魔術 (セレマ)
魔術(まじゅつ、Magick)は、アレイスター・クロウリーのセレマの文脈においては、〔非日常的な〕儀式魔術のみならず、意志の日常的な行為をも含めて、「〈意志〉に応じて変化を生ぜしめる科学にして技芸である」と定義される。クロウリーは次のように書いた。「いかなる対象にも、その対象にとって本来的に可能である限りの変化を起こすことは理論的に可能である[1]。」 ジョン・サイモンズとケネス・グラントはこれにもっと深いオカルト的意味を付与している[2]。
クロウリーは魔術を、ひとが自己の真の理解に達し、自らの真の意志に応じて行為するための本質的な方法であると考えた[3]。クロウリーはこの過程について『第四の書』で述べている。
自分が誰であり、何であり、なぜ存在しているのかを自分で見出し、確信しなければならない……そのように追い求めるべき進路を自覚したら、次はそれを遂行するための条件を理解することである。しかる後に、成功にとって異質もしくは邪魔なあらゆる要素を自分自身から取り除き、前述の条件を制するのに特に必要な自分の中の部分を発達させなければならない。(Crowley, Magick, Book 4 p.134)
魔術の定義と一般的な目的
[編集]Magick という語自体は magic の初期近代英語の綴りであり、ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパの『隠秘哲学論』の1651年英訳版 Three Books of Occult Philosophy, or Of Magick などの書物に用いられている。アレイスター・クロウリーは自分の実践と儀式をステージマジック(奇術)と区別するためにこの綴りを選び、以来、この用語はクロウリーの教義の要素を取り入れた人々によって再び広まった。
クロウリーは魔術を「意志に応じて変化を起こす科学にして技芸である」[4][5]と定義した。続けてクロウリーは、これについて一つの公準と28の定理を示して詳述した。これについての最初の説明は公準についての説明であり、これにおいてクロウリーは「求められるいかなる変化も、適切な仕方で、適切な媒体を通じて、適切な対象に対して、適切な種類の〈力〉を適切な度合で利用することによって引き起こし得る」[6][7]と述べた。そしてさらに次のように述べた。
魔術は自分自身とその状態を理解する〈科学〉である。行為においてその理解を応用する〈技芸〉である[8]。
脚注
[編集]- ^ Crowley, Aleister. Magick, Book 4. p. 127. "魔術的操作とは何か?事実上〈意志〉によって引き起こされるあらゆる事象であると定義してよい。ジャガイモ栽培も銀行業務もわれわれの定義から除外してはならない。魔術的行為の非常に単純な例をひとつ挙げよう。鼻をかむことである。"
- ^ John Symonds; Kenneth Grant (1973). “Introduction”. In Crowley, Aleister. Magick. Samuel Weiser. ISBN 978-0-7100-7423-2. "Magick のアングロ・サクソン的 k は、クロウリーの奇抜な表現のほとんどと同様に、かれの行ったような魔術の種類を示すための手立てである。Kはアルファベットの11番目の文字であり、11は魔術をあらわす基本的な数字である。なぜなら11はクリフォト - 魔術を行う前に克服すべき悪魔的にして混沌とした諸力の地下世界 - の数字とされているからである。Kには他にも魔術的含意がある。それは創造的エネルギーの力ないし「シャクティ」的側面に相当する。というのも k は古代エジプト語の khu、すなわち魔術的力なのである。特に、〈大作業〉の特定の局面において魔術師が用いる棒(すなわち男根)の補完物であるクテイス〔κτείς〕(膣)を表している。"
- ^ Crowley, Aleister. “A Lecture on the Philosophy of Magick”. The Revival of Magick. p. 207
- ^ Magick in Theory and Practice, Book 3 of 4 by Aleister Crowley
- ^ Crowley (1973), ch 1.
- ^ Magick in Theory and Practice
- ^ Crowley (1973).
- ^ Crowley, Aleister (1990). Magick in Theory and Practice (Photo-offset edition. ed.). Magickal Childe Publishing. ISBN 1555217664
参考文献
[編集]- Bacon, Roger (1659, London). His Discovery of the Miracles of Art, Nature, and Magic. Faithfully translated out of Dr Dees own Copy, by T. M. and never before in English.
- Crowley, Aleister (1979), The Confessions of Aleister Crowley, Routledge & Kegan Paul
- Crowley, Aleister (1985), Eight Lectures on Yoga, Falcon Press
- Crowley, Aleister (1974), The Equinox of the Gods, Gordon Press
- Crowley, Aleister (1997), Magick (Book 4), Weiser
- Crowley, Aleister (1973), Magick Without Tears, Falcon Press
外部リンク
[編集]- Hermetic.com: The Libri of Aleister Crowley
- Journal of Thelemic Studies – the first non-partisan, academic journal investigating the occult tradition of Thelema