JP2001300738A - 電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方法および制御装置 - Google Patents
電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方法および制御装置Info
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Abstract
拘わらず、溶接を行う際の溶接条件を他の加圧方式のも
のと共通にすることができる電動サーボ式抵抗溶接装置
の制御方法および制御装置を提供する。 【解決手段】 サーボモータ13の発生する駆動力を電
極11に伝達する駆動力伝達機構14と、前記電極11
により被溶接材W1,W2を所定の加圧力で加圧するよう
に前記サーボモータに指令を発する加圧力指令手段と、
溶接の開始を指令する溶接指令手段31とを備え、前記
電極11による通電開始時点からの被溶接材W1,W2の
熱膨張による同電極11の変位量を検出する変位量検出
手段15と検出された変位量が所定の変位量に達する
と、前記被溶接材W1,W2の熱膨張による加圧力の増大
を前記駆動力伝達機構14における動力伝達特性を参照
して除去するように、前記加圧力指令手段32が発する
加圧力指令を補正する加圧力指令補正手段34とによ
り、スポット溶接中の加圧力を略一定とするものであ
る。
Description
接装置の制御方法および制御装置に関する。さらに詳し
くは、被溶接材の熱膨張による通電状態への影響を排除
するとともに、溶接不良発生打点を自動検出する電動サ
ーボ式抵抗溶接装置の制御方法および制御装置に関す
る。 【0002】 【従来の技術】従来、被溶接材を電極により加圧しつつ
抵抗溶接を行うスポット溶接においては、サーボモータ
で電極を駆動することによって被溶接材を加圧する電動
サーボ方式と、エア圧力によって被溶接材を加圧するエ
ア方式とが行われている。電動サーボ方式はエア方式に
較べて加圧力制御の精度および応答性に優れており、ロ
ボットによるスポット溶接では電動サーボ方式が多用さ
れている。 【0003】しかしながら、電動サーボ方式の抵抗溶接
装置(電動サーボ式抵抗溶接装置)によるスポット溶接
では、サーボモータが発生する回転駆動力を電極に伝達
する駆動力伝達系統がエア方式の抵抗溶接装置(エア式
抵抗溶接装置)のそれと比較して複雑であるため、以下
のような問題が生じる。 【0004】すなわち、図12に示すように、従来の電
動サーボ式抵抗溶接装置100では、上側電極101と
下側電極102との間に一対の被溶接材(以下、ワーク
という)W1´、W2´を重ね合わせて配置し、サーボモ
ータ103の回転駆動力により例えば上側電極101を
上下方向に駆動し、ワークW1´、W2´を各電極10
1、102により所定の加圧力で加圧しつつ溶接するよ
うにされている。サーボモータ103が発生する回転駆
動力はタイミングベルト、ギア、チェーンおよびカップ
リングなどの部材からなる動力伝達機構104を介して
ボールネジ105に伝達され、このボールネジ105で
上下方向の直線的駆動力に変換される。 【0005】ところが、このような従来の電動サーボ式
抵抗溶接装置100では、ボールネジ105の駆動力方
向変換における損失や動力伝達機構104における摩擦
などの原因によりサーボモータ103の回転駆動力が電
極側に100%伝達されることはなく、また逆に電極先
端に働く反力がサーボモータ103側に100%伝達さ
れることもない。このため、サーボモータ103の回転
駆動力を一定に保つことのみによっては、ワークW
1´、W2´を各電極101,102が加圧する加圧力を
一定化することはできない。 【0006】すなわち、図13(a)に示すように、所
定の加圧力Fc´で各ワークW1´、W2´を各電極10
1、102により加圧しつつ通電を開始すると、同図
(b)に示すように、各ワークW1´、W2´の通電部位
が熱膨張し、この熱膨張が発生する反力Fe´が上側電
極101を押し上げるように作用する。このとき、各電
極101、102と対向する各ワークW1´、W2´との
間に働く加圧力Fj´は下記式(7)で表される。 【0007】 Fj´=Fc´+(1−η´)Fe´ (7) 【0008】ここで、η´は動力伝達機構104および
