JP2002257270A - 油井管用ネジ継手 - Google Patents
油井管用ネジ継手Info
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- JP2002257270A JP2002257270A JP2001052455A JP2001052455A JP2002257270A JP 2002257270 A JP2002257270 A JP 2002257270A JP 2001052455 A JP2001052455 A JP 2001052455A JP 2001052455 A JP2001052455 A JP 2001052455A JP 2002257270 A JP2002257270 A JP 2002257270A
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- Japan
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- box
- pin
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 ネジ部とネジ無し金属接触部とからなる接触
表面をそれぞれ有するピンとボックスとから構成される
油井管用ネジ継手の耐焼付き性を改善して、高合金の継
手、内径の大きな油井管、ネジ部の干渉量の高い継手と
焼付きの起こり易い油井管ネジ継手でも、グリスを塗布
せずに、少なくとも10回までの締付け・緩戻し中の焼付
き発生を防止する。 【解決手段】 ボツクスとピンの少なくとも一方の接触
表面に、ロックウェル硬度がM47以上で、好ましくはSA
ICAS法 (表面−界面切削法) により求めた付着強度が50
0 N/m 以上、の固体潤滑被膜を形成する。固体潤滑被膜
を形成し、または形成していない、ボックスとピンの一
方または両方の金属接触部に油を塗布すると、耐焼付き
性はさらに改善される。
表面をそれぞれ有するピンとボックスとから構成される
油井管用ネジ継手の耐焼付き性を改善して、高合金の継
手、内径の大きな油井管、ネジ部の干渉量の高い継手と
焼付きの起こり易い油井管ネジ継手でも、グリスを塗布
せずに、少なくとも10回までの締付け・緩戻し中の焼付
き発生を防止する。 【解決手段】 ボツクスとピンの少なくとも一方の接触
表面に、ロックウェル硬度がM47以上で、好ましくはSA
ICAS法 (表面−界面切削法) により求めた付着強度が50
0 N/m 以上、の固体潤滑被膜を形成する。固体潤滑被膜
を形成し、または形成していない、ボックスとピンの一
方または両方の金属接触部に油を塗布すると、耐焼付き
性はさらに改善される。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐焼付き性に優れ
た油井管用ネジ継手に関し、さらに詳しくは、高合金の
継手、ケーシングなど内径の大きな油井管の継手、或い
はシール性の高いネジ部での干渉量の大きい継手といっ
た、焼付きが起こり易いネジ継手の場合でも、繰り返し
の締付け・緩戻しを行った際に焼付くことがない、耐焼
付き性に優れた油井管用ネジ継手に関する。
た油井管用ネジ継手に関し、さらに詳しくは、高合金の
継手、ケーシングなど内径の大きな油井管の継手、或い
はシール性の高いネジ部での干渉量の大きい継手といっ
た、焼付きが起こり易いネジ継手の場合でも、繰り返し
の締付け・緩戻しを行った際に焼付くことがない、耐焼
付き性に優れた油井管用ネジ継手に関する。
【0002】
【従来の技術】油井掘削に用いられる油井管はネジ継手
で締結される。ネジ継手は、雄ネジを備えたピンと、雌
ネジを備えたボックスとから構成される。図1に模式的
に示すように、通常は油井管Aの両端の外面に雄ネジ3A
を形成してピン1とし、別部材のスリーブ型の継手部材
Bの内面に両側から雌ネジ3Bを形成してボックス2とす
る。図1に示す通り、油井管Aは、その一方の端部に予
め継手部材Bを締め付けた状態で出荷されるのが普通で
ある。
で締結される。ネジ継手は、雄ネジを備えたピンと、雌
ネジを備えたボックスとから構成される。図1に模式的
に示すように、通常は油井管Aの両端の外面に雄ネジ3A
を形成してピン1とし、別部材のスリーブ型の継手部材
Bの内面に両側から雌ネジ3Bを形成してボックス2とす
る。図1に示す通り、油井管Aは、その一方の端部に予
め継手部材Bを締め付けた状態で出荷されるのが普通で
ある。
【0003】油井管用ネジ継手には、油井管と継手の重
量に起因する軸方向引張力や地中での内外面圧力などの
複合した圧力に加え、地中での熱が作用するので、この
ような環境下でも破損せずに気密性 (シール性) を保持
することが要求される。また、油井管の降下作業時に
は、一度締め込んだ継手を緩め、再度締め直すことがあ
る。そのため、API (米国石油協会) では、チュービ
ング継手においては10回の、ケーシング継手においては
3回の締付け (メイクアップ) 、緩戻し (ブレークアウ
ト) を行っても、ゴーリングと呼ばれる焼付きの発生が
無く、気密性が保持されることを求めている。
量に起因する軸方向引張力や地中での内外面圧力などの
複合した圧力に加え、地中での熱が作用するので、この
ような環境下でも破損せずに気密性 (シール性) を保持
することが要求される。また、油井管の降下作業時に
は、一度締め込んだ継手を緩め、再度締め直すことがあ
る。そのため、API (米国石油協会) では、チュービ
ング継手においては10回の、ケーシング継手においては
3回の締付け (メイクアップ) 、緩戻し (ブレークアウ
ト) を行っても、ゴーリングと呼ばれる焼付きの発生が
無く、気密性が保持されることを求めている。
【0004】近年では、気密性向上の観点から、金属対
金属接触によるメタルシールが可能な特殊ネジ継手が頻
繁に使用されるようになっている。この種のネジ継手で
は、ピンとボックスのいずれも、雄ネジまたは雌ネジか
らなるネジ部に加えて、ネジ無し金属接触部を有し、こ
れらが接触表面となる。ピンとボックスのネジ無し金属
接触部同士が当接して、金属−金属の直接接触によるメ
タルシール部が形成され、気密性が向上する。
金属接触によるメタルシールが可能な特殊ネジ継手が頻
繁に使用されるようになっている。この種のネジ継手で
は、ピンとボックスのいずれも、雄ネジまたは雌ネジか
らなるネジ部に加えて、ネジ無し金属接触部を有し、こ
れらが接触表面となる。ピンとボックスのネジ無し金属
接触部同士が当接して、金属−金属の直接接触によるメ
タルシール部が形成され、気密性が向上する。
【0005】このようなネジ継手では、金属接触部の焼
付きを防止するため、コンパウンドグリスと呼ばれる高
潤滑のグリスが使用されてきた。液体潤滑剤であるこの
グリスを、締付け前にピンとボックスの少なくとも一方
の接触表面に塗布する。しかし、このグリスには有害な
重金属が多量に含まれており、締付けに伴ってグリスが
周囲にはみ出るため、重金属による環境汚染を引き起こ
すという問題があった。また、締付けを繰り返すたびに
必要となるグリス塗布が、現場での作業効率を低下させ
るという問題もあった。
付きを防止するため、コンパウンドグリスと呼ばれる高
潤滑のグリスが使用されてきた。液体潤滑剤であるこの
グリスを、締付け前にピンとボックスの少なくとも一方
の接触表面に塗布する。しかし、このグリスには有害な
重金属が多量に含まれており、締付けに伴ってグリスが
周囲にはみ出るため、重金属による環境汚染を引き起こ
すという問題があった。また、締付けを繰り返すたびに
必要となるグリス塗布が、現場での作業効率を低下させ
るという問題もあった。
【0006】そこで、従来のコンパウンドグリス等の液
体潤滑剤に代わって、工場出荷時点でネジ継手のネジ部
や金属接触部に固体潤滑被膜を形成した油井管ネジ継手
が開発された (特許第3056646 号、特開平8−233163号
