365 A JP 2003052365A JP 2001249653 A JP2001249653 A JP 2001249653A JP 2001249653 A JP2001249653 A JP 2001249653A JP 2003052365 A JP2003052365 A JP 2003052365A
Authority
JP
Japan
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cells
mesenchymal stem
stem cells
tissue
culture
Prior art date
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Pending
Application number
JP2001249653A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukio Kato
幸夫 加藤
Shinichi Tsutsumi
真一 堤
Kazuko Miyazaki
和子 宮崎
Maiko Hara
真依子 原
Hiroyuki Kawaguchi
浩之 河口
Hidemi Kurihara
英見 栗原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
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Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Corp filed Critical Japan Science and Technology Corp
Priority to JP2001249653A priority Critical patent/JP2003052365A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 組織の再生医療等へ利用するための、組織の
再生及び/又は修復用哺乳動物細胞の調製のために、採
取母体に安全で、且つ採取が容易な間葉系幹細胞の分離
採取方法を提供すること及び採取した間葉系幹細胞を用
いて移植用細胞を調製する実用的な方法を提供するこ
と。 【解決手段】 口腔組織から間葉系幹細胞を分離採取す
る方法により、皮膚、筋肉の剥離切開が最小ですむ簡易
な手術で、間葉系幹細胞を取得することが可能であり、
採取母体に過酷な負担をかけずに、安全且つ容易に、優
れた分化能を維持した必要量の間葉系幹細胞を取得する
ことが可能であることを見い出した。更に、本発明にお
いては、分離採取した間葉系幹細胞を培養及び分化誘導
して、分化能の高い組織の再生及び/又は修復用の細胞
を調製し、該細胞を骨、軟骨、歯周組織等の組織の欠損
部及び/又は修復部に移植して、組織の再生及び/又は
修復をさせることよりなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、哺乳動物からの間
葉系幹細胞の分離採取方法、及び分離採取した間葉系幹
細胞の培養及び分化誘導による組織の再生及び/又は修
復用の細胞の調製、更には該細胞を用いて哺乳動物組織
を再生する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】間葉系幹細胞は、哺乳類の骨髄等に存在
し、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞に分化する多能性の幹
細胞として知られている。間葉系幹細胞は、その分化多
能性の故に、骨、軟骨、腱、筋肉、脂肪、歯周組織な
ど、多くの組織の再生医療のための移植材料として注目
されている(遺伝子医学、Vol.4、No.2(2000)p58-6
1)。最近、間葉系幹細胞研究の現状と展望についての
総説が発行され、間葉系幹細胞の採取や培養に関する報
告がなされている(実験医学、Vol.19、No.3(2月号)2
001、p350−356)。更に、最近、脂肪組織にも間葉系
幹細胞が存在することが報告された(Tissue Engineeri
