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JP2002126626A - 多層塗膜形成方法及び多層塗膜並びに水性中塗り塗料組成物 - Google Patents

多層塗膜形成方法及び多層塗膜並びに水性中塗り塗料組成物

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Publication number
JP2002126626A
JP2002126626A JP2000326507A JP2000326507A JP2002126626A JP 2002126626 A JP2002126626 A JP 2002126626A JP 2000326507 A JP2000326507 A JP 2000326507A JP 2000326507 A JP2000326507 A JP 2000326507A JP 2002126626 A JP2002126626 A JP 2002126626A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating film
coating
film
forming
parts
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000326507A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Kuniyoshi
隆 国吉
Teruzo Azumai
輝三 東井
Senso Yabushita
千聡 薮下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Paint Co Ltd filed Critical Nippon Paint Co Ltd
Priority to JP2000326507A priority Critical patent/JP2002126626A/ja
Publication of JP2002126626A publication Critical patent/JP2002126626A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塗装工程短縮、コスト削減及び環境負荷低減
を目指す3ウエット1ベーク塗装方法において、従来の
3コート膜に匹敵する優れた耐衝撃性、特に耐チッピン
グ性を有する多層塗膜を形成することができる多層塗膜
形成方法を提供する。 【解決手段】 電着塗膜が形成された被塗装物上に、水
性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成する
工程(1)、上記中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料を
塗布して未硬化のベース塗膜を形成する工程(2)、更
にその上に、クリヤー塗料を塗布して未硬化のクリヤー
塗膜を形成する工程(3)、並びに、上記中塗り塗膜、
上記ベース塗膜及び上記クリヤー塗膜を同時に加熱硬化
させて、多層塗膜を得る工程(4)を含む多層塗膜形成
方法であって、上記水性中塗り塗料は、エラストマーを
含むものであることを特徴とする多層塗膜形成方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電着塗膜が形成さ
れた被塗装物上に、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及
びクリヤー塗料をウエットオンウエットで塗装して、一
度に加熱硬化を行う3ウエット塗装系を利用する多層塗
膜形成方法に関するものであり、更に詳細には、優れた
耐チッピング性を有する多層塗膜を得ることができる多
層塗膜形成方法、及び、これにより得られる多層塗膜、
並びに、上記多層塗膜形成方法に好適に用いることがで
きる水性中塗り塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、塗料分野、特に自動車塗装分野に
おいて、省資源、省コスト及び環境負荷(VOC及びH
APs等)削減の課題を解決するため、塗装工程の短縮
化が強く求められている。即ち、従来の自動車塗装仕上
げ手順においては、電着塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗
膜がそれぞれの塗装後に焼付けされる3コート3ベーク
塗装方法によって行われていたが、近年、電着塗装後に
電着塗膜を焼付けた後、その上に、中塗り塗装、ベース
塗装及びクリヤー塗装の3つの塗装工程をウエットオン
ウエットで施し、これらウエット塗膜の一括した焼付け
を行う3ウエット塗装システムにより焼付け工程数を削
減し、しかも、従来の3コート3ベーク塗装方法により
