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西鉄特急

西日本鉄道が運行する特急

西鉄特急(にしてつとっきゅう)は、西日本鉄道(西鉄)が天神大牟田線で運行している特急列車の通称。

西鉄特急
「水都」塗装の3000形 (大橋 - 井尻間 那珂川橋りょう)
「水都」塗装の3000形
(大橋 - 井尻間 那珂川橋りょう)
概要
日本の旗 日本
種類 特別急行列車
現況 運行中
地域 福岡県
運行開始 1959年5月1日
運営者 西日本鉄道
路線
起点 西鉄福岡(天神)駅
停車地点数 11駅(起終点駅含む)
終点 大牟田駅
営業距離 74.8 km (46.5 mi)(西鉄福岡(天神) - 大牟田間)
平均所要時間 1時間2分
運行間隔 2本/1時間(土休日の日中)
使用路線 西鉄天神大牟田線
車内サービス
クラス 普通車
座席 普通車自由席
娯楽 水都編成は記念カード、スタンプ、展示などがある
技術
車両 3000形電車
9000形電車ほか
軌間 1,435 mm
電化 直流1,500 V
最高速度 110 km/h
線路所有者 西日本鉄道
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本項では西鉄特急の歴史と概況などについて記述する。

概要

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電車特急としては九州でもっとも歴史が古い。福岡市春日市筑紫野市久留米市柳川市大牟田市福岡県西・南部の主要6都市を結んでいる。特別料金を徴収しておらず、西鉄天神大牟田線の看板的存在である。

西鉄天神大牟田線と並行する鹿児島本線JR九州)とは、旧日本国有鉄道(国鉄)時代から国鉄分割民営化を経て現在に至るまで競合関係にある。鹿児島本線が主に長距離輸送を担ってきた中、西鉄は福岡県内での都市間輸送において優位性を保ってきた。1983年のスピードアップの際には博多駅 - 大牟田駅を走る国鉄の特急列車「有明」よりも所要時間が短くなった[1] が、1986年国鉄ダイヤ改正で「有明」がスピードアップし、再び所要時間が逆転し、これ以降は運賃の安さで対抗することとなった。ただし、2011年九州新幹線全線開業により、「有明」を含めた鹿児島本線の特急列車が、深夜の下り及び朝夕の通勤時間帯を除いて全廃された。更に2018年のダイヤ改正で博多駅方面から荒尾駅まで直通運転する快速列車が大幅に削減されたため、所要時間・運賃の両面で西鉄特急が優位に立っている状況である。

運行概況

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全列車が福岡(天神) - 大牟田間の通し運転となっており、区間運転はない。区間運転の場合、特急と停車駅が同じ[2] であっても下位種別を設けて運転されている[3]

新型コロナウイルス感染症の世界的流行による利用者減のため、2021年3月13日から2024年3月15日までの3年間、平日は朝・夕・夜間帯のみの運行となり、平日の日中は特急の代わりに福岡(天神) - 大牟田間を通し運転する急行が運行されていた(土日祝日は終日運行を継続)[4]。平日・土日祝日とも概ね30分間隔で運行し、福岡(天神)駅を毎時00・30分に発車するダイヤが組まれている。

停車駅

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※は後から加えられた停車駅。 西鉄福岡(天神)駅 - ※薬院駅 - ※大橋駅 - ※春日原駅 - 西鉄二日市駅 - 西鉄久留米駅 - ※花畑駅 - ※大善寺駅 - 西鉄柳川駅 - 新栄町駅 - 大牟田駅

停車駅が増えた背景としては、拠点駅の混雑緩和・乗り換え対応がある。

  • 薬院駅は、博多方面への路線バスおよび福岡市地下鉄七隈線への乗り換え駅としての役目があるが、西鉄福岡(天神)駅の工事によりホームが狭くなることから乗客の降車の分散の必要があったからである。
  • 大善寺駅は、単線区間の多い久留米以南の運行形態見直し過程で、柳川方面への普通電車接続や久留米市南西部方面へ向かうバスへの乗換などを目的として停車駅に加えられた(前身の急行が停車していたため、事実上の停車駅復活である)。大善寺 - 大牟田間は、日中30分間に特急・普通各1本ずつが基本パターンとなっている。
  • 花畑駅は、西鉄久留米駅への一極集中を緩和するために、周辺の土地区画整理事業に合わせて停車駅に加えられた。その後、周辺の住所表記が「西町」だったものが「花畑」に変更された。
  • 大橋駅は、九州大学大橋キャンパスなどの学校が多数存在する文教地区であることと、福岡市南部や那珂川方面へ向かうバスへの乗換に対応するためである。従来は遠近分離による特急混雑の緩和と速達性維持の観点から利用者数が多くても特急通過駅となっていたが、2017年のダイヤ改正で停車駅に加えられた。
  • 春日原駅は、路線バスとの接続など交通結節点としての機能を有しており、春日・大野城両市の拠点駅と位置づけられているためである。2024年のダイヤ改正で停車駅に加えられた[5]

