JP2001107220A - 硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法 - Google Patents
硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 この発明は、熱的機械的衝撃を強く受ける機
械部品の表面に被覆する硬質炭素膜の耐磨耗性、耐久
性、接着性を向上させる技術に関するものである。 【解決手段】 硬質炭素膜の表面側の体積比率が30%
以下で、硬質炭素膜の下層側すなわち基材(機械部品)
側の体積比率が50%以上となるように体積比率に傾斜
を持たせて硬質炭素膜内に金属を添加した層(金属傾斜
層)を下層に設ける。金属傾斜層の膜厚は0.5〜5μ
mにする。金属傾斜層以外の硬質炭素膜は、その金属の
体積比率を30%以下にし、膜厚を0.5〜5μmにす
る。なお、硬質炭素膜を金属傾斜層のみで構成してもよ
い。
械部品の表面に被覆する硬質炭素膜の耐磨耗性、耐久
性、接着性を向上させる技術に関するものである。 【解決手段】 硬質炭素膜の表面側の体積比率が30%
以下で、硬質炭素膜の下層側すなわち基材(機械部品)
側の体積比率が50%以上となるように体積比率に傾斜
を持たせて硬質炭素膜内に金属を添加した層(金属傾斜
層)を下層に設ける。金属傾斜層の膜厚は0.5〜5μ
mにする。金属傾斜層以外の硬質炭素膜は、その金属の
体積比率を30%以下にし、膜厚を0.5〜5μmにす
る。なお、硬質炭素膜を金属傾斜層のみで構成してもよ
い。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱的機械的衝撃を
強く受ける機械部品の表面に被覆する硬質炭素膜の耐磨
耗性、耐久性、接着性を向上させる技術に関するもので
ある。
強く受ける機械部品の表面に被覆する硬質炭素膜の耐磨
耗性、耐久性、接着性を向上させる技術に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】硬質炭素膜は、硬度が非常に高いことか
ら、耐磨耗性が必要とされる分野、例えば機械部品、金
型、切削工具等において、その表面を硬質炭素膜で覆う
ことが広く行われてきた。このような硬質炭素膜は、接
着性向上を目的とした中間層、例えばシリコンや窒化シ
リコンの上に、メタンやアセチレン等の炭素含有ガスを
使用して熱CVD法やプラズマCVD法等により、作製
されてきた。
ら、耐磨耗性が必要とされる分野、例えば機械部品、金
型、切削工具等において、その表面を硬質炭素膜で覆う
ことが広く行われてきた。このような硬質炭素膜は、接
着性向上を目的とした中間層、例えばシリコンや窒化シ
リコンの上に、メタンやアセチレン等の炭素含有ガスを
使用して熱CVD法やプラズマCVD法等により、作製
されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、自動車
用エンジンのシリンダやピストンのように非常に大きな
熱的機械的衝撃を受ける機械部品に対しては、硬質炭素
膜中に残留する内部応力に、熱的機械的衝撃を受けて発
生する応力が加わり、硬質炭素膜に亀裂が発生しやすく
なり、(チッピングが支配的な)摩耗が進行しやすくな
る。また、硬質炭素膜と基材の接着性を改善するため、
硬質炭素膜と基材の間に中間層を設けた場合でも、両者
の界面で剥離が生じやすいという問題も存在する。
用エンジンのシリンダやピストンのように非常に大きな
熱的機械的衝撃を受ける機械部品に対しては、硬質炭素
膜中に残留する内部応力に、熱的機械的衝撃を受けて発
生する応力が加わり、硬質炭素膜に亀裂が発生しやすく
なり、(チッピングが支配的な)摩耗が進行しやすくな
る。また、硬質炭素膜と基材の接着性を改善するため、
硬質炭素膜と基材の間に中間層を設けた場合でも、両者
の界面で剥離が生じやすいという問題も存在する。
【0004】本発明において解決すべき課題は、硬質炭
素膜に固有の特性を失わせず、しかも残留する内部応力
や外部衝撃による発生応力が小さく、且つまた、基材に
対する接着性に優れた硬質炭素膜の被覆製品を提供する
ことにある。
素膜に固有の特性を失わせず、しかも残留する内部応力
や外部衝撃による発生応力が小さく、且つまた、基材に
対する接着性に優れた硬質炭素膜の被覆製品を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題は、硬質炭素膜
