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JP2001346866A - ハイブリッド樹脂材料およびその製造方法 - Google Patents

ハイブリッド樹脂材料およびその製造方法

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Publication number
JP2001346866A
JP2001346866A JP2000174226A JP2000174226A JP2001346866A JP 2001346866 A JP2001346866 A JP 2001346866A JP 2000174226 A JP2000174226 A JP 2000174226A JP 2000174226 A JP2000174226 A JP 2000174226A JP 2001346866 A JP2001346866 A JP 2001346866A
Authority
JP
Japan
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soluble substance
resin material
substance
hybrid resin
gelatin
Prior art date
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Pending
Application number
JP2000174226A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuharu Noisshiki
泰晴 野一色
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NAISEMU KK
Original Assignee
NAISEMU KK
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Filing date
Publication date
Application filed by NAISEMU KK filed Critical NAISEMU KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶解性物質の生体内での溶解性を実質的に維
持しつつ、該溶解性物質が多孔性疎水性樹脂の孔ないし
間隙に充填された後には、その溶解性物質の徐放出を可
能とするハイブリッド材料を提供する。 【解決手段】 疎水性樹脂からなる多孔質構造を構成す
る孔ないし間隙中に溶解性物質を配置するに際して、極
性溶媒を用いた二次元または三次元的な構造変化を溶解
性物質に対して与える。これにより、前記溶解性物質が
含水極性溶媒に溶解可能であり、且つ該溶解性物質が前
記多孔質構造内に配置された状態においても前記含水極
性溶媒に溶解可能であるハイブリッド樹脂材料となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、疎水性樹脂からな
る多孔質構造と、該多孔質構造内の孔および/又は間隙
内に配置された溶解性材料とを含むハイブリッド(混
成)樹脂材料であって、多孔質構造内への配置により溶
解性材料の適度な溶解遅延を得ることが可能な疎水性樹
脂材料に関する。
【0002】本発明のハイブリッド樹脂材料は、例え
ば、生体内または生体表面への配置に適合性を有する材
料としてに好適に使用可能であり、特に、生体内または
生体表面で柔軟性を有しつつ(半)永久的な力学的強度
を維持し、更に一定期間経過後には細胞親和性を必要と
する生体の部位に植え込み可能な材料として好適に使用
可能である。
【0003】
【従来の技術】本発明のハイブリッド樹脂材料は、多孔
質構造内への配置による溶解性材料の適度な溶解遅延が
要求される分野に特に制限なく適用可能であるが、ここ
では先ず、生体内または生体表面への配置に適合性を有
する材料(特に、一定期間経過後には細胞親和性を必要
とする部位に植え込み可能な材料)に関連する背景技術
について述べる。
【0004】生体内または生体表面で柔軟性を有しつ
つ、(半)永久的な力学的強度及び一時的な物質移動遮
断作用、液状物質漏れ防止作用等が必要とされ、更に一
定期間経過後には細胞親和性も必要とする部位に植え込
まれる場に適した材料としては、人工骨、人工血管、パ
ッチ材料等の領域において、既にいくつかの技術が開発
されている。
【0005】このような材料の代表的な技術としては、
コラーゲン被覆人工血管が挙げられる。このコラーゲン
被覆人工血管は生体内で柔軟性を保ちつつ、(半)永久
的に生体内における内圧によっても破裂しない強度を維
持し、植え込み直後には内腔からの血液の漏れ、詰まり
物質の壁を介しての移動を遮断し、更に植え込み後長期
間経過すると、人工血管を被覆していたコラーゲンが生
体内で吸収され、生体に由来するホストの細胞がコラー
ゲンを置換して、結果として該人工血管が生体親和性を
有するようになる。
【0006】既に実用化されているコラーゲン被覆人工
血管の技術としては数種が知られているが、代表的な技
術としてHoffman, Jr.、Harmonらによる米国特許第5,
197,977号がある。このコラーゲン被覆人工血管
は、柔軟な合成高分子材料製繊維材料で作成された筒状
で、120mmHg(1mmHg=133.322kP
a)における透水性が3,000l/min・cm以下
の有孔性の構造体に、コラーゲンで作成した泥状の生体
内分解性物質をマッサージをしつつ塗り込むことによっ
て該構造物をコラーゲンで被覆し、更に、被覆したコラ
ーゲンを不溶化するために該コラーゲンを化学架橋剤に
よって架橋しておく技術である。これによって、被覆・
架橋されたコラーゲンが一時的に人工血管を介する生体
内での物質の移動、例えば血液の漏れ等を阻止し、一定
期間経過後には該コラーゲンが生体内で分解され(生体
由来の細胞がコラーゲンを置換し)、結果として上記人
工血管が細胞親和性を発揮することとなる。最終的に
は、生体内では分解されない筒状の合成高分子材料が
(半)永久的な力学的強度を維持する。
【0007】この米国特許5,197,977号では、
合成高分子基材としてポリエチレンテレフタレートの繊
維を用い、その繊維を編み、または織ることで筒状構造
物を作製し、更にその筒状構造物にコラーゲンを被覆し
ている。この技術を用いたコラーゲン被覆人工血管は現
在全世界で臨床的に使用されており、これにより、人工
血管植え込み直後の人工血管を介する出血問題など、こ
れまで困難視されていたいくつかの問題点が解決されて
いる。
【0008】この他、上記に関連する技術として、米国
特許第4,842,575号、国特許第5,108,4
24号、国特許第5,131,907号、国特許第5,
609,631号、米国特許第5,693,098号、
米国特許第4,416,208号、米国特許第5,89
5,419号、米国特許第4,581,028号、米国
特許第5,716,660号、米国特許第4,581,
028号、等が挙げられる。
【0009】これらの特許のうち、米国特許第4,84
2,575号、米国特許第5,108,424号等は、
人工血管壁からの血液の漏れを予防するために、生体内
分解性のコラーゲンと、生体内非分解性のダクロン繊維
(Dupont社商標;ポリエステル製繊維)の筒状構造物と
を組み合わせたものである。また、米国特許第5,71
6,660号は、生体内分解性のコラーゲンと、熱延伸
したe−PTFEの筒状構造物とを組み合わせたもので
ある。更に、米国特許第4,581,028号では感染
防止を目的として、金属も同時に混合、Trappingにより
固定化している。また、米国特許第5,131,907
号では、血管内皮細胞の播種に有利な状況を作るための
目的でも、コラーゲンの被覆が用いられている。
【0010】ダクロン、すなわちポリエステル繊維で作
成した人工血管のみでは、構造が単純なことにより表面
積は少なく、物質の吸収、吸着量に限りがあるために、
このような合成高分子材料に抗血栓性薬剤や細胞成長因
子、抗感染性物質、抗生物質等の機能性物質を吸着さ
せ、生体内で徐放出させることは困難である。しかしな
がら、人工血管に生体内分解性物質であるコラーゲン等
が被覆されていれば、コラーゲン等がこれら薬剤等の機
能性物質を吸着し、そして該人工血管が生体内に植え込
みされた後に、該コラーゲンの生体内における分解によ
り、その中に吸着されていた機能性物質等が徐放出可能
となるので、人工血管に多機能を持たせることが可能と
なる。このような技術が臨床的に有用であることは、既
に周知である。
【0011】従って、ポリエステル繊維を主とした生体
内非分解性材料と、生体内分解性材料とを含むハイブリ
ッド型材料は、上記したような機能性の付与が可能な点
から、人工血管のみならず多くの領域で使用されてお
り、今後もその利用範囲が広がるものと予測されてい
る。
【0012】人工血管としては、上記ポリエステル繊維
を用いた製品の他に、現在e−PTFE(延伸・多孔化
PTFE)製の人工血管があり、主として末梢血管領域
で使用されている。このe−PTFE人工血管と生体内
分解性材料とのハイブリッド化の技術としては、K. Oki
taによる米国特許第4,193,138号がある。これ
は、e−PTFE人工血管のフィブリル間隙に水溶性物
質を染み込ませ、その水溶性物質を水不溶性にする技術
である。この技術によって、e−PTFE人工血管の内
部のみならず表面も親水性物質で覆われる。このための
生体内吸収性物質として、K. Okitaはポリビニルピロリ
ドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、
ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル
およびポリメタクリル酸、セルロースのヒドロキシエス
テルまたはカルボキシエステル、ポリサッカライド等を
単独または混合して使用することを推奨している。e−
PTFE人工血管は、元来は疎水性物質であるが、この
処置によって、e−PTFE人工血管に親水性を賦与す
る事が可能となる。
【0013】K. Okitaの推奨するポリアクリル酸、ポリ
ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレ
ンオキシド、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、
ポリアクリルおよびポリメタクリル酸、セルロースのヒ
ドロキシエステルまたはカルボキシエステル、ポリサッ
カライド等のポリマーは親水性が強いため、疎水性を有
するe−PTFE人工血管に弾かれて、e−PTFEフ
ィブリルの狭い間隙には入りにくい。この欠点を補うた
め、K. Okitaは、始めにe−PTFE人工血管をメタノ
ール、エタノール、アセトン、または界面活性剤の中に
浸すという前処置を施し、次にこのe−PTFE人工血
管を水中に浸して前記メタノール、エタノール、アセト
ン、または界面活性剤を水と置換させ、次に親水性の生
体内分解性材料の液中に上記水置換処理後のe−PTF
E人工血管を浸すという3段階方式を推奨している。
【0014】K. Okitaは、e−PTFE人工血管のフィ
ブリル間隙に挿入されたこれらのポリマーの不溶化方法
として熱架橋方法を採用しており、この目的のためにe
−PTFE人工血管を150〜160℃に加熱してい
る。更にK. Okitaは、アセチル化、エステル化等で水溶
性ポリマーを巨大分子として不溶化をすることをも推奨
している。
【0015】すなわち、本来が疎水性であるe−PTF
E製の人工血管においては、如何にして親水性の生体内
分解性材料とのハイブリッド状態を作るか、如何にして
生体内分解性材料をe−PTFE人工血管の壁内に絡め
ておくか、如何にして生体内分解性材料を不溶化させる
か、等がそれぞれの技術上における工夫のポイントであ
った。
【0016】このようにしてe−PTFE人工血管のフ
ィブリル間隙に親水性材料を挿入される技術が開発され
たが、K. Okitaが採用したように親水性材料を熱架橋す
ると、K. Okita自身も指摘するように、親水性の生体内
分解性材料の特徴である親水性の性質が低下し、含水性
が落ちる場合もある。更に、このようにして親水性物質
をe−PTFE人工血管のフィブリル間隙に挿入した場