ng, P.A. Zuk et al., Multilineage cells from human
adipose tissue : implications for cell-based ther
apies. 7 : 211-228, 2001)。
【0003】一方、近年、間葉系幹細胞の培養、分化等
に関しいくつかの特許出願が公開されている。例えば、
特表平11−506610公報には、無血清環境下でヒ
ト間葉前駆細胞の生存を維持する組成物及び方法につい
て、特表平10−512756号公報には、間葉系幹細
胞の分化を誘導するために、プロスタグランジン、アス
コルビン酸、コラーゲン細胞外基質等からなる骨誘導因
子、分化付随因子、軟骨誘導因子等の生物活性因子と接
触させることよりなる方法について、特開2000−2
17576号公報には、プロラクチン又はその同効物の
共存下で多能性間葉系幹細胞を培養し、間葉系幹細胞を
脂肪細胞へ分化させる方法について、それぞれ発明が開
示されている。
【0004】間葉系幹細胞を、組織の再生医療に利用す
るためには、まず、この幹細胞を生体組織から採取し、
それを増殖し、更にそれを分化増殖して、組織の調製を
行うことが必要となる。間葉系幹細胞は骨髄や骨膜等に
存在するが、組織再生医療への実用化のためには、これ
らの組織から間葉系幹細胞を採取する手間のかからぬ方
法を開発すること、且つ、間葉系幹細胞の十分な量を取
得する方法を開発すること、更に、採取母体の安全性、
苦痛などについて問題のない方法を開発することが重要
な課題となる。従来、骨、軟骨などの再生医療に用いら
れる移植用間葉系幹細胞は、骨盤(腸骨)や手足の長管
骨(大腿骨、脛骨)の骨髄及び/又は骨膜から分離され
ている。しかしこれらの組織から細胞/組織を分離する
には大規模な手術が必要であるため、採取母体(患者
等)に大きな傷害を与える。更には、間葉系幹細胞を骨
髄から採取する手間、十分な量の間葉系幹細胞を得るこ
と、及び幹細胞採取に際しての安全性などについて問題
点があり、これらが間葉系幹細胞を組織再生医療へ利用
する際の実用化の壁になっている。したがって、間葉系
幹細胞の再生医療等への利用のために、その幹細胞の安
全且つ容易な分離採取方法を開発すること及び採取した
細胞を用いて移植用細胞を調製するための実用的な方法
を開発することが要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、組織
の再生医療等へ利用する組織の再生及び/又は修復用哺
乳動物細胞の調製のために、採取母体に安全で、且つ採
取が容易な間葉系幹細胞の分離採取方法を提供すること
及び採取した間葉系幹細胞を用いて移植用細胞を調製す
る実用的な方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究した結果、口腔組織から間葉系幹
細胞を分離採取する方法により、皮膚、筋肉の剥離切開
が最小ですむ簡易な手術で、間葉系幹細胞を取得するこ
とが可能であり、したがって、採取母体に過酷な負担を
かけずに、安全且つ容易に、優れた分化能を維持した必
要量の間葉系幹細胞を取得することが可能であることを
見い出し、本発明をなした。更に、本発明においては、
分離採取した間葉系幹細胞を培養及び分化誘導して、分
化能の高い組織の再生及び/又は修復用の細胞を調製
し、該細胞を骨、軟骨、歯周組織等の組織の欠損部及び
/又は修復部に移植して、組織の再生及び/又は修復を
させることよりなるものである。
【0007】すなわち本発明は、哺乳動物の口腔組織か
ら間葉系幹細胞を分離採取することを特徴とする哺乳動
物間葉系幹細胞の分離採取方法(請求項1)や、口腔組
織が、歯槽骨の骨髄、口蓋又は歯槽骨の骨膜であること
を特徴とする請求項1記載の哺乳動物間葉系幹細胞の分
離採取方法(請求項2)や、口腔組織から採取した細胞
を、組織培養用培地とともに培養容器に播種して、培養
し、培養容器に接着した細胞を分離採取することを特徴
とする哺乳動物間葉系幹細胞の分離採取方法(請求項
3)や、請求項1〜3のいずれか記載の方法により分離
