Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

コンテンツにスキップ

近江鉄道八日市線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
八日市線
武佐駅に到着する万葉あかね線の列車
武佐駅に到着する万葉あかね線の列車
基本情報
通称 万葉あかね線
日本の旗 日本
所在地 滋賀県東近江市近江八幡市
起点 八日市駅
終点 近江八幡駅
駅数 7駅
路線色       緑
開業 1913年12月29日
最終延伸 1946年1月1日
所有者 近江鉄道線管理機構
運営者 近江鉄道
車両基地 彦根電車区
使用車両 近江鉄道#車両を参照
路線諸元
路線距離 9.3 km
軌間 1,067 mm狭軌
線路数 単線
電化方式 直流1,500 V 架空電車線方式
閉塞方式 自動閉塞式
保安装置 ATS
最高速度 70 km/h[1]
路線図
テンプレートを表示
停車場・施設・接続路線

*は新八日市起点

exKBHFa
2.8* 御園駅
exBHF
1.6* 川合寺駅
exBHF
0.9* 八日市中野駅
exSTR
本線
BHFq ABZq+r xKRZo
0.0 OR15 八日市駅
BHF exSTR
0.6 OR16 新八日市駅
eABZg+l exSTRr
BHF
1.3 OR17 太郎坊宮前駅
BHF
3.0 OR18 市辺駅
BHF
5.0 OR19 平田駅
BHF
6.5 OR20 武佐駅
KRZu
東海道新幹線
STR+r STR
東海道本線
eABZg+l eABZgr
琵琶湖線
9.3 OR21 近江八幡駅
STR

八日市線(ようかいちせん)は、滋賀県東近江市八日市駅から同県近江八幡市近江八幡駅までを結ぶ近江鉄道鉄道路線である[2]

近江盆地の2つの都市間を結ぶ近江鉄道の主力路線となっている。路線の愛称として万葉あかね線(まんようあかねせん、ラインカラー:      緑)が付けられている[3][4][5]

1930年から1948年(休止年)までは、新八日市から陸軍飛行場付近の御園駅までの路線がのびていた[6]。同区間は、新八日市駅 - 八日市中野駅間で近江鉄道本線を築堤により越えていた[7]

路線データ

[編集]

運行形態

[編集]

ワンマン運転を行っている。1987年のワンマン化で平田駅 - 近江八幡駅間の区間運転列車が廃止されて以来、途中駅での折り返し列車は設定されていない。八日市駅 - 近江八幡駅間折り返し運転のほか、本線米原駅方面発着の列車、近江八幡駅発で貴生川駅方面へ直通する列車もある。

平日朝7時台の下り近江八幡方面は1時間あたり4本、その他の時間帯・方面は最大毎時3本の列車が運行されている。日中から終電までの時間帯は毎時2往復(約30分間隔)の運行となっている。一部の時間帯を除き、八日市駅で本線の双方向の列車、近江八幡駅で琵琶湖線新快速と接続している。

これらの列車はほとんどが各駅停車であるが、平日朝に快速列車が上り八日市行きのみ設定されている(後節参照)。

快速

[編集]

1998年3月30日に八日市駅 - 近江八幡駅間ノンストップの快速が新設された[8][9]。2013年3月16日のダイヤ改正で一旦廃止されたが、2016年3月26日改正で平日に上り(八日市行き)1本のみ復活した[10]。2020年3月14日のダイヤ改正で武佐駅が停車駅に加わった[11]。なお、2020年3月改正時点でのダイヤでは八日市駅での本線列車との接続は考慮されておらず、後続の普通列車を利用しても同じ列車に乗り換えることになる。

歴史

[編集]
八日市鉄道
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
滋賀県神崎郡八日市町大字小脇137[12]
設立 1929年昭和4年)1月30日[12]
業種 鉄軌道業
事業内容 旅客鉄道事業、不動産[12]
代表者 社長 藤井守一[12]
資本金 560,000円(払込額)[12]
特記事項:上記データは1943年(昭和18年)4月1日現在[12]
テンプレートを表示

