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JP2002180162A - モータ式燃料ポンプの黒鉛分散型Cu基焼結合金製軸受 - Google Patents

モータ式燃料ポンプの黒鉛分散型Cu基焼結合金製軸受

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液体燃料の高圧高速流通下ですぐれた耐摩耗
性を発揮するモータ式燃料ポンプの軸受を提供する。 【解決手段】 モータ式燃料ポンプの軸受を、質量%
で、Ni:20〜40%、P:0.1〜0.9%、C:
1〜8%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からな
る組成、並びに5〜25%の気孔率を有する黒鉛分散型
Cu基焼結合金で構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、特に小型化さ
れ、かつ高駆動操業されるモータ式燃料ポンプに適用し
た場合にすぐれた耐摩耗性を発揮する黒鉛分散型Cu基
焼結合金製軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に燃料としてガソリンや軽油
などの液体燃料を用いるエンジンにはモータ式燃料ポン
プが備えられており、例えばガソリンエンジン用モータ
式燃料ポンプとして図1に概略横断面図で示される構造
のものが知られている。すなわち、図示される通り上記
モータ式燃料ポンプは、ケーシング内において、モータ
の両端部に固設した回転軸が軸受に支持され、前記回転
軸の一方端部にはインペラが挿入され、かつ前記インペ
ラ、モータ(アーマチュア)の外周面、および軸受と回
転軸との間の図示しない隙間にそって狭い間隙のガソリ
ン流通路が形成された構造を有し、前記モータの回転で
インペラが回転し、このインペラの回転でガソリンがケ
ーシング内に取り込まれ、取り込まれたガソリンはイン
ペラ、モータの外周面、および軸受と回転軸との間の図
示しない隙間にそって形成された前記ガソリン流通路を
通って送り出され、別設のガソリンエンジンに送り込ま
れるように作動するものである。なお、図1では両軸受
の外周部を微量の燃料が通過し、インペラで昇圧された
ガソリンは図示しないケーシングの燃料通路を通してア
ーマチュア外周面のところまで到達する。また、上記の
モータ式燃料ポンプの構造部材である上記軸受として各
種のCu基焼結合金が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の例えば自
動車などのエンジンの軽量化、並びに高性能化はめざま
しく、これに伴って、これに用いられる燃料ポンプにも
小型化が強く求められているが、上記の構造のモータ式
燃料ポンプの場合、吐出性能を確保しつつこれを小型化
するには、高駆動すなわち回転数を高くすることが必要
であり、そうすると、燃料ポンプ内に取り込まれたガソ
リンなどの液体燃料は一段と狭くなった間隙の流通路を
高圧で、かつ速い流速で通り抜けることになり、このよ
うな条件下では特にモータ式燃料ポンプの構造部材であ
る軸受には一段の高強度と耐摩耗性が要求されることに
なるが、上記の構造のモータ式燃料ポンプに用いられて
いるCu基焼結合金製軸受においては、いずれも十分な
強度および耐摩耗性を具備するものでないため、摩耗進
行が速く、さらにこの摩耗進行は前記液体燃料が硫黄や
その化合物などを不純物として含有する場合には、一層
促進されるようになり、この結果比較的短時間で使用寿
命に至るのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上述のような観点から、小型化されて、高駆動操業され
るモータ式燃料ポンプに用いるのに適した軸受を開発す
べく研究を行った結果、モータ式燃料ポンプの軸受を、
質量%(以下、%は質量%を示す)で、Ni:20〜4
0%、P :0.1〜0.9%、C :1〜8%、を含
有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びに
5〜25%の気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金
で構成すると、液体燃料の高圧高速流を生起せしめるモ
ータの高速回転により軸受が受ける摩擦抵抗が、軸受内
に存在する気孔を介して軸受外周面から軸受内周面に供
給される液体燃料によって形成される流体潤滑膜の作用
で緩和され、一方前記気孔を形成した分だけ耐摩耗性が
低下するようになるが、この耐摩耗性の低下はCu−N
i系合金の固溶体相からなる素地に分散分布した硬質の
Cu−P化合物と同じく素地に分散分布した潤滑性の高
い遊離黒鉛によって補われることから、この結果の黒鉛
分散型Cu基焼結合金製軸受は、これの素地を形成する
Cu−Ni系合金のもつすぐれた強度および耐食性と相
俟って、液体燃料の高圧高速流に曝された環境下ですぐ
れた耐摩耗性を発揮するようになり、また、この黒鉛分
散型Cu基焼結合金製軸受は硫黄やその化合物などを不
純物として含有する液体燃料に対してもすぐれた耐食性
を示す、という研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、Ni:20〜40%、P :0.
