JP2001290271A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 感光性組成物および感光性平版印刷版材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】 側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】 更に、分子内に2個以上の重合性二重結合を有する重合性モノマーまたはオリゴマーを含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】 更に、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーを含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】 更に、可視光から赤外光の波長領域に吸収を有し前記光ラジカル発生剤を増感させる増感剤を含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】 オーバーコート層を有しない請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】 走査露光用である請求項1または4に記載の感光性組成物。
【請求項7】 750〜1100nmの近赤外レーザー用である請求項1、4または6に記載の感光性組成物。
【請求項8】 400〜430nmの青色半導体レーザー用である請求項1、4または6に記載の感光性組成物。
【請求項9】 前記請求項のいずれか1つに記載の感光性組成物を利用したことを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、レーザー等の走査露光装置を用いて画像形成可能な感光性組成物および感光性平版印刷版材料に関する。更に、プリント配線基板作成用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性組成物は、光反応によって分子構造が化学変化を起こし、その結果、物理現象(物性)に変化が生じる。この光の作用による化学変化としては、架橋・重合・分解・解重合・官能基変換などがあり、溶解度・接着性・屈折率・物質浸透性および相変化など多様である。このような感光性組成物は、印刷版、レジスト、塗料、コーティング剤、カラーフィルターなどの広い分野で実用化されている。さらに、写真製版技術(フォトリソグラフィ)を用いるフォトレジスト分野で活用され、発展してきた。フォトレジストは、光反応による溶解度の変化を利用したもので、高解像度の要求などからいっそうの精緻な材料設計が必要となっている。
【0003】
広く用いられているタイプの平板印刷版は、アルミニウムベース支持体に塗布された感光性塗膜を有する。この塗膜は、露光された塗膜部分は硬化し、露光されなかった塗膜部分は現像処理で溶出される。このような版をネガ型印刷版という。平版印刷は印刷版表面に形成されたパターンと背景部のそれぞれの親油性、親水性の表面物性を利用し、平版印刷においてインクと湿し水を同時に印刷機上で版面に供給する際に、インクが親油性表面を有するパターン上に選択的に転移することを利用するものである。パターン上に転移したインクはその後ブランケットと呼ばれる中間体に転写され、これから更に印刷用紙に転写することで印刷が行われる。
【0004】
上記した光反応による溶解度の変化を利用してレリーフ像を形成する感光性組成物は、従来から多くの研究が成されており、また実用化されている。例えば、特公昭49−34041号、同平6−105353号等には側鎖にエチレン性不飽和結合を有する重合体と架橋剤と光重合開始剤を主体とする感光性組成物が開示されている。これらは、400nm以下の紫外線領域を中心とした短波長の光に対して感光性を有するものである。
【0005】
一方、近年、画像形成技術の進歩に伴い、可視光に対して高感度を示す感光性材料が求められるようになってきた。例えば、アルゴンレーザー、ヘリウム・ネオンレーザー、赤色LED等を用いた出力機に対応した感光性材料及び感光性平版印刷版の研究も活発に行われている。
【0006】
更に、半導体レーザーの著しい進歩によって700〜1300nmの近赤外レーザー光源を容易に利用できるようになったことに伴い、該レーザー光に対応する感光性材料及び感光性平版印刷版が注目されている。
【0007】
上記可視光〜近赤外光に感光性を有する光重合性組成物として、特開平9−134007号公報にはエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合可能な化合物と400〜500nmに吸収ピークを持つ光増感色素と重合開始剤とを含有する平版印刷版材料が開示され、特開昭62−143044号、同昭62−150242号、同平5−5988号、同平5−194619号、同平5−197069号、同2000−98603号公報等には、有機ホウ素アニオンと色素との組み合わせが開示され、特開平4−31863号、同平6−43633号公報には色素とS−トリアジン系化合物との組み合わせが開示され、特開平7−20629号、同平7−271029号公報にはレゾール樹脂、ノボラック樹脂、赤外線吸収剤及び光酸発生剤の組み合わせが開示され、特開平11−212252号、同平11−231535号公報には特定の重合体と光酸発生剤と近赤外増感色素のく組み合わせが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記したような光重合開始剤あるいは光酸発生剤を用いた重合性組成物は、可視光〜近赤外領域に充分高い感光性を付与するのは難しく、特に各種レーザー光を用いた走査露光に適用するには感光性が不足していた。
【0009】
また、上記したような重合性組成物は、露光後、潜像が退行するという問題があった。即ち、本来露光された部分は現像後に像を形成するが、露光してから現像処理するまでの時間経過によって、像を十分に形成しないという、いわゆる潜像退行の問題がある。この現象は、温度湿度及び露光量等の条件よっては、露光後数十分から数時間の間に起こり得るものである。
【0010】
また、上記した感光性組成物は、感度等の安定性、長期保存性を確保するのが難しいという問題があり、このために、感光層上部に酸素バリア性を高めるとともに表面の傷防止等を目的としたポリビニルアルコール等からなるオーバー層を設けることが通常行われている。このようなオーバー層の存在によりレーザー露光の際に光の散乱等による画質の低下の問題や、現像の際に、アルカリ現像に先立ってオーバー層除去のためのプレ水洗工程が必要となること、および製造にあたって感光層塗布後に更にオーバー層を塗布する工程が必要である等の問題があった。
【0011】
また、光重合開始剤あるいは光酸発生剤による重合は、露光のみでは不十分な場合が多く、露光後あるいは現像処理後に加熱処理して、重合を促進完結させる必要があった。特に、可視光〜赤外光の波長域に感光性を付与した感光性平版印刷版材料の場合は、加熱処理は重要な製版工程であった。しかしながら、加熱処理は生産効率を低下させるのみではなく、品質を不安定にする要因を含んでいる。例えば、露光部/未露光部の溶解性の差を一定に保つのは難しく、十分な加熱が行われなければ現像液により露光部まで溶解する場合や、逆に加熱温度が高すぎる場合には未露光部が部分的に不溶化し、現像が十分に行われない等の問題点がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高感度な感光性組成物を提供することにある。特に可視光から赤外光に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。本発明の他の目的は、加熱処理を必要としない、走査露光可能な感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。更に本発明の目的は、オーバーコート層を必要としない感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。更に本発明の他の目的は、潜像退行のない感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の感光性組成物を用いることによって基本的に達成された。
(1)側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体とは、該フェニル基が複素環を含む連結基を介して主鎖と結合したものであり、前記フェニル基は置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、前記ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。上記した側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記化1で表される基を側鎖に有するものである。
【0015】
【化1】
【0016】
式中、Z1は複素環を含む連結基を表し、R1、R2、及びR3は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R4は置換可能な基または原子を表す。nは1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
【0017】
化1について更に詳細に説明する。複素環を含む連結基Z 1 は、複素環単独でも良く、あるいは他の基や原子、例えば酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R 5 )−、−C(O)−O−、−C(R 6 )=N−、−C(O)−、スルホニル基、及び下記化2等が単独もしくは2以上が複合した状態で含まれていても良い。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0018】
【化2】
【0019】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。
化1で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
上記化1で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R 1 及びR 2 が水素原子でR 3 が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。k 1 は1または2であるものが好ましい。
【0023】
上記の例で示されるような基を有する重合体としては、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましく、そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。この場合、共重合体組成に於ける化1で示される基の割合として、トータル組成100重量%中に於いて化1で示される基は1重量%以上95重量%以下であることが好ましく、これ以下の割合ではその導入の効果が認められない場合がある。また、95重量%以上含まれる場合に於いては、共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。さらに、共重合体中に於けるカルボキシル基含有モノマーの割合は同じく5重量%以上99重量%以下であることが好ましく、これ以下の割合では共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。