得られる3コート膜と同等の塗膜性能を保持することが
求められている。
【0003】上記塗膜性能のなかでも、耐衝撃性、特に
走行中の自動車車体への小石等の障害物の衝突によるい
わゆる耐チッピング性に関しては、従来の3コート3ベ
ーク塗装方法では、耐チッピング性を有する特有の中塗
り塗膜を設けること等により、耐チッピング性を確保す
ることができたが、上記の3ウエット塗装システムにお
いて従来の中塗り塗料を使用すると、得られる塗膜にな
じみ、反転等の不具合が発生して外観が劣ることとなる
ため使用することができず、3ウエット塗装システムに
より得られる塗膜は、耐衝撃性及び耐チッピング性が低
いという欠点があった。
【0004】特開昭62−65765号公報には、塗膜
に対する衝撃吸収能を有する樹脂層(いわゆる耐チッピ
ングプライマー層)を多層膜形成の途中、とりわけ電着
塗膜と中塗り塗膜の中間において施すことが開示されて
いる。しかしながら、そのような工程を自動車車体の塗
装工程中に更に組み入れることは、上記の省工程及び省
コストを求める市場ニーズにはそぐわない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、塗装
工程短縮、コスト削減及び環境負荷低減を目指す3ウエ
ット1ベーク塗装方法において、従来の3コート膜に匹
敵する優れた耐衝撃性、特に耐チッピング性を有する多
層塗膜を形成することができる多層塗膜形成方法を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、電着塗膜が形
成された被塗装物上に、水性中塗り塗料を塗布して未硬
化の中塗り塗膜を形成する工程(1)、上記中塗り塗膜
の上に、水性ベース塗料を塗布して未硬化のベース塗膜
を形成する工程(2)、更にその上に、クリヤー塗料を
塗布して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程(3)、
並びに、上記中塗り塗膜、上記ベース塗膜及び上記クリ
ヤー塗膜を同時に加熱硬化させて、多層塗膜を得る工程
(4)を含む多層塗膜形成方法であって、上記水性中塗
り塗料は、エラストマーを含むものであることを特徴と
する多層塗膜形成方法である。
【0007】本発明はまた、上記多層塗膜形成方法によ
り形成されてなる多層塗膜である。本発明は更に、エラ
ストマーを含むことを特徴とする水性中塗り塗料組成物
でもある。以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0008】本発明の多層塗膜形成方法は、電着塗膜が
形成された被塗装物上に、水性中塗り塗料を塗布して未
硬化の中塗り塗膜を形成する工程(1)、上記中塗り塗
膜の上に、水性ベース塗料を塗布して未硬化のベース塗
膜を形成する工程(2)、更にその上に、クリヤー塗料
を塗布して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
(3)、並びに、上記中塗り塗膜、上記ベース塗膜及び
上記クリヤー塗膜を同時に加熱硬化させて、多層塗膜を
得る工程(4)を含むものである。
【0009】工程(1) 本発明の多層塗膜形成方法において、上記工程(1)
は、電着塗膜が形成された被塗装物上に、水性中塗り塗
料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成するものであ
る。
【0010】水性中塗り塗料 上記水性中塗り塗料は、エラストマーを含むものであ
る。上記エラストマーを含むことによって、得られる中
塗り塗膜に柔軟性を付与し、耐衝撃性及び耐チッピング
性を向上することができる。
【0011】上記エラストマーは、その設計ガラス転移
温度が−110〜10℃であるものが好ましい。10℃
を超えると、得られる塗膜の柔軟性や耐衝撃性に劣るこ
ととなり、−110℃未満のものは実際には調製が困難
である。より好ましくは、−100〜−10℃である。
上記設計ガラス転移温度は、上記エラストマーを製造す
る際の原料の配合量から計算によって求めることができ
る。
【0012】上記エラストマーとしては特に限定され
ず、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等
の共役ジエン系単量体のホモポリマー、又は、共役ジエ
ン系単量体とエチレン、プロピレン、エチリデン、ノル
ボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエ
ン、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニト
リル、イソブチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)
等の単量体とのランダム若しくはブロックコポリマー;