蒲生郡の主要都市である八幡町神崎郡八日市町を結ぶべく1911年(明治44年)5月に川端浅吉ほか7名により湖南鉄道が出願されたが、既に八日市に路線を開通させていた近江鉄道も対抗上湖南鉄道と同ルートの路線を出願してきた。鉄道院は近江鉄道の出願を却下して先願の湖南鉄道に対し免許状を下付した。免許を得た湖南鉄道は軌間762mmで路線を建設しようとしたが、国有鉄道や近江鉄道との連絡輸送の必要から軌間1067mmに変更したため、建設資金が当初よりも増大し資金不足に陥った。その後、地元五個荘出身の藤井善助[13]を社長に迎え出資を受け、1913年になり新八幡駅(現在の近江八幡駅) - 八日市口駅(現在の新八日市駅)間を開業させることができた。

その後、滋賀に進出しつつあった京阪資本に対抗するため、1927年に大津電車軌道太湖汽船が合併して発足した琵琶湖鉄道汽船に湖南鉄道も合併する[注 1]。しかし、1929年に琵琶湖鉄道汽船が京阪電気鉄道に合併された際、京阪は離れ小島の旧・湖南鉄道には興味を示さなかった。こうして旧・湖南鉄道線は藤井の設立した八日市鉄道に譲渡され[14]、やがて戦時企業統合政策により1944年に近江鉄道に合併された[注 2]

駅一覧

[編集]

全駅滋賀県に所在。

凡例
●:停車、|:通過
快速:平日朝に八日市行き1本のみ運転。
普通:全駅に停車(表中省略)。
線路(全線単線) … ◇・∨・∧:列車交換可能、|:列車交換不可
駅番号 駅名 駅間キロ 営業キロ 快速 接続路線 線路 所在地
OR15 八日市駅 - 0.0 近江鉄道本線湖東近江路線、水口・蒲生野線) 東近江市
OR16 新八日市駅 0.6 0.6  
OR17 太郎坊宮前駅 0.7 1.3  
OR18 市辺駅 1.7 3.0  
OR19 平田駅 2.0 5.0  
OR20 武佐駅 1.5 6.5   近江八幡市
OR21 近江八幡駅 2.8 9.3 西日本旅客鉄道A 東海道本線琵琶湖線)(JR-A19)

廃止区間

[編集]

駅名は廃止時点のもの。

駅名 よみ 駅間キロ 営業キロ
新八日市駅 しんようかいち - 0.0
八日市中野駅 ようかいちなかの 0.9 0.9
川合寺駅 かわいでら 0.7 1.6
御園駅 みその 1.2 2.8

[30]

川合寺駅 - 御園駅手前までの廃線跡は、歩行者・自転車専用道で、道沿いには近江鉄道八日市営業所(バス車庫)がある[31]

専門家による廃止区間のツアーが、東近江市観光協会主催で積極的に開催されてきた[32][33]

未成区間

[編集]
  • 飛行場駅(のちの御園駅) - 神崎郡山上村(のちの永源寺町山上)[26]