【0024】
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0025】
カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体として合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中に於ける化1で示す基およびカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0026】
上記のような重合体の分子量については好ましい範囲が存在し、重量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0027】
本発明に係わる化1で示される基を有する重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100重量%中に於ける各繰り返し単位の重量%を表す。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体の具体例としては、前述したP−1〜P−6が挙げられる。この重合体とともに用いられる光ラジカル発生剤としては、後述する光ラジカル発生剤が用いられる。こうした構成の感光性組成物は、紫外光から赤外光までの広い波長域で高感度が得られるが、特に、可視光〜赤外光の走査型露光に対して高感度が実現できる。可視光〜赤外光に増感するための増感色素は、後述する増感色素が用いられる。
【0032】
本発明は、上記した重合体と併せて、光ラジカル発生剤を含有する。本発明に用いられる光ラジカル発生剤とは、光照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いることができる。例えば有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光ラジカル発生剤の中でも、特に有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を組み合わせて用いることである。
【0033】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記化8で表される。
【0034】
【化8】
【0035】
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0036】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0037】
本発明に係わる好ましい様態の一つとして、有機ホウ素塩とこれを増感する色素を併せて含む感光性組成物であり、この場合の有機ホウ素塩は可視光から赤外光の波長領域に感光性を示さず、増感色素の添加によって初めてこうした波長領域の光に感光性を示すものである。
【0038】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した化8で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
本発明において、他の好ましい光ラジカル発生剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0042】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を化11および化12に示す。
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
本発明に用いられる他の光ラジカル発生剤として有機過酸化物がある。例えば、クメンヒドロペルオキシド、第3ブチルヒドロペルオキシド、ジクロルペルオキシド、ジ第3ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、及び下記化13等が挙げられる。
【0046】
【化13】
【0047】
上述したような光ラジカル発生剤の含有量は、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体に対して、1〜100重量%の範囲で含まれることが好ましく、更には1〜40重量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0048】
可視光から赤外光の波長領域に吸収を有し、前述の光ラジカル発生剤を増感する増感剤としては、各種増感色素が好ましく用いられる。このような増感色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、更に、欧州特許第0,568,993号、米国特許第4,508,811号、同5,227,227号に記載の化合物も用いることができる。
【0049】
可視光(400〜700nm)に吸収を有する増感色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
近年、400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザーを搭載した出力機が開発されている。この出力機は、最大露光エネルギー量が数十μJ/cm2程度で、用いられる感光材料も高感度が要求される。本発明の感光性組成物は、上記した増感色素を組み合わせて用いることによってこの出力機への対応を可能にした。上記した増感色素の中でも、青色半導体レーザー用としてはピリリウム系化合物またはチオピリリウム系化合物が好ましい。
【0057】
また、本発明の感光性組成物は、近赤外〜赤外光、即ち700nm以上、更には750〜1100nmの波長領域のレーザー光を用いた走査露光に対しても極めて好適に用いられる。このような近赤外に増感するために用いられる増感色素の具体例を以下に示す。
【0058】
【化20】
【0059】
【化21】
【0060】
上記で例示した増感色素の対アニオンを、前述した有機ホウ素アニオンに置換した増感色素も同様に用いることができる。増感色素の含有量は、感光性組成物1m2当たり3〜300mg程度が適当である。好ましくは10〜200mg/m2である。
【0061】
本発明において、感光性組成物を構成する他の好ましい要素として分子内に2個以上の重合性二重結合を有する重合性化合物(モノマーまたはオリゴマーで分子量は1万以下、好ましくは5000以下)が挙げられる。好ましい重合性化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリル系モノマーが挙げられる。
【0062】
或いは、上記の重合性化合物に代えてラジカル重合性を有するオリゴマーも好ましく使用され、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用されるが、これらも重合性化合物として同様に扱うことが出来る。
【0063】
上記したような重合性化合物と、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体の比率に関しては好ましい範囲が存在し、重合体1重量部に対して重合性化合物は0.01重量部から10重量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05重量部から1重量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0064】
従来のような光ラジカル重合を利用する場合には、大気中の酸素の影響を受けやすく、一般に酸素バリヤ性を有するポリビニルアルコールのような樹脂を感光層の表面にオーバー層として設ける必要がった。また、露光後に重合を促進あるいは完結させるため100℃前後の温度で数分間程度加熱処理を行う必要があった。
【0065】
これに対して、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を使用する場合には、上記のようなオーバー層を設けなくとも十分に光硬化する系を与え、かつ、露光後に加熱処理を行う必要がないことが特徴であり、さらに光ラジカル発生剤と増感色素とを組み合わせて用いることによって高感度の感光性組成物が得られる点が特徴として挙げられる。また、本発明の感光性組成物は、潜像退行の極めて小さいことが特徴として挙げられる。
【0066】
次に、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上を有するモノマーについて説明する。
【0067】
分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー(以降、本発明のモノマーと称す)を使用した場合、発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、高感度で加熱処理を必要としないネガ型感光材料を作成することができる。本発明のモノマーは、代表的には下記一般式で表される。
【0068】
【化22】
【0069】
式中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R24は置換可能な基または原子を表す。m2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
【0070】
化22について更に詳細に説明する。Z2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0071】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0072】
上記化22で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。即ち、R21及びR22は水素原子でR23は水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k 2 は2〜10の化合物が好ましい。以下に化22で表される化合物の具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
上記した本発明のモノマーの添加量は、バインダー樹脂1重量部に対して0.01重量部から10重量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05重量部から1重量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0077】
