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タイワンザル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タイワンザル
タイワンザル Macaca cyclopis
保全状況評価[1][2]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目 Primates
: オナガザル科 Cercopithecidae
: マカク属 Macaca
: タイワンザル M. cyclopis
学名
Macaca cyclopis (Swinhoe, 1863)[1]
和名
タイワンザル[3][4][5]
英名
Formosan macaque[4]
Formosan rock macaque[1]
Taiwan macaque[1][4][6]
Taiwanese macaque[1]

分布域

タイワンザル (台湾猿[7]学名Macaca cyclopis) は、哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に分類されるサル。

分布

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台湾[1][5]。日本(伊豆大島など)に移入[1][3]

形態

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頭胴長(体長)オス40 - 55センチメートル、メス36 - 50センチメートル[3][5]。尾長26 - 45センチメートル[5][6]体重オス6キログラム、メス4.9キログラム[3]。全身は灰褐色[3]。四肢は黒い[3][4][5]

分類

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種小名cyclopisはギリシャ神話に登場する巨人キュクロープスに由来する[4]

生態

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標高100 - 3,600メートルにある広葉樹林・針葉樹との混交林・竹林・草原などに生息する[6]。沿岸部で発見されることもあり以前は海岸付近にも生息していたと考えられているが、人間の活動により主な生息地は内陸の山地に限られる[6]。英名rockは記載者が洞窟や岩陰に生息すると報告したことに由来する[4]。地表でも樹上でも活動する[3]昼行性[3][6]。0.6 - 2平方キロメートルの行動圏内で生活する[3]。1頭から複数頭のオスとその幼獣からなる、数頭から数百頭の群れを形成して生活する[3]

果実、種子、芽、葉、昆虫などを食べる[3][6]

繁殖様式は胎生。11月から翌1月に交尾を行う[6]。妊娠期間は約165日[6]。4 - 6月に1回に1頭の幼獣を産む[6]

人間との関係

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生息地では食用とされることもある[6]

サツマイモ、ラッカセイなどを食害する害獣とみなされることもある[6]。移入先の伊豆大島ではツバキを食害する害獣とみなされる[3]

以前は開発による生息地の破壊、食用や薬用・ペット用・実験動物としての狩猟や捕獲などにより、生息数は減少していると考えられていた[5][6]。近年は増加傾向にあるとする報告もある[1]。2020年の時点では低地では生息地が破壊され感染症の伝播や人間との影響が懸念されているものの、生息数は安定もしくは増加傾向にあると考えられている[1]。1977年に、霊長目単位でワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]

日本では1930 - 1940年代に、大島公園の動物園から脱走・遺棄された個体が伊豆大島に定着し[8]、1980年代には島東部に局在していた分布が、1990年代以降には短期間で島全体に拡大した[9]。1952年ごろに台湾から輸入された個体が青森県十和田市にある山林で飼育されており、1971年には上北郡野辺地町下北半島)郊外に開設された私営の観光施設で放し飼いにされていたが、1975年に経営不振のためこの施設が閉鎖されてからもタイワンザルは飼育され続けており[10]、やがて放獣されていた個体が野辺地町に定着した[11]。1955年ごろに大池遊園[注 1]から放獣された個体が和歌山県北部に定着した[13]。1998年には和歌山県で、2004年には下北半島で本種とニホンザルの交雑個体が発見され、ニホンザルへの遺伝子汚染が懸念されている[11][13]。下北半島の移入個体群は2003年11月から捕獲作戦が実行され、2004年1月までに全69頭が捕獲され、その後の踏査や聞き取りでタイワンザルの情報が得られなかったため、生息地からの群れの除去は完全に成功したと判断されている[14]。和歌山県では2002年から駆除が開始され2012年に捕獲された個体を最後に、2013年の時点ではGPSや設置カメラ・未知の個体群の調査・イヌによる追跡調査・地元での聞き取り調査から本種および交雑個体は確認されていない[15]。2017年には和歌山県により、本種の根絶を達成したと公表された[16]。日本では2005年4月に特定外来生物に指定(同年6月施行)され、飼養・保管・運搬・放出・輸入などが規制された[17]。2015年に環境省の生態系被害防止外来種リストにおける総合対策外来種のうち、緊急対策外来種に指定されている[17]