輸送・収支実績

[編集]
年度 輸送人員(人) 貨物量(トン) 営業収入(円) 営業費(円) 営業益金(円) その他益金(円) その他損金(円) 支払利子(円) 政府補助金(円) 会社名
1913 33,478 70 5,007 6,793 ▲ 1,786 1,507 2,905 3,216 湖南鉄道
1914 126,703 323 18,201 16,219 1,982 679 13,135 11,343 湖南鉄道
1915 141,031 725 19,004 14,398 4,606 償却金3,813補助金減576 12,785 9,178 湖南鉄道
1916 146,560 340 18,399 14,451 3,948 社債較差金償却740 12,750 8,971 湖南鉄道
1917 178,041 795 21,678 18,637 3,041 自動車売却差損金及社債較差金償却6,869 12,749 9,466 湖南鉄道
1918 200,496 1,027 47,890 20,040 27,850 建設費償却金5,857側線設置差損金1,906 6,236 10,951 湖南鉄道
1919 246,918 1,677 35,835 35,029 806 3,394 10,849 湖南鉄道
1920 263,387 5,312 58,121 40,286 17,835 3,926 831 湖南鉄道
1921 277,337 13,459 76,539 49,569 26,970 湖南鉄道
1922 291,565 10,221 77,121 42,520 34,601 湖南鉄道
1923 312,859 10,038 80,266 58,624 21,642 償却金繰入3,500 5,770 1,529 湖南鉄道
1924 316,708 9,880 78,151 45,042 33,109 償却金852 6,374 湖南鉄道
1925 324,230 10,651 93,330 46,842 46,488 8,563 湖南鉄道
1926 342,437 11,932 86,428 46,857 39,571 7,157 湖南鉄道
1927 258,909 9,155 60,134 30,239 29,895 85 琵琶湖鉄道汽船
1928 366,246 16,338 109,978 56,874 53,104 汽船及軌道74,986 雑損747 112 琵琶湖鉄道汽船
1929 106,600 5,805 28,838 17,189 11,649 琵琶湖鉄道汽船
343,176 15,257 88,230 44,428 43,802 償却金3,130 12,394 八日市鉄道
1930 328,291 12,355 82,338 48,901 33,437 7,017 八日市鉄道
1931 302,236 13,924 77,695 51,838 25,857 雑損3,796 15,324 八日市鉄道
1932 285,476 15,647 77,780 48,201 29,579 償却金3,376 17,385 八日市鉄道
1933 269,355 18,609 72,553 50,005 22,548 11,939 八日市鉄道
1934 231,855 18,789 66,353 47,386 18,967 雑損2,449 9,051 10,379 八日市鉄道
1935 238,580 18,686 67,658 49,966 17,692 雑損償却金5,360 8,396 11,213 八日市鉄道
1936 234,911 22,305 69,717 49,674 20,043 雑損償却金5,712 7,503 11,205 八日市鉄道
1937 245,971 20,898 71,007 58,306 12,701 諸税引当2,000 雑損償却金8,778 6,686 8,955 八日市鉄道
1939 349,124 29,714 八日市鉄道
1941 689,531 49,580 八日市鉄道
1943 918,872 42,372 八日市鉄道
1945 1,278,923 305,483 近江鉄道
  • 鉄道院年報、鉄道院鉄道統計資料、鉄道省鉄道統計資料、鉄道統計資料、鉄道統計、国有鉄道陸運統計各年度版