ボールネジ105における駆動力の伝達効率(η´<
1)を表している。すなわち、サーボモータ103にお
ける回転駆動力を一定化すると、実際の加圧力Fj´は
力(1−η´)Fe´だけ所定の加圧力Fc´よりも大
きくなる。なお、動力伝達機構104の摩擦、特に静摩
擦による損失はボールネジ105における損失に比して
無視できる程度のものであるため、伝達効率η´は実質
的にはボールネジ105における伝達効率であるものと
考えてよい。 【0009】このように、実際の加圧力Fj´が所定の
加圧力Fc´よりも大きくなった場合、各電極101、
102先端と各ワークW1´、W2´との間の接触面積が
広くなり、この結果、通電中の溶接電流密度は通電開始
時点よりも低下する。したがって、従来の電動サーボ式
抵抗溶接装置100では、通電中の溶接電流密度の低下
を考慮した溶接条件(通電時間など)を設定する必要が
ある。 【0010】一方、エア式抵抗溶接装置では、エア圧力
の伝達系統が電動サーボ式に比較して簡単であり、エア
圧力伝達系統における伝達効率η´は略値1とみなすこ
とができる。このため、電極が被溶接材を加圧する加圧
力は通電中も略一定であり、電極と被溶接材との接触面
積にも大きな変化は生じないので、通電中の溶接電流密
度も通電開始時点から略一定になるものと考えることが
できる。 【0011】したがって、電動サーボ式抵抗溶接装置と
エア式抵抗溶接装置とでは加圧方式の違いから同じ原理
の抵抗溶接装置でありながら、溶接電流密度が溶接条件
に大きな影響を及ぼす要素であるため、全く別の溶接条
件にしたがって溶接を行う必要がある。ところが、溶接
条件は被溶接材の材質などの様々な要因を考慮して決定
されるものであり、その導出には多大な時間を要するた
め、加圧方式の違いにより個別の溶接条件を導出するこ
とは、溶接工程の作業効率をあげる上での妨げとなると
いう問題がある。 【0012】さらに、従来、電動サーボ式抵抗溶接装置
を用いたスポット溶接では、全ての打点において溶接電
流値が一定とされ、通電時間も全ての打点において一定
とされるので、以下のような問題が生じる。 【0013】すなわち、鋼板などの被溶接材は同一素材
であっても溶接個所毎に表面状態に若干の相違があり、
また、個々の被溶接材毎にその組成も若干相違するのが
通常である。したがって、同一素材の被溶接材に一定の
溶接電流を一定時間印加する場合にも、各溶接箇所の表
面状態の相違の程度によっては印加されるエネルギ量、
つまり熱量の各打点毎における過不足が生じ、所望のナ
ゲットが形成されず、溶接不良を生じることがある。 【0014】このため、全ての打点で溶接が適正に行わ
れたか否かを検知するためには、溶接工程の後工程で人
が全ての打点を検査する必要があり、この場合、溶接品
質を見極める経験的な技術が検査者に要求される上、打
点数が多数に上る場合には検査に多大な時間を要すると
いう問題がある。 【0015】 【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる従来技
術の課題に鑑みなされたものであって、電極が被溶接材
を加圧する加圧方式の相違に拘わらず、溶接を行う際の
溶接条件を他の加圧方式のものと共通にすることができ
る電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方法および制御装置
を提供することを一つの目的とする。また、本発明は不
良溶接箇所および不良溶接の種類を溶接実行時に自動的
に検出することができる電動サーボ式抵抗溶接装置の制
御方法および制御装置を提供することを他の目的とす
る。 【0016】 【課題を解決するための手段】本発明の電動サーボ式抵
抗溶接装置の制御方法の第1形態は、サーボモータで駆
動される電極により被溶接材を加圧しつつ通電してスポ
ット溶接する電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方法であ
って、前記電極による通電開始時点からの前記被溶接材
の熱膨張による同電極の変位量を検出し、該検出された
変位量が所定の変位量に達すると、前記被溶接材の熱膨
張による加圧力の増大を除去するように前記サーボモー
タの駆動力を調節することを特徴とする。 【0017】本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御
