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白川静

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
白川 静
人物情報
生誕 (1910-04-09) 1910年4月9日
日本の旗 日本福井県福井市
死没 2006年10月30日(2006-10-30)(96歳没)
出身校 立命館大学
学問
研究分野 漢文学甲骨学
研究機関 立命館大学
学位 文学博士(京都大学)
称号 勲二等瑞宝章
文化功労者
文化勲章
主な受賞歴 毎日出版文化賞
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白川 静(しらかわ しずか、1910年4月9日 - 2006年10月30日)は、日本漢文学者東洋学者学位文学博士京都大学)。立命館大学名誉教授、名誉館友。福井県福井市出身。

経歴

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1923年、福井市の順化尋常小学校(現・福井市順化小学校)を卒業後、大阪市に移り弁護士広瀬徳蔵(大阪府会議員を経て立憲民政党代議士)の事務所に住み込みで勤務しながら、成器商業学校夜間部(現・大阪学芸高等学校)に通う。この時期に廣瀬の蔵書を読み漁り漢籍に親しみ独学していった。1930年、京阪商業学校(現・大阪府立芦間高等学校)卒業。

立命館大学専門部国漢科(夜間)を1936年に卒業。在学中より立命館中学校教諭も務め、1941年には立命館大学法文学部漢文学科に入学。卒業後は同大学予科・専門学部の教授となる。1954年より立命館大学文学部教授を務めた。1962年、京都大学へ博士論文「興の研究」を提出して文学博士号を取得。1976年に66歳で定年退職、特別任用教授になる。1981年には名誉教授の称号を受けている。

晩年に自らの著作料の一部を大学に寄贈し、立命館大学に「白川静記念東洋文字文化研究所」が設立され、没時まで所長兼理事長を務めた。

研究業績

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古代漢字研究の第一人者として知られ、字書三部作字統』(各・平凡社、1984年)、『字訓』(1987年)、『字通』(1996年)は、ライフワークの成果となった。

漢文世代の最後の碩学」と称せられた。

20世紀が終わる時期より、各平凡社で『白川静著作集』(全12巻)、『白川静著作集 別巻』(全4期:全23巻)が刊行され、傍ら中学・高校生以上の広い読者を対象とした漢字字典『常用字解』や『人名字解』、インタビュー・対談なども収録した『回思九十年』、『桂東雑記』などを刊行。他にも多数の共著・監修がある。

期から春秋戦国にかけ青銅器を多数所蔵している「白鶴美術館」(神戸市東灘区)で、長年講話を行っていた。

1999年3月から2004年1月まで地元京都で「文字講話」を2時間年4回ペースで全20回行い、講演内容は『白川静 文字講話』(全4巻)にまとめられた。続編の希望が相次いだので新たに4回行ない、2006年10月初頭にその続編の著作校正を済ませ入院、同年10月30日、内臓疾患(多臓器不全)により逝去。96歳没。翌年に(結果として遺著となった)『白川静 続文字講話』が刊行、生涯現役を通した。

2005年4月に福井県立図書館内に、愛用品など関連資料を展示する展示する「白川文字学の室」が開設された。2010年4月に生誕100年を記念し、立命館大学図書館内に約2年かけ整理した「白川静文庫」が開設、蔵書や直筆原稿など約1万8千点を収蔵。併せて『文庫目録』も発刊された。没後10年となる2016年10月には、福井県ふるさと文学館・図書館で記念行事の開催や企画展、また「白川文字学の室」リニューアルを行った。

逸話

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白川の人となりは、自叙伝他の『回思九十年』[1]と、娘津崎史の回想記『父・白川静96歳 最期の日々』[2]に詳しい。

立命館大学教授時代、高橋和巳梅原猛らと親交を持つ。特に高橋とは同じ中国文学者として互いに評価しあっており、作家でもあった高橋が最晩年に書いた『わが解体』に、当時無名の一教授だった白川が『S教授』として登場している。

著書の重厚な印象から怖い人だという印象を受けがちであるが、生前の白川に接した人によれば、茶目も飛ばすような軽妙な一面もあったという。若い人とも気軽に話をし、インタビューにも応じている。若手では宮城谷昌光を「勉強熱心だ」「あなたの文は清新でよろしい」[3]と高く評価した。漫画家と対談するときには相手の作品をあらかじめ読んでおくなど、気配りの人でもあった。

荒川静香イチローが好きで、イナバウアーの真似をしたこともあったと娘が述懐している。趣味は囲碁・登山。病弱だった体を登山で鍛えていたため非常に健脚だった。

囲碁も相当な腕前で、若き日に関西棋院でプロから指導を受けるなどしていた。アマ六段に二子であったと自伝「回思九十年」で述べているので、四段の腕前であったと推測される。呉清源の新聞碁なども相当収集していた。病床でもニンテンドーDSで囲碁・将棋を楽しみ、「なかなか定石を知っとる」と悦んでいたという。