ジイソシアネートとジオールとの重付加反応によって合
成されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー;テレフ
タル酸ジメチル、1,4−ブタンジオール、ポリ(テト
ラメチレン)グリコール等を原料としエステル交換反応
及び重縮合反応によって合成されるポリエステル系熱可
塑性エラストマー;ラクタム、ジカルボン酸、ポリエー
テルジオールを原料とし、エステル交換及び重縮合反応
によって合成されるポリアミド系熱可塑性エラストマー
等を挙げることができる。
【0013】上記エラストマーには、分子構造の途中及
び/又は末端に、水酸基、アミノ基、ビニル基、カルボ
キシル基、ウレタン基、ウレア基等の反応性基や極性基
を含んでいてもよい。上記反応性基や極性基は、上記エ
ラストマーを調製する際に反応性基や極性基を有する単
量体を含む単量体成分を共重合するか、又は、共重合し
て得られたエラストマーに対して公知の方法により導入
することができる。
【0014】上記エラストマーが数平均分子量1万未満
のオリゴマー(液状ゴム)である場合には、粘着性が高
く、そのままでは耐衝撃性能が低いので、耐衝撃性等の
塗膜性能を発現させるために塗膜形成時に硬化反応を行
わせしめる必要がある。この場合、ヒドロキシル価が2
0〜200の範囲となるように水酸基を含有することが
好ましい。ヒドロキシル価が20未満では塗膜の硬化不
良を招き、充分な伸び率等のゴム性能が発現しない。2
00を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する
結果、耐水性が低下することがある。更に、硬化塗膜の
硬度が上昇する結果、充分な伸び率が発現しない。
【0015】上記エラストマーが数平均分子量1万以上
の高分子量である場合、硬化させなくても粘着性が少な
く、充分に耐衝撃性能を示すものであれば、塗膜形成に
おいて特に硬化反応させる必要は無い。上記の場合は、
予め樹脂構造中に反応性基及び極性基を付与しておく必
要は無い。
【0016】上記エラストマーは、水分散化されたもの
であるか、又は、水溶性のものを使用することによっ
て、上記水性中塗り塗料中に安定に存在せしめることが
できる。
【0017】上記水分散化の方法としては、例えば、別
途、分散樹脂、界面活性剤等の分散剤を適用して水性媒
体中に乳化分散することができる。又は、エラストマー
に上記反応性基及び極性基等の官能基を導入した上で、
そのままか、又は、中和剤によって水性媒体中に自己乳
化分散可能な形態とすることによって行うことも可能で
ある。
【0018】上記中和剤としては、上記官能基がアミン
等のカチオン性基である場合には、塩酸、硝酸、リン酸
等の無機酸;蟻酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセ
チルグリシン酸等の有機酸を挙げることができる。一
方、上記官能基がカルボキシル基等のアニオン性基であ
る場合には、アンモニア等の無機塩基;メチルアミン、
ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールア
ミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミ
ン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノー
ルアミン酸塩、モルホリン、ピペラジン等の1級、2級
又は3級アミン酸塩等の有機塩基を挙げることができ
る。上記分散樹脂及び界面活性剤としては、分散剤とし
て従来使用されているものを使用することができる。
【0019】上記水性中塗り塗料は、得られる塗膜の物
性を調節するために、上記エラストマーのほかに、その
他の塗膜形成性樹脂を含むものであってもよい。上記そ
の他の塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例え
ば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、
エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。顔料分散
性や作業性の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエス
テル樹脂が好ましい。
【0020】上記その他の塗膜形成性樹脂は、固形分酸
価が20〜100mgKOH/gであることが好まし
い。20mgKOH/g未満であると、塗膜の硬化不良
を招くことがある。100mgKOH/gを超えると、
得られる塗膜の耐水性に劣る。好ましくは、30〜80
mgKOH/gである。
【0021】上記その他の塗膜形成性樹脂は、水酸基価
が30〜150の範囲であることが好ましい。30未満