の表面側の体積比率30%以下で、硬質炭素膜の下層側
すなわち基材(機械部品)側の体積比率が50%以上と
なるように体積比率に傾斜を持たせて硬質炭素膜内金属
を添加した層(金属傾斜層)を、硬質炭素膜の下層に設
けることにより達成される。また、中間層は設けなくて
もよいが、設けるほうが接着性がさらに向上する。この
場合、中間層は、硬質炭素膜内に添加する金属と同種類
の金属で構成し、チタンまたはクロムが望ましい。
の表面側の体積比率30%以下で、硬質炭素膜の下層側
すなわち基材(機械部品)側の体積比率が50%以上と
なるように体積比率に傾斜を持たせて硬質炭素膜内金属
を添加した層(金属傾斜層)を、硬質炭素膜の下層に設
けることにより達成される。また、中間層は設けなくて
もよいが、設けるほうが接着性がさらに向上する。この
場合、中間層は、硬質炭素膜内に添加する金属と同種類
の金属で構成し、チタンまたはクロムが望ましい。
【0006】硬質炭素膜下層(基材側)に位置する金属
傾斜層については、基材(中間層のある場合は中間層)
との接触部の金属の体積比率を50%以上、望ましくは
100%にし、基材から遠ざかるに従い、連続的もしく
は階段状に減少させ、金属傾斜層の最終部(硬質炭素膜
の表面側)の金属の体積比率を30%以下、望ましくは
0%にする。金属傾斜層の膜厚は0.5〜5μm,望ま
しくは0.5〜2μmにする。
傾斜層については、基材(中間層のある場合は中間層)
との接触部の金属の体積比率を50%以上、望ましくは
100%にし、基材から遠ざかるに従い、連続的もしく
は階段状に減少させ、金属傾斜層の最終部(硬質炭素膜
の表面側)の金属の体積比率を30%以下、望ましくは
0%にする。金属傾斜層の膜厚は0.5〜5μm,望ま
しくは0.5〜2μmにする。
【0007】金属傾斜層以外の硬質炭素膜は、その金属
の体積比率と膜厚をそれぞれ30%以下、0.5〜5μ
m、望ましくは0%、1〜2μmにする.さらに、金属
傾斜層以外の硬質炭素膜の金属の体積比率は、金属傾斜
層の最終部(硬質炭素膜の表面側)の金属の体積比率と
同じにし、金属傾斜層を含む硬質炭素膜全体の膜厚を5
μm以下にすることが望ましい。また、硬質炭素膜を金
属傾斜層のみで構成してもよい。
の体積比率と膜厚をそれぞれ30%以下、0.5〜5μ
m、望ましくは0%、1〜2μmにする.さらに、金属
傾斜層以外の硬質炭素膜の金属の体積比率は、金属傾斜
層の最終部(硬質炭素膜の表面側)の金属の体積比率と
同じにし、金属傾斜層を含む硬質炭素膜全体の膜厚を5
μm以下にすることが望ましい。また、硬質炭素膜を金
属傾斜層のみで構成してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て、実験結果を例にあげて説明する。 第1例 円筒型非平衡型マグネトロンスパッタリング装置を用い
て行った実験例を以下に示す。4個のチタンターゲット
を使い、アルゴンガスにより発生させたプラズマ内にア
セチレンガス(またはアセチレンガスと窒素ガス)を流
すことにより本発明の硬質炭素膜を作製した。作製条件
は次の通りである。 基 材 :自動車用エンジンのタペット ターゲット :チタン(ターゲット 4個) ガ ス :アルゴン アセチレン 圧 力 :2x10−1Pa ターゲット電流 :3 A (成膜時) 基板バイアス電圧 :−40 V(DC)(成膜時) 基板ホルダー回転数 :2 R.P.M. 堆 積 速 度 :0.03 μm/分
て、実験結果を例にあげて説明する。 第1例 円筒型非平衡型マグネトロンスパッタリング装置を用い
て行った実験例を以下に示す。4個のチタンターゲット
を使い、アルゴンガスにより発生させたプラズマ内にア
セチレンガス(またはアセチレンガスと窒素ガス)を流
すことにより本発明の硬質炭素膜を作製した。作製条件
は次の通りである。 基 材 :自動車用エンジンのタペット ターゲット :チタン(ターゲット 4個) ガ ス :アルゴン アセチレン 圧 力 :2x10−1Pa ターゲット電流 :3 A (成膜時) 基板バイアス電圧 :−40 V(DC)(成膜時) 基板ホルダー回転数 :2 R.P.M. 堆 積 速 度 :0.03 μm/分
【0009】作製手順は次の通りである。円筒型非平衡
型マグネトロンスパッタリング装置内に基材をセットし