合であっても、e−PTFE人工血管の表面は親水性と
なるが、e−PTFE人工血管壁内部はあくまでも疎水
性のままである。したがって、e−PTFE人工血管の
フィブリル間隙に親水性物質が挿入されても、e−PT
FE人工血管全体を含水性としてヒドロゲル形成性を与
える状態とさせることが困難な場合もある。
【0017】上記したK. Okitaの技術とは別に、e−P
TFE人工血管と生体内分解性材料とのハイブリッド化
の技術としては、K Weadock 、DJ Lentz、RJ Zdrahala
らによる米国特許第5,665,114号および米国特
許第5,716,660号がある。彼らはe−PTFE
人工血管のフィブリルの間隙にpH7.4付近では不溶
性である天然由来(natural origin)の生分解性材料を
充填する技術を開発した。
【0018】彼らは、天然由来の生分解性材料としてコ
ラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、お
よびこれらの混合物を推奨し、更にK. Okitaが米国特許
第4,193,138号で推奨したポリビニルアルコー
ルも含めて、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリ
コール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロ
キシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセル
ロース等も推奨している。
【0019】これらの中でも、彼らは特にコラーゲンを
入れることを重要視している。天然由来で全く化学処理
を行っていないコラーゲン線維は、pH7.4付近では
水に溶けにくい。この点において、K. Weadock、DJ Len
tz、RJ Zdrahala らによる米国特許第5,665,11
4号および米国特許第5,716,660号では、コラ
ーゲンの水素イオン濃度の差による形態変化を利用して
いる。すなわち、コラーゲンは酸性領域ではイオン強度
が低くなるので、膨潤・溶解状態になり易い。そこで、
この酸性状態においてコラーゲンを溶解させてe−PT
FE人工血管のフィブリルの間隙に充填させ、その後に
水素イオン濃度を変化させて中性領域に戻しコラーゲン
を不溶化させ、更にホルマリン蒸気によってコラーゲン
を化学的に架橋処理する不溶化処置を追加している。
【0020】この方法は、等電点がアルカリ領域にある
コラーゲンにおいては有効であるが、他の物質、例え
ば、彼らの推奨するフィブロネクチン、ラミニン、ポリ
ビニルアルコール等では水素イオン濃度の変化によって
形態や水溶度に顕著な違いが生じることはないため、酸
性領域における溶解と言う点では効果は少ない。従っ
て、彼らの方法は天然由来で全く化学処理を行っていな
いコラーゲン線維に対してのみ有効な特別の手段であ
る。
【0021】前述したようにe−PTFE人工血管は疎
水性であり、これらに対して親水性物質の水溶液を滲み
込ませるためには、特別の工夫が必要である。また、た
とえ疎水性物質であるe−PTFE人工血管のフィブリ
ルの間隙にコラーゲン等が充填させられても、このよう
な親水性物質は、常に疎水性物質であるe−PTFEの
表面から解離しようとする性質があるため、不安定な状
態にある。
【0022】換言すれば、水素イオン濃度を変化させる
ことによってコラーゲン等水溶性を高めても、疎水性物
質であるe−PTFE人工血管のフィブリルの間隙には
染み込まない。このような問題点を解決するために、K
Weadock 、DJ Lentz、RJ Zdrahala らは米国特許第5,
716,660号ではe−PTFE人工血管を予めプラ
ズマ処理し、その表面を改質することによってe−PT
FEの親水性を高める処置を推奨している。これはK. O
kitaによる米国特許第4,193,138号における3
段階手法とは異なる手段であるが、親水性が高められた
e−PTFE人工血管のフィブリル間隙に対しては、親
水性物質を侵入させ易くなる可能性がある。
【0023】彼らは更に、e−PTFE人工血管の一方
の末端を閉じて、他の末端からコラーゲン溶液等を圧力
をかけて注入している。この注入時間と圧力差は厳密で
はないが1〜10分間であり、e−PTFE人工血管の
有孔性によっても異なるが、人工血管の孔がコラーゲン
等で満たされるまで該注入を行っている。
【0024】この方法では、加圧によってコラーゲン等
がe−PTFE人工血管の孔の中に積層され、孔のスペ
ースをほぼコラーゲン等が占める状態としている。従っ
て、e−PTFE人工血管とコラーゲン等の生体内分解
性物質との関係は機械的な絡まりである。しかしなが
ら、この際におけるコラーゲン等の生体内分解性物質の
溶液濃度についての記載はない。
【0025】したがって、生体内分解性物質の体積的占
拠によって、e−PTFE人工血管の孔は塞がれる状態
であると考えられる。これは有孔性人工血管の被覆方法
として極めて一般的な考え方である。しかしながら、こ
の方法では疎水性を有するe−PTFE人工血管の狭い
フィブリル間隙に親水性を有するコラーゲン溶液を注入
するには、それなりの圧力をかける必要がある。
【0026】一方、生体内分解性材料の不溶化方法とし
ては、米国特許第5,197,977号に示されている
ように、フォルムアルデヒドが一般的に使用されてい
る。他方、グルタールアルデヒドやジアルデヒド殿粉、
ポリエポキシ化合物、イソシアネート化合物等の化学薬
品もそれぞれ架橋作用を有することから、このような生
体内分解性材料の不溶化の目的に一般的に用いられてい
る。
【0027】しかしながら、最近の報告では、コラーゲ
ン被覆され、ホルムアルデヒド等の化学架橋剤で不溶化
処置を受けた人工血管の植え込みにあたって、ホルムア
ルデヒド等の化学架橋剤が細胞毒性を有することが報告
されている(DP Speer et al.: J. Biomed. Mater. Res.
14;753〜764,1980)。一般に架橋剤によ
る細胞毒性は以前から報告されており、植え込み後、1
年以上経過してもその細胞毒性が生じることも報告され
ている。
【0028】K. Okitaによる米国特許第4,193,1
38号及びK. Weadock、DJ Lentz、RJ Zdrahala らによ
る米国特許第5,665,114号および米国特許第
5,716,660号の技術でいずれも工夫を凝らして
いる点は、e−PTFE人工血管の表面及びフィブリル
間隙に充填させた物質を生体内で不溶化させることであ
る。
【0029】K. Okitaによる米国特許第4,193,1
38号では熱架橋を用いて充分な架橋が入るように、1
50度〜160℃の加熱を行っており、水溶性の材料を
水不溶性の物質に変化させている。しかしながら、水溶
性の材料を完全に水不溶性とするには充分な熱架橋を行
わねばならず、それによって親水性材料は疎水的となる
欠点があった。そのため親水性材料であっても含水性が
低下して、材料全体が硬化する欠点が見られた。K. Oki
taによる米国特許第4,193,138号でも指摘され
ているように、架橋程度が低い場合には溶解性物質は部
分的に溶解性のままである。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した従来技術の欠点を解消したハイブリッド樹脂材料を
提供することにある。本発明の他の目的は、溶解性物質
の生体内での溶解性を実質的に維持しつつ、該溶解性物
質が多孔性疎水性樹脂の孔ないし間隙に充填された後に
は、その溶解性物質の徐放出を可能とするハイブリッド
材料を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結
果、従来におけるようにpH変化、架橋剤の使用等によ
り溶解性物質(例えばタンパク質)を構成する個々の官
能基(例えばタンパク質を構成する個々のアミノ酸の官
能基)自体に、いわば一次元的に水不溶性を付与するこ
とを必須とするのではなく、疎水性樹脂からなる多孔質
構造を構成する孔ないし間隙中に溶解性物質を配置する
際に、極性溶媒を用いた二次元または三次元的な構造変
化を与えて、むしろ二次元または三次元的な変性と類似
の変化を一時的に溶解性物質に与えることが、上記目的
の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0032】本発明の疎水性樹脂ハイブリッド材料は上
記知見に基づくものであり、より詳しくは、疎水性樹脂
からなる多孔質構造と、該多孔質構造を構成する孔およ
び/又は間隙内に配置された溶解性物質とを少なくとも
含み、前記溶解性物質が極性溶媒に溶解可能であり、且
つ該溶解性物質が前記多孔質構造内に配置された状態に
おいても前記含水極性溶媒に溶解可能なものである。
【0033】更に、本発明によれば極性溶媒に溶解可能
な溶解性物質の極性溶媒への溶解または分散液を、疎水
性樹脂からなる多孔質構造の孔および/又は間隙内に配
置することにより、該溶解性物質が前記多孔質構造内に
配置された状態においても前記極性溶媒に溶解可能なハ
イブリッド材料を形成するハイブリッド樹脂材料の製造
方法が提供される。
【0034】本発明者の知見によれば、上記構成を有す
る本発明の疎水性樹脂ハイブリッド材料において好適な
効果が得られる理由は、以下のように推定される。すな
わち、本発明においては、溶解性物質(通常、その分子
中に親水性部分と疎水性部分とを有する)を疎水性樹脂
からなる多孔質構造に配置するに際して、該溶解性物質
は極性溶媒(例えば、含水溶媒)中に溶解ないし分散さ
れた状態にある。この際、溶解性物質は、極性溶媒の極
性(または親水性−疎水性のバランス)に対応して、該
溶解性物質を構成する親水性基および/又は疎水性基の
溶媒に対する個々の方向性が、完全なる親水性溶媒たる
100%の水中にある場合(親水性基が、ほぼ完全に外
側の溶媒方向を向いた状態)とは異なる二次元または三
次元的な配置(コンフォメーション)、すなわち、親水
性基がある程度溶解性物質の分子内部の内側方向を向
き、疎水性基がある程度外側の溶媒方向を向いた状態を
取っていると推定される。
【0035】本発明においては、極性溶媒中の溶解性物
質が上記したような特有のコンフォメーション(100
%の水中よりはやや疎水的な親水性−疎水性の方向性の
バランス)を取っているため、疎水性樹脂からなる多孔
質構造内にもスムーズに配置可能となると推定される。
他方、このように多孔質構造内に配置された溶解性物質
のコンフォメーションは、所定の環境(例えば、生体内
の親水的環境)下で、徐々に該環境に対応したコンフォ
メーション(例えば、水中にある時と同様に、親水性基
が、ほぼ完全に外側の溶媒方向を向いた状態)に戻ると
推定される。しかしながら、この際には、溶解性物質は
既に疎水性樹脂からなる多孔質構造内に配置された後で
あるため、その溶解性は、疎水性樹脂からなる多孔質構
造という「場」の影響を強く受ける(例えば、水分子の
溶解性物質への接近が、疎水性樹脂に基づく反発により
抑制ないし低減される)こととなると推定される。本発
明においては、このような「場」の効果により、溶解性
物質の好適な「遅延した溶解性」が得られると推定され
る。
【0036】別の観点から見れば、本発明の特徴は、例
えば哺乳類の生理的条件(典型的にはpH7.4)下で
あっても、含水極性溶媒の利用により溶解性物質の溶解
ないし分散性を、疎水性樹脂の孔ないし間隙内に充填が
容易なようにコントロール可能にすることを利用して、
溶解性物質をマイルドに且つ実質的にintactに疎水性樹
脂の孔ないし間隙内に充填できることを見いだしたこと
にある。この技術の組み合わせによって、疎水性樹脂か
らなる多孔性構造の孔ないし間隙に溶解性物質が充填さ
れた後にも実質的にintact故の溶解性を保持しつつ、そ
れでいて疎水性樹脂の「場」の効果に基づき急速には溶
解せず、徐々に溶解性材料を疎水性樹脂の孔ないし間隙
から徐々に生体内へ放出させることが可能となると推定
される。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、必要に応じて図面を参照し
つつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載におい
て量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り
質量基準とする。 (ハイブリッド材料)本発明のハイブリッド材料は、疎
