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JP2002191353A - 細胞培養支持体及びその製造方法 - Google Patents

細胞培養支持体及びその製造方法

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JP2002191353A
JP2002191353A JP2001310110A JP2001310110A JP2002191353A JP 2002191353 A JP2002191353 A JP 2002191353A JP 2001310110 A JP2001310110 A JP 2001310110A JP 2001310110 A JP2001310110 A JP 2001310110A JP 2002191353 A JP2002191353 A JP 2002191353A
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JP
Japan
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sequence
cell culture
culture support
cell
meth
Prior art date
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Pending
Application number
JP2001310110A
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English (en)
Inventor
Tatsuya Osumi
辰也 大隅
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanyo Chemical Industries Ltd
Original Assignee
Sanyo Chemical Industries Ltd
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Publication date
Application filed by Sanyo Chemical Industries Ltd filed Critical Sanyo Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞を効率的に培養でき、周囲温度を変化さ
せるだけで培養細胞を高収率(高回収率及び高生存率)
で細胞培養支持体から組織状として剥離回収できる細胞
培養用支持体を提供する。 【解決手段】 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配
列を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド
(A)と、水に対する臨界溶解温度が0〜80℃のポリ
マー(B)とで被覆されてなることを特徴とする細胞培
養支持体を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞培養支持体及
びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トリプシンのようなタンパク分解酵素や
キレート剤(例えば、EDTA)等による処理を施さず
に環境温度を変化させるだけで、培養・増殖させた細胞
を、支持体表面から剥離・回収することが可能な細胞培
養支持体材料として、第1層としてコラーゲンのような
天然物質又はポリアクリル酸ナトリウムのような合成物
質を被覆し、その上に第2層として水に対する臨界溶解
温度を有する特定の水溶性高分子を被覆したものが提案
されている(特開平5−38278号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】コラーゲンのような天
然物質又はポリアクリル酸ナトリウムのような合成物質
は、血清を含有する培地を用いる場合は細胞の付着・増
殖に効果は認められるものの、血清中には、成分未知の
蛋白質等が含まれるため、細胞を用いる医薬品生産の場
合には精製工程が複雑となりコストがかかるため、さら
にはウィルス感染の危険性があるため、最近注目されて
いる再生医工学には安全性に不安があるので、血清を含
まないいわゆる無血清培地が好まれる傾向にある。しか
し、無血清培地の場合、上記の細胞培養支持体では、細
胞の接着・増殖には効果が低く、十分な細胞増殖が得ら
れない。すなわち、本発明の目的は、細胞を効率的に培
養でき、周囲温度を変化させるだけで培養細胞を高収率
(高回収率及び高生存率)で細胞培養支持体から組織状
として剥離回収できる細胞培養用支持体を提供すること
である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意研究を
重ねてきた結果、特定のポリペプチドと特定のポリマー
を用いることにより上記の目的を達成し得ることを見い
だし本発明に到達した。すなわち、本発明の細胞培養支
持体の特徴は、細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配
列を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド
(A)と、水に対する臨界溶解温度が0〜80℃のポリ
マー(B)とで被覆されてなる点にある。
【0005】
【発明の実施の形態】まず、(A)について説明する。
本発明において、細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸
配列としては、接着シグナルとして働くものであればい
ずれも使用でき、例えば、株式会社永井出版発行「病態