公報、特開平8−233164号公報を参照) 。
体潤滑剤に代わって、工場出荷時点でネジ継手のネジ部
や金属接触部に固体潤滑被膜を形成した油井管ネジ継手
が開発された (特許第3056646 号、特開平8−233163号
公報、特開平8−233164号公報を参照) 。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような固体潤滑被
膜により潤滑性を付与したネジ継手の開発の結果、コン
パウンドグリスの塗布が不要となり、前述した環境問題
や作業効率の問題は解消できる。
膜により潤滑性を付与したネジ継手の開発の結果、コン
パウンドグリスの塗布が不要となり、前述した環境問題
や作業効率の問題は解消できる。
【0008】しかし、従来の固体潤滑被膜を形成したネ
ジ継手では、コンパウンドグリスを塗布した場合に得ら
れるような高い焼付き防止効果が得られず、耐焼付き性
に問題が残っている。即ち、高合金の継手、ケーシング
など内径の大きな油井管の継手、或いはシール性の高い
ネジ部での干渉量の大きい継手といった、焼付きが起こ
り易いネジ継手(以下では、このような継手を「焼付き
易い種類のネジ継手」と総称する)では、依然として締
付け・緩戻しの繰り返しを数回繰り返すだけでゴーリン
グと呼ばれる焼付き疵を生じることがあった。コンパウ
ンドグリスを塗布すれば、この種のネジ継手でも、焼付
きを防止することができるので、そのような場合はグリ
ス塗布を行うことになり、上記の問題が避けられない。
従って、この種のネジ継手では、耐焼付き性を確実に改
善することができる手段が求められていた。
ジ継手では、コンパウンドグリスを塗布した場合に得ら
れるような高い焼付き防止効果が得られず、耐焼付き性
に問題が残っている。即ち、高合金の継手、ケーシング
など内径の大きな油井管の継手、或いはシール性の高い
ネジ部での干渉量の大きい継手といった、焼付きが起こ
り易いネジ継手(以下では、このような継手を「焼付き
易い種類のネジ継手」と総称する)では、依然として締
付け・緩戻しの繰り返しを数回繰り返すだけでゴーリン
グと呼ばれる焼付き疵を生じることがあった。コンパウ
ンドグリスを塗布すれば、この種のネジ継手でも、焼付
きを防止することができるので、そのような場合はグリ
ス塗布を行うことになり、上記の問題が避けられない。
従って、この種のネジ継手では、耐焼付き性を確実に改
善することができる手段が求められていた。
【0009】本発明は、固体潤滑被膜を形成した油井管
用ネジ継手であって、前述した焼付き易い種類のネジ継
手においても締付け・緩戻し時の焼付きを防止すること
ができる、耐焼付き性に優れた油井管用ネジ継手を提供
することを目的とする。
用ネジ継手であって、前述した焼付き易い種類のネジ継
手においても締付け・緩戻し時の焼付きを防止すること
ができる、耐焼付き性に優れた油井管用ネジ継手を提供
することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、グリス不
要の固体潤滑被膜を形成したネジ継手において、特に焼
付き易い種類の継手のネジ無し接触部に見られることの
あるゴーリング(焼付き疵)の発生状況について検討し
た。
要の固体潤滑被膜を形成したネジ継手において、特に焼
付き易い種類の継手のネジ無し接触部に見られることの
あるゴーリング(焼付き疵)の発生状況について検討し
た。
【0011】その結果、この種のネジ継手の締付け・緩
戻しでは、回数と共に固体潤滑被膜が徐々に摩耗してす
り減り、遂には被膜切れを起こして、ゴーリングに至る
ことが分かつた。従って、固体潤滑被膜の摩耗を防止す
ることが、特に焼付き易い種類のネジ継手のゴーリング
防止にとって重要である。
戻しでは、回数と共に固体潤滑被膜が徐々に摩耗してす
り減り、遂には被膜切れを起こして、ゴーリングに至る
ことが分かつた。従って、固体潤滑被膜の摩耗を防止す
ることが、特に焼付き易い種類のネジ継手のゴーリング
防止にとって重要である。
【0012】これまで、油井管用ネジ継手やプレス加工
用鋼板等に施される固体潤滑被膜について、その摩擦係
数に関する検討はいろいろなされてきたが、被膜の摩耗
を支配する因子についての知見はほとんどなかった。固
体潤滑被膜が摩耗して被膜切れを起こすというのは極限
的な荷重が繰り返し加わるという特殊な状況に限られる
ため、固体潤滑被膜の摩耗現象あるいは耐摩耗性は注目
されてこなかったものと思われる。
用鋼板等に施される固体潤滑被膜について、その摩擦係
数に関する検討はいろいろなされてきたが、被膜の摩耗
を支配する因子についての知見はほとんどなかった。固
体潤滑被膜が摩耗して被膜切れを起こすというのは極限
的な荷重が繰り返し加わるという特殊な状況に限られる
ため、固体潤滑被膜の摩耗現象あるいは耐摩耗性は注目
されてこなかったものと思われる。
【0013】本発明者らは、油井管ネジ継手に施された
固体潤滑被膜の摩耗について検討した結果、固体潤滑被
膜の種類によらず、被膜のロックウェル硬度がある値よ
り大きくなると、固体潤滑被膜の耐摩耗性が著しく改善
され、焼付き易い種類の継手においても、被膜切れによ
るゴーリングを発生することなく、締付け・緩戻しを繰
り返すことができることを見出した。つまり、固体潤滑
被膜がどのようなものであっても、被膜のロックウェル
硬度によって、その被膜の耐焼付き性を把握することが
できる。
固体潤滑被膜の摩耗について検討した結果、固体潤滑被
膜の種類によらず、被膜のロックウェル硬度がある値よ
り大きくなると、固体潤滑被膜の耐摩耗性が著しく改善
され、焼付き易い種類の継手においても、被膜切れによ
るゴーリングを発生することなく、締付け・緩戻しを繰
り返すことができることを見出した。つまり、固体潤滑
被膜がどのようなものであっても、被膜のロックウェル
硬度によって、その被膜の耐焼付き性を把握することが
できる。
【0014】一般に金属製の摺動部材では、硬度が高い
ほど摩耗しにくいことが分かっている。しかし、油井管
ネジ継手に施された固体潤滑被膜については、前述した
焼付き易い種類の継手でもコンパウンドグリスの塗布が
焼付き防止に有効であることから、グリスのような自己
補修機能を有した、つまり流動性のある固体潤滑被膜が
焼付き防止に有効であると考えられてきた。そのため、
流動性とは対極にある性質である被膜硬度を増大させる
ことにより固体潤滑被膜の耐焼付き性を改善するという
発想は、従来技術にはなかった。例えば、前掲の特許第
3056646 号、特開平8−233163号公報、特開平8−2331
64号公報でも、被膜の硬度は全く考慮されていない。
ほど摩耗しにくいことが分かっている。しかし、油井管
ネジ継手に施された固体潤滑被膜については、前述した
焼付き易い種類の継手でもコンパウンドグリスの塗布が
焼付き防止に有効であることから、グリスのような自己
補修機能を有した、つまり流動性のある固体潤滑被膜が
焼付き防止に有効であると考えられてきた。そのため、
流動性とは対極にある性質である被膜硬度を増大させる
ことにより固体潤滑被膜の耐焼付き性を改善するという
発想は、従来技術にはなかった。例えば、前掲の特許第
3056646 号、特開平8−233163号公報、特開平8−2331
64号公報でも、被膜の硬度は全く考慮されていない。
【0015】また、固体潤滑被膜の耐焼付き性を高める
ため、被膜の摩擦係数を低くして、すべり易くするとい
う考えもあるが、本発明者らの知見によれば、被膜の摩
擦係数を改善しても耐焼付き性への影響はそれほど大き
くない。本発明では、被膜の摩擦係数ではなく、その硬
度を増大させることで、固体潤滑被膜の耐焼付き性を著
しく改善することができる。
ため、被膜の摩擦係数を低くして、すべり易くするとい
う考えもあるが、本発明者らの知見によれば、被膜の摩
擦係数を改善しても耐焼付き性への影響はそれほど大き
くない。本発明では、被膜の摩擦係数ではなく、その硬