臨時停車駅

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この他毎年2月に久留米市城島町で開催される城島酒蔵びらきに併せて三潴駅に一部の列車が臨時停車する。

歴史

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西鉄の前身の九州鉄道では1939年7月1日に福岡 - 大牟田間を全通させた後、同年11月1日から福岡 - 久留米間を38分、福岡 - 大牟田間を78分で走行する急行の運行を開始した。この急行は戦時中に一時休止され、戦後1946年10月1日に復活したが、福岡 - 大牟田間の所要時間は90分に延びている。

1950年代に入ると戦後の復興も終わり、高度経済成長期に突入しようとしていた。西鉄は、1957年に「輸送力増強5ヵ年計画」を発表。列車の長編成化や複線化などに加え、高速化も重要なテーマとして挙げられていた。このような中、最高速度の90km/hへの引き上げを機に、それまで福岡 - 大牟田間に運行していた急行を格上げし、特急の運転を開始した。1961年、国鉄鹿児島本線の門司港 - 久留米間電化に対抗して「輸送力増強3ヵ年計画」が実施され、特急が増発された。

年表

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  • 1959年昭和34年)5月1日 特急列車運転開始。停車駅は従来の急行から大善寺駅を除いたもので、西鉄福岡・西鉄二日市・西鉄久留米・西鉄柳河(現・西鉄柳川)・栄町(現・新栄町)・大牟田。45分間隔で運行。所要時間は福岡 - 久留米間37分、福岡 - 大牟田間75分。
  • 1960年(昭和35年)5月1日 最高速度が95km/hに。福岡 - 久留米間35分、福岡 - 大牟田間70分に短縮。
  • 1961年(昭和36年)1000形の車体塗装を一新。従来の西鉄標準色からコバルトブルーに黄色の帯の特急専用色となる。これによりフラッグシップ的存在となった。
  • 1961年(昭和36年)6月21日 1300形投入に伴い、日中の特急は特急形車両の1000形・1300形で統一。
  • 1966年(昭和41年)10月1日 ダイヤ改正。増発し30分間隔での運行となる。
  • 1969年(昭和44年)3月1日 最高速度が100km/hに。福岡 - 久留米間32分、福岡 - 大牟田間65分に短縮。
  • 1973年(昭和48年)5月10日 ダイヤ改正。2000形投入に伴い、特急専用車両が交代。この改正を機に、1000・1300形は特急運用から撤退。
  • 1975年(昭和50年)3月1日 西鉄特急脱線事故発生
  • 1983年(昭和58年)3月26日 最高速度が105km/hに。福岡 - 大牟田間60分に短縮。速度向上に伴い、日中の特急運用本数が6本→5本に。昼間の特急運用は2000形に統一され、5000形は日中の特急運用から撤退。
  • 1989年平成元年)3月10日 8000形運行開始。
  • 1995年(平成7年)3月25日 福岡 - 平尾間高架化工事竣工に伴い、薬院駅に全ての特急が停車(従前は朝ラッシュ時上りのみ停車していた)。
  • 2001年(平成13年)11月10日 ダイヤ改正により、大善寺駅に全ての特急が停車(従前は朝上り・夕方下りのみ停車していた)。
  • 2004年(平成16年)10月17日 久留米 - 津福間高架化工事竣工に伴い、停車駅に花畑駅を追加。
  • 2008年(平成20年)
    • 2月16日 乗務員訓練のため一部の列車で110km/h運転を開始。
    • 3月22日 正式に最高速度が110km/hとなる。これにより福岡(天神) - 大牟田間58分に短縮、初めて1時間を切る。
  • 2010年(平成22年)3月27日 雑餉隈 - 下大利間高架化事業に伴う徐行運転により2分所要時分が伸びる。
  • 2014年(平成26年)3月22日 ダイヤ改正により、早朝(大牟田5:26発)に1本増発(急行からの格上げ)。
  • 2017年(平成29年)8月26日 ダイヤ改正により、停車駅に大橋駅を追加。朝ラッシュ時間帯に平日2本・土休日3本、平日の夜間帯(福岡(天神)22:32発)に1本増発。
  • 2021年(令和3年)3月13日 ダイヤ改正。新型コロナウイルスの影響により、平日の日中の特急運行が急行運行へと格下げとなった。土曜・日祝日の終日と平日朝・夕・夜間帯の運行は今までどおり行われる。
  • 2022年(令和4年)8月28日 雑餉隈 - 下大利間高架化に伴う線路切替工事により、福岡(天神)- 筑紫間で始発を繰り下げたため、大牟田5:26発は通常では設定の無い筑紫行き特急列車として運行された。なお、この列車は小郡に臨時停車した[6]
  • 2022年(令和4年)8月28日 ダイヤ改正。雑餉隈 - 下大利間高架化により、所要時間が日中を中心に上り下りともに1~2分短縮された(上り:62分→60分 下り:64分→62分)。また、利用状況に合わせて平日の9時台と10時台の特急が急行に格下げ[7]となった[8]
  • 2024年(令和6年)3月16日 ダイヤ改正により、停車駅に春日原駅を追加[5]。また、運行を取りやめていた平日日中の特急運行を再開[5]

