羽田クロノゲート
羽田クロノゲート | |
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情報 | |
用途 | 物流施設 |
設計者 | 日建設計 |
施工 | 鹿島建設 |
建築主 | ヤマト運輸 |
敷地面積 | 102,772.19 m² [1] |
建築面積 | 45,165.86 m² [1] |
延床面積 | 197,575.57 m² [1] |
階数 | 9階 |
高さ | 48.6m |
着工 | 2010年12月 |
竣工 | 2013年9月20日 |
所在地 |
〒144-0042 東京都大田区羽田旭町11番1 |
座標 | 北緯35度33分11.8秒 東経139度45分3秒 / 北緯35.553278度 東経139.75083度座標: 北緯35度33分11.8秒 東経139度45分3秒 / 北緯35.553278度 東経139.75083度 |
羽田クロノゲート(はねだクロノゲート、英: Haneda chronogate)は、ヤマトグループが運営する日本最大級[2]の物流施設である。東京都大田区羽田旭町に位置し、2013年(平成25年)9月20日に竣工した。
立地
[編集]所在地は、東京都大田区羽田旭町11番1。環八通り(国道131号との重複区間)に面し、羽田空港や首都高速道路1号羽田線の羽田出入口の至近距離に位置する。東京港からの海運、東京貨物ターミナル駅からの鉄道貨物輸送も利用しやすい位置にあり、首都高速道路を利用することにより横浜港へも短時間で到達できる。
沿革
[編集]この地には1938年より荏原製作所(以下、荏原)羽田工場があり、大型ポンプなどの製造を行っていた[3]。工場の老朽化や生産効率の向上のため、荏原は生産機能の千葉県富津市への移転を決定し、2007年に跡地10万2881m2と敷地内ですでに建設が始まっていた地上12階・地下1階のオフィスビルをヤマト運輸に845億円で売却した[4]。オフィスビルは2008年に完成し、荏原がヤマト運輸から賃借し、本社機能を置く[5]。
2011年1月に、「羽田物流ターミナル(仮称)」を着工したが[6]、この土地には引き渡し時点で石綿を含有するスレート片が混入しており、ヤマト運輸はこれを瑕疵であるとして荏原に対し除去費用73億8,483万7,969円および遅延損害金を求めて民事訴訟を提起した[7]。この訴訟は、2019年1月に荏原に対し59億5,278万3,219円の支払いを命じる判決が確定した[8]。 この土壌処理により、当初の2012年10月の開業予定が1年弱ずれ込み[9]、2013年9月20日に竣工した。
施設名称は、ギリシャ神話における時間の神クロノスと、日本と国外とのゲートとなることから、この二つを合わせた造語として「羽田クロノゲート」と名付けられた[10]。
2015年度「グッドデザイン賞」[11]、2018年度には日本建設業連合会が主催する「第59回BCS賞」[12]を受賞している。
機能
[編集]「止めない物流」を標榜し、年中無休24時間操業している。1階・2階は荷搬エリアで、全長1070m・1336枚のセル式のクロスベルトソータ、前詰め搬送機、吸盤状のアームで箱を扱うロボットアームなどにより荷物の仕分けを行う[13][14]。従来の施設では1時間当たり2万4千個だった仕分け数は4万8千個と倍増し[2]、一日当たりの荷物の処理能力は約60万個となる[15]。外周のバースには、最大104台のトラックが同時に横付け可能で[13]、一日当たりのトラックの発着は延べ2000台である[15]。3階から7階は付加価値ゾーンとなっており、後述の流通加工を行っている。1階から7階までの各階は、スパイラルコンベアで相互に荷物を搬送することが可能である。
- バリューネットワーキング