であると、塗膜の硬化不良を招き、150を超えると、
硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する結果、耐水性が
低下することがある。
【0022】更に、数平均分子量は1000〜3000
0の範囲が好ましい。1000未満では、硬化形成塗膜
の耐溶剤性等の物性が劣る。30000を超えると、樹
脂溶液の粘度が高いため、得られた樹脂の乳化分散等の
操作上ハンドリングが困難なばかりか、得られた中塗り
塗膜の膜外観が著しく低下してしまうことがある。好ま
しくは、2000〜20000である。
【0023】上記エラストマー及びその他の塗膜形成性
樹脂はそれぞれ、1種のみ使用することもできるが、塗
膜性能のバランス化を計るために、2種又はそれ以上の
種類を使用することもできる。
【0024】上記水性中塗り塗料は、塗膜形成時に上記
エラストマーを硬化させる必要がある場合や上記その他
の塗膜形成性樹脂を使用する場合等には、通常、硬化剤
を含むものである。上記硬化剤としては特に限定され
ず、例えば、アミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネ
ート樹脂等等を挙げることができる。顔料分散性や作業
性の点から、メラミン樹脂が好ましい。
【0025】上記水性中塗り塗料中の樹脂固形分に対す
る上記エラストマーの含有量は、固形分基準で20〜1
00重量%であることが好ましい。20重量%未満であ
ると、得られる塗膜の柔軟性及び耐チッピング性が低下
する。より好ましくは、30〜100重量%である。上
記樹脂固形分とは、エラストマー、並びに、所望により
添加されるその他の塗膜形成性樹脂及び硬化剤の合計の
固形分である。
【0026】上記水性中塗り塗料は、通常、顔料を含む
ものである。上記水性中塗り塗料においては、耐候性を
向上させ、かつ隠蔽性を確保する点から、着色顔料であ
ることが好ましい。特に二酸化チタンは白色の着色隠蔽
性に優れ、しかも安価であることから、より好ましい。
上記顔料としては、二酸化チタン以外に、塗料調製の目
的に合わせて酸化鉄、カーボンブラック等のような無機
顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリー
ン、カルバゾールバイオレット、アントラピリミジンイ
エロー、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエ
ロー、インダンスロンブルー、キナクリドンバイオレッ
ト等のような有機顔料の適量;その他必要に応じてクレ
ー、タルク、カオリン、硫酸バリウム等の体質顔料を配
合することもできる。
【0027】上記顔料としてカーボンブラックと二酸化
チタンを主要顔料とした標準的なグレー系水性中塗り塗
料とすることもできるし、上塗り塗料と明度又は色相等
を合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせ
たいわゆるカラー水性中塗り塗料とすることもできる。
【0028】上記顔料は、上記水性中塗り塗料中におい
て、顔料及び樹脂固形分の合計重量に対する顔料の重量
の比(PWC)が、10〜60重量%であることが好ま
しい。10重量%未満では、顔料不足のために隠蔽性が
低下するおそれがある。60重量%を超えると、顔料過
多により硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して
塗膜外観が低下することがある。上記顔料は、一般的に
用いられている顔料分散樹脂で予め分散を行い、顔料分
散ペーストを調整した後、水性中塗り塗料の調製に際し
て適当量を配合することができる。
【0029】上記水性中塗り塗料は、上記顔料分散ペー
ストと、上記エラストマー及び硬化剤とを混合して調製
することができる。更に、紫外線吸収剤;酸化防止剤;
消泡剤;表面調整剤;ワキ防止剤等の添加剤成分を添加
することができる。
【0030】中塗り塗膜形成方法 上記水性中塗り塗料は、上記電着塗膜が形成された被塗
装物上に塗布され、未硬化の中塗り塗膜が形成される。
上記電着塗膜を形成させる電着塗料としては、カチオン
型及びアニオン型のものを用いることができる。防食性
に優れた塗膜を得ることができる点より、カチオン型の
ものが好ましい。
【0031】電着塗装を行う素材としては特に限定され
ず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等;こ
れらの金属を含む合金及び鋳造物が挙げられる。具体的
には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車
車体及び部品が挙げられる。これらの金属は、電着塗装
が行われる前に、予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処