1〜0.9%、C :1〜8%、を含有し、残りがCu
と不可避不純物からなる組成、並びに5〜25%の気孔
率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金で構成してなる、
液体燃料の高圧高速流通下ですぐれた耐摩耗性を発揮す
るモータ式燃料ポンプの黒鉛分散型Cu基焼結合金製軸
受に特徴を有するものである。
【0006】つぎに、この発明の軸受において、これを
構成する黒鉛分散型Cu基焼結合金の成分組成および気
孔率を上記の通りに限定した理由を説明する。 (1)成分組成 (a)Ni Ni成分には、上記の通りCuに固溶して、Cu−Ni
系合金の固溶体相からなる素地を形成し、軸受の強度お
よび耐食性を向上させる作用があるが、その含有量が2
0%未満では、所望の高強度および高耐食性を確保する
ことができず、一方がその含有量が40%を越えると強
度が低下するようになることから、その含有量をNi:
20〜40%、望ましくは21〜30%と定めた。
【0007】(b)P P成分には、焼結性を向上させて軸受強度の向上に寄与
すると共に、素地に分散分布する硬質のCu−P合金を
形成して耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有
量が0.1%未満では前記作用に所望の向上効果が得ら
れず、一方その含有量が0.9%を越えると強度に低下
傾向が現われるようになり、所望の高強度を安定的に確
保するのが難しくなることから、その含有量を0.1〜
0.9%、望ましくは0.3〜0.6%と定めた。
【0008】(c)C C成分は、主として素地に分散分布する遊離黒鉛として
存在し、軸受にすぐれた潤滑性を付与し、もって軸受の
耐摩耗性向上に寄与する作用があるが、その含有量が1
%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方
その含有量が8%を越えると強度が急激に低下するよう
になることから、その含有量を1〜8%、望ましくは2
〜6%と定めた。
【0009】(2)気孔率 Cu−Ni系合金の素地に分散する気孔には、上記の通
り液体燃料の高圧高速流通下で軸受が受ける強い摩擦お
よび高い面圧を緩和し、もって軸受の摩耗を著しく抑制
する作用があるが、その気孔率が5%未満では、素地中
に分布する気孔の割合が少なくなり過ぎて前記作用を十
分満足に発揮することができず、一方その気孔率が25
%を越えると、軸受の強度が急激に低下するようになる
ことから、その気孔率を5〜25%、望ましくは10〜
20%と定めた。
【0010】
【発明の実施の態様】この発明の黒鉛分散型Cu基焼結
合金製軸受を実施例により具体的に説明する。原料粉末
として、いずれも水アトマイズ法により形成され、かつ
いずれも45μmの平均粒径を有するが、Ni含有量の
異なる各種のCu−Ni合金粉末、同じく45μmの平
均粒径を有する水アトマイズCu−P合金(P:33%
含有)粉末、さらに75μmの平均粒径を有する黒鉛粉
末を用意し、これら原料粉末を所定の配合組成に配合
し,ボールミルで40分間混合した後、150〜300
MPaの範囲内の所定の圧力で圧粉体にプレス成形し、
この圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気中、750〜9
00℃の範囲内の所定の温度に40分間保持の条件で焼
結することにより、それぞれ表1に示される組成並びに
気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金で構成され、
かついずれも外形:9mm×内径:5mm×高さ:6m
mの寸法をもった本発明焼結軸受1〜20をそれぞれ製
造した。この結果得られた本発明焼結軸受1〜20の任
意断面を光学顕微鏡(200倍)を用いて観察したとこ
ろ、いずれもCu−Ni系合金の固溶体相からなる素地
にCu−P合金と遊離黒鉛が微細に分散分布し、かつ気