- 羽田クロノゲートはヤマトグループによる次世代物流ネットワーク「バリュー・ネットワーキング構想」の一環であり、沖縄県那覇市の「沖縄国際物流ハブ」(サザンゲート、2015年11月完成)や、圏央道相模原愛川ICに近い神奈川県愛甲郡愛川町の「厚木ゲートウェイ」、伊勢湾岸自動車道豊田南ICに近い愛知県豊田市の「中部ゲートウェイ」(2016年10月完成)、名神高速茨木ICに近い大阪府茨木市の「関西ゲートウェイ」(2017年11月完成)と東名阪のハブ施設と連携した輸送を行う。ヤマト運輸は本施設稼働後の2013年10月28日より、香港向けの「国際クール宅急便」のサービスを開始した[16]。
- 日本各地から羽田クロノゲート宛てに、夕方までに集められた農水産物は、深夜に沖縄国際物流ハブを中継し、香港に翌日夕方までに輸送される。相手国の通関の迅速化が整えば、台湾など他のアジア地域にも拡充される[17]。将来的には、東京-大阪間の当日配達も目標としている[2]。
- この他、東京都区部[18]並びに千葉県南部[19]の一部地域向けのベース業務も行われている[20]。
- 付加価値ゾーン
- 各地の医療機関で使用された医療機器を本施設に集めて洗浄・メンテナンスを行ったのち再度医療機関に配送することにより、回転率の向上と在庫の圧縮、リードタイムの短縮に寄与する[21]。
- このほか、オンデマンド印刷によるダイレクトメールの作成、複数の個所から調達された品物を納品先ごとにまとめて出荷する「クロスマージ」、通関、検品、ラベル貼付などの流通加工を行っている。検品には、NECの画像認識技術を利用したコンピュータシステムが導入されている[22]。
- 環境
- 自然換気を活用した空調や、建物内に太陽光を導いて照明エネルギーを低減させるなどの施策が採り入れられており、従来の同種施設に比べ46%の二酸化炭素排出量削減を実現した[1]。
- この施策が評価され、ヤマト運輸は2014年5月29日に、日本物流団体連合会主催の第15回物流環境大賞を受賞した[23]。
- 和の里パーク
- 環八通りに面した前庭は地域貢献ゾーン「和の里パーク」と称し、環境緑地帯のほかヤマトグループによる障害者雇用促進事業「スワンベーカリー&カフェ」、大田区民および区内在勤者を対象としたスポーツ施設「ヤマトフォーラム」、保育所「ポピンズナーサリースクール羽田」の逆円錐形の建物が配置されている。フォーラム棟は、一旦鉛直近くに立てたプレキャストコンクリート板が外側に傾く力を使って鉄骨の屋根材を持ち上げる「アップリフト工法」が採用されている。
- これは設計を担当した日建設計が開発した工法であり、施工者の鹿島建設に対し提案する異例の手順が採られた[24][25]。
- 羽田クロノゲート・施設
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環八通りからの撮影
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地域貢献ゾーン(地域住民に開放)
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地域貢献ゾーンを見下ろす
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託児所・ポピンズナーサリースクール
広報
[編集]2013年9月20日に開催された竣工式には、第18代東京都知事(当時)・猪瀬直樹、第17代東芝代表執行役社長・田中久雄、初代ANAホールディングス代表取締役社長・伊東信一郎らのほか、男性アイドルグループTOKIOのメンバーが出席した[15]。TOKIOは同社の羽田クロノゲートの始動を告知するCMにも出演している[26]。
同社の取り組みを広く知ってもらうべく、予約制で宅急便の歴史に関する展示や荷搬エリア、集中管理室などを90分で見学できるコースが開設されている[27][28]。
最寄駅の京浜急行電鉄空港線穴守稲荷駅には、命名権取得により、2013年(平成25年)9月20日より「ヤマトグループ羽田クロノゲート前」の副駅名を冠した[29]。
脚注
[編集]- ^ a b c d “物流施設革新!!羽田クロノゲート”. 日建設計 (2013年11月6日). 2014年6月22日閲覧。
