JP2002203728A - 低騒音トランス用電磁鋼板および低騒音トランス - Google Patents
低騒音トランス用電磁鋼板および低騒音トランスInfo
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Abstract
くすることで効果的に騒音を低減できる低騒音トランス
用の電磁鋼板鉄心を提供する。 【解決手段】 鋼板の積層間に粘性と弾性を併せ持つ粘
弾性層をランダムに挿入したことを特徴とする低騒音ト
ランス用電磁鋼板および該電磁鋼板を用いて形成した低
騒音トランス。
Description
に用いられ、振動発生が少ない低騒音トランス用電磁鋼
板および低騒音トランスに関するものである。
材料において、磁界印加時の長さ変化の度合い(これを
磁気ひずみと呼ぶ)は変圧器騒音の原因となるため、品
質管理における重要な評価項目の一つとなっている。近
年、電気機器からの騒音は、生活環境快適化の要求と共
にさらに規制が厳しくなりつつある。このため、磁気ひ
ずみの低減による低騒音化の研究が盛んに行われてい
る。
れる一方向性電磁鋼板については、還流磁区を減少させ
ることで磁気ひずみを低減する手法がある。ここで言う
還流磁区とは、磁界印加方向に対して直角に向いている
磁化を有する領域である。この磁化が印加磁界により磁
界と平行方向に向けて動くときに磁気ひずみが生じる。
従って、還流磁区量が少ないほど磁気ひずみは小さくな
る。主な磁気ひずみ低減の手法として、以下のものが知
られている。
え、磁化回転により形状変化を生じさせる還流磁区を作
らない方法(T.Nozawa et al, “Relationship Between
Total Losses under Tensile Stress in 3 Percent Si
-Fe Single Crystals and Their Orientations near (1
10)[001], ”IEEE Trans. on Mag., Vol. MAG-14, No.
4,1978.)、 塑性歪を開放することで還流磁区を消去する方法(特
開平7−305115号公報、[画記的な方向性珪素鋼
板オリエントコア・ハイビーの開発]:OHM1972.
2)、 被膜張力を鋼板に印加することで還流磁区を消去する
方法(T.Nozawa et al,“Relationship between Total L
osses under Tensile Stress in 3 Percent Si-Fe Sing
le Crystals and Their Orientations near (110)[00
1], ”IEEE Trans. on Mag., Vol. MAG-14, No.4,197
8.) 。
生する振動を抑える方式で騒音の低減が図れる。発生す
る振動を抑える方式で騒音を低減する方法として、例え
ば、振動の伝播を切るためエア空間やシリコンゴムを設
ける方法(特開平5−251246号公報)、制振材と
吸音材を鉄心脚の外部に配置して騒音を低減する方法
(特開平8−45751、特開2000−82622、
特開2000−124044号公報)、リアクトルのギ
ャップ部を振動が抑えられる接着材で固定する方法(特
開平8−111322号公報)、樹脂中間層をもつ電磁
鋼板を用いる方法(特開平8−250339号公報)が
ある。主にこれらの手法により、磁気ひずみ、あるいは
振動を低減し電気機器の低騒音化が図られてきた。
騒音化への要求は強く、目的を達するためには高度な技
術が必要となる。従来の低騒音化の研究は還流磁区の消
滅による磁気ひずみの低減を主な目的としてきた。とこ
ろが、時間的に変化する磁界を加えると、トランスの鉄
心として組んだ場合、鋼板の伸縮は鋼板が必ずしも平坦
ではないため鋼板面に垂直な振動に変化する。この振動
によって空気の疎密波が生じ音となって広がる。今まで
この振動を低減するため鋼板の磁気ひずみを小さくする
ように上述した結晶方位の先鋭化、塑性歪の開放、張力