本発明のモノマーとともに用いられるバインダー樹脂の中でも、特に好ましいのは、前述した側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体である。本発明のモノマーと側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を併せて用いることによって、より高感度で、より高耐刷力のレリーフ画像が、加熱処理なしに得られる。更に、潜像退行が大幅に改良される。
【0078】
本発明の感光性組成物は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。特に、スチリル基の熱重合あるいは熱架橋を防止し長期にわたる保存性を向上させる目的で種々の重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物等が好ましく使用され、特にハイドロキノンが好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、該重合体100重量部に対して0.1重量部から10重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0079】
感光性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0080】
平版印刷版材料として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5ミクロンから10ミクロンの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、さらに1ミクロンから5ミクロンの範囲であることが耐刷性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光層は上述の3つの要素を混合した溶液を作成し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。
【0081】
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0082】
アルカリ性現像液としては、本発明に係わる重合体或いはバインダー樹脂を溶解する液で有れば特に制限は無いが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等のようなアルカリ性化合物を溶解した水性現像液が良好に未露光部を選択的に溶解し、下方の支持体表面を露出出来るため極めて好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアゴム等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
【0083】
次に、本発明に用いられる側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体及び分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーの代表的な化合物の合成例を以下に示す。
【0084】
合成例1(重合体P−1の合成例)
ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール)150gを600mlのメタノール中に懸濁させ、冷却しながらトリエチルアミン101gを徐々に添加し、均一な溶液を得た。室温下に保ちながらp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル製、CMS−14)を10分に亘り滴下し、さらに3時間攪拌を続けた。反応生成物が次第に析出し、攪拌後に氷浴に移し内温を10℃まで冷却した後、吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で1昼夜乾燥することで収率75%で化26に示す化合物を得た。
【0085】
【化26】
【0086】
化26のモノマー40gを攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1リッター4ツ口フラスコ内にとり、メタクリル酸70gおよびエタノール200ml、蒸留水50mlを加え、攪拌しながら水浴上でトリエチルアミン110gを添加した。窒素雰囲気下で内温を70℃になるよう加熱し、この温度でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1g添加し、重合を開始した。6時間加熱攪拌を行い、その後重合系を室温まで冷却した。一部を取り出し、希塩酸を加えてpHを3程度に調整し、これを水中にあけることで化27に示す構造のポリマーを得た。
【0087】
【化27】
【0088】
上記の一部を取り出した残りの重合体溶液中に1,4−ジオキサン100gおよびp−クロロメチルスチレンを23g加え、室温で更に15時間攪拌を続けた。その後、濃塩酸(35〜37%水溶液)80〜90gを加え、系のpHが4以下になったことを確認後、3リッターの蒸留水中に全体を移した。析出した重合体を濾過により分離し、蒸留水にて洗浄を繰り返した後、真空乾燥器内で1昼夜乾燥した。収率90%で目的とする重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定により重量平均分子量9万(ポリスチレン換算)の重合体であり、さらにプロトンNMRによる解析により重合体P−1の構造を支持するものであった。
【0089】
合成例2(モノマーC−5の合成例)
チオシアヌル酸89gをメタノール1.5リッターに懸濁し、冷却しながら水酸化カリウム84gを溶解した30%水溶液を徐々に加え、均一な溶液を得た。これに、室温下でp−クロロメチルスチレン230gを内温が40℃を越えないよう徐々に滴下した。添加後まもなく生成物が析出してくるが攪拌を続け、3時間攪拌を行った後に吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で一昼夜乾燥を行った後、90%の収率でモノマーC−5で示される化合物を得た。
【0090】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例1
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体 12重量部
光ラジカル発生剤 1重量部
重合性化合物 3重量部
(ヘ゜ンタエリスリトールトリアクリレート)
増感色素(S−20) 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0092】
上記感光性塗工液の重合体と光ラジカル発生剤の種類を表1のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0093】
上記のようにして作成した感光材料(平版印刷版材料)を、青色半導体レーザー搭載出力機;ESCHER GRAD社製イメージセッターCobalt8CTP(発振波長410nm、出力30mW)を使用して露光試験を行った。露光後、メタケイ酸ソーダを0.7重量%含有するアルカリ性現像液で現像を行い、10ミクロンの細線が明瞭にアルミ板上に形成されるかどうかで感度を評価した。その結果を表1にまとめた。表1中、○は10ミクロンの細線が明瞭に形成、×は形成されないことを意味する。
【0094】
【表1】
【0095】
上記表中、CP-1:アリルメタクリレート/ヘ゛ンシ゛ルメタクリレート/メタクリル酸(モル比60/20/20)共重合体を表し、CP-2、CP-3及びCP-4は、下記に示す。
【0096】
【化28】
【0097】
【化29】
【0098】
【化30】
【0099】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の印刷版は、いずれも15万枚の印刷が可能であった。
【0100】
上記結果より明らかなように、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤と増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、青色半導体レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。
【0101】
実施例2
実施例1の感光性塗工液の増感色素をS−21に変更する以外は、実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様な結果が得られた。
【0102】
実施例3
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
バインダー樹脂 10重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1重量部
本発明のモノマー又は比較化合物 4重量部
増感色素(S−20) 0.4重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0103】
上記感光性塗工液のバインダー樹脂と本発明のモノマーあるいは比較化合物を表2のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0104】
上記のようにして作成した感光材料(平版印刷版材料)を、青色半導体レーザー搭載出力機;ESCHER GRAD社製イメージセッターCobalt8CTP(発振波長410nm、出力30mW)を使用して露光試験を行った。露光後、メタケイ酸ソーダを0.7重量%含有するアルカリ性現像液で現像を行い、10ミクロンの細線が明瞭にアルミ板上に形成されるかどうかで感度を評価した。その結果を表2にまとめた。表2中、○は10ミクロンの細線が明瞭に形成、×は形成されないことを意味する。
【0105】
【表2】
【0106】
上記表中、CP-1:アリルメタクリレート/ヘ゛ンシ゛ルメタクリレート/メタクリル酸(モル比60/20/20)共重合体を表し、CC-1:スチレン、CC-2:シ゛ヒ゛ニルヘ゛ンセ゛ン、CC-3:シ゛アリルヘ゛ンセ゛ン、CC-4:ヘ゜ンタエリスリトールテトラアクリレート、CC-5:テトラエチレンク゛リコールシ゛アクリレートを表す。
【0107】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の感光材料(印刷版)20〜24は、いずれも20万枚の印刷が可能であった。
【0108】
上記結果より明らかなように、バインダー樹脂として側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用い、かつ分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー及び光ラジカル発生剤、更に増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、青色半導体レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。
【0109】
実施例4
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体 12重量部
光ラジカル発生剤 1重量部
重合性化合物 3重量部