度を増大させることで、固体潤滑被膜の耐焼付き性を著
しく改善することができる。
【0016】以上より、固体潤滑被膜の硬度増大によっ
てネジ継手の耐焼付き性を改善するという本発明の技術
思想は極めて独創的であることは理解されよう。以上の
知見に基づいて完成した本発明は、ネジ部とネジ無し金
属接触部とからなる接触表面をそれぞれ有するピンとボ
ックスとから構成される油井管用ネジ継手において、ボ
ツクスとピンの少なくとも一方の接触表面に、ロックウ
ェル硬度がM47以上の固体潤滑被膜が形成されているこ
とを特徴とする油井管用ネジ継手、である。
てネジ継手の耐焼付き性を改善するという本発明の技術
思想は極めて独創的であることは理解されよう。以上の
知見に基づいて完成した本発明は、ネジ部とネジ無し金
属接触部とからなる接触表面をそれぞれ有するピンとボ
ックスとから構成される油井管用ネジ継手において、ボ
ツクスとピンの少なくとも一方の接触表面に、ロックウ
ェル硬度がM47以上の固体潤滑被膜が形成されているこ
とを特徴とする油井管用ネジ継手、である。
【0017】ロックウェル硬度は押込み硬さの1種であ
る。本発明におけるロックウェル硬度は、JIS K7202 に
定めるプラスチックのロックウェル硬さ試験方法に従っ
て、スケールM (圧子: 6.350 mm径の鋼球、基準荷重:9
8.07 N、試験荷重:980.7 N)により測定した値を意味す
る。
る。本発明におけるロックウェル硬度は、JIS K7202 に
定めるプラスチックのロックウェル硬さ試験方法に従っ
て、スケールM (圧子: 6.350 mm径の鋼球、基準荷重:9
8.07 N、試験荷重:980.7 N)により測定した値を意味す
る。
【0018】1態様において、前記固体潤滑被膜がピン
とボックスの一方の接触表面だけに形成されている。そ
の場合、前記固体潤滑被膜が形成されない他方のピンま
たはボックスの少なくともネジ無し金属接触部の表面
は、最大粗さ(Rmax)が40μm以下であるか、および/ま
たは表面に油が塗布されていてもよい。また、前記固体
潤滑被膜が形成されたピンまたはボックスの少なくとも
ネジ無し金属接触部の固体潤滑被膜の表面にも油が塗布
されていてもよい。
とボックスの一方の接触表面だけに形成されている。そ
の場合、前記固体潤滑被膜が形成されない他方のピンま
たはボックスの少なくともネジ無し金属接触部の表面
は、最大粗さ(Rmax)が40μm以下であるか、および/ま
たは表面に油が塗布されていてもよい。また、前記固体
潤滑被膜が形成されたピンまたはボックスの少なくとも
ネジ無し金属接触部の固体潤滑被膜の表面にも油が塗布
されていてもよい。
【0019】別の態様では、前記固体潤滑被膜がピンと
ボックスの両方の接触表面に形成されている。その場
合、ピンとボックスの少なくとも一方の少なくともネジ
無し金属接触部の固体潤滑被膜に油が塗布されていても
よい。
ボックスの両方の接触表面に形成されている。その場
合、ピンとボックスの少なくとも一方の少なくともネジ
無し金属接触部の固体潤滑被膜に油が塗布されていても
よい。
【0020】固体潤滑被膜の被膜硬度が高まると、時と
して摩耗する前に固体潤滑被膜が剥離する現象が見られ
ることがある。このような剥離を防ぐように、被膜と母
材との付着強度が十分に高いことが望ましい。
して摩耗する前に固体潤滑被膜が剥離する現象が見られ
ることがある。このような剥離を防ぐように、被膜と母
材との付着強度が十分に高いことが望ましい。
【0021】被膜の付着強度の評価方法には多様な方法
がある。簡便でよく知られた方法は、いわゆる碁盤目試
験である。しかし、ネジ継手の固体潤滑被膜には、碁盤
目試験で測定できるよりずっと高い付着強度が求められ
るので、この試験は採用できない。本発明者らは、ネジ
継手に施す固体潤滑被膜の耐剥離性が、「塗装技術」19
95年4月号 123〜135 頁に詳述されているSAlCAS法 [表
面−界面切削法(Surface and Interfacial Cutting Ana
lysis System] により測定される付着強度によって定量
的に把握でき、この値が一定以上であれば、被膜硬度が
高くても、締付け・緩戻し中の固体潤滑被膜の剥離が防
げることを見い出した。
がある。簡便でよく知られた方法は、いわゆる碁盤目試
験である。しかし、ネジ継手の固体潤滑被膜には、碁盤
目試験で測定できるよりずっと高い付着強度が求められ
るので、この試験は採用できない。本発明者らは、ネジ
継手に施す固体潤滑被膜の耐剥離性が、「塗装技術」19
95年4月号 123〜135 頁に詳述されているSAlCAS法 [表
面−界面切削法(Surface and Interfacial Cutting Ana
lysis System] により測定される付着強度によって定量
的に把握でき、この値が一定以上であれば、被膜硬度が
高くても、締付け・緩戻し中の固体潤滑被膜の剥離が防
げることを見い出した。
【0022】本発明の好適態様においては、前記固体潤
滑被膜のSAICAS法で求めた付着強度が500 N/m 以上であ
る。SAICAS法では、被膜が付着している基体を水平方向
に移動させながら、鋭利な切刃を荷重下で被膜表面に押
し付けて、被膜を表面から基体との界面まで斜めに切断
し、界面に達した後は荷重を調整して切刃を水平に界面
移動させる。この界面移動時の剥離幅 (切刃の幅) 当た
りの剥離力(N/m) として被膜の付着強度を求めることが
できる。SAICAS法のための測定装置は、ダイプラ・ウィ
ンテス社よりSAICASなる商品名で市販されている。
滑被膜のSAICAS法で求めた付着強度が500 N/m 以上であ
る。SAICAS法では、被膜が付着している基体を水平方向
に移動させながら、鋭利な切刃を荷重下で被膜表面に押
し付けて、被膜を表面から基体との界面まで斜めに切断
し、界面に達した後は荷重を調整して切刃を水平に界面
移動させる。この界面移動時の剥離幅 (切刃の幅) 当た
りの剥離力(N/m) として被膜の付着強度を求めることが
できる。SAICAS法のための測定装置は、ダイプラ・ウィ
ンテス社よりSAICASなる商品名で市販されている。
【0023】
【発明の実施の形態】図2は、代表的な油井管用ネジ継
手の構成を模式的に示す概要図である。符号1はピン、
2はボックス、3はネジ部、4はネジ無し金属接触部、
5はショルダー部を示す。以下、ネジ無し金属接触部を
単に金属接触部ともいう。
手の構成を模式的に示す概要図である。符号1はピン、
2はボックス、3はネジ部、4はネジ無し金属接触部、
5はショルダー部を示す。以下、ネジ無し金属接触部を
単に金属接触部ともいう。
【0024】図2に示すように、典型的なネジ継手は、
油井管端部の外面に形成された、ネジ部3(雄ネジ部)
及びネジ無し金属接触部4を有するピン1と、ネジ継手
部材の内面に形成された、ネジ部3(即ち、雌ネジ部)
およびネジ無し金属接触部4を有するボックス2とで構
成される。ただし、ピンとボックスは図示のものに制限
されない。例えば、継手部材を使用せず、油井管の一端
をピン、他端をボックスとしたり、あるいは継手部材を
ピン (雄ネジ) として、油井管の両端をボックスとする
ことも可能である。
油井管端部の外面に形成された、ネジ部3(雄ネジ部)
及びネジ無し金属接触部4を有するピン1と、ネジ継手
部材の内面に形成された、ネジ部3(即ち、雌ネジ部)
およびネジ無し金属接触部4を有するボックス2とで構
成される。ただし、ピンとボックスは図示のものに制限
されない。例えば、継手部材を使用せず、油井管の一端
をピン、他端をボックスとしたり、あるいは継手部材を
ピン (雄ネジ) として、油井管の両端をボックスとする
ことも可能である。
【0025】ピン1とボックス2のそれぞれに設けたネ
ジ部3とネジ無し金属接触部4がネジ継手の接触表面で
ある。この接触表面、中でも、焼付きの起こりやすいネ