装置を高真空にした後、アルゴンガスを流し、圧力2x
10−1Pa、ターゲット電流0.2A,基板バイアス
電圧−600V(DC)の条件で、30分間イオンボン
バードを行い、基材表面をクリーンにする。その後、タ
ーゲット電流を3Aに上げて、基板バイアス電圧−40
V(DC)で約8分間保持する。次にTiの発光強度が
当初の50%になるようにアセチレンガスを追加して流
して、約30分間保持する。その後、約20分間かけて
Tiの発光強度を当初の15%になるまで直線的に減少
させ、引き続き、この状態を保持する。
型マグネトロンスパッタリング装置内に基材をセットし
装置を高真空にした後、アルゴンガスを流し、圧力2x
10−1Pa、ターゲット電流0.2A,基板バイアス
電圧−600V(DC)の条件で、30分間イオンボン
バードを行い、基材表面をクリーンにする。その後、タ
ーゲット電流を3Aに上げて、基板バイアス電圧−40
V(DC)で約8分間保持する。次にTiの発光強度が
当初の50%になるようにアセチレンガスを追加して流
して、約30分間保持する。その後、約20分間かけて
Tiの発光強度を当初の15%になるまで直線的に減少
させ、引き続き、この状態を保持する。
【0010】このようにして、Tiの中間層(0.02
μm)と、金属傾斜層のみから成る硬質炭素膜(2.4
μm)が基材の上に成膜される。金属傾斜層内は、Ti
の堆積比率の値の違いにより、基材側から順番に、50
%一定の層(0.9μm)、50%から15%まで直線
的に減少する層(0.6μm)、15%一定の層(0.
9μm)の3層で構成されている。
μm)と、金属傾斜層のみから成る硬質炭素膜(2.4
μm)が基材の上に成膜される。金属傾斜層内は、Ti
の堆積比率の値の違いにより、基材側から順番に、50
%一定の層(0.9μm)、50%から15%まで直線
的に減少する層(0.6μm)、15%一定の層(0.
9μm)の3層で構成されている。
【0011】以上の方法で作製した硬質炭素膜の性能
は、従来方法による場合に比べて、基材との接着性及び
耐磨耗性に関して1.5〜2倍向上していた。また、硬
質炭素膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施例の
硬質炭素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来方法
による場合に比べて、2〜3倍、製品寿命が長くなっ
た。尚、窒素ガスを追加して流すことにより、Tiの中
間層と金属傾斜層のみから成る硬質炭素膜の間にTiN
層を設けたり、硬質炭素膜内にTiNまたはTiCNを
含有させることも試み、さらに若干の性能の向上を得
た。
は、従来方法による場合に比べて、基材との接着性及び
耐磨耗性に関して1.5〜2倍向上していた。また、硬
質炭素膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施例の
硬質炭素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来方法
による場合に比べて、2〜3倍、製品寿命が長くなっ
た。尚、窒素ガスを追加して流すことにより、Tiの中
間層と金属傾斜層のみから成る硬質炭素膜の間にTiN
層を設けたり、硬質炭素膜内にTiNまたはTiCNを
含有させることも試み、さらに若干の性能の向上を得
た。
【0012】第2例 円筒型非平衡型マグネトロンスパッタリング装置を用い
て行った別の実施例を以下に示す。3個のカーボンター
ゲットと1個のクロムターゲットを使い、下記の作製条
件により本発明の硬質炭素膜を作製した。 基 材 :自動車用エンジンの燃料噴射ポンプのシャフト ターゲット :カーボン 3個 クロム 1個 ガ ス :アルゴン 圧 力 :2x10−1Pa ターゲット電流 :0〜7A 基板バイアス電圧 :−60 V(パルスDC 周波数50kHz パルス幅1500nsec)(成膜時) 基板ホルダー回転数 :2 R.P.M. 堆 積 速 度 :0.014 μm/分
て行った別の実施例を以下に示す。3個のカーボンター
ゲットと1個のクロムターゲットを使い、下記の作製条
