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JP2001230393A - 複合部材の分離方法及び薄膜の製造方法並びに複合部材の分離装置 - Google Patents

複合部材の分離方法及び薄膜の製造方法並びに複合部材の分離装置

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JP2001230393A
JP2001230393A JP2000361346A JP2000361346A JP2001230393A JP 2001230393 A JP2001230393 A JP 2001230393A JP 2000361346 A JP2000361346 A JP 2000361346A JP 2000361346 A JP2000361346 A JP 2000361346A JP 2001230393 A JP2001230393 A JP 2001230393A
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一隆 柳田
Kiyobumi Sakaguchi
清文 坂口
Kazuaki Omi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】貼り合わせ基板等の複合部材における亀裂の発
生位置の再現性を高め、端部における薄膜の欠損量を抑
制する。 【解決手段】分離層4と前記分離層4上にある移設層5
とを有する第1の部材1と、第2の部材2とが密着した
複合部材を、前記第1の部材1と前記第2の部材2との
密着界面とは異なる位置において分離する。まず、前記
密着界面に対して非対称な力を前記複合部材の端部に作
用させることにより、前記複合部材に前記第1の部材1
の表面から前記移設層5を通り前記分離層4に至る亀裂
7Aを形成する。次いで、前記分離層4に沿って前記亀
裂を成長させ、前記複合部材を完全に分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複合部材の分離方
法、薄膜の製造方法、並びに複合部材の分離装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】絶縁体(誘電体)、導電体、半導体、磁
性体などの薄膜を形成するためには、各種の製造方法が
提案されており、その中には、互いに材料或いは構造の
異なる少なくとも2種の層からなる複合部材を分離し
て、薄膜を形成する方法がある。
【0003】以下、理解し易いように、薄膜としてSOI
層を取り上げて説明する。
【0004】特開平7−302889号公報、米国特許
第5,856,229号の明細書には、単結晶Si基板
に多孔質層を形成し、その上に非多孔質層単結晶層を形
成した第1の部材を、絶縁層を介して第2の部材に貼り
合わせて形成した複合部材を、分離層として働く多孔質
層で2枚に分離することにより、第2の部材に非多孔質
単結晶層を移し取る方法が記載されている。この技術
は、SOI層の膜厚均一性が優れていること、SOI層
の結晶欠陥密度を低減し得ること、SOI層の表面平坦
性が良好であること、数10nm〜10μm程度の範囲
のSOI層を有するSOI基板を製造可能な点で優れて
いる。
【0005】更に、この方法は単結晶Si基板の大部分
を破壊することなく、第2の部材から分離するので、分
離したSi基板を再利用できるという優れた利点を有す
る。
【0006】貼り合わせた基板を2枚に分離する方法と
しては、例えば、貼り合わせ面に対して垂直な方向に力
が加わるようにして両基板を互いに反対方向に引っ張る
方法、貼り合わせ面に対して平行に剪断応力を加える方
法(例えば、貼り合わせ面に平行な面内で両基板を互い
に反対方向に移動させる方法や、円周方向に力が加わる
ようにして両基板を反対方向に回転させる方法など)、
貼り合わせ面に対して垂直な方向に加圧する方法、分離
領域に超音波などの波動エネルギーを印加する方法、分
離領域に対して貼り合わせ基板の側面側から貼り合わせ
面に平行に剥離用部材(例えばナイフのような鋭利なブ
レード)を挿入する方法、分離領域として機能する多孔
質層に染み込ませた物質の膨張エネルギーを利用する方
法、分離領域として機能する多孔質層を貼り合わせ基板
の側面から熱酸化させることにより、該多孔質層を体積
膨張させて分離する方法、分離領域として機能する多孔
質層を貼り合わせ基板の側面から選択的にエッチングし
て分離する方法などがある。
【0007】このような方法は、米国特許第5,85
4,123号の明細書、特開平11−237884号公
報、特開平10−233352号公報、欧州特許公開0
867917号公報などに開示されている。
【0008】又、特開平5−211128号公報、米国
特許第5,374,564号の明細書には、単結晶Si
基板にその表面側から水素などのイオンを注入し、基板
の内部に分離層として働く注入イオンの濃度が局所的に
高いイオン注入層を形成して形成された基板を、別の基
板に貼り合わせて、その貼り合わされた基板を加熱して
分離する方法が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したような分離方
法においては、分離の初期に亀裂が発生する位置を如何
に安定させるかが重要である。
【0010】例えば、貼り合わせ基板の分離の際に、分
離層以外の部分に発生した亀裂が基板の中心方向に成長
していくと、SOI層となる薄膜が破壊され、SOI基
板の製造歩留まりを低下させる。
【0011】本発明は、上記の背景に鑑みてなされたも
のであり、例えば、貼り合わせ基板等の複合部材におけ
る亀裂の発生位置の再現性を高め、端部における薄膜の
欠損量を抑制することを第1の目的とする。
【0012】又、本発明は、複合部材を多孔質層或いは
イオン注入層等の分離層で適切に分離することを第2の
目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の側面に係
る分離方法は、分離層と前記分離層上にある移設層とを
有する第1の部材と、第2の部材とが密着した複合部材
を、前記第1の部材と前記第2の部材との密着界面とは
異なる位置において分離する複合部材の分離方法であっ
て、前記密着界面に対して非対称な力を前記複合部材の
端部に作用させることにより、前記複合部材に前記第一
の部材の表面から前記移設層を通り前記分離層に至る亀
裂を形成する工程を含む予備分離工程と、前記分離層に
沿って前記亀裂を成長させる工程を含む本分離工程とを
有する。
【0014】本発明の第2の側面に係る薄膜の製造方法
は、分離層と前記分離層上にある移設層とを有する第1
の部材と第2の部材とを密着させ、複合部材を形成する
工程と、前記第1の部材と前記第2の部材との密着界面
とは異なる位置において分離する分離工程とを含む薄膜
の製造方法において、前記分離工程は、前記密着界面に
対して非対称な力を前記複合部材の端部に作用させるこ
とにより、前記複合部材に前記第一の部材の表面から前
記移設層を通り前記分離層に至る亀裂を形成する第1工
程と、前記分離層に沿って前記亀裂を成長させる工程と
を有する薄膜の製造方法。
【0015】本発明の第3の側面に係る分離装置は、分
離層と前記分離層上にある移設層とを有する第1の部材
と、第2の部材とが密着した複合部材を、前記第1の部
材と前記第2の部材との密着界面とは異なる位置におい
て分離する複合部材の分離装置であって、前記密着界面
に対して非対称な力を前記複合部材の端部に作用させる
ことにより、前記複合部材に前記第一の部材の表面から
前記移設層を通り前記分離層に至る亀裂を形成する予備
分離機構と、前記分離層に沿って前記亀裂を成長させる
本分離機構とを具備する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
に好適な実施の形態を説明する。
【0017】図1A〜図1Cは、本発明の好適な実施の
形態に係る複合部材の分離方法を概略的に説明するため
の模式図である。
【0018】第1の部材1は、その内部に形成された分
離層4を有する。5は第1の部材の表層(移設層)であ
り分離層4上にある。この表層が後に第2の部材に移設
されることになる。3は第1の部材の基板であり分離層
4の下方にある。この内部に分離層4を有する第1の部
材1と、第2の部材2とを密着させ複合部材6を作製し
て用意する。1Aは密着界面を示している。
【0019】本実施形態の分離方法は、この複合部材6
を、第1の部材1と第2の部材2との密着界面1Aとは
異なる位置において分離するために図1Bに示す予備分
離工程と、図1Cに示す本分離工程とを含む。
【0020】予備分離工程では、図1Bに示すように、
密着界面1Aに対して非対称な力8を複合部材6の端部
に作用させることにより、複合部材6に第一の部材1の
表面から移設層5を横断して分離層4に至る亀裂7Aを
形成する。この密着界面に対して非対称な外力8が、複
合部材6の横方向中心に向けて密着界面に平行に亀裂7
Aが伸びることを抑制する。図1Bでは亀裂7Aの先端が
基板3の上面にまで達している例を示しているが、亀裂
7Aの先端は、分離層4の上面或いは分離層4内部に達
していればよい。
【0021】本分離工程では、図1Cに示すように、亀
裂7Aが形成された分離開始部から分離層4に沿った亀
裂7Bを成長させる。予備分離工程において、亀裂7Aは