ジ無し金属接触部には、耐焼付き性が要求される。従来
は、そのために、重金属粉を含有するコンパウンドグリ
スを接触表面に塗布していたが、前述したように、コン
パウンドグリスの使用には環境と作業効率の面で問題が
多い。この問題を解決するため、予め接触表面に固体潤
滑被膜を形成した、グリス塗布が不要にしたネジ継手も
開発された。しかし、焼付き易い種類のネジ継手の場
合、従来は耐焼付き性を確実に改善することができなか
った。
ジ部3とネジ無し金属接触部4がネジ継手の接触表面で
ある。この接触表面、中でも、焼付きの起こりやすいネ
ジ無し金属接触部には、耐焼付き性が要求される。従来
は、そのために、重金属粉を含有するコンパウンドグリ
スを接触表面に塗布していたが、前述したように、コン
パウンドグリスの使用には環境と作業効率の面で問題が
多い。この問題を解決するため、予め接触表面に固体潤
滑被膜を形成した、グリス塗布が不要にしたネジ継手も
開発された。しかし、焼付き易い種類のネジ継手の場
合、従来は耐焼付き性を確実に改善することができなか
った。
【0026】本発明によれば、固体潤滑被膜のロックウ
ェル硬度を管理することにより、固体潤滑被膜の種類に
よらず、焼付き易い種類のネジ継手においても焼付き発
生を確実に防止することができるネジ継手を提供するこ
とが可能となる。具体的には、固体潤滑被膜をロックウ
ェル硬度がM47以上の硬さのものとする。被膜のロック
ウェル高度は好ましくはM50以上、より好ましくはM55
以上である。
ェル硬度を管理することにより、固体潤滑被膜の種類に
よらず、焼付き易い種類のネジ継手においても焼付き発
生を確実に防止することができるネジ継手を提供するこ
とが可能となる。具体的には、固体潤滑被膜をロックウ
ェル硬度がM47以上の硬さのものとする。被膜のロック
ウェル高度は好ましくはM50以上、より好ましくはM55
以上である。
【0027】図3は、実験室レベルでの摩耗試験におけ
る各種の固体潤滑被膜の摩耗量と被膜の硬度との関係を
示したものである。摩耗試験は、図4に示すような、実
継手の締付け・緩戻しを模した摩擦試験機を用い、表1
に示す条件で行った。試験片A、Bは、焼付きが起こり
易い高合金鋼である13Cr鋼から作製し、ボックス側を模
した試験片Bに固体潤滑被膜を形成した。被膜の摩耗量
は、接触式粗さ計で得られる摩擦部の最大摩耗深さ (μ
m) により表示した。被膜硬度は、JIS K7202に定める
ロックウェル硬さ試験法に準じて、スケールMにより測
定した。
る各種の固体潤滑被膜の摩耗量と被膜の硬度との関係を
示したものである。摩耗試験は、図4に示すような、実
継手の締付け・緩戻しを模した摩擦試験機を用い、表1
に示す条件で行った。試験片A、Bは、焼付きが起こり
易い高合金鋼である13Cr鋼から作製し、ボックス側を模
した試験片Bに固体潤滑被膜を形成した。被膜の摩耗量
は、接触式粗さ計で得られる摩擦部の最大摩耗深さ (μ
m) により表示した。被膜硬度は、JIS K7202に定める
ロックウェル硬さ試験法に準じて、スケールMにより測
定した。
【0028】
【表1】
【0029】図3からわかるように、被膜の種類に関係
なく、固体潤滑皮膜の摩耗量はそのロックウェル硬度に
依存する。従って、固体潤滑被膜のロックウェル硬度を
測定すれば、被膜の耐摩耗性把握することができる。
なく、固体潤滑皮膜の摩耗量はそのロックウェル硬度に
依存する。従って、固体潤滑被膜のロックウェル硬度を
測定すれば、被膜の耐摩耗性把握することができる。
【0030】注目すべきことに、固体潤滑被膜の摩耗量
は、被膜硬度と直線的な関係にあるのではなく、ある硬
度を境にして急激に摩耗量が変化する。その変曲点の硬
度がM47である。即ち、被膜硬度がM47以上になると、
急に摩耗量が少なくなり、被膜の耐摩耗性が向上する。
そのため、高合金の継手、ケーシングなど内径の大きな
油井管、或いはシール性を高めてネジ部での干渉量の高
い継手といった焼付き易い種類のネジ継手において、締
付け・緩戻しを繰り返した場合の固体潤滑被膜の被膜切
れによる焼付きが発生しにくくなる。
は、被膜硬度と直線的な関係にあるのではなく、ある硬
度を境にして急激に摩耗量が変化する。その変曲点の硬
度がM47である。即ち、被膜硬度がM47以上になると、
急に摩耗量が少なくなり、被膜の耐摩耗性が向上する。
そのため、高合金の継手、ケーシングなど内径の大きな
油井管、或いはシール性を高めてネジ部での干渉量の高
い継手といった焼付き易い種類のネジ継手において、締
付け・緩戻しを繰り返した場合の固体潤滑被膜の被膜切
れによる焼付きが発生しにくくなる。
【0031】一方、固体潤滑被膜の硬度がM47より小さ
くなると、摩耗量が急激に増大する。例えば、被膜のみ
の場合で、硬度M55以上の被膜の摩耗量が約3μmであ
るのに比べ、硬度M45以下の被膜は摩耗量が15〜20μm
またはそれ以上、即ち、硬度M55以上の摩耗量の5〜7
倍もの大きさとなる。その結果、上記の締付け・緩戻し
で被膜の摩耗が急激に進み、少ない回数の締付け・緩戻
しで被膜切れによる焼付きを生じる。
くなると、摩耗量が急激に増大する。例えば、被膜のみ
の場合で、硬度M55以上の被膜の摩耗量が約3μmであ
るのに比べ、硬度M45以下の被膜は摩耗量が15〜20μm
またはそれ以上、即ち、硬度M55以上の摩耗量の5〜7
倍もの大きさとなる。その結果、上記の締付け・緩戻し
で被膜の摩耗が急激に進み、少ない回数の締付け・緩戻
しで被膜切れによる焼付きを生じる。
【0032】被膜硬度による摩耗量の変化は、図3に破
線で示す、固体潤滑被膜に油を塗布した場合には、より
顕著な差となって現れる。即ち、固体潤滑被膜のロック
ウェル硬度がM47以上、特にM50以上になると、摩耗量
は約1μmとなり、同じ硬度の被膜のみの場合 (実線)
に比べて摩耗量は約1/3に低減する。これに対し、被
膜硬度がM47以下の場合の油塗布の摩耗量は、被膜のみ
の場合に比べてやはり約2μm低減するものの、被膜の
みの摩耗量が大きいため、被膜のみに比べて摩耗量が約
9/10に減少するにすぎない。その結果、固体潤滑被膜
に油を塗布した場合、硬度がM45以下の被膜の摩耗量
は、硬度M50以上の被膜の摩耗量の約15倍以上もの大き
さとなる。
線で示す、固体潤滑被膜に油を塗布した場合には、より
顕著な差となって現れる。即ち、固体潤滑被膜のロック
ウェル硬度がM47以上、特にM50以上になると、摩耗量
は約1μmとなり、同じ硬度の被膜のみの場合 (実線)
に比べて摩耗量は約1/3に低減する。これに対し、被
膜硬度がM47以下の場合の油塗布の摩耗量は、被膜のみ
の場合に比べてやはり約2μm低減するものの、被膜の
みの摩耗量が大きいため、被膜のみに比べて摩耗量が約
9/10に減少するにすぎない。その結果、固体潤滑被膜
に油を塗布した場合、硬度がM45以下の被膜の摩耗量
は、硬度M50以上の被膜の摩耗量の約15倍以上もの大き
さとなる。
【0033】固体潤滑被膜の摩擦係数は、被膜の種類
(例えば、皮膜形成物質の種類、固体粉末の有無) によ
り変動する。しかし、いくら摩擦係数の小さい被膜で
も、そのロックウェル硬度が小さいと、ネジ継手の締付
け・緩戻しの繰り返しに伴って摩耗し易く、被膜切れに
よる焼付きが早期に起こるようになる。即ち、固体潤滑
被膜の焼付きは、被膜硬度が関係する耐摩耗性に大きく
依存し、被膜の種類や摩擦係数にはそれほど依存しな
い。つまり、被膜の摩擦係数ではなく、その硬度を管理
することによって、固体潤滑被膜の焼付きを確実に防止
することができる。従って、本発明では、ネジ継手の接
触表面に形成する固体潤滑被膜として、ロックウェル硬
度がM47以上となる被膜を選定して用いる。
(例えば、皮膜形成物質の種類、固体粉末の有無) によ
り変動する。しかし、いくら摩擦係数の小さい被膜で
も、そのロックウェル硬度が小さいと、ネジ継手の締付
け・緩戻しの繰り返しに伴って摩耗し易く、被膜切れに