の印加等、従来技術として確立されている。ほかに外部
に振動を伝播させない防振構造を設ける対策がある。し
かしながら、さらなる低騒音化への要求に対処するため
には、空気粒子の振動原因となる鋼板面振動を抑えるこ
とが課題となる。
電磁鋼板で構成した鉄心が既に提案されているが、積層
鋼板間の2層おきに樹脂中間層が入るため占積率が低
く、鉄心断面積を大きくする必要性がある。本発明の課
題は、鋼板面に垂直な振動を抑える条件を見出し、低騒
音化を効果的に実現する、振動発生が少ない低騒音トラ
ンス用電磁鋼板および低騒音トランスを提供することに
ある。
ろは以下の通りである。 (1)鋼板面の少なくとも片面に厚さが30μm以上の
粘弾性体層を有することを特徴とする低騒音トランス用
電磁鋼板。 (2)損失係数が20〜200℃の範囲のいずれかの温
度において1つ以上のピークを持つ粘弾性体層を有する
前記(1)記載の低騒音トランス用電磁鋼板。 (3)前記(1)または(2)記載の低騒音トランス用
電磁鋼板を用いて形成された低騒音トランス。 (4)電磁鋼板をn枚積層して構成されたトランス鉄心
において、n−1個の積層間のうち、下記の式を満足す
るm個の積層間に厚さが30μm以上の粘弾性体層を具
備したことを特徴とする低騒音トランス。 (5)前記(1)または(2)記載の低騒音トランス用
電磁鋼板を用いた鉄心において粘弾性体層をランダムに
挿入することを特徴とする低騒音トランス。
な方法は磁気ひずみを小さくし、面振動を低減させてい
た。また、外部に振動を伝播させない防振構造をとって
いた。しかしながら本発明者らは、トランスの鉄心にお
いて鋼板の積層間に粘性と弾性を併せ持つ粘弾性体層を
挿入する方法において、鋼板の面振動を小さくし、騒音
を低減することを効果的に実現するため鋭意研究を行っ
た。以下、実験にもとづき説明する。
造り(図1)、騒音を測定した(図2)。2枚の電磁鋼
板の間に厚さ20μmの粘弾性体層を挟んだ複層電磁鋼
板を用いた鉄心(全粘弾性層厚0.42mm)と4層に1
層の割合で規則的に同じ積層順にならないように30μ
m厚の粘弾性体層を変則的に入れた鉄心(全粘弾性層厚
0.30mm)を用いて騒音を比較した。本実験の結果、
全粘弾性層厚が薄いにもかかわらず、4層に1層の割合
で変則的に粘弾性体層を挿入した鉄心において騒音は低
かった。
発明者らは粘弾性体層の厚さが振動吸収に効果があり、
薄い粘弾性体層を鉄心内に多く分散した場合より有効に
なるものと考えている。また、鉄心の共振周波数は材質
が同じであれば重量から決まるが、等しい層間隔で粘弾
性体層を入れると、等しい重量の鋼板ブロックに分割さ
れるため、各ブロックで共振周波数が一致し振動が共振
により増幅する。一方、粘弾性体層の層間隔を変則的
(ランダム)にした場合では共振周波数が分散するので
特定の周波数で大きな振動が発生し難くなったと考えて
いる。
従来法である粘弾性体層を多く内部に分散した鉄心で
は、層厚が20μmにもかかわらず、粘弾性体の層数が
多くなるため本発明の積層鉄心より占積率は低い。本発
明では、粘弾性体層が厚いので振動の吸収が大きく、騒
音の低減だけでなく、占積率も高く出来る。
しての磁気ひずみのみを小さくするだけでは騒音低減は
不完全で、さらに面振動を抑えることも重要であると考
えた。面振動を抑制する条件は鋼板間に粘弾性体をラン
ダムに挿入することで満足され、このような電磁鋼板を
提供することで、効果的にトランス等の電気機器騒音を
低減できることを見出し、本発明に至ったのである。
る。粘弾性体の厚さは厚い程効果が大きい。特公平7−
85457号公報に記載されている方法では、6.5%
Siの積層鉄心に含浸剤を入れることで振動を抑制す
る。積層鋼板の表面粗度Rmaxが3.5μm以上と規
定されているが、コアをかしめた後に真空含浸するた
め、含浸剤の厚さは高々10μm程度と考えられる。本
発明では振動抑制効果を大きくするため、少なくとも3
0μm以上、好ましくは40〜60μmの厚さの粘弾性
体を用いている。