孔も存在する組織を示した。また、比較の目的で、表1
に示される通りの組成とする以外は同一の条件でCu基
焼結合金で構成された軸受(以下、比較焼結軸受とい
う)1〜8をそれぞれ調製した。なお、上記の比較焼結
軸受1〜8は、いずれも合金成分含有量および気孔率の
うちのいずれかがこの発明の範囲から外れたCu基焼結
合金で構成されたものである。
【0011】ついで、上記の本発明焼結軸受1〜20お
よび比較焼結軸受1〜8を外形寸法が長さ:110mm
×直径:40mmの燃料ポンプに組み込み、この燃料ポ
ンプをガソリンタンク内に設置し、 インペラの回転数:3000(最小回転数)〜1000
0(最大回転数)r.p.m.、 ガソリンの流量:45リットル/時(最小流量)〜15
0リットル/時(最大流量)、 軸受が高速回転軸より受ける圧力:最大300KPa、 試験時間:200時間、 の条件、すなわちガソリンが狭い間隙を高速で流通し、
これを生起せしめるモータの高速回転軸によって軸受が
高圧を受け、かつ速い流速のガソリンに曝される条件で
実機試験を行い、試験後の軸受面における最大摩耗深さ
を測定した。この測定結果を同じく表1に示した。ま
た、表1には強度を評価する目的で、それぞれの焼結軸
受の圧壊強度を示した。
【0012】
【表1】
【0013】
【発明の効果】表1に示される結果から、黒鉛分散型C
u基焼結合金で構成された本発明焼結軸受1〜20は、
いずれも高強度を有し、かつCu−Ni系合金の固溶体
相のもつすぐれた耐食性、並びにこれの素地に分散分布
する気孔および硬質のCu−P合金、さらに高い潤滑性
を有する遊離黒鉛の作用で、特にモータ式燃料ポンプの
軸受として用いた場合、ガソリンの高圧高速流通下で、
一段とすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、比較焼
結軸受1〜8に見られる通り、これを構成するCu基焼
結合金の成分含有量および気孔率のうちのいずれかがこ
の発明の範囲から外れると強度および耐摩耗性のうちの
少なくともいずれかの低下は避けられないことが明らか
である。上述のように、この発明の黒鉛分散型Cu基焼
結合金製軸受は、通常の液体燃料を用いるエンジンのモ
ータ式燃料ポンプ用としては勿論のこと、特にモータ式
燃料ポンプの小型化および高駆動化に伴って回転軸から
高面圧を受け、かつ液体燃料の高速流に曝される環境下
で用いた場合でも、さらに液体燃料が不純物として硫黄
やその化合物などを含有する場合にも、すぐれた耐摩耗
性を発揮するものであるから、液体燃料を用いるエンジ
ンの軽量化、並びに高性能化に十分満足に対応できるも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの概略
横断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 1/04 C22C 1/04 A Fターム(参考) 3J011 BA02 DA01 KA02 LA01 SB03 SB15 SB19 4K018 AA04 AB07 KA03 KA22 4K020 AA24 AC04 BB29

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 Ni:20〜40%、 P :0.1〜0.9%、 C :1〜8%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並
    びに5〜25%の気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結
    合金で構成したことを特徴とする、液体燃料の高圧高速
    流通下ですぐれた耐摩耗性を発揮するモータ式燃料ポン
    プの黒鉛分散型Cu基焼結合金製軸受。
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