- ^ a b c “ヤマトHD、「羽田クロノゲート」を竣工”. Car Watch (2013年9月25日). 2014年6月22日閲覧。
- ^ “ヤマトHD、購入した土地のアスベスト汚染で荏原製作所に対して約74億円の損害賠償請求訴訟”. marketnewsline.com. (2012年3月28日) 2014年6月22日閲覧。
- ^ “【売買】荏原製作所羽田工場跡地などを845億円で取得、ヤマト運輸”. ケンプラッツ日経不動産マーケット情報. (2008年1月4日) 2014年6月18日閲覧。
- ^ “荏原製作所/845億円でヤマト運輸に羽田工場跡地売却”. LNEWS. (2007年12月26日) 2014年6月22日閲覧。
- ^ 『「羽田物流ターミナル」を新設』(プレスリリース)ヤマト運輸、2010年10月25日 。2014年6月22日閲覧。
- ^ 『最高裁決定に関するお知らせ』(PDF)(プレスリリース)荏原製作所、2019年1月30日 。2019年12月7日閲覧。
- ^ 『当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ』(PDF)(プレスリリース)荏原製作所、2014年3月28日 。2014年6月22日閲覧。
- ^ 『株式会社荏原製作所に対する訴訟の提起について』(プレスリリース)ヤマト運輸、2014年3月28日 。2014年6月22日閲覧。
- ^ 羽田クロノゲート(ヤマトホールディングス)
- ^ 「ヤマトグループ 羽田クロノゲート」が2015年度グッドデザイン賞を受賞ヤマトホールディングス 2015年9月29日
- ^ “第59回受賞作品 羽田クロノゲート”. 日本建設業連合会. 2018年9月2日閲覧。
- ^ a b 成毛眞の技術探検 (2013年12月6日). “巨大物流センターと立ち上がる「斜めの壁」”. 東洋経済オンライン. 2014年6月28日閲覧。
- ^ “ヤマトHD/「止めない物流」羽田クロノゲートを公開”. LNEWS. (2013年9月20日) 2014年6月28日閲覧。
- ^ 『「国際クール宅急便」のサービス開始について』(プレスリリース)ヤマト運輸、2013年9月5日 。2014年6月28日閲覧。
- ^ “ヤマトHD、「国際クール宅急便」開始など「バリュー・ネットワーキング構想」発表会”. Car Watch (2013年7月3日). 2014年6月28日閲覧。
- ^ 大田区、目黒区、世田谷区、渋谷区。
- ^ 館山市、木更津市、鴨川市、君津市、富津市、袖ケ浦市、南房総市、安房郡鋸南町。
- ^ “ヤマト運輸、東京都内など荷物引き受け停止 機器故障、配達遅延も”. 毎日新聞 (2023年12月13日). 2023年12月14日閲覧。
- ^ “ヤマトHD/羽田クロノゲートの付加価値ゾーンを公開”. LNEWS. (2013年9月30日) 2014年7月1日閲覧。
- ^ “ヤマトグループ、羽田クロノゲートでの出荷検品にNECの画像認識技術を導入”. RBBtoday. (2014年4月4日) 2014年6月22日閲覧。
- ^ “ヤマト、羽田クロノゲートで物流環境大賞受賞”. Logistics Today. (2014年5月30日) 2014年6月28日閲覧。
- ^ ““花びら”開いて大空間 スゴイ現場:ヤマト運輸羽田クロノゲート・フォーラム棟”. ケンプラッツ (2012年12月12日). 2014年7月1日閲覧。
- ^ “開いた“花びら”大屋根上げた スゴイ現場:ヤマト運輸羽田クロノゲート・フォーラム棟”. ケンプラッツ (2013年1月23日). 2014年7月1日閲覧。
- ^ 企業情報・広告(ヤマト運輸、2014-06-08閲覧)
- ^ 羽田クロノゲート見学コース
- ^ “ヤマト運輸の巨大物流ターミナル「羽田クロノゲート」を探検! 見学ツアーが楽しそう”. ねとらぼ. (2014年2月19日) 2014年6月28日閲覧。
- ^ 『京急空港線穴守稲荷駅に副駅名導入』(PDF)(プレスリリース)京浜急行電鉄、2013年9月20日 。2014年5月31日閲覧。