アラガン
アラガン(英: Allergan plc)は、美容医療・乳腺外科・眼科などに関する医薬品および医療機器の研究開発・販売を行うヘルスケア企業。現在はアッヴィの子会社。アイルランド・ダブリンに本社(役員オフィス)を置き、オペレーション本部をアメリカ合衆国・ニュージャージー州・Madisonに置く[1]。日本法人はアラガン・ジャパン株式会社。
沿革
[編集]組織としてのアラガンのルーツは、Allen Chaoがイリノイ州・Libertyvilleに設立した(法人登記は1985年)ワトソン・ファーマシューティカルズ(Watson Pharmaceutical, Inc.)にある[2]。同社は間もなくカリフォルニア州・コロナに移転、ジェネリック医薬品の製造を中心に行い、1993年に株式を公開[2]、2011年に本社をニュージャージー州に移転した[3]。ワトソン・ファーマシューティカルズは2012年、スイスに本拠を置くジェネリック医薬品大手のアクタビス・グループ(Actavis Group)を買収し、買収された側の社名を引き継ぐ形でアクタビス(Actavis, Inc.)に社名を変更した[4]。2013年10月、アイルランドに本拠を置くワーナー・チルコット(Warner Chilcott plc)の買収を契機に、Actavis plcとして本社をアイルランドに移転した[5]。
他方、Allergan Pharmaceuticals, Inc.は1950年に設立され、1980年にSmithKline Beckman(グラクソ・スミスクラインの前身の一つ)に買収されたのち、1989年にアラガン(Allergan, Inc.)としてスピンオフ、カリフォルニア州に本拠を置き、2003年に美容医療用の「ボトックスビスタ」が大きな成功をおさめていたが[6]、2014年11月、アクタビスによる買収が発表され、2015年2月、買収された側の社名を引き継ぐ形でアラガン(Allergan plc)に社名を変更した[7]。同年7月、ジェネリック医薬品部門をテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズに売却[8]、続いて同年11月、ファイザーによるアラガン買収が発表されたが[9]、2016年4月に撤回された[10]。こののち再び企業買収を続けているが[11]、2018年4月に武田薬品工業が買収を予定していたシャイアーの買収計画が報じられた際は否定した[12]。2019年6月、アッヴィによるアラガン買収が発表され、2020年5月に同社の傘下となった[13]。
現在、アラガンの売上中、約4割がボトックスビスタやヒアルロン酸注入材等の美容医療関連、約3割がアイケア関連、約4分の1が神経科および泌尿器科関連となっており、また売上の4分の3を米国市場が占めている[1]。
日本法人
[編集]日本法人「アラガン・ジャパン株式会社」は2010年に設立[14]、2015年のアクタビスによるアラガン買収を受け、両社の日本法人も統合されたが、社長はアラガン・ジャパン側が受け継ぐ形となった[15]。なおアクタビスがあすか製薬と2009年に設立した合弁企業「あすかActavis製薬」は、アラガンとの統合を受けた合弁解消後、あすか製薬が2017年に吸収合併した[16]。
アラガン・ジャパンの取り扱いは現在、乳がん患者のための乳房再建、美容医療、アイケアの領域に特化しており、ボトックスビスタや、ジュビダームビスタ等ヒアルロン酸注入材の輸入販売を行っている。東京(恵比寿ガーデンプレイス)にオフィスを持つ。
2019年7月、アラガンの一部の人工乳房製品について、副作用の発症を受け全世界でのリコールが出されたため[17]、日本では、代替品がなく、3000人以上の患者が乳房再建手術の中断を余儀なくされるなどの影響が出た[18]。
脚注
[編集]- ^ a b “Annual Report 2018” (英語). Allergan plc. 2019年6月20日閲覧。
- ^ a b “Investor FAQs”. Allergan plc. 2019年6月20日閲覧。
- ^ “Generic drug maker Watson opening research operations in North Brunswick” (英語). nj.com (2012年1月30日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “Watson Completes Actavis Acquisition” (英語). PR Newswire (2012年10月31日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “Actavis Completes Warner Chilcott Acquisition” (英語). PR Newswire (2013年10月1日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “Taking aim at Botox” (英語). ロサンゼルス・タイムズ (2003年9月22日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “アクタビス、アラガン買収で株式発行―84億ドル相当”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2015年2月20日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “テバ、アラガン後発薬部門の買収発表-約5兆円で”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2015年7月27日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “米製薬ファイザー、1600億ドルでアラガン買収 世界最大手誕生へ”. ロイター (2015年11月23日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “ファイザー、アラガンと合併断念 米の節税規制で”. 日本経済新聞 (2016年4月6日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “【アラガン】今月に入り3社を獲得‐再び買収攻勢”. 薬事日報 (2016年9月26日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “製薬大手アラガン、シャイアー買収を一転否定”. ウォール・ストリート・ジャーナル (2018年4月20日). 2019年6月20日閲覧。
- ^ “AbbVie Completes Transformative Acquisition of Allergan” (英語). Abbvie Inc.line (2020年5月8日). 2020年5月24日閲覧。
- ^ “CHROインタビュー アラガン・ジャパン 執行役員 人事総務本部長”. キャリアリンク (2016年2月). 2019年6月7日閲覧。
- ^ “伊藤氏が2社の社長に アラガン・ジャパン、アクタビス”. 薬事日報 (2015年3月27日). 2019年6月7日閲覧。
- ^ “あすか製薬、子会社のあすかActavis製薬を吸収合併 意思決定迅速化目指す”. M&Aタイムズ (2017年2月7日). 2019年6月7日閲覧。
- ^ “製薬アラガン、人工乳房をリコール 安全性に懸念”. 日本経済新聞 (2019年7月25日). 2019年9月22日閲覧。
- ^ “乳房再建「中断」3千人…自主回収で混乱、代替品なく”. 読売新聞オンライン (2019年9月21日). 2019年9月22日閲覧。
外部リンク
[編集]- アラガン・ジャパン
- コーポレートサイト
- Allergan plc (@allergan) - X(旧Twitter)
- Allergan plc - YouTubeチャンネル