件により本発明の硬質炭素膜を作製した。 基 材 :自動車用エンジンの燃料噴射ポンプのシャフト ターゲット :カーボン 3個 クロム 1個 ガ ス :アルゴン 圧 力 :2x10−1Pa ターゲット電流 :0〜7A 基板バイアス電圧 :−60 V(パルスDC 周波数50kHz パルス幅1500nsec)(成膜時) 基板ホルダー回転数 :2 R.P.M. 堆 積 速 度 :0.014 μm/分
【0013】作製手順は次の通りである。円筒型非平衡
型マグネトロンスパッタリング装置内に基材をセットし
装置を高真空にした後、アルゴンガスを流し、圧力を2
x10−1Paにして、第1例と同様の方法で30分間
イオンボンバードを行い、基材表面をクリーンにする。
その後、クロムターゲット電流のみを7Aにして、約1
2分間保持する。このとき、基板バイアス電圧は上記の
値にしておく。次に、約45分かけて、クロムターゲッ
ト電流を7Aから0Aまで直線的に下げていくと同時
に、3個のカーボンターゲットの電流をそれぞれ0Aか
ら7Aに直線的に上げていく。その後、そのままの条件
で約140分間保持する。
型マグネトロンスパッタリング装置内に基材をセットし
装置を高真空にした後、アルゴンガスを流し、圧力を2
x10−1Paにして、第1例と同様の方法で30分間
イオンボンバードを行い、基材表面をクリーンにする。
その後、クロムターゲット電流のみを7Aにして、約1
2分間保持する。このとき、基板バイアス電圧は上記の
値にしておく。次に、約45分かけて、クロムターゲッ
ト電流を7Aから0Aまで直線的に下げていくと同時
に、3個のカーボンターゲットの電流をそれぞれ0Aか
ら7Aに直線的に上げていく。その後、そのままの条件
で約140分間保持する。
【0014】このようにして、クロムの中間層(0.2
μm)と、金属傾斜層(0.7μm)、金属傾斜層以外
の硬質炭素膜(2.0μm)が基材の上に成膜される。
金属傾斜層のクロムの体積比率は、基材側(中間層との
接触部)が100%、金属傾斜層の最終部(硬質炭素膜
の表面側)が0%であり、その間100%から0%まで
直線的に減少していく。金属傾斜層以外の硬質炭素膜の
クロムの体積比率は0%である。
μm)と、金属傾斜層(0.7μm)、金属傾斜層以外
の硬質炭素膜(2.0μm)が基材の上に成膜される。
金属傾斜層のクロムの体積比率は、基材側(中間層との
接触部)が100%、金属傾斜層の最終部(硬質炭素膜
の表面側)が0%であり、その間100%から0%まで
直線的に減少していく。金属傾斜層以外の硬質炭素膜の
クロムの体積比率は0%である。
【0015】以上の方法で作製した硬質炭素膜の性能
は、従来方法による場合に比べて、基材との密着性及び
耐磨耗性に関して約2倍向上していた。また、硬質炭素
膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施例の硬質炭
素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来方法による
場合に比べて、、約3倍製品寿命が長くなった。尚、最
終クロムターゲット電流を0Aの代わりに0.5Aにす
ると、金属傾斜層の最終部(硬質炭素膜の表面側)及び
金属傾斜層以外の硬質炭素膜のクロムの体積比率は約8
%となり、耐磨耗性がさらに若干向上した。本実施例に
おいては、上記の部分のクロムの体積比率が0〜15%
の範囲のとき、優れた耐磨耗性を示すが、上記の8%の
ときが最もよく、特に高荷重の条件の下での耐磨耗性が
優れている。
は、従来方法による場合に比べて、基材との密着性及び
耐磨耗性に関して約2倍向上していた。また、硬質炭素
膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施例の硬質炭
素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来方法による
場合に比べて、、約3倍製品寿命が長くなった。尚、最
終クロムターゲット電流を0Aの代わりに0.5Aにす
ると、金属傾斜層の最終部(硬質炭素膜の表面側)及び
金属傾斜層以外の硬質炭素膜のクロムの体積比率は約8
%となり、耐磨耗性がさらに若干向上した。本実施例に
おいては、上記の部分のクロムの体積比率が0〜15%
の範囲のとき、優れた耐磨耗性を示すが、上記の8%の
ときが最もよく、特に高荷重の条件の下での耐磨耗性が
優れている。
【0016】また、本実施例と同様の作製条件で、金属
傾斜層の膜厚を0〜7μmの範囲で変化させた硬質炭素
膜を、30x30x2t(mm)のサイズのSKH51