方法の第1形態においては、サーボモータの駆動力の調
節が、例えば下記式に基づいてなされる。 【0018】Fmc=Fm・(1−η)/η2 【 0019 】 ここに、 Fmc:加圧力調節量 Fm:サーボモータの回転駆動力 η:駆動力の伝達効率 【0020】また、本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置
の制御方法の第2形態は、サーボモータで駆動される電
極により被溶接材を加圧しつつ通電してスポット溶接す
る電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方法であって、前記
電極による通電開始時点からの前記被溶接材の熱膨張に
よる同電極の変位量を検出し、該検出された通電中にお
ける変位量と溶接終了時点の変位量とに基づいて、溶接
不良箇所および/または溶接不良の種類を検出すること
を特徴とする。 【0021】本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御
方法の第2形態においては、溶接不良箇所および/また
は溶接不良の種類の検出が、例えば電極による通電開始
時点からの被溶接材の熱膨張による電極の変位量に基づ
く溶接状態判定パラメータによりなされ、溶接状態判定
パラメータが所定範囲にあれば、適正なナゲットが形成
されたとし、溶接状態判定パラメータが所定値を超えて
いれば、ナゲット内部にチリが発生したとし、溶接状態
判定パラメータが所定値に達していなければ、ナゲット
の溶け込みが浅いとする。 【0022】一方、本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置
の制御装置の第1形態は、サーボモータの発生する駆動
力を電極に伝達する駆動力伝達機構と、前記電極により
被溶接材を所定の加圧力で加圧するように前記サーボモ
ータに指令を発する加圧力指令手段と、溶接の開始を指
令する溶接指令手段とを備えてなる電動サーボ式抵抗溶
接装置の制御装置であって、前記電極による通電開始時
点からの被溶接材の熱膨張による同電極の変位量を検出
する変位量検出手段と、検出された変位量が所定の変位
量に達すると、前記被溶接材の熱膨張による加圧力の増
大を前記駆動力伝達機構における動力伝達特性を参照し
て除去するように、前記加圧力指令手段が発する加圧力
指令を補正する加圧力指令補正手段とを備えてなること
を特徴とする。 【0023】本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御
装置の第1形態においては、加圧力指令補正手段による
補正が、例えば下記式に基づいてなされる。 【0024】Fmc=Fm・(1−η)/η2 【 0025 】 ここに、 Fmc:加圧力調節量 Fm:サーボモータの回転駆動力 η:駆動力の伝達効率 【0026】また、本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置
の制御装置の第2形態は、サーボモータで駆動される電
極により被溶接材を所定の加圧力により加圧しつつ通電
してスポット溶接する電動サーボ式抵抗溶接装置の制御
装置であって、電極による通電開始時点からの被溶接材
の熱膨張による電極の変位量を検出する変位量検出手段
と、該検出された通電中における変位量と溶接終了時点
の変位量とに基づいて、溶接不良箇所および/または溶
接不良の種類を検出する溶接状態検出手段を備えてなる
ことを特徴とする。 【0027】本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御
装置の第2形態においては、溶接状態検出手段における
溶接不良箇所および/または溶接不良の種類の検出が、
例えば電極による通電開始時点からの被溶接材の熱膨張
による電極の変位量に基づく溶接状態判定パラメータに
よりなされ、溶接状態判定パラメータが所定範囲にあれ
ば、適正なナゲットが形成されたとし、溶接状態判定パ
ラメータが所定値を超えていれば、ナゲット内部にチリ
が発生したとし、溶接状態判定パラメータが所定値に達
していなければ、ナゲットの溶け込みが浅いとする。 【0028】本発明の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御