使用車両

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5000形
 
3000形
写真の3010編成は5両固定編成であり通常は特急に使用されない
 
1000形
写真はさよなら運転時に旧特急色に塗り直されたもの
 
2000形
 
8000形

運行開始以来、座席配置をクロスシート主体とした車両を中心とした運用となっている。なお、朝夕ラッシュ時を中心に一部便にはロングシート通勤形車両が使用されているほかに博多どんたく港まつり開催・正月・大学入学共通テスト・城島酒蔵びらきなどの多客期、あるいは主な運用を担っている3000形が検査・故障などで工場に入場中の場合、代走としてロングシートの通勤型車両が使用されることもある(主に6両編成だが、多客時は7両編成で使用されることもある)。

特急に使用される車両

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主なもののみ記す。7000形・7050形はダイヤの乱れや検査などの都合による特別な事情がある時を中心に使用され、その場合は2両編成を3組連結した6両編成となる。

3000形
2006年 - 2010年、2015年 - 2016年に製造。急行用として、2014年度から後述の8000形の老朽化に伴う代替を目的として増備されており、運用時間帯が全日の日中にも拡大された[9]。現在は日中時間帯における特急は原則3000形6両編成の運行である。なお、それ以前より土曜休日の夜間に6両編成で定期運用が存在していた。
特急運転を担う編成として水都を含む3両編成を2本連結したものが3本、2両編成を3本連結したものが2本組まれている。
日中において検査の都合上5本が同時に運転できる機会は多くはない。
5000形
1975年から1991年まで製造された。3扉ロングシートの通勤形車両で、4扉ロングシートの6000・6050形と比較して座席数が多い。ラッシュ時に7両編成とした上で運行されるほか、日中は6両編成の代走が行われることがある。
6000形・6050形
1993年から1999年まで製造された。4扉ロングシートの通勤形車両。ラッシュ時に7両編成として上で運行されている。最大で5本7両編成を組むことができる。
9000形
2017年から製造されている。3扉ロングシートの通勤形車両。5000形を徐々に置き換え始め、ラッシュ時などに運用されている。土日祝日の日中においては、2022年8月のダイヤ改正以降、3000形の代走運転に充てられている。