のテストピース上にそれぞれ作製し、ピンオンディスク
テストにより、各硬質炭素膜の摩耗率を測定した。テス
ト条件は次の通りである。 荷重 :10N 回転半径 :6mm 回転速度 :318R.P.M.(線速度:200mm
/sec) 回転数 :100000回転 温度、湿度:20〜25℃ 40〜60% このテストの測定結果、すなわち、硬質炭素膜の摩耗率
の金属傾斜層膜厚依存性を表1に示す。
傾斜層の膜厚を0〜7μmの範囲で変化させた硬質炭素
膜を、30x30x2t(mm)のサイズのSKH51
のテストピース上にそれぞれ作製し、ピンオンディスク
テストにより、各硬質炭素膜の摩耗率を測定した。テス
ト条件は次の通りである。 荷重 :10N 回転半径 :6mm 回転速度 :318R.P.M.(線速度:200mm
/sec) 回転数 :100000回転 温度、湿度:20〜25℃ 40〜60% このテストの測定結果、すなわち、硬質炭素膜の摩耗率
の金属傾斜層膜厚依存性を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】表1から、金属傾斜層の膜厚が0.4μm
以下では、金属傾斜層内の金属の含有率の勾配が大きす
ぎて、その効果が十分に発揮されず、効果を発揮するに
は0.5μm以上の膜厚が必要なことがわかる。また、
金属傾斜層の膜厚が2μmを越えると、その膜内の応力
の増加により、効果が減少していき、5μmを越えると
効果がなくなる。
以下では、金属傾斜層内の金属の含有率の勾配が大きす
ぎて、その効果が十分に発揮されず、効果を発揮するに
は0.5μm以上の膜厚が必要なことがわかる。また、
金属傾斜層の膜厚が2μmを越えると、その膜内の応力
の増加により、効果が減少していき、5μmを越えると
効果がなくなる。
【0019】第3例 前記の第2例と同様の手順で、クロムの中間層を含まな
い構造を持つ硬質炭素膜を成膜した実施例を示す。基材
として、自動車用エンジンのピストンリングを用いた。
作製条件は、イオンボンバードの後、「クロムターゲッ
ト電流を7Aにして約12分間保持する」という工程を
省く以外は、全て第2例と同じであり、基材の上に直接
金属傾斜層(0.7μm)、金属傾斜層以外の硬質炭素
膜(2μm)が成膜される。金属傾斜層のクロムの体積
比率は、基材との接触部が100%、金属傾斜層の最終
部(硬質炭素膜の表面側)が0%であり、その間100
%から0%まで直線的に減少していく。金属傾斜層以外
の硬質炭素膜のクロムの体積比率は0%である。
い構造を持つ硬質炭素膜を成膜した実施例を示す。基材
として、自動車用エンジンのピストンリングを用いた。
作製条件は、イオンボンバードの後、「クロムターゲッ
ト電流を7Aにして約12分間保持する」という工程を
省く以外は、全て第2例と同じであり、基材の上に直接
金属傾斜層(0.7μm)、金属傾斜層以外の硬質炭素
膜(2μm)が成膜される。金属傾斜層のクロムの体積
比率は、基材との接触部が100%、金属傾斜層の最終
部(硬質炭素膜の表面側)が0%であり、その間100
%から0%まで直線的に減少していく。金属傾斜層以外
の硬質炭素膜のクロムの体積比率は0%である。
【0020】以上の方法で作製した硬質炭素膜の性能
は、従来方法による場合に比べて、基材との接着性で約
1.8倍、耐磨耗性に関しては約2倍向上していた。ま
た硬質炭素膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施
例の硬質炭素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来
方法による場合に比べて、約3倍、製品寿命が長くなっ
た。
は、従来方法による場合に比べて、基材との接着性で約
1.8倍、耐磨耗性に関しては約2倍向上していた。ま
た硬質炭素膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施
例の硬質炭素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来
方法による場合に比べて、約3倍、製品寿命が長くなっ
た。
【0021】第4例 既述の第1例の方法で作製された硬質炭素膜の上に、真
空を解除せずそのまま引き続き同一チャンバー内で、プ
ラズマCVD法により硬質炭素膜を形成した実施例を以