すでに第1の部材6内部の分離層4に到達しているの
で、その後は、第1及び第2の部材を分離させるような
分離力9を与えることにより、亀裂7Bは、分離層4に
沿って、分離層4の内部或いはその上下界面に発生し成
長する。図1Cは、分離層4の内部に亀裂7Aが成長して
いく様子を例示している。
【0022】こうして、移設層5はその大部分が破損す
ることなく第2の部材上に移設されることになり、移設
層5の端部の極一部のみが第2の部材に移設されずに欠
落するだけである。
【0023】本発明に用いられる移設層5は、予備分離
工程で亀裂が形成され、本分離工程にて分離されること
により第1の部材側に移設される層を意味し、このよう
な移設層5としては、絶縁体、導電体、半導体、磁性体
などの材料からなる層から選択される少なくとも一種が
用いられる。半導体層を用いる場合には、単結晶Si
層、多結晶Si層、非晶質Si層、Ge層、SiGe
層、SiC層、C層、化合物半導体(例えば、GaA
s、InP、GaN等)層が具体例としてあげられる。
絶縁体の層を用いる場合には、酸化シリコン、窒化シリ
コン、窒化酸化シリコンなどが具体例として挙げられ
る。分離層の形成方法として後述するイオン注入法を用
いる場合には、被注入体となる基板の表層が移設層とな
る。
【0024】本発明に用いられる分離層4は、本分離工
程において、その内部又は上側若しくは下側の界面に亀
裂が生じることにより分離後の露出面を提供する層であ
り、複合部材の構成材料のうち、構造的に機械的強度が
比較的弱い層領域や界面、応力が比較的集中している層
領域や界面は、本発明における分離層として使用するこ
とができる。具体的には、陽極化成や、水素、窒素、希
ガス等のイオン注入により形成した多孔質層が挙げられ
る。イオン注入の場合には、それにより欠陥や応力が発
生するため、微小気泡が生じて多孔質体になっていなく
ても機械的な強度が弱いので、分離層として利用でき
る。
【0025】多孔質Siは、Uhlir等によって1956年に半
導体の電解研磨の研究過程において発見された(A.Uhli
r,Bell Syst.Tech.J., vol.35,333(1956))。多孔質Si
は、Si基板をHF溶液中で陽極化成(Anodization)する
ことにより形成することができる。
【0026】ウナガミ等は、陽極化成におけるSiの溶解
反応を研究し、HF溶液中のSiの陽極反応には正孔が必要
であり、その反応は、次の通りであると報告している
(T.ウナカ゛ミ、J.Electrochem.Soc.,vol.127, 476(198
0))。 Si+2HF+(2-n)e+ → SiF2+2H++ne- SiF2+2HF →SiF4+H2 SiF4+2HF →H2SiF6 または、 Si+4HF+(4-λ)e+ →SiF4+4H++λe- SiF4+2HF →H2SiF6 ここで、e+およびe-は、それぞれ正孔と電子を表してい
る。また、nおよびλは、それぞれSiの1原子が溶解する
ために必要な正孔の数であり、n>2又はλ>4なる条件
が満たされた場合に多孔質Siが形成されるとしている。
【0027】以上のことから、正孔の存在するP型Siは
多孔質化されるが、N型Siは多孔質化されないと考える
ことができる。この多孔質化における選択性は長野等及
び今井によって報告されている(長野、中島、安野、大
中、梶原、電子通信学会技術研究報告、vol.79,SSD79-9
549(1979))、(K.Imai, Solid-State Electronics, vol.2
4,159(1981))。
【0028】しかしながら、高濃度のN型Siであれば
多孔質化されるとの報告もある(R.P.Holmstrom and J.
Y. Chi, Appl. Phys.Lett., vol. 42, 386(1983))。
したがって、P型、N型の別にこだわらず、多孔質化が可
能な基板を選択することが重要である。
【0029】第1及び第2の部材を密着させて複合部材
を作成した後に、酸化性雰囲気中において複合部材を熱
処理して密着強度を強め、複合部材の露出面に酸化膜を
形成することも好ましい。この場合には、分離開始部と
なる複合部材の端部も酸化膜で覆われるために、本発明
の方法を適用すると良好に分離をすることができる。
【0030】予備分離工程に用いられる非対称な外力の
付与の仕方、本分離工程に用いられる外力の付与の仕方
については、更に図面を参照して後述する。
【0031】図2A〜図2Gは、本発明の好適な実施の
形態に係るSOI基板の製造方法を概略的に説明するた
めの模式図である。
【0032】まず、図2Aに示す工程では、単結晶Si
基板11を準備して、その表面に陽極化成処理等により
多孔質Si層(分離層)12を形成する。
【0033】次いで、図2Bに示す工程では、多孔質S
i層12の上に非多孔質の単結晶Si層13をエピタキ
シャル成長法により形成する。その後、その表面を酸化
することにより絶縁層(SiO層)14を形成する。
これにより、第1の基板(第1の部材)10が形成され
る。この単結晶Si層13と絶縁層14は移設層とな
る。
【0034】ここで、多孔質Si層12は、例えば、単
結晶Si基板11に水素イオン、ヘリウム等の不活性ガ
スのイオンを注入する方法(イオン注入法)により形成
してもよい。この方法により形成される多孔質Si層
は、多数の微小空洞を有し、微小空洞(microcavity)
層とも呼ばれる。
【0035】次に、図2Cに示す工程では、単結晶Si
からなる第2の基板(第2の部材)20を準備し、第1の
基板10と第2の基板20とを、第2の基板20と絶縁層
14とが面するように室温で密着させて貼り合わせ基板
(複合部材)を作成する。
【0036】なお、絶縁層14は、上記のように第1の
基板の単結晶Si層13側に形成しても良いし、第2の
基板20上に形成しても良く、両者に形成しても良く、
結果として、第1の基板と第2の基板を密着させた際に、
図2Cに示す状態になれば良い。しかしながら、上記の
ように、絶縁層14を活性層となる単結晶Si層13側
に形成することにより、第1の基板10と第2の基板20
との貼り合わせ界面(密着界面)を活性層から遠ざける
ことができるため、より高品位のSOI基板を得ること
ができる。
【0037】次いて、図2Dに示す工程(予備分離工
程)では、分離処理を開始する部分である分離開始部6
0を形成する。分離開始部60は、次工程である本分離
工程(図1E)において貼り合わせ基板30の分離を開
始する部分である。
【0038】本発明の好適な実施の形態では、第1の基
板10と第2の基板20との密着界面に対して非対称な
力を貼り合わせ基板30の端部に作用させる。特に、非
対称な構造の分離部材(例えば固体の楔)や非対称な構
造の基板保持機構を用いるとよい。
【0039】第1の基板10と第2の基板20に”非対
称な力”を印加する方法としては、例えば、次のような
方法が好適である。
【0040】第1の基板10と第2の基板20との密着
界面に対して非対称な力を作用させる構造及び/又は機
能を有する固体の楔を貼り合わせ基板30の端部に挿入
する方法が好適である。
【0041】より具体的には、例えば、第1の基板10
と第2の基板20との密着界面に対して非対称な形状を
有する楔を貼り合わせ基板30の端部の密着界面に挿入
する方法、第1の基板10に当接する部分と第2の基板
20に当接する部分との硬度が異なる楔を貼り合わせ基
板30の端部に挿入する方法、第1の基板10と第2の
基板20との密着界面に対称又は非対称の楔を挿入し、
該密着界面に対して垂直でない方向(非対称な方向)に
該楔を振動させる方法等が好適である。
【0042】第1の基板10と第2の基板20に”非対
称な力”を印加する方法としては、例えば、それぞれの
基板10、20を保持する基板保持部の構造を非対称な
構造として、基板の端部の反り具合を異ならしめる方法
もある。第1の基板10の端部が第2の基板20の端部
より大きなモーメントを受けて反るようにすれば、所望
の亀裂を発生させることができる。
【0043】ここで、第1の基板10に作用する第1の
力と第2の基板20に作用する第2の力とを異ならせる
際に、適切な分離開始部60が形成されるように、第1
の力と第2の力との関係を決定する。
【0044】適切な分離開始部とは、続く本分離工程
(図2E)において、実質的に多孔質層のみが破壊され
て貼り合わせ基板30が2枚の基板に分離され得る構造
を提供する分離開始部である。
【0045】より具体的には、適切な分離開始部は、例
えば、多孔質層の一部が貼り合わせ基板30の外部雰囲
気に露出した構造であり、第1の基板の表面、ここでは
絶縁層14の表面から絶縁層14及び単結晶Si層13
を通り多孔質層に至る亀裂7Aを発生させることにより
形成できる。
【0046】尚、図2Dでは、亀裂7Aの形成後、或いは
形成と同時に、亀裂7Aより端(外側)にある部分を取
り除いて分離開始部60を形成した様子を示している
が、図1Bに示したように、亀裂7Aより端(外側)にあ
る部分を取り除くことは必須ではない。
【0047】以上のように、分離開始部60を形成する
ことにより、続く本分離工程(図2E)において、多孔
質層12を選択的に破壊して貼り合わせ基板30を2枚
の基板に分離することができるため、分離工程における
欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0048】次いで、図2Eに示す工程(本分離工程)
