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JP2000149676A - 酸化物超電導撚線およびそれを用いたケーブル導体 - Google Patents

酸化物超電導撚線およびそれを用いたケーブル導体

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Publication number
JP2000149676A
JP2000149676A JP10318063A JP31806398A JP2000149676A JP 2000149676 A JP2000149676 A JP 2000149676A JP 10318063 A JP10318063 A JP 10318063A JP 31806398 A JP31806398 A JP 31806398A JP 2000149676 A JP2000149676 A JP 2000149676A
Authority
JP
Japan
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wire
layer
stranded
stranded wire
oxide superconducting
Prior art date
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Withdrawn
Application number
JP10318063A
Other languages
English (en)
Inventor
Jun Fujigami
純 藤上
Norihiro Saga
宣弘 嵯峨
Shiyuuji Mokura
修司 母倉
Kazuya Daimatsu
一也 大松
Hideo Ishii
英雄 石井
Yoshihiro Iwata
良浩 岩田
Shoichi Honjo
昇一 本庄
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Tokyo Electric Power Co Holdings Inc
Original Assignee
Tokyo Electric Power Co Inc
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokyo Electric Power Co Inc, Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Tokyo Electric Power Co Inc
Priority to JP10318063A priority Critical patent/JP2000149676A/ja
Publication of JP2000149676A publication Critical patent/JP2000149676A/ja
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Landscapes

  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 素線間が絶縁され、かつ高い臨界電流を示す
酸化物超電導撚線を提供する。 【解決手段】 酸化物超電導撚線170において、素線
160’は、酸化物超電導体のフィラメントと、それを
覆いかつ銀または銀合金からなるマトリックスと、マト
リックスを覆う酸化銅膜163’とからなる。酸化銅膜
の厚みは5μm以上である。銅めっきを施した線材を複
数本撚り合わせた後、得られた撚線を酸化して銅酸化膜
を生成させ、酸化物超電導材料の焼結に必要な温度まで
加熱する。このように焼結工程を経て得られた撚線は、
高い臨界電流を示すことができる。また銅酸化膜は、耐
熱性を有する絶縁コーティングとして機能する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物超電導体を
用いた撚線およびケーブル導体に関し、特に、酸化物超
電導体の焼結工程に適した電気絶縁材料を提供し、その
ような電気絶縁材料を用いて高い臨界電流を示す撚線、
ケーブル導体を提供するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導線材は、液体窒素温度で超
電導状態を示すことから、超電導ケーブルなどへの応用
が期待され、その開発が進められている。特に、ビスマ
ス系2223相酸化物超電導体が銀によって被覆された
線材は、長尺のものを容易に得ることができ、比較的高
い臨界電流密度(Jc)が得られることから、その研究
開発が進んでいる。
【0003】酸化物超電導線材を交流用途に使用すると
き、交流損失が問題となる。特に、電力ケーブルに応用
する場合、自己磁界損失が問題となる。自己磁界損失を
低減するためには、電力ケーブルを構成する素線を転位
させた構造が有効であることがわかっている。素線の転
位は、撚線によって可能になる。しかし、撚線プロセス
において素線に大きな曲げ歪みがかかるため、比較的脆
い酸化物超電導体を有する線材をその超電導特性を低減
させることなく撚り合わせることは、非常に困難であっ
た。また、撚線による顕著な効果を得るためには、素線
に電気的絶縁を施すことが重要になる。金属系超電導体
を用いた撚線においては、素線をエナメルで被覆するな
どの処置が講じられている。また、Nb3 Snを応用す
る分野においては、たとえば絶縁材料としてガラスが用
いられる。たとえば、ワインド・アンド・リアクト法に
よってNb3 Sn超電導体のコイルを製造する場合、ガ
ラスで被覆された線材がコイル状に巻かれ、熱処理され
る。
【0004】ケーブル導体に関しては、テープ形状のビ
スマス系銀シース超電導線をフォーマー上に多層で螺旋
巻した構造が一般的である。しかし、この構造では、電
流の偏流が生じやすい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の1つの目的
は、酸化物超電導線材を用いて、優れた超電導特性を有