装置の第2形態においては、溶接状態検出手段による検
出結果を通知する通知手段を備えてなるのが好ましい。 【0029】しかして、本発明の電動サーボ式抵抗溶接
装置の制御装置は電動サーボ式抵抗溶接装置に搭載さ
れ、またその電動サーボ式抵抗溶接装置はロボットに搭
載される。 【0030】 【作用】本発明は前記のように構成されているので、通
電中の加圧力を被溶接部位の熱膨張に拘わらず、通電開
始時点から略一定とすることができ、この結果、溶接部
の溶接電流を略一定とすることができる。 【0031】また、本発明によれば、溶接実行中に溶接
不良箇所や溶接不良の種類を検出することができる。 【0032】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しながら本
発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる
実施形態のみに限定されるものではない。 【0033】本発明の一実施形態に係る電動サーボ式抵
抗溶接装置(以下、溶接装置という)の概略構成を図1
に示し、溶接装置10は、一対の被溶接材(以下、ワー
クという)W1、W2をスポット溶接する、例えばロボッ
トのハンドに取付けられるサーボガンGと、溶接用の電
力を供給する溶接電源20と、サーボガンGおよび溶接
電源20の動作を制御する制御装置30とを備えてな
る。 【0034】サーボガンGは、ワークW1、W2を間に挟
むようにワークW1、W2の上下にそれぞれ配される、ワ
ークW1、W2を所定の加圧力により加圧しつつ通電する
上側電極11および下側電極12と、上側電極11を駆
動するための回転駆動力を発生するサーボモータ13
と、サーボモータ13が発生する回転駆動力を上下方向
の直線的駆動力に変換して上側電極11に伝達する駆動
力伝達機構14と、サーボモータ13の回転角度位置、
すなわち上側電極11の上下方向の位置に応じた信号を
出力するエンコーダ(変位量検出手段)15とから構成
される。 【0035】制御装置30は、溶接電源20にそのオン
・オフを指令する溶接指令手段31と、サーボモータ1
3にその発生する回転駆動力を指令する加圧力指令手段
32と、エンコーダ15の出力信号に基づいて各ワーク
W1、W2溶融部(通電部位)の熱膨張の状態を検出する
溶融部状態検出手段(変位量検出手段)33と、溶融部
の熱膨張による各電極11、12の加圧力増大を排除す
るように加圧力指令手段32が発する加圧力指令を補正
するための加圧力調整量を演算する加圧力調整量演算手
段(加圧力指令補正手段)34と、溶融部状態検出手段
33により検出される、溶融部の熱膨張による上側電極
11の通電中の変位量および溶接終了時点の変位量に基
づいてナゲットの形成状況を判定するナゲット形成状況
判定手段(溶接状態検出手段)35とから構成されてい
る。 【0036】図2に、制御装置30のハードウエア構成
を示す。 【0037】制御装置30は、前記各手段31、32、
33、34および35が各種処理を行うためのプログラ
ムを格納するROM(読み出し専用メモリ)41と、R
OM41から読み出されたプログラムにしたがって各種
演算を実行するCPU(中央演算処理ユニット)42
と、CPU42における演算結果を一時的に記憶するR
AM(随時書込み・読出し可能メモリ)43と、サーボ
モータ13、エンコーダ15および溶接電源20との間
の信号のやり取りを媒介する入出力インタフェース44
と、入出力インタフェース44を介してCPU42に入
力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するA/
D変換器45と、CPU42から入出力インタフェース
44を介して出力されるディジタル信号をアナログ信号
に変換するD/A変換器46と、制御装置30の各構成
要素を同期して動作させる基本クロックを発生するクロ
ック発生器47とから構成されている。 【0038】図3に駆動力伝達機構14の詳細な構成を
示す。 【0039】駆動力伝達機構14は、サーボモータ13
が発生する回転駆動力を回転数を変えて伝達する、図示
省略するタイミングベルト、ギア、チェーンおよびカッ
プリングなどの各部材から構成される回転駆動力伝達部