では、分離開始部60が形成された貼り合わせ基板30
を多孔質層12の部分で2枚の基板に完全に分離する。
ここで、貼り合わせ基板30の分離は、分離開始部60
から多孔質層12に沿った横方向への亀裂の成長を開始
させることによって行う。分離の方法としては、例え
ば、次のような方法が好適である。 (1)流体を利用した分離方法 まず、貼り合わせ基板30の分離開始部60に束状の流
体(例えば、水等の液体、空気や窒素等の気体)を噴射
し、これにより分離開始部60付近の多孔質層12を破
壊し、徐々に分離領域(分離された領域)、即ち横方向
の亀裂を拡大させながら、そこに流体を進入させる。こ
こで、分離開始部60を有する貼り合わせ基板30を回
転させながら該貼り合わせ基板30の端部に向けて流体
を噴射すると、亀裂の成長は、分離開始部60に流体が
当たった時点で開始される。したがって、本分離工程の
開始の際に分離開始部60に対して流体を位置合わせす
る必要がない。その後、更に分離を進め、残りの多孔質
層12の全面を破壊することにより、貼り合わせ基板3
0を完全に分離する。この際、例えば、貼り合わせ基板
30をその面内で回転させることにより、該貼り合わせ
基板30に流体が打ち込まれる位置を変更しながら分離
を進めることが好ましい。
【0049】流体を用いる場合には、前述したような流
体の噴流を利用する方法に代えて、Oリングなどのシー
ル部材により分離開始部を取り囲む閉じた空間を形成
し、該空間内を流体で満たしその流体を加圧すること
で、亀裂を成長させると共にそこへ流体を進入させる方
法、いわゆる静圧流体を利用する方法を用いてもよい。 (2)固体の楔を利用した分離方法 貼り合わせ基板30の端部の分離開始部60に楔(例え
ば、樹脂製などの薄い楔)を緩やかに挿入し、2つの基
板を押し広げることにより、貼り合わせ基板30を完全
に分離する。
【0050】なお、楔を利用して分離開始部60を形成
する場合には、分離開始部60の形成処理と(図2D)
と本分離工程(図2E)において同一の装置を使用し
て、2つの処理を連続的に実行することもできる。 (3)引き剥がしによる分離方法 貼り合わせ基板30の一方の面を固定し、フレキシブル
テープ等を利用して他方の面を該貼り合わせ基板30の
軸方向に引っ張ることにより、該貼り合わせ基板30を
多孔質層12の部分で完全に分離する。この際、分離の
開始時は、分離開始部60に分離力が集中するように、
引っ張り力を印加する。 (4)せん断応力による分離方法 貼り合わせ基板30の一方の面を固定し、他方の面を該
貼り合わせ基板30の面方向に移動させるように該他方
の面に力を印加することにより、せん断応力によって該
貼り合わせ基板30を多孔質層12の部分で完全に分離
する。この方法では、分離開始部60から分離が開始さ
れるように、他の方法を適用する場合よりも大きな分離
開始部60を形成しておくことが好ましい。
【0051】以上のように、分離開始部60を形成した
後に、該分離開始部60から分離処理(本分離処理)を
開始することにより、貼り合わせ基板30を実質的に多
孔質層の部分のみで分離することができ、単結晶Si層
13、絶縁層14、第2の基板20、単結晶Si基板1
1、及び、それらの層又は基板の界面が破壊されて重大
な欠陥が生じることを防止することができる。
【0052】ここで、本発明の好適な実施の形態と対照
的な場合として、分離開始部を作成する際に第1の基板
10と第2の基板20とに対称な力を作用させた場合、
或いは、分離開始部を形成せず、第1の基板10と第2
の基板とに対称な力を作用させながら貼り合わせ基板3
0を分離する場合における貼り合わせ基板30の分離の
様子を考察する。
【0053】図3は、貼り合わせ基板を構成する第1の
基板10と第2の基板20とに対称な力を作用させた様
子を示す模式図である。
【0054】図3に示すように、第1の基板10と第2
の基板20との密着界面に対して対称な力902A、9
02Bを夫々第1の基板10、第2の基板20に作用さ
せた場合は、密着界面の最外周部の作用点901には、
密着面に対して対称な引張力903A、903Bが作用
する。これにより、分離の進行方向は、矢印904のよ
うに、概ね、貼り合わせ基板30の面方向(図では水平
方向)になる。
【0055】従って、分離は、多孔質層12まで達しな
いで、図4の矢印905に示すように、多孔質層12に
次いで構造が脆弱な、単結晶Si層13と絶縁層(Si
層)14との界面に沿って相応の距離Lだけ進行す
る。この場合、単結晶Si層13と絶縁層(SiO2
層)14との界面に沿って分離された部分は、第2の基
板20側に移設されないために、この長さL部分の部分
とそれより端の部分が欠落し欠陥となる。
【0056】もっとも、該単結晶Si層13と絶縁層
(SiO層)14との界面は、多孔質層12に比べれ
ば、構造的に強いため、該界面に生じる横方向の亀裂が
基板の中心にまで及ぶことは希であり、途中から単結晶
Si層13を横断し、多孔質層に至り、大部分は多孔質
層12で分離される。この距離Lが長いと、亀裂が多孔
質層に到達する点は、基板の外周端部から3mmを超え
ることもある。
【0057】これに対して、本発明の好適な実施の形態
によれば、図5に示すように、分離開始部を形成すべき
部分に、第1の基板10と第2の基板20との密着界面
に対して非対称な力906A、906Bを作用させるこ
とにより、第1の基板10と第2の基板20との密着界
面に、非対称な力907A、907Bを作用させる。
【0058】これにより、矢印908に示すように、亀
裂を容易に多孔質層12に到達させることができる。
【0059】図6は本発明の実施形態による予備分離工
程終了後の複合部材の断面を示している。絶縁層14及
び単結晶Si層13を横断する亀裂が、第1の部材の表
面の作用点901から多孔質層12に到達している様子
が描かれている。尚、亀裂より端(外側)にある部分6
1は、本分離工程前に取り除いてもよい。本発明の実施
形態によれば、単結晶Si層13と絶縁層14との界面
に沿って伸びる亀裂の距離(図4中の符号L)をゼロ或
いは非常に短くすることができる。具体的には、亀裂が
多孔質層に到達する点を、高歩留まりで、基板の外周端
部から3mm以内、より好ましくは2mm以内にするこ
とができる。
【0060】図2Eに示す分離工程(本分離工程)によ
り、分離後の第1の基板10’は、単結晶Si基板11
上に多孔質12bを有する構造となる。一方、分離後の
第2の基板20’は、多孔質Si層12c/単結晶Si
層13b/絶縁層14b/単結晶Si基板20の積層構
造となる。
【0061】即ち、以上の工程により、第1の基板の多
孔質層12上の単結晶Si層13及び絶縁層14を第2
の基板に移設することができる。ここで、多孔質層12
は、分離層の一例、単結晶Si層13及び絶縁層14
は、第1の基板から第2の基板に移設される移設層(表
層)の一例である。
【0062】図2Fに示す工程では、必要に応じて、分
離後の第2の基板20の表面の多孔質層12cを選択的
に除去する。これにより、図2Fに示すように、単結晶
Si層13b/絶縁層14b/単結晶Si基板20の積
層構造、即ち、SOI層(薄膜)13bを有するSOI
基板50が得られる。
【0063】図2Gに示す工程では、必要に応じて、分
離後の第1の基板10’の単結晶Si基板11上の多孔
質層12bをエッチング等により選択的に除去する。こ
のようにして得られる単結晶Si基板11は、再び第1
の基板10を形成するための基板、又は第2の基板20
として利用され得る。
【0064】以上のように、本発明の好適な実施の形態
によれば、第1の基板と第2の基板との密着界面に対し
て非対称な力を貼り合わせ基板の端部に作用させること
により分離層に至る亀裂を有する分離開始部を形成し、
該分離開始部から分離を実行することにより、多孔質層
を選択的に破壊することができるため、重大な欠陥の発
生を防止することができる。
【0065】次に、本発明の分離開始部の形成工程(予
備分離工程)の実施に好適に用いられる処理装置につい
て説明する。
【0066】[第1の処理装置]図7は、予備分離工程
の実施に好適な第1の処理装置の構成を概略的に示す図
である。図7に示す処理装置200は、貼り合わせ基板
30を支持する支持部203を有する支持台201と、
貼り合わせ基板30を支持部203に押圧するための弾
性体202と、楔210と、楔210を往復動させるた
めのラック付き駆動軸211と、駆動軸211をガイド
するガイド部材212と、駆動軸211に駆動力を与え
て往復動させるためのピニオンギアを有するモータ(駆
動部)213とを有する。
【0067】予備分離工程を実施する際は、モータ21
3を正転させて楔210を貼り合わせ基板30の端部に
所定量だけ挿入する。一方、楔210を後退させる際に
はモータ213を逆転させればよい。
【0068】図8は、図7の一部の拡大図である。非対
称な構造の楔210は、第1の基板10と第2の基板と
の密着界面に対して非対称な力を第1の基板10及び第
2の基板20に作用させるための構造として、密着界面
に対する傾斜角が異なる2つの当接面を有する(第1の
基板10に当接する側の傾斜θ1が第2の基板20に当
節する側の傾斜θ2よりも大きい)。この非対称な構造
は、第1の基板10の露出部からその内部の多孔質層に
向かって亀裂を生じさせ、適切な分離開始部を形成する
ことができる構造である。
【0069】図9は、楔210を貼り合わせ基板30の