する撚線およびケーブル導体を提供することにある。
【0006】本発明のもう1つの目的は、好ましい電気
絶縁材料を見いだし、それを用いて酸化物超電導撚線お
よび酸化物超電導ケーブル導体を提供することである。
【0007】本発明のさらなる目的は、優れた超電導特
性を有しかつ交流損失の低い酸化物超電導撚線および酸
化物超電導ケーブル導体を提供することである。
【0008】本発明のさらなる目的は、酸化物超電導ケ
ーブル導体において、交流損失の低い構造を提供するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明により、酸化物超
電導線が複数本撚り合わされた撚線が提供される。この
撚線において、酸化物超電導線は、酸化物超電導体から
なるフィラメントと、フィラメントを覆いかつ銀または
銀合金からなる安定化マトリックスと、安定化マトリッ
クスを覆いかつ非磁性金属の酸化物からなる層とを備え
る。非磁性金属の酸化物からなる層の厚みは5μm以上
である。
【0010】本発明において、非磁性金属は銅であるこ
とが好ましい。酸化物超電導線の断面は、円、楕円およ
び略正多角形からなる群より選択されるいずれかとする
ことができる。酸化物超電導線は、複数のフィラメント
を有する多芯線であることが好ましい。酸化物超電導体
はビスマス系酸化物超電導体とすることができる。
【0011】本発明により、上記撚線を複数本フォーマ
ー上に集合してなる酸化物超電導ケーブル導体が提供さ
れる。
【0012】このケーブル導体において、撚線はフォー
マー上に螺旋状に巻き付けることができる。
【0013】本発明により、複数本の撚線が複数層で前
記フォーマー上に螺旋状に巻付けられた酸化物超電導ケ
ーブル導体を提供することができる。この導体におい
て、複数層におけるm層目(mは1以上の整数)の撚線
の螺旋巻ピッチPmと、複数層におけるn層目(nは2
以上の整数で、m<n)の撚線の螺旋巻ピッチPnとの
間に、Pn≦Pmの関係が成立していることが好まし
い。また、ケーブル導体は、撚線が右巻に巻かれた層
と、撚線が左巻に巻かれた層とを有することができる。
右巻の層の数と、左巻の層の数とは等しくすることがで
きる。ケーブル導体において、複数層の層数を2とする
ことができる。
【0014】本発明によるケーブル導体において、撚線
内部の酸化物超電導体からなる複数のフィラメントの断
面は、アスペクト比2以上の略矩形または略楕円形であ
ることが好ましく、複数のフィラメント断面の長軸はフ
ォーマーの周方向に揃っていることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】酸化物超電導体、たとえばビスマ
ス系2223相酸化物超電導体が銀または銀合金等の安
定化金属で被覆された線材の製造において、たとえば約
850℃の高温において焼結が行なわれる。焼結体を有
する線材は、相対的に曲げ歪みに弱く、たとえば0.3
%を越えるような曲げ歪みにおいて臨界電流の劣化を生
じ得る。したがって、焼結工程を経て得られた複数の線
材を撚り合わせると、曲げ歪みによって焼結体の破壊が
起こり、それぞれの線材において臨界電流等の特性が劣
化することがある。本発明者は、撚線工程の後に焼結の
ための熱処理を行なうことで、撚線においても優れた超
電導特性を示す酸化物超電導体の焼結組織を得ようとし
た。
【0016】撚線の後焼結を行なう方法を採用した場
合、エナメルなどの従来用いられてきた有機化合物は5
00℃程度で分解してしまうため使用することができな
かった。本発明者は、酸化物超電導体の焼結温度に耐
え、線材に対する密着性および強度に優れる絶縁材料を
見い出すべく、研究を行なった。その結果、めっき等に
より非磁性金属で素線を覆った後、非磁性金属を酸化処
理すれば、酸化物超電導体の焼結温度に耐えることがで
き、しかも密着性および強度に優れた緻密な組織を有す
る電気絶縁性の酸化膜が得られることを見出した。さら
に、そのような酸化膜の厚みを5μm以上にすること
で、素線間の転流を効果的に防止できる高抵抗の皮膜が
得られることを見出した。
【0017】本発明において、非磁性金属はめっきによ
って素線に付与できる。このめっき層は、可撓性および
密着性に優れている。Ni、Crなどの磁性体は、大き
なヒステリシス損失をもたらすので、交流用ケーブルに
は適さない。したがって、銅、錫、鉛等の非磁性金属を
線材にめっきすることが好ましい。めっきは、硫酸銅
浴、ピロリン酸銅浴、非磁性金属のホウフッ化塩浴など
を用いる電気めっき等により施すことができる。5μm
以上の厚みの酸化膜を得るため、めっき層の厚みは5μ
m以上とすることが望ましい。本発明では、このめっき
層を酸化して、電気絶縁性の酸化被膜を形成することが
できる。このような方法によって形成される酸化皮膜
は、緻密であり、線材の長手方向に沿ってほぼ均一な厚
みを有することができる。
【0018】非磁性金属めっき層が形成された複数の線
材は、撚線を形成するため撚り合わせる。得られた撚線
は、非磁性金属を酸化物に転換するためたとえば酸化性
雰囲気下で加熱され、さらに酸化物超電導体を焼結する
ために熱処理される。焼結のための熱処理は、たとえ
ば、800℃〜900℃の温度、好ましくは840℃〜
850℃の温度で行なわれる。このように撚線を形成し
た後焼結を行なうことで、撚線時の歪みによる影響を減
殺し、高い臨界電流および臨界電流密度を示す撚線が得
られる。非磁性金属として銅を用いる場合、銅めっきを
施した線材を撚り合わせた後、酸化物超電導体を焼結す
る熱処理を行なう過程で、銅めっき層の表面または全体
を酸化銅に変えることができる。酸化銅の層は、好まし
い電気絶縁層として機能する。
【0019】本発明では、撚線における素線間の転流を
より効果的に防止するため、5μm以上の厚みの酸化皮
膜が素線上に設けられる。酸化皮膜の厚みが5μmを下
回ると、高い電圧下で素線間の電気絶縁性を維持できな
くなることがある。より高い電圧下で素線間の転流を防
止するため、酸化皮膜の厚みは10μm以上がより好ま
しい。酸化皮膜の厚みの範囲は、5〜100μmが好ま