14aと、回転駆動力伝達部14aにより伝達される回
転駆動力を上側電極11を上下方向に駆動する直線的駆
動力に変換するボールネジ14bとを備えてなる。 【0040】しかして、図4(a)に示すように、加圧
力指令手段32の指令によりサーボモータ13が回転駆
動力を発生し、各電極11、12が所定の加圧力Fcで
ワークW1、W2を加圧すると、溶接指令手段31が溶接
電源20に各電極11、12に所定電圧の電力供給を開
始するように指令する。 【0041】溶接指令手段31の指令により各電極1
1、12による通電が開始されると、図4(b)に示す
ように、各ワークW1、W2の通電部位が発熱し、熱膨張
を開始するとともに当該通電部位にナゲットNが形成さ
れていく。この熱膨張により上側電極11には上方向の
力Feが働くが、この間、サーボモータ13が発生する
回転駆動力(以下、符号Fmで表す)は一定であるた
め、上側電極11は押上げられる。 【0042】このような熱膨張による上側電極11の上
方への変位は、エンコーダ15の出力信号を介して溶融
部状態検出手段33が監視しており、溶融部状態検出手
段33により検出される通電開始時点からの上側電極1
1の変位量Mが所定の変位量Mr(図6参照)に達した
ときに、加圧力調整量演算手段34が各電極11、12
と各ワークW1、W2との間に働く実際の加圧力Fjの増
大を排除するように加圧力指令手段32による指令を補
正するための加圧力調整量Fmcを演算する。 【0043】すなわち、加圧力FjをワークW1、W2の
熱膨張に拘わらず略一定化するためには、駆動力伝達機
構14における駆動力の伝達効率η(η<1)を考慮し
て、下記式(3)が成り立つような加圧力調整量Fmcを
加圧力調整量演算手段34で算出し、この加圧力調整量
Fmcにより加圧指令手段32の指令を補正する必要があ
る。 【0044】 Fj=η(Fm−Fmc)+(1−η)Fe=ηFm (1) 【0045】また、 Fc=ηFm (2) であるから、式(1)をFmcについて解くと、 【0046】 Fmc=Fm・(1−η)/η2 (3) なる関係が得られる。つまり、駆動力伝達機構14にお
ける駆動力の伝達効率ηを参照することによって、ワー
クW1、W2の熱膨張による加圧力Fjの増大を除去する
ようにサーボモータ13の駆動力を調節することが可能
となる。なお、回転駆動力Fmおよび加圧調整量F
mcは、サーボモータ13固有のトルク定数を参照してサ
ーボモータ13への供給電流値を指令する指令値を操作
することで制御可能な要素である。 【0047】図5に制御装置30における処理の流れを
示す。この処理は所定時間毎にCPU42により実行さ
れる。 【0048】先ず、エンコーダ15の出力信号により検
出される上側電極11の通電開始時点からの変位量Mが
所定の変位量Mrを超えたか否かを判定する(ステップ
S1)。M値がMr値を超えた場合は、ワークW1、W2
の通電部位が熱膨張したものとして加圧調整量Fmcを算
出する(ステップS2)。 【0049】次に、算出された加圧調整量Fmcに応じて
加圧力指令手段32が発する加圧力指令を補正し(ステ
ップS3)、溶接が終了したか否かを判定する(ステッ
プS4)。溶接が終了していない場合は前記ステップS
1の処理に戻り、終了した場合は本処理を終了する。 【0050】また、前記ステップS1で変位量Mが所定
の変位量Mrを超えない場合は、通電部位が熱膨張して
いないものとしてステップS4の処理に移行する。 【0051】図6に以上説明した処理のタイムチャート
を示す。同図では、上側電極11の上下方向の位置はエ
ンコーダ15の出力信号値(以下、エンコーダ値ともい
う)Eで示されている。 【0052】時刻t0に上側電極11の降下が開始され
る。時刻t1に各電極11、12が各ワークW1、W2と
接触し、各電極11、12による加圧が開始される。時
刻t2にサーボモータ13の回転駆動力が所定の加圧力
Fcに対応する回転駆動力Fmに達すると、上側電極1
1の降下は停止する。このときのエンコーダ値をE1と
する。 【0053】時刻t3に各電極11、12を介する通電
が開始され、エンコーダ値Eは上昇を開始する。時刻t
4にエンコーダ値EのE1値からの上昇量が所定の変位量
Mrに対応する上昇量を超えると、加圧力調整量Fmcに
よるサーボモータ13の回転駆動力の調整が開始され