理されたものが特に好ましい。
【0032】上記水性中塗り塗料の塗装方法としては特
に限定されず、例えば、通称「リアクトガン」と言われ
るエアー静電スプレー;通称「マイクロ・マイクロ(μ
μ)ベル」、「マイクロ(μ)ベル」、「メタベル」等
と言われる回転霧化式の静電塗装機等を用いることによ
り行うことができる。好ましくは、回転霧化式の静電塗
装機等を用いる方法である。
【0033】上記中塗り塗膜の乾燥膜厚は、用途により
変化するが、5〜50μmであることが好ましい。上限
を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にタレや焼付
け硬化時にワキ等の不具合が起こることがあり、下限を
下回ると、外観が低下するおそれがある。
【0034】本発明において、水性中塗り塗料、水性ベ
ース塗料及びクリヤー塗料について、未硬化で塗膜を形
成するとは、中塗り塗料、ベース塗料及びクリヤー塗料
をウエット・オン・ウエットでこの順番に塗装すること
を意味するものである。本明細書において未硬化とは、
例えば、プレヒートを行った後の状態を含む概念であ
る。上記プレヒートとしては、塗布した後に、例えば、
室温〜100℃未満で1〜10分間放置又は加熱する工
程である。良好な仕上がり外観を得ることを目的とし
て、水性中塗り塗料を塗布した後及び水性ベース塗料を
塗布した後にプレヒートを行うことが好ましい。
【0035】工程(2) 上記工程(2)は、上述のようにして形成された未硬化
の中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料を塗布して未硬化
のベース塗膜を形成するものである。
【0036】水性ベース塗料 本発明において、水性ベース塗料としては特に限定され
ず、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、顔料及びその他
の添加剤からなるものを挙げることができる。上記塗膜
形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル
樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹
脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらはアミノ樹脂及
び/又はブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み
合わせて用いられる。顔料分散性や作業性の点から、ア
クリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂とメラミン樹脂
との組み合わせが好ましい。
【0037】上記水性ベース塗料は、光輝性顔料を配合
してメタリックベース塗料として用いることもできる
し、光輝性顔料を配合せずにレッド、ブルーあるいはブ
ラック等の着色顔料及び/又は体質顔料を配合してソリ
ッド型ベース塗料として用いることもできる。上記光輝
性顔料としては特に限定されず、例えば、金属又は合金
等の無着色若しくは着色された金属性光輝材及びその混
合物、干渉マイカ粉、着色マイカ粉、ホワイトマイカ
粉、グラファイト又は無色有色偏平顔料等を挙げること
ができる。分散性に優れ、透明感の高い塗膜を形成する
ことができるため、金属又は合金等の無着色若しくは着
色された金属性光輝材及びその混合物が好ましい。その
金属の具体例としては、アルミニウム、酸化アルミニウ
ム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ等を挙げることがで
きる。
【0038】上記光輝性顔料の形状は特に限定されず、
更に、着色されていてもよいが、例えば平均粒径
(D50)が2〜50μmであり、厚さが0.1〜5μm
である鱗片状のものが好ましい。平均粒径10〜35μ
mの範囲のものが光輝感に優れ、より好ましい。上記光
輝性顔料のベース塗料中の顔料濃度(PWC)は、一般
に23重量%以下である。23重量%を超えると、塗膜
外観が低下する。好ましくは、0.01〜20重量%で
あり、より好ましくは、0.01〜18重量%である。
【0039】上記光輝性顔料以外の顔料としては、上記
水性中塗り塗料において記載した着色顔料、体質顔料を
用いることができる。上記顔料としては、光輝性顔料、
着色顔料及び体質顔料のなかから、1種又は2種以上を
組み合わせて用いることができる。上記光輝性顔料及び
その他の全ての顔料を含めたベース塗料中の顔料濃度
(PWC)は、一般的には0.1〜50重量%であり、
好ましくは0.5〜40重量%であり、より好ましくは
1〜30重量%である。50重量%を超えると塗膜外観
が低下する。上記ベース塗料は、用いられるその他の添
加剤、及び、ベース塗料の調製方法としては、水性中塗