しく、5〜30μmがより好ましい。
【0020】また、ビスマス系酸化物超電導材料、特に
ビスマス系2223相酸化物超電導材料を用いる線材
は、塑性加工および熱処理を複数回繰返すと、フィラメ
ントの緻密化が起こり、線材の臨界電流密度を増加させ
ることができる。したがって、フィラメントの緻密化の
ために塑性加工を線材に施した後、最終熱処理の前に非
磁性金属のめっきを施すことが好ましい。次いで、撚線
工程の後、焼結のための最終的な熱処理を行なうこと
で、さらに高い臨界電流密度を有しかつ素線同士が電気
的に絶縁された酸化物超電導撚線を得ることができる。
【0021】また、得られた撚線を、平角、扇形などの
形状に成形することで、パッキングファクタを大きくす
ることができ、よりコンパクトにすることができる。
【0022】さらに、撚線工程を繰返して二次以上の高
次撚線を得ることができる。これにより、より電流容量
の大きな撚線を得ることができる。また、撚り本数が増
えるほど、転位の効果が大きくなり、交流損失を大きく
低減することができる。その際、素線径は約1mmφ以
下、好ましくは0.5mmφ以下とすることが、コンパ
クトでかつ低損失な撚線を得る上で有利である。また本
発明によれば、撚線工程の後に焼結を行なうことができ
るため、撚りピッチを短くして、交流損失をさらに低減
することができる。
【0023】このようにして作製した超電導撚線を、円
筒状または螺旋状のフォーマーと呼ばれる芯材に複数本
集合して超電導ケーブル導体を製造することができる。
フォーマーは、たとえば銅、ステンレス、アルミニウ
ム、FRP(繊維強化プラスチック)等から形成でき
る。複数本の撚線は、1層または2層以上で、フォーマ
ー上に螺旋状に巻付けることができる。たとえば、円筒
形または螺旋形のフォーマーに、複数の撚線を1層で巻
付けた構造により、素線が完全に転位された超電導ケー
ブル導体を得ることができる。このような構造により、
交流電流を通電したときに発生する自己磁界損失は低減
される。また、超電導撚線をフォーマーにスパイラル状
に巻付けることは、良好な可撓性を有するケーブル導体
を得るという点からも望ましい。
【0024】得られたケーブル導体の端末部は、常電導
性の電流リードや他の超電導ケーブル導体に接続される
ため、次に示すような条件を満たす端末部を形成するこ
とができる。
【0025】(a) 端末部の絶縁材料が除去されてい
ること。 (b) 端末部の長さは、撚線の撚りピッチよりも長い
こと。好ましくは、端末部は撚りピッチの2倍以上であ
る。すなわち、端末部においても線材は撚られている状
態である。
【0026】(c) 端末部の接続抵抗は、導体部のイ
ンピーダンスに比べて小さいこと。数十m級以上の長尺
の導体の場合、相対的に端末部の影響は小さくなるが、
特に数m級以下の短尺の導体においては端末部の影響は
大きい。端末部での電流の乗移りが不均等になり交流損
失低減の効果が小さくなることを防止するため、上述し
た条件で端末部の処理を行なうことが必要である。
【0027】1層導体では、転位によりすべての素線の
位置を電磁気的にほぼ等価にすることができる。この場
合、導体内の電流分布が均一になり、偏流による交流損
失の増大を防ぐことができる。また、撚線を芯材上に螺
旋状に巻く場合、撚線を2層として、1層目と2層目の
巻く方向を逆にすることは、導体の長手方向の磁場成分
を相殺するため有効である。撚線を2層以上有する導体
の場合、層間のインピーダンスの違いによる、層間の偏
流とそれに伴なう交流損失の増大を防ぐか、または最小
限に抑えることが望ましい。
【0028】本発明において用いられる酸化物超電導体
には、ビスマス系酸化物超電導体、タリウム系酸化物超
電導体、水銀系酸化物超電導体、イットリウム系酸化物
超電導体等がある。特に、(Bi,Pb)2 Sr2 Ca
2 Cu3 10-X、Bi2 Sr 2 Ca2 Cu3 10-X等の
ビスマス系2223相酸化物超電導体を用いることが好
ましい。酸化物超電導体のための安定化マトリックスと
して、銀または銀合金が用いられる。銀合金としては、
Ag−Au合金、Ag−Mn合金、Ag−Al合金、A
g−Sb合金、Ag−Ti合金等を挙げることができ
る。ビスマス系酸化物超電導体の焼結体を生成させる場
合、熱処理は700℃〜900℃の範囲の温度で行なわ
れることが好ましく、特に撚線後の最終的な熱処理で
は、840℃〜850℃の温度が所定の時間保持される
ことが望ましい。焼結体を生成させるための熱処理は、
大気雰囲気等の酸化性雰囲気下で行なうことができる。
【0029】本発明に従って、複数本の撚線をフォーマ
ー上に多層に巻付けて、大容量の導体を得ることができ
る。図6に示すように、フォーマー60上に所定のピッ
チPで撚線62を螺旋状に巻付けて大容量の導体を構成
することができる。複数本の撚線を2層またはそれ以上
の層でフォーマー上に巻付けて、多層構造の導体が得ら
れる。たとえば、図7は、4層構造の導体を示してい
る。超電導ケーブル導体70において、円筒形のフォー
マー80上には、平角撚線90が4層で螺旋状に巻付け
られている。第1層71は、右巻であり、第2層72は
左巻、第3層73は右巻、第4層74は左巻である。本
発明では、このように巻方向を交互に変えることができ
るが、巻方向はそれに限定されるものではない。たとえ
ば、すべての層が同方向で巻かれていてもよいし、複数
の層毎に巻方向が変わっていてもよい。また、本発明に
おいて、層数は、その用途、規格等に応じて、任意の数
とすることができる。
【0030】本発明に従って撚線を螺旋状に複数の層で
フォーマー上に巻付けたケーブル導体において、フォー
マーから外側の層にいくほど撚線の螺旋ピッチが小さく
なることが好ましい。すなわち、m層目(mは1以上の
整数)の螺旋ピッチPmと、n層目(nは2以上の整数
で、m<n)の螺旋ピッチPnとの間に、Pn≦Pmの
関係が成立することが好ましい。そのような構造によっ
て、層間のインピーダンスの差を小さくすることができ
る。その結果、層内の偏流だけでなく、層間の偏流も抑
制することができ、大容量でかつ低損失のケーブル導体