生理」Vol.9、No.7(1990)527頁に記
載されているもの等が挙げられる。この中で接着する細
胞が多いという点で、アミノ酸一文字表記で現される
(以下配列につき同じ)、RGD配列、LDV配列、R
EDV配列(1)、YIGSR配列(2)、PDSGR
配列(3)、RYVVLPR配列(4)、LGTIPG
配列(5)、RNIAEIIKDI配列(6)、IKV
AV配列(7)、LRE配列、DGEA配列(8)及び
HAV配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配
列が好ましく、さらに好ましいものはRGD配列、YI
GSR配列(2)、PDSGR配列(3)、LGTIP
G配列(5)、IKVAV配列(7)及びHAV配列か
らなる群から選ばれる少なくとも1種の配列、最も好ま
しいものはRGD配列、IKVAV配列(7)及びHA
V配列からなる群から選ばれる少なくとも1種の配列で
ある。なお、( )内にアミノ酸配列表に対応する配列
番号を付記した。
【0006】ポリペプチド(A)中には前記最小アミノ
酸配列が1分子中に少なくとも1個含有される必要があ
る。最小アミノ酸配列が含有されない場合、細胞接着性
が低下する結果、特に無血清培地を用いる場合に細胞の
増殖が不十分になる。この最小アミノ酸配列の含有量
は、細胞接着・増殖性の観点から、1分子中3〜50個
が好ましく、さらに好ましくは5〜40個、特に好まし
くは10〜30である。
【0007】ポリペプチド(A)の数平均分子量は、細
胞に対する毒性が低く、接着性能が高いという点で、
5,000〜5,000,000が好ましく、10,0
00〜1,000,000がさらに好ましく、50,0
00〜500,000が特に好ましい。なお、ポリペプ
チド(A)の数平均分子量は、SDS−PAGE法(N
aドデシルスルフェイト−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動法)で、(A)を水中で展開し、泳動距離を標準物
質と比較することによって求められる。
【0008】ポリペプチド(A)は、細胞接着シグナル
を現す最小アミノ酸配列以外に、(A)の熱安定性が高
まるアミノ酸配列、例えば、シルクフィブロイン由来の
GAGAGS配列(9)を2つ以上有することが好まし
く、このアミノ酸配列を3つ以上有することがさらに好
ましく、5〜30個有することが特に好ましい。ポリペ
プチド(A)の好ましい具体例としては、(GAGAG
S)9配列(10)とRGD配列とを有するペプチド、
(GAGAGS)9配列(10)とYIGSR配列
(2)とを有するペプチド、(GAP(GPP)42
列(11)とRGD配列とを有するペプチド、(GAP
(GPP)42配列(11)とYIGSR配列(2)と
を有するペプチド、及び(GAGAGS)9配列(1
0)とIKVAV配列(7)とを有するペプチド(特表
平3−502935号公報)等が挙げられる。
【0009】また、市販されているものとしては、三洋
化成工業(株)製プロネクチンF(遺伝子組替大腸菌に
より製造され、1分子中に細胞接着シグナルRGD配列
と(GAGAGS)9配列(10)とを各々約13個有
する数平均分子量約11万のポリペプチド)、同プロネ
クチンFプラス(プロネクチンFをジメルアミノエチル
クロライドと反応させて水溶性にしたもの)、同プロネ
クチンL(遺伝子組替大腸菌により製造され、1分子中
に細胞接着シグナルIKVAV配列(7)と(GAGA
GS)9配列(10)とを各々約7個有する数平均分子
量約9万のポリペプチド)等が挙げられる。また、宝酒
造(株)製RetroNectin(リコンビナントヒ
トフィブロネクチンCH−296){ヒトフィブロネク
チン細胞接着シグナルであるCS1シグナルと細胞接着
ドメインTypeIII及びヘパリン結合ドメインII
を1つずつ有する数平均分子量約6万のポリペプチ
ド}、同RGDS−Protein A{RGD配列を
Protein A(IgG結合ドメイン)に挿入した
数平均分子量約3万のポリペプチド}も使用できる。
【0010】ポリペプチド(A)の製造方法は特に制限
されず、ペプチドを合成する従来既知の方法と同様にし
て製造することができ、例えば、有機合成法(固相合成
法、液相合成法等)及び生化学的合成法[遺伝子組換微
生物(酵母、細菌、大腸菌等)]等によって合成するこ
とができる。有機合成法に関しては、例えば、日本生化
学学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学
(下)」 第641〜694頁(昭和62年5月20
日;株式会社東京化学同人発行)に記載されている方法
等が用いられる。生化学的合成法に関しては、例えば、
特表平7−501443号公報に記載されている方法等
が用いられる。高分子のポリペプチド(A)を容易に合
成できる点で、遺伝子組換微生物による生化学的合成法
が好ましく、特に遺伝子組換大腸菌を用いて合成する方
法が好ましい。
【0011】次に、ポリマー(B)について説明する。
一般に、細胞培養の温度は、細胞の種類にもよるが、0
〜90℃が好ましく、さらに好ましくは10〜50℃で
ある。0℃未満では細胞は休眠状態になり増殖力が低下
する傾向にあり、90℃を越えると細胞機能が破壊さ
れ、細胞が死滅してしまう傾向がある。本発明の細胞培
養支持体を用いる細胞培養において、細胞は、一定温度
において、疎水性を示すポリマー(B)上で培養され、
培養終了後の細胞剥離・回収工程で(B)の温度を変化
させると(B)が親水性に変化して、(B)上に増殖し
た細胞が剥離し、引き続いて等張液等で洗浄することだ
けで増殖細胞が回収される。この疎水性−親水性の変曲
点に対応する温度を臨界溶解温度といい、すなわち、水
に対する臨界温度とは、均一溶解していた水溶液が温度
の変化により不均一な水溶液となる温度を意味する。