水性樹脂からなる多孔質構造と、該多孔質構造を構成す
る孔ないし間隙内に配置された溶解性物質とを少なくと
も含む。この溶解性物質は含水極性溶媒に溶解可能であ
り、且つ、前記多孔質構造内に配置された状態において
も含水極性溶媒に溶解可能である。ここに「含水極性溶
媒に溶解可能」とは、50%エタノール−蒸留水溶液に
完全に溶解可能であることをいう。溶解性物質を単独で
含水極性溶媒に完全に溶解するために必要な溶解時間
(S)と、疎水性樹脂材料内配置された状態における溶
解性物質を含水極性溶媒に完全に溶解するために必要な
溶解時間(H)との比(H/S)は、1.2以上、更に
は1.5以上(特に2.0以上)であることが好まし
い。
【0038】本発明において、このような溶解性の有
無、および溶解時間は、例えば、以下のようにして好適
に確認することが可能である。 <溶解性・溶解時間の確認方法>溶解すべき物質の所定
量(例えば、約1g)をガラス製のビーカーに取り、そ
の溶解性物質の体積の1000倍の50%エタノール−
蒸留水溶液を該ビーカーに静かに加えて、室温(25
℃)でスターラーで1秒間に1回攪拌しつつ静置する
(この際、50%エタノールを調製するための蒸留水と
しては、pH約7〜7.4の範囲内のものを用いる。こ
の場合、蒸留水のpHは、必要に応じて、pH調整剤等
で調整してもよい。)。
【0039】この状態で溶解性物質の状態を目視で継続
的に観察し、溶解性物質がその原型を全く留めない状態
まで消失する時間をもって「完全に溶解」した時間と定
義する。この完全に溶解した時間が24時間以内である
場合に、本発明において「溶解性あり」と定義する。上
記した疎水性樹脂の多孔質構造内に配置された溶解性物
質の溶解時間(H)の測定に際しては、特に記載のない
限り(疎水性樹脂+溶解性物質)の体積の1000倍の
50%エタノール−蒸留水溶液を用いることとする。 (疎水性樹脂)本発明においては、生体内における長期
安定性と生体適合性の点から、溶解性物質を一定時間の
間保持すべき多孔質構造を構成する材料として疎水性樹
脂を用いる。
【0040】上記した溶解性物質を一定時間保持するこ
とが可能である限り、本発明で使用可能な疎水性樹脂は
特に制限されないが、酸素、窒素またはイオウ原子を含
む極性基(例えば、−OH、−COOH、−NH2 基、
−SO3 H基、等)の1分子当たりの平均の合計数をP
nとし、その樹脂の重量平均分子量をMwとした場合
に、それらの比(Pn/Mw)で好適に規定することが
できる。臨床的に疎水性樹脂が多用されているという観
点からは、このPn/Mwは、1/100以下(更には
1/200以下、特に1/300以下)の樹脂が好適に
使用可能である。上記特性を有する限り、ホモポリマ
ー、コポリマー、ポリマーブレンド、複合化ポリマー等
のポリマーの態様は問わない。
【0041】疎水性樹脂の好適な例としては、含フッ素
樹脂、含ケイ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステ
ル樹脂等が挙げられる。このような含フッ素樹脂として
は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
樹脂等が挙げられる。また、上記含ケイ素樹脂として
は、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。上記ポリ
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(P
P)樹脂等が挙げられる。
【0042】生体内における安定性ないし毒性の点から
は、これらの中でも含フッ素樹脂、含ケイ素樹脂が好ま
しい。 (多孔質構造)本発明においては、上記した疎水性樹脂
を多孔質構造として用いる。その多孔質構造の孔および
/又は間隙内への溶解性物質の充填、および一定時間の
保持が可能である限り、本発明で使用可能な多孔質構造
は特に制限されないが、上記多孔質構造はフィブリル
(すなわち、繊維含有)構造を有していることが好まし
い。このようなフィブリル構造は、特に制限されない。
フィブリル構造の具体例としては、例えば、織物、編み
物、ネット状構造、不織布、フェルト等が挙げられる。
【0043】布製の場合には、ANSI/AAMI(As
sociation for the Advancement ofMedical Instrument
ation American National Standard Institute, Inc.(1
994年))に規定するWater Permeabilty で、6000
〜50mlの範囲以下、更には2000〜50mlの範
囲程度(特に1000〜100mlの範囲程度)である
ことが好ましい。e−PTFE等のように水を透過させ
ない材料の場合には、Fibril length で300μm〜5
μm、更には100〜20μm(特に50〜25μm)
であることが好ましい。 (溶解性物質)上記した疎水性樹脂の多孔質構造の孔な
いし間隙内に配置すべき溶解性物質は、その分子中に親
水性部分と疎水性部分とを有することが好ましい。ここ
に、「親水性部分」とは、酸素、窒素またはイオウ原子
を含む極性基(例えば、−OH、−COOH、−NH2
基、−SO3 H基、等)を有する部分(例えば、モノマ
ーユニット)をいい、「疎水性部分」とは、このような
極性基を有しない部分をいう。溶解性物質の全部または
一部がタンパク質である場合、親水性部分は親水性アミ
ノ酸から構成され、疎水性部分は疎水性アミノ酸から構
成される。
【0044】上記溶解性物質は、含水有機溶媒中と水中
とで異なる溶解性を示す限り、特に制限されない。溶解
度は、以下の方法で好適に測定可能である。 <溶解度の測定方法> 溶媒:50%エタノールまたは蒸留水 pH:7〜7.4(市販のpH計、例えば、Orion 社
製、商品名model 230Aを用いて確認可能) 溶解性物質の溶媒への溶解方法:スターラーで100回
/分撹拌し、徐々に溶媒内に入れる。
【0045】上記溶解性物質は、生体内への配置可能な
多孔性構造への充填および徐放出を容易とする点から
は、pH7.4における50%エタノールへの溶解度が
0.1%以上、更には0.5%以上、特に1.0%以上
であることが好ましい。本発明において好適に使用可能
な溶解性物質としては、例えば、タンパク質として後述
するゼラチン、サクシニール化ゼラチン、アルキル化ゼ
ラチン等が挙げられる。この溶解度測定においては、必
要に応じて、一たん加温(50℃程度)してもよい。
【0046】(蒸留水の溶解性)本発明における「蒸留
水」中の溶解性としては、溶解性物質の100倍の容量
のpH7〜7.4付近の蒸留水に室温でスターラーで1
00回/分で撹拌するという条件下で、1週間以内に原
型を全く留めない状態まで消失した場合には、溶解性物
質が蒸留水に対しても溶解性があると定義する。
【0047】(生理的条件下の溶解性)更に生理的な条
件下で、特にコラーゲンやゼラチン等の溶解性を調べる
に際しては、溶解すべき物質の少なくとも100倍の容
量の0.1%のコラーゲナーゼのpH7.4のリン酸バ
ッファー溶液に於いて、37℃で保温し、12時間毎に
スターラーで100回転/分の条件で撹拌した際に、7
2時間以内に溶解すべき物質が原型を全く留めない状態
まで消失した場合をもって、溶解性があると定義するこ
ととする。
【0048】フォルムアルデヒドまたはグルタールアル
デヒドで架橋したコラーゲン膜、例えば牛の心膜等は、
このような条件では全く溶解性を示さない。他方、13
5℃で24時間熱架橋したゼラチンスポンジの膜は、溶
解性を示す。
【0049】本発明において使用可能な溶解性物質(例
えば、pH7.4付近で溶解可能な物質)は、その種
類、形態等は特に制限されない。同じ物質であっても、
前述したように、条件を変えることで溶解速度を制御さ
せることも可能である。 (溶解性物質の具体例)本発明で使用可能な溶解性物質
の具体例としては、生体関連物質としては例えば、ポリ
グリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸
共重合体、生分解性(3ーヒドロキシルブレートー4ー
ヒドロキシルブチレート)ポリエステル重合体、ポリジ
オキサン、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、キトサ
ン、キチン、燐脂質、セルロース、フィブロイン、フィ
ブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロタミ
ン、遺伝子操作によって哺乳類以外の生物から作成させ
たコラーゲン、遺伝子操作によって哺乳類以外の生物か
ら作成させたゼラチン、遺伝子操作によって哺乳類以外
の生物から作成させたヒアルロンサン、遺伝子操作によ
って哺乳類以外の生物から作成させたラミニン、遺伝子
操作によって哺乳類以外の生物から作成させたコンドロ
イチン硫酸、遺伝子操作によって哺乳類以外の生物から
作成させたアルブミン、遺伝子操作によって哺乳類以外
の生物から作成させた生体内分解性物質、ポリビニール
アルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニールアミ
ン、ポリエチレンイミン、ポリビニールポリピロリド
ン、ポリアクリール酸、およびそれらの誘導体、等が挙
げられる。これらは必要に応じて溶解性の程度を調節し
た後に、使用してもよい。本発明で使用可能な溶解性物
質は、前記した「溶解性」の条件を満たす限り、生体関
連物質に制限されない。
【0050】本発明で使用可能な溶解性物質は、前記し
た「溶解性」の条件を満たす限り、天然由来材料であっ
ても、合成高分子由来材料であっても、遺伝子工学的に
生物に作らせた材料であっても、あるいはそれらの誘導
体であってもよく、また必要に応じて、それらを組み合
わせたことによる混合物、複合体、集合体であってもよ
い。
【0051】上記した生体関連物質の中には、生分解性
(3ーヒドロキシルブレートー4ーヒドロキシルブチレ
ート)ポリエステル重合体の様に、人為的にバクテリア
に産生させるポリマーもあり、更に同じムコ多糖類でも
ヒアルロンサンのような分子量の大きなものからコンド
ロイチン硫酸のように小さな分子のものもある。また荷
電を有するものや有しないものもある。例えば、ヒアル
ロン酸は負に荷電しており、プロタミンはプラスに荷電
している。ゼラチンも弱いながらもプラスに荷電してい
る。これらを混合して使用すると、高分子同志のイオン
結合によって巨大分子集合体を形成することから、溶解
速度は更に緩徐となる。
【0052】(変性、修飾等)本発明においては、上記
した溶解性物質は実質的にintactで疎水性樹脂からなる
多孔質構造内に配置することが可能である。しかしなが
ら、この溶解性物質が前述した溶解性の条件(および/
又は、「pH7.4付近で溶解性を有する」もしくは
「哺乳類生体内の生理的条件下で溶解、分解、分散、吸
収等の作用によって処理される」という条件)を満たす
限り、必要に応じて、化学的処理等によって該物質の側
鎖等を変化させてもよい。この際、物質の一部にアシル
基、アルキル基、フェニール基、等の疎水性基がつくよ
うな化学修飾をうけると、物質は疎水的となり、水によ
る溶速度が低下する。他方、疎水性樹脂からなる多孔性
構造の孔ないし間隙に、疎水的であるが故に入り込み易
くなり、更に安定した充填が可能となる。
【0053】また、その様な化学修飾を受ける物質の一
部にヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニ
ル基、スルフォ基、等の親水性基が導入されれば、その
物質は親水度が増して、水に対する溶解性は向上する。
更に、このような物質が疎水性樹脂からなる多孔性構造
の孔ないし間隙に充填されると、疎水性樹脂からなる多
孔性構造の孔ないし間隙に水を導入し易くなって、溶解
性物質の溶解速度を速めることに貢献する。
【0054】従って、溶解されうる物質の溶解速度の制
御や疎水性樹脂からなる多孔性構造の孔ないし間隙に充
填されている際の安定度等を考慮して、物質毎にヒドロ
キシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スル
フォ基、等の親水性基やアシル基、アルキル基、フェニ
ール基、等の疎水性基等を側鎖として付着ないし結合さ
せることが可能である。
【0055】(生理的条件で溶解可能な物質を用いる態