(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
増感色素(S−22) 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0110】
上記感光性塗工液の重合体と光ラジカル発生剤の種類を表3のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0111】
得られた感光材料を次のようにして露光を行った。即ち、タングステンランプを光源とする露光機(三菱製紙製ヒシラコピープリンター)を使用して、580nmの干渉フィルターを介在させ、この干渉フィルターを透過する光量が5mW/cm2になるように光量を調整し、濃度差0.15間隔のステップウェッジを有するコントロールウェッジ(富士写真フィルム製)を通して30秒間露光を行った。露光後、1分以内、及び1時間経過させた試料をメタケイ酸ソーダを0.7重量%含有するアルカリ性現像液で現像を行った。現像処理後に、アルミ板上に形成されたステップウェッジのパターンにおいて、画像として残らない最小のステップ段数を感度として求めた。この数値が大きいほど感度が高いことを表す。その結果を表3にまとめた。
【0112】
【表3】
【0113】
表中、CP-1、CP-2、CP-3及びCP-4は表1と同じである。
【0114】
上記結果より明らかなように、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤と増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、可視光領域で極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭なレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0115】
実施例5
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
バインダー樹脂 12重量部
光ラジカル発生剤(T−8) 1重量部
本発明のモノマー又は比較化合物 3重量部
増感色素(S−22) 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0116】
上記感光性塗工液のバインダー樹脂と本発明のモノマーあるいは比較化合物を表4のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0117】
得られた感光材料を実施例4と同様にして評価した。その結果を表4にまとめた。
【0118】
【表4】
【0119】
表中、CP-1、CC-1、CC-2、CC-3、CC-4及びCC-5は、表2と同じである。
【0120】
上記結果より明らかなように、バインダー樹脂として側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用い、かつ分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー及び光ラジカル発生剤、更に増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、可視光領域で極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭なレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0121】
実施例6
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが1.5ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて5分間乾燥を行った。
重合体(P−1) 10重量部
本発明のモノマー(C−5) 2重量部
光ラジカル発生剤(下記化31) 0.5重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0122】
【化31】
【0123】
得られた感光材料をタングステンランプを光源とする感光計を使用し、かつ光源からの光の内780nm以下の光をカットするフィルターを通して、所望画像を焼き付けたネガパターンを重ねて20秒間露光を行った。この時の光量としては10mW/cm2程度の値であった。露光後、メタケイ酸ソーダを6重量%溶解した現像液で現像を行ったところ、アルミニウム板上に硬化した樹脂によるポジ画像が形成された。これを通常のオフセット印刷機を使用して印刷を行ったところ十分なインキ乗りおよび20万枚の耐刷力を示した。
【0124】
実施例7
実施例3と同様に、厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが1.5ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて5分間乾燥を行った。
重合体(P−1) 10重量部
光ラジカル発生剤(上記化31) 0.5重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0125】
上記のようにして作成した感光材料(平版印刷版材料)を円筒形ドラムの外面に巻き付け、830nmに発光する出力1.2W(可変0〜1.2W)の半導体レーザーを使用して、ドラム回転速度300〜2000rpmの間でレーザー照射エネルギーおよびドラム回転速度を種々変化させて露光試験を行った。この際のレーザー光のスポット径は10ミクロンに調整した。露光後に実施例6と同様なアルカリ性現像液で現像を行った際に、10ミクロン線が明瞭にアルミ板上に形成されるための最小露光エネルギーを感光材料の感度として求めたところ、300mJ/cm2という高い感度を示した。
【0126】
実施例8
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体 10重量部
光ラジカル発生剤 2重量部
重合性化合物 3重量部
(ヘ゜ンタエリスリトールトリアクリレート)
増感色素 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0127】
上記感光性塗工液の重合体、光ラジカル発生剤及び増感色素の種類を表5のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0128】
上記のようにして作成した感光材料を円筒形ドラムの外面に巻き付け、830nmに発光する出力1.2W(可変0〜1.2W)の半導体レーザーを使用して、ドラム回転速度300〜2000rpmの間でレーザー照射エネルギーおよびドラム回転速度を種々変化させて露光試験を行った。この際のレーザー光のスポット径は10ミクロンに調整した。露光後、1分以内及び1時間後に実施例1と同様なアルカリ性現像液で現像を行った際に、10ミクロン線が明瞭にアルミ板上に形成されるための最小露光エネルギーを感光材料の感度とし、mJ/cm2の単位で表示した(数値が小さいほど感度が高いことを表す)。結果を表5にまとめた。
【0129】
【表5】
【0130】
表中、光ラジカル発生剤の2種組み合わせの際の添加量は、それぞれ1重量部であり、CP-1、CP-2、CP-3及びCP-4は、表1と同じである。
【0131】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の印刷版は、いずれも20万枚の印刷でも問題なかったが、比較の印刷版は、加熱処理しなかったため、耐刷力は1万枚以下であった。
【0132】
上記結果より明らかなように、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤と増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、近赤外レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0133】
実施例9
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
バインダー樹脂 10重量部
光ラジカル発生剤 2重量部
本発明のモノマー又は比較化合物 3重量部
増感色素 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0134】
上記感光性塗工液のバインダー樹脂、本発明のモノマーあるいは比較化合物、光ラジカル発生剤及び増感色素の種類を表6のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0135】
上記のようにして作成した感光材料を実施例8と同様に評価した。結果を表6にまとめた。
【0136】
【表6】
【0137】
表中、CP-1、CC-1、CCー2、CC-3、CC-4及びCC-5は、表2と同じである。
【0138】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の印刷版は、いずれも20万枚の印刷でも問題なかったが、比較の印刷版は、加熱処理しなかったため、耐刷力は1万枚以下であった。
【0139】
上記結果より明らかなように、バインダー樹脂として側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用い、かつ分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー及び光ラジカル発生剤、更に増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、近赤外レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0140】
実施例10
前記重合体(P−1)を使用し、下記の処方による感光性組成液を作成し、ワイアバーを使用して100ミクロン厚みのポリエステルフィルム上に乾燥膜厚が3ミクロンになるよう塗設し、感光性フィルムを作成した。
重合体(P−1) 10重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0141】
得られた感光性フィルムを高圧水銀ランプを光源とする感光計を使用して、220mWの光量で濃度差0.15間隔のステップウェッジを有するマスクフィルムを通して1秒間露光を行った。露光後すぐにメタ珪酸ソーダを6重量%溶解した現像液を使用して現像を行ったところ、約60mJ/cm2以上の露光量を与えた部分が画像として残存し、レリーフパターンが形成された。
【0142】
【発明の効果】
本発明によれば、感光材料として高感度であり、露光後、加熱処理を行わなくても、現像及び印刷に耐えられる画像を得ることができる。更に、感光波長域が広く選択できることから種々のレーザーを含めた光源が利用でき、さらに、耐刷力に優れた平版印刷版を得ることができる。また、更に、潜像退行のない感光材料及び平版印刷版が得られる。また、更にオーバー層を必要としない感光材料及び平版印刷版が得られる。
