30年前のあの日から、母は行方不明 捜索中に初めて知った姉の存在
毎日新聞
2025/1/14 15:00(最終更新 1/14 15:00)
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「今年もこの日が来ましたね。お変わりないですか」。兵庫県加古川市の介護士、佐藤悦子さん(61)の元には毎年1月17日に1通のメールが届く。群馬県で暮らす「姉」からだ。初めて出会ったのは30年前。行方不明の母を捜すさなかだった。
阪神大震災が起きたとき、佐藤さんは加古川で娘2人と暮らしていた。翌朝、神戸市須磨区のアパートが倒壊し、火災に見舞われたことを知った。母正子さん(震災当時65歳)が1人住まいをしていた。
3日後から現地で6回、焼け跡のがれきの中から正子さんを捜した。自衛隊員らが捜索してくれたが、母が愛用していた手巻きの腕時計や可愛がっていた白い猫の亡きがらしか見つからない。「どこに行ってしまったんだろう」
佐藤さんはこのアパートで両親や兄と育った。正子さんは生花店や清掃の仕事で朝から晩まで働いていた。おっとりした性格で、怒ることはほとんどなかった。時々、父と夜中に言い争う声が聞こえた。両親の不仲を不思議に思いながら、高校を卒業すると家を出た。
震災3日前「お土産取りにおいで」
最後の会話は震災の3日ほど前。「京都に行ったから、お土産を取りにおいで」。電話口でそう言っていた。お土産は何だったのだろう。震災前年、佐藤さん宅で同居する話もあった。本人が嫌がり進まなかった。「無理にでもうちに引き取っていれば」と後悔した。
捜索が続く間、避難所を回って情報提供を呼び掛けるちらしを配り、親族にも情報がないか尋ねて回っ…
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