が実現できるまた、多層構造の導体において、右巻の層
の数と、左巻の層の数とを一致させることにより、導体
中に発生する軸方向の磁界を、すべての層で撚線を同方
向に巻くよりも、低減することができる。このような構
造は導体のインピーダンスを小さくすることができる。
【0031】また、後述するような種々の解析により、
層数を増加させるに従って、電流の均一化を行なうため
に選択できるピッチの範囲が限定されてくることがわか
った。層数が2の場合、電流の均一化のために必要なピ
ッチ、導体の構造についてバリエーションは広く、フレ
キシブルな設計が可能であり、電流の均一化が最も容易
であることがわかった。
【0032】酸化物超電導体は高い異方性を有している
ため、大きな臨界電流密度を得るには、撚線の超電導フ
ィラメントにおいて超電導体結晶の板状組織が配向して
いることが好ましい。本発明においても、酸化物超電導
体からなる超電導フィラメントの断面の形が、アスペク
ト比2以上の略矩形または略楕円形であることが好まし
い。矩形の場合、アスペクト比は短辺に対する長辺の比
とすることができ、楕円形の場合、アスペクト比は、短
軸に対する長軸の比とすることができる。図8に、安定
化マトリックス中に埋込まれた超電導フィラメントの具
体例を示している。図8(a)に示すように、撚線の安
定化マトリックス83中に埋込まれた超電導フィラメン
ト81の断面は、略矩形である。フィラメント81のア
スペクト比は、w/tとして求めることができる。図8
(b)に示すように、撚線の安定化マトリックス83中
に埋込まれた超電導フィラメント82の断面は、略楕円
形である。フィラメント82のアスペクト比は、b/a
として求めることができる。長手方向に垂直な断面がこ
のような矩形または楕円形の超電導フィラメントは、た
とえば、撚線のための素線を製造するプロセスにおける
圧延加工等の塑性加工、または撚線の平角成形加工等に
よって得ることができる。このような加工の際の圧縮力
によって板状の超電導組織を配向させることができる。
【0033】略矩形または略楕円形の超電導フィラメン
トは、磁場に対して高い異方性を有する。たとえば図8
に示すような矢印の方向、すなわち超電導フィラメント
断面の長軸に平行な方向に、磁場が印加される場合、比
較的良好な臨界電流密度(Jc)−磁界(B)特性が得
られる。この性質を、超電導ケーブル導体に生かすこと
ができる。フォーマー上に線材を集合させた構造を有す
る超電導ケーブル導体において、通電時に発生する磁界
の成分は、周方向のものが主である。そこで、超電導フ
ィラメント断面が矩形または楕円形である場合、フィラ
メント断面の長軸が、周方向(フォーマーの周方向)に
略平行に揃っていることが好ましい。フォーマー上に巻
付けられる撚線において、すべてのフィラメント断面の
長軸が周方向に揃っていることが好ましいが、たとえ
ば、撚線におけるすべてのフィラメントのうち、主要な
(たとえば半分以上の)フィラメントの断面の長軸が周
方向に揃っておれば、好ましい臨界電流密度−磁界特性
が得られる。撚線においてフィラメント断面の長軸が揃
っている場合と、揃っていない場合とをそれぞれ図9お
よび図10に示す。図9に示すように、フォーマー10
0上に巻付けられた撚線102において、複数の素線間
で、複数のフィラメント断面104の長軸は、フォーマ
ー100の周方向(矢印の方向)に略平行に揃ってい
る。一方、図10に示されるフォーマー100上に巻か
れた撚線112においては、複数のフィラメント断面1
14の長軸の方向は、素線間で異なる方向を向いてい
る。このようにフィラメントの方向が揃った撚線は、撚
り時の素線にかかる後方張力の調整と撚り返し率の調
整、撚線成形時の圧縮力の制御等によってもたらすこと
ができる。撚り返し率の調整においては、素線サプライ
ボビンの回転数の制御、たとえば1ピッチ巻付ける際に
ボビンを1回転させる撚り返しの調整によって、素線の
方向を揃え、それによってフィラメントの方向を揃える
ことができる。また、たとえば撚線を適当な圧縮力で平
角成形することによって、内部のフィラメント断面の長
軸が圧縮力の方向に対してほぼ垂直に向いた撚線を得る
ことができる。
【0034】本発明において、たとえばパウダー・イン
・チューブ法を用いて製造した線材を用いることができ
る。本発明に従って撚線を得るためには、特に断面形状
が円形または略回転対称の多角形である線材(素線)を
用いることが好ましい。略回転対称の多角形は、略正多
角形が好ましく、さらに六角形以上の略正多角形が好ま
しい。そのような断面を有する線材において、酸化物超
電導材料からなるフィラメントの形状は、線材の長手方
向に延びるリボン形状であることがより好ましい。たと
えば、酸化物超電導材料からなりリボン形状で線材の長
手方向に延びる複数のフィラメント部と、複数のフィラ
メント部を覆う安定化マトリックスとを備える線材を好
ましく用いることができる。この線材において、リボン
形状のフィラメントのアスペクト比、すなわちフィラメ
ントの厚みに対する幅の比は、4〜40の範囲、好まし
くは4〜20の範囲、より好ましくは5〜20の範囲と
することができる。このようなアスペクト比のフィラメ
ントを形成することにより、結晶粒のc軸を十分に配向
させ、高い臨界電流密度を有する線材をもたらすことが
できる。また、フィラメントの厚みは1μm〜50μm
の範囲、好ましくは1μm〜10μmの範囲とすること
ができる。4〜40のアスペクト比および5〜50μm
の厚みを有するフィラメントにおいて、超電導相を構成
する結晶粒のc軸を、線材の長手方向と略垂直に配向さ
せることができる。このような範囲の数値を有するフィ
ラメントは、断面が円形または略回転対称である多角形
の線材においても、十分な密度を有し、高い臨界電流密
度を有することができる。なお、回転対称の多角形に対
し、対称軸についての回転角度が90°以下のものすな
わち4回軸以上のものがより好ましい。断面が円形また
は多角形であり、リボン形状のフィラメントを有する線
材は、たとえば次のようにしてパウダー・イン・チュー
ブ法を用いて製造することができる。まず、超電導体を