【発明の名称】 感光性組成物および感光性平版印刷版材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】 側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】 更に、分子内に2個以上の重合性二重結合を有する重合性モノマーまたはオリゴマーを含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】 更に、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーを含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】 更に、可視光から赤外光の波長領域に吸収を有し前記光ラジカル発生剤を増感させる増感剤を含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】 オーバーコート層を有しない請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】 走査露光用である請求項1または4に記載の感光性組成物。
【請求項7】 750〜1100nmの近赤外レーザー用である請求項1、4または6に記載の感光性組成物。
【請求項8】 400〜430nmの青色半導体レーザー用である請求項1、4または6に記載の感光性組成物。
【請求項9】 前記請求項のいずれか1つに記載の感光性組成物を利用したことを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、レーザー等の走査露光装置を用いて画像形成可能な感光性組成物および感光性平版印刷版材料に関する。更に、プリント配線基板作成用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性組成物は、光反応によって分子構造が化学変化を起こし、その結果、物理現象(物性)に変化が生じる。この光の作用による化学変化としては、架橋・重合・分解・解重合・官能基変換などがあり、溶解度・接着性・屈折率・物質浸透性および相変化など多様である。このような感光性組成物は、印刷版、レジスト、塗料、コーティング剤、カラーフィルターなどの広い分野で実用化されている。さらに、写真製版技術(フォトリソグラフィ)を用いるフォトレジスト分野で活用され、発展してきた。フォトレジストは、光反応による溶解度の変化を利用したもので、高解像度の要求などからいっそうの精緻な材料設計が必要となっている。
【0003】
広く用いられているタイプの平板印刷版は、アルミニウムベース支持体に塗布された感光性塗膜を有する。この塗膜は、露光された塗膜部分は硬化し、露光されなかった塗膜部分は現像処理で溶出される。このような版をネガ型印刷版という。平版印刷は印刷版表面に形成されたパターンと背景部のそれぞれの親油性、親水性の表面物性を利用し、平版印刷においてインクと湿し水を同時に印刷機上で版面に供給する際に、インクが親油性表面を有するパターン上に選択的に転移することを利用するものである。パターン上に転移したインクはその後ブランケットと呼ばれる中間体に転写され、これから更に印刷用紙に転写することで印刷が行われる。
【0004】
上記した光反応による溶解度の変化を利用してレリーフ像を形成する感光性組成物は、従来から多くの研究が成されており、また実用化されている。例えば、特公昭49−34041号、同平6−105353号等には側鎖にエチレン性不飽和結合を有する重合体と架橋剤と光重合開始剤を主体とする感光性組成物が開示されている。これらは、400nm以下の紫外線領域を中心とした短波長の光に対して感光性を有するものである。
【0005】
一方、近年、画像形成技術の進歩に伴い、可視光に対して高感度を示す感光性材料が求められるようになってきた。例えば、アルゴンレーザー、ヘリウム・ネオンレーザー、赤色LED等を用いた出力機に対応した感光性材料及び感光性平版印刷版の研究も活発に行われている。
【0006】
更に、半導体レーザーの著しい進歩によって700〜1300nmの近赤外レーザー光源を容易に利用できるようになったことに伴い、該レーザー光に対応する感光性材料及び感光性平版印刷版が注目されている。
【0007】
上記可視光〜近赤外光に感光性を有する光重合性組成物として、特開平9−134007号公報にはエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合可能な化合物と400〜500nmに吸収ピークを持つ光増感色素と重合開始剤とを含有する平版印刷版材料が開示され、特開昭62−143044号、同昭62−150242号、同平5−5988号、同平5−194619号、同平5−197069号、同2000−98603号公報等には、有機ホウ素アニオンと色素との組み合わせが開示され、特開平4−31863号、同平6−43633号公報には色素とS−トリアジン系化合物との組み合わせが開示され、特開平7−20629号、同平7−271029号公報にはレゾール樹脂、ノボラック樹脂、赤外線吸収剤及び光酸発生剤の組み合わせが開示され、特開平11−212252号、同平11−231535号公報には特定の重合体と光酸発生剤と近赤外増感色素のく組み合わせが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記したような光重合開始剤あるいは光酸発生剤を用いた重合性組成物は、可視光〜近赤外領域に充分高い感光性を付与するのは難しく、特に各種レーザー光を用いた走査露光に適用するには感光性が不足していた。
【0009】
また、上記したような重合性組成物は、露光後、潜像が退行するという問題があった。即ち、本来露光された部分は現像後に像を形成するが、露光してから現像処理するまでの時間経過によって、像を十分に形成しないという、いわゆる潜像退行の問題がある。この現象は、温度湿度及び露光量等の条件よっては、露光後数十分から数時間の間に起こり得るものである。
【0010】
また、上記した感光性組成物は、感度等の安定性、長期保存性を確保するのが難しいという問題があり、このために、感光層上部に酸素バリア性を高めるとともに表面の傷防止等を目的としたポリビニルアルコール等からなるオーバー層を設けることが通常行われている。このようなオーバー層の存在によりレーザー露光の際に光の散乱等による画質の低下の問題や、現像の際に、アルカリ現像に先立ってオーバー層除去のためのプレ水洗工程が必要となること、および製造にあたって感光層塗布後に更にオーバー層を塗布する工程が必要である等の問題があった。
【0011】
また、光重合開始剤あるいは光酸発生剤による重合は、露光のみでは不十分な場合が多く、露光後あるいは現像処理後に加熱処理して、重合を促進完結させる必要があった。特に、可視光〜赤外光の波長域に感光性を付与した感光性平版印刷版材料の場合は、加熱処理は重要な製版工程であった。しかしながら、加熱処理は生産効率を低下させるのみではなく、品質を不安定にする要因を含んでいる。例えば、露光部/未露光部の溶解性の差を一定に保つのは難しく、十分な加熱が行われなければ現像液により露光部まで溶解する場合や、逆に加熱温度が高すぎる場合には未露光部が部分的に不溶化し、現像が十分に行われない等の問題点がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高感度な感光性組成物を提供することにある。特に可視光から赤外光に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。本発明の他の目的は、加熱処理を必要としない、走査露光可能な感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。更に本発明の目的は、オーバーコート層を必要としない感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。更に本発明の他の目的は、潜像退行のない感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の感光性組成物を用いることによって基本的に達成された。
(1)側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体とは、該フェニル基が複素環を含む連結基を介して主鎖と結合したものであり、前記フェニル基は置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、前記ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。上記した側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記化1で表される基を側鎖に有するものである。
【0015】
【化1】
【0016】
式中、Z1は複素環を含む連結基を表し、R1、R2、及びR3は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R4は置換可能な基または原子を表す。nは1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
【0017】
化1について更に詳細に説明する。複素環を含む連結基Z 1 は、複素環単独でも良く、あるいは他の基や原子、例えば酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R 5 )−、−C(O)−O−、−C(R 6 )=N−、−C(O)−、スルホニル基、及び下記化2等が単独もしくは2以上が複合した状態で含まれていても良い。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0018】
【化2】
【0019】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。
化1で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
上記化1で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R 1 及びR 2 が水素原子でR 3 が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。k 1 は1または2であるものが好ましい。
【0023】
上記の例で示されるような基を有する重合体としては、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましく、そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。この場合、共重合体組成に於ける化1で示される基の割合として、トータル組成100重量%中に於いて化1で示される基は1重量%以上95重量%以下であることが好ましく、これ以下の割合ではその導入の効果が認められない場合がある。また、95重量%以上含まれる場合に於いては、共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。さらに、共重合体中に於けるカルボキシル基含有モノマーの割合は同じく5重量%以上99重量%以下であることが好ましく、これ以下の割合では共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。