【0012】例えば、ポリマー(B)は、臨界溶解温度
未満では親水性を示し、臨界溶解温度を越えると疎水性
を示す場合、通常、(B)の臨界溶解温度よりも高い温
度で細胞培養を行い、周囲温度を下げるか、培地を低温
の培地に交換するなどして、(B)の温度を臨界溶解温
度未満に下げることによって、(B)上に増殖した細胞
が剥離・回収されるものである。ポリマー(B)の水に
対する臨界溶解温度は、通常0〜80℃であり、好まし
くは0〜50℃、さらに好ましくは20〜45℃、特に
好ましくは25〜35℃である。ポリマー(B)の水に
対する臨界溶解温度は、細胞培養の温度未満であること
が好ましい。
【0013】ポリマー(B)の水に対する臨界溶解温度
は、(B)を濃度1重量%になるように水(イオン交換
水又は蒸留水)に溶解し(溶解可能温度で)、この水溶
液の温度を上昇又は下降させ、目視により2相分離
(白濁)を確認する方法の他、臨界タンパク光の観測
値を縦軸に、温度を横軸にとったグラフから求める方
法、散乱光強度の観測値を縦軸に、温度を横軸にとっ
たグラフから求める方法、透過レーザー光の観測値を
縦軸に、温度を横軸にとったグラフから求める方法等の
一般に知られている方法のいずれかを用いて、また、組
み合わせて求められる。
【0014】ポリマー(B)としては、水に対する臨界
溶解温度が0〜80℃のポリマーであれば特に制限はな
く、公知のビニルモノマーの(共)重合体が使用でき、
例えば、(メタ)アクリル酸誘導体{(メタ)アクリル
酸アミド及び(メタ)アクリル酸エステル等}及び/又
はビニルアルキルエーテル等を構成単位とする(共)重
合体が使用できる。
【0015】(メタ)アクリル酸アミドとしては、例え
ば、(イ)モノアルキルアミン若しくはモノアルコキシ
アルキルアミン(炭素数3〜6)の(メタ)アクリル酸
アミド、(ロ)ジアルキルアミン、ジアルコキシアルキ
ルアミン若しくは環状アミン(炭素数2〜8)の(メ
タ)アクリル酸アミド、(ハ)ポリイミノエチレン基
(重合度2〜50)を有するビニル単量体及び(ニ)環
状アミノ基又はアルキルアミノ基(炭素数5〜50)を
有する(メタ)アクリル酸アミド等が用いられる。
【0016】(メタ)アクリレートモノマーとしては、
例えば、(ホ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオ
キシアルキレン(重合度3〜40)モノオール若しくは
ジオールの(メタ)アクリル酸モノエステル、(ヘ)環
状アミンのアルキレン(炭素数2〜4)オキシド1〜4
0モル付加物の(メタ)アクリル酸エステル及び(ト)
非環状アミン(炭素数5〜50)のアルキレン(炭素数
2〜4)オキシド1〜40モル付加物の(メタ)アクリ
ル酸エステル等が用いられる。
【0017】ビニルアルキルエーテルモノマーとして
は、例えば、(チ)ビニルアルキル(アルキルの炭素数
1〜6)エーテル及び(リ)アルキレン基の炭素数が2
〜4のポリオキシアルキレン(重合度3〜40)モノオ
ール若しくはジオールのモノビニルフェニルエーテル等
が用いられる。
【0018】(イ)モノアルキルアミン若しくはアルコ
キシアルキルアミン(炭素数3〜6)の(メタ)アクリ
ル酸アミドとしては、例えば、N−イソプロピル(メ
タ)アクリル酸アミド及びN−メトキシプロピル(メ
タ)アクリル酸アミド等が挙げられる。 (ロ)ジアルキルアミン、ジアルコキシアルキルアミン
若しくは環状アミン(炭素数2〜8)の(メタ)アクリ
ル酸アミドとしては、例えば、N,N−ジエチル(メ
タ)アクリル酸アミド及びN−(メタ)アクリロイルピ
ロリジン等が挙げられる。
【0019】(ハ)ポリイミノエチレン基(重合度2〜
50)を有するビニル単量体としては、例えば、テトラ
エチレンイミンモノ(メタ)アクリル酸アミド等の特開
平9−12781号公報に記載の単量体等が挙げられ
る。 (ニ)環状アミノ基又はアルキルアミノ基(炭素数5〜
50)を有する(メタ)アクリル酸アミドとしては、例
えば、N−モルホリノエチル(メタ)アクリル酸アミド
等が挙げられる。
【0020】(ホ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポ
リオキシアルキレン(重合度3〜40)モノオール若し
くはジオールの(メタ)アクリル酸モノエステルとして
は、例えば、テトラエチレングリコールモノエチルエー
テルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコ
ールモノブチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、メ
トキシトリオキシプロピレンテトラオキシエチレン(メ
タ)アクリレート、テトラプロピレングリコールのエチ
レンオキシド6モル付加物の(メタ)アクリル酸モノエ
ステル及びブタノールのエチレオオンキシド20モル付
加物のプロピレンオキシド20モル付加物の(メタ)ア
クリル酸エステル等が挙げられる。 (ヘ)環状アミンのアルキレン(炭素数2〜4)オキシ
ド1〜40モル付加物の(メタ)アクリル酸エステルと
しては、例えば、モルホリノエチル(メタ)アクリレー
ト等の特開平6−9848号公報に記載の単量体等が挙
げられる。
【0021】(ト)非環状アミン(炭素数5〜50)の
アルキレン(炭素数2〜4)オキシド1〜40モル付加
物の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ジ
イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート等の特
開平6−9848号公報に記載の単量体等が挙げられ
る。 (チ)ビニルアルキル(炭素数1〜6)エーテルとして
は、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエー
テル及びビニルヘキシルエーテル等が挙げられる。 (リ)アルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアル
キレン(重合度3〜40)モノオール若しくはジオール
のモノビニルフェニルエーテルとしては、例えば、テト
ラエチレングリコールモノメチルエーテルモノビニルフ
ェニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチル
エーテルモノビニルフェニルエーテル、メトキシペンタ
オキシプロピレンテトラオキシエチレンビニルフェニル
エーテル及びテトラプロピレングリコールのエチレンオ
キシド8モル付加物のモノビニルフェニルエーテル等が
挙げられる。
【0022】これらのうち、(メタ)アクリル酸アミド
モノマー及び(メタ)アクリル酸エステルが、臨界溶解
温度前後での親水性―疎水性の変化がシャープであると
いう点で好ましく、温度変化による細胞剥離が容易であ
るとう点で、さらに好ましくは(イ)、(ロ)、(ヘ)
及び(ト)であり、イオン性を有するため細胞との親和
性が高く(A)の効果と相俟って細胞増殖が高くなると
いう点で、特に好ましくは(ヘ)及び(ト)である。す
なわち、ポリマー(B)としては、(メタ)アクリル酸
アミド及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを必須の
モノマーとしてなる(共)重合体が好ましく、さらに好
ましくは(イ)、(ロ)、(ヘ)及び(ト)からなる群
から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸誘導
体を必須のモノマーとしてなる(共)重合体、特に好ま
しくは(へ)及び/又は(ト)を必須のモノマーとして
なる(共)重合体である。
【0023】ポリマー(B)の水に対する臨界溶解温度
は、(B)の親水性―疎水性のバランスによって変化
し、例えば、(B)の親水性が高いと臨界溶解温度は高
くなり、反対に疎水性が高いと臨界溶解温度は低くな
る。すなわち、臨界溶解温度が低いポリマー(B)を得
るためには疎水性の高いモノマーを(共)重合すればよ
いし、臨界溶解温度が高いポリマー(B)を得るために
は親水性の高いモノマーを(共)重合すればよい。ま
た、本発明の支持体を繰り返し使用したい場合には、架
橋性モノマーを共重合するなどして(B)を架橋体とす
ることもできる。
【0024】ポリマー(B)としては、例えば、ポリ
(N−イソプロピルアクリル酸アミド);臨界溶解温度
32℃、ポリ(N,N−ジエチルアクリル酸アミド);
(同32℃)、ポリ(モルホリノエチルメタクリレー
ト);(同34℃)、ポリ(ジプロピルアミノエチルア
クリレート);(同25℃)、ポリ(モルホリノエチル
アクリレート);(同38℃)、ポリ(モルホリノブチ
ルメタクリレート);(同20℃)、モルホリノエチル
メタクリレートとアクリル酸の99.8/0.2重量比
共重合体;(同35℃)、及びモルホリノエチルメタク
リレートとメタクリル酸の96/4重量比共重合体;
(同45℃)等が挙げられる。ポリマー(B)は、架橋
重合体又は直鎖状重合体のいずれでもよく、その重量平
均分子量は特に制限はないが、5、000〜5,00
0,000又はそれ以上が好ましく、さらに好ましくは
10,000〜1,000,000又はそれ以上、特に
好ましくは50,000〜1,000,000又はそれ
以上である。この範囲内であれば、細胞の培養及び培養
後の剥離がさらに好適に行える。
【0025】次に、本発明の細胞培養支持体の製造方法
について説明する。ポリペプチド(A)とポリマー
(B)とで被覆を施される基材の材質は、通常細胞培養
に用いられるものが使用でき何等制限されるものではな
いが、代表的なものとしては、ポリスチレン及びポリメ
チルメタクリレート等の高分子化合物、ガラス、改質ガ
ラス、セラミックス並びに金属等が使用できる。基材表
面は、オゾン処理、プラズマ処理又はスパッタリング等
の処理技術を用いて親水化処理を施されたものでもよ
い。基材形状は、ペトリディッシュに限定されることは
なく、プレート、ファイバー、(多孔質)粒子又は一般に
細胞培養等に用いられる容器の形状(フラスコ等)であっ
てもよい。
【0026】本発明の細胞培養支持体は、ポリペプチド
(A)とポリマー(B)とで基材表面を被覆したもので
あるが、その場合、被覆される基材表面に対し、全面に
被覆されていてもよく、或は、部分的に、例えば基材表
面の50〜100%が被覆されていても構わない。
【0027】本発明において、ポリペプチド(A)とポ
リマー(B)との合計の好ましい塗布量としては、1〜
1,000,000μg/cm2であり、さらに好まし
くは10〜100,000μg/cm2、特に好ましく
は100〜10,000μg/cm2である。1μg/
cm2よりも少ない場合、細胞の接着増殖性及び細胞増
殖後の温度変化による細胞剥離が不十分になる傾向があ
る。また、1000を越えると経済的に不利な傾向が強
くなる。また、ポリマー(B)100重量部に対するポ
リペプチド(A)の好ましい量としては、0.001〜
100重量部であり、さらに好ましくは0.01〜10
重量部、特に好ましくは0.1〜1重量部である。この
範囲であると、細胞の接着増殖性と細胞培養後の温度変
化による剥離のしやすさがより十分に発揮できる。
【0028】ポリペプチド(A)とポリマー(B)の被
覆方法は、特に制限はなく、例えば、(1)(A)と
(B)同時に被覆する方法、(2)(A)と(B)を別
々に被覆する方法が使用できる。 (1)(A)と(B)を同時に被覆する場合、(1−
1)(A)と(B)との混合物を被覆する方法、及び
(1−2)(B)を構成するモノマーと(A)とからな
る混合物を被覆した後、該モノマーを重合させる方法等
が挙げられる。 (2)(A)と(B)を別々に被覆する場合、(2−
1)基材表面上に、まず(A)を被覆した後、さらに