様)本発明においてpH7.4という哺乳類の生理的条
件下であっても溶解可能であるが、溶解が急速であるも
のと極めて緩やかであるものが存在することを利用する
態様について述べる。例えば、単純なゼラチンを例にと
って説明すると、ゼラチンはpH7.4付近で加温した
水に溶解可能であり、1%程度の濃度であれば、通常は
5分以内に水中に溶解する。しかし30%の濃度になる
と、ゼラチンが膨潤して完全に水中に溶解するには約3
0分間以上を要する。これはゼラチンの様な高分子物質
において、個々のゼラチン分子間隙に水分子が滲入し、
個々のゼラチン分子が膨潤し、互いのゼラチン分子間隙
が開き、結果として個々のゼラチン分子が水中に拡散
し、ゼラチン分子が水中で徐々に低濃度になって行く
(すなわち、均一に溶解する)ためには、ある程度の時
間が必要であることに由来する。
【0056】例えば、ゼラチンの分子の一部にカルボキ
シル基を付着させたサクシニール化ゼラチンでは、ゼラ
チン分子の親水性が増大するため、水の分子が個々のゼ
ラチン分子間に入り易くなり、したがってゼラチン分子
は膨潤し易くなって溶解性は促進される。一方、ミリス
チレン酸を付着させたアルキル化ゼラチンではゼラチン
分子の疎水性が強くなり、個々のゼラチン分子間に水分
子は入りにくい。従って、アルキル化ゼラチンの膨潤は
遅くなり、結果的には溶解速度は低下して溶解が遅延
し、30%溶液にするためには約24時間必要である。
これらはゼラチンの側鎖の化学修飾によって水との親和
性を変化させた結果生じた現象であるが、このような変
化が生じたにしても、サクシニール化ゼラチンもアルキ
ル化ゼラチンも、ともにpH7.4付近では溶解可能な
物質であることには変わりはない。
【0057】更に、このようなpH7.4付近で溶解性
を有する溶解性物質を如何なる形態で取り扱うかによっ
ても、その溶解速度は変化する。例えば、湿潤状態にあ
る10%ゼラチン(用いるゼラチンの質量を、水に対す
る濃度に換算したもの;以下この「ゼラチン」の項の記
載において同様)はpH7.4付近の水中に投入して室
温に放置すると約1時間で完全に溶解する。一方、10
%ゼラチンを凍結乾燥してスポンジ状にすると、これを
溶解するのに約2時間必要である。更に10%ゼラチン
を一旦水溶液として自然乾燥させて作成した膜では、そ
れを完全に溶解させるのに48時間以上必要である。従
って、ゼラチンの種類をアルキル化ゼラチンにしたりサ
クシニール化ゼラチンにすることで更に溶解に要する時
間は変化する。しかしながら、湿潤状態にある10%ゼ
ラチンも凍結乾燥してスポンジ状にしたゼラチンも、自
然乾燥させて作成した膜状となったゼラチンも、ともに
pH7.4付近では溶解可能な物質であることには変わ
りはない(すなわち、本発明においては、いずれの形態
でも使用可能)。
【0058】これらの物質は全て生理的条件の一つであ
るpH7.4付近で溶解可能な物質であるが、形態や濃
度、形成条件等の違いでその溶解速度に大きな差異が生
じる場合がある。
【0059】このようなpH7.4付近で溶解性を有す
る物質は哺乳類の生体内に埋入されたときに生理的条件
下で体液内に拡散したり、食細胞によって処理された
り、あるいは酵素によって分解されることによって時間
の経過にともなって消失して行く。したがって、本発明
において「pH7.4付近で溶解性を有する物質」と
「哺乳類生体内の生理的条件下で溶解、分解、分散、吸
収等の作用によって処理される特性を有する物質」と
は、ほぼ同一の意味あいを有することとなるが、「pH
7.4付近」という表現は単に溶媒内の水素イオン濃度
を規定しているのみである(in vitro、 in vivo のいず
れか、または温度の規定もない)。一方、「哺乳類生体
内の生理的条件下」という表現は、水素イオン濃度の他
に温度も規定し、更に生体内の種々の酵素の存在や食細
胞の存在もあるため、極めて厳密な条件下と言えよう。
本発明は、これらの「pH7.4付近で溶解性を有する
物質」と、「哺乳類生体内の生理的条件下で溶解、分
解、分散、吸収等の作用によって処理される特性を有す
る物質」とのいずれにも適応可能である。
【0060】(変性処理)上述したように、本発明にお
いては、溶解性物質の化学的な変性処理は必須ではな
い。しかしながら、溶解性物質に対して、前述した溶解
性の条件(および/又は「pH7.4付近での溶解性を
維持する」もしくは「哺乳類生体内の生理的条件下で溶
解、分解、分散、吸収等の作用によって処理される」と
いう条件)を満たす範囲内で、特性架橋処理等の化学的
な変性処理を適宜施してもよい。
【0061】このように架橋処理等をした場合には、溶
解性物質の分子内での部分的な架橋に留めておくこと
で、溶解性や分解性を維持しつつ、その溶解に要する時
間を遅くさせることが可能である。この考え方は、K We
adock, DJ Lentz, RJ Zdrahalaらによる米国特許第5,
665,114号および米国特許第5,716,660
号において示される溶解性物質のpHの変化及びフォル
ムアルデヒドを用いた不溶化処理と異なり、本発明では
あくまでもそのような不溶化処置ではなくて、「pH
7.4付近での溶解性を維持する」ことが架橋処理の好
適な条件である。
【0062】(架橋の程度)架橋の程度を示す指標とし
ては、架橋方法がフォルムアルデヒドやグルタールアル
デヒド等の化学架橋剤を用いている場合には、吸収性物
質の分子内のアミノ基が主としてその反応に使用される
ため、アミノ基の残量を測定することで架橋率を測定す
ることが可能である。より具体的には、例えば、TNB
S法(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸を用
いる方法;文献Kakada, ML, Liener IE, Determination
of available lysine in proteins.Ann Biochem.27:27
3-280.1969.Trinitrobenzene sulfonic Acid(TNBS)meth
odを参照)によって架橋率を測定可能である。しかしな
がら、紫外線やガンマー線等による物理的架橋の場合に
は、(アミノ基を架橋に使用していないので)例えばコ
ラーゲンやゼラチン等の場合には、コラーゲナーゼを用
いて、該酵素による分解性を検討することで架橋の程度
を測定可能である。
【0063】本発明者の実験によれば、例えば、精製し
た2%のアテロコラーゲンで作成したスポンジの場合、
フォルムアルデヒドで架橋し、TNBS法での測定で9
0%のアミノ基が使用された状態(高度の架橋状態)で
は、0.1%のコラーゲナーゼによる消化で、完全に消
化させるのに48時間必要である。しかしながら、TN
BS法で40%の架橋率の場合には0.1%のコラーゲ
ナーゼによる消化で、完全に消化させるのに6時間必要
であった。
【0064】本発明において、溶解性物質の溶解性維持
の点からは、必要に応じて架橋を行う場合でも、部分的
な架橋に止めておくことが好ましい。より具体的には、
コラーゲンやゼラチンの場合には0.1%のコラーゲナ
ーゼによる消化で、完全に消化させるのに12時間以内
(更には6時間以内)の程度の軽い架橋に留めておくこ
とが好ましい。このように、pH7.4付近で溶解可能
な多くの種類の物質を、いずれでも単独で使用しても、
混合状態で使用しても、軽度の架橋処理を施して使用し
ても、本発明ではそれぞれの物質の濃度や形態、製造条
件、架橋の程度、等の諸条件を考えることによって目的
を達成することが可能である。
【0065】(充填方法)本発明において、溶解性物質
を疎水性樹脂からなる多孔性構造の孔ないし間隙に充填
させる好適な一態様について述べる。この態様において
は、溶解性物質をアルコール等の含水極性溶媒に溶解し
て、延伸ポリテトラフルオロエチレン製の多孔質な管ま
たはシートにおいて、その片面または両面から5mmH
g以上、300mmHg以下の範囲内で陽圧、陰圧等の
圧力差をもうけてフィブリル間隙に圧注入させる方法で
ある。
【0066】圧力差は含水極性溶媒に溶解された溶解性
物質の種類と濃度、操作中の温度等にも影響を受ける
が、疎水性樹脂からなる多孔性構造の壁を傷害させない
ためには、30〜100Hgの範囲内が望ましい。
【0067】アルコール等の含水極性溶媒を使用しない
と疎水性である疎水性樹脂からなる多孔性構造の孔ない
し間隙に注入することは、溶解性物質が親水性である場
合には困難を伴う。その問題を解決するためにはK. Wea
dock, DJ Lentz, RJ Zdrahala らによる米国特許第5,
665,114号および米国特許第5,716,660
号の技術では疎水性樹脂からなる多孔性構造の疎水性を
押さえるため、あらかじめその表面をプラズマ処理やグ
ロー放電処理等を行って親水化させているが、本発明で
は溶解性物質が親水性であっても、そのような前処理を
必須とせずに、疎水性樹脂からなる多孔性構造に対して
溶解性物質を充填可能である。本発明によれば、通常の
疎水性樹脂からなる多孔性構造に対して、容易にこの充
填が可能となる。
【0068】あらかじめその表面をプラズマ処理やグロ
ー放電処理等を行って疎水性樹脂からなる多孔性構造を
親水化させることを行わずに親水性物質を充填する方法
としては、K. Okitaによる米国特許第4,193,13
8号の技術がある。K. Okitaは始めに疎水性樹脂からな
る多孔性構造人工血管をメタノール、エタノール、アセ
トン、または界面活性剤の中に浸すという前処置を施
し、次に疎水性樹脂からなる多孔性構造人工血管を水の
中に浸して疎水性樹脂からなる多孔性構造人工血管のフ
ィブリル間隙に浸入したメタノール、エタノール、アセ
トン、または界面活性剤を水と置換させ、その次に親水
性の生体内分解性材料の液の中にその疎水性樹脂からな
る多孔性構造人工血管を浸すという3段階方式を推奨し
ている。この方法によって徐々に親水性物質が疎水性樹
脂からなる多孔性構造人工血管のフィブリル間隙に滲入
すると記載されている。
【0069】これに対して、本発明では、上記したよう
に、材料を含水極性溶媒に単純に溶解させて疎水性樹脂
からなる多孔性構造の孔ないし間隙に充填させる1段階
方式で目的を達することができる。例えば、ゼラチン等
の親水性材料の場合には30〜70%のエタノールに材
料を溶解すると、疎水性樹脂からなる多孔性構造の孔な
いし間隙にそのまま充填させることができる。また、レ
シチン等の疎水的なリン脂質であっても、同様に30〜
70%のエタノールに溶解して疎水性樹脂からなる多孔
性構造の孔ないし間隙に充填させることができる。そし
て充填後は単純に自然乾燥あるいは凍結乾燥によってエ
タノール等の含水極性溶媒を取り除くことが可能であっ
て、この処置によって溶解性物質のみを疎水性樹脂から
なる多孔性構造の孔ないし間隙に残すことができる。
【0070】(充填用の溶媒)使用する含水極性溶媒の
種類は、疎水性樹脂からなる多孔質構造へ溶解性物質を
充填可能なように溶解または分散可能である限り、含水
極性溶媒は特に制限されない。より具体的には、例え
ば、アルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミド、ジメチルスルフォキシド、N−メチルピロリ
ドン、ヘキサメチルスルファミド、水、等の種々の含水
極性溶媒が使用可能である。取り扱い上、除去し易さ等
の点からは、エタノールやメタノール等のアルコール類
(更に、残存した場合の生体への毒性の点からは、エタ
ノール)が好適に使用可能である。更に、種々の溶媒と
水との混合溶液が、注入後に使用した含水極性溶媒を蒸
発等により容易に除去可能な点から好ましい。
【0071】この際の混合比は、溶解性物質の種類と濃
度にもよるが、例えばゼラチンの場合は50%エタノー
ル液が使用し易い。更にゼラチン分子にカルボキシル基
を付着させたサクシニール化ゼラチンや、更にミリスチ
ル酸を付着させたアシル化ゼラチン等では70%エタノ
ールが好適に使用可能である。このように溶解性物質の
種類とその濃度によって含水極性溶媒の種類と混合比は
適宜選択することが可能である。
【0072】(徐放性の放出)上述したように本発明に
よれば、材料の溶解性を維持したまま疎水性樹脂からな
る多孔性構造の孔ないし間隙からの材料の溶出を徐放性
にすることが可能となる。この方法は疎水性樹脂からな
る多孔性構造の孔ないし間隙からの放出を利用して、好
適に達成される。
【0073】より具体的には、本発明においては、例え
ば、溶解性物質を含水極性溶媒に溶解して疎水性樹脂か