【0024】
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0025】
カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体として合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中に於ける化1で示す基およびカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0026】
上記のような重合体の分子量については好ましい範囲が存在し、重量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0027】
本発明に係わる化1で示される基を有する重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100重量%中に於ける各繰り返し単位の重量%を表す。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体の具体例としては、前述したP−1〜P−6が挙げられる。この重合体とともに用いられる光ラジカル発生剤としては、後述する光ラジカル発生剤が用いられる。こうした構成の感光性組成物は、紫外光から赤外光までの広い波長域で高感度が得られるが、特に、可視光〜赤外光の走査型露光に対して高感度が実現できる。可視光〜赤外光に増感するための増感色素は、後述する増感色素が用いられる。
【0032】
本発明は、上記した重合体と併せて、光ラジカル発生剤を含有する。本発明に用いられる光ラジカル発生剤とは、光照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いることができる。例えば有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光ラジカル発生剤の中でも、特に有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を組み合わせて用いることである。
【0033】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記化8で表される。
【0034】
【化8】
【0035】
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0036】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0037】
本発明に係わる好ましい様態の一つとして、有機ホウ素塩とこれを増感する色素を併せて含む感光性組成物であり、この場合の有機ホウ素塩は可視光から赤外光の波長領域に感光性を示さず、増感色素の添加によって初めてこうした波長領域の光に感光性を示すものである。
【0038】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した化8で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
本発明において、他の好ましい光ラジカル発生剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0042】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を化11および化12に示す。
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
本発明に用いられる他の光ラジカル発生剤として有機過酸化物がある。例えば、クメンヒドロペルオキシド、第3ブチルヒドロペルオキシド、ジクロルペルオキシド、ジ第3ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、及び下記化13等が挙げられる。
【0046】
【化13】
【0047】
上述したような光ラジカル発生剤の含有量は、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体に対して、1〜100重量%の範囲で含まれることが好ましく、更には1〜40重量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0048】
可視光から赤外光の波長領域に吸収を有し、前述の光ラジカル発生剤を増感する増感剤としては、各種増感色素が好ましく用いられる。このような増感色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、更に、欧州特許第0,568,993号、米国特許第4,508,811号、同5,227,227号に記載の化合物も用いることができる。
【0049】
可視光(400〜700nm)に吸収を有する増感色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
近年、400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザーを搭載した出力機が開発されている。この出力機は、最大露光エネルギー量が数十μJ/cm2程度で、用いられる感光材料も高感度が要求される。本発明の感光性組成物は、上記した増感色素を組み合わせて用いることによってこの出力機への対応を可能にした。上記した増感色素の中でも、青色半導体レーザー用としてはピリリウム系化合物またはチオピリリウム系化合物が好ましい。
【0057】
また、本発明の感光性組成物は、近赤外〜赤外光、即ち700nm以上、更には750〜1100nmの波長領域のレーザー光を用いた走査露光に対しても極めて好適に用いられる。このような近赤外に増感するために用いられる増感色素の具体例を以下に示す。
【0058】
【化20】
【0059】
【化21】
【0060】
上記で例示した増感色素の対アニオンを、前述した有機ホウ素アニオンに置換した増感色素も同様に用いることができる。増感色素の含有量は、感光性組成物1m2当たり3〜300mg程度が適当である。好ましくは10〜200mg/m2である。
【0061】
本発明において、感光性組成物を構成する他の好ましい要素として分子内に2個以上の重合性二重結合を有する重合性化合物(モノマーまたはオリゴマーで分子量は1万以下、好ましくは5000以下)が挙げられる。好ましい重合性化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリル系モノマーが挙げられる。
【0062】
或いは、上記の重合性化合物に代えてラジカル重合性を有するオリゴマーも好ましく使用され、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用されるが、これらも重合性化合物として同様に扱うことが出来る。
【0063】
上記したような重合性化合物と、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体の比率に関しては好ましい範囲が存在し、重合体1重量部に対して重合性化合物は0.01重量部から10重量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05重量部から1重量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0064】
従来のような光ラジカル重合を利用する場合には、大気中の酸素の影響を受けやすく、一般に酸素バリヤ性を有するポリビニルアルコールのような樹脂を感光層の表面にオーバー層として設ける必要がった。また、露光後に重合を促進あるいは完結させるため100℃前後の温度で数分間程度加熱処理を行う必要があった。
【0065】
これに対して、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を使用する場合には、上記のようなオーバー層を設けなくとも十分に光硬化する系を与え、かつ、露光後に加熱処理を行う必要がないことが特徴であり、さらに光ラジカル発生剤と増感色素とを組み合わせて用いることによって高感度の感光性組成物が得られる点が特徴として挙げられる。また、本発明の感光性組成物は、潜像退行の極めて小さいことが特徴として挙げられる。
【0066】
次に、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上を有するモノマーについて説明する。
【0067】
分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー(以降、本発明のモノマーと称す)を使用した場合、発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、高感度で加熱処理を必要としないネガ型感光材料を作成することができる。本発明のモノマーは、代表的には下記一般式で表される。
【0068】
【化22】
【0069】
式中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R24は置換可能な基または原子を表す。m2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
【0070】
化22について更に詳細に説明する。Z2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0071】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0072】
上記化22で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。即ち、R21及びR22は水素原子でR23は水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k 2 は2〜10の化合物が好ましい。以下に化22で表される化合物の具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
上記した本発明のモノマーの添加量は、バインダー樹脂1重量部に対して0.01重量部から10重量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05重量部から1重量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0077】
本発明のモノマーとともに用いられるバインダー樹脂の中でも、特に好ましいのは、前述した側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体である。本発明のモノマーと側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を併せて用いることによって、より高感度で、より高耐刷力のレリーフ画像が、加熱処理なしに得られる。更に、潜像退行が大幅に改良される。