(B)を被覆する方法、(2−2)基材表面上に、まず
(B)を被覆した後、さらに(A)を被覆する方法、
(2−3)(A)を被覆し、さらに(B)を構成するモ
ノマーを被覆した後、該モノマーを重合する方法、(2
−4)基材表面上に、(B)を構成するモノマーを被覆
し、該モノマーを重合した後、さらに(A)を被覆する
方法等が挙げられる。
【0029】(1−1)の方法において、(A)と
(B)と必要に応じて各種溶剤の混合物を基材上に塗布
し、溶剤を用いた場合には溶剤を留去あるいは水洗で除
去することによって本発明の支持体が得られる。溶剤と
しては、例えば、水、各種塩(例えば、塩化ナトリウ
ム、塩化リチウム及び過塩素酸リチウム等)の水溶液、
親水性の溶剤(例えば、メタノール、イソプロパノー
ル、エチレングリコール、アセトン、酢酸エチル及びア
セトニトリル等)、親油性の溶剤(例えば、ベンゼン、
トルエン及びヘキサン等)及びこれらの混合物等が用い
られる。これらのうち、水、各種塩の水溶液及び親水性
の溶剤が好ましく、さらに好ましくは各種塩の水溶液及
び親水性の溶剤、特に好ましくは親水性の溶剤である。
【0030】(1−2)の方法において、(A)と
(B)を構成するモノマーと、必要によって前記した各
種溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は架橋性モノ
マーの混合物を基材上に塗布し、該モノマーを重合させ
た後、溶剤を用いた場合には溶剤を留去あるいは水洗で
除去することによって本発明の支持体が得られる。重合
開始剤としては特に制限はないが、例えば、アゾ系開始
剤、有機若しくは無機のパーオキシド等が用いられる。
連鎖移動剤としては特に制限はないが、例えば、メルカ
プタン化合物等が用いられる。架橋性モノマーとしては
特に制限はないが、例えば、エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート及びジビニルベンゼン等が用いられ
る。重合させる方法としては、例えば、電子線照射(E
B)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処
理及び加熱(遠赤外線、近赤外線及び熱風等)等による
方法が用いられる。
【0031】(2−1)の方法において、基材表面への
(A)の被覆方法としては、(A)を直接塗布する方
法、(A)の各種溶剤との混合物を塗布し、溶剤を留去
あるいは水洗で除去する方法等が挙げられる。さらに同
様の方法で、(B)を被覆することによって本発明の支
持体が得られる。
【0032】(2−2)の方法においても上記方法と同
様に、(B)で被覆した後に(A)を被覆することで本
発明の支持体が得られる。 (2−3)の方法においても上記方法と同様に、(A)
で被覆した後に、(B)を構成するモノマーと、必要に
よって前記した各種溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤及び
/又は架橋性モノマーの混合物を基材上に塗布し、該モ
ノマーを重合させた後、溶剤を用いた場合には溶剤を留
去あるいは水洗で除去することによって本発明の支持体
が得られる。 (2−4)の方法においても上記方法と同様に、(B)
を構成するモノマーと、必要によって前記した各種溶
剤、重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は架橋性モノマー
の混合物を基材上に塗布し、該モノマーを重合させた
後、溶剤を用いた場合には必要に応じて溶剤を留去ある
いは水洗で除去した後、(A)で被覆し、必要に応じて
溶剤を留去あるいは水洗で除去した後を塗布しすること
によって本発明の支持体が得られる。これらの方法のう
ち、(1−1)、(1−2)、(2−2)及び(2−
4)が好ましく、さらに好ましくは(1−2)、(2−
2)及び(2−4)、特に好ましくは(1−2)及び
(2−4)、最も好ましくは(2−4)である。
【0033】次に、本発明の細胞培養支持体を用いて細
胞を培養する方法について述べる。細胞培養の方法とし
ては特に制限はないが、支持体上に細胞と培地の混合物
を加え、所定雰囲気下、所定温度で放置する方法等が使
用できる。細胞の種類としては特に限定されず、ヒト、
サル、マウス、ハムスター及びラット等の初代培養細胞
や株化細胞等、細胞培養実験に用いられる公知の細胞等
が使用可能である。
【0034】細胞としては、例えば、医薬品を生産する
場合には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞
やWI38(ヒト胎児肺)細胞等が挙げられ、皮膚、軟
骨、骨、肝臓、腎臓及び角膜等の再生医療に用いる場合
には、ヒト由来の幹細胞、内皮細胞、上皮細胞、実質細
胞、線維芽細胞及び角質細胞等が挙げられる。また、動
物実験代替のための医薬品スクリーニングあるいは眼や
皮膚に対する刺激性を評価する場合には、ヒト皮膚角化
細胞、ヒトやウシの血管内皮細胞、ラット肝細胞及びヒ
ト角膜細胞等が挙げられる。これら細胞の中で、本発明
の支持体を用いることでのみ得られるシート状の細胞
(細胞シート)が、再生医療に特に好適に用いられると
いう点で、ヒト由来の細胞が好ましい。
【0035】培地としても特に制限はなく、血清培地及
び無血清培地のいずれもが使用可能である。血清培地と
しては、用いるポリペプチド(A)の種類に応じて、M
EM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、I
MEM培地、ES培地、DM−160培地、Fishe
r培地、F12培地、WE培地及びRPMI培地等、朝
倉書店発行「日本組織培養学会編 組織培養の技術第三
版」581頁に記載の基礎培地に血清を加えたもの等が
挙げられる。
【0036】血清としては、例えば、ウシ胎児血清、コ
ウシ血清、ウマ血清、ヒト血清及びニワトリ血清等が使