採取した哺乳動物間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞培養培
地に播種して、初代培養及び継代培養を行うことを特徴
とする哺乳動物間葉系幹細胞の培養方法(請求項4)
や、請求項4記載の培養方法により培養した間葉系幹細
胞を、間葉系幹細胞分化誘導培地に播種して、分化誘導
培養を行うことを特徴とする哺乳動物間葉系幹細胞の分
化誘導培養方法(請求項5)や、間葉系幹細胞の培養
を、繊維芽細胞増殖因子(FGF)を添加した培地で行
うことを特徴とする請求項4又は5記載の哺乳動物間葉
系幹細胞の培養方法(請求項6)からなるものである。
【0008】また本発明は、請求項5記載の分化誘導培
養方法により調製された組織の再生及び/又は修復用の
哺乳動物細胞(請求項7)や、細胞が、ヒト口腔組織由
来である請求項7記載の組織の再生及び/又は修復用の
哺乳動物細胞(請求項8)や、請求項7又は8記載の組
織再生及び/又は修復用の哺乳動物細胞を、必要により
単体と共に、組織の欠損部及び/又は修復部に移植する
ことを特徴とする哺乳動物組織の再生方法(請求項9)
からなるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、哺乳動物の口腔組織か
ら間葉系幹細胞を分離採取することからなる。本発明に
おける、間葉系幹細胞は口腔組織由来であり、骨芽細
胞、軟骨細胞、脂肪細胞、歯根膜、セメント質などの細
胞へと分化しうる又はそれらの修復を促進しうる細胞で
ある。本発明において、間葉系幹細胞の分離採取源とな
る口腔組織としては、歯槽骨等の骨髄、口蓋又は歯槽骨
の骨膜などが挙げられる。また、本発明において、組織
からの幹細胞の採取は、皮膚、筋肉の剥離切開が最小で
すむ簡易な手術で行うことができ、その器具も通常この
ような簡易な手術に用いられる器具を使用することが出
来る。採取した細胞は、組織培養用の培養皿のような培
養容器で培養して、培養容器に接着した幹細胞を分離採
取する。
【0010】本発明においては、分離採取した間葉系幹
細胞を初代培養、継代培養、更には分化誘導培養を行っ
て、組織の再生及び/又は修復用の細胞を調製する。細
胞の培養に用いる培地としては、細胞培養用の適宜の培
地が使用できるが、ウシ胎児血清(FBS)を含有した
細胞培養用のDMEM培地が好適に使用できる。細胞の
組織細胞への分化誘導は、それぞれの目的に応じて、適
宜の分化誘導培地が使用できる。培地に、繊維芽細胞増
殖因子(FGF)を添加することにより、培養効果を著
しく高めることができる。調製した組織の再生及び/又
は修復用の細胞は、コラーゲンのような担体と混ぜ合わ
せて組織の欠損部及び/又は修復部に移植する。本発明
の幹細胞採取源から採取、調製した組織の再生及び/又
は修復用の細胞は、高レベルの分化可能を有し、組織の
再生、修復用の細胞として、著明な再生能力を有する。
以下に、本発明の実施の形態について更に詳述する。
【0011】(口腔骨髄由来間葉系幹細胞の分離採取方
法)ヒト又は実験動物の上顎若しくは下顎の歯根の無い
部位で、かつ神経血管を避けた部位の粘膜を数ミリ四方
程度剥離して、1ミリ直径程度細い歯科用ドリルで歯槽
骨から骨髄液が滲み出るまで穴をあける。そして注射針
(21ゲージ)を歯根や上顎洞などに突き抜けないよう
に注意深く入れて、骨髄液を0.5ml〜1ml程度採
取する。適当な培地(例えば10%FBS含有DMEM
培地)とともに10cm直径組織培養用培養皿に播種し
て(約2×108個)、3日後に培養皿に接着した細胞
のみを培養する。また、浮遊細胞は洗浄して除いてお
く。接着細胞は増殖前の0.5mlの骨髄液から103
〜104個得られる。
【0012】(口腔骨膜由来間葉系幹細胞の分離採取方
法)ヒト又は実験動物の口蓋若しくは上顎若しくは下顎
の歯槽粘膜を剥離して、歯槽骨上の骨膜を露出させて5
×5mm程度を採取する。採取した骨膜を細かく切り刻
んだ後、37℃にてコラーゲナーゼとともにインキュベ
ートする。ついで、例えばピペッティング等により細胞
を分散させ、ろ過又は遠心分離によって細胞を収集す
る。得られた細胞を計測し(約104〜105個得られ
る)、適当な培地(例えば10%FBS含有DMEM培