り塗料において例示したものを挙げることができる。
【0040】ベース塗膜形成方法 上記ベース塗料は、上記のように形成された未硬化の中
塗り塗膜の上に、塗布して未硬化のベース塗膜を形成す
る。上記塗装方法としては、水性中塗り塗料を塗布する
際に例示した方法を挙げることができる。上記ベース塗
料を自動車車体等に対して塗装する場合には、意匠性を
高めるために、エアー静電スプレーによる多ステージ塗
装、好ましくは2ステージで塗装するか、又は、エアー
静電スプレーと上記の回転霧化式の静電塗装機とを組み
合わせた塗装方法により行うことが好ましい。
【0041】上記ベース塗膜の乾燥膜厚は、用途により
変化するが、5〜35μmであることが好ましい。上限
を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、流れ
等の不具合が起こることがあり、下限を下回ると、色ム
ラが発生するおそれがある。
【0042】工程(3) 上記工程(3)は、上記のように形成された未硬化のベ
ース塗膜の上に、クリヤー塗料を塗布して未硬化のクリ
ヤー塗膜を形成する。クリヤー塗料 クリヤー塗膜は、ベース塗料として光輝性顔料を含むメ
タリックベース塗料を用いた場合に光輝性顔料に起因す
るベース塗膜の凹凸、チカチカ等を平滑にしたり、ま
た、ベース塗膜を保護するために形成されるものであ
る。上記クリヤー塗料としては特に限定されず、例え
ば、塗膜形成性樹脂、硬化剤及びその他の添加剤からな
るものを挙げることができる。
【0043】上記塗膜形成性樹脂としては特に限定され
ず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキ
シ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらはアミノ樹
脂及び/又はブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と
組み合わせて用いられる。透明性又は耐酸エッチング性
等の点から、アクリル樹脂及び/若しくはポリエステル
樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、又は、カルボン酸・
エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/若しくはポ
リエステル樹脂等を用いることが好ましい。
【0044】上記クリヤー塗料としては、上述したベー
ス塗料を塗装後、未硬化の状態で塗装するため、層間の
なじみや反転、又は、タレ等の防止のため、粘性制御剤
を添加剤として含有することが好ましい。上記粘性制御
剤の添加量は、クリヤー塗料の樹脂固形分100重量部
に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.
02〜8重量部、より好ましくは0.03〜6重量部で
ある。10重量部を超えると、外観が低下し、0.1重
量部未満であると、粘性制御効果が得られず、タレ等の
不具合を起こす原因となる。
【0045】上記クリヤー塗料の塗料形態としては、有
機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルジョ
ン)、非水分散型、粉体型のいずれでもよく、また必要
により、硬化触媒、表面調整剤等を用いることができ
る。
【0046】クリヤー塗膜形成方法 上記クリヤー塗料の調製方法及び塗装方法としては、従
来の方法に従って行うことができる。上記クリヤー塗膜
の乾燥膜厚は、用途により変化するが、10〜70μm
である。この乾燥膜厚が上限を超えると、鮮映性が低下
したり、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こることが
あり、下限を下回ると、外観が低下するおそれがある。
【0047】工程(4) 上記工程(4)においては、上記中塗り塗膜、上記ベー
ス塗膜及び上記クリヤー塗膜を同時に加熱硬化させて、
多層塗膜を得る。上記加熱硬化させる温度としては、1
10〜180℃、好ましくは120〜160℃にて行う
ことによって、高い架橋度の硬化塗膜を得ることができ
る。180℃を超えると、塗膜が固く脆くなり、110
℃未満では硬化が充分ではない。硬化時間は硬化温度に
より変化するが、120〜160℃で10〜60分間が
適当である。
【0048】本発明の塗膜形成方法によって得られる多
層塗膜の膜厚は、通常30〜300μm、好ましくは5
0〜250μmである。300μmを超えると、冷熱サ
イクル等の膜物性が低下し、30μm未満であると、膜
自体の強度が低下する。
【0049】本発明の多層塗膜形成方法によって得られ
る多層塗膜は、中塗り塗料にエラストマーを含むもので
あるため、中塗り塗膜に柔軟性を付与することができ、