下に示す。基材には自動車エンジンのピストンを用い、
そのスカート部に成膜した。第1例と同じ方法で硬質炭
素膜を基材の上に作製した後、一旦1x10−3Pa以
下まで真空引きする。その後、同一チャンバー内で下記
の条件で、プラズマCVD法により硬質炭素膜を0.5
μm作製した。 ガ ス :メタン 圧 力 :1x10−1Pa 高周波電力 :1.5 kW 基板ホルダー回転数 :2 R.P.M. 堆積速度 :0.1 μm/時
空を解除せずそのまま引き続き同一チャンバー内で、プ
ラズマCVD法により硬質炭素膜を形成した実施例を以
下に示す。基材には自動車エンジンのピストンを用い、
そのスカート部に成膜した。第1例と同じ方法で硬質炭
素膜を基材の上に作製した後、一旦1x10−3Pa以
下まで真空引きする。その後、同一チャンバー内で下記
の条件で、プラズマCVD法により硬質炭素膜を0.5
μm作製した。 ガ ス :メタン 圧 力 :1x10−1Pa 高周波電力 :1.5 kW 基板ホルダー回転数 :2 R.P.M. 堆積速度 :0.1 μm/時
【0022】以上の方法で作製した硬質炭素膜の性能
は、従来方法による場合に比べて、基材との接着性及び
耐磨耗性に関して1.5〜2倍向上していた。また、硬
質炭素膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施例の
硬質炭素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来方法
による場合に比べて、3〜4倍製品寿命が長くなった。
は、従来方法による場合に比べて、基材との接着性及び
耐磨耗性に関して1.5〜2倍向上していた。また、硬
質炭素膜の膜厚を厚くできた効果も加わり、本実施例の
硬質炭素膜の被覆された基材(機械部品)は、従来方法
による場合に比べて、3〜4倍製品寿命が長くなった。
【0023】
【発明の効果】上記第1例〜第4例で示したように、本
発明によれば、耐磨耗性、接着性、耐久性に優れた硬質
炭素膜を機械部品に被覆することができる。すなわち、
硬質炭素膜中に金属を分散含有させることにより、膜中
に応力が内的要因(残留歪みによるもの)あるいは外的
原因(外部応力、熱による衝撃)により発生しても、そ
れが小さくなり、従って機械部品中に発生する熱的機械
的衝撃による内部クラックが発生しにくくなり、耐磨耗
性が向上する。また、前記のような金属傾斜層を硬質炭
素膜の下層側に設けることにより、基材(または中間
層)と硬質炭素膜の界面における応力が緩和され、両者
間の接着性が向上する。さらに、従来の方法では、硬質
炭素膜の大きな内部応力に起因して膜の剥離が起こるた
め、硬質炭素膜の膜厚を1〜2μm以上にすることがで
きなかったが、本発明によれば硬質炭素膜の内部応力が
小さいので、5μmもしくはそれ以上にすることがで
き、実質的な耐久性が向上する。
発明によれば、耐磨耗性、接着性、耐久性に優れた硬質
炭素膜を機械部品に被覆することができる。すなわち、
硬質炭素膜中に金属を分散含有させることにより、膜中
に応力が内的要因(残留歪みによるもの)あるいは外的
原因(外部応力、熱による衝撃)により発生しても、そ
れが小さくなり、従って機械部品中に発生する熱的機械
的衝撃による内部クラックが発生しにくくなり、耐磨耗
性が向上する。また、前記のような金属傾斜層を硬質炭
素膜の下層側に設けることにより、基材(または中間
層)と硬質炭素膜の界面における応力が緩和され、両者
間の接着性が向上する。さらに、従来の方法では、硬質
炭素膜の大きな内部応力に起因して膜の剥離が起こるた
め、硬質炭素膜の膜厚を1〜2μm以上にすることがで
きなかったが、本発明によれば硬質炭素膜の内部応力が
小さいので、5μmもしくはそれ以上にすることがで
き、実質的な耐久性が向上する。
【図1】本発明の実施第1例の基材である自動車用エン
ジンのタペットの断面図
ジンのタペットの断面図
【図2】本発明の実施第2例の基材である自動車用エン
ジンの燃料噴射ポンプのシャフトの斜視図
ジンの燃料噴射ポンプのシャフトの斜視図
【図3】本発明の実施第3例及び第4例の基材である自
動車用エンジンのピストンリング及びピストンスカート
の断面図
動車用エンジンのピストンリング及びピストンスカート
の断面図