批判

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  • 落合淳思は、白川の甲骨文字解釈は「無前提に呪術に関連づけて解釈したため、牽強付会の説も少なくない」(甲骨文字小事典)とする。呉哲男は、この点を敷衍し、白川の甲骨文字解釈の特徴は、「口」という字形の多くを「神の祈りの文である祝詞を入れる器」と断定することにあるが、字形上、そのよう区別して解釈する根拠はなく、また、そのような「聖なる器」の遺物を見出すことができないなどという(反白川静論)。
  • 白川は、甲骨文字金文といった草創期の漢字の成り立ちには宗教的、呪術的なものが背景にあったと主張したが、実証が難しいこれらの要素をそのまま学説とすることは、吉川幸次郎藤堂明保を筆頭とする当時の主流の中国学者からは批判され、それを受け継いでいる阿辻哲次も批判的見解を取っている[4]万葉集などの日本古代歌謡の呪術的背景に関しての論考もしているが、専門家の支持を受けているとは言いがたい。
  • 中国古代学者で東京大学名誉教授の加藤常賢 (1894-1978) は、晩年講義で白川の『漢字』を罵倒していたといわれる。

著作(一般)

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単著

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訳・注解

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随想・論考集

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  • 『文字逍遥』(平凡社、1987年4月/平凡社ライブラリー、1994年4月) ISBN 978-4582761696
  • 『文字遊心』(平凡社、1990年4月/平凡社ライブラリー、1996年11月) ISBN 978-4582760460

DVD

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  • 『白川静 文字講話』DVD 全12巻、方丈堂出版、2008年10月
    ※1999-2005年に行われた講話(全24回)を収録、および全文資料7冊組。
  • 『白川静と漢字 - 東洋の精神』紀伊國屋書店、2004年12月

字典

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※ いずれも平凡社で刊行。

著作集

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共著

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図版解説・記念論集

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  • ・甲骨文集』(二玄社〈書跡名品叢刊〉、初版1963年)- 各巻解説を担当、重版多数。
  • 金文集』- 「1殷周」「2西周」「3西周」「4列國」(二玄社〈書跡名品叢刊〉、初版1963-64年)
  • 『白川静博士古希記念 中国文史論叢』(立命館大学人文会編、朋友書店、1981年7月)
  • 『漢字類編 新説文解字』(監修:小林博編、木耳社、1982年11月) ISBN 978-4839303587

伝記・研究

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関連文献

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  • 『電脳文化と漢字のゆくえ—岐路に立つ日本語』(平凡社、1998年1月)ISBN 978-4582403220
    「特別對談 日本人と漢字世界」で江藤淳と対談[9]
  • 宮下久夫 『分ければ見つかる知ってる漢字 白川静先生に学んで漢字の学習システムを作る 宮下久夫遺稿集』 太郎次郎社エディタス、2000年11月、ISBN 978-4811806594
  • 『神さまがくれた漢字たち 正・続』(理論社、2004年12月-2008年7月)- イースト・プレス、新曜社で再刊
    白川の監修で山本史也編著、児童書での入門書。
  • 小山鉄郎『白川静さんに学ぶ漢字は楽しい』(共同通信社、2006年12月/新潮文庫、2009年12月)
  • 小山鉄郎『白川静さんに学ぶ漢字は怖い』(共同通信社、2007年12月/新潮文庫、2012年2月)
    各白川の監修、編著でイラスト付きの解説書。
  • 小山鉄郎『白川静さんと遊ぶ漢字百熟語』(PHP新書、2010年1月)
  • 小山鉄郎『白川静さんに学ぶこれが日本語』(論創社、2019年2月)
  • 金子都美絵『絵で読む漢字の成り立ち 白川静文字学への扉』(太郎次郎社エディタス、2010年7月) ISBN 978-4811807386
  • 金子都美絵『死者の書 白川静の絵本』(平凡社、2021年4月) ISBN 978-4582403558
  • 『白川静博士の漢字の世界へ』 小学校学習漢字解説本:福井県教育委員会編(平凡社、2011年2月、第二版:2021年3月) ISBN 978-4582403343
  • 『白川静を読むときの辞典』 立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所編(平凡社、2013年10月) ISBN 978-4582403541

受賞・栄典

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脚注

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  1. ^ 私の履歴書」を元にした、他に『知の越境者』日経ビジネス人文庫にも収録
  2. ^ 文藝春秋」2007年4月号
  3. ^ 宮城谷昌光との対話「日本人が忘れたもう一つの教養」『回思九十年』収録
  4. ^ しかし、白川によって先鞭がつけられた代社会の呪術的要素の究明は、平勢隆郎ら古代中国史における呪術性を重視する研究者たちに引き継がれ、発展を遂げた
  5. ^ 改版も含め、中公文庫BIBLIOで刊行。のち中公文庫で新装重版
  6. ^ 平成22年(2010年)11月の内閣告示常用漢字表の対応した増補版
  7. ^ 相手は、呉智英酒見賢一白井晟一今井凌雪北川栄一、宮城谷昌光、谷川健一山中智恵子水原紫苑の3名、江藤淳粟津潔石牟礼道子吉田加南子
  8. ^ 図版・年譜、五木寛之対談を増補
  9. ^ 他に寄稿者は、吉目木晴彦池澤夏樹加藤弘一島田雅彦金井弘夫長島弘明丹羽基二長谷川貞夫田村毅加藤重信小林龍生紀田順一郎
  10. ^ 朝日賞 1971-2000年度”. 朝日新聞社. 2022年8月18日閲覧。
  11. ^ 京都市名誉市民 白川静氏”. 京都市. 2022年9月9日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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