00℃の温度域にあるため粘弾性体の損失係数のピーク
がこの温度範囲にあることが好ましい。この範囲のどの
温度で損失係数をピークにするかは、その応用環境によ
って決定すればよい。尚、ポリイソブチレンは損失係数
のピークが0℃にあり、ポリエステルは100℃、ニト
リルゴムは20℃にあることが既に知られている。
合で粘弾性体層を入れると占積率が著しく低下するため
(n−1)/mを3以上にした。しかしながら、30層
に1層の割合で粘弾性体を挿入すると振動の吸収が弱い
ので、(n−1)/mを30以下にした。粘弾性体層を
鋼板に等しい層間隔で入れず、変則的(ランダム)な積
み方にする理由は、共振周波数を分散させ、共振による
振動の増幅を避けるためである。
23mmの一方向性電磁鋼板を用い、何も挿入しないも
の:A、ポリエステル系樹脂を10層に1層の割合で等
しい層間隔にならないように挿入したもの:B、オレフ
ィン系フィルム樹脂を10層に1層の割合で等しい層間
隔にならないよう挿入したもの:C、ポリイソブチレン
樹脂を全層に挿入したもの:Dをそれぞれ積層鉄心と
し、それぞれ500kVAの3相トランスに組み立て、
50Hz1.6Tで励磁した場合の騒音を測定した。尚、
樹脂層の厚さはDが20μm、他は50μmとし、トラ
ンス積層厚は50mmとした。その結果を表1に示す。本
発明の条件を満たす鉄心から製作したトランス鉄心B、
Cでは、騒音を低くすることができた。
0.27mmの一方向性電磁鋼板を用い、何も挿入しない
もの:E、オレフィン系フィルム樹脂を10層毎に1層
挿入したもの:F、20層毎に1層挿入したもの:G、
30層毎に1層挿入したもの:H、40層毎に1層挿入
したもの:Iをそれぞれ積層鉄心とし、500kVAの
3相トランスに組み立て、50Hz1.4Tで励磁した場
合の騒音を測定した。樹脂層の厚さは50μmとし、ト
ランス積層厚は50mmに積んだ。その結果を表2に示
す。20層毎に1層挿入したものが最小の騒音を示し
た。上記のように、本発明の条件を満たす材料から製作
したトランス鉄心F、G、Hでは、騒音を低くすること
ができた。
0.27mmの一方向性電磁鋼板を用い、何も挿入しない
もの:J、オレフィン系フィルム樹脂を10層毎に1層
挿入したもの:K、樹脂の挿入枚数をJと同じにし、鉄
心中心部に集中して3層毎に1層挿入したもの:L、同
じ枚数で鉄心表層部に集中して3層毎に1層挿入したも
の:Mをそれぞれ積層鉄心とし、500kVAの3相ト
ランスに組み立て、50Hz1.4Tで励磁した状態にお
ける騒音を測定した。樹脂層の厚さは50μmとし、ト
ランス積層厚は50mmに積んだ。その結果を表3に示
す。上記のように、本発明の条件を満たす材料から製作
したトランス鉄心K、Lでは、騒音を低くすることがで
きた。
板面に垂直な振動を抑え、低騒音化を効果的に実現す
る、振動発生が少ない低騒音トランス用電磁鋼板および
トランスを提供でき、電気機器の低騒音化が図られるの
で、産業上の利益は極めて大きい。
ものである。
Claims (5)
- 【請求項1】 鋼板面の少なくとも片面に厚さが30μ
m以上の粘弾性体層を有することを特徴とする低騒音ト
ランス用電磁鋼板。 - 【請求項2】 損失係数が20〜200℃の範囲のいず
れかの温度において1つ以上のピークを持つ粘弾性体層
を有する請求項1記載の低騒音トランス用電磁鋼板。 - 【請求項3】 請求項1または2記載の低騒音トランス
用電磁鋼板を用いて形成された低騒音トランス。 - 【請求項4】 電磁鋼板をn枚積層して構成されたトラ
ンス鉄心において、n−1個の積層間のうち、下記の式
を満足するm個の積層間に厚さが30μm以上の粘弾性
体層を具備したことを特徴とする低騒音トランス。 3≦(n−1)/m≦30 - 【請求項5】 請求項1または2記載の低騒音トランス
用電磁鋼板を用いた鉄心において粘弾性体層をランダム
に挿入することを特徴とする低騒音トランス。
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