1はプッシュロッド 2はタペット 3はカム 4はバルブリフター 5はシャフト 6はピストンリング 7はシリンダブロック 8はピストンスカート 9はコンロッド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F04C 15/00 F04C 15/00 D Fターム(参考) 3G024 AA21 FA04 FA06 GA16 HA01 3H040 CC14 CC16 DD36 3H044 CC12 CC14 DD23 4K029 AA02 BA07 BA17 BA34 BA64 BB02 BC02 BD03 BD04 CA05 EA01 4K030 AA10 BA06 BA18 BA28 BA61 BB12 BB13 CA02 FA01 LA01 LA23
Claims (6)
- 【請求項1】熱的機械的衝撃を受ける機械部品の表面に
硬質炭素膜を被覆した部材において、硬質炭素膜の上層
側に占める金属含有率が体積比率で30%以下であり、
硬質炭素膜の下層側すなわち基材側に占める金属含有率
が体積比率で50%以上となるように、金属含有率に傾
斜を持たせて硬質炭素膜内に金属を添加した層(金属傾
斜層)を、硬質炭素膜の下層に設けることを特徴とする
硬質炭素膜を被覆した機械部品。 - 【請求項2】金属傾斜層の添加金属と同じ金属を含む中
間層を、機械部品(基材)と硬質炭素膜の間に設けるこ
とを特徴とする請求項1に記載の硬質炭素膜を被覆した
機械部品。 - 【請求項3】チタンまたはクロムを添加金属としたこと
を特徴とする請求項1または2に記載の硬質炭素膜を被
覆した機械部品。 - 【請求項4】チタンまたはクロム等の中間層の厚みを
0.2〜2μmとし、チタンまたはクロム等の金属傾斜
層の厚みを0.5〜5μmとし、金属傾斜層以外の硬質
炭素膜の厚みを0.5〜5μmとすることを特徴とする
請求項1、2または3に記載の硬質炭素膜を被覆した機
械部品。 - 【請求項5】請求項1、2、3または4に記載の機械部
品が自動車用エンジン部品であり、それがシリンダー、
タペット、ピストン、プランジャー、パワーステアリン
グのベーンポンプまたは自動車用各種ベアリングに用い
られる部品であることを特徴とする硬質炭素膜を被覆し
た機械部品。 - 【請求項6】添加金属となるチタンまたはクロム等の金
属をスッパタリング法で堆積させながら、同時に、炭素
含有ガスをスッパタリング装置内のプラズマ内に導入す
ることにより、プラズマCVD法で硬質炭素の堆積を行
うことを特徴とする、請求項1、2、3、4または5に
記載の機械部品に被覆する硬質炭素膜の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31727299A JP2001107220A (ja) | 1999-09-30 | 1999-09-30 | 硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP31727299A JP2001107220A (ja) | 1999-09-30 | 1999-09-30 | 硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001107220A true JP2001107220A (ja) | 2001-04-17 |
Family
ID=18086393
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31727299A Pending JP2001107220A (ja) | 1999-09-30 | 1999-09-30 | 硬質炭素膜を被覆した機械部品及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2001107220A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP2010100878A (ja) * | 2008-10-22 | 2010-05-06 | Nachi Fujikoshi Corp | 実質的に水素を含有しない低クロム含有dlc膜および摺動部品 |
-
1999
- 1999-09-30 JP JP31727299A patent/JP2001107220A/ja active Pending
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