よる焼付きが早期に起こるようになる。即ち、固体潤滑
被膜の焼付きは、被膜硬度が関係する耐摩耗性に大きく
依存し、被膜の種類や摩擦係数にはそれほど依存しな
い。つまり、被膜の摩擦係数ではなく、その硬度を管理
することによって、固体潤滑被膜の焼付きを確実に防止
することができる。従って、本発明では、ネジ継手の接
触表面に形成する固体潤滑被膜として、ロックウェル硬
度がM47以上となる被膜を選定して用いる。
【0034】ただし、被膜と母材の付着強度が不十分で
あると、ネジ継手の締付け・緩戻しによって被膜が剥離
することがあり、そうなると焼付きが発生するようにな
るので、固体潤滑被膜は、この剥離を防ぐのに十分な付
着強度を有することが望ましい。
あると、ネジ継手の締付け・緩戻しによって被膜が剥離
することがあり、そうなると焼付きが発生するようにな
るので、固体潤滑被膜は、この剥離を防ぐのに十分な付
着強度を有することが望ましい。
【0035】固体潤滑被膜の剥離に対する付着強度の評
価はSAICAS法により測定した付着強度によって行うのが
最適である。SAICAS法で求めた被膜の付着強度が500 N/
m 以上であれば、ネジ継手の締付け・緩戻しによる被膜
の剥離を防止することができる。この付着強度はより好
ましくは2000 N/m以上、特に好ましくは5000 N/m以上で
ある。
価はSAICAS法により測定した付着強度によって行うのが
最適である。SAICAS法で求めた被膜の付着強度が500 N/
m 以上であれば、ネジ継手の締付け・緩戻しによる被膜
の剥離を防止することができる。この付着強度はより好
ましくは2000 N/m以上、特に好ましくは5000 N/m以上で
ある。
【0036】ネジ継手の表面に形成した固体潤滑被膜の
付着強度は、主に、その被膜の種類とネジ継手を下地処
理した場合には、下地処理の種類とにより決まる。従っ
て、必要に応じてネジ継手を下地処理し、必要な付着強
度が得られるように固体潤滑被膜を形成する。
付着強度は、主に、その被膜の種類とネジ継手を下地処
理した場合には、下地処理の種類とにより決まる。従っ
て、必要に応じてネジ継手を下地処理し、必要な付着強
度が得られるように固体潤滑被膜を形成する。
【0037】固体潤滑被膜は、ネジ継手のピンとボック
スの一方または両方の接触表面に形成することができ
る。一方のみに形成する場合、固体潤滑被膜を形成する
のはピンとボックスのいずれでもよいが、短いボックス
の方が塗布作業は容易である。また、固体潤滑被膜は、
ピンおよび/またはボックスの接触表面の全面に形成す
ることが好ましいが、焼付きが起こり易いネジ無し金属
接触部だけに形成してもよい。両方に形成する場合、ピ
ンとボックスに形成した固体潤滑被膜は互いに同じもの
でも、異なるものでもよい。
スの一方または両方の接触表面に形成することができ
る。一方のみに形成する場合、固体潤滑被膜を形成する
のはピンとボックスのいずれでもよいが、短いボックス
の方が塗布作業は容易である。また、固体潤滑被膜は、
ピンおよび/またはボックスの接触表面の全面に形成す
ることが好ましいが、焼付きが起こり易いネジ無し金属
接触部だけに形成してもよい。両方に形成する場合、ピ
ンとボックスに形成した固体潤滑被膜は互いに同じもの
でも、異なるものでもよい。
【0038】ピンとボックスの一方のみに(例、ボック
ス)固体潤滑被膜を形成する場合、他方の部材(例、ピ
ン)の接触表面は、少なくとも金属接触部の表面の最大
粗さ(Rmax )が40μm以下であることが好ましい。固体
潤滑被膜を形成しない接触表面、特に金属接触部の最大
表面粗さが40μm以下であると、その表面粗さの山の突
起部分によって、相手方の表面の固体潤滑被膜がかき削
られて損耗することが起こらない。この最大表面粗さは
より好ましくは30μm以下である。なお、ネジ部も同様
の表面粗さにすることができる。
ス)固体潤滑被膜を形成する場合、他方の部材(例、ピ
ン)の接触表面は、少なくとも金属接触部の表面の最大
粗さ(Rmax )が40μm以下であることが好ましい。固体
潤滑被膜を形成しない接触表面、特に金属接触部の最大
表面粗さが40μm以下であると、その表面粗さの山の突
起部分によって、相手方の表面の固体潤滑被膜がかき削
られて損耗することが起こらない。この最大表面粗さは
より好ましくは30μm以下である。なお、ネジ部も同様
の表面粗さにすることができる。
【0039】ネジ継手の金属接触部の表面粗さは、研
磨、サンドブラストといった継手表面の機械的処理によ
り調整することができる。なお、固体潤滑被膜を形成し
ない金属接触部部の表面には、通常は下地処理を施さな
いが、例えば、防食等の目的で下地処理を施してもよ
い。その場合には、下地処理の表面粗さが金属接触部の
表面粗さとなる。
磨、サンドブラストといった継手表面の機械的処理によ
り調整することができる。なお、固体潤滑被膜を形成し
ない金属接触部部の表面には、通常は下地処理を施さな
いが、例えば、防食等の目的で下地処理を施してもよ
い。その場合には、下地処理の表面粗さが金属接触部の
表面粗さとなる。
【0040】図3に関して説明したように、固体潤滑被
膜に油を塗布すると、被膜の摩耗量が低減するが、この
効果は、固体潤滑被膜を形成しない相手方の表面に油を
塗布した場合にも同様に得られる。従って、固体潤滑被
膜をピンとボックスの一方のみ、または両方に形成した
かどうかに関係なく、ピンとボックスの一方または両方
の金属接触部の表面、即ち、被膜がある場合には被膜表
面、被膜がない場合には金属表面、に油を塗布すると、
固体潤滑被膜の摩擦が低減し、被膜の摩耗を抑制するこ
とができる。この油は、金属接触部だけでなく、ネジ部
にも塗布することができ、その方が好ましい。
膜に油を塗布すると、被膜の摩耗量が低減するが、この
効果は、固体潤滑被膜を形成しない相手方の表面に油を
塗布した場合にも同様に得られる。従って、固体潤滑被
膜をピンとボックスの一方のみ、または両方に形成した
かどうかに関係なく、ピンとボックスの一方または両方
の金属接触部の表面、即ち、被膜がある場合には被膜表
面、被膜がない場合には金属表面、に油を塗布すると、
固体潤滑被膜の摩擦が低減し、被膜の摩耗を抑制するこ
とができる。この油は、金属接触部だけでなく、ネジ部
にも塗布することができ、その方が好ましい。
【0041】もちろん、固体潤滑被膜を形成しない方の
部材の少なくとも金属接触部に、上述した表面最大粗さ
の調整、(40 μm以下) と油の塗布の両方を組合わせて
適用することもできる。それにより、固体潤滑被膜の摩
耗がさらに低減する。また、ピンとボックスの両方に油
を塗布する場合、塗布する油は両方で同じものが好まし
いが、異なる油を塗布することもできる。
部材の少なくとも金属接触部に、上述した表面最大粗さ
の調整、(40 μm以下) と油の塗布の両方を組合わせて
適用することもできる。それにより、固体潤滑被膜の摩
耗がさらに低減する。また、ピンとボックスの両方に油
を塗布する場合、塗布する油は両方で同じものが好まし
いが、異なる油を塗布することもできる。
【0042】本発明に従って接触表面に固体潤滑被膜が
形成される油井管用ネジ継手は特に制限されない。本発
明による効果が特に顕著に発揮されるのは、高合金
(例、13Cr鋼、18Cr鋼、25Cr鋼等) の継手、ケーシング
など内径の大きな油井管 (例えば9・5/8 インチ<24.5 c
m> 以上) 、或いはネジ部での干渉量を増大させてシー
ル性を高めた継手、といった焼付き易い種類のネジ継手
であるが、その他のネジ継手に対しても本発明による固
体潤滑被膜を形成することで、耐焼付き性が向上し、例
えば、締付け・緩戻し回数が増えるといった効果が得ら
れる。
形成される油井管用ネジ継手は特に制限されない。本発
明による効果が特に顕著に発揮されるのは、高合金
(例、13Cr鋼、18Cr鋼、25Cr鋼等) の継手、ケーシング
など内径の大きな油井管 (例えば9・5/8 インチ<24.5 c