端部に挿入した様子を模式的に示す図である。楔210
が非対称な構造を有するため、第1の基板10と第2の
基板20とは、密着界面に対して非対称な力を受けてい
る。この図9では、分離開始部の亀裂はマクロ的に描い
ており、実際には、上述したとおり、移設層を横断し分
離層に至る亀裂と、そこから分離層内又は分離層の上側
若しくは下側の界面に生じる横方向の亀裂とを含んでい
る、本分離工程では、図10に示すように、対称な構造
を有する固体の楔210’を適用することが好ましい。
この場合、図7に示した処理装置を予備分離工程に適用
し、図10に示す処理装置(図7に示した処理装置の楔
210を楔210’に置き換えた処理装置)を本分離工
程に適用すればよい。
【0070】[第2の処理装置]図11は、予備分離工
程の実施に好適な第2の処理装置の構成を概略的に示す
図である。図11に示す処理装置300は、貼り合わせ
基板30を支持する支持部203を有する支持台201
と、貼り合わせ基板30を支持部203に押圧するため
の弾性体202と、楔220と、楔220を往復動させ
るためのラック付き駆動軸211と、駆動軸211をガ
イドするガイド部材212と、駆動軸211に駆動力を
与えて往復動させるためのピニオンギアを有するモータ
213とを有する。
【0071】予備分離工程を実施する際は、モータ21
3を正転させて楔220を貼り合わせ基板30の端部に
所定量だけ挿入する。一方、楔220を後退させる際に
はモータ213を逆転させればよい。
【0072】図12は、図11の一部の拡大図である。
非対称な構造の楔220は、第1の基板10と第2の基
板との密着界面に対して非対称な力を第1の基板10及
び第2の基板20に作用させるための構造として、第1
及び第2の基板10及び20に各々当接する2つの当接
面を有し、第1の基板10に当接する第1の当接面に対
して第2の基板20に当接する第2の当接面が長さDだ
け後退した構造を有する。この非対称な構造は、第1の
基板10の露出部からその内部の多孔質層に向かって亀
裂を生じさせ、これにより、貼り合わせ基板30の端部
に適切な分離開始部を形成することができる構造であ
る。
【0073】図13は、楔220を貼り合わせ基板30
の端部に挿入した様子を模式的に示す図である。楔22
0が非対称な構造を有するため、第1の基板10と第2
の基板20とは、密着界面に対して非対称な力を受けて
いる。この図13では、分離開始部の亀裂はマクロ的に
描いており、実際には、上述したとおり、移設層を横断
し分離層に至る亀裂と、そこから分離層内又は分離層の
上側若しくは下側の界面に生じる横方向の亀裂とを含ん
でいる、本分離工程では、図10に示すように、対称な
構造を有する楔210’を適用することが好ましい。こ
の場合、図11に示す処理装置を予備分離工程に適用
し、図10に示す処理装置(図11に示す処理装置の楔
220を楔210’に置き換えた処理装置)を本分離工
程に適用すればよい。
【0074】[第3の処理装置]図14は、予備分離工
程の実施に好適な第3の処理装置の構成を概略的に示す
図である。図14に示す処理装置400は、貼り合わせ
基板30を支持する支持部203を有する支持台201
と、貼り合わせ基板30を支持部203に押圧するため
の弾性体202と、楔230と、楔230を往復動させ
るためのラック付き駆動軸211と、駆動軸211をガ
イドするガイド部材212と、駆動軸211に駆動力を
与えて往復動させるためのピニオンギアを有するモータ
213とを有する。
【0075】予備分離工程を実施する際は、モータ21
3を正転させて楔230を貼り合わせ基板30の端部に
所定量だけ挿入する。一方、楔230を後退させる際に
はモータ213を逆転させればよい。
【0076】図15は、図14の一部の拡大図である。
非対称な構造の楔230は、第1の基板10と第2の基
板との密着界面に対して非対称な力を第1の基板10及
び第2の基板20に作用させるための構造を有する。具
体的には、楔230は、第1の基板10に当接する第1
当接部材230aと第2の基板20に当接する第2当接
部材230bとを有し、第1当接部材230aは、第2
当接部材230bよりも高い硬度を有する。典型的に
は、例えば、第1当接部材230aは、剛体で構成さ
れ、第2当接部材230bは、弾性体(例えば、ゴム)
で構成される。これにより、貼り合わせ基板30の端部
に適切な分離開始部を形成することができる。
【0077】図16は、楔230を貼り合わせ基板30
の端部に挿入した様子を模式的に示す図である。楔23
0が非対称な構造を有するため、第1の基板10と第2
の基板20とは、密着界面に対して非対称な力を受けて
いる。この図16では、分離開始部の亀裂はマクロ的に
描いており、実際には、上述したとおり、移設層を横断
し分離層に至る亀裂と、そこから分離層内又は分離層の
上側若しくは下側の界面に生じる横方向の亀裂とを含ん
でいる、本分離工程では、図10に示すように、対称な
構造を有する楔210’を適用することが好ましい。こ
の場合、図14に示す処理装置を予備分離工程に適用
し、図10に示す処理装置(図14に示す処理装置の楔
230を楔210’に置き換えた処理装置)を本分離工
程に適用すればよい。
【0078】[第4の処理装置]図17は、予備分離工
程の実施に好適な第4の処理装置の構成を概略的に示す
図である。図17に示す処理装置500は、貼り合わせ
基板30を支持する支持部203を有する支持台201
と、貼り合わせ基板30を支持部203に押圧するため
の弾性体202と、楔240と、楔240を往復動させ
るためのラック付き駆動軸211’と、駆動軸211’
をガイドするガイド部材212と、駆動軸211’に駆
動力を与えて往復動させるためのピニオンギアを有する
モータ213と、楔240を第1の基板10と第2の基
板20との密着界面に対して非対称な方向に振動させる
振動子250と、該振動子250の一端と楔240とを
連結する連結部材241とを有する。
【0079】振動子250は、第1の基板10と第2の
基板との密着界面に対して非対称な方向の振動を発生す
る。振動子250としては、例えば、電気信号を機械的
な振動エネルギーに変換する素子(例えば、圧電素子)
が好適である。
【0080】予備分離工程を実施する際は、モータ21
3を正転させて楔240を貼り合わせ基板30の端部に
所定量だけ挿入する。一方、楔240を後退させる際に
はモータ213を逆転させればよい。
【0081】図18は、図17の一部の拡大図である。
非対称な構造の楔240は、図17に示す振動子250
により第1の基板10と第2の基板の密着界面に対して
非対称な方向の振動を与えられる。これにより、第1の
基板10と第2の基板20には、密着界面に対して非対
称な力が印加される。詳しくは、この振動により楔に接
触する個所は第1の基板10の方が、第2の基板20よ
りも外側であるため、基板10の受けるモーメントは、
基板20の受けるモーメントより大きくなり、基板10
の端部の反り量が基板20の端部のそれより大きくな
る。これにより、第1の基板10の露出部からその内部
の多孔質層に向かって亀裂を生じさせ、貼り合わせ基板
30の端部に適切な分離開始部を形成することができ
る。
【0082】図19は、楔240を貼り合わせ基板30
の端部に挿入した様子を模式的に示す図である。楔24
0が非対称な方向に振動するため、第1の基板10と第
2の基板20とは、密着界面に対して非対称な力を受け
ている。この図13では、分離開始部の亀裂はマクロ的
に描いており、実際には、上述したとおり、移設層を横
断し分離層に至る亀裂と、そこから分離層内又は分離層
の上側若しくは下側の界面に生じた横方向の亀裂とを含
んでいる。
【0083】そして、この装置の振動子250を停止さ
せれば、この装置は本分離工程にも好ましく適用でき
る。
【0084】[第5の処理装置]図20は、本発明の本
分離工程の実施に好適な第5の処理装置の構成を概略的
に示す図である。処理装置600は、貼り合わせ基板3
0を保持する一対の基板保持部103及び104と、一
方の基板保持部103に連結されると共に回転可能に軸
支された回転軸101と、基板保持部103と基板保持
部104との間の距離を調整すると共に貼り合わせ基板
30を押圧するために回転軸101に連結されたアクチ
ュエータ(例えば、エアシリンダ)108と、他方の基
板保持部104に連結されると共に回転可能に軸支され
た回転軸102と、回転軸102を回転させる回転源
(モータ)105と、貼り合わせ基板30に流体を打ち
込むための噴射ノズル106と、貼り合わせ基板30と
噴射ノズル106との相対的な位置関係を調整するため
の駆動ロボット107とを有する。
【0085】流体としては、例えば、水等の液体又は空
気や窒素等の気体を採用し得る。流体として水を使用す
る装置は、一般にウォータージェット装置と呼ばれる。
噴射ノズル106の径は、例えば0.1mm程度が好適
である。
【0086】貼り合わせ基板に噴射ノズル106を対向
させると共に、駆動ロボット107を駆動することによ
り、第1の基板10と第2の基板20との密着界面の直
上付近或いはそれから第1の基板10側にずれた位置に
噴射ノズル106を配置する。そして、この状態で、噴
射ノズル106から流体を噴射することにより、第1の
基板10と第2の基板20との密着界面に対して対称或
いは非対称な外力を貼り合わせ基板30の端部に作用さ