地)とともに組織培養用培養皿に播種する。
【0013】(口腔組織由来間葉系幹細胞の初代培養方
法)上述のようにして得られた口腔骨髄又は口腔骨膜由
来幹細胞は、該細胞の培養に適する任意の培地に、bF
GFを0.01〜100ng/ml、好ましくは0.0
4〜10ng/ml、さらに好ましくは0.1〜1ng
/ml、例えば1ng/mlになるように添加して効果
的に培養することができる。bFGF以外のFGFも有
効である。なおFGFを入れない任意の培養方法でも口
腔組織由来間葉系幹細胞培養を実施することができる。
培養は、哺乳動物の培養に適する任意の条件で実施する
ことができるが、一般的には37℃で5%炭酸ガス存在
下で行うのが好ましく、例えば下記のように培養するこ
とができる。上述のように採取分離した細胞を、適当な
培地(例えば10%FBS含有DMEM培地)に10c
m直径の組織培養用培養皿に播種する(骨髄の場合、約
2×108個;骨膜の場合、約104〜105個)。3日
目で培地を換え(非接着細胞を除く)、以後3日に1回
培地を交換する。なお、bFGFは5日目から1ng/
mlで培地に添加する。
【0014】(口腔組織由来間葉系幹細胞の継代培養方
法)幹細胞の継代培養は、当該細胞培養の分野において
公知の適する方法で行うことができる。例えば集密的
(confluent)に近くなった初代培養のプレー
トからトリプシン−EDTA溶液を用いて細胞を収集
し、bFGFを含有する適当な培地に該細胞を播種し
て、初代培養と同様の条件下で培養する。そして細胞が
増殖して再び集密的になる前に下記の方法で継代し、こ
れを数回から十数回繰り返す。上記の幹細胞の初代培養
が10日前後で集密的に近くなる。このプレートをトリ
プシン(例えば0.05%)+EDTA(例えば0.2
mM)で処理して細胞をプレートから回収し、得られた
細胞数を計測する。培養した幹細胞を、5×103個/
cm2の密度で(4×105細胞/10cm直径培養
皿)、10%血清とbFGF(1ng/ml)を含有す
る培地に播種して培養し、細胞が集約的になる前に継代
する。さらに上記の操作を繰り返して継代培養を実施す
る。なお、分離した骨膜に他の軟組織が混入した場合、
上記の幹細胞の初代培養系から幹細胞コロニー(中央で
石灰化が開始するなど、混入した線維芽細胞のコロニー
とは形態的に区別できる)のみをトリプシンで分離す
る。この場合より低密度で細部を播種して細胞コロニー
が融合する前にトリプシンでコロニーを分離する方が容
易に幹細胞を分離できる。
【0015】(口腔組織由来間葉系幹細胞の分化誘導培
養方法)培養した幹細胞から、例えば骨芽細胞を得るた
めには、当該細胞をトリプシン処理、次いで遠心分離な
どにより単離した後、骨分化誘導に適する培地(例え
ば、文献:Science 284, 143-147, 1999記載の培地)を
用いて骨芽細胞への分化を誘導することができる。骨芽
細胞への分化誘導の場合について具体例を挙げると、骨
芽細胞への分化誘導を行うため、4〜6代目の骨髄由来
間葉系幹細胞を収集し、下記の組成の骨分化誘導培地に
移す。 骨分化誘導培地 αMEM 10% FBS 100nM デキサメサゾン 10mM β−グリセロールリン酸 50μg/ml アスコルビン酸−2−リン酸 間葉系細胞を、上記骨分化誘導培地中において37℃、
5%炭酸ガス存在下にて培養し、さらに2日おきに培地
を交換し、4〜28日培養する。培養した細胞は、骨芽
細胞に特徴的な高レベルのアルカリホスファターゼ活性
を示し、沈着カルシウムレベル、石灰化を示すアリザリ
ン赤による染色性を示す。さらに骨芽細胞に特異的なオ
ステオカルシンmRNAの発現を示す。
【0016】
【実施例】以下に、実施例を揚げてこの発明を更に具体
的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定
されるものではない。 実施例1 (ビーグル犬の口腔組織(歯槽骨)からの骨髄液の採
取)麻酔下にて全顎のスケーリングを行った後、局所麻
酔をし、下顎大臼歯部頬側歯肉又は下顎前歯部唇側歯肉
を全層弁で剥離した。さらに、歯槽骨を露出させた後、
歯科用ラウンドバーで直径約1mmの穴を歯槽骨にあ