構成する元素の酸化物または炭酸塩の粉末を所定の配合
比で混合し、焼結した後、得られる焼結物を粉砕する。
焼結および粉砕は複数回行なうことが好ましい。得られ
た粉末を、銀または銀合金からなるチューブに充填す
る。粉末が充填されたチューブには、塑性加工が施され
る。塑性加工には、伸線加工、圧延加工、プレス加工等
が用いられる。粉末が充填されたチューブに、たとえば
伸線加工および圧延加工を施し、テープ状線材を得る。
得られたテープ状線材において、原料粉末からなる部分
は、4〜40、好ましくは4〜20のアスペクト比を有
するリボン形状である。テープ状線材は、単芯、多芯の
いずれでもよい。得られたテープ状線材は、通常、切断
され、複数本の線材とされる。得られた複数のテープ状
線材を、次いで銀または銀合金からなるチューブに充填
する。充填では、たとえば、断面形状が正多角形である
角柱体の安定化材を準備し、その側面にテープ状線材を
積み重ね、それらをチューブに充填することができる。
テープ状線材は、角柱体の安定化材の各側面に1層また
は2層以上積み重ねることができる。また、安定化材か
らなるシートを準備し、その上にテープ状線材を複数本
平行に配置し、それらを円柱体の安定化材に巻付け、シ
ートとともに円柱体の安定化材に巻付けられたテープ状
線材を円筒形のチューブに充填することもできる。さら
に、複数のテープ状線材を積層した集合体をまずチュー
ブに充填し、次いで、隙間に集合体とは異なる方向にさ
らにテープ状線材を充填し、高い充填密度でチューブに
線材を充填することもできる。テープ状線材が充填され
たチューブに、塑性加工を施し、断面が略円形または略
回転対称である多角形の線材を得る。塑性加工には、主
として伸線加工を用いることができる。また伸線加工に
は、駆動式ロールダイスを用いることができる。得られ
た線材は、本発明に従って非磁性金属のめっき工程に供
することができる。一方、得られた線材に超電導材料の
緻密化のための塑性加工を施すか、焼結のための熱処理
および緻密化のための塑性加工を施した後、非磁性金属
のめっき工程に供してもよい。以下、実施例により本発
明をより詳細に説明する。
【0035】
【実施例】実施例1 Bi2 3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 およびC
uOの粉末を、Bi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.
8:0.4:2:2:3の組成比となるよう混合した。
得られた混合物に対し、仮焼結のための熱処理および粉
砕を3回繰返し、酸化物超電導体の前駆体である粉末を
得た。得られた粉末を、外径15mm、内径13mmの
銀パイプに充填した。粉末が充填された銀パイプを、
1.02mmφまで伸線し、次いで0.2mmの厚さま
で圧延して、テープ線材を得た。得られたテープ状線材
を外径12mm、内径10mmの銀パイプに、図1に示
すような配置で充填した。図1に示すように、銀パイプ
1内には、中央部に単芯のテープ線2が15枚重ねて充
填され、その両側に、それぞれ単芯のテープ線2が3枚
ずつ重ねて充填されている。両側のテープ線2は、中央
のテープ線2に対してほぼ垂直に配置される。このよう
にして21本のテープ線を充填した銀パイプを、伸線加
工して直径が1.15mmφの丸線を得た。得られた丸
線を850℃で焼結した後、伸線して直径1.02mm
φの丸線を得た。
【0036】得られた丸線の表面に、約1μm、約5μ
m、約10μmおよび約20μmの厚みでそれぞれ銅を
メッキした。メッキには、硫酸銅水溶液を用いた。丸線
および銅板を硫酸銅水溶液に浸漬し、丸線を陰極、銅板
を陽極として電気メッキを行なった。電気メッキ溶液
は、硫酸銅水和物220g/l、硫酸60g/lおよび
3%塩酸2ml/lを含有するものであった。電気メッ
キのための電流値は1Aであり、電極間距離は3cmで
あった。
【0037】このようにしてメッキが終わった後の線材
の断面構造を図2に示す。円形の断面を有する被覆線材
160において、酸化物超電導材料のフィラメント部1
61は、銀の安定化マトリックス162中に層状に配置
されている。フィラメント部161の厚みの方向は、線
材160の断面における半径の方向に対して、ほぼ垂直
である。フィラメント部161は、リボン形状を有す
る。マトリックス162の周囲には、銅メッキ層163
が設けられている。
【0038】それぞれの厚みについて、銅でメッキされ
た丸線を3本づつ調製し、それらを撚り合わせて1次撚
線を調製した。得られた撚線を大気雰囲気下で400℃
において1時間、加熱した。この加熱により、メッキさ
れた銅は酸化銅に変換された。次いで、丸線を焼結のた
めの炉に移し、840℃で50時間、熱処理を行なっ
た。得られた撚線の断面構造を図3に示す。1次撚線1
70は、3本の素線160’からなる。これら素線16
0’の導電部分は、酸化銅膜163’で覆われている。
焼結された撚線について、臨界電流(Ic)および絶縁
抵抗を測定した。Icは、液体窒素中で測定し、1μV
/cmに対する値として規定した。絶縁抵抗の測定にお
いて、撚線に250Vの電圧を印加し、1つの素線の酸
化皮膜を除去した部分に設けた端子と酸化皮膜上に設け
た端子との間の電気抵抗を測定した。これらの端子の間
の距離は2cmであった。結果を表1に示す。表に示す
ように、素線の酸化銅膜の厚みが5μm以上のとき、安
定して50kΩレベルの抵抗が得られるようになった。
このレベルの抵抗値を有する酸化銅膜は、素線間の転流
を防止する機能を十分に果たし得る。
【0039】
【表1】
【0040】実施例2 実施例1で得られた1次撚線を5本撚り合わせて2次撚
線を調製した。1対の2次撚線を作製し、成型ロールに
通すことによって、一方をその断面が平角になるよう成
形し、他方をその断面が扇形になるよう成形した。2種
類の成形された2次撚線を850℃で50時間、焼結の
ため加熱した。平角2次撚線のIcは25Aであり、扇
形2次撚線のIcは25Aであった。
【0041】得られた2種類の撚線の構造を図4(a)