伊豆大島では2006年度の東京都大島支庁の調査により、約57.5 kmの面積に約3000頭が生息していることが推定されている[18]。伊豆大島にはニホンザルは生息しておらず、また本土から遠く離れた海洋島であるため、島内でニホンザルと交雑する心配はないが、農作物への食害が発生しており、また逸出も懸念されるため、根絶あるいは封じ込めが必要とされ[9]、捕獲駆除が実施されている[19]。また1964年[20]もしくは1965年には、伊豆半島南端近くの大根島静岡県賀茂郡南伊豆町)にも観光を目的にタイワンザル約30頭が放し飼いにされていた[21]。大根島は本土から約36 mと近い距離にあるため、タイワンザルが海を泳ぐか流されて本土に漂着すれば伊豆半島のニホンザルと交雑することが懸念されていたが、大根島は食物になる植物がほとんど生えておらず、個体数は2001年4月に17頭、2009年12月に7頭と自然減少し続けていた[21]

脚注

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注釈

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  1. ^ 1954年に閉鎖された私営観光施設で飼育されていた個体で、飼育場で作業中に誤って逃がしたが、所有者が閉鎖時に放したことが原因と言われている[12]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i Wu, H. & Long, Y. 2020. Macaca cyclopis. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T12550A17949875. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-2.RLTS.T12550A17949875.en. Downloaded on 02 May 2021.
  2. ^ a b UNEP (2021). Macaca cyclopis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 02/05/2021]
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 石井信夫 「タイワンザル」『日本の哺乳類【改訂2版】』阿部永監修、東海大学出版会、2008年、68頁。
  4. ^ a b c d e f 岩本光雄 「サルの分類名(その1:マカク)」『霊長類研究』第1巻 1号、日本霊長類学会、1985年、45 - 54頁。
  5. ^ a b c d e f 渡邊邦夫 「タイワンザル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、137頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l Crystal Chiu, 2001. "Macaca cyclopis" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed May 02, 2021 at https://animaldiversity.org/accounts/Macaca_cyclopis/
  7. ^ 『精選版 日本国語大辞典』小学館。 
  8. ^ 川本芳、川本咲江、佐伯真美、乗越皓司 「伊豆大島に生息するマカク外来種に関する遺伝学的調査」『霊長類研究』第19巻 2号、日本霊長類学会、2003年、137 - 144頁。
  9. ^ a b 白井啓 & 川本芳 2011, p. 186.
  10. ^ 白井啓 & 川本芳 2011, p. 176.
  11. ^ a b 川本芳、川本咲江、川合静「下北半島におけるタイワンザルとニホンザルの交雑」『霊長類研究』第21巻 1号、日本霊長類学会、2005年、11 - 18頁。
  12. ^ 白井啓 & 川本芳 2011, p. 179.
  13. ^ a b 川本芳、大沢秀行、和秀雄、丸橋珠樹、前川慎吾、白井啓, 荒木伸一 「和歌山県におけるニホンザルとタイワンザルの交雑に関する遺伝学的分析」『霊長類研究』第17巻 1号、日本霊長類学会、2001年、13 - 24頁。
  14. ^ 白井啓 & 川本芳 2011, pp. 178–179.
  15. ^ 白井啓、高野彩子、鳥居春己、萩原光、清野紘典、岡野美佐夫、村瀬英博、村瀬涼子、和秀雄、川本芳、中川尚文、森光由樹、川村輝 「和歌山県北部のタイワンザル・ニホンザル交雑個体群の根絶確認モニタリングの現状」『霊長類研究 Supplement』、日本霊長類学会、2013年、132頁。
  16. ^ 和歌山タイワンザルワーキンググループ 「和歌山におけるタイワンザルの群れ根絶の達成」『霊長類研究 Supplement』、日本霊長類学会、2018年、41 - 42頁。
  17. ^ a b 特定外来生物等一覧特定外来生物等一覧(指定日別)生態系被害防止外来種リスト環境省 ・2021年5月2日に利用)
  18. ^ 白井啓 & 川本芳 2011, pp. 174–175.
  19. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7 
  20. ^ 白井啓 & 川本芳 2011, p. 175.
  21. ^ a b 白井啓 & 川本芳 2011, p. 185.

参考文献

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関連項目

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