け、骨髄液を浸出させ注射針で採取した(約0.5m
l)。これを10mlのDMEM培地(32単位/ml
ペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、及び
6000単位/mlへパリンを含有)に希釈して、30
0×g、5分間遠心分離して細胞を分離し、前記骨髄か
ら約109個の細胞を得た。
【0017】(骨髄由来間葉系幹細胞の培養)骨髄から
採取した幹細胞を10%FBS含有DMEM培地で希釈
した後、約2×108細胞個となるように10cm直径
培養皿へ播種し、37℃にて5%炭酸ガス存在下で培養
した。そして、3日目で培地を交換し、以後3日に1回
培地を交換した。なお、bFGFは5日目から1ng/
mlで培地に添加した。間葉系幹細胞は10日前後でほ
ぼ集密的となるまで増殖した。これらの培養皿をトリプ
シン(0.05%)+EDTA(0.2mM)を加え5
分間インキュベートして、細胞を単離した。さらに細胞
数をCoulterカウンター(Z1シングル、コール
ター社製)で計測し、5,000細胞個/cm2の密度で
細胞を播種した。この操作を繰り返して、集密的になっ
た三代目の継代培養皿から得た細胞を移植細胞として用
いた。
【0018】(歯槽骨欠損モデルの作製)予め、除石と
ブラッシングで実験動物の健康な歯周組織を確立させて
おき、全麻酔下にて左右下顎第一小臼歯から第一大臼歯
まで、歯肉溝切開を入れ、頬側歯肉を全層弁で剥離し
た。さらに左右下顎第二、第三、第四小臼歯近心根及び
第一大臼歯近心根に3×5mmの裂開状の骨欠損を作製
し、歯根面のルートプレーニングを施し、移植受容床を
作製した。
【0019】(ビーグル犬歯槽骨欠損部への自家口腔骨
髄由来間葉系細胞の移植)上記方法により、予め採取
し、分離・培養した自家口腔骨髄由来間葉系細胞を、上
記実験的歯槽骨欠損部に移植した。自家口腔骨髄由来間
葉系細胞は、移植直前に担体と混ぜ合わせて移植する
(50万細胞個/欠損部)。なお、担体として、コラー
ゲン(アテロコラーゲン、高研社製、最終濃度2%、5
0万細胞個/10μlのDMEMに溶解)を使用した。
手術1ヶ月後、組織学的に評価すると、図1(参考写真
1参照)に示すように、無処置群又はコラーゲン担体の
みの群では歯槽骨およびセメント質の再生は観察されな
かった。しかしコラーゲンとともに自家細胞を移植した
群では、著明な歯槽骨及びセメント質の再生が観察され
た。
【0020】実施例2 (ヒト口腔骨髄由来間葉系細胞の分離)外科手術(下顎
骨切り術)の時に、しみ出してくる骨髄液を(患者の同
意のもとで)0.5ml採取した。これを10mlのD
MEM培地(32単位/mlペニシリン、50μg/m
lストレプトマイシン、及び6000単位/mlヘパリ
ンを含有)に希釈して、300×g、5分間遠心分離し
て、細胞を分離した。前記骨髄から約109個の細胞を
得た。骨髄から採取した幹細胞を10%FBS含有DM
EM培地で希釈した後、約2×108細胞個となるよう
に10cm直径培養皿へ播種し、37℃にて5%炭酸ガ
ス存在下で培養した。3日目で培地を交換し、以後3日
に1回培地を交換した。なお、bFGFは5日目から1
ng×mlで培地に添加した。10日前後でほぼ集密的
にまで増殖した。これらの培養皿をトリプシン(0.0
5%)+EDTA(0.2mM)で5分間インキュベー
トして、細胞を単離した。細胞数をCoulterカウ
ンター(Z1シングル、コールター社製)で計測し、そ
して5000細胞個/cm2の密度で細胞を播種した。
この操作を繰り返して、4代目又は6代目の継代培養皿
から得た細胞を骨芽細胞への分化誘導に用いた。
【0021】(骨芽細胞への分化誘導)骨芽細胞への分
化誘導は4代目又は6代目のヒト口腔骨髄由来間葉系幹
細胞(ABMC)を収集し、下記の組成の骨分化誘導培
地に移した。 骨分化誘導培地 αMEM 10% FBS 100nM デキサメサゾン 10mM β−グリセロールリン酸 50μg/ml アスコルビン酸−2−リン酸 ヒト口腔骨髄由来間葉系細胞を、上記培地中において3
7℃、5%炭酸ガス存在下にて培養した。なお、2日お