m> 以上) 、或いはネジ部での干渉量を増大させてシー
ル性を高めた継手、といった焼付き易い種類のネジ継手
であるが、その他のネジ継手に対しても本発明による固
体潤滑被膜を形成することで、耐焼付き性が向上し、例
えば、締付け・緩戻し回数が増えるといった効果が得ら
れる。
【0043】固体潤滑被膜は、前述したロックウェル硬
度と付着強度を有し、かつ潤滑性を付与できる被膜であ
れば、特に制限されない。例えば、ガラス質、有機樹脂
質、無機高分子質の被膜が使用できる。また、被膜中に
ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ等の繊維およ
び/または粉末を配合して、被膜の硬度を上げることも
できる。更には、締結トルク低減の観点から、固体粉末
潤滑剤 (二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒
鉛、雲母、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレン、メ
ラミンシアヌレートなど) を添加することもできる。こ
の場合でも、このような粉末潤滑剤を含有する被膜のロ
ックウェル硬度がM47以上でなければならない。
度と付着強度を有し、かつ潤滑性を付与できる被膜であ
れば、特に制限されない。例えば、ガラス質、有機樹脂
質、無機高分子質の被膜が使用できる。また、被膜中に
ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ等の繊維およ
び/または粉末を配合して、被膜の硬度を上げることも
できる。更には、締結トルク低減の観点から、固体粉末
潤滑剤 (二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒
鉛、雲母、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレン、メ
ラミンシアヌレートなど) を添加することもできる。こ
の場合でも、このような粉末潤滑剤を含有する被膜のロ
ックウェル硬度がM47以上でなければならない。
【0044】固体潤滑被膜を形成するガラスとしては、
ホウケイ酸ガラス、ケイ酸ガラス、パイレックス(登録
商標)ガラス、水ガラスを塗布して乾燥させたものな
ど、公知のものが用いられる。水ガラス以外のガラス質
被膜は、ガラス粉末を含有する塗布液を塗布した後、ガ
ラスが溶融する温度に加熱することにより形成すること
ができる。
ホウケイ酸ガラス、ケイ酸ガラス、パイレックス(登録
商標)ガラス、水ガラスを塗布して乾燥させたものな
ど、公知のものが用いられる。水ガラス以外のガラス質
被膜は、ガラス粉末を含有する塗布液を塗布した後、ガ
ラスが溶融する温度に加熱することにより形成すること
ができる。
【0045】有機樹脂としては、高硬度の被膜を形成で
きれば、熱可塑性と熱硬化性のいずれでもよい。例え
ば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリスチ
レン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、フラン樹
脂、ウレア樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが使用
できる。
きれば、熱可塑性と熱硬化性のいずれでもよい。例え
ば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリスチ
レン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、フラン樹
脂、ウレア樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが使用
できる。
【0046】無機高分子としては、ゾルゲル法により形
成可能な被膜、例えば、Si−O またはTi−O が三次元架
橋した構造を骨格とする被膜が挙げられる。この種の被
膜は、例えば、金属アルコキシド (例、エチルシリケー
ト<テトラエトキシシラン>、チタンイソプロポキシド
等) またはその部分加水分解物の溶液またはゾルを用い
て塗布と乾燥により形成することができる。金属アルコ
キシドは、加水分解および重縮合を経て、M−O (Mは
金属) を骨格とする無機高分子となる。なお、全ての有
機基が加水分解性である金属アルコキシドの代わりに、
例えば、シランカップリング剤といった一部の有機基が
非加水分解性の金属化合物を使用して、部分的に有機基
が残留したM−O骨格の被膜を形成することも可能であ
る。
成可能な被膜、例えば、Si−O またはTi−O が三次元架
橋した構造を骨格とする被膜が挙げられる。この種の被
膜は、例えば、金属アルコキシド (例、エチルシリケー
ト<テトラエトキシシラン>、チタンイソプロポキシド
等) またはその部分加水分解物の溶液またはゾルを用い
て塗布と乾燥により形成することができる。金属アルコ
キシドは、加水分解および重縮合を経て、M−O (Mは
金属) を骨格とする無機高分子となる。なお、全ての有
機基が加水分解性である金属アルコキシドの代わりに、
例えば、シランカップリング剤といった一部の有機基が
非加水分解性の金属化合物を使用して、部分的に有機基
が残留したM−O骨格の被膜を形成することも可能であ
る。
【0047】有機樹脂からなる固体潤滑被膜の硬度を高
めるには、塗布後の樹脂の乾燥または熱硬化の際の加熱
温度を高めたり、あるいは架橋剤または架橋点を増大さ
せることが有効である。ガラス質の固体潤滑被膜は、ガ
ラス組成のSiO2比率を高めることにより、被膜硬度を高
めることができる。無機高分子からなる被膜は、塗布後
の乾燥温度を高めるなどして、縮合度を高めることによ
り被膜硬度を増大させることができる。
めるには、塗布後の樹脂の乾燥または熱硬化の際の加熱
温度を高めたり、あるいは架橋剤または架橋点を増大さ
せることが有効である。ガラス質の固体潤滑被膜は、ガ
ラス組成のSiO2比率を高めることにより、被膜硬度を高
めることができる。無機高分子からなる被膜は、塗布後
の乾燥温度を高めるなどして、縮合度を高めることによ
り被膜硬度を増大させることができる。
【0048】固体潤滑被膜を形成する母材 (ネジ継手の
接触表面) への被膜の付着強度の増大、耐焼付き性の向
上、表面粗さの調整などを目的として、母材の表面に下
地処理を施すことができる。
接触表面) への被膜の付着強度の増大、耐焼付き性の向
上、表面粗さの調整などを目的として、母材の表面に下
地処理を施すことができる。
【0049】下地処理としては、軽微な酸洗処理、サン
ドブラスト、窒化、リン酸マンガンやリン酸亜鉛などの
リン酸塩処理、クロムメッキ、銅メッキ、CVD法など
によるチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物での被覆、グ
ラスピーニング、亜鉛ブラストなどが使用できる。これ
らの2種以上の処理を組合わせてもよい。
ドブラスト、窒化、リン酸マンガンやリン酸亜鉛などの
リン酸塩処理、クロムメッキ、銅メッキ、CVD法など
によるチタンの炭化物、窒化物、炭窒化物での被覆、グ
ラスピーニング、亜鉛ブラストなどが使用できる。これ
らの2種以上の処理を組合わせてもよい。
【0050】例えば、下地処理として、母材表面の不活
性な酸化膜を除去することができる酸洗またはサンドブ
ラスト等を実施して活性な表面を露出させ、その処理か
らすぐに固体潤滑被膜を形成すると、付着強度が改善す
る。下地処理から皮膜形成までの時間的な間隔は短いほ
どよいが、1時間程度までなら、付着強度の改善効果が
認められる。
性な酸化膜を除去することができる酸洗またはサンドブ
ラスト等を実施して活性な表面を露出させ、その処理か
らすぐに固体潤滑被膜を形成すると、付着強度が改善す