る。 【0054】時刻t5に通電が終了すると、熱膨張した
通電部位は収縮を開始する。時刻t6にエンコーダ値E
のE1値からの上昇量が所定の変位量Mrに対応する上昇
量を下回ると、加圧力調整量Fmcによるサーボモータ1
3の回転駆動力の調整が終了される。時刻t7には通電
部位の収縮が止まり、ナゲットNを形成する溶接の全工
程が終了したものとして、上側電極11の初期位置への
退避が開始される。 【0055】以下に、ナゲット形成判定手段35が溶接
状態の良否を判定する処理について説明する。 【0056】図7、図8および図9に、溶接状態の良否
に対応するナゲットNの形成状態を示す。ナゲットNの
形成状態は、電極11、12を介してワークW1、W2に
印加される溶接電流の電気的エネルギ量(もしくは、熱
量)によってその良否が決定される。 【0057】すなわち、エネルギ量が適正であれば、図
7に示すように、溶け込みの適正なナゲットN1が得ら
れる。エネルギ量が不足した場合は、図8に示すよう
に、溶け込みの浅い不良ナゲットN2が形成される。ま
た、エネルギ量が過多な場合は、図9に示すように、ナ
ゲットN3の内部に空洞Vが現れ、チリが発生する。 【0058】図10にナゲットNの各形成状態に対応す
るエンコーダ値Eの変化の様子を示す。 【0059】すなわち、エネルギ量が適正で適正なナゲ
ットN1が形成されている場合(実線L1)は、通電開始
時点t3直後および通電中におけるエンコーダ値Eはエ
ンコーダ値E1に対して変化量が大きく、また溶接終了
時点(電極退避開始時刻)t7におけるエンコーダ値E
もエンコーダ値E1に対して変化量が前記の半分程度と
なる。 【0060】これに対して、エネルギ量が不足し溶け込
みの浅い不良ナゲットN2が形成された場合(一点鎖線
L2)は、エネルギ量が適正で適正なナゲットN1が形成
されている場合(実線L1)と比較して、通電開始時点
t3直後および通電中におけるエンコーダ値Eはエンコ
ーダ値E1に対して変化量が小さく、しかも溶接終了時
点t7におけるエンコーダ値Eもエンコーダ値E1に対し
て変化量が小さくなる。 【0061】一方、エネルギ量が過多でチリが発生した
ナゲットN3が形成されている場合(点線L3)は、通電
開始時点t3直後および通電中におけるエンコーダ値E
はエンコーダ値E1に対して変化量が大きいが、溶接終
了時点t7におけるエンコーダ値Eはエンコーダ値E1に
対して変化量が小さくなる。 【0062】したがって、エンコーダ値E1に対する通
電中のエンコーダ値Eおよびエンコーダ値E1に対する
溶接終了時点のエンコーダ値Eに基づいて、溶接不良の
発生および溶接不良の種類を検出することが可能とな
る。以下具体的に説明する。 【0063】通電開始時点t3のエンコーダ値E1を基準
値としてRAM43に記憶させる。通電中のエンコーダ
値E2の基準値E1からの変化量ΔEwを下記式(4)に
より算出し、その最大値ΔEwmaxをRAM43に記憶さ
せる。 【0064】 ΔEw=E2−E1 (4) 【0065】次に、電極退避開始時刻t7におけるエン
コーダ値E3の基準値E1からの変位量ΔEeを下記式
(5)により算出する。 【0066】 ΔEe=E3−E1 (5) 【0067】ΔEwmaxは通電中にナゲットNに発生する
熱膨張の度合いをエンコーダ値Eの変化量として捉えた
ものであり、ΔEeはナゲットNの溶接終了時点におけ
る収縮の度合いをエンコーダ値Eの変化量として捉えた
ものである。 【0068】そして、下記式(6)により定義されるβ
をナゲットNの形成状態を表すパラメータ(溶接状態判
定パラメータ)として設定する。 【0069】 β=(ΔEwmax−ΔEe)/ΔEwmax (6) 【0070】すなわち、パラメータβが所定範囲内にあ
れば、当該打点では適正なナゲットNが形成されたもの
と判定され、パラメータβが前記所定範囲にない場合は
当該打点では適正なナゲットNが形成されず溶接不良で
あるものと判定される。 【0071】また、パラメータβが前記所定範囲のいず
れの側に外れているかに応じて(図11参照)溶接不良
の種類、すなわちエネルギ量が過多であるのか不足して
いるのかを判定することも可能となる。 【0072】このように、本実施形態の溶接装置10で
は、通電開始時点からの上側電極11の変位量Mが所定
の変位量Mrに達したときにワークW1、W2の通電部位