せる。これにより、多孔質層に亀裂を生じさせ、それを
成長させることができる。
【0087】ここで、密着界面に対して非対称な力を貼
り合わせ基板30の端部に作用させる方法として、他の
方法を採用することもできる。例えば、図20に示す例
では、密着界面に対して平行に流体を噴射するが、該密
着界面に対して傾斜させ、第1の基板に向けて流体を噴
射することによっても、多孔質層に亀裂を生じさせ、そ
れを成長させることができる。
【0088】[第6の処理装置]図21は、本発明の予
備分離工程或いは本分離工程の実施に好適な第6の処理
装置の構成を概略的に示す図である。
【0089】図21に示す処理装置700は、貼り合わ
せ基板を回転可能に保持する一対の基板保持部113及
び114と、一方の基板保持部114に連結された反り
矯正部材115を有する非対称な構造の基板保持機構と
を具備する。この非対称な構造の基板保持機構は、密着
界面に対して非対称な力を貼り合わせ基板の端部に作用
させる。
【0090】基板20は反り矯正部材115を介して基
板保持部114に減圧吸着され、基板10は基板保持部
113に減圧吸着される。そして、基板保持部114
(又は基板保持部113)を回転させると、貼り合わせ
基板と基板保持部113(又は基板保持部114)とが
共に回転する。
【0091】この処理装置700は次のように使用され
る。まず、基板保持部113及び114により貼り合わ
せ基板を挟んで保持する。そして、貼り合わせ基板を回
転させずに静止させて、噴射ノズル106から貼り合わ
せ基板の密着界面及びその近傍に向けて純水、空気、窒
素などの流体117を噴射する。このとき、第2の基板
20は板状の反り矯正部材115により図中上方への反
りが妨げられる。一方、第1の基板10側には反り矯正
部材が無いので、基板を支持する部材の最外周端の位置
は、第2の基板20のそれより内側に位置している。こ
れにより、第1の基板10の端部は第2の基板20より
反り易くなっている。
【0092】このような状態で、第1及び第2の基板の
各面取り部により形成された凹部に、流体117が吹き
付けられると、両基板の端部はそれぞれ離反する力を流
体から受けることになる。これにより、図5に示したよ
うな力の作用により、図6等に示したように第1の基板
10の表面から分離層に至る亀裂が発生する。
【0093】その後、流体117を噴射さ続けながら基
板保持部114を回転させる。これにより、貼り合わせ
基板は、回転させた状態で流体117により徐々に分離
される。ここで、貼り合わせ基板が1回転以上回転した
時点で該貼り合せ基板が完全に分離されるように、噴射
ノズル106に流体を供給する圧縮機による加圧力を調
整する。この分離処理において、亀裂は、渦巻き状に基
板の外から中心に向けて分離層に沿って進む。
【0094】両基板が完全に分離したら、流体の噴射を
止める。
【0095】[第7の処理装置]図22は、予備分離工
程或いは本分離工程の実施に好適な第7の処理装置の構
成を概略的に示す図である。
【0096】図22に示す処理装置800は、貼り合わ
せ基板を回転可能に保持する一対の基板保持部113及
び114と、一方の基板保持部114に連結され、端部
においてのみ基板20を吸着する凹型の反り矯正部材1
16を有する非対称な基板保持機構とを具備している。
118は凹部(空間)である。この非対称な構造の基板
保持機構は密着界面に対して非対称な力を貼り合せ基板
の端部に作用させる。
【0097】基板20は吸着部材115の端部で減圧吸
着され、基板10は基板保持部113に減圧吸着され
る。そして、基板保持部114(又は基板保持部11
3)を回転させると、貼り合せ基板と基板保持部113
(又は基板保持部114)とが共に回転する。
【0098】この装置の動作は図21の装置と同じであ
る。
【0099】[第8の処理装置]図23は、予備分離工
程或いは本分離工程の実施に好適な第8の処理装置の構
成を概略的に示す図である。処理装置900は、非対称
な基板保持機構を具備しており、この非対称な構造の基
板保持機構は、密着界面に対して非対称な力を貼り合わ
せ基板の端部に作用させる。
【0100】図23に示す処理装置900は、下蓋12
1と上蓋122とを有しており、内部に貼り合わせ基板
を収容する空間123ともう一つの空間124とを形成
している。
【0101】一方の空間123には流体供給菅125
が、他方の空間124には流体供給菅126が通じてお
り、それぞれ独立して所望の圧力で流体を供給する。処
理装置900の内部には、ゴムなどの弾性体からなるシ
ート状の隔離用シール材127が取り付けられており、
これが空間123と空間124とを隔てている。上蓋1
22側の空間124内には、内部が中空のOリング12
8が設けられている。シール材127は基板10の保持
部としても機能する。
【0102】下蓋121には、基板20を保持する基板
保持部129が設けられており、基板保持部129に
は、減圧吸着用の吸引孔130が複数形成されており、
基板保持部129の周辺部には、真空シール用のOリン
グ131が取り付けられている。
【0103】この処理装置900は次のように使用され
る。まず、上下の蓋121、122を開けて、貼り合わ
せ基板を基板保持部129上に載置し、吸引孔130を
通して吸着する。次に、上下の蓋121、122を閉め
て空間123を密封し、流体供給菅125から加圧流体
を空間123内に供給する。又、流体供給菅126から
加圧流体を空間124内に供給する。
【0104】ここで、空間123の圧力を空間124の
圧力より高める。貼り合わせ基板を構成する上側の基板
10は、上方に移動可能な状態でシール材127に密着
しているので、基板10の端部に流体により静圧を受け
ると、図5に示したような力の作用により、基板10の
端部が上方に反る。これにより、図6等に示したように
第1の基板10の表面から分離層に至る亀裂が発生す
る。
【0105】その後、流体を用いて静圧を印加し続ける
と、貼り合わせ基板が完全に分離される。
【0106】図24は、本発明の実施の形態による複合
部材の分離後の第1の基板の一例を示す模式的平面図で
ある。
【0107】分離開始部60を除くと、第1の基板11
の分離面側に、大面積に亘って均一な厚さで残留多孔質
層12bが残っている。半球状の分離開始部60の位置
が、基板の外周最端部から3mm以内、より好ましくは
2mm以内であれば、SOI基板としては良好なものが
得られる。
【0108】本発明の実施形態によれば、分離層に到達
する亀裂の位置を、基板の外周最端部から3mm以内、
より好ましくは2mm以内に安定して発現させることが
できる。
【0109】本発明においては、分離開始部60の面積
を不本意に広げないように、貼り合わせ基板を回転させ
ずに、予備分離工程を行うことが好ましい。
【0110】そして、予備分離工程の後に、貼り合わせ
基板を回転させながら該基板の端部に向けて流体を噴射
する。分離開始部60付近に流体が当たるまでは亀裂は
成長しないが、分離開始部60付近に流体が当たると本
分離工程に移行する。流体を用いた本分離工程では、回
転源105を駆動することにより貼り合わせ基板30を
1回転以上、より好ましくは2回転以上回転させなが
ら、亀裂を外周側から中心に向けて渦巻状に成長させて
本分離工程を実施することが好ましい。これにより、本
分離工程中における基板の反りを抑え、基板自体の割れ
を確実に防止することができる。
【0111】ここで、イオン注入法を利用した薄膜の製
造方法の実施形態について図25A〜図25Eを参照して
説明する。
【0112】まず、単結晶シリコンウエハのような基板
を用意する。好ましくはミラーウエハ上に単結晶半導体
層13をエピタキシャル成長させた基板を用いるとよ
い。
【0113】次に、酸化性雰囲気で熱処理を行い基板1
1の表面に酸化シリコンのような絶縁層14を形成す
る。
【0114】線状イオン打ち込み法或いはプラズマ浸漬
イオン打ち込み法により、絶縁層14が形成された基板
11の表面を通して基板11内にイオンを打ち込む。こ
こで、移設層の厚みに応じてイオン注入時のエネルギー
を制御して、注入粒子が移設層の厚みに対応した深さに
ピーク濃度を持つように打ち込む。
【0115】打ち込まれた粒子が高濃度に分布する層状
の部分は、注入イオンによる欠陥やストレスが生じてい
るため分離層4として働く。
【0116】こうして、移設層となる絶縁層14及び単
結晶半導体層13を有し、その下にイオン注入による分
離層4とを有する第1の部材が作製される(図25A)。
【0117】次に、石英ガラス又は単結晶シリコンウエ
ハのような第2の部材20を用意し、必要に応じて、そ
の表面に酸化シリコンなどの絶縁層を形成する。
【0118】次に、第1の部材と第2の部材20を室温で
密着させ、両者を貼り合わせる。ここで、必要に応じて
熱処理を行い、接合強度を高めることも好ましい。こう
して、図25Bに示す複合部材が得られる。
【0119】次に、複合部材に上述した非対称の外力を
加えて、第1の部材の表面から移設層である絶縁層14
及び単結晶半導体層13を通して分離層4に至る亀裂7
Aを形成する(図25C)。
【0120】そして、更に分離力を加えて分離層4に沿
って図中横方向に亀裂7Bを成長させる(図25D)。
【0121】こうして、図25Eに示すように複合部材
が完全に分離され、絶縁層14と単結晶半導体層13が
第2の部材上に移設される。
【0122】以上の工程により、SOI層となる薄膜(単