用できる。無血清培地としては、例えば、市販の無血清
培地[味の素(株)製無血清培地ASF103、同AS
F104、同ASF301や、ギブコ社製無血清培地C
HO−SFM、同VP−SFM等]や、上記基礎培地に
細胞増殖因子(線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミ
ング増殖因子、インシュリン様増殖因子、肝細胞増殖因
子、血管内皮細胞増殖因子、ヘパリン結合上皮細胞増殖
因子、結合組織成長因子等)等を加えたものが挙げられ
る。血清培地を使用した場合、血清中に成分未知の蛋白
質等が含まれること、細胞を用いる医薬品生産の場合に
は精製工程が複雑となりコストがかかること、さらにウ
ィルス感染の危険性があること等の理由から、最近注目
されている再生医工学には安全性に不安があるので、血
清を含まないいわゆる無血清培地が好まれる傾向にある
が、本発明の支持体は、細胞接着性に優れているため、
無血清培地の使用が特に好ましい。
【0037】細胞培養の雰囲気については、特に制限は
なく、例えば、二酸化炭素と空気の混合物(二酸化炭
素:空気の体積混合比=0.1〜40:99.9〜6
0)等の雰囲気が使用できる。本発明の支持体を用いる
細胞培養の培養温度は、支持体に被覆されているポリマ
ー(B)の臨界溶解温度よりも、1〜30℃高い温度が
好ましく、さらに好ましくは5〜20℃高い温度であ
る。臨界温度以下の温度であると、細胞の接着/増殖が
不十分となる。具体的な細胞培養温度としては、細胞増
殖が活発に行えるという点で、1〜90℃が好ましく、
10〜50℃が特に好ましい。以上の方法に従って得ら
れた支持体を用いて上記の方法で培養された細胞を支持
体から剥離させ、回収するには、周囲温度あるいは基材
の温度を下げるか、培地を低温の培地に交換するなどし
て、培地の温度すなわちポリマー(B)の温度を臨界溶
解温度未満に下げるだけでよい。
【0038】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。 <実施例1>基材としてベクトン・ディキンソン・ラブ
ウェア(Becton Dickinson Labw
are)社製ファルコン(FALCON)ペトリディッ
シュ(直径35mm)2個を用い、三洋化成工業(株)
製プロネクチンFプラス1mgをイオン交換水1mlに
溶解したものと、モルホリノエチルアクリレート(ホモ
ポリマーの臨界温度:38℃)(モルホリンのエチレン
オキシド1モル付加物のアクリル酸エステル)0.4g
をイソプロピルアルコール0.6gに溶解したものとの
混合物を、ペトリディッシュ上にそれぞれ0.2mlづ
つ加え、それぞれディッシュ全体に広げた後、電子線を
20Mrad照射することによりペトリディッシュ表面
上にプロネクチンFプラスとポリモルホリノエチルアク
リレートとを被覆した。電子線照射終了後、イオン交換
水によりペトリディッシュを洗浄し、残存モノマー及び
遊離ポリモルホリノエチルアクリレートを取り除き、ク
リーンベンチ内で室温で1週間乾燥し、さらにエチレン
オキサイド(EO)ガス雰囲気下に1昼夜晒し、滅菌した
あと、1〜5mmHgの減圧下で室温で1昼夜脱気を行
なうことにより、本発明の細胞培養支持体(ディッシュ
1)を2個得た。
【0039】<比較例1>プロネクチンFプラスを使用
しないこと以外は実施例1と同様にして、比較用の細胞
培養支持体(ディッシュ2)を2個得た。
【0040】<比較例2>モルホリノエチルアクリレー
トを使用しないこと以外は実施例1と同様にして比較用
の細胞培養支持体(ディッシュ3)を2個得た。
【0041】<実施例2>実施例1と同様のペトリディ
ッシュ2個に、モルホリノエチルアクリレート(ホモポ
リマーの臨界溶解温度:38℃)0.4gをイソプロピ
ルアルコール0.6gに溶解したものをそれぞれ0.1
mlづつ加え、ディッシュ全体に広げた後、電子線を2
0Mrad照射することによりペトリディッシュ表面上
にポリモルホリノエチルアクリレートを被覆した。電子
線照射終了後、イオン交換水によりペトリディッシュを
洗浄し、残存モノマー及び遊離ポリモルホリノエチルア
クリレートを取り除き、クリーンベンチ内で乾燥した。
次いで、三洋化成工業(株)製プロネクチンF0.5m
gを同プロネクチンFDiluent(過塩素酸リチウ
ム飽和溶液)0.5mlに溶解し、さらに水で10倍に
希釈し、50℃に保温した溶液3mlを、50℃に保温
した上記ディッシュ全体に広げた後1時間50℃で放置
することによって、プロネクチンFを物理吸着させた。
次いで、50℃に保温したリン酸緩衝液で2回洗浄後、
クリーンベンチ内で乾燥室温で1週間乾燥し、さらにエ
チレンオキサイド(EO)ガス雰囲気下に1昼夜晒し、滅
菌したあと、1〜5mmHgの減圧下で室温で1昼夜脱
気を行なうことにより、本発明の細胞培養支持体(ディ
ッシュ4)を2個得た。
【0042】比較例3 プロネクチンFの溶液の代わりにコラーゲンタイプI;
ラット(BECTON社製、Code#354236)
を使用すること以外は実施例2と同様にして、比較用の
細胞培養支持体(ディッシュ5)を2個得た。
【0043】比較例4 プロネクチンFを使用しないこと以外は実施例2と同様
にして、比較用の細胞培養支持体(ディッシュ6)を2
個得た。
【0044】比較例5 モルホリノエチルアクリレートを使用しないこと以外は
実施例2と同様にして比較用の細胞培養支持体(ディッ
シュ7)を2個得た。
【0045】実施例3 モルホリノエチルアクリレートの代わりに、N−イソプ
ロピルアクリル酸アミド(ホモポリマーの臨界溶解温
度:32℃)を用いること以外は実施例2と同様にし
て、本発明の細胞培養支持体(ディッシュ8)を2個得
た。
【0046】実施例4 モルホリノエチルアクリレートの代わりに、モルホリノ
エチルメタクリレートとアクリル酸の99.8/0.2