耐衝撃性及び耐チッピング性を向上することができる。
更に、本発明の3ウエット1ベーク塗装方法により、従
来一般的であった3コート2ベーク法におけるよりも、
中塗り塗料の焼き付け工程を省くことができるので、工
程短縮、コスト削減、エネルギー消費量削減及び環境負
荷低減を目指す新規塗装システムを構築することができ
る。
【0050】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細
に説明するが、本発明は以下の実施例により限定される
ものではない。なお、部及び%は、重量部及び重量%を
意味する。
【0051】製造例1 水溶性ポリエステル樹脂の製造 反応容器にイソフタル酸200.0部、無水フタル酸1
79.0部、アジピン酸176.0部、トリメチロール
プロパン150.0部、ネオペンチルグリコール29
5.0部、ジブチルスズオキサイド2部を仕込み、窒素
気流中で加熱し原料を融解させた後、混合撹拌しながら
170℃まで徐々に昇温した。その後、更に3時間かけ
て220℃まで昇温しながら、脱水エステル交換させ
た。酸価が10となったところで150℃まで冷却し
た。更に、ヘキサヒドロフタル酸114.0部を加えて
1時間反応させて反応を終了した。更に、100℃まで
冷却した後、ブチルセロソルプ112.0部を加えてポ
リエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂は、
固形分酸価50、水酸基価65、GPC(ゲルパーミエ
ーションクロマトグラフィ)によって得られた数平均分
子量が10000であった。得られた樹脂を60℃に冷
却し、ジメチルエタノールアミン80.0部及びイオン
交換水を加えて、不揮発分が50%の樹脂を得た。
【0052】製造例2 着色顔料ペースト1の製造 製造例1で得られたポリエステル樹脂を50.0部、イ
オン交換水17.9部、ルチル型二酸化チタン34.5
部、硫酸バリウム34.4部、タルク6部、カーボンブ
ラック0.1部を予備混合を行った後、ペイントコンデ
ィショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で1時間
混合分散し、粒度5μm以下の着色顔料ペースト1を得
た。
【0053】製造例3 着色顔料ペースト2の製造 市販の顔料分散剤「Disperbyk 190」(ビ
ックケミー社製)9.4部、イオン交換水36.8部、
ルチル型二酸化チタン34.5部、硫酸バリウム34.
4部、タルク6部、カーボンブラック0.1部としたこ
と以外は製造例2と同様にして、粒度5μm以下の着色
顔料ペースト2を得た。
【0054】製造例4 水性ベース塗料の調製 反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル2
3.9部及びプロピレングリコールメチルエーテル1
6.1部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら120
℃に昇温した。次いで、アクリル酸エチル54.5部、
メタクリル酸メチル12.5部、アクリル酸2−ヒドロ
キシエチル14.7部、スチレン10.0部、メタクリ
ル酸8.5部の混合溶液とジプロピレングリコールメチ
ルエーテル10.0部、t−ブチルパーオキシ−2−エ
チルヘキサノエート2.0部からなる開始剤溶液とを3
時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了
後、0.5時間同温度で熟成を行った。更に、ジプロピ
レングリコールメチルエーテル5.0部及びt−ブチル
パーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部からな
る開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下し
た。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。次い
で、脱溶剤装置により、減圧下(70Torr)110
℃で溶剤を16.1部留去した後、ジメチルエタノール
アミン及びイオン交換水を加えて、不揮発分31%、固
形分酸価56mgKOH/g、水酸基価70の水溶性ア
クリル樹脂を得た。
【0055】上記水溶性アクリル樹脂を100.0部、
イオン交換水28.9部、ジメチルアミノエタノール
0.3部、デグサカーボンFW−285(デグサAG社
製)5.1部を予備混合を行った後、ペイントコンディ
ショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で1時間混
合分散し、粒度5μm以下の着色顔料ペーストを得た。
上記着色ペーストを134.3部、水溶性アクリル樹脂
を118.8部、メラミン樹脂(サイメル204、三井
サイテック社製)29.1部、イオン交換水を161.