る。下地処理から皮膜形成までの時間的な間隔は短いほ
どよいが、1時間程度までなら、付着強度の改善効果が
認められる。
【0051】母材との固体潤滑被膜の付着強度を高める
別の方法として、被膜の形成を2段階に分けて行い、最
初の塗布量を極力薄くする方法がある。これは塗布され
た被膜が固化する過程で歪みを生じて母材から部分的に
剥離するのを抑制するためである。この部分剥離は被膜
厚さが薄いほど生じにくいので、まず薄塗りをして、部
分剥離を防止する。その上に、必要量の被膜を再度塗布
すると、部分剥離のない被膜を形成でき、付着強度が向
上する。
別の方法として、被膜の形成を2段階に分けて行い、最
初の塗布量を極力薄くする方法がある。これは塗布され
た被膜が固化する過程で歪みを生じて母材から部分的に
剥離するのを抑制するためである。この部分剥離は被膜
厚さが薄いほど生じにくいので、まず薄塗りをして、部
分剥離を防止する。その上に、必要量の被膜を再度塗布
すると、部分剥離のない被膜を形成でき、付着強度が向
上する。
【0052】また、有機樹脂質の被膜では、−OH、−
COO−、−NH−などの親水基を有したものは付着強
度が高い。シランカップリング剤についても同じことが
いえる。
COO−、−NH−などの親水基を有したものは付着強
度が高い。シランカップリング剤についても同じことが
いえる。
【0053】固体潤滑被膜の付着量または膜厚は特に制
限されるものではない。しかし、薄すぎると、潤滑性が
低下することがあり、また締付け・緩戻しの繰り返しに
よる摩耗で被膜切れを起こすことがあるので、そのよう
なことがないように十分な厚みとする。従って、被膜硬
度が高いほど、必要な厚みは小さくてすむ。一般に、固
体潤滑被膜は、母材の表面粗さの凹部を埋めるのに十分
な厚さとする。目安として、固体潤滑被膜の厚みは一般
に5〜80μmの範囲内であろう。
限されるものではない。しかし、薄すぎると、潤滑性が
低下することがあり、また締付け・緩戻しの繰り返しに
よる摩耗で被膜切れを起こすことがあるので、そのよう
なことがないように十分な厚みとする。従って、被膜硬
度が高いほど、必要な厚みは小さくてすむ。一般に、固
体潤滑被膜は、母材の表面粗さの凹部を埋めるのに十分
な厚さとする。目安として、固体潤滑被膜の厚みは一般
に5〜80μmの範囲内であろう。
【0054】固体潤滑被膜を形成した部材および/また
は形成しない部材の金属接触部の上に油を塗布する場
合、塗布する油に特に制限はなく、鉱物油、合成エステ
ル油、動植物油などのいずれも使用できる。この油に
は、防錆添加剤、極圧添加剤といった、潤滑油に慣用の
各種添加剤を添加することができる。また、それらの添
加剤が液体である場合、それらの添加剤を単独で油とし
て使用し、塗布することもできる。
は形成しない部材の金属接触部の上に油を塗布する場
合、塗布する油に特に制限はなく、鉱物油、合成エステ
ル油、動植物油などのいずれも使用できる。この油に
は、防錆添加剤、極圧添加剤といった、潤滑油に慣用の
各種添加剤を添加することができる。また、それらの添
加剤が液体である場合、それらの添加剤を単独で油とし
て使用し、塗布することもできる。
【0055】防錆添加剤としては、塩基性金属スルホネ
ート、塩基性金属フェネート、塩基性金属カルボキシレ
ートなどが用いられる。極圧添加剤としては、硫黄系、
リン系、塩素系、有機金属塩など公知のものが使用でき
る。その他、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上
剤なども油に添加することができる。
ート、塩基性金属フェネート、塩基性金属カルボキシレ
ートなどが用いられる。極圧添加剤としては、硫黄系、
リン系、塩素系、有機金属塩など公知のものが使用でき
る。その他、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上
剤なども油に添加することができる。
【0056】
【実施例】ネジ部とネジ無し金属接触部とを有するピン
(油井管端部) とボックス (継手部材) からなる7イン
チサイズのネジ継手を用いて、締付け・緩戻しの試験を
行った。使用したネジ継手は、ピンとボックスのいずれ
も、高合金鋼である13Cr鋼製であった。
(油井管端部) とボックス (継手部材) からなる7イン
チサイズのネジ継手を用いて、締付け・緩戻しの試験を
行った。使用したネジ継手は、ピンとボックスのいずれ
も、高合金鋼である13Cr鋼製であった。
【0057】ピンとボックスの少なくとも一方の接触表
面 (ネジ部と金属接触部の表面) に、下地処理として硫
酸酸洗を施した後、30分以内に、表2に示す固体潤滑被
膜を形成した。被膜の膜厚は約30μmであった。被膜は
いずれも塗布液の塗布と加熱により形成した。加熱温度
は、No. 18のガラス被膜は加熱温度が600 ℃と高かった
が、その他の被膜の加熱温度は 220〜230 ℃の範囲であ
った。
面 (ネジ部と金属接触部の表面) に、下地処理として硫
酸酸洗を施した後、30分以内に、表2に示す固体潤滑被
膜を形成した。被膜の膜厚は約30μmであった。被膜は
いずれも塗布液の塗布と加熱により形成した。加熱温度
は、No. 18のガラス被膜は加熱温度が600 ℃と高かった
が、その他の被膜の加熱温度は 220〜230 ℃の範囲であ
った。
【0058】固体潤滑被膜を形成しなかった部材につい
ては、その最大表面粗さを、粗度として表2に示す。一
部の例では、固体潤滑被膜を形成しなかった部材の金属
接触部の鋼表面および/または固体潤滑被膜を形成した
部材の金属接触部の被膜表面に油を塗布した。使用した
油は精製鉱物油 (40℃の粘度が50 cSt) であった。
ては、その最大表面粗さを、粗度として表2に示す。一
部の例では、固体潤滑被膜を形成しなかった部材の金属
接触部の鋼表面および/または固体潤滑被膜を形成した
部材の金属接触部の被膜表面に油を塗布した。使用した
油は精製鉱物油 (40℃の粘度が50 cSt) であった。
【0059】表2に示すように処理したピンとボックス
を用いて、回転速度20 rpm、締付けトルク20000 ft・lb
s で室温での締付け・緩戻しを繰り返して、焼付きが発
生するまでの締付け・緩戻し回数を表2に示した。前述
したAPIがチュービングに対して要求する締付け・緩
戻し回数を考慮して、焼付き発生までに10回以上の締付
け・緩戻しが可能である場合を合格と判定した。
を用いて、回転速度20 rpm、締付けトルク20000 ft・lb
s で室温での締付け・緩戻しを繰り返して、焼付きが発
生するまでの締付け・緩戻し回数を表2に示した。前述
したAPIがチュービングに対して要求する締付け・緩
戻し回数を考慮して、焼付き発生までに10回以上の締付
け・緩戻しが可能である場合を合格と判定した。
【0060】別に、ネジ継手に形成したのと同じ固体潤
滑被膜を、ネジ継手と同じ13Cr鋼の鋼板上にも形成し
た。この鋼板上に形成した固体潤滑被膜を用いて、被膜
のロックウェル硬度とSAICAS法による付着強度を測定し
た。ロックウェル硬度の測定は前述した通りに行った。
被膜の付着強度の測定には、ダイプラ・ウィンテス社製
SAICAS BN-1 を使用した。これらの測定結果も表2に併
せて示す。
滑被膜を、ネジ継手と同じ13Cr鋼の鋼板上にも形成し
た。この鋼板上に形成した固体潤滑被膜を用いて、被膜
のロックウェル硬度とSAICAS法による付着強度を測定し
た。ロックウェル硬度の測定は前述した通りに行った。
被膜の付着強度の測定には、ダイプラ・ウィンテス社製
SAICAS BN-1 を使用した。これらの測定結果も表2に併
せて示す。
【0061】
【表2】
【0062】表2からわかるように、固体潤滑被膜のロ
ックウェル硬度がM47以上であると、被膜の種類に関係
なく、10回の締付け・緩戻しでは焼付きを生じない。ま
た、油を塗布することによって、固体潤滑被膜の摩耗が
抑制され、締付け・緩戻しの回数が増大した。