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 藤井は大津電車軌道社長、太湖汽船監査役であり琵琶湖鉄道汽船社長に就任した。
  2. ^ もっとも会社成立の経緯からみられるように、合併比率の点で合併交渉は難航し、結局は八日市鉄道が押し切られることとなった。『近江鉄道コレクションブック』10-11頁
  3. ^ 『官報』(1919年4月16日)によると3月30日[20]
  4. ^ 近江鉄道ニュースリリース「『近江鉄道開業120周年記念切手』販売開始」付属の参考資料「〜近江鉄道 120 年のあゆみ〜」によると8月21日[19]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g 寺田 2013, p. 130.
  2. ^ a b “New門@滋賀 地域の足存続へレール”. 読売新聞オンライン. (2021年2月20日). オリジナルの2021年2月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210222114433/https://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/feature/CO044595/20210219-OYTAT50090/ 2022年1月9日閲覧。 
  3. ^ a b 近江鉄道線4区間の線区愛称の命名について - 近江鉄道
  4. ^ “和洋折衷、愛され100年 新八日市駅舎(もっと関西)”. 日本経済新聞. (2018年8月29日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34689970Y8A820C1AA2P00/ 2022年1月9日閲覧。 
  5. ^ 「滋賀なのにライオンズ推し、なぜ?」 ブルーの“元”西武車が元気に走る「近江鉄道」懐かしの旅”. ねとらぼ (2020年8月27日). 2021年1月9日閲覧。
  6. ^ 朝日 2011, p. 9.
  7. ^ 『トワイライトゾ〜ン・マニュアル5』辻良樹「消えた飛行場線」182-183頁 ネコ・パブリッシング 1996年。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l 寺田 2013, p. 274.
  9. ^ 寺田裕一『データブック日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2002年、p.242
  10. ^ 「トピック・フォト」『鉄道ピクトリアル(2016年6月号)』第918巻、電気車研究会、2016年、92頁。 
  11. ^ 2020年3月14日ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)近江鉄道、2020年3月6日https://www.ohmitetudo.co.jp/file/railway_2020daiyakaisei.pdf2022年1月9日閲覧 
  12. ^ a b c d e f 『地方鉄道及軌道一覧. 昭和18年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  13. ^ 『大津市人物名鑑』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  14. ^ a b 『近江鉄道コレクションブック』10頁
  15. ^ a b 朝日 2011, p. 12.
  16. ^ 「軽便鉄道免許状下付」『官報』1911年10月3日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  17. ^ a b c d e f g h i j k l m 朝日 2011, p. 13.
  18. ^ 「軽便鉄道運輸開始」『官報』1914年1月10日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  19. ^ a b c d e f 「近江鉄道開業120周年記念切手」販売開始』(PDF)(プレスリリース)近江鉄道、2018年6月1日https://www.ohmitetudo.co.jp/railway_newsrelease_20180601.pdf#page=42022年1月10日閲覧 
  20. ^ 「輕便鐵道停車場位置竝停車場名變更」『官報』1919年4月16日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  21. ^ 「輕便鐵道停車場名改稱」『官報』1919年7月10日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  22. ^ 「鉄道免許状下付」『官報』1924年8月1日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  23. ^ 『鉄道統計資料. 昭和2年』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  24. ^ 『鉄道統計資料. 昭和4年』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  25. ^ 「地方鉄道運輸開始」『官報』1930年10月20日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  26. ^ a b 「鉄道免許失効」『官報』1935年6月18日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  27. ^ 鉄道省監督局「地方鉄道・軌道異動表」『電気協会雑誌』第229号、日本電気協会、1941年1月、附録3頁。(国立国会図書館デジタルコレクション)
  28. ^ a b 朝日 2011, p. 14.
  29. ^ 寺田 2013, p. 275.
  30. ^ 表内のデータは『私鉄車両めぐり83 近江鉄道(上)』、89頁による
  31. ^ 『ローカル私鉄原風景』、29頁
  32. ^ 鉄道フォトライター辻󠄀 良樹と行く『軍都の廃線跡巡り&八日市線こだわり旅』東近江市観光協会主催 東近江市広報誌『広報ひがしおうみ』2017年7月1日号より
  33. ^ 『軍都の廃線跡巡り&八日市線こだわり旅』参加者募集 鉄道ファンrailf.jp、2017年4月22日

参考文献

[編集]
  • 白土貞夫「私鉄車両めぐり83 近江鉄道(上)」『鉄道ピクトリアル』通巻第239号、鉄道図書刊行会、1970年7月、84 - 92頁。 
  • 田中真人ほか『京都滋賀鉄道の歴史』京都新聞社、1998年、377-380頁
  • 辻󠄀良樹「ローカル私鉄原風景」『鉄道ダイヤ情報』通巻277号、交通新聞社、2005年10月、24 - 31頁。 
  • 『近江鉄道コレクションブック』彦根まちなか博物館、2007年
  • 『週刊歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 29 近江鉄道/信楽高原鐵道/伊賀鉄道/養老鉄道』朝日新聞出版、2011年10月9日。 
  • 寺田裕一『改訂新版 データブック日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2013年1月19日。ISBN 978-4-7770-1336-4 
  • 鉄道フォトライター辻󠄀 良樹と行く『軍都の廃線跡巡り&八日市線こだわり旅』東近江市観光協会 パンフレット 2017年

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]