結晶半導体層13)を製造することができる。
【0123】以下、本発明の好適な実施例を説明する。
【0124】[第1の実施例]この実施例は、SOI基
板の製造工程に第1の処理装置200及び第5の処理装
置600を適用した例である。
【0125】まず、第1の基板10を形成する為に、比
抵抗0.01Ω・cmのP型(又はN型でもよい)の単結
晶Si基板11を準備し、その単結晶Si基板11に対
してHF溶液中で2段階の陽極化成処理を施し、その表面
に、互いに多孔度の異なる2層の多孔質層からなる多孔
質Si層12を形成した(図2A)。この時の陽極化成
条件は、以下の通りである。
【0126】<第1段階の陽極化成条件> 電流密度 :7(mA/cm) 陽極化成溶液 :HF:HO:COH=1:
1:1 処理時間 :5(min) 多孔質Si厚 :4.5(μm) <第2段階の陽極化成条件> 電流密度 :30(mA/cm) 陽極化成溶液 :HF:HO:COH=1:
1:1 処理時間 :10(sec) 多孔質Si厚 :0.2(μm) こうして、第1の基板の表面側には、第1段階の低電流
で低多孔度の第1の多孔質層が形成され、第1の多孔質
層の下には、第2段階の高電流で第1の多孔質層より薄
く且つ高多孔度の第2の多孔質層が形成された。
【0127】なお、第1の多孔質層の厚さは、上記の例
に限定されず、例えば、数百μm〜0.1μmが好適で
ある。また、第2の多孔質層の厚さに関しても、上記の
例に限定されず、以降の分離工程の条件等に応じて適宜
変更し得る。
【0128】第1の多孔質層が、高品質のエピタキシャ
ルSi層13を形成するために好適な多孔度を有するよ
うに、第2の多孔質層が、該第2の多孔質の中であって
第1の多孔質層との界面に極めて近い部分に亀裂が生じ
るような多孔度を有するように、上記の条件を決定し
た。
【0129】多孔質層12は、1層構造でもよいし、3
層以上の構造としてもよい。
【0130】次いで、この基板に酸素雰囲気中において
400℃で1時間の酸化処理を実施した。この酸化処理
により、多孔質層の孔壁内部を単結晶Siのまま維持しつ
つ、多孔質層12の孔の壁面を熱酸化膜で覆った。
【0131】次いで、多孔質Si層12上にCVD(Chemic
al VaporDeposition)法により0.3μm 厚の単結晶S
i層13をエピタキシャル成長させた(図2B)。この
時の成長条件は以下の通りである。なお、エピタキシャ
ル成長の前段では、高温で水素ガスに多孔質Si層12
の表面が晒されるため、Si原子のマイグレーションに
より表面の孔が埋まり、表面が平坦になる。
【0132】<エピタキシャル成長条件> ソースガス :SiHCl/H ガス流量 :0.5/180(l/min) ガス圧力 :80(Torr) 温度:950(℃) 成長速度 :0.30(μm/min) 次いで、エピタキシャル成長させた単結晶Si層13の
表面に熱酸化により200nm厚のSiO層14を形
成した(図2B)。これにより第1の基板10が得られ
る。
【0133】次いで、別途準備された第1の基板10と
同サイズのSi基板(第2の基板)20と、第1の基板1
0のSiO層14の表面とを、それぞれの基板の中心
位置が一致するように、密着させて、酸化性雰囲気中で
1180℃で5分の熱処理を行った。これにより図2C
に示すような貼り合わせ基板30を作成した。実際に
は、酸化性雰囲気での熱処理により複合部材の表面は酸
化膜で覆われていた。
【0134】次いで、図7に示すように、貼り合わせ基
板30の外周部を処理装置200の支持部203により
支持した。この時、貼り合わせ基板30に形成されてい
る分離開始部を固体の楔210に対向させた。
【0135】次いで、モータ213を駆動して楔210
を貼り合わせ基板30の密着界面に平行に移動させて、
楔210を貼り合わせ基板30の分離開始部に約1.5
mmだけ挿入した。これにより、貼り合わせ基板30に
図6に示したような多孔質層12に至る亀裂が形成さ
れ、亀裂より端の部分が欠落して、図24に示したよう
な略半円状の分離開始部60が形成された(図2D)。
【0136】ここでは、ポリテトラフルオロエチレン
(PTFE)製の樹脂の楔210を採用した。また、ここで
採用した楔は、該楔210が第1の基板10に当接する
当接面と密着界面とがなす角度θ1は20度、楔210
が第2の基板20に当接する当接面と密着界面がなす角
度θ2は10度を有する。即ち、0≦θ2<θ1の関係
を満足させた(図8又は図9参照)。
【0137】次いで、図20に示す処理装置600の基
板保持部103及び104に貼り合わせ基板30を保持
させた。この時、分離開始部が噴射ノズル106に対向
するように貼り合わせ基板30を位置決めした。
【0138】次いで、直径0.1mmの噴射ノズル10
6から分離開始部に向けて400kgf/cmの圧力
の流体(この場合は水)を噴射して分離を開始した。そ
して、その後、貼り合わせ基板30を回転させながら分
離を進め、亀裂を第1の多孔質層と第2の多孔質層との
界面付近の第2の多孔質層中にそれに沿って渦巻き状に
内部に成長させた。貼り合わせ基板30の中心まで亀裂
が到達して、貼り合わせ基板30を多孔質層12の部分
で2枚の基板に完全に分離できた(図2E)。
【0139】次いで、分離後の第2の基板20’の表面
に残留する残留多孔質層12bをHF濃度が49重量%の
弗酸とHO2濃度が30重量%過酸化水素水と水の混合
液をエッチング液として選択的にエッチングした(図2
F)。これにより図2Fに示すようなSOI基板が得られ
た。移設された単結晶Si層13bの外周端は、全周に
亘って基板20の外周端から2mm以内に存在してお
り、絶縁層14bを介して基板20に密着していた。
【0140】次いで、単結晶Si基板11上に残留する
残留多孔質層12bをHF濃度が49重量%の弗酸とHO2
濃度が30重量%の過酸化水素水と水との混合液をエッ
チング液として選択的にエッチングした(図2G)。
【0141】[第2の実施例]この実施例は、SOI基
板の製造工程に第2の処理装置300及び第5の処理装
置600を適用した例である。
【0142】貼り合わせ基板30の作製までは、上述し
た第1の実施例と同じ方法で行った。
【0143】次いで、図11に示すように、貼り合わせ
基板30の外周部を処理装置300の支持部203によ
り支持した。この時、貼り合わせ基板30に形成されて
いる分離開始部を楔220に対向させた。
【0144】次いで、モータ213を駆動して楔220
を貼り合わせ基板30の密着界面に平行に移動させて、
楔220を貼り合わせ基板30の分離開始部に約1.5
mmだけ挿入した。
【0145】ここでは、PTFE製の楔220を採用した。
また、ここで採用した楔220は、該楔220が第1の
基板10に当接する第1の当接面に対して楔220が第
2の基板20に当接する当接面が0.5mm(即ち、D
=0.5mm>0)だけ後退した構造を有する(図12
又は図13参照)。これにより、貼り合わせ基板30に
図6に示したような多孔質層12に至る亀裂が形成さ
れ、亀裂より端(外側)の部分が欠落して、図24に示
したような略半円状の分離開始部60が形成された(図
2D)。
【0146】次いで、第1の実施例と同様にして図20
に示す処理装置600を用いて本分離を行い、SOI基板
を作製した。また、第1の実施例と同様にして単結晶S
i基板を再生した。
【0147】[第3の実施例]この実施例は、SOI基板
の製造工程に第3の処理装置400及び第5の処理装置
600を適用した例である。
【0148】貼り合わせ基板30の作製までは、上述し
た第1の実施例と同じ方法で行った。
【0149】次いで、図14に示すように、貼り合わせ
基板30の外周部を処理装置400の支持部203によ
り支持した。この時、貼り合わせ基板30に形成されて
いる分離開始部を楔230に対向させた。
【0150】次いで、モータ213を駆動して楔230
を貼り合わせ基板30の密着界面に平行に移動させて、
楔230を貼り合わせ基板30の分離開始部に約1.5
mmだけ挿入した。
【0151】ここで採用した楔230は、第1の基板1
0に当接する第1部材230aが第2の基板20に当接
する第2部材230bよりも高い硬度を有する。より具
体的には、第1部材230aがPEEKで構成され、第
2部材230bがゴムで構成された楔230を採用した
(図15又は図16参照)。
【0152】これにより、これにより、貼り合わせ基板
30に図6に示したような多孔質層12に至る亀裂が形
成され、亀裂より端の部分が欠落して、図20に示した
ような略半円状の分離開始部60が形成された(図2
D)。
【0153】次いで、第1の実施例と同様にして図20
に示す処理装置600を用いて本分離を行い、SOI基板
を作製した。また、第1の実施例と同様にして単結晶S
i基板を再生した。
【0154】[第4の実施例]この実施例は、SOI基
板の製造工程に第4の処理装置500及び第5の処理装
置600を適用した例である。
【0155】貼り合わせ基板30の作製までは、上述し
た第1の実施例と同じ方法で行った。
【0156】次いで、図17に示すように、貼り合わせ
基板30の外周部を処理装置500の支持部203によ
り支持した。この時、貼り合わせ基板30に形成されて
いる分離開始部が楔240に対向させた。
【0157】次いで、モータ213を駆動して楔240
を貼り合わせ基板30の密着界面に平行に移動させて、
楔240を振動させながら貼り合わせ基板30に約1.