および(b)に示す。2次撚線180aは、5本の1次
撚線170aからなり、その断面は平角状に成形されて
いる。2次撚線180bは、5本の1次撚線170bか
らなり、その断面は扇形に成形されている。
【0042】実施例3 実施例2で得られた2種類の成形2次撚線をそれぞれ、
直径20mmの円筒形のFRP製フォーマに螺旋状に1
層で巻き付けて、ケーブル導体を作製した。各導体にお
いて、巻きピッチは200mmであり、巻かれる撚線の
本数は、平角撚線の場合5本であり、扇形撚線の場合6
本であった。平角撚線を用いて得られたケーブル導体の
Icは100Aであり、扇形撚線を用いて得られたケー
ブル導体のIcは120Aであった。ケーブル導体にお
いて、扇形撚線を使用した方が、充填率を高くすること
ができ、Icも高くすることができた。
【0043】得られた2種類の導体構造の一部を図5
(a)および(b)に示す。ケーブル導体190aで
は、フォーマ191上に平角2次撚線180aが1層で
配置されている。ケーブル導体190bでは、フォーマ
191上に扇形2次撚線180bが1層で配置されてい
る。
【0044】本発明に従って得られる平角撚線のさらな
る例を、図11に示す。平角撚線110は、6本の素線
によって構成される。各素線の断面は、撚線の成形時
に、平たくつぶされている。
【0045】実施例4 実施例1および2で製作した撚線を、フォーマー上にス
パイラル巻した導体について検討を行なった。直径φ1
8mmの円筒状のフォーマー上へ、撚線を多層でスパイ
ラル巻した場合の、交流電流の分布を解析した。
【0046】解析の手順は以下のとおりである。 (1) 多層構造のケーブル導体をモデル化し、各層の
インピーダンスを導出する。
【0047】(2) 導出結果をもとに回路方程式を立
てる。 (3) 各層の電流が均等となる条件で方程式を解き、
電流の均等化に必要なピッチを求める。
【0048】まず、端末のインピーダンスが無視できる
ほど導体が十分長い場合、N層導体は、図12のように
モデル化できる。図中、Nは層の総数、nおよびmは、
それぞれフォーマーから数えた層の順序数を示す。in
およびRnは、第n層に流れる電流および抵抗成分をそ
れぞれ表わし、n=0はフォーマーに相当する。
【0049】第n層(n≠0)は、図13に示すよう
に、スパイラル巻した撚線で構成されている。巻付け角
をθnとすれば、第n層の通電電流inは、周方向の電
流成分in・sinθnと、軸方向の電流成分in・c
osθnに分解できる。このときの周方向磁場φcによ
るインダクタンスをLc(n,m)と定義し、軸方向磁
場φaによるインダクタンスをLa(n,m)と定義す
る。ここで、n=mのときは、第n層の自己インダクタ
ンスを表わし、n≠mのときは、n層−m層間の相互イ
ンダクタンスを表わす。
【0050】長さλのN層導体における第n層のインダ
クタンスLc(n,m)およびLa(n,m)は、それ
ぞれ(1)式および(2)式のように表わせる。また、
式中で用いる導体パラメータを表2にまとめる。(2)
式において、La>0は、m層とn層が同方向巻の場合
に対応し、La<0は、m層とn層が逆方向巻の場合に
対応している。
【0051】
【数1】
【0052】
【表2】
【0053】導体の各層において、撚線はピッチpn、
巻付け角θnで、複数本スパイラル巻されており、層の
厚さは導体径と比較して十分小さい。また、最外層とし
てシールド層が設けられる。
【0054】電源からの供給電流をI(I=Σin)と
し、導体の発生電圧をVとすれば、表3の諸元を有する
多層導体において、(3)式が成立する。
【0055】
【数2】
【0056】ここで以下の仮定を行なった。
【0057】(1) 超電導層の抵抗成分は十分小さ
い。 (2) フォーマーのインピーダンスは超電導層のイン
ピーダンスと比較して十分大きい。
【0058】以下、(1)および(2)を前提にして各
層の電流が均一となる条件を(3)式をもとに計算し
た。まず、(3)式をもとにして、2層導体について各
層の電流を均一にするための巻ピッチ条件を求めた。そ
の結果、1層目と2層目のピッチを同じにすると、1層
目と2層目に流れる電流を完全には均一にすることがで
きないことがわかった。次に、ピッチを調整すること
で、各層の電流を均一化することを考えた。この場合、
次に示す(4)式が成立する。
【0059】
【数3】
【0060】解析は、表4に示す諸元の導体について行
なった。
【0061】
【表3】
【0062】表3に示すNo.1の導体について計算を
行なった結果、1層目のピッチを100mm以上100
0mm以下に設定した場合には、すべての領域で2層目
のピッチを解析的に解くことができた。たとえば、1層
目のピッチを200mmにすると、電流の均一化のため
に必要な2層目のピッチは110mmとなった。また、
いずれの場合にも、電流の均一化のために必要な2層目
のピッチは、1層目よりも小さくなることがわかった。
【0063】表3に示すNo.2の導体に関して計算を
行なった結果、1層目のピッチを100mm以上100
0mm以下に設定した場合には、すべての領域で2層目
のピッチを解析的に解くことができた。たとえば1層目
のピッチを200mmとすると、電流の均一化のために
必要な2層目のピッチは100mmとなった。また、い
ずれの場合にも、電流の均一化のために必要な2層目の
ピッチは1層目よりも小さくなることがわかった。
【0064】但し、No.1の導体とNo.2の導体に
関して、インピーダンスの総和を比較すると、常にN
o.1の方がインピーダンスが小さくなる結果を得た。
これは、交互巻の場合には、軸方向の相互インダクタン
スが負になり、同方向に巻かれた場合にはそれが正の値
になることに起因している。この結果より、多層構造の
撚線導体の巻方向は、左巻の層数と左巻の層数とを等し
くさせることが有利であるという結論に至った。
【0065】表3に示すNo.3の導体に関して計算を
行なった結果、1層目のピッチを100mm以上100
0mm以下に設定した場合には、各層の電流を完全に均
一化するためのピッチは、1層目のピッチを400mm
以上と設定すると解析的に解くことができなかった。