が熱膨張したものとして、加圧力指令手段32が発する
指令が加圧力調整量演算手段34により算出される加圧
力調整量Fmcに対応して補正されるので、通電部位の熱
膨張による加圧力Fjの増大を除去することができる。
これにより、電動サーボ式溶接装置10における加圧力
Fjを通電部位の熱膨張に拘わらず、溶接中略一定とす
ることができる。 【0073】また、通電中のエンコーダ値E2の通電開
始時点t3におけるエンコーダ値E1からの変化量ΔEw
の最大値ΔEwmaxと、溶接終了時点t7におけるエンコ
ーダ値E3の基準値E1からの変化量ΔEeとに基づいて
パラメータβを定義し、このパラメータβによりナゲッ
トNの形成状態を判定するので、溶接実行時に自動的に
全打点の溶接状態を判定することができる。 【0074】 【実施例】以下、より具体的な実施例により本発明をよ
り具体的に説明する。 【0075】図11に、板厚2mmのSUS304鋼板
を重ねあわせたものをワークW1、W2として用いた場
合、および板厚1mmの301L−MT鋼板を重ねあわ
せたものをワークW1、W2として用いた場合のそれぞれ
について、加圧力Fjを一定に保った状態で溶接電源2
0から供給される溶接電流値Iを変化させたときの、パ
ラメータβの変化の様子を示す。 【0076】同図によれば、いずれの場合においても溶
接状態が良好であればパラメータβは所定範囲(0.5
<β<0.7)内にあることが分かる。また、溶接電流
値Iが小さくナゲットNの形成状態が不十分であればパ
ラメータβは所定範囲から小さい方向に外れる一方、溶
接電流値Iが大きくチリが発生している場合はパラメー
タβは所定範囲から大きい方向に外れる。 【0077】このように、パラメータβに対して適当な
溶接良好領域(所定範囲)を定めることで、ナゲットN
形成状態の良否判定を自動的かつ適切に行うことが可能
となる。また、溶接良好領域の設定は溶接条件に対して
ある程度の余裕度を有しており、被溶接材の材質や板厚
に拘わらず略一定の範囲を用いることができるので、ス
ポット溶接の施工条件毎に煩雑な設定作業を行う必要は
ない。 【0078】なお、このようにして判定されるナゲット
Nの形成状態の判定結果を、溶接不良打点として装置の
操作者や溶接品質の検査者に通知する通知手段を制御装
置10に設けてもよい。 【0079】以上、本発明を実施形態および実施例に基
づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態および
実施例に限定されるものではなく、種々改変が可能であ
る。例えば、本実施形態では溶接装置はサーボガンとさ
れているが、本発明の適用はサーボガンに限定されるも
のではなく、各種の電動式スポット溶接装置に適用でき
る。 【0080】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
電極が被溶接材を加圧する加圧力を通電開始時点から溶
接終了時点まで略一定とすることができ、これによって
電動サーボ式抵抗溶接装置における溶接条件を他の加圧
方式における溶接条件と共通化することができるという
優れた効果を奏する。 【0081】また、スポット溶接の実行時に溶接状態を
自動判定することができ、これによって溶接状態の検査
工程における作業効率を向上させることができるという
優れた効果も奏する。
接装置の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図である。
図である。
す模式図である。
ある。
ンコーダ値の変化を示し、同(b)は回転駆動力の変化
を示す。
態を示す模式図である。
形成状態を示す模式図である。
成状態を示す模式図である。
するための説明図である。
の詳細を示す模式図である。
時における通電部位の変化の様子を示す模式図である。
Claims (11)
- 【請求項1】 サーボモータで駆動される電極により被
溶接材を加圧しつつ通電してスポット溶接する電動サー
ボ式抵抗溶接装置の制御方法であって、 前記電極による通電開始時点からの前記被溶接材の熱膨
張による同電極の変位量を検出し、該検出された変位量
が所定の変位量に達すると、前記被溶接材の熱膨張によ
る加圧力の増大を除去するように前記サーボモータの駆
動力を調節することを特徴とする電動サーボ式抵抗溶接