5mmだけ挿入した。これにより、これにより、貼り合
わせ基板30に図6に示したような多孔質層12に至る
亀裂が形成され、亀裂より端の部分が欠落して、図20
に示したような略半円状の分離開始部60が形成された
(図2D)。
【0158】次いで、第1の実施例と同様にして図20
に示す処理装置600を用いて本分離を行い、SOI基板
を作製した。また、第1の実施例と同様にして単結晶S
i基板を再生した。
【0159】[第5の実施例]この実施例は、SOI基
板の製造工程に第1の処理装置200及び第5の処理装
置600を用いた例である。
【0160】貼り合わせ基板30への分離開始部60の
形成までは、上述した第1の実施例と同じである。
【0161】次いで、図20に示す処理装置600に貼
り合わせ基板30を保持させて回転させ、第1の実施例
と同様に400kgf/cmの圧力の流体を噴射し
た。
【0162】回転している分離開始部60付近に流体が
当たった後、亀裂が渦巻状に成長し、貼り合わせ基板3
0の中心まで到達したところで、貼り合わせ基板30は
完全に2枚の基板に分離された。
【0163】その後の処理は第1の実施例と同じであ
る。
【0164】[第6の実施例]この実施例は、SOI基
板の製造工程に第6の処理装置700を用いた例であ
る。
【0165】貼り合わせ基板30の作製までは、上述し
た第1の実施例と同じである。
【0166】次いで、図21に示す処理装置700に貼
り合わせ基板30を保持させ、静止した状態で2000
kgf/cmの圧力の流体を噴射して基板10の端部
を下方に反らせて分離開始部を形成した。
【0167】次いで、流体の圧力を400kgf/cm
に下げて、その後、貼り合わせ基板30を回転させる
ことにより、亀裂を渦巻状に成長させて、貼り合わせ基
板30を完全に2枚の基板に分離した。
【0168】その後の処理は第1の実施例と同じであ
る。
【発明の効果】本発明によれば、例えば、貼り合わせ基
板等の複合部材を多孔質層等の分離層で適切に分離する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1A】、
【図1B】、
【図1C】本発明の好適な実施の形態に係る複合部材の
分離方法を説明するための模式図である。
【図2A】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における多孔質層の形成工程を説明するため
の模式図である。
【図2B】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における単結晶Si層及び絶縁層の形成工程
を説明するための模式図である。
【図2C】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における貼り合わせ工程を説明するための模
式図である。
【図2D】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における分離開始部の形成工程(予備分離工
程)を説明するための模式図である。
【図2E】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における分離工程(本分離工程)を説明する
ための模式図である。
【図2F】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における第2の基板側の多孔質層の除去工程
及びSOI基板を説明するための模式図である。
【図2G】本発明の好適な実施の形態に係るSOI基板
の製造方法における第1の基板側の多孔質層の除去工程
を説明するための模式図である。
【図3】貼り合わせ基板を構成する第1の基板と第2の
基板とに対称な力を作用させた様子を示す模式図であ
る。
【図4】分離処理によって生じ得る欠陥を模式的に示す
図である。
【図5】本発明の好適な実施の形態に従って分離開始部
を形成する際に貼り合わせ基板に作用する力を示す図で
ある。
【図6】本発明の好適な実施の形態に係る処理装置によ
って分離開始部が形成された貼り合わせ基板の断面を模
式的に示す図である。
【図7】予備分離工程の実施に好適な第1の処理装置の
構成を概略的に示す図である。
【図8】図7の一部の拡大図である。
【図9】楔を貼り合わせ基板の端部に挿入した様子を模
式的に示す図である。
【図10】本分離工程に好適な楔を示す図である。
【図11】予備分離工程の実施に好適な第2の処理装置
の構成を概略的に示す図である。
【図12】図11の一部の拡大図である。
【図13】楔を貼り合わせ基板の端部に挿入した様子を
模式的に示す図である。
【図14】予備分離工程の実施に好適な第3の処理装置
の構成を概略的に示す図である。
【図15】図14の一部の拡大図である。
【図16】楔を貼り合わせ基板の端部に挿入した様子を
模式的に示す図である。
【図17】予備分離工程の実施に好適な第4の処理装置
の構成を概略的に示す図である。
【図18】図17の一部の拡大図である。
【図19】楔を貼り合わせ基板の端部に挿入した様子を
模式的に示す図である。
【図20】本分離工程の実施の好適な第5の処理装置の
構成を概略的に示す図である。
【図21】予備分離工程或いは本分離工程の実施に好適
な第6の処理装置の構成を概略的に示す図である。
【図22】予備分離工程或いは本分離工程の実施に好適
な第7の処理装置の構成を概略的に示す図である。
【図23】予備分離工程或いは本分離工程の実施に好適
な第8の処理装置の構成を概略的に示す図である。
【図24】本発明の実施の形態による複合部材の分離後
の第1の基板の一例を示す模式的平面図である。
【図25A】、
【図25B】、
【図25C】、
【図25D】、
【図25E】本発明の好適な実施の形態に係る薄膜の製
造方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 第1の部材 2 第2の部材 3 基板 4 分離層 5 移設層 6 複合部材 7A、7B 亀裂 8 非対称な力 9 分離力 10 第1の基板 20 第2の基板 30 貼り合わせ基板 50 SOI基板 60 分離開始部 11 単結晶Si基板 12 多孔質層 13 単結晶Si層 14 絶縁層(SiO2層) 100,200,300,400,500,600 処
理装置 101,102 回転軸 103,104 基板保持部 105 回転源(モータ) 106 噴射ノズル 107 駆動ロボット 108 アクチュエータ 201 支持台 202 弾性体 203 支持部 210,210’,220,230,240 楔 211,211’ ラック付き駆動軸 212 ガイド部材 213 モータ 230a 第1部材 230b 第2部材 241 連結部材 250 振動子

Claims (45)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分離層と前記分離層上にある移設層とを
    有する第1の部材と、第2の部材とが密着した複合部材
    を、前記第1の部材と前記第2の部材との密着界面とは
    異なる位置において分離する複合部材の分離方法であっ
    て、 前記密着界面に対して非対称な力を前記複合部材の端部
    に作用させることにより、前記複合部材に前記第1の部
    材の表面から前記移設層を通り前記分離層に至る亀裂を
    形成する工程を含む予備分離工程と、 前記分離層に沿って前記亀裂を成長させる工程を含む本
    分離工程と、 を有する分離方法。
  2. 【請求項2】 前記本分離工程では、実質的に前記分離
    層の中或いはその界面で前記亀裂を成長させる請求項1
    に記載の分離方法。
  3. 【請求項3】 前記移設層は絶縁層を含む請求項1に記
    載の分離方法。
  4. 【請求項4】 前記移設層は絶縁層及び半導体層を含む
    請求項1に記載の分離方法。
  5. 【請求項5】 前記分離層は、陽極化成により形成され
    た多孔質層である請求項1に記載の分離方法。
  6. 【請求項6】前記分離層は、イオン注入により形成され
    た注入層である請求項1に記載の分離方法。
  7. 【請求項7】 前記予備分離工程では、固体の楔或いは
    非対称な基板保持機構のうち少なくともいずれか一方を
    用いて、前記密着界面に対して非対称な力を前記複合部
    材の端部に作用させる請求項1に記載の分離方法。
  8. 【請求項8】 前記楔は、非対称な一対の傾斜した当接
    面を有する請求項7に記載の分離方法。
  9. 【請求項9】 前記楔は、前記第1の部材に当接される
    第1の当接面と前記第2の部材に当接される第2の当接