きに培地を交換し、4〜20日培養した(図2;参考写
真2参照)。本細胞は、骨芽細胞に特徴的な高レベルの
アルカリホスファターゼ活性を示し(図2;参考写真2
参照)、沈着カルシウムレベル(図2;参考写真2参
照)、石灰化を示すアリザリン赤による染色性を示した
(図2;参考写真2参照)。さらに骨芽細胞に特異的な
オステオカルシンmRNAの発現を示した(図2;参考
写真2参照)。
【0022】実施例3 (ヒト口腔骨膜由来間葉系幹細胞の分離)外科手術時に
(患者の同意のもとで)、上顎小臼歯部口蓋歯肉に局所
麻酔を行い、口蓋歯肉を部分層弁で剥離し、直下の骨膜
結合組織(5×5mm)を採取した。採取した骨膜を1
mm以下に切り刻んだ後、37℃にて1時間無血清のD
MEMに溶解したコラゲナーゼ(2.5mg/ml、和
光純薬社製、細胞分散用)とともにインキュベートし
た。ついで、ピペッティングにより細胞を分散させ、遠
心分離によって細胞を収集した。得られた細胞を計測し
(約104〜105個得られる)、10%FBS含有DM
EM培地とともに組織培養用培養皿に播種した。
【0023】口腔骨膜由来間葉系幹細胞を10%FBS
含有DMEM培地で希釈した後、約2×104細胞個に
なるように10cm直径培養皿へ播種し、37℃にて5
%炭酸ガス存在下で培養した。3日目で培地を交換し、
以後3日に1回培地を交換した。なお、bFGFは5日
目から1ng/mlで2日毎に培地に添加した。口腔骨
膜由来間葉系幹細胞は10日前後でほぼ集密的にまで増
殖した。これらの培養皿をトリプシン(0.05%)+
EDTA(0.2mM)を加えて5分間インキュベート
して、細胞を単離した。細胞数をCoulterカウン
ター(Z1シングル、コールター社製)で計測し、そし
て5,000細胞個/cm2の密度で細胞を播種した。こ
の操作を繰り返して、4代目の継代培養皿から得た細胞
を骨芽細胞への分化誘導に用いた。
【0024】(口腔骨髄由来間葉系細胞の骨芽細胞への
分化誘導)4代目のヒト口腔骨髄由来間葉系細胞を収集
し、下記の組成の骨分化誘導培地に移した。 骨分化誘導培地 10%FBS含有αMEM 100nM デキサメサゾン 10mM β−グリセロールリン酸 50μg/ml アスコルビン酸−2−リン酸
【0025】ヒト口腔骨髄由来間葉系幹細胞を、上記培
地中において37℃、5%炭酸ガス存在下にて培養し
た。なお2日おきに培地を交換し、28日培養した(図
2;参考写真2参照)。口腔骨膜由来幹細胞(OPC)
は、骨髄由来幹細胞(ABMC)よりは低いものの、骨
芽細胞に特徴的な高レベルのアルカリホスファターゼ活
性を示し(図2;参考写真2参照)、沈着カルシウムレ
ベル(図2;参考写真2参照)、石灰化を示すアリザリ
ン赤による染色性を示した(図2;参考写真2参照)。
さらに活性型ビタミンD存在下で、骨芽細胞に特異的な
オステオカルシンmRNAの発現を示した(図2;参考
写真2参照)。なおFGF添加により、増殖が亢進した
にも関わらず、高レベルの石灰化能を示した(図2;参
考写真2参照)。
【0026】実施例4 軟骨細胞への分化誘導 (軟骨細胞への分化誘導培養)軟骨細胞への分化誘導を
行うため、EMCシャーレ上で10%FBSのみ、2F
BS+bFGF+ITS、若しくは5%FBS+bFG
F+ITSで、又は通常のプラスチックシャーレ上で1
0%FBSのみで4代目まで継代培養し、かかる4代目
の骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(基底膜細胞外基質(EC
M)シャーレ或いは通常プラスチックシャーレ上で増殖
したもの)を収集し、下記の組成の軟骨分化誘導培地に
移した。なお、遠心管(15ml用)の内に、20万個
の細胞を入れ、0.5−1mlの以下の培地でインキュ
ベートした。 高グルコースαMEM培地 10ng/ml TGF−β1 100nM デキサメサゾン 50μg/ml アスコルビン酸−2−リン酸 100μg/ml ピルビン酸ナトリウム ITS−プラス 6.25μg/ml トランスフェリ
ン 6.25μg/ml インスリン 6.25ng/ml セレン酸 5.33μg/ml リノール酸 1.25mg/ml ウシ血漿アルブミン ヒト間葉系幹細胞を、上記培地中において37℃、5%