ックウェル硬度がM47以上であると、被膜の種類に関係
なく、10回の締付け・緩戻しでは焼付きを生じない。ま
た、油を塗布することによって、固体潤滑被膜の摩耗が
抑制され、締付け・緩戻しの回数が増大した。
【0063】参考のために、上記と同じピンおよびボッ
クスを、市販のコンパウンドグリスを塗布して、上記条
件下で締付け・緩戻しを繰り返した場合の焼付きまでの
回数は 回であった。従って、本発明によりコンパウン
ドグリスに匹敵する耐焼付き性を達成することができ
る。
クスを、市販のコンパウンドグリスを塗布して、上記条
件下で締付け・緩戻しを繰り返した場合の焼付きまでの
回数は 回であった。従って、本発明によりコンパウン
ドグリスに匹敵する耐焼付き性を達成することができ
る。
【0064】一方、ロックウェル硬度がM47より小さい
比較例の固体潤滑被膜では、10回に到る前に焼付きを生
じた。
比較例の固体潤滑被膜では、10回に到る前に焼付きを生
じた。
【0065】
【発明の効果】本発明により、高合金の継手、内径の大
きな油井管、或いはネジ部の干渉量を高くしてシール性
を高めた継手といったネジ継手であっても、固体潤滑被
膜の形成によって、焼付きを発生させずに10回以上の締
付け・緩戻しを繰り返すことが可能となり、コンパウン
ドグリスを塗布した場合と同様の結果を得ることができ
るようになる。その結果、この種の焼付きが起こり易い
種類の油井管用ネジ継手についても、コンパウンドグリ
スを塗布せずに使用することができるようになり、コン
パウンドグリスによる環境および作業効率の面での問題
が解消される。
きな油井管、或いはネジ部の干渉量を高くしてシール性
を高めた継手といったネジ継手であっても、固体潤滑被
膜の形成によって、焼付きを発生させずに10回以上の締
付け・緩戻しを繰り返すことが可能となり、コンパウン
ドグリスを塗布した場合と同様の結果を得ることができ
るようになる。その結果、この種の焼付きが起こり易い
種類の油井管用ネジ継手についても、コンパウンドグリ
スを塗布せずに使用することができるようになり、コン
パウンドグリスによる環境および作業効率の面での問題
が解消される。
【図1】出荷時の油井管とネジ継手部材の組立構成を模
式的に示す説明図である。
式的に示す説明図である。
【図2】油井管用ネジ継手の締付け部を模式的に示す説
明図である。
明図である。
【図3】固体潤滑被膜のロックウェル硬度と摩耗量との
関係を示すグラフである。
関係を示すグラフである。
【図4】摩耗試験の試験前と試験中の状況を示す説明図
である。
である。
A:鋼管、B:ネジ継手部材、 1:ピン、2:ボックス、 3:ネジ部、4:ネジ無し金属接触部、 5:ショルダー部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安楽 敏朗 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 永作 重夫 兵庫県尼崎市扶桑町1番8号 住友金属テ クノロジー株式会社内 Fターム(参考) 3H013 JA04
Claims (6)
- 【請求項1】 ネジ部とネジ無し金属接触部とからなる
接触表面をそれぞれ有するピンとボックスとから構成さ
れる油井管用ネジ継手において、ボツクスとピンの少な
くとも一方の接触表面に、ロックウェル硬度がM47以上
の固体潤滑被膜が形成されていることを特徴とする、油
井管用ネジ継手。 - 【請求項2】 前記固体潤滑被膜のSAICAS法 (表面−界
面切削法) で求めた付着強度が500 N/m 以上である、請
求項1記載の油井管用ネジ継手。 - 【請求項3】 前記固体潤滑被膜が、ピンとボックスの
一方の接触表面だけに形成されている、請求項1または
2記載の油井管ネジ継手。 - 【請求項4】 前記固体潤滑被膜が形成されない他方の
ピンまたはボックスの少なくともネジ無し金属接触部の
表面の最大粗さ(Rmax)が40μm以下である、請求項3記
載の油井管用ネジ継手。 - 【請求項5】 前記固体潤滑被膜が形成されたピンもし
くはボックスの少なくともネジ無し金属接触部の固体潤
滑被膜表面、ならびに/または前記固体潤滑被膜が形成
されない他方のピンもしくはボックスの少なくともネジ
無し金属接触部の金属表面、に油が塗布されている、請
求項3または4記載の油井管用ネジ継手。 - 【請求項6】 前記固体潤滑被膜がピンとボックスの両
方の接触表面に形成され、かつピンとボックスの少なく
とも一方の少なくともネジ無し金属接触部の固体潤滑被
膜表面に油が塗布されている、請求項1または2記載の
油井管用ネジ継手。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001052455A JP2002257270A (ja) | 2001-02-27 | 2001-02-27 | 油井管用ネジ継手 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001052455A JP2002257270A (ja) | 2001-02-27 | 2001-02-27 | 油井管用ネジ継手 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002257270A true JP2002257270A (ja) | 2002-09-11 |
Family
ID=18913085
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001052455A Pending JP2002257270A (ja) | 2001-02-27 | 2001-02-27 | 油井管用ネジ継手 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002257270A (ja) |
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004286155A (ja) * | 2003-03-24 | 2004-10-14 | Tsubaki Emerson Co | 軸と回転体を締結する摩擦式締結具 |
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JP2007198544A (ja) * | 2006-01-27 | 2007-08-09 | Toyota Motor Corp | マグネシウム合金の締結構造 |
JP2008185502A (ja) * | 2007-01-31 | 2008-08-14 | Sekisui House Ltd | 塗装鋼板の複合劣化試験方法 |
JP2010511135A (ja) * | 2006-12-01 | 2010-04-08 | テナリス・コネクシヨンズ・アクチエンゲゼルシヤフト | ねじ込み連結部用のナノ複合コーティング |
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-
2001
- 2001-02-27 JP JP2001052455A patent/JP2002257270A/ja active Pending
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A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050701 |
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050719 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050920 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20051101 |