過去の使用車両

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通勤形車両
300形
1939年に製造された2扉の301形、1948年に製造された3扉の303形・308形が、1979年頃まで600形とともにラッシュ時を中心に特急に使用された。
600形
1962年から1972年まで製造された。3扉ロングシートの通勤形車両で、1964年9月1日からラッシュ時の特急に使用開始された。1973年から冷房化改造が進められ、冷房化改造車は日中の特急にも使用された。特急運用はその後再び朝夕ラッシュ時のみとなり、1995年3月25日のダイヤ改正で特急の定期運用はなくなったが、その後も2000形や5000形の代走として特急に使用されたことがある。
特急形車両(以下は主として特急に使用された)
1000形
1957年製造。製造当初は急行に使用され、1959年の特急運転開始時に初代特急用車両となった。座席は向かい合わせの固定クロスシートであった。当初は上半クリーム色、下半マルーン色の西鉄標準色であったが、1961年にコバルトブルーに黄色の帯の特急専用色に改められた。1973年、2000形の登場により急行用に格下げされた。
1300形
特急増発に伴い1961年製造(先頭車は初代600形の改造)。1973年、2000形の登場により1000形とともに急行用に格下げされた。
2000形
1973年製造。6両固定編成で冷房装置付き、座席は転換クロスシートとし、それまでの1000・1300形に比べて輸送力・接客設備ともに大幅に向上された。車体塗装はオキサイドイエロー地にボンレッド帯となった。
8000形登場後、3扉に改造され、1991年には急行用に格下げされたが、扉の間の転換クロスシートは残された。8000形検査入場などの際には8000形特急の代走形式として2010年の全廃まで使用されていた。また土曜休日に下り1本のみながら、定期特急運用が存在した。
8000形
1989年製造。特急用車両としては最後の製造。国鉄分割民営化により発足したJR九州の営業政策に対抗することに加え、アジア太平洋博覧会の開催が決定したこともあり、計画より1年早く2000形の後継として製造された。老朽化により、2015年度から3000形への置き換えが進められ、2017年10月13日をもって特急運用を終了した。これにより西鉄の特急用車両は消滅する[9][10]

座席指定席車導入の検討

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かつて特急電車に1990年代[11][12]および2020年[13]ごろまでに座席指定席連結が検討の報道がなされていたが、2024年現在実現の見通しはたっていない。なお、2024年4月と5月の4日間において3000系5両を用いた臨時有料座席列車「Nライナー」を運行した[14]

参考文献

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  • 鉄道ピクトリアル』1989年9月・1999年4月臨時増刊号(鉄道図書刊行会)
  • コンパス2007年11・12月号

脚注

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  1. ^ 西日本鉄道百年史より
  2. ^ 西鉄福岡(天神) - 柳川・大牟田間の全区間急行に於ける久留米以南の停車パターンがこれにあたる
  3. ^ 例として柳川 - 大牟田間の区間運転は急行と名乗っている
  4. ^ この福岡(天神) - 大牟田間の急行も特急同様に概ね30分間隔で運行し福岡(天神)駅を毎時00・30分に発車していた。
  5. ^ a b c 西鉄天神大牟田線 14年ぶりの新駅誕生! T08 桜並木駅 3月16日(土)供用開始 ~同日、春のダイヤ改正を実施します~』(PDF)(プレスリリース)西日本鉄道、2024年1月19日。オリジナルの2024年1月19日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20240119160524/https://www.nishitetsu.co.jp/ja/news/news20240119/main/0/link/23_086.pdf2024年1月20日閲覧 
  6. ^ 2022年8月28日(日) 福岡(天神)方面 上り列車 発車時刻表”. web.archive.org. 2022年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月6日閲覧。
  7. ^ 運行区間はいずれも福岡(天神)- 大牟田間で、全区間急行運転である。
  8. ^ 【2022年8月28日(日)実施】西鉄電車ダイヤ改正のお知らせ|電車情報|西鉄グループ”. web.archive.org. 2022年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月6日閲覧。
  9. ^ a b 西日本新聞朝刊、2015年3月5日付
  10. ^ 西鉄電車8000形 引退イベント開催! - 西日本鉄道総務広報部(2017年9月28日、同日オリジナル (PDF) をアーカイブ化)
  11. ^ 西鉄特急に座席指定席車 大牟田線に特別車両導入 4年春にも 日本経済新聞1990年12月4日
  12. ^ 西鉄特急に座席指定席車導入の計画鉄道ジャーナル1991年4月号p.114
  13. ^ 座って帰れる…西鉄が「有料座席」来春導入へ 天神大牟田線に平日夜西日本新聞2020年3月27日
  14. ^ ~移動をもっと楽に・もっと快適に~ 天神大牟田線・臨時有料座席列車「Nライナー」を運行します”. 西日本鉄道. 2024年7月5日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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西鉄電車情報(にしてつグループ公式ホームページ)