装置の制御方法。 - 【請求項2】 サーボモータの駆動力の調節が下記式に
基づいてなされることを特徴とする請求項1記載の電動
サーボ式抵抗溶接装置の制御方法。 Fmc=Fm・(1−η)/η2 ここに、 Fmc:加圧力調節量 Fm:サーボモータの回転駆動力 η:駆動力の伝達効率 - 【請求項3】 サーボモータで駆動される電極により被
溶接材を加圧しつつ通電してスポット溶接する電動サー
ボ式抵抗溶接装置の制御方法であって、 前記電極による通電開始時点からの前記被溶接材の熱膨
張による同電極の変位量を検出し、該検出された通電中
における変位量と溶接終了時点の変位量とに基づいて、
溶接不良箇所および/または溶接不良の種類を検出する
ことを特徴とする電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方
法。 - 【請求項4】 溶接不良箇所および/または溶接不良の
種類の検出が、電極による通電開始時点からの被溶接材
の熱膨張による電極の変位量に基づく溶接状態判定パラ
メータによりなされ、 溶接状態判定パラメータが所定範囲にあれば、適正なナ
ゲットが形成されたとし、溶接状態判定パラメータが所
定値を超えていれば、ナゲット内部にチリが発生したと
し、溶接状態判定パラメータが所定値に達していなけれ
ば、ナゲットの溶け込みが浅いとすることを特徴とする
請求項3記載の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御方法。 - 【請求項5】 サーボモータの発生する駆動力を電極に
伝達する駆動力伝達機構と、前記電極により被溶接材を
所定の加圧力で加圧するように前記サーボモータに指令
を発する加圧力指令手段と、溶接の開始を指令する溶接
指令手段とを備えてなる電動サーボ式抵抗溶接装置の制
御装置であって、 前記電極による通電開始時点からの被溶接材の熱膨張に
よる同電極の変位量を検出する変位量検出手段と、 検出された変位量が所定の変位量に達すると、前記被溶
接材の熱膨張による加圧力の増大を前記駆動力伝達機構
における動力伝達特性を参照して除去するように、前記
加圧力指令手段が発する加圧力指令を補正する加圧力指
令補正手段とを備えてなることを特徴とする電動サーボ
式抵抗溶接装置の制御装置。 - 【請求項6】 加圧力指令補正手段による補正が下記式
に基づいてなされることを特徴とする請求項5記載の電
動サーボ式抵抗溶接装置の制御装置。 Fmc=Fm・(1−η)/η2 ここに、 Fmc:加圧力調節量 Fm:サーボモータの回転駆動力 η:駆動力の伝達効率 - 【請求項7】 サーボモータで駆動される電極により被
溶接材を所定の加圧力により加圧しつつ通電してスポッ
ト溶接する電動サーボ式抵抗溶接装置の制御装置であっ
て、 電極による通電開始時点からの被溶接材の熱膨張による
電極の変位量を検出する変位量検出手段と、 該検出された通電中における変位量と溶接終了時点の変
位量とに基づいて、溶接不良箇所および/または溶接不
良の種類を検出する溶接状態検出手段とを備えてなるこ
とを特徴とする電動サーボ式抵抗溶接装置の制御装置。 - 【請求項8】 溶接状態検出手段における溶接不良箇所
および/または溶接不良の種類の検出が、電極による通
電開始時点からの被溶接材の熱膨張による電極の変位量
に基づく溶接状態判定パラメータによりなされ、 溶接状態判定パラメータが所定範囲にあれば、適正なナ
ゲットが形成されたとし、溶接状態判定パラメータが所
定値を超えていれば、ナゲット内部にチリが発生したと
し、溶接状態判定パラメータが所定値に達していなけれ
ば、ナゲットの溶け込みが浅いとすることを特徴とする
請求項7記載の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御装置。 - 【請求項9】 溶接状態検出手段による検出結果を通知
する通知手段を備えてなることを特徴とする請求項7記
載の電動サーボ式抵抗溶接装置の制御装置。 - 【請求項10】 請求項5ないし請求項6記載の制御装
置を備えてなることを特徴とする電動サーボ式抵抗溶接
装置。 - 【請求項11】 請求項10記載の電動サーボ式抵抗溶
接装置を備えてなることを特徴とするロボット。
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