らなる多孔性構造の孔ないし間隙に充填させる。この状
態でそのまま不溶化処置を行わずに生体内に埋入させた
場合、たとえpH7.4の条件下で容易に溶解されうる
溶解性物質であっても、疎水性樹脂からなる多孔性構造
の孔ないし間隙に充填されると、(多孔性構造の「場」
の効果に基づき)溶解性物質自体の不溶化処理を行わな
い場合でも、その溶解速度を極めて緩徐にできる。
【0074】本発明においてこのような生体内の緩慢な
放出が可能となる機序は、本発明者の推定によれば、以
下の通りである。すなわち、疎水性樹脂からなる多孔性
構造は疎水的であり、多孔性構造の孔ないし間隙(例え
ば、フィブリル間隙等)は狭いため、溶解性物質は含水
極性溶媒に溶解されて孔ないし間隙に充填させられたに
しても、生体内の体液は容易には疎水性樹脂からなる多
孔性構造の孔ないし間隙には入り得ない。体液がたとえ
入り得ても極めて少量であって、溶解性物質の溶解部分
での濃度は著しく高い状態となっているので、急速には
低濃度にはなり得ず、溶解は進みにくい状況が生じてい
る。従って、体外の他の組織内、例えば筋肉内や皮下組
織内に埋入された場合には容易に溶解され、生体内で分
散されて、短期間のうちに消失する様な溶解性物質であ
っても、疎水性樹脂からなる多孔性構造の孔ないし間隙
に充填された場合には、極めて徐々にしか溶解、分散さ
れず、結果的には長い間、孔ないし間隙に止まっている
ことが可能となる。この疎水性樹脂からなる多孔性構造
の孔ないし間隙という特殊性を活用することによって、
溶解性物質であっても、不溶化処理を行わずして無理な
く疎水性樹脂からなる多孔性構造からの徐放状態を得る
ことが可能となる。
【0075】本発明では、例えば、このように生体内で
溶解されうる物質を含水極性溶媒に溶解させるが、この
溶解性物質がサクシニール化ゼラチンのように親水性の
強い場合には、その物質は水によって溶かされ易い。し
かしながら疎水性樹脂からなる多孔性構造材料の狭い孔
ないし間隙には水は侵入しにくいため、親水性の強い物
質であっても、その溶解は遅延する。一方、レシチン等
の疎水的な性質を有する溶解性物質では、やはり含水極
性溶媒に溶解して疎水性樹脂からなる多孔性構造材料の
狭い孔ないし間隙に充填可能であるが、その溶解性物質
は水及び油脂に溶解されうる。しかしながら生体内での
体液における油脂は量的に少量であって、その溶解性は
一般には遅いのが特徴であり、疎水結合によって分子の
巨大な集合体を形成し易い。したがって、このような状
態となれば、疎水性樹脂からなる多孔性構造材料の狭い
孔ないし間隙での溶解性は更に遅延するため、親水性の
物質と同様に徐放出状態が得られる。
【0076】(両親性物質)物質によっては親水性と疎
水性の両方を有する場合(両親性)もあり得る。例え
ば、サクシニール化ゼラチンおよびアシル化ゼラチン
は、両親性である。このような両親性物質の場合にも、
エタノール等の含水極性溶媒で容易に溶解状態や分散状
態を得ることが可能であることから、同様に含水極性溶
媒に溶解して疎水性樹脂からなる多孔性構造材料の狭い
孔ないし間隙に充填可能であり、親水性物質や疎水的物
質と同様に徐放出状態が得られる。
【0077】このような両親性の材料を組み合わせる方
法としては、溶解性物質が、親水性部分としてヒドロキ
シ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフ
ォ基、等の親水性基を少なくとも1種類以上有するとと
もに、疎水性部分としてアシル基、アルキル基、フェニ
ール基等の疎水性基を少なくとも1種類以上を同時に有
する材料を使用することがもっとも効率がよい。更に、
このような性質を有する異なる材料を複数個組み合わせ
て、混在させることにより、きめ細かな徐放出を制御す
ることが可能となり、したがって細胞の侵入し易い場、
該浸入が困難な場等に合わせて、生体内に植え込まれる
疎水性樹脂からなる多孔性構造製材料内への細胞の侵入
を適切に誘導することが可能となる。
【0078】(溶液状態等)溶解性物質は含水極性溶媒
に溶解させるに際しては、溶液状態、懸濁液状態、分散
状態のいずれであっても構わない。このような状態で疎
水性樹脂からなる多孔性構造材料の狭い孔ないし間隙似
充填可能であれば、溶液状態、分散状態、懸濁液状態の
いずれの状態であっても、本発明に適応可能である。
【0079】本発明によれば、溶解性物質は不溶処理を
行わずとも疎水性樹脂からなる多孔性構造材料の狭い孔
ないし間隙から急速に溶解され溶出されることを防止す
ることが可能となる。その様になると、溶解性物質は生
体内での溶解性が保たれている限りにおいては、上述し
たように、ある程度の制限された架橋処理を行うことも
許される。グルタールアルデヒドやフォルムアルデヒド
による化学的架橋剤を用いた架橋は一般的には強くて完
全な架橋状況を得易い。しかしながら紫外線やガンマー
線、熱等の物理的エネルギーによる架橋は、架橋の程度
をコントロールし易く、低い架橋度の状態を得ることが
できる。従って、化学的架橋剤を用いる架橋の場合は過
剰な架橋にならないような注意することが好ましい。
【0080】このような低い架橋度の状態を得ることは
フォルムアルデヒド等の化学架橋剤を用いても、その反
応時間、温度、pH、濃度、触媒等の反応条件を変える
ことで慎重に行えば制御可能である。したがって、架橋
は必ずしも物理的エネルギーに基づく必要はないが、物
理的方法は化学的架橋剤に比べると、その制御は容易で
ある。このような低い架橋度の処置によって、物質の抗
原性を抑制しつつ溶解性を実質的に維持することが可能
である。
【0081】本発明において、必要に応じて溶解性物質
を架橋処理する場合、溶解性物質の生体内での溶解性が
実質的に保持である限り、溶解性物質を疎水性樹脂から
なる多孔性構造の孔ないし間隙に充填させる前に架橋処
理しても、多孔性構造への充填後に架橋処理してもよい
(架橋処理の時期は、特に制限されない)。
【0082】(e−PTFEへのの充填)本発明では、
例えば、pH7.4付近で溶解性を有する物質及び/又
は哺乳類生体内の生理的条件下で溶解、分解、分散、吸
収等の作用によって処理される特性を有する物質をアル
コール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルスルフォキシド、N−メチルピロリドン、
ヘキサメチルスルファミド、水、等の含水極性溶媒を用
いて溶液又は懸濁液又は分散液等を作り、それを結節部
分と個々の結節間を結ぶ細いフィブリル部分とが繰り返
し交互に存在する構造を有する延伸ポリテトラフルオロ
エチレン(e−PTFE)製の多孔質の管またはシート
において、その片面または両面から5mmHg以上、3
00mmHg以下の範囲内で陽圧、陰圧等の圧力差をも
うけて孔ないし間隙に圧注入することができる。
【0083】この際の溶解性を有する物質及び/又は哺
乳類生体内の生理的条件下で溶解、分解、分散、吸収等
の作用によって処理される特性を有する物質は、溶液、
懸濁液、分散液のいずれであっても構わない。pH7.
4付近で溶解性を有する物質及び/又は哺乳類生体内の
生理的条件下で溶解、分解、分散、吸収等の作用によっ
て処理される特性を有する物質が溶解されたり、分解さ
れる限りにおいて、疎水性樹脂からなる多孔性構造の孔
ないし間隙への充填時における液の状態は実質的に問題
にならない。
【0084】(溶解性物質の濃度等)pH7.4付近で
溶解性を有する物質及び/又は哺乳類生体内の生理的条
件下で溶解、分解、分散、吸収等の作用によって処理さ
れる特性を有する物質の含水極性溶媒における濃度は、
ここの物質の性質によって適宜調整することが可能であ
る。
【0085】例えば、サクシニール化のアテロコラーゲ
ンは2%の溶液であっても粘度が高く、その取り扱いに
は困難性がある。しかしながら、そのサクシニール化の
アテロコラーゲンを加熱によってゼラチン化すると、そ
の溶液の濃度を30%程度まで上げることが可能であ
る。このように、溶解性物質の種類によってその至適濃
度が変化する可能性があるが、それぞれに取り扱いに容
易な濃度の溶液、懸濁液、分散液等を作って本発明の材
料を作成することができる。
【0086】しかしながら、同一種類の溶解性物質溶液
の場合には、疎水性樹脂からなる多孔性構造の壁内へ充
填する際には、低濃度の溶液、懸濁液、分散液を用いて
始め、少なくとも2段階以上に濃度差のある高濃度溶液
を段階的に圧注入して行くことが、疎水性樹脂からなる
多孔性構造の個々の孔ないし間隙にくまなく均質に、且
つ効率的に溶解性物質を充填する点から好ましい。
【0087】このようにして疎水性樹脂からなる多孔性
構造製人工臓器の壁内へpH7.4付近で溶解性を有す
る物質及び/又は哺乳類生体内の生理的条件下で溶解、
分解、分散、吸収等の作用によって処理される特性を有
する物質を充填させたときに、充填に先立ってpH7.
4付近で溶解性を有する物質及び/又は哺乳類生体内の
生理的条件下で溶解、分解、分散、吸収等の作用によっ
て処理される特性を有する物質を架橋しておく場合と、
疎水性樹脂からなる多孔性構造の壁内に充填した後に架
橋処理を行うことも可能である。この際には、上述した
ように、生体内での溶解性や分解性が実質的に維持され
る程度の架橋処理に留めることが好ましい。 (好適な充填の一態様)図1は、本発明において好適に
使用可能な充填の一態様を示す模式斜視図である。
【0088】図1を参照して、e−PTFE等のフィブ
リル疎水性樹脂からなる人工血管1(例えば、外径8m
m、長さ10cm、壁の厚さ0.6mm程度)の一端を
三方活栓3(例えば、トップ社製)の第1の端子3aに
接続する(例えば、1号絹糸を用いてくくりつける)。
次いで、人工血管1を細長い透明な塩化ビニール袋2に
入れ、その袋2の一方の末端を、上記人工血管1と共に
三方活栓3の第1の端子3aに接続する。その袋2の他
方の末端にはコネクティブチューブ4(例えば、トップ
社製)を接続し、該コネクティブチューブ4の他方の末
端を、前記三方活栓3の第2の端子3bに接続する。
【0089】別に、生体内溶解性材料(例えば、ゼラチ
ン)をアルコール等の含水極性溶媒(例えば、50%エ
タノール水溶液)に溶解または分散させてなる液体6を
注射器5に入れておき、三方活栓3の第3の端子3cに
接続する。また、止血鉗子7を用いて、人工血管1の三
方活栓3に接続されていない方末端を、塩化ビニール袋
2の上から挟みつけることにより、人工血管1の末端を
閉じる。
【0090】このような装置を作り、三方活栓3の端子
3c−3a間を導通させるように切り替えた後に、注射
器5から生体内溶解性材料6をアルコール等の含水極性
溶媒に溶解または分散させた液を人工血管1の中に注入
する。このとき、人工血管1の壁を通過した生体内溶解
性材料の溶解/分散液6は、塩化ビニール袋2の中にた
まる。このように溜まった液は、三方活栓3の端子3b
−3a間を導通させるように切り替えた後に、注射器5
を用いてコネクティブチューブ4を介して吸引し、注射
器5内に戻す。
【0091】次いで、三方活栓3の端子3c−3a間を
導通させるように切り替えた後に、再び、このように注
射器5内に戻した液を、人工血管1内に注入する。この
ような操作を10分間ほど、繰り返し行うことで、徐々
に生体内溶解性材料は人工血管1の壁内に吸着されて蓄
積する。生体内溶解性材料の濃度が高い場合には、数回
の注入で人工血管1の壁の孔が塞がれて注入が継続でき
なくなる。この場合にはこの時点で注入を止める。
【0092】次に、止血鉗子7を人工血管1から外した
状態で上述した注射器5から人工血管1への溶解/分散
液6の注入操作を続け、これによって人工血管1の内腔
に付着している過剰な生体内溶解性材料を洗い流す。こ
の操作が完全に終了した後に、人工血管1をビニール袋
2から取り出す。この操作によって、コンタミネーショ
ンを起こさせることなく清潔な状態で人工血管1の壁に
生体内溶解性材料を絡めることが可能となる。
【0093】図2は、上記したような充填操作で用いた
(生体内溶解性材料を充填する前)人工血管の一態様を
示す模式断面図(a)および拡大模式断面図(b)であ
る。図2(a)は、人工血管壁8の長軸方向の割断面9
を示す。図2(b)は、この割断面9の拡大図10を示
す。図2(b)を参照して、この態様においては、人工
血管1の結節部分11とフィブリル部分12とが交互に
存在している。
【0094】図3は、上記したような充填操作により得
ることが可能な、生体内溶解性材料が充填された人工血