【0066】また、表3に示すNo.4の導体に関して
は、1層目のピッチを100mm以上1000mm以下
に設定すると、すべての領域で、各層の電流を完全に均
一化するためのピッチを解析的に解くことができなかっ
た。このように、層数を増やすに従って、電流均一化の
バリエーションは狭くなっていった。最もフレキシブル
な設計が可能になるのは2層導体であることがわかっ
た。
【0067】図14に、本発明に従う2層導体の構造を
模式的に示す。円筒状のフォーマー120上には、撚線
122が2層で螺旋状に巻付けられている。ここに示す
導体では、1層目の巻方向と、2層目の巻方向が互いに
逆である。また、2層目の巻ピッチは、1層目の巻ピッ
チよりも短くなっている。図15に示す2層導体では、
フォーマー150上に巻付けられた撚線152の巻方向
は、1層目と2層目とで同じである。2層目の巻ピッチ
は、1層目の巻ピッチよりも短くなっている。これらの
導体には、さらにシールド層を設けることができる。シ
ールド層には、シールド電流を流すために、超電導線を
用いてもよいし、銅パイプ等を用いてもよい。
【0068】実施例5 実施例1と同様にして直径1.02mmの丸線に約20
μmの厚みの銅をメッキした。銅メッキされた6本の丸
線を銀線の周りに撚り合わせて1次撚線を得た。得られ
た撚線を大気雰囲気下、400℃で1時間加熱し、約2
0μmの厚みの酸化銅膜を生成させた。次いで、焼結の
ため撚線を850℃で50時間、加熱した。このように
して、焼結された1次撚線を4本調製し、それらを撚り
合わせて2次撚線を得た。得られた2次撚線を成形し
て、幅8mm、厚み3mmの平角撚線にし、焼結のため
850℃で50時間、加熱した。このようにして得られ
た複数本の平角2次撚線を用いて、表3中の諸元を有
する長さ1.5mの2層導体を作製した。得られた導体
について、撚線の端末の酸化銅膜を除去して、そこに銅
製の端子を半田付けした後、端末部に取付けたロゴスキ
ーコイルによって各層に流れる電流を測定した。その結
果、第1層と第2層にほぼ等しい電流が流れることを確
認した。
【0069】実施例6 実施例1と同様の工程で粉末を銀パイプに充填し、伸線
加工および圧延加工を経てテープ線材を得た。得られた
テープ状線材を、外径12mm、内径10mmの銀パイ
プに充填した。銀パイプの中央部に、実施例1と同様に
してテープ線材を15本重ねて充填した。その両側の隙
間には、粉末が充填されたテープ線材の代わりに銀テー
プを充填した。充填された銀パイプを、φ1.02mm
まで伸線加工し、次いで850℃、50時間熱処理し
た。次いで、φ0.9mmまで伸線加工を行ない、得ら
れた丸線に実施例1と同様の手順で厚さ約20μmの銅
めっきを施した。次いで、線材を適当な長さに切断し、
丸線6本を撚り合わせ、その直後に成形ロール中を通過
させることによって、平角形状に成形した。得られた平
角撚線のサイズは、幅4mm、厚さ1.5mmであっ
た。上記撚線工程において線材サプライ部の回転数の調
整を行なったものと、そのような調整を全く行なわなか
ったものの2種類の撚線を作製した。該調整では、1ピ
ッチ巻付ける際にボビンを1回転させる撚り返しの調整
を行なった。回転数の調整によって、成形後に得られた
撚線における超電導フィラメント断面の長軸方向は、ほ
ぼ同一の方向に揃っていた。次いで、実施例1と同様に
酸化銅膜を生成させ、焼結を行なった。このような撚線
をフォーマー上に巻付けることによって、フィラメント
断面の長軸方向が、フォーマーの周方向に揃ったケーブ
ル導体(タイプ1)が得られた。一方、撚線時に回転数
の調整を行なわなかった場合、超電導フィラメント断面
の長軸方向は、ほぼランダムであった。このような撚線
をフォーマー上に巻付けることによって、フィラメント
断面の長軸方向がフォーマーの周方向に対してほぼラン
ダムである導体(タイプ2)が得られた。それぞれの撚
線をφ18mmのフォーマー上に集合し1層導体を作製
した。導体のIcは、タイプ1の場合で120A、タイ
プ2の場合で100Aであった。導体に使用した各撚線
から、長さ5cmのサンプルを切出して、液体窒素中で
のJc−B特性を調査した。その結果、100ガウスの
磁場を平角撚線の主要面に平行に印加した場合、タイプ
1で使用した撚線のJcは、磁場無印加の場合と比較し
てほとんど低下しなかったのに対し、タイプ2で使用し
た撚線は、磁場によって約50%Icが低下した。得ら
れた2種類の1層導体のIc間には、大きな相違は見ら
れなかった。しかしながら、上記Jc−B特性の結果か
ら、大容量化を進めて通電時の自己磁界が大きくなる場
合、タイプ1の構造の方が、自己磁界によるIcの低下
が小さいという点で有利であることがわかった。
【0070】
【発明の効果】以上示してきたように、本発明により、
耐熱性、密着性および強度に優れた絶縁コーティング層
を有する酸化物超電導撚線を提供することができる。本
発明に従って得られる撚線は、焼結工程後も素線間の電
気的絶縁が十分に保証されている。焼結工程後に得られ
る本発明の撚線は、高い臨界電流を有し、交流損失の小
さいものである。この撚線をフォーマー上に集合させる
ことによって、交流損失が小さくかつ大容量の電流を流
すことができるケーブル導体を作製することができる。
また本発明は、多層構造のケーブル導体において、交流
損失が低減された構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる線材を製造するため、銀パイプ
中にテープ線材が充填された様子を示す概略断面図であ
る。
【図2】銅めっきが施された丸線の構造を模式的に示す
断面図である。
【図3】実施例1において作製された1次撚線の構造を
模式的に示す断面図である。
【図4】実施例2において作製された2次撚線の構造を
模式的に示す断面図である。
【図5】実施例3において作製されたケーブル導体の構
造を模式的に示す断面図である。
【図6】ケーブル導体において、撚線が螺旋状に巻付け
られる様子を示す斜視図である。
【図7】本発明による多層構造のケーブル導体の一例を