CO2存在化にて培養した。培養開始後24時間後に
は、細胞は球状のペレットを形成した。2日おきに培地
を交換し、28日間培養した。
【0027】(軟骨細胞への分化)培養後のペレットの
プレパラートを調整し、トルイジンブルー染色を行っ
た。その結果、通常のプラスチックシャーレ上で増殖さ
せた細胞(10%FBS添加)では、50%の細胞しか
トルイジンブルー染色性のマトリックスをつくる軟骨細
胞に分化しなかった(プラスチック、10%P4)。E
CMシャーレ(10%FBS添加)上からの細胞は、8
0%軟骨に分化したが、トルイジンブルーの染色性は低
かった(軟骨マトリックス産生が低い)。一方、2又は
5%FBS、bFGF及びITSで増殖させた幹細胞
は、軟骨誘培地に切りかえることで、80−90%軟骨
となり、軟骨マトリックス産生レベルも10%FBSよ
りも高かった(図3;参考写真3参照)。
【0028】実施例5 脂肪細胞への分化誘導 (脂肪細胞への分化誘導培養)実施例4と同様に、下記
培地で培養した4代目の各種の間葉系幹細胞を収集し
た。 プラスチック培養皿 10%FBS+bFGF(対照
群) ECMコート培養皿 10%FBSのみ ECMコート培養皿 2%FBS+bFGF+ITS ECMコート培養皿 5%FBS+bFGF+ITS 収集した間葉系幹細胞を、直径9mmの皿に、4×10
4 個まき、10%FBS含有DMEM培地で3日間培養
した後、下記の組成の脂肪分化誘導培地に移した。 (脂肪分化誘導培地) DMEM(高グルコース) 10μg/ml インスリン 0.2mM インドメサシン 1μM デキサメサゾン 0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン 10% FBS
【0029】(脂肪細胞への分化)培養25日後、脂肪
をオイルレッド−Oにて染色した(図4;参考写真4参
照)。上記の方法で培養した間葉系幹細胞は、いずれも
高い脂肪分化能力を保持していた。
【0030】
【発明の効果】本発明の、口腔組織から間葉系幹細胞を
分離採取する方法により、皮膚、筋肉の剥離切開が最小
ですむ簡易な手術で、間葉系幹細胞を取得することが可
能であり、したがって、採取母体に過酷な負担をかけず
に、安全且つ容易に、優れた分化能を維持した必要量の
間葉系幹細胞を取得することが可能である。更に、本発
明によれば、分離採取した間葉系幹細胞を培養及び分化
誘導して、分化能の高い組織の再生及び/又は修復用の
細胞を調製することが出来、該細胞を骨、軟骨、歯周組
織等の組織の欠損部及び/又は修復部に移植して、組織
の再生及び/又は修復を図ることが可能となる。したが
って、本発明は、間葉系幹細胞を用いる再生医療におけ
る実用的な方法を提供をするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビーグル犬歯槽骨欠損部への移植後1ヶ月の組
織像を示す図である。無処置(A)、コラーゲン担体の
み(B)の移植に比べ、幹細胞+コラーゲン担体(C)
の移植は、著名な骨再生、セメント質再生が認められ
る。なお、下図はそれぞれの欠損部の拡大像を示す。
【図2】ヒト口腔骨膜細胞及びヒト歯槽骨骨髄間葉系細
胞の増殖能と骨分化能の結果を示す図である。
【図3】ECMシャーレで低濃度血清とITSにより増
殖したヒト間葉系幹細胞の軟骨分化能力の亢進の結果を
示す図である。
【図4】ECMシャーレ上で低濃度血清とITSにより
増殖したヒト間葉系幹細胞の脂肪分化能の結果を示す図
である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年9月6日(2001.9.6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】(口腔組織由来間葉系幹細胞の継代培養方
法)幹細胞の継代培養は、当該細胞培養の分野において
公知の適する方法で行うことができる。例えば集密的
(confluent)に近くなった初代培養のプレー
トからトリプシン−EDTA溶液を用いて細胞を収集
し、bFGFを含有する適当な培地に該細胞を播種し