3部となるように配合して、水性ベース塗料を調製し
た。
【0056】実施例1 (1)水性中塗り塗料の調製 表1に示したように、エラストマー、着色顔料ペースト
1、製造例1の水溶性ポリエステル樹脂及びメラミン樹
脂(サイメル235、三井サイテック社製)を配合し
て、水性中塗り塗料を調製した。表1中、エラストマー
としては、ラックスター3622A(大日本インキ社
製;不揮発分52.5重量%;設計ガラス転移温度−3
0℃)を使用した。
【0057】(2)塗装方法 リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、パワートップU−50
(日本ペイント製カチオン電着塗料)を、乾燥塗膜が2
0μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼
き付けた板を作成した。その板に上記中塗り塗料をエア
スプレー塗装にて20μm塗装し、80℃で5分乾燥し
た。その後、製造例4のベース塗料をエアスプレー塗装
にて18μm塗装し、80℃で5分乾燥した。更にその
塗板にマックフローO−1801Wクリヤー(日本ペイ
ント製クリヤー塗料)をエアスプレー塗装にて35μm
塗装した後、140℃で30分焼き付けた。
【0058】(3)耐チッピング性評価 飛石試験機(スガ試験機社製)の試料ホルダーに、−3
0℃に冷却した塗板を石の進入角が90°になるように
取り付け、100gの7号砕石を3kg/cm2の空気
圧で噴射し、砕石を塗板に衝突させた。そのときのハガ
レ傷の程度(数、大きさ、破壊場所)を5段階評価し
た。結果を表1に示した。 1:全面にハガレ傷、素地から剥離あり 2:全面にハガレ傷、素地からの剥離なし 3:一部にハガレ傷、素地からの剥離あり 4:一部にハガレ傷.素地からの剥離なし 5:ほとんど破壊なし
【0059】
【表1】
【0060】実施例2、3 水性中塗り塗料を表1に示した配合で調製したこと以外
は、実施例1と同様にして、多層塗膜が形成された塗板
を作成し評価を行った。なお、実施例3では、着色顔料
ペースト2を使用した。結果を表1に示した。
【0061】比較例1、2 水性中塗り塗料を表1に示した配合で調製したこと以外
は、実施例1と同様にして、多層塗膜が形成された塗板
を作成し評価を行った。結果を表1に示した。
【0062】実施例及び比較例から、本実施例で製造し
た水性中塗り塗料はエラストマーを含むものであるた
め、耐チッピング性に優れた多層塗膜を形成できること
が明らかである。
【0063】
【発明の効果】本発明の多層塗膜形成方法は、水性中塗
り塗料にエラストマーを含むものであるため、中塗り塗
料、ベース塗料及びクリヤー塗料をウエットオンウエッ
トで塗布し同時に加熱硬化を行ういわゆる3ウェット塗
装を行った場合に、耐チッピング性に優れた多層塗膜を
得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 薮下 千聡 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 Fターム(参考) 4D075 AE12 BB26Z CA03 CA04 CB06 DA06 DB02 DB05 DB06 DB07 DB08 DC12 DC13 EA06 EA07 EA10 EA43 EB12 EB13 EB14 EB15 EB19 EB20 EB22 EB32 EB33 EB35 EB36 EB38 EB39 EB45 4J038 CA021 CA031 CA041 CA061 CB031 CB091 CB111 CC041 CD021 CF021 CG141 CG161 DD001 DG031 DH001 GA06 GA09 KA08 MA08 MA10 MA12 MA14 NA12 NA27 PA07 PA19 PB07 PC08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電着塗膜が形成された被塗装物上に、水
    性中塗り塗料を塗布して未硬化の中塗り塗膜を形成する
    工程(1)、前記中塗り塗膜の上に、水性ベース塗料を
    塗布して未硬化のベース塗膜を形成する工程(2)、更
    にその上に、クリヤー塗料を塗布して未硬化のクリヤー
    塗膜を形成する工程(3)、並びに、前記中塗り塗膜、
    前記ベース塗膜及び前記クリヤー塗膜を同時に加熱硬化
    させて、多層塗膜を得る工程(4)を含む多層塗膜形成
    方法であって、前記水性中塗り塗料は、エラストマーを
    含むものであることを特徴とする多層塗膜形成方法。
  2. 【請求項2】 エラストマーは、水分散化されたもので
    あるか、又は、水溶性のものである請求項1記載の多層
    塗膜形成方法。
  3. 【請求項3】 水性中塗り塗料中の樹脂固形分に対する
    エラストマーの含有量は、固形分基準で20〜100重
    量%である請求項1又は2記載の多層塗膜形成方法。
  4. 【請求項4】 請求項1、2又は3記載の多層塗膜形成
    方法により形成されてなる多層塗膜。
  5. 【請求項5】 エラストマーを含むことを特徴とする水
    性中塗り塗料組成物。
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