重量比の混合物(共重合体の臨界溶解温度:35℃)を
用いること以外は実施例2と同様にして、本発明の細胞
培養支持体(ディッシュ9)を2個得た。
【0047】実施例5 モルホリノエチルアクリレートの代わりに、ジプロピル
アミノエチルアクリレート(ホモポリマーの臨界溶解温
度:25℃)を用いること以外は実施例2と同様にし
て、本発明の細胞培養支持体(ディッシュ10)を2個
得た。
【0048】<細胞培養>得られたディッシュ1〜10
を用いて無血清細胞培養実験を行った。チャイニーズハ
ムスター卵巣細胞CHO−K1(ATCC株番号CCL
−61)を、味の素(株)製無血清培地ASF104に
細胞濃度:1.0×103cells/mLに分散した
もの3mlをディッシュ1〜10にそれぞれ加え、二酸
化炭素と空気の混合物(二酸化炭素/空気=5/95体
積比)中、37℃で3日間培養を行なった。次いで、デ
ィッシュ上の細胞の付着増殖性(増殖性)を顕微鏡で観
察し、その結果を表1に示した。
【0049】なお、細胞の付着増殖性(増殖性)の判定
基準は以下の通りである。 ◎;ディッシュ全体の面積の90%以上が細胞に被覆さ
れており、非常に良好な増殖状態。 ○;ディッシュ全体の面積の50〜89%が細胞に被覆
されており、良好な増殖状態。 △;ディッシュ全体の面積の10〜50%が細胞に被覆
されており、増殖状態は不良。 ×;ディッシュ全体の面積の10%未満しか細胞に被覆
されておらず、増殖状態は全く不良。
【0050】また、各ディッシュ1〜10について、以
下の方法に従って、トリプシン法(従来法)生存率、冷
却法回収率及び冷却法生存率を求めた。 <トリプシン法生存率>2個のディッシュのうち1個に
ディッシュに大日本製薬(株)製トリプシン−EDTA
溶液0.25mLを加え、10分間静置後、ピペッティ
ングによって細胞を剥がした。これに大日本製薬(株)
製ウシ胎児血清の10重量%滅菌水溶液を0.5mL加
え、ピペッティングすることにより細胞縣濁液を得た。
次いでこの細胞懸濁液を一部採りトリパンブルーで処理
し、1ml当りの死んでいる細胞を発色させその数(死
細胞数)と総細胞数を血球盤を用いて顕微鏡下目視によ
り数え、下式に従ってトリプシン法生存率を求めた。 トリプシン法生存率(%)={(総細胞数−死細胞数)
/(総細胞数)}×100 ディッシュ1〜10について、いずれの場合も、トリプ
シン法生存率は60〜80%であった。
【0051】<冷却法回収率、冷却法生存率>2個のデ
ィッシュのうち、もう1個のディッシュを5℃に冷却、
15分間放置して、付着培養細胞を剥離させた後ピペッ
ティングすることにより細胞懸濁液を得た。次いでこの
細胞縣濁液を一部採り、トリパンブルーで処理し、死ん
でいる細胞を発色させその数(死細胞数)と総細胞数を
顕微鏡下で目視で数え、下式に従って冷却法生存率を求
めた。 冷却法生存率(%)={(総細胞数−死細胞数)/(総
細胞数)}×100 いずれの場合も、冷却法生存率は90%以上であった。
また、トリプシン法で回収した総細胞数と冷却法で得ら
れた総細胞数から、冷却法剥離回収率(冷却法回収率)
を下式に従って求め、その結果を表1に示した。 冷却法回収率(%)={(冷却法で剥離回収した細胞総
数)/(従来法回収細胞総数)}×100
【0052】
【表1】
【0053】以上の実施例及び比較例から、本発明の細
胞培養支持体を用いた場合、無血清培養においても細胞
の増殖が促進され、しかも温度を下げるだけで簡単に、
高収率(従来のトリプシン法より高い回収率で、細胞の
生存率も高い)で細胞が剥離回収できることが判り、細
胞培養支持体として、有用性が非常に高いことが判る。
一方、本発明のポリペプチド(A)を使用しない比較例
1,3及び4の場合、細胞の増殖性は不十分であり、ま
た、本発明のポリマー(B)を使用しない比較例2及び
5の場合、冷却しても細胞が剥離しないため、細胞の回
収には従来のトリプシン法しか取れないが、この場合高
い生存率が得られないため、収率が低くなる。すなわ
ち、本発明の細胞培養支持体によってのみ、高増殖性及
び高収率(高回収率及び高生存率)での細胞回収が可能
となるものである。
【0054】
【発明の効果】本発明の細胞培養用支持体を用いると、
無血清でも細胞を効率的に培養が可能であり、低温処理
(周辺温度を臨界温度以下にする)という簡便な操作
で、培養細胞を高収率(高回収率及び高生存率)で剥離
回収できる。従って、細胞を傷つけたり、薬品等の第3
成分の混入若しくは汚染等もなく、極めて容易かつ効率
的に培養細胞を得ることができる。また、本発明の細胞
培養用支持体は、組織工学における生体外で組織状細胞
を得ようとする試みや、各種ハイブリッド型人工臓器、
バイオシミュレーター及び安全性評価用細胞等にも有効
に使用できるものである。
【0055】
【配列表】 <110>三洋化成工業株式会社;SANYO CHEMICAL INDUSTRIES,LTD. <120>細胞培養支持体及びその製造方法 <160>11 <210>1 <211>4 <212>PRT <213>Homo sapiens <400>1 Arg Glu Asp Val 1 <210>2 <211>5 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>2 Tyr Ile Gly Ser Arg 1 5 <210>3 <211>5 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>3 Pro Asp Ser Gly Arg 1 5 <210>4 <211>7 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>4 Arg Tyr Val Val Leu Pro Arg 1 5 <210>5 <211>6 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>5 