    面とを有し、前記第1の当接面が前記密着界面となす角
    度が、前記第2の当接面が前記密着界面となす角度より
    大きい請求項7に記載の分離方法。
  10. 【請求項10】 前記予備分離工程では、前記楔を、密
    着界面と平行に移動させて前記複合部材の端部に挿入す
    る請求項7に記載の分離方法。
  11. 【請求項11】 前記楔は、前記第1の部材に当接され
    る第1の当接面と前記第2の部材に当接される第2の当
    接面とを有し、前記楔は、前記複合部材に挿入される際
    に前記第1の当接面が前記第2の当接面よりも先に前記
    複合部材に当接する構造を有する請求項7に記載の分離
    方法。
  12. 【請求項12】 前記楔は、前記第1の部材に当接され
    る第1の当接部材と前記第2の部材に当接される第2の
    当接部材とを有し、前記第1の当接部材は、前記第2の
    当接部材よりも硬度が高い請求項7に記載の分離方法。
  13. 【請求項13】 前記予備分離工程は、前記密着界面に
    対して非対称な振動を前記楔に印加する請求項7に記載
    の分離方法。
  14. 【請求項14】 前記楔は、樹脂製であることを特徴と
    する請求項7に記載の分離方法。
  15. 【請求項15】 前記本分離工程では、前記亀裂に流体
    を進入させて前記亀裂を成長させる請求項1に記載の分
    離方法。
  16. 【請求項16】 前記流体は静圧流体或いは噴流である
    請求項15に記載の分離方法。
  17. 【請求項17】 前記予備分離工程では、前記複合部材
    を回転させずに前記亀裂を形成し、前記本分離工程で
    は、前記複合部材を回転させながら前記亀裂を成長させ
    る請求項1に記載の分離方法。
  18. 【請求項18】 前記予備分離工程では、前記第2の部
    材の反りを、前記第1の部材の反りより、抑制しながら
    前記亀裂を形成する請求項1に記載の分離方法。
  19. 【請求項19】 前記予備分離工程では、前記第2の部
    材の反りを前記第1の部材の反りより抑制する部材が付
    設された基板保持部により、前記複合部材を保持する請
    求項1に記載の分離方法。
  20. 【請求項20】 請求項1に記載の分離方法を利用し
    て、前記分離層より表面側にある前記第1の部材の移設
    層を前記第2の部材に移設する工程を含む薄膜の製造方
    法。
  21. 【請求項21】 分離層と前記分離層上にある移設層と
    を有する第1の部材と第2の部材とを密着させ、複合部
    材を形成する工程と、 前記第1の部材と前記第2の部材との密着界面とは異な
    る位置において前記複合部材を分離する分離工程と、 を含む薄膜の製造方法において、 前記分離工程は、 前記密着界面に対して非対称な力を前記複合部材の端部
    に作用させることにより、前記複合部材に前記第一の部
    材の表面から前記移設層を通り前記分離層に至る亀裂を
    形成する第1工程と、 前記分離層に沿って前記亀裂を成長させる第2工程と、 を有する薄膜の製造方法。
  22. 【請求項22】 前記第2工程では、実質的に前記分離
    層の中或いはその界面で前記亀裂を成長させる請求項2
    1に記載の薄膜の製造方法。
  23. 【請求項23】 前記移設層は絶縁層を含む請求項21
    に記載の薄膜の製造方法。
  24. 【請求項24】 前記移設層は、絶縁層及び半導体層を
    含む請求項21に記載の薄膜の製造方法。
  25. 【請求項25】前記分離層は、陽極化成により形成され
    た多孔質層である請求項21に記載の薄膜の製造方法。
  26. 【請求項26】前記分離層は、イオン注入により形成さ
    れた注入層である請求項21に記載の薄膜の製造方法。
  27. 【請求項27】 前記第1工程では、非対称な固体の楔
    或いは非対称な基板保持機構のうち少なくともいずれか
    一方を用いて、前記密着界面に対して非対称な力を前記
    複合部材の端部に作用させる請求項21に記載の薄膜の
    製造方法。
  28. 【請求項28】 前記楔は、非対称な一対の傾斜した当
    接面を有する請求項27に記載の薄膜の製造方法。
  29. 【請求項29】 前記楔は、前記第1の部材に当接され
    る第1の当接面と前記第2の部材に当接される第2の当
    接面とを有し、前記第1の当接面が前記密着界面となす
    角度が、前記第2の当接面が前記密着界面となす角度よ
    り大きい請求項27に記載の薄膜の製造方法。
  30. 【請求項30】 前記第1工程では、前記楔を、密着界
    面と平行に移動させて前記複合部材の端部に挿入する請
    求項27に記載の薄膜の製造方法。
  31. 【請求項31】 前記楔は、前記第1の部材に当接され
    る第1の当接面と前記第2の部材に当接される第2の当
    接面とを有し、前記楔は、前記複合部材に挿入される際
    に前記第1の当接面が前記第2の当接面よりも先に前記
    複合部材に当接する構造を有する請求項27に記載の薄
    膜の製造方法。
  32. 【請求項32】 前記楔は、前記第1の部材に当接され
    る第1の当接部材と前記第2の部材に当接される第2の
    当接部材とを有し、前記第1の当接部材は、前記第2の
    当接部材よりも硬度が高い請求項27に記載の薄膜の製
    造方法。
  33. 【請求項33】 前記第1工程では、前記密着界面に対
    して非対称な振動を前記楔に印加する請求項27に記載
    の薄膜の製造方法。
  34. 【請求項34】 前記楔は、樹脂製であることを特徴と
    する請求項27に記載の薄膜の製造方法。
  35. 【請求項35】 前記第2工程では、前記亀裂に流体を
    進入させて前記亀裂を成長させる請求項2に記載の薄膜
    の製造方法。
  36. 【請求項36】 前記流体は静圧流体或いは噴流である
    請求項35に記載の薄膜の製造方法。
  37. 【請求項37】 前記第1工程では、前記複合部材を回
    転させずに亀裂を形成し、前記第2工程では、前記複合
    部材を回転させながら前記亀裂を成長させる請求項21
    に記載の薄膜の製造方法。
  38. 【請求項38】 前記第1工程では、前記第2の部材の
    反りを、前記第1の部材の反りより、抑制しながら前記
    亀裂を形成する請求項21に記載の薄膜の製造方法。
  39. 【請求項39】 前記第1工程では、前記第2の部材の
    反りを前記第1の部材の反りより抑制する部材が付設さ
    れた基板保持部により、前記複合部材を保持する請求項
    38に記載の薄膜の製造方法。
  40. 【請求項40】 基板の表面に前記分離層となる多孔質
    層を形成した後、前記多孔質層を覆うように非多孔質の
    半導体層と絶縁層と形成することにより、前記第1の部
    材を作製する工程を更に含む請求項21に記載の薄膜の
    製造方法。
  41. 【請求項41】 基板の表面側からイオンを注入して前
    記基板内に前記分離層となるイオン注入層を形成するこ
    とにより、前記第1の部材を作製する工程を更に含む請
    求項21に記載の薄膜の製造方法。
  42. 【請求項42】 前記複合部材を酸化性雰囲気中で熱処
    理する工程を更に含む請求項21に記載の薄膜の製造方
    法。
  43. 【請求項43】 前記複合部材を酸化性雰囲気中で熱処
    理して、前記複合部材の表面に酸化膜を形成する工程を
    更に含み、前記第1の部材の表面から前記分離層に至る
    亀裂は、前記酸化膜を横断する亀裂である請求項21に
    記載の薄膜の製造方法。
  44. 【請求項44】 前記薄膜は絶縁性表面上に設けられた
    SOI層である請求項21に記載の薄膜の製造方法。
  45. 【請求項45】 分離層と前記分離層上にある移設層と
    を有する第1の部材と、第2の部材とが密着した複合部
    材を、前記第1の部材と前記第2の部材との密着界面と
    は異なる位置において分離する複合部材の分離装置であ
    って、 前記密着界面に対して非対称な力を前記複合部材の端部
    に作用させることにより、前記複合部材に前記第一の部
    材の表面から前記移設層を通り前記分離層に至る亀裂を
    形成する非対称な構造の予備分離機構と、 前記分離層に沿って前記亀裂を成長させる本分離機構
    と、 を具備する分離装置。
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