て、初代培養と同様の条件下で培養する。そして細胞が
増殖して再び集密的になる前に下記の方法で継代し、こ
れを数回から十数回繰り返す。上記の幹細胞の初代培養
が10日前後で集密的に近くなる。このプレートをトリ
プシン(例えば0.05%)+EDTA(例えば0.2
mM)で処理して細胞をプレートから回収し、得られた
細胞数を計測する。培養した幹細胞を、5×103個/
cm2の密度で(4×105細胞/10cm直径培養
皿)、10%血清とbFGF(1ng/ml)を含有す
る培地に播種して培養し、細胞が集約的になる前に継代
する。さらに上記の操作を繰り返して継代培養を実施す
る。なお、分離した骨膜に他の軟組織が混入した場合、
上記の幹細胞の初代培養系から幹細胞コロニー(中央で
石灰化が開始するなど、混入した線維芽細胞のコロニー
とは形態的に区別できる)のみをトリプシンで分離す
る。この場合低密度で細胞を播種して細胞コロニーが融
合する前にトリプシンでコロニーを分離する方が容易に
幹細胞を分離できる。
フロントページの続き (72)発明者 堤 真一 広島県広島市南区東雲本町1−16−5− 601 (72)発明者 宮崎 和子 広島県広島市南区翠3−11−30−301 (72)発明者 原 真依子 広島県広島市南区皆実町4−1−15,2F (72)発明者 河口 浩之 広島県広島市南区出汐1丁目17−9 (72)発明者 栗原 英見 広島県広島市西区己斐東2丁目27−31 Fターム(参考) 4B065 AA93X BA30 BB25 BB40 BD15 CA44 4C081 AB02 AB04 AB06 AB11 AB18 BA12 CD29 CD34 EA01 EA11

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 哺乳動物の口腔組織から間葉系幹細胞を
    分離採取することを特徴とする哺乳動物間葉系幹細胞の
    分離採取方法。
  2. 【請求項2】 口腔組織が、歯槽骨の骨髄、口蓋又は歯
    槽骨の骨膜であることを特徴とする請求項1記載の哺乳
    動物間葉系幹細胞の分離採取方法。
  3. 【請求項3】 口腔組織から採取した細胞を、組織培養
    用培地とともに培養容器に播種して、培養し、培養容器
    に接着した細胞を分離採取することを特徴とする哺乳動
    物間葉系幹細胞の分離採取方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか記載の方法によ
    り分離採取した哺乳動物間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞
    培養培地に播種して、初代培養及び継代培養を行うこと
    を特徴とする哺乳動物間葉系幹細胞の培養方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の培養方法により培養した
    間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞分化誘導培地に播種し
    て、分化誘導培養を行うことを特徴とする哺乳動物間葉
    系幹細胞の分化誘導培養方法。
  6. 【請求項6】 間葉系幹細胞の培養を、繊維芽細胞増殖
    因子(FGF)を添加した培地で行うことを特徴とする
    請求項4又は5記載の哺乳動物間葉系幹細胞の培養方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項5記載の分化誘導培養方法により
    調製された組織の再生及び/又は修復用の哺乳動物細
    胞。
  8. 【請求項8】 細胞が、ヒト口腔組織由来である請求項
    7記載の組織の再生及び/又は修復用の哺乳動物細胞。
  9. 【請求項9】 請求項7又は8記載の組織再生及び/又
    は修復用の哺乳動物細胞を、必要により単体と共に、組
    織の欠損部及び/又は修復部に移植することを特徴とす
    る哺乳動物組織の再生方法。
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