管の一態様を示す模式断面図(a)および拡大模式断面
図(b)である。図3(a)は、生体内溶解性材料6が
絡められた人工血管壁8の長軸方向の割断面13を示
し、図2(b)は、この割断面13の拡大図14を示
す。図2(b)を参照して、人工血管1には結節部分1
1とフィブリル部分12が交互に存在するが、そのフィ
ブリル部分12に生体内溶解性材料6が絡まっている。
【0095】以下、実施例により本発明を更に具体的に
説明する。
【0096】
【実施例】実施例1 牛の皮膚から採取した繊維状コラーゲンをペプシン等の
酵素処理によって分子レベルにまで分解し、更にコラー
ゲン分子の一部であるテロペプタイド部分を取り除いて
抗原性を大幅に低下させる処置を行ったアテロコラーゲ
ン((株)高研から購入)を用いた。
【0097】次いで、無水ミリスチレン酸を用いて、こ
のアテロコラーゲンの1分子当たりのアミノ基の約10
%に相当する7〜8個のアミノ基に対して炭素数14の
ミリスチレン酸を付着させることでアシル化アテロコラ
ーゲンを得た。更に、このアシル化アテロコラーゲンを
蒸留水に5%の質量比(アシル化アテロコラーゲンの質
量/蒸留水の質量)で入れ、24時間かけてコラーゲン
分子を膨潤させた。次にこれを静かに摂氏40度に加熱
し、コラーゲン分子の3本の鎖を徐々に解くことによっ
て、コラーゲン分子を切断することなく分解して親ゼラ
チンを作成した。
【0098】アシル化アテロコラーゲンから作成した上
記の親ゼラチンの溶液に、同量の100%エタノールを
注ぎ、良く撹拌して2.5%のゼラチンの含水極性溶媒
(50%エタノール)液を得た。
【0099】次に、上記で作成した2.5%のゼラチン
の含水極性溶媒溶液を4℃に冷却して、ゼラチンを凝固
させた。次にこのゼラチン1グラムを採取し、100m
lのpH7.4の蒸留水に投入し、室温(約25℃)に
放置したところ、4時間でゼラチンは溶解したことか
ら、このゼラチンは溶解性であることが判明した。
【0100】フィブリル長30ミクロンから60ミクロ
ン、平均して約45ミクロンのe−PTFEの人工血管
(内径6mm、外径7.5mm、長さ約10cm)の方
末端を止血錐子を用いて閉じ、他の末端から上記で作成
した2.5%のゼラチンの含水極性溶媒溶液(合計で約
40ml)を徐々に繰り返し(約20回)注入し、ゼラ
チンをe−PTFEのフィブリル間隙に充填した。e−
PTFEに対するゼラチンの充填量を島津製作所TG5
0熱重量分析計により測定したところ、1.2%(質量
/質量)であった。
【0101】このようにして2.5%のゼラチン含水極
性溶媒溶液を用いて、ゼラチンをe−PTFEのフィブ
リル間隙に充填したe−PTFE人工血管(本発明のハ
イブリッド化材料)を得た。次に、この人工血管の長さ
1cmを鋭利なメスで切り取り、4℃に冷却した後に1
00mlのpH7.4の蒸留水に投入し、この状態で2
4時間室温でスターラー撹拌した。次いで、パラフィン
包埋法を用いてこの放置後のe−PTFE人工血管の切
片(厚さ約10μm)を作成し、光学顕微鏡(倍率約2
00倍)により観察したところ、蒸留水中で24時間経
過後であっても、e−PTFEのフィブリル間隙にゼラ
チンが残存していることが判明した(ゼラチンの残存
は、光学顕微鏡の視野においてエオジン染色法により赤
く染め出される事により確認できた)。このことから、
溶解性であるゼラチンがe−PTFEのフィブリル間隙
に充填されると、その溶出が極めて遅れることが明らか
となった。このようなゼラチンの徐放出は、e−PTF
E人工血管への細胞親和性の導入に極めて効果的であ
る。
【0102】実施例2 (自然乾燥ゼラチンの使用)2.5%ゼラチンの含水極
性溶媒溶液1グラムをテフロンの板の上に流し、そのま
ま室温で室内に2日間放置してゼラチンを自然乾燥さ
せ、ゼラチンの膜を得た。次にこのゼラチン膜を1平方
センチメートル切り取って、100mlのpH7.4の
蒸留水に投入し、スターラー(100回/分)で撹拌し
つつ室温で放置した。この結果、投入後12時間では溶
解していなかったが、24時間経過後には完全に溶解し
ていた。このことから、溶解性であるゼラチンが自然乾
燥すれば溶解速度が低下するが、それでも溶解性を維持
していることが明らかとなった。
【0103】実施例1で得た2.5%のゼラチン含水極
性溶媒溶液によりゼラチンが充填されたe−PTFE人
工血管の長さ1cmを切り取り、4℃に冷却した後に室
温で室内に2日間放置してゼラチンを自然乾燥させた。
次に、このe−PTFE人工血管を100mlのpH
7.4の蒸留水に投入し、スターラー(100回/分)
で撹拌しつつ室温に1週間放置した。次いで、パラフィ
ン包埋法を用いてこの放置後のe−PTFE人工血管の
切片(厚さ約10μm)を作成し、光学顕微鏡(倍率約
200倍)により観察したところ、蒸留水に1週間放置
後であっても、e−PTFEのフィブリル間隙にゼラチ
ンが残存していることが判明した(ゼラチンの残存は、
光学顕微鏡の視野においてエオジン染色法で赤く染め出
される事により確認できた)。このことから、溶解性で
あるゼラチンがe−PTFEのフィブリル間隙に充填さ
せられ、自然乾燥をうけると、溶解性であるにも関わら
ず、その溶出が極めて遅れることが明らかとなった。
【0104】実施例3 (凍結乾燥ゼラチンの使用)2.5%のゼラチン1グラ
ムをテフロン(登録商標)(井内製作所社製)の板の上
に流してそのまま4℃に冷却し、その状態で凍結乾燥を
行ない、ゼラチンの膜状のスポンジ(大きさ100mm
×100mm、厚さ約50mm)を得た。次にこのスポ
ンジ膜を鋭利なメスにより1立方センチメートル(厚さ
1cm)で切り取って、100mlのpH7.4の蒸留
水に投入し、スターラー(100回転/分)により撹拌
しつつ室温に放置したところ、2時間では溶解していな
かったが、6時間経過後には完全に溶解していた。この
ことから、溶解性であるゼラチンが凍結乾燥すれば溶解
速度が低下するが、それでも溶解性を維持していること
が明らかとなった。
【0105】2.5%のゼラチン含水極性溶媒溶液によ
りゼラチンが充填されたe−PTFE人工血管の長さ1
cmを鋭利なメスにより切り取り、4℃に冷却した後に
凍結乾燥を行った。次にこの人工血管を100mlのp
H7.4の蒸留水に投入し、スターラー(100回転/
分)により撹拌しつつ室温に放置したところ、3日間経
過後であっても、e−PTFEのフィブリル間隙にゼラ
チンが残存しており、1週間後には完全に消失していた
ことが、切片を作成し、光学顕微鏡による観察の結果判
明した。このことから、溶解性であるゼラチンがe−P
TFEのフィブリル間隙に充填させられ、凍結乾燥をう
けると、溶解性であるにも関わらず、その溶出が極めて
遅れることが明らかとなった。
【0106】実施例4 実施例1と同様の方法で、牛の皮膚から採取した繊維状
コラーゲンをペプシン等の酵素処理によって分子レベル
にまで分解し、更にコラーゲン分子の一部であるテロペ
プタイド部分を取り除いて抗原性を大幅に低下させる処
置を行ってアテロコラーゲンを得た。
【0107】次に、文献(CL Wang et al., Biochem.Bi
ophis.Acta., 1978, 544, p555〜567 )記載の方法にし
たがって、このアテロコラーゲンの1分子当たりのアミ
ノ基の約90%に相当する70個のアミノ基に対して無
水コハク酸を付着させることでカルボキシル基を付着さ
せ、サクシニール化アテロコラーゲンを得た。更に、上
記これを蒸留水に5%の質量比で入れ、コラーゲン分子
を膨潤させた。次にサクシニール化アテロコラーゲンを
静かに(攪拌無しで)摂氏40度に加熱し、コラーゲン
分子の3本の鎖を徐々に解くことによって、コラーゲン
分子を切断することなく分解して親ゼラチンを作成し
た。
【0108】このようにして作成したサクシニール化親
ゼラチンを用いた以外は、実施例1〜3と同様の方法
で、e−PTFE人工血管へのゼラチン充填、自然乾
燥、凍結乾燥の実験を行ったところ、実施例1〜3と同
様の結果が得られた。この結果、溶解性のあるサクシニ
ール化親ゼラチンもe−PTFEのフィブリル間隙に充
填させられると、その溶解速度が低下することが明らか
となった。
【0109】実施例5 実施例1と同様の方法で、牛の皮膚から採取した繊維状
コラーゲンをペプシン等の酵素処理によって分子レベル
にまで分解し、更にコラーゲン分子の一部であるテロペ
プタイド部分を取り除いて抗原性を大幅に低下させる処
置を行ってアテロコラーゲンを得た。
【0110】次にこれを蒸留水に5%の質量比で入れ、
コラーゲン分子を膨潤させた。次にこれを静かに40℃
に加熱し、コラーゲン分子の3本の鎖を徐々に解くこと
によって、コラーゲン分子を切断することなく分解して
親ゼラチンを作成した。
【0111】このようにして作成した単純な親ゼラチン
を用いた以外は、実施例1〜3と同様の方法で、e−P
TFE人工血管へのゼラチン充填、自然乾燥、凍結乾燥
の実験を行ったところ、実施例1〜3と同様の結果が得
られた。この際、ゼラチン分子に対しては、以下のよう
に紫外線による部分的な架橋を行った。すなわち、上記
実験で作成した2.5%のゼラチンの含水極性溶媒溶液
を4℃に冷却することによってゼラチンを凝固させた。
次にこのゼラチン1グラムを採取し、10分間の紫外線
照射(15WのGLランプ、紫外線波長の範囲:25
3.7nm、ランプ−ゼラチンの距離:20cm)でゼ
ラチンの紫外線架橋を行った。次にこのようにして架橋
を行ったゼラチンを100mlのpH7.4の蒸留水に
投入し、室温に放置したところ、6時間でゼラチンは溶
解したことから、このゼラチンは溶解性であることが判
明した。
【0112】実施例1と同様の方法で、フィブリル長3
0ミクロンから60ミクロン、平均して約45ミクロン
のe−PTFEの人工血管の方末端を閉じて、他の末端
から実施例1で作成した2.5%のゼラチンの含水極性
溶媒溶液を徐々に繰り返し注入し、ゼラチンをe−PT
FEのフィブリル間隙に充填した。
【0113】このようにして2.5%のゼラチン含水極
性溶媒溶液によりゼラチンが充填されたe−PTFE人
工血管を得た。次にこの人工血管の長さ1cmを鋭利な
メスにより切り取り、4℃に冷却した後に10分間の紫
外線照射(15WのGLランプ、紫外線波長の範囲:2
53.7nm、ランプ−ゼラチンの距離:20cm)で
ゼラチンの紫外線架橋を行った。
【0114】次にこのようにして架橋を行ったゼラチン
が充填されたe−PTFE人工血管を100mlのpH
7.4の蒸留水に投入し、室温に1週間放置した。次い
で、パラフィン包埋法を用いてこの放置後のe−PTF
E人工血管の切片(厚さ約10μm)を作成し、光学顕
微鏡(倍率約200倍)により観察したところ、蒸留水
中で1週間放置後であっても、e−PTFEのフィブリ
ル間隙にゼラチンが残存していることが判明した。この
ことから、溶解性である紫外線によって部分的な架橋処
理を受けたゼラチンが、e−PTFEのフィブリル間隙
ではその溶出が更に遅れていることが明らかとなった。
【0115】実施例6 (自然乾燥ゼラチンの使用)2.5%のゼラチン1グラ
ムをテフロン(井内製作所社製)の板の上に流してその
まま室温で室内に2日間放置してゼラチンを自然乾燥さ
せ、ゼラチンの膜を得た。次にこの膜を1平方センチメ
ートル取って、10分間の紫外線照射で紫外線架橋を行
った。次にこのようにして架橋を行ったゼラチン膜を1
00mlのpH7.4の蒸留水に投入し、室温に放置し
たところ、24時間経過後では溶解していなかったが、
3日間経過後には完全に溶解していた。このことから、
溶解性であるゼラチンが自然乾燥し、紫外線架橋すれば
溶解速度が低下するが、それでも溶解性を維持している
ことが明らかとなった。
【0116】2.5%のゼラチン含水極性溶媒溶液によ
りゼラチンが充填されたe−PTFE人工血管の長さ1
cmを切り取り、4℃に冷却した後に室温で室内に2日
間放置してゼラチンを自然乾燥させた。次にそれを10
分間の紫外線照射でゼラチンの紫外線架橋を行った。次
にこのようにして架橋を行ったゼラチンの充填された人
工血管を100mlのpH7.4の蒸留水に投入し、ス
ターラー(100回転/分)により撹拌しつつ室温に2
週間放置した。次いで、パラフィンを用いてこの放置後
のe−PTFE人工血管の切片(厚さ約10μm)を作
成し、光学顕微鏡(倍率約200倍)により観察したと
ころ、蒸留水中でスターラー(100回転/分)により
撹拌しつつ2週間放置後であっても、e−PTFEのフ