【0078】
本発明の感光性組成物は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。特に、スチリル基の熱重合あるいは熱架橋を防止し長期にわたる保存性を向上させる目的で種々の重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物等が好ましく使用され、特にハイドロキノンが好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、該重合体100重量部に対して0.1重量部から10重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0079】
感光性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0080】
平版印刷版材料として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5ミクロンから10ミクロンの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、さらに1ミクロンから5ミクロンの範囲であることが耐刷性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光層は上述の3つの要素を混合した溶液を作成し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。
【0081】
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0082】
アルカリ性現像液としては、本発明に係わる重合体或いはバインダー樹脂を溶解する液で有れば特に制限は無いが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等のようなアルカリ性化合物を溶解した水性現像液が良好に未露光部を選択的に溶解し、下方の支持体表面を露出出来るため極めて好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアゴム等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
【0083】
次に、本発明に用いられる側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体及び分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーの代表的な化合物の合成例を以下に示す。
【0084】
合成例1(重合体P−1の合成例)
ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール)150gを600mlのメタノール中に懸濁させ、冷却しながらトリエチルアミン101gを徐々に添加し、均一な溶液を得た。室温下に保ちながらp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル製、CMS−14)を10分に亘り滴下し、さらに3時間攪拌を続けた。反応生成物が次第に析出し、攪拌後に氷浴に移し内温を10℃まで冷却した後、吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で1昼夜乾燥することで収率75%で化26に示す化合物を得た。
【0085】
【化26】
【0086】
化26のモノマー40gを攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1リッター4ツ口フラスコ内にとり、メタクリル酸70gおよびエタノール200ml、蒸留水50mlを加え、攪拌しながら水浴上でトリエチルアミン110gを添加した。窒素雰囲気下で内温を70℃になるよう加熱し、この温度でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1g添加し、重合を開始した。6時間加熱攪拌を行い、その後重合系を室温まで冷却した。一部を取り出し、希塩酸を加えてpHを3程度に調整し、これを水中にあけることで化27に示す構造のポリマーを得た。
【0087】
【化27】
【0088】
上記の一部を取り出した残りの重合体溶液中に1,4−ジオキサン100gおよびp−クロロメチルスチレンを23g加え、室温で更に15時間攪拌を続けた。その後、濃塩酸(35〜37%水溶液)80〜90gを加え、系のpHが4以下になったことを確認後、3リッターの蒸留水中に全体を移した。析出した重合体を濾過により分離し、蒸留水にて洗浄を繰り返した後、真空乾燥器内で1昼夜乾燥した。収率90%で目的とする重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定により重量平均分子量9万(ポリスチレン換算)の重合体であり、さらにプロトンNMRによる解析により重合体P−1の構造を支持するものであった。
【0089】
合成例2(モノマーC−5の合成例)
チオシアヌル酸89gをメタノール1.5リッターに懸濁し、冷却しながら水酸化カリウム84gを溶解した30%水溶液を徐々に加え、均一な溶液を得た。これに、室温下でp−クロロメチルスチレン230gを内温が40℃を越えないよう徐々に滴下した。添加後まもなく生成物が析出してくるが攪拌を続け、3時間攪拌を行った後に吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で一昼夜乾燥を行った後、90%の収率でモノマーC−5で示される化合物を得た。
【0090】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
実施例1
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体 12重量部
光ラジカル発生剤 1重量部
重合性化合物 3重量部
(ヘ゜ンタエリスリトールトリアクリレート)
増感色素(S−20) 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0092】
上記感光性塗工液の重合体と光ラジカル発生剤の種類を表1のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0093】
上記のようにして作成した感光材料(平版印刷版材料)を、青色半導体レーザー搭載出力機;ESCHER GRAD社製イメージセッターCobalt8CTP(発振波長410nm、出力30mW)を使用して露光試験を行った。露光後、メタケイ酸ソーダを0.7重量%含有するアルカリ性現像液で現像を行い、10ミクロンの細線が明瞭にアルミ板上に形成されるかどうかで感度を評価した。その結果を表1にまとめた。表1中、○は10ミクロンの細線が明瞭に形成、×は形成されないことを意味する。
【0094】
【表1】
【0095】
上記表中、CP-1:アリルメタクリレート/ヘ゛ンシ゛ルメタクリレート/メタクリル酸(モル比60/20/20)共重合体を表し、CP-2、CP-3及びCP-4は、下記に示す。
【0096】
【化28】
【0097】
【化29】
【0098】
【化30】
【0099】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の印刷版は、いずれも15万枚の印刷が可能であった。
【0100】
上記結果より明らかなように、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤と増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、青色半導体レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。
【0101】
実施例2
実施例1の感光性塗工液の増感色素をS−21に変更する以外は、実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様な結果が得られた。
【0102】
実施例3
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
バインダー樹脂 10重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1重量部
本発明のモノマー又は比較化合物 4重量部
増感色素(S−20) 0.4重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0103】
上記感光性塗工液のバインダー樹脂と本発明のモノマーあるいは比較化合物を表2のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0104】
上記のようにして作成した感光材料(平版印刷版材料)を、青色半導体レーザー搭載出力機;ESCHER GRAD社製イメージセッターCobalt8CTP(発振波長410nm、出力30mW)を使用して露光試験を行った。露光後、メタケイ酸ソーダを0.7重量%含有するアルカリ性現像液で現像を行い、10ミクロンの細線が明瞭にアルミ板上に形成されるかどうかで感度を評価した。その結果を表2にまとめた。表2中、○は10ミクロンの細線が明瞭に形成、×は形成されないことを意味する。
【0105】
【表2】
【0106】
上記表中、CP-1:アリルメタクリレート/ヘ゛ンシ゛ルメタクリレート/メタクリル酸(モル比60/20/20)共重合体を表し、CC-1:スチレン、CC-2:シ゛ヒ゛ニルヘ゛ンセ゛ン、CC-3:シ゛アリルヘ゛ンセ゛ン、CC-4:ヘ゜ンタエリスリトールテトラアクリレート、CC-5:テトラエチレンク゛リコールシ゛アクリレートを表す。
【0107】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の感光材料(印刷版)20〜24は、いずれも20万枚の印刷が可能であった。
【0108】
上記結果より明らかなように、バインダー樹脂として側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用い、かつ分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー及び光ラジカル発生剤、更に増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、青色半導体レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。
【0109】
実施例4
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体 12重量部
光ラジカル発生剤 1重量部
重合性化合物 3重量部
(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
増感色素(S−22) 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0110】