Leu Gly Thr Ile Pro Gly 1 5 <210>6 <211>10 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>6 Arg Asn Ile Ala Glu Ile Ile Lys Asp Ile 1 5 10 <210>7 <211>5 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>7 Ile Lys Val Ala Val 1 5 <210>8 <211>4 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>8 Asp Gly Glu Ala 1 <210>9 <211>6 <213>PRT <213>Bombyx mori <400>9 Gly Ala Gly Ala Gly Ser 1 5 <210>10 <211>54 <213>PRT <213>Bombyx mori <400>10 Gly Ala Gly Ala Gly Ser Gly Ala Gly Ala Gly Ser Gly Ala Gly Ala 1 5 10 15 Gly Ser Gly Ala Gly Ala Gly Ser Gly Ala Gly Ala Gly Ser Gly Ala 20 25 30 Gly Ala Gly Ser Gly Ala Gly Ala Gly Ser Gly Ala Gly Ala Gly Ser 35 40 45 Gly Ala Gly Ala Gly Ser 50 <210>11 <211>30 <213>PRT <213>Homo sapiens <400>11 Gly Ala Pro Gly Pro Pro Gly Pro Pro Gly Pro Pro Gly Pro Pro Gly 1 5 10 15 Ala Pro Gly Pro Pro Gly Pro Pro Gly Pro Pro Gly Pro Pro 20 25 30

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配
    列を1分子中に少なくとも1個有するポリペプチド
    (A)と、水に対する臨界溶解温度が0〜80℃のポリ
    マー(B)とで被覆されてなることを特徴とする細胞培
    養支持体。
  2. 【請求項2】 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配
    列の数が、(A)1分子中に3〜50個である請求項1
    記載の細胞培養支持体。
  3. 【請求項3】 細胞接着シグナルを現す最小アミノ酸配
    列が、アミノ酸一文字表記で現される、RGD配列、L
    DV配列、REDV配列(1)、YIGSR配列
    (2)、PDSGR配列(3)、RYVVLPR配列
    (4)、LGTIPG配列(5)、RNIAEIIKD
    I配列(6)、IKVAV配列(7)、LRE配列、D
    GEA配列(8)及びHAV配列からなる群から選ばれ
    る少なくとも1種の配列である請求項1又は2記載の細
    胞培養支持体。
  4. 【請求項4】 (A)が、遺伝子組換微生物によって合
    成される請求項1〜3のいずれか記載の細胞培養支持
    体。
  5. 【請求項5】 (A)が、さらにアミノ酸一文字表記で
    現されるGAGAGS配列(9)を2つ以上有してなる
    請求項1〜4のいずれか記載の細胞培養支持体。
  6. 【請求項6】 (B)が、(メタ)アクリルアミドモノ
    マー及び/又は(メタ)アクリレートモノマーを必須の
    モノマーとしてなる(共)重合体である請求項1〜5の
    いずれか記載の細胞培養支持体。
  7. 【請求項7】 (B)が、モノアルキルアミン、モノア
    ルコキシアルキルアミン、ジアルキルアミン、ジアルコ
    キシアルキルアミン若しくは環状アミンの(メタ)アク
    リル酸アミド、環状アミンのアルキレンオキシド付加物
    の(メタ)アクリル酸エステル、及び非環状アミンのア
    ルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸エステル
    からなる群から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アク
    リル酸誘導体を必須のモノマーとしてなる(共)重合体
    である請求項1〜6のいずれか記載の細胞培養支持体。
  8. 【請求項8】 基材表面上に、細胞接着シグナルを現す
    最小アミノ酸配列を1分子中に少なくとも1個有するポ
    リペプチド(A)と水に対する臨界溶解温度が0〜80
    ℃のポリマー(B)を構成するモノマーからなる混合物
    を被覆した後、該モノマーを重合反応させる工程を含む
    ことを特徴とする細胞培養支持体の製造方法。
  9. 【請求項9】 基材表面上に、第1層として水に対する
    臨界溶解温度が0〜80℃のポリマー(B)を被覆した
    後、さらに第2層として細胞接着シグナルを現す最小ア
    ミノ酸配列を1分子中に少なくとも1個有するポリペプ
    チド(A)を被覆する工程を含むことを特徴とする細胞
    培養支持体の製造方法。
  10. 【請求項10】 無血清培地を用いて、請求項1〜7の
    いずれか記載の細胞培養支持体上で細胞を培養すること
    工程を含む細胞シートの製造方法。
  11. 【請求項11】 無血清培地を用いて、請求項8又は9
    記載の製造法で製造された細胞培養支持体上で細胞を培
    養する工程を含む細胞シートの製造方法。
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