ィブリル間隙にゼラチンが残存していることが判明し
た。このことから、溶解性であるゼラチンe−PTFE
のフィブリル間隙に充填させられ、自然乾燥をうけ、紫
外線架橋を受けると、溶解性であるにも関わらず、その
溶出が極めて遅れることが明らかとなった。
【0117】実施例7 (紫外線架橋ゼラチンの使用)2.5%のゼラチン含水
極性溶媒溶液の1グラムをテフロンの板の上に流してそ
のまま4℃に冷却し、その状態で凍結乾燥を行ない、ゼ
ラチンの膜状のスポンジを得た。次にこの膜を1平方セ
ンチメートルを切り取って、実施例5と同様の方法で1
0分間の紫外線照射でゼラチンの紫外線架橋を行った。
【0118】次にこのようにして架橋を行ったゼラチン
スポンジ(1平方センチメートル)を100mlのpH
7.4の蒸留水に投入し、室温に放置したところ、12
時間では溶解していなかったが24時間経過後には完全
に溶解していた。このことから、溶解性であるゼラチン
が凍結乾燥し、更に紫外線架橋をすれば溶解速度が低下
するが、それでも溶解性を維持していることが明らかと
なった。
【0119】2.5%のゼラチン含水極性溶媒溶液によ
りゼラチンが充填されたe−PTFE人工血管の長さ1
cmを取り、4℃に冷却した後に凍結乾燥を行った。次
にそれを上記と同様の方法で10分間の紫外線照射で紫
外線架橋を行った。次にこのようにして架橋を行ったゼ
ラチンが充填された人工血管を100mlのpH7.4
の蒸留水に投入し、室温に1週間放置した。実施例1と
同様にして、切片を作成し、光学顕微鏡による観察した
ところ、1週間経過後であっても、e−PTFEのフィ
ブリル間隙にゼラチンが残存していることが判明した。
更に、放置後2週間後には、上記ゼラチンが完全に消失
していたことも判明した。このことから、溶解性である
ゼラチンがe−PTFEのフィブリル間隙に充填させら
れ、凍結乾燥と紫外線架橋をうけると、溶解性であるに
も関わらず、その溶出が極めて遅れていることが明らか
となった。
【0120】実施例8 文献(J.Biomater-Sci-Polym-Ed.1994:6, 447-461, Iwa
saki et al.)記載の方法と同様にして、合成のリン脂質
を得た。これは石原ら(J. Biomedical Marerials Rese
arch, 26;1543−1552:1992)に記載さ
れているリン脂質に類似した材料であり、生体適合性と
抗血栓性があると言われている。この材料は一つの分子
内に親水性部分と疎水性部分が共に存在する。この合成
リン脂質の5gを90%のエタノール中に溶解し、リン
脂質溶解液を得た。
【0121】上記で作成した5%のリン脂質の含水極性
溶媒溶液1グラムを採取し、100mlのpH7.4の
蒸留水に投入し、室温に放置したところ、2時間でリン
脂質は溶解したことから、このリン脂質は溶解性である
ことが判明した。
【0122】実施例1と同様の方法で、フィブリル長3
0ミクロンから60ミクロン、平均して約45ミクロン
のe−PTFEの人工血管の方末端を閉じて、他の末端
から上記で作成した5%のリン脂質の含水極性溶媒溶液
を徐々に繰り返し注入し、リン脂質をe−PTFEのフ
ィブリル間隙に充填した。
【0123】このようにして5%のリン脂質の充填され
たe−PTFE人工血管を得た。次にこの人工血管の長
さ1cmを切り取って100mlのpH7.4の蒸留水
に投入し、室温に放置した。実施例1と同様に切片を作
成し、光学顕微鏡により観察したところ、3日間経過後
であっても、e−PTFEのフィブリル間隙にリン脂質
が残存していることが判明した。このことから、溶解性
であるリン脂質がe−PTFEのフィブリル間隙ではそ
の溶出が極めて遅れていることが明らかとなった。
【0124】実施例9 実施例1と同様の方法で、牛の皮膚から採取した繊維状
コラーゲンをペプシン等の酵素処理によって分子レベル
にまで分解し、更にコラーゲン分子の一部であるテロペ
プタイド部分を取り除いて抗原性を大幅に低下させる処
置を行ってアテロコラーゲンを得た。次に、実施例1と
同様の方法で、このアテロコラーゲンの1分子当たりの
アミノ基の約10%に相当する7〜8個のアミノ基に対
して炭素数14のミリスチレン酸を付着させることでア
シル化アテロコラーゲンを得た。
【0125】次に、実施例4と同様の方法で、コラーゲ
ン分子に残存するアミノ基全てに無水コハク酸を用いて
カルボキシル基をつけることでサクシニール化を行っ
た。次に、このようにして得たアシル化サクシニール化
を蒸留水に5%の質量比で入れ、コラーゲン分子を膨潤
させた。次にこれを静かに40℃に加熱し、コラーゲン
分子の3本の鎖を徐々に解くことによって、コラーゲン
分子を切断することなく分解してアシル化サクシニール
化親ゼラチンを作成した。
【0126】上記で得たアシル化アテロコラーゲンから
作成した親ゼラチンの溶液に3倍量と同量の100%エ
タノールをそれぞれ個別に注ぎ、良く撹拌して1.25
%及び2.5%の濃度のゼラチンの含水極性溶媒溶液を
得た。
【0127】次に、上記で作成した1.25%と2.5
%のゼラチンの含水極性溶媒溶液を4℃に冷却すること
によってゼラチンを凝固させた。次にこのゼラチン1グ
ラムを採取し、凍結乾燥を行った後に10分間の紫外線
による架橋を行い、その後100mlのpH7.4の蒸
留水に投入し、室温に放置したところ、6時間でゼラチ
ンは溶解したことから、このゼラチンは溶解性であるこ
とが判明した。
【0128】実施例1と同様の方法で、フィブリル長3
0ミクロンから60ミクロン、平均して約45ミクロン
のe−PTFEの人工血管の方末端を閉じて、他の末端
から上記で作成した1.25%のゼラチンの含水極性溶
媒溶液を徐々に繰り返し注入し、更に2.5%のゼラチ
ンを追加して注入することで、e−PTFE人工血管の
フィブリル間隙に充分にゼラチンを充填し、そのあと4
℃に冷却し、更に凍結乾燥を行った後に、実施例7と同
様の方法で10分間の紫外線による架橋を行い、ゼラチ
ンが充填されたe−PTFE人工血管を得た。
【0129】このようにして作成したゼラチンの充填さ
れたe−PTFE人工血管の長さ1cmを切り取り、1
00mlのpH7.4の蒸留水に投入し、室温に放置し
た。実施例1と同様に切片を作成し、光学顕微鏡により
観察したところ、2週間経過後であっても、e−PTF
Eのフィブリル間隙にゼラチンが残存していることが判
明した。このことから、溶解性であるアシル化サクシニ
ール化親ゼラチンがe−PTFEのフィブリル間隙では
その溶出が極めて遅れることが明らかとなった。
【0130】実施例10 実施例9で作成した人工血管を長さ6センチメートル切
り取り、それをガス滅菌(10%のエチレンオキサイド
(EOG)ガス、56℃、12時間)し、成犬の腹部大
動脈に植え込みを行った。植え込みにあたって、人工血
管は乾燥して硬い状態であったが、生理的食塩水に浸す
ことで人工血管は吸水性を発揮して柔軟となった。人工
血管は植え込み直後、白色から赤色に変化したが、血液
や血漿の漏れは全く認められなかった。
【0131】対照として、ゼラチンを充填する前のe−
PTFE人工血管を同様にガス滅菌し、成犬の腹部大動
脈に植え込みを行った。植え込みにあたって、人工血管
は始めから乾燥していたが、柔軟であった。人工血管は
植え込み直後、白色からごく少し赤色に変化したが、血
液の漏れはなかった。しかしながら、植え込み後5分経
過して、人工血管の表面から、汗をかくが如く、血漿が
湧き出てくる漏出現象が認められた。この現象は植え込
み後約1時間持続し、その後次第に漏出量が減少した。
以上の結果、ゼラチンの被覆によって血漿の漏出が押さ
えられていたことが判明した。
【0132】このようにして植え込まれた人工血管を植
え込み後4週間目に採取した。人工血管周囲はゼラチン
を被覆した人工血管も、対照として用いた被覆していな
い人工血管ともに結合組織に覆われており、瘢痕組織形
成や異物反応等は認められなかった。人工血管内面は薄
いフィブリン層に覆われており、両人工血管において、
内面の治癒に差は認められなかった。この結果、ゼラチ
ン被覆は人工血管の治癒過程に悪影響を及ぼしていない
ことが判明した。
【0133】植え込み後4週間目に採取した人工血管の
断面を光学顕微鏡で観察した結果、ゼラチンを被覆した
人工血管では、e−PTFE人工血管のフィブリル間隙
に無数の線維芽細胞が侵入しており、線維芽細胞の間に
少数ではあるが、毛細血管も侵入しているのが観察され
た。一方、対照として用いた被覆していない人工血管で
は、線維芽細胞の侵入はその数が少なく、毛細血管の侵
入は見られなかった。この結果、ゼラチンを被覆した人
工血管では周囲組織や細胞との親和性が対照の人工血管
に比べて良好であることが判明した。
【0134】実施例11 実施例9で作成した人工血管を長さ3センチメートル取
り、それを実施例10と同様にガス滅菌し、それを長軸
方向に開いて、約3cm×2cmの膜を得た。次に線維
芽細胞や毛細血管の成長、遊走を促進すると言われるba
sic FibroblastGrowth Factor(bFGF;Upstate Bio
technology 社製)を25ng作成した膜に振りかけて
染み込ませ、その後にこの膜を家兎の腹部に、人工腹壁
として植え込んだ。植え込みにあたっては取り扱い性等
は良好であった。
【0135】対照として、ゼラチンを充填していないe
−PTFE人工血管をガス滅菌し、同様に3センチメー
トル取り、それをガス滅菌し、それを長軸方向に開い
て、約3cm×2cmの膜を得た。次に線維芽細胞や毛
細血管の成長、遊走を促進すると言われるbasic Fibrob
last Growth Factor(bFGF)を25ng作成した膜
に振りかけて染み込ませ、この膜を家兎の腹部に、人工
腹壁として植え込んだ。植え込みにあたっては取り扱い
等は良好であった。以上の結果、ゼラチンを被覆してい
てもしていなくても、肉眼的には人工腹壁としての効果
は同等に良好であることが判明した。
【0136】このようにして植え込まれた人工腹壁を植
え込み後2週間目に採取した。人工腹壁周囲はゼラチン
を被覆し、bFGFを吸着させた人工腹壁も、対照とし
て用いた被覆していない人工血管ともに結合組織に覆わ
れており、瘢痕組織形成や異物反応等は認められなかっ
た。しかしながらゼラチンを被覆し、bFGFを吸着さ
せた人工腹壁周囲には無数の毛細血管の侵入が見られ、
bFGFの効果が著明であった。しかしながら、対照の
膜ではその様な毛細血管の侵入はほとんど見られなかっ
た。この結果、ゼラチン被覆は人工腹膜はbFGFを吸
着し、維持しており、植え込み後にそれが徐放出されて
いたことが判明した。
【0137】このようにして、植え込み後2週間目に採
取した人工腹壁の断面を光学顕微鏡(倍率:200倍)
で観察した結果、ゼラチンを被覆し、bGHGを吸着さ
せた人工腹壁では、e−PTFE人工血管のフィブリル
間隙に無数の線維芽細胞と毛細血管が侵入しているのが
観察された。一方、対照として用いたゼラチンを被覆し
ていない人工腹壁では、線維芽細胞の侵入はその数が少
なく、毛細血管の侵入は見られなかった。この結果、ゼ
ラチンを被覆した人工腹壁ではbFGFの吸着維持性が
優れていることが判明した。
【0138】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、疎水性
樹脂からなる多孔質構造と、該多孔質構造を構成する孔
および/又は間隙内に配置された溶解性物質とを少なく
とも含み、前記溶解性物質が含水極性溶媒に溶解可能で
あり、且つ該溶解性物質が前記多孔質構造内に配置(充
填)された状態においても前記含水極性溶媒に溶解可能
であるハイブリッド樹脂材料が提供される。
【0139】本発明は元来は疎水性の樹脂からなる多孔
質構造の孔ないし間隙内に溶解性物質を充填させること
によって、溶解性物質の溶解速度を遅くさせることが可
能である。
【0140】疎水性樹脂からなる多孔質構造の孔または
間隙内に充填された溶解性物質は、生体内に配置した場
合においても、一時的に疎水性樹脂からなる多孔質構造
の孔または間隙からの体液や血漿の漏れを防ぐことが可
能である。
【0141】疎水性樹脂からなる多孔質構造の孔または
間隙内に溶解性物質を充填することによって、少量の溶
解性物質を用いた場合であっても、生体内等において効
果的なシール状態を得ることが可能である。
【0142】疎水性樹脂からなる多孔質構造は溶解性物
質でシールされているため、生体内等でほぼ完全に水や
血液を通過させない状態でも、柔軟な物性を有すること