上記感光性塗工液の重合体と光ラジカル発生剤の種類を表3のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0111】
得られた感光材料を次のようにして露光を行った。即ち、タングステンランプを光源とする露光機(三菱製紙製ヒシラコピープリンター)を使用して、580nmの干渉フィルターを介在させ、この干渉フィルターを透過する光量が5mW/cm2になるように光量を調整し、濃度差0.15間隔のステップウェッジを有するコントロールウェッジ(富士写真フィルム製)を通して30秒間露光を行った。露光後、1分以内、及び1時間経過させた試料をメタケイ酸ソーダを0.7重量%含有するアルカリ性現像液で現像を行った。現像処理後に、アルミ板上に形成されたステップウェッジのパターンにおいて、画像として残らない最小のステップ段数を感度として求めた。この数値が大きいほど感度が高いことを表す。その結果を表3にまとめた。
【0112】
【表3】
【0113】
表中、CP-1、CP-2、CP-3及びCP-4は表1と同じである。
【0114】
上記結果より明らかなように、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤と増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、可視光領域で極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭なレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0115】
実施例5
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
バインダー樹脂 12重量部
光ラジカル発生剤(T−8) 1重量部
本発明のモノマー又は比較化合物 3重量部
増感色素(S−22) 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0116】
上記感光性塗工液のバインダー樹脂と本発明のモノマーあるいは比較化合物を表4のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0117】
得られた感光材料を実施例4と同様にして評価した。その結果を表4にまとめた。
【0118】
【表4】
【0119】
表中、CP-1、CC-1、CC-2、CC-3、CC-4及びCC-5は、表2と同じである。
【0120】
上記結果より明らかなように、バインダー樹脂として側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用い、かつ分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー及び光ラジカル発生剤、更に増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、可視光領域で極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭なレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0121】
実施例6
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが1.5ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて5分間乾燥を行った。
重合体(P−1) 10重量部
本発明のモノマー(C−5) 2重量部
光ラジカル発生剤(下記化31) 0.5重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0122】
【化31】
【0123】
得られた感光材料をタングステンランプを光源とする感光計を使用し、かつ光源からの光の内780nm以下の光をカットするフィルターを通して、所望画像を焼き付けたネガパターンを重ねて20秒間露光を行った。この時の光量としては10mW/cm2程度の値であった。露光後、メタケイ酸ソーダを6重量%溶解した現像液で現像を行ったところ、アルミニウム板上に硬化した樹脂によるポジ画像が形成された。これを通常のオフセット印刷機を使用して印刷を行ったところ十分なインキ乗りおよび20万枚の耐刷力を示した。
【0124】
実施例7
実施例3と同様に、厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが1.5ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて5分間乾燥を行った。
重合体(P−1) 10重量部
光ラジカル発生剤(上記化31) 0.5重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0125】
上記のようにして作成した感光材料(平版印刷版材料)を円筒形ドラムの外面に巻き付け、830nmに発光する出力1.2W(可変0〜1.2W)の半導体レーザーを使用して、ドラム回転速度300〜2000rpmの間でレーザー照射エネルギーおよびドラム回転速度を種々変化させて露光試験を行った。この際のレーザー光のスポット径は10ミクロンに調整した。露光後に実施例6と同様なアルカリ性現像液で現像を行った際に、10ミクロン線が明瞭にアルミ板上に形成されるための最小露光エネルギーを感光材料の感度として求めたところ、300mJ/cm2という高い感度を示した。
【0126】
実施例8
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体 10重量部
光ラジカル発生剤 2重量部
重合性化合物 3重量部
(ヘ゜ンタエリスリトールトリアクリレート)
増感色素 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0127】
上記感光性塗工液の重合体、光ラジカル発生剤及び増感色素の種類を表5のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0128】
上記のようにして作成した感光材料を円筒形ドラムの外面に巻き付け、830nmに発光する出力1.2W(可変0〜1.2W)の半導体レーザーを使用して、ドラム回転速度300〜2000rpmの間でレーザー照射エネルギーおよびドラム回転速度を種々変化させて露光試験を行った。この際のレーザー光のスポット径は10ミクロンに調整した。露光後、1分以内及び1時間後に実施例1と同様なアルカリ性現像液で現像を行った際に、10ミクロン線が明瞭にアルミ板上に形成されるための最小露光エネルギーを感光材料の感度とし、mJ/cm2の単位で表示した(数値が小さいほど感度が高いことを表す)。結果を表5にまとめた。
【0129】
【表5】
【0130】
表中、光ラジカル発生剤の2種組み合わせの際の添加量は、それぞれ1重量部であり、CP-1、CP-2、CP-3及びCP-4は、表1と同じである。
【0131】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の印刷版は、いずれも20万枚の印刷でも問題なかったが、比較の印刷版は、加熱処理しなかったため、耐刷力は1万枚以下であった。
【0132】
上記結果より明らかなように、側鎖に複素環を含む連結基を介してビニル基が置換したフェニル基を有する重合体と光ラジカル発生剤と増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、近赤外レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0133】
実施例9
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2ミクロンになるよう塗布を行い、70℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
バインダー樹脂 10重量部
光ラジカル発生剤 2重量部
本発明のモノマー又は比較化合物 3重量部
増感色素 0.5重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサン 20重量部
【0134】
上記感光性塗工液のバインダー樹脂、本発明のモノマーあるいは比較化合物、光ラジカル発生剤及び増感色素の種類を表6のように変化して、各種感光材料を作成した。
【0135】
上記のようにして作成した感光材料を実施例8と同様に評価した。結果を表6にまとめた。
【0136】
【表6】
【0137】
表中、CP-1、CC-1、CCー2、CC-3、CC-4及びCC-5は、表2と同じである。
【0138】
上記の感光材料について印刷版としての性能を評価した。通常のオフセット印刷機、インキ及び湿し水を用いて、耐刷力を評価した。耐刷力は、印刷画質が変化しない最大の印刷枚数で評価した。その結果、本発明の印刷版は、いずれも20万枚の印刷でも問題なかったが、比較の印刷版は、加熱処理しなかったため、耐刷力は1万枚以下であった。
【0139】
上記結果より明らかなように、バインダー樹脂として側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用い、かつ分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー及び光ラジカル発生剤、更に増感剤を併せて含む本発明の感光材料は、近赤外レーザー光による走査露光に対して極めて高感度で、露光後加熱処理を行わなくても鮮鋭で高耐刷力のレリーフ画像が得られる。また、本発明は比較に比べて、潜像退行がほとんどないことが分かる。
【0140】
実施例10
前記重合体(P−1)を使用し、下記の処方による感光性組成液を作成し、ワイアバーを使用して100ミクロン厚みのポリエステルフィルム上に乾燥膜厚が3ミクロンになるよう塗設し、感光性フィルムを作成した。
重合体(P−1) 10重量部
光ラジカル発生剤(T−4) 1重量部
ジオキサン 70重量部
シクロヘキサノン 20重量部
【0141】
得られた感光性フィルムを高圧水銀ランプを光源とする感光計を使用して、220mWの光量で濃度差0.15間隔のステップウェッジを有するマスクフィルムを通して1秒間露光を行った。露光後すぐにメタ珪酸ソーダを6重量%溶解した現像液を使用して現像を行ったところ、約60mJ/cm2以上の露光量を与えた部分が画像として残存し、レリーフパターンが形成された。
【0142】
【発明の効果】
本発明によれば、感光材料として高感度であり、露光後、加熱処理を行わなくても、現像及び印刷に耐えられる画像を得ることができる。更に、感光波長域が広く選択できることから種々のレーザーを含めた光源が利用でき、さらに、耐刷力に優れた平版印刷版を得ることができる。また、更に、潜像退行のない感光材料及び平版印刷版が得られる。また、更にオーバー層を必要としない感光材料及び平版印刷版が得られる。
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