概略的に示す(a)斜視図および(b)断面図である。
【図8】安定化マトリックスに覆われた超電導フィラメ
ントの形状を示す模式図である。
【図9】超電導ケーブル導体において、フォーマー上に
巻付けられた撚線の超電導フィラメントがフォーマーの
周方向に揃っている様子を示す模式図である。
【図10】超電導ケーブル導体において、フォーマー上
に巻付けられた撚線における超電導フィラメントの方向
が、それほど揃っていない様子を示す模式図である。
【図11】本発明による撚線の一具体例を示す概略斜視
図である。
【図12】N層導体の回路モデルを示す図である。
【図13】ケーブル導体における磁場方向および電流方
向のモデルを示す模式図である。
【図14】本発明による2層導体の一具体例を示す概略
斜視図である。
【図15】本発明による2層導体のもう1つの例を示す
概略斜視図である。
【符号の説明】
160 被覆線材 161 フィラメント部 162 安定化マトリックス 163 銅めっき層 170 1次撚線 160’ 丸線 163’ 酸化銅膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 嵯峨 宣弘 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 母倉 修司 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 大松 一也 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 石井 英雄 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 岩田 良浩 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 本庄 昇一 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4番1号 東京電力株式会社電力技術研究所内 Fターム(参考) 5G321 AA06 BA01 CA09 CA16 CA32 CA36 CA42 CA48 DB18

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物超電導線が複数本撚り合わされた
    撚線であって、 前記酸化物超電導線が、 酸化物超電導体からなるフィラメントと、 前記フィラメントを覆いかつ銀または銀合金からなる安
    定化マトリックスと、 前記安定化マトリックスを覆いかつ非磁性金属の酸化物
    からなる層とを備え、 前記非磁性金属の酸化物からなる層の厚みが5μm以上
    であることを特徴とする、酸化物超電導撚線。
  2. 【請求項2】 前記非磁性金属が銅であることを特徴と
    する、請求項1に記載の酸化物超電導撚線。
  3. 【請求項3】 前記酸化物超電導線の断面が、円、楕円
    および略正多角形からなる群より選択されるいずれかで
    あり、かつ前記酸化物超電導線は、複数の前記フィラメ
    ントを有する多芯線であることを特徴とする、請求項1
    または2に記載の酸化物超電導撚線。
  4. 【請求項4】 前記酸化物超電導体がビスマス系酸化物
    超電導体であることを特徴とする、請求項1〜3に記載
    の酸化物超電導撚線。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撚
    線を複数本フォーマー上に集合してなることを特徴とす
    る、酸化物超電導ケーブル導体。
  6. 【請求項6】 前記撚線が、前記フォーマー上に螺旋状
    に巻き付けられていることを特徴とする、請求項5に記
    載の酸化物超電導ケーブル導体。
  7. 【請求項7】 前記複数本の撚線が、複数層で前記フォ
    ーマー上に螺旋状に巻付けられていることを特徴とす
    る、請求項6に記載の酸化物超電導ケーブル導体。
  8. 【請求項8】 前記複数層におけるm層目(mは1以上
    の整数)の前記撚線の螺旋巻ピッチPmと、前記複数層
    におけるn層目(nは2以上の整数で、m<n)の前記
    撚線の螺旋巻ピッチPnとの間に、Pn≦Pmの関係が
    成立していることを特徴とする、請求項7に記載の酸化
    物超電導ケーブル導体。
  9. 【請求項9】 前記撚線が右巻に巻かれた層と、前記撚
    線が左巻に巻かれた層とを有し、 前記右巻の層の数と、前記左巻の層の数とが等しいこと
    を特徴とする、請求項7または8に記載の酸化物超電導
    ケーブル導体。
  10. 【請求項10】 前記複数層の層数が2であることを特
    徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の酸化物
    超電導ケーブル導体。
  11. 【請求項11】 前記撚線内部の前記酸化物超電導体か
    らなる複数のフィラメントの断面が、アスペクト比2以
    上の略矩形または略楕円形であり、 前記撚線において、前記複数のフィラメント断面の長軸
    が前記フォーマーの周方向に揃っていることを特徴とす
    る、請求項5〜10のいずれか1項に記載の酸化物超電
    導ケーブル導体。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001256841A (ja) * 2000-03-14 2001-09-21 Toshiba Corp 超電導ケーブルおよび同ケーブルを用いたマグネット
JP2007080780A (ja) * 2005-09-16 2007-03-29 Sumitomo Electric Ind Ltd 超電導線材の製造方法および超電導機器
JP2019122974A (ja) * 2018-01-15 2019-07-25 日立金属株式会社 エナメル線用導体の製造方法及び製造装置並びにエナメル線の製造方法及び製造装置

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