が容易である。
【0143】溶解性物質は元来溶解性であるにも関わら
ず、疎水性樹脂樹脂からなる多孔質構造の孔または間隙
内にあって、その溶解速度が遅いため、生体内でホスト
の細胞が侵入してくるまでの間は、疎水性樹脂からなる
多孔質構造の孔または間隙をシールしておくことか可能
である。
【0144】化学的架橋剤等を省略可能であるため、生
体内に植え込んだ後でも異物反応を極めて少なくするこ
とが容易であり、細胞の侵入を容易にさせるため、細胞
組み込み型材料の素材としての使用に有利である。
【0145】本発明のハイブリッド樹脂材料に溶解性物
質として各種薬剤を吸着することにより、該ハイブリッ
ド樹脂材料の作用によって、それを徐放出させることが
容易である。
【0146】本発明のハイブリッド樹脂材料に溶解性材
料として血液凝固を促進させる薬剤を吸着させた場合
は、血液に接するまたはその周辺領域での止血を目的と
した材料に利用可能で、その材料表面においての血栓形
成を促進させることが可能である。
【0147】本発明のハイブリッド樹脂材料に溶解性材
料として細胞増殖を促進させる薬剤を吸着させた場合
は、組織治癒や再生を促進させる材料に利用可能で、材
料表面においての細胞の増殖、遊走、組織構築等を誘導
することが可能である。
【0148】本発明のハイブリッド樹脂材料に溶解性材
料として細胞増殖を阻止する薬剤を吸着させた場合は、
組織治癒や再生を制御させる材料に利用可能で、材料表
面においての細胞の増殖、遊走、組織構築等を制限させ
たり阻止することによる組織過剰増殖を阻止することが
可能である。
【0149】本発明のハイブリッド樹脂材料に溶解性材
料として細菌感染を阻止させる薬剤を吸着させた場合
は、生体内植え込み材料または生体外で使用する材料に
利用可能で、材料表面における細菌の活動を阻止し、材
料の有する特性を細菌の活動のない場で副作用無く発揮
させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】疎水性樹脂からなる多孔質構造の人工血管壁
に、生体内溶解性材料を含浸させる方法の一例を示す模
式斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1の方法で用いた人工血管の
長軸方向の割断面の一例を示す。図2(b)は、該割断
面の拡大図の一例を示す。
【図3】図3(a)は、図1の方法により得ることが可
能な溶解性材料が充填された人工血管壁の長軸方向の割
断面の一例を示す。図3(b)は、該割断面の拡大図の
一例を示す。
【符号の説明】
1…人工血管 2…細長い透明な塩化ビニール袋2 3…三方活栓 4…コネクティブチューブ 5…注射器 6…生体内溶解性材料 7…止血鉗子 8…長軸方向に切断された人工血管 9…人工血管の長軸方向の割断面 10…人工血管の長軸方向の割断面の拡大図 11…人工血管の結節部分 12…人工血管のフィブリル部分 13…生体内溶解性材料が絡められた人工血管の長軸方
向の割断面 14…生体内溶解性材料が絡められた人工血管の長軸方
向の割断面の拡大図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C08L 27:18 C08L 27:18 Fターム(参考) 4C081 AB13 BB06 CA021 CA131 CA271 DA03 DB03 DC14 4C097 AA15 BB01 CC01 DD01 EE06 FF05 FF16 MM02 MM04 MM05 4F074 AA04 AA24 AA39 AA90 CB91 DA24 DA59

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 疎水性樹脂からなる多孔質構造と、該多
    孔質構造を構成する孔および/又は間隙内に配置された
    溶解性物質とを少なくとも含み、 前記溶解性物質が極性溶媒に溶解可能であり、且つ該溶
    解性物質が前記多孔質構造内に配置された状態において
    も前記含水極性溶媒に溶解可能であるハイブリッド樹脂
    材料。
  2. 【請求項2】 前記溶解性物質が単独で前記極性溶媒に
    完全に溶解する溶解時間(S)と、前記疎水性樹脂材料
    内における溶解時間(H)との比(H/S)が1.2以
    上である請求項1記載のハイブリッド樹脂材料。
  3. 【請求項3】 前記溶解性物質がその分子中に親水性部
    分と疎水性部分とを有する請求項1または2記載のハイ
    ブリッド樹脂材料。
  4. 【請求項4】 前記溶解性物質がpH約7〜7.4で溶
    解性を有する請求項1〜3のいずれかに記載のハイブリ
    ッド樹脂材料。
  5. 【請求項5】 前記疎水性樹脂がフッ素樹脂である請求
    項1〜4のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  6. 【請求項6】 前記多孔質構造がフィブリル構造を有す
    る請求項1〜5のいずれかに記載記載のハイブリッド樹
    脂材料。
  7. 【請求項7】 前記溶解性物質の少なくとも一部が天然
    由来材料またはその誘導体である請求項1〜6のいずれ
    かに記載のハイブリッド樹脂材料。
  8. 【請求項8】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、合
    成高分子由来材料またはその誘導体である請求項1〜7
    のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  9. 【請求項9】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、自
    然界には元来存在せず、人為的に生物を用いて作らせた
    材料由来の材料またはその誘導体である請求項1〜7の
    いずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  10. 【請求項10】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    アシル基、アルキル基、および/又はフェニール基から
    選ばれた疎水性基を少なくとも1種類有する材料である
    請求項1〜10のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材
    料。
  11. 【請求項11】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル
    基、および/又はスルフォ基から選ばれた親水性基を少
    なくとも1種類有する材料である請求項1〜10のいず
    れかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  12. 【請求項12】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    1種類以上の親水性基を少なくとも有し、且つ、1種類
    以上の疎水性基を有する材料である請求項1〜11のい
    ずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  13. 【請求項13】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    1種類以上の親水性基を材料と、1種類以上の疎水性基
    を有する材料との混合物である請求項1〜11のいずれ
    かに記載のハイブリッド樹脂材料。
  14. 【請求項14】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    極性溶媒に溶解、分散または懸濁可能である請求項1〜
    13のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  15. 【請求項15】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    化学架橋剤によって部分的に架橋されている請求項1〜
    14のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  16. 【請求項16】 前記溶解性物質の少なくとも一部が物
    理的エネルギーによって部分的に架橋されている請求項
    1〜14のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  17. 【請求項17】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    架橋処理後もpH約7〜7.4で溶解性を有する請求項
    15または16に記載のハイブリッド樹脂材料。
  18. 【請求項18】 前記溶解性物質の少なくとも一部が、
    細胞成長因子、サイトカイン、抗生物質、抗凝固性物
    質、凝固促進物質、細胞成長抑制因子、薬理学的作用を
    有する薬剤、等のグループから選ばれた一つ以上の生理
    活性物質を吸収または吸着により保持可能な請求項1〜
    17のいずれかに記載のハイブリッド樹脂材料。
  19. 【請求項19】 前記疎水性樹脂からなる多孔質構造
    が、多数の結節部分と個々の結節間を結ぶ細いフィブリ
    ル部分とが繰り返し交互に存在する構造の延伸ポリテト
    ラフルオロエチレン(e−PTFE)のフィブリル繊維
    からなる請求項1〜18のいずれかに記載のハイブリッ
    ド樹脂材料。
  20. 【請求項20】 極性溶媒に溶解可能な溶解性物質の極
    性溶媒への溶解または分散液を、疎水性樹脂からなる多
    孔質構造の孔および/又は間隙内に配置することによ
    り、該溶解性物質が前記多孔質構造内に配置された状態
    においても前記極性溶媒に溶解可能なハイブリッド材料
    を形成するハイブリッド樹脂材料の製造方法。
  21. 【請求項21】 前記多孔質構造の片面または両面から
    5mmHg以上、300mmHg以下の範囲内で陽圧ま
    たは陰圧の圧力差を与えることにより、該多孔質構造の
    孔および/又は間隙内に前記溶解性物質を配置する請求
    項20記載のハイブリッド樹脂材料の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記多孔質構造の孔および/又は間隙
    内に前記溶解性物質を配置した後に、該溶解性物質を凍
    結乾燥処理又は自然乾燥処理する請求項20または21
    記載のハイブリッド樹脂材料の製造方法。
  23. 【請求項23】 前記多孔質構造の孔および/又は間隙
    内に前記溶解性物質を配置した後に、該溶解性物質を架
    橋処理する請求項20または21記載のハイブリッド樹
    脂材料の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記溶解性物質の架橋が、物理的エネ
    ルギーによる部分的架橋である請求項23記載のハイブ
    リッド樹脂材料の製造方法。
  25. 【請求項25】 前記溶解性物質の架橋が、化学架橋剤
    による部分的架橋である請求項23記載のハイブリッド
    樹脂材料の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006263144A (ja) * 2005-03-24 2006-10-05 Mcrotech Kk 生体軟組織代替移植材料およびその製造方法
JP2014100110A (ja) * 2012-11-21 2014-06-05 Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute 高融点ゼラチン組成物、その製造方法、およびその用途
JP2017210562A (ja) * 2016-05-26 2017-11-30 Dic株式会社 繊維状タンパク質の膜、及びその製造方法
CN109340467A (zh) * 2018-10-17 2019-02-15 京东方科技集团股份有限公司 微流控管道